説明

合成ガス製造兼発電装置

【課題】装置の小型化を図ることができるようにする。
【解決手段】天然ガス加圧用コンプレッサ62と発電機65を蒸気タービン63のタービン軸64に連結し、天然ガス加圧用コンプレッサ62の出口側にATR68を接続する。ATR68の出口側にボイラ76を備えた合成ガスライン75を接続する。蒸気タービン63の入口側63aと出口側63bに、コンデンサ79とポンプ80と合成ガスライン75上のボイラ76を経る閉ループ77を接続する。天然ガス66を天然ガス加圧用コンプレッサ62にて加圧すると同時に昇温させてATR68へ供給し、オートサーマルリフォーミングにより高温高圧の合成ガス74を生成させ、ボイラ76にて冷却した高圧の合成ガス74を合成ガスライン75より回収させる。合成ガス74の冷却によりボイラ76で生じた蒸気78aにより蒸気タービン63を駆動させて、天然ガス加圧用コンプレッサ62と発電機65を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス等のメタンを部分酸化改質してGTL技術における原料とするための合成ガスを製造すると共に発電を行なう合成ガス製造兼発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ガスはメタンを主成分としており、常温では気体である。このため、天然ガスを取り扱う場合、従来はパイプラインで輸送したり、あるいは、天然ガスを冷却し液化させてLNGとすることにより、液体の状態で輸送、貯蔵等を行なうようにしている。
【0003】
ところが、上記天然ガスをLNGとするためには−163℃という極低温にまで冷却する必要があり、この冷却に莫大なエネルギーを必要とすると共に、極低温状態を保持した状態で輸送や貯蔵を行うための特殊な輸送設備、貯蔵設備が必要になる。更に、所要の需要先へ燃料として供給する場合には、LNGを気化(ガス化)させて再び天然ガスとするためのガス化設備も必要になる。そのために、中小規模のガス田や、パイプライン設備の整っていないガス田の天然ガスを利用することは難しいのが現状である。
【0004】
そこで、近年では、天然ガスを原料として、ガソリン、灯油、軽油の如き常温で輸送可能な液体燃料に化学的に変換するGTL(Gas To Liquids)技術が開発されてきている。かかるGTL技術としては、天然ガス中のメタンを、水素と一酸化炭素とからなる合成ガス(Syngas)に一旦改質(転換)した後、該合成ガスを原料としてフィッシャー・トロプシュ反応(FT反応)により水素と一酸化炭素から所望の炭化水素を製造(合成)する手法が広く知られている。又、上記合成ガスの製造方法の一つとしては、自己熱改質型のオートサーマルリフォーミングが知られている。これは、反応器であるATR(Auto Thermal Reformer)(部分酸化改質炉)に、天然ガス及び水蒸気に所要量の酸素を加えて供給して、該酸素を用いて天然ガスの一部を燃焼(酸化)させ、この燃焼により発生する熱により、吸熱反応であるメタンの水蒸気改質を行わせるようにするものである。
【0005】
従来、天然ガスを液体燃料に化学的に変換させるGTL技術の過程で用いられている上記ATRを備えた形式の合成ガス製造設備は、図3に概略を示す如く、ATR1の入口側に、予熱器3を備えた天然ガスライン2を接続して、図示しない天然ガス供給部より上記天然ガスライン2を通して供給される天然ガス4を、予熱器3で予熱した後、ATR1へ供給すると共に、該ATR1に、水蒸気6に所要量の酸素7を加えたものを水蒸気・酸素供給ライン5により供給するようにしてあり、ATR1において上述したような天然ガス4のオートサーマルリフォーミング、すなわち、一部の天然ガス4の燃焼と、この燃焼熱を吸熱して行われる天然ガス4の水蒸気改質とを行わせて、天然ガス4が改質されて高温(1000℃〜1200℃)の合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)8が生成されるようにしてある。上記ATR1で生成されて送出される高温の合成ガス8は、ATR1の出口側に接続してある合成ガスライン9を通してボイラ(クエンチャー)10に導き、ボイラ水11と熱交換させて蒸気(飽和蒸気)11a発生用の熱源として供することによりガス温度を350〜400℃程度まで直ちに冷却するようにし、しかる後、上記冷却された合成ガス8を、GTLの後工程であるFT合成用の原料として下流側の図示しないリアクターへ送るようにしてある(たとえば、非特許文献1参照)。
