説明

吊り掛け装置

【課題】 吊り下げ棒が不意に取付ベースから外れるのを防止できるようにして、安全性に優れた吊り掛け装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、天井面に取り付け可能でかつ下方に開口する挿入孔7を有する取付ベース2と、挿入孔7に着脱自在に挿通される段付き軸部12を上端部に有する吊り下げ棒3とを備えた吊り掛け装置1に関する。この吊り掛け装置1は、挿入孔7に挿入された段付き軸部12を吊り下げ棒3の軸心回りに回動させることにより、段付き軸部12の落下を規制する連結位置と、当該段付き軸部12の落下を許容する解除位置とのいずれかに切り替え自在な着脱機構を有する。また、この吊り掛け装置1は、段付き軸部12の軸心回りの相対回動を規制する上方位置と、当該段付き軸部12の軸心回りの相対回動を許容する下方位置のいずれかに切り替え自在な連結機構11を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、物干し竿や観葉植物等を室内の天井から吊り下げて使用する吊り掛け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンションや戸建て住宅等の室内の天井にから吊り下げて使用する吊り掛け装置として、天井面に取り付け可能でかつ下方に開口する挿入孔を有する取付ベースと、挿入孔に着脱自在に挿通される段付き軸部に有する吊り下げ棒とを備えた吊り掛け装置が知られている。
かかる吊り掛け装置では、挿入孔に挿入された段付き軸部を吊り下げ棒の軸心回りに回動させることにより、段付き軸部の落下を規制する連結位置と、当該段付き軸部の落下を許容する解除位置とのいずれかに切り替え自在な着脱機構が、取付ベースの内部に設けられている(特許文献1参照)。
【0003】
従って、上記吊り掛け装置を使用して物干し竿等の物品を吊り下げる場合には、ユーザは、天井面に取り付けられた取付ベースの挿入孔に吊り下げ棒の段付き軸部を挿入し、この状態で吊り下げ棒をその軸心回りに例えば右回りに回動させことにより、吊り下げ棒を取付ベースに対して吊り下げればよい。
また、吊り掛け装置を使用しない場合には、ユーザは、吊り下げ棒をその軸心回りに例えば左回りに回動させて、吊り下げ棒を取付ベースから取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2007−307083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の吊り掛け装置では、吊り下げ棒の段付き軸部がそのシャフト部分と相対回動不能に一体化されているため、例えば子供が吊り下げ棒を勝手に左回りに回動させたり、屋内の風圧変化等による何らかの外力で吊り下げ棒が左回りに回動したりする場合でも、吊り下げ棒が取付ベースから離脱する可能性がある。
このため、子供の悪戯やその他の外的要因により、洗濯物その他の吊り下げ物が不意に落下してしまうことがあり、この点で安全性に問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑み、吊り下げ棒が不意に取付ベースから外れるのを防止できるようにして、安全性に優れた吊り掛け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記した吊り掛け装置において、前記段付き軸部の軸心回りの相対回動を規制する上方位置と、当該段付き軸部の軸心回りの相対回動を許容する下方位置のいずれかに切り替え自在な連結機構が、前記吊り下げ棒に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、吊り下げ棒を取付ベースに対して着脱する場合には、上記連結機構を上方位置にセットしておけばよい。
この上方位置においては、段付き軸部の軸心回りの相対回動が規制されるので、吊り下げ棒を回動することによって段付き軸部を回動させることができる。従って、従来の場合と同様に、吊り下げ棒を取付ベースに着脱することができる。
【0009】
他方、吊り掛け装置を使用するため、吊り下げ棒を取付ベースに吊り下げたままの状態にする場合には、上記連結機構を下方位置にセットしておけばよい。
この下方位置においては、段付き軸部の軸心回りの相対回動が許容されるので、子供の悪戯やその他の外的要因によって吊り下げ棒のシャフト部分が解除方向に回動しても、その回動が段付き軸部に伝達されない。従って、吊り下げ棒が不意に取付ベースから外れるのを未然に防止することができる。
【0010】
本発明において、前記連結機構は、前記吊り下げ棒が吊り下げ状態の時に、その自重によって自動的に下方位置になるものであることが好ましい。
