説明

合金蒸留により窒化物セラミックス粉末を製造する方法

【課題】 できるだけ簡便な工程で、結晶性、純度ともに高い特徴を有する窒化物セラミックス微粉末を提供する。
【解決手段】 N2ガス中で合金を加熱し、合金に含まれる元素を蒸留除去し、それと同時に蒸留除去された元素以外の残留元素とN2ガスとを反応させることにより窒化物セラミックス微粉末を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金蒸留により窒化物セラミックス粉末を製造する方法に関するものであり、さらに詳しくは、セラミックス粉末を構成する元素の雰囲気中で、製造するセラミックス粉末中に含まれる元素と蒸留される元素から成る合金構成元素のうち、一方の金属元素を蒸留すると同時に、蒸留される元素以外の元素と雰囲気ガスとの反応により、窒化物セラミックス粉末を製造する方法に関するものである。なお、本発明は、文部科学省「革新的原子力システム技術開発」公募事業で得られた成果にかかるものである。
【背景技術】
【0002】
現在、実用に供されている窒化物セラミックス材料は、酸化物に炭素を混合したものとN2ガスとの反応で目的とするセラミックス材料を合成し、さらに粉砕して微粉末としたものを成型、焼成して燒結体を製造しているものが多い。この従来の方法である炭素熱還元法(非特許文献1及び2)によると、酸化物から窒化物セラミックス粉末を製造する場合、炭素との混合、仮成型、窒化と工程が複雑になるほか、比較的高い反応温度を要する。
【非特許文献1】Bardelle, -P., Bernard, -H., "CEA, 75-Pasris", CEA, P.12 (1987)
【非特許文献2】Y.Suzuki, Y. Arai, "Journal of Alloys and Compounds", Elsevier, Vol. 271-273(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題点に鑑み、本発明は、できるだけ簡便な工程で、結晶性、純度ともに高い特徴を有する窒化物セラミックス微粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは粉末を製造する過程において、簡便な工程で、良好な結晶性を有する微粉末を得ることを目指して鋭意研究し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、N2ガス中で合金を加熱し、合金に含まれる元素を蒸留除去し、それと同時に蒸留除去された元素以外の残留元素と、N2ガスと反応させることにより窒化物セラミックス微粉末を製造する方法である。
【0005】
本発明で得られた窒化物セラミックス微粉末は、結晶性、純度共に満足できるものであった。これは、蒸留の進行に伴い合金中の金属元素の活量及び表面積が増大するとともに、気相との反応を促進するような触媒効果が起こるためであると考えられる。以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、合金に含まれる元素を蒸留除去した後に残される元素としては、Pu、U、Np等がある。又、本発明は、N2ガス中で合金を加熱し、合金に含まれる元素を蒸留除去し、それと同時に蒸留除去された元素以外の残留元素と、N2ガスと反応させることにより窒化物微粉末を製造する方法であるが、その際のN2ガスとの反応温度は、773−1173K(500−900℃)程度である。
これに対し、酸化物とN2ガスとを反応させる場合の反応温度は、1773K1500℃)程度であり、より高温を使用することになる。以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
Puを12wt%含むPuCd合金をN2雰囲気中で973K(700℃)に加熱し、Cdをほぼ100%蒸留すると同時にPuNを得た。X線回折試験の結果によると、得られたPuNは、従来技術から得られるものに比較して、結晶性に優れた高純度の微粉末であった。
【0008】
973K(700℃)という温度は、一般的に用いられている酸化物粉末を原料とするPuNの合成温度に比較して約800K(800℃)低い上に、反応時間も短く数時間の加熱により窒化反応が完結した。
[発明の効果]
【0009】
以上の説明のとおり、本発明によって、簡便な方法で結晶性に優れた窒化物セラミックス微粉末を製造することができた。本発明の方法で得られた微粉末からセラミックス材料を製造する場合には、成型前の粉砕過程を省略することができる。本発明は、原子力分野に限らず、広く化学工業分野で用いられる窒化物セラミックス材料への応用も可能である。

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
2ガス中で合金を加熱し、合金に含まれる元素を蒸留し、蒸留される元素以外の元素とN2ガスとの反応によって窒化物セラミックス粉末を製造する方法。

【公開番号】特開2006−62895(P2006−62895A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244760(P2004−244760)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000004097)日本原子力研究所 (55)