【0006】
なお、上記において、ATR1で生成された合成ガス8をGTLの後工程でリアクターへ送ってFT合成を行なわせるには、高圧の合成ガス8が必要とされる。このために、上記ATR1における天然ガス4の改質反応は高圧条件の下で行なわせることが望まれる。
【0007】
そのため、上記ATR1には天然ガス4を高圧状態で供給することが求められ、この場合、上記天然ガスライン2が、たとえば、パイプラインより供給される高圧の天然ガス4を導くようになっているときには、供給される高圧の天然ガス4をそのまま予熱器3を経てATR1へ導入させるようにすればよいが、小さなガス田等より供給される天然ガス4のように、供給圧力が低い場合には、図3に二点鎖線で示す如く、上記天然ガス供給ライン2における予熱器3よりも上流側位置に、天然ガス4の加圧用コンプレッサ12を設けて、該コンプレッサ12を、所要の動力源、たとえば、蒸気タービン13等の出力によって駆動させることより、上記低圧で供給される天然ガス4を上記天然ガス加圧用コンプレッサ12にて所要圧力まで加圧してから予熱器3を経てATR1へ供給させるようにすることが要求される。
【0008】
ところで、炭化水素を水蒸気改質して水素及び一酸化炭素を含むガスとしてから、該ガスを用いて発電を行なう装置としては、図4に示す如きものが従来提案されている。これは、炭化水素14を水蒸気15と共にリフォーマ(改質器)16へ供給して、該リフォーマ16にて水蒸気改質することにより水素18及び一酸化炭素19を含む改質ガス17とし、次に、該改質ガス17をガス分離装置20に導いて水素18を分離するようにしてある。更に、コンプレッサ22と発電機23をガスタービン24のタービン軸25に同軸に連結して備え、且つ上記コンプレッサ22とガスタービン24との間に主燃焼器26を備えてなるガスタービン発電機21を構成し、該ガスタービン発電機21の上記主燃焼器26に、上記ガス分離装置20で分離された水素18を供給して、上記コンプレッサ22より吸気27を圧縮して供給される圧縮空気27aを用いて主燃焼器26にて水素18を燃焼させることにより高温高圧の燃焼ガス28を発生させるようにしてある。又、該燃焼ガス28を上記ガスタービン24に導いて膨張させることにより該ガスタービン24を駆動させて出力を取り出し、取り出された出力の一部を、タービン軸25を介し上記コンプレッサ22へ伝えて駆動用動力として用いると共に、残りをタービン軸25に接続してある上記発電機23の駆動用動力として用いることにより発電を行なわせるようにしてある。
【0009】
又、上記ガス分離装置20にて分離された水素18のうちの一部は、副燃焼器29へ供給して上記主燃焼器26の酸素を多量に含んだ排ガス30の一部を用いて燃焼させることにより、上記リフォーマ16における炭化水素14の水蒸気改質用の熱源として用いるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0010】
なお、図4における符号31は廃熱ボイラであり、該廃熱ボイラ31にて上記主燃焼器26の排ガス30及びリフォーマ16の排ガス30aをボイラ水32と熱交換させることにより熱回収して、発生する水蒸気15を、リフォーマ16に水蒸気改質用として供給したり、ガスタービン発電機21への蒸気噴射及びユーティリティ蒸気として用いることができるようにしてある。33は主燃焼器26の排ガス30を副燃焼器29へ供給するためのブロワ、34はガス分離装置20で水素18と分離した一酸化炭素19を、たとえば、メタノールと反応させて酢酸を生成させることで固定するガス固定装置である。
【0011】