この場合、吊り下げ棒を吊り下げ状態にするだけで自動的に下方位置になるので、ユーザが人為的に連結機構を下方位置にセットしておく必要がなく、吊り掛け装置の使い勝手をより向上させることができる。
【0011】
また、本発明において、前記連結機構は、下方位置の時に、当該連結機構より下方のシャフト部分を揺動自在に支持するものであることが好ましい。
この場合、下方位置の時に、シャフト部分の相対回動が許容されるだけでなく、シャフト部分が揺動自在にもなるので、段付き軸部分が取付ベースから不意に離脱するのをより確実に防止することができる。
【0012】
前記連結機構は、より具体的には、前記段付き軸部と同軸心状に連結された支持筒体と、この支持筒体の下部に回動自在でかつ揺動自在に収納された回動ヘッドと、この回動ヘッドを前記支持筒体内で上昇させることで当該回動ヘッドと前記支持筒体との相対回動を規制する軸方向連結部と、から構成することができる。
【0013】
この場合、前記支持筒体を前記段付き軸部の下端部に同軸心状に直結し、前記軸方向連結部を前記段付き軸部の下端部に一体形成するようにすれば、軸方向連結部と段付き軸部と単一部材で構成することができ、部品点数の増大に伴うコスト増を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の通り、本発明によれば、吊り下げ棒が不意に取付ベースから外れるのを防止できるので、安全性に優れた吊り掛け装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 吊り掛け装置の正面図である。
【図2】 取付ベースの正面断面図である。
【図3】 吊り下げ棒の上端部分の拡大断面図である。
【図4】 吊り下げ棒の下端部分の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔吊り掛け装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る吊り掛け装置の正面図である。また、図2は、同装置を構成する取付ベースの正面断面図である。
本実施形態の吊り掛け装置1は、マンションや戸建て住宅の天井面から吊り下げて使用されるものであり、図1に示すように、天井面に取り付け可能な取付ベース2と、この取付ベース2の中央部に垂下状でかつ着脱自在に連結される吊り下げ棒3とから主構成されている。
【0017】
なお、図例では、吊り掛け装置1がつしか図示されていないが、吊り掛け棒3の下端部に物干し竿(図示せず)を掛ける場合には、天井面における所定間隔をおいた位置に一対の吊り掛け装置1が配置される。
【0018】
〔取付ベースの構成〕
図2に示すように、取付ベース2は、平面視円形状でかつ正面視椀状のケーシング5と、このケーシング5の内部に設けられたスライダ6とを備えている。
ケーシング6は、下面側に開口する挿入孔7を中央部に有し、この挿入孔7に、後述する吊り下げ棒3の段付き軸部12を下から挿脱することができる。スライダ6は、ケーシング6の内部にその直径方向に移動自在に収容されている。
【0019】
スライダ6の下壁部には係脱溝8が形成されている。この係脱溝8は、段付き軸部12が通過し得る幅の拡幅部と、段付き軸部12が通過し得ない幅の幅狭部とを有している。また、スライダ6の側壁部には、段付き軸部12の上端に形成されたギア部18が噛合するラック歯9が形成されている。
図2に示す状態は、スライダ6が、その係脱溝8の拡幅部が挿入孔7と対応する解除位置になっている。
【0020】
この解除位置にあるスライダ6に段付き軸部12を挿通すると、段付き軸部12のギア部18がラック歯9に噛合する。そこで、吊り下げ棒3をその軸心回りの一方(例えば右回り)に回動させると、段付き軸部12が回転し、これによってスライダ6が図2の右側に移動して連結位置となる。
この連結位置では、係脱溝8の幅狭部が段付き軸部12の細径部(首部16)に係合して抜け止めするので、段付き軸部12の落下が規制されるようになっている。
【0021】
なお、図2における符号5Aは、段付き軸部12の上端面に形成した円形孔に嵌合して、当該段付き軸部12をケーシング5の中心部に位置決めする中心ピンである。
しかして、本実施形態では、取付ベース2の内部に設けた上記スライダ6により、挿入孔7に挿入された段付き軸部12を吊り下げ棒3の軸心回りに回動させることで、段付き軸部12の落下を規制する連結位置と、当該段付き軸部12の落下を許容する解除位置とのいずれかに切り替え自在な着脱機構が構成されている。
【0022】
〔吊り下げ棒の構成〕
図1、図3及び図4に示すように、吊り下げ棒3は、伸縮自在な二重シャフト構造のシャフト部材10と、このシャフト部材10の上端側に設けられた連結機構11及び段付き軸部12と、そのシャフト部材10の下端に連結された引っ掛け部13とを有する。