又、石炭を石炭ガス化ガスに転換した後、この石炭ガス化ガスを用いて発電を行う装置として、図5に示す如きものが従来提案されている。これは、燃料供給ライン35よりガス化炉36に供給される石炭等の燃料37を、酸化剤供給ライン38より供給される酸素又は空気等の酸化剤39を用いて高温高圧下で部分燃焼させると共に還元して石炭ガス化ガス40を生成させ、該石炭ガス化ガス40を、粗ガスクーラ42、ガス精製設備43を順に備えたガスライン41を通してガスタービン44に導いて、該ガスタービン44を駆動し、その出力によりタービン軸に同軸に接続してある発電機45を駆動して発電を行なわせるようにしてある。
【0012】
更に、上記ガスタービン44の排気ライン46上に設けた排ガスボイラ47にて、ガスタービン44の排ガスより熱回収して蒸気48を発生させると共に過熱し、該蒸気48を、蒸気ライン49を通して上記粗ガスクーラ42に導いて、ガス化炉36よりガスライン41を通して導かれる高温の石炭ガス化ガス40と熱交換させることで更に過熱し、該過熱された蒸気48aを蒸気タービン50に導いて該蒸気タービン50を駆動し、その出力によりタービン軸に同軸に接続してある発電機51を駆動して発電を行なわせるようにしてある(たとえば、特許文献2参照)。
【0013】
なお、図5における符号52は粗ガスクーラ42にて過熱される蒸気48aに適宜水を供給して過熱温度を調節できるようにしてある温度調節器、53は燃料量、蒸気流量及び蒸気タービン入口蒸気温度に応じて蒸気タービン入口蒸気温度が一定の割合以内で変化するよう上記温度調節器52を制御する制御部である。
【0014】
更に、燃料を触媒燃焼させて発電を行なう装置として、図6に示す如きものが従来提案されている。これは、コンプレッサ54とガスタービン56をタービン軸57にて同軸に連結すると共に該タービン軸57に発電機55を接続し、且つ上記コンプレッサ54の出口側とガスタービン56の入口側との間に、触媒燃焼器58を接続した構成として、上記コンプレッサ54にて吸気59を圧縮して圧縮空気59aを上記触媒燃焼器58へ供給し、該触媒燃焼器58にて、上記圧縮空気59aに一次燃料60aを供給して予燃焼させた後、二次燃料60bを混合して触媒燃焼させ、この触媒燃焼により所要温度まで昇温される混合ガス61を、上記ガスタービン56に導いて膨張させることにより該ガスタービン56を駆動させて出力を取り出すようにしてあり、取り出された出力の一部を、タービン軸57を介し上記コンプレッサ54へ伝えて駆動用動力として用いると共に、残りをタービン軸57に接続してある発電機55の駆動用動力として用いることにより発電を行なわせるようにしてある。
【0015】
又、上記コンプレッサ54にて吸気59を圧縮して圧縮空気59aとして触媒燃焼器58へ供給することに代えて、コンプレッサ54の入口側に燃料予混合器(図示せず)を設けて、該燃料予混合器にて吸気と燃料を予め混合して燃料混合空気としてからコンプレッサ54で加圧し、更に、該加圧された燃料混合空気をガスタービン56の廃熱で所定温度まで昇温させてから触媒燃焼器58へ供給するようにすることも提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0016】
【特許文献1】特開平9−303115号公報
【特許文献2】特開平5−332160号公報
【特許文献3】特開平4−330304号公報
【非特許文献1】五十嵐、「天然ガスからの合成ガス製造プロセスの進歩と現状」、日本エネルギー学会誌、社団法人日本エネルギー学会、2002年、第81巻、第11号、p.968−972
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、図3に実線及び二点鎖線で示した如き従来の合成ガス製造設備では、ATR1で生成される合成ガス8より熱回収を図るボイラ10と、供給される天然ガス4が低圧の場合に天然ガスライン2における予熱器3よりも上流側に設ける天然ガス加圧用コンプレッサ12が別体の構成となっていて、効率があまり高くないというのが実状である。又、すべての機器が別機器での構成となっていることから、設備が大型化すると共に、コストが嵩むという問題もある。
【0018】
なお、図4に示されたものでは、コンプレッサ22及び発電機23を駆動するための動力は、炭化水素14をリフォーマ16で改質してなる改質ガス17中の水素18を主燃焼器26で燃焼させることで高温高圧の燃焼ガス28を発生させ、この燃焼ガス28をガスタービン24で膨張させることにより得るようにしてあり、上記改質ガス17中の水素18は燃焼により消費されてしまうものであって、該水素18の回収を図る考えは全く示されていない。したがって、GTL技術におけるFT合成の原料とするための水素と一酸化炭素とからなる合成ガスを製造するための装置にて、製造される合成ガスの量を減じることなくタービンを駆動して外部動力を取り出すことができるようにする構成が何ら示されるものではない。
【0019】
又、図5に示されたものでは、ガス化炉36で生成される石炭ガス化ガス40を導くガスライン41上に設けた粗ガスクーラ42において蒸気48を過熱させ、該過熱された蒸気48を蒸気タービン50に導いて膨張させることによる該蒸気タービン50の出力により発電機51を駆動できるようにした構成は示されているが、上記ガス化炉36にて生成される石炭ガス化ガス40は、ガスライン41を通しガスタービン44へ導いて、該ガスタービン44を廻すために消費(膨張)させられるものである。しかも、上記粗ガスクーラ42にて過熱させるための蒸気48は、上記ガスタービン44の廃熱を回収する排ガスボイラ47で発生させるようにしてある。したがって、GTL技術におけるFT合成の原料とするために、水素と一酸化炭素とからなる合成ガスを高圧状態で回収することが望まれる合成ガスの製造装置にて、製造される合成ガスを高圧を保持したまま回収できるようにすると同時に、タービンを駆動して外部動力を取り出すことができるようにする構成が何ら示唆されるものではない。
【0020】
更に、図6に示されたものは、触媒燃焼器で燃料60a,60bを触媒燃焼させて生成した混合ガスを直接ガスタービンに導いて、該ガスタービンで膨張させることにより該ガスタービンよりコンプレッサや発電機を駆動するための出力を取り出すようにしたものである。したがって、GTL技術におけるFT合成の原料とするための水素と一酸化炭素とからなる合成ガスを高圧のまま回収することが望まれている合成ガスの製造装置におけるATRから得られる高温高圧の合成ガスを、高圧を保持したまま回収を図ると同時に、タービンを駆動して外部動力を取り出すことができるようにする構成は何ら示唆されない。
【0021】
そこで、本発明は、GTL技術におけるFT合成の原料とするのに適した高圧状態の合成ガスを回収できると共に、装置の小型化を図ることができ、更に、発電をも行なうことができる合成ガス製造兼発電装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明に対応して、メタン含有ガスの加圧を行なうコンプレッサと発電機を蒸気タービンのタービン軸上に同軸に接続し、上記コンプレッサの出口側にATRを設け、該ATRの出口側にボイラを備えた合成ガスラインを接続して、上記ボイラにてATRより送出される合成ガスより熱回収して発生される蒸気を、上記蒸気タービンに導いて駆動させることにより上記コンプレッサ及び発電機を駆動できるようにしてなる構成とする。
【0023】
又、上記請求項1に係る発明における蒸気タービンの入口側と出口側に、該蒸気タービンの出口側より排出される蒸気を復水させるコンデンサと、復水されたボイラ水を昇圧するポンプと、合成ガスライン上のボイラを順に経る閉ループを接続するようにした構成とする。
【0024】
更に、請求項3に係る発明に対応して、メタン含有ガスの加圧を行なうコンプレッサと発電機を蒸気タービンのタービン軸上に同軸に接続し、上記コンプレッサの出口側にATRを設け、該ATRの出口側にスーパヒータ及びボイラを上流側より順に備えた合成ガスラインを接続して、上記ボイラにてATRより送出される合成ガスより熱回収して発生される蒸気を上記スーパヒータにて過熱してなる過熱蒸気を、上記蒸気タービンに導いて駆動させることにより上記コンプレッサ及び発電機を駆動できるようにしてなる構成とする。
【0025】
又、上記請求項3に係る発明における蒸気タービンの入口側と出口側に、該蒸気タービンの出口側より排出される蒸気を復水させるコンデンサと、復水されたボイラ水を昇圧するポンプと、合成ガスライン上のボイラと、スーパヒータを順に経る閉ループを接続するようにした構成とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の合成ガス製造兼発電装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)メタン含有ガスの加圧を行なうコンプレッサと発電機を蒸気タービンのタービン軸上に同軸に接続し、上記コンプレッサの出口側にATRを設け、該ATRの出口側にボイラを備えた合成ガスラインを接続して、上記ボイラにてATRより送出される合成ガスより熱回収して発生される蒸気を、上記蒸気タービンに導いて駆動させることにより上記コンプレッサ及び発電機を駆動できるようにしてなる構成としてあるので、コンプレッサにて加圧し、且つこの加圧に伴って昇温されたメタン含有ガスを原材料としてオートサーマルリフォーミングを行なうことで高温高圧の合成ガスを生成した後、ボイラにて上記合成ガスの保有する熱を冷却させて回収することができるため、GTLの後工程であるFT合成の原料とするのに適した高圧状態を保持したままの合成ガスを得ることができる。
(2)又、装置構成を、吸気加圧用のコンプレッサとガスタービンとをタービン軸にて連結し、且つ上記コンプレッサとガスタービンとの間に燃料を燃焼させる燃焼器を設けてなる汎用のガスタービンの構成に似た構成とすることができることから、コンパクトなものとすることが可能になると共に、製造コストを抑えることが可能になる。
(3)更に、蒸気タービンの出力によりメタン含有ガスの加圧用のコンプレッサを直接駆動できることから、駆動効率を高いものとすることができる。
(4)メタン含有ガスは低圧で供給されるものでよいため、ガス田より発生する天然ガス等や、ごみ処理、排水処理等から発生する圧力を有していないメタンガス等を利用して合成ガスの製造を行なうことが可能になる。
(5)蒸気タービンの入口側と出口側に、該蒸気タービンの出口側より排出される蒸気を復水させるコンデンサと、復水されたボイラ水を昇圧するポンプと、合成ガスライン上のボイラを順に経る閉ループを接続するようにした構成とすることにより、蒸気タービンを駆動するためのボイラ水、蒸気を循環使用できる。このため、装置構成をよりコンパクトにすることが可能となる。
(6)メタン含有ガスの加圧を行なうコンプレッサと発電機を蒸気タービンのタービン軸上に同軸に接続し、上記コンプレッサの出口側にATRを設け、該ATRの出口側にスーパヒータ及びボイラを上流側より順に備えた合成ガスラインを接続して、上記ボイラにてATRより送出される合成ガスより熱回収して発生される蒸気を上記スーパヒータにて過熱してなる過熱蒸気を、上記蒸気タービンに導いて駆動させることにより上記コンプレッサ及び発電機を駆動できるようにしてなる構成とすることにより、上記(1)(2)(3)(4)の効果に加えて、蒸気タービンの駆動効率を向上させることができることから、蒸気タービンの出力のうち、発電機の駆動に用いる出力を増加させることができて、発電能力を向上させることが可能になる。
(7)蒸気タービンの入口側と出口側に、該蒸気タービンの出口側より排出される蒸気を復水させるコンデンサと、復水されたボイラ水を昇圧するポンプと、合成ガスライン上のボイラと、スーパヒータを順に経る閉ループを接続するようにした構成とすることにより、蒸気タービンを駆動するためのボイラ水、蒸気、過熱蒸気を循環使用できる。このため、装置構成をよりコンパクトにすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0028】
図1は本発明の合成ガス製造兼発電装置の実施の一形態を示すもので、以下のような構成としてある。
【0029】
すなわち、メタン含有ガス加圧用コンプレッサとしての天然ガス加圧用コンプレッサ62と蒸気タービン63をタービン軸64にて同軸に連結し、更に、該タービン軸64に発電機65を同軸に接続する。上記天然ガス加圧用コンプレッサ62の入口側には、所要の供給源よりメタン含有ガスとしての天然ガス66を導く天然ガスライン67を接続し、上記コンプレッサ62の出口側には、ATR68の入口側を、加圧天然ガスライン69を介し接続する。更に、上記ATR68には、所要の供給源より水蒸気70を導く水蒸気供給ライン71と、所要の供給源より所要量の酸素72を導く酸素供給ライン73を接続する。これにより、上記ATR68に、天然ガスライン67より供給される天然ガス66を天然ガス加圧用コンプレッサ62にて所要圧力、たとえば、2〜3MPa程度まで加圧させると同時に該加圧に伴って昇温された加圧天然ガス66aを、加圧天然ガスライン69を経て供給して、水蒸気供給ライン71より供給される水蒸気70及び酸素供給ライン73より供給される所要量の酸素72を用いて図3に示した従来の合成ガス製造設備におけるATR1と同様にオートサーマルリフォーミングを行なわせて合成ガス74を生成させることができるようにしてある。
【0030】
上記ATR68の出口側には、生成された合成ガス74をGTLの後工程であるFT合成用の原料として下流側の図示しないリアクターへ導くようにしてあるボイラ76を備えた合成ガスライン75を接続する。
【0031】
更に、上記蒸気タービン63のタービン入口63aとタービン出口63bとを、上記タービン出口63bより排出される蒸気78aを所要の冷却媒体との熱交換により凝縮させてボイラ水78に復水させるコンデンサ79、該コンデンサ79で凝縮されたボイラ水78を昇圧するポンプ80、上記合成ガスライン75上に設けてあるボイラ76を順に接続してなる閉ループ77にて接続して、上記ポンプ80により昇圧されたボイラ水78を、上記ボイラ76にてATR68より合成ガスライン75を通して導かれる高温の合成ガス74と熱交換させることにより飽和した蒸気78aを発生させ、該蒸気78aを上記蒸気タービン63にタービン入口63aより導入させて膨張させることにより該蒸気タービン63を駆動させて出力を取り出すようにする。この蒸気タービン63より取り出される出力の一部を、タービン軸64を介し上記天然ガス加圧用コンプレッサ62へ伝えて駆動用動力として用いると共に、残りをタービン軸64に接続してある発電機65の駆動用動力として用いることにより発電を行なわせることができるようにしてある。
【0032】
上記本発明の合成ガス製造兼発電装置を用いて合成ガスの製造を行う場合は、上記閉ループ77におけるポンプ80を駆動させると共に、コンデンサ79に所要の冷却媒体を供給するようにしておく。この状態において、天然ガスライン67を通して天然ガス66を供給すると、該天然ガス66は天然ガス加圧用コンプレッサ62にて所要圧力に加圧されると共に、該加圧に伴い昇温された加圧天然ガス66aとされてATR68へ供給される。該ATR68では、酸素供給ライン73より供給される所要量の酸素72により上記加圧天然ガス66aの部分燃焼が行われ、この燃焼熱により上記加圧天然ガス66aの水蒸気供給ライン71より供給される水蒸気70による水蒸気改質が行なわれることにより、水素と一酸化炭素とからなる合成ガス74が高温高圧状態として生成される。
【0033】
上記ATR68にて生成された合成ガス74は、合成ガスライン75を通して下流側へ導かれる際、ボイラ76にて上記閉ループ77を循環されるボイラ水78と熱交換されて、350〜400℃まで冷却される。このように、上記合成ガス74は、高温状態からの冷却は行なわれるが、膨張されることはなく圧力は保持したままとなるため、上記所要温度まで冷却され且つ高圧状態を保持した合成ガス74が合成ガスライン75を通してGTLの後工程であるFT合成用の原料として下流側へ送られるようになる。
【0034】
上記閉ループ77のボイラ水78は、上記ボイラ76における合成ガス74の冷却に供されることで蒸気78aとされる。該蒸気78aが蒸気タービン63へタービン入口63aより導入されて膨張させられることにより上記蒸気タービン63が駆動され、この蒸気タービン63のタービン軸64を介した出力により、上記天然ガス加圧用コンプレッサ62の駆動が行なわれると共に、発電機65の駆動が行なわれて発電が行なわれるようになる。
【0035】
上記蒸気タービン63にて膨張された蒸気78aは、コンデンサ79にて凝縮されてボイラ水78へ復水された後、ポンプ80にて昇圧されて、上記ボイラ76へ循環供給される。
【0036】
このように、上記本発明の合成ガス製造兼発電装置によれば、合成ガスライン75上のボイラ76では、合成ガス74の保有する熱のみを回収するようにしてあることから、GTLの後工程であるFT合成の原料とするのに適した高圧状態を保持したままの合成ガス74を得ることができる。
【0037】
又、上記天然ガス加圧用コンプレッサ62と、ATR68にて製造される合成ガス74の保有する熱エネルギーを蒸気78aを介し間接的に回収して動力として取り出すための蒸気タービン63とをタービン軸64にて連結すると共に、上記天然ガス加圧用コンプレッサ62の出口側と蒸気タービン63の入口側との間に、天然ガス66を部分燃焼させるATR68と、ボイラ76を備えた閉ループ77を設けてなる構成として、汎用のガスタービンの構成、すなわち、吸気加圧用のコンプレッサとガスタービンとをタービン軸にて連結し、且つ上記コンプレッサの出口側とガスタービンの入口側との間に燃料を燃焼させる燃焼器を設けた構成に似た構成とすることができることから、装置構成をコンパクトなものとすることが可能になると共に、製造コストを抑えることが可能になる。
【0038】
更に、上記蒸気タービン63の出力により天然ガス加圧用コンプレッサ62を直接駆動できることから、駆動効率を高いものとすることができる。
【0039】
上記本発明の合成ガス製造兼発電装置に供給する天然ガス66は、供給圧力が低圧でよいため、ガス田より発生する天然ガス66等を天然ガスライン67より直接供給することができ、上記した装置構成をコンパクトなものとすることができる効果と相俟って、中小のガス田等へ搬送して使用することが可能な小型の合成ガス製造兼発電装置としての利用も期待できる。したがって、パイプラインの設置がコスト的に見合わないような中小のガス田の天然ガス66にGTL技術を適用して有効利用を図ることが可能になる。
【0040】
又、上記天然ガス66に代えて、将来展開されると考えられているごみ処理、排水処理等から発生する圧力を有していないメタンガス等をコンプレッサにて加圧した後、ATR68へ供給して合成ガスの製造を行なわせることも可能になる。
【0041】
次に、図2は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1に示したと同様の構成において、ATR68の出口側に接続してある合成ガスライン75におけるボイラ76よりも上流側(ATR68側)位置に、スーパヒータ81を設けると共に、該スーパヒータ81を、合成ガス74よりボイラ水78にて熱回収を図るための閉ループ77におけるボイラ76と、蒸気タービン63のタービン入口63aとの間に組み込むよう接続してなる構成として、上記ボイラ76における合成ガス74の冷却により発生した飽和蒸気78aを、上記スーパヒータ81に導いて、上記ATR68で合成され且つ上記ボイラ76で冷却される以前の高温状態の合成ガス74と熱交換させることで過熱し、この過熱により生じる過熱蒸気78bを上記蒸気タービン63のタービン入口63aへ供給できるようにしたものである。
【0042】
その他の構成は図1に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0043】
本実施の形態によれば、図1に示したと同様の効果に加えて、スーパヒータ81にて過熱した過熱蒸気78bにより蒸気タービン63を駆動させて出力を取り出すことで、該蒸気タービン63の駆動効率を向上させることができることから、蒸気タービン63の出力のうち、発電機65の駆動に用いる出力を増加させることができて、発電能力を向上させることが可能になる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、合成ガス74の製造に用いるメタン含有ガスとしては天然ガス66を用いるものとして説明したが、メタンを含むガスであればいかなるメタン含有ガスを用いるようにしてもよい。水蒸気72は水蒸気供給ライン71を通してATR68へ直接供給するものとして示したが、天然ガス加圧用コンプレッサ62よりも上流側の天然ガスライン67を流通する天然ガス66や、上記コンプレッサ62にて加圧された加圧天然ガスライン69中を流れる加圧天然ガス66aへ添加、混合して、該加圧された天然ガス66aと水蒸気72を一緒にATR68へ供給させるようにしてもよく、あるいは、所要量の酸素72と一緒に水蒸気70をATR68へ供給させるようにしてもよい。
【0045】
従来使用されているATRは底部のみに改質触媒を入れてあるが、該改質触媒に達する以前に天然ガスは合成ガスへ90数%転換されて平衡に達しており、上記改質触媒は残る数%の天然ガスを合成ガスへ転換させる反応を進行させるために用いられている。したがって、本発明の合成ガス製造兼発電装置の構成要素であるATR68としては、回収する合成ガス74に所望される転換率に応じて、内部に改質触媒を入れたもの、あるいは、入れていないものを適宜選択して使用してよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の合成ガス製造兼発電装置の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示す概要図である。
【図3】従来提案されているATRを用いた合成ガス製造設備を示す概要図である。
【図4】従来提案されている炭化水素を水蒸気改質して水素及び一酸化炭素を含むガスとしてから、該ガスを用いて発電を行なう装置の一例を示す概要図である。
【図5】従来提案されている石炭を石炭ガス化ガスに転換した後、石炭ガス化ガスを用いて発電を行う装置の一例を示す概要図である。
【図6】従来提案されている燃料を触媒燃焼させて発電を行なう装置の一例を示す概要図である。
【符号の説明】
【0047】
62 天然ガス加圧用コンプレッサ(コンプレッサ)
63 蒸気タービン
64 タービン軸
65 発電機
66 天然ガス(メタン含有ガス)
68 ATR
74 合成ガス
75 合成ガスライン
76 ボイラ
77 閉ループ
78 ボイラ水
78a 蒸気
78b 過熱蒸気
79 コンデンサ
80 ポンプ
81 スーパヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン含有ガスの加圧を行なうコンプレッサと発電機を蒸気タービンのタービン軸上に同軸に接続し、上記コンプレッサの出口側にATRを設け、該ATRの出口側にボイラを備えた合成ガスラインを接続して、上記ボイラにてATRより送出される合成ガスより熱回収して発生される蒸気を、上記蒸気タービンに導いて駆動させることにより上記コンプレッサ及び発電機を駆動できるようにしてなる構成を有することを特徴とする合成ガス製造兼発電装置。
【請求項2】
蒸気タービンの入口側と出口側に、該蒸気タービンの出口側より排出される蒸気を復水させるコンデンサと、復水されたボイラ水を昇圧するポンプと、合成ガスライン上のボイラを順に経る閉ループを接続するようにした請求項1記載の合成ガス製造兼発電装置。
【請求項3】
メタン含有ガスの加圧を行なうコンプレッサと発電機を蒸気タービンのタービン軸上に同軸に接続し、上記コンプレッサの出口側にATRを設け、該ATRの出口側にスーパヒータ及びボイラを上流側より順に備えた合成ガスラインを接続して、上記ボイラにてATRより送出される合成ガスより熱回収して発生される蒸気を上記スーパヒータにて過熱してなる過熱蒸気を、上記蒸気タービンに導いて駆動させることにより上記コンプレッサ及び発電機を駆動できるようにしてなる構成を有することを特徴とする合成ガス製造兼発電装置。
【請求項4】
蒸気タービンの入口側と出口側に、該蒸気タービンの出口側より排出される蒸気を復水させるコンデンサと、復水されたボイラ水を昇圧するポンプと、合成ガスライン上のボイラと、スーパヒータを順に経る閉ループを接続するようにした請求項3記載の合成ガス製造兼発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−22687(P2006−22687A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200232(P2004−200232)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】