図3に示すように、段付き軸部12は、頭部15、首部16及び胴部17を有する金属製の軸体よりなり、最上の頭部15には前記ラック歯9に噛合するギア部18が形成されている。
【0023】
段付き軸部12の胴部(軸方向連結部)17には、支持筒体19が同軸心状に直結されており、この支持筒体19の下端部はほぼ球面状に湾曲している。
支持筒体19の内部には、回転ヘッド20の球面部21が上下方向に遊びを持った状態で収容されており、この球面部21は、支持筒体19の湾曲形状にほぼ適合する半球状に形成されている。
回転ヘッド20は、、球面部21の下端から支持筒体19の下方に延びる細径部22と、この細径部22の下端に連結された連結軸部23を一体に有しており、この連結軸部23に、シャフト部材10の上端が同軸心状に連結されている。
【0024】
回転ヘッド20の球面部21の上面は平坦になっており、この平坦面の中央部に、断面ほぼ正方形の嵌合凸部24が突設されている。他方、段付き軸部12の胴部17の下端面には、上記嵌合凸部24が係脱自在に嵌合する嵌合凹部25が形成されている。
従って、図3に示すように、嵌合凸部24が嵌合凹部25から離脱する下方位置においては、回転ヘッド20の球面部21は、支持筒体19に対して相対回転が自在でかつ一定の揺動角度で揺動自在である。
【0025】
このように、シャフト部材10の上端部側は、支持筒体19と回転ヘッド20の自在継ぎ手構造により、支持筒体19に対して相対回転かつ揺動自在となっている
これに対して、シャフト部材10を上昇させると、回転ヘッド20の球面部21が支持筒体19の内部で上昇し、嵌合凸部24が嵌合凹部25に嵌合することより、回転ヘッド20の段付き軸部12に対する相対回転が規制される。
【0026】
しかして、上記支持筒体19と回転ヘッド20とにより、段付き軸部12の軸心回りの相対回動を規制する上方位置と、当該段付き軸部12の軸心回りの相対回動を許容する下方位置(図3の状態)のいずれかに切り替え自在な前記連結機構11が、吊り下げ棒3の上端部分に設けられている。
また、この場合の連結機構11は、吊り下げ棒3が吊り下げ状態の時に、その自重によって自動的に下方位置になり、このさい、連結機構11(支持筒体19)より下方のシャフト部分が揺動自在に支持される。
【0027】
図4に示すように、引っ掛け部13は、シャフト部材10の下端に直結されたリング部材27と、このリング部材27の下部に設けられた受けアーム28と、この受けアーム28に対する過負荷を知らせるための荷重指示部29とを有する。
受けアーム28は、リング部材27の枠内部に上下移動自在に設けられている。荷重指示部29は、受けアーム28の中央部から下方に突設された指示軸30と、この指示軸30が上下動自在に挿通されたガイド筒31と、このガイド筒31の内部に介装された圧縮バネ32とを有する。
【0028】
上記圧縮バネ32は、指示軸30を常時上方に付勢しており、受けアーム28への積載荷重に対応して指示軸30下端部の下方突出量が変わるようになっている。
従って、指示軸30の外周面に色分けや目盛りを付けておくことにより、指示軸30の下端部の突出量に応じて、受けアーム28に対する積載荷重をユーザに知らせることができるようになっている。
【0029】
〔吊り掛け装置の使用方法と作用〕
上記構成に係る本実施形態において、吊り掛け装置1を使用するには、ユーザは、天井面に取り付けられた取付ベース2の挿入孔7に吊り下げ棒3の段付き軸部12を挿入したあと、吊り下げ棒3を上方に押し気味して連結機構11を上方位置とし、この状態で、吊り下げ棒3をその軸心回りに例えば右回りに回動させことにより、吊り下げ棒3を取付ベース2に対して吊り下げればよい。
【0030】
また、逆に、吊り掛け装置1を使用しない場合には、ユーザは、吊り下げ棒3を同じく上方に押し気味にして連結機構11を上方位置とし、この状態で、吊り下げ棒3をその軸心回りに例えば左回りに回動させて、吊り下げ棒3を取付ベース2から取り外すようにすればよい。
一方、吊り掛け装置1の使用時には、吊り下げ棒3が取付ベース2に吊り下げられたままの状態となるが、このさい、連結機構11は吊り下げ棒3の自重によって下方位置になっている。
【0031】
この下方位置においては、嵌合凸部24が嵌合凹部25から外れていて(図3の状態)、段付き軸部12の軸心回りの相対回動が許容されるので、子供の悪戯やその他の外的要因で吊り下げ棒3のシャフト部分(支持筒体19よりも下方のシャフト部分)が解除方向に回動しても、その回動が段付き軸部12に伝達されない。
従って、本実施形態の吊り掛け装置1によれば、吊り下げ棒3が不意に取付ベース2から外れるのを未然に防止することができる。
【0032】
〔変形例〕
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、連結機構11を吊り下げ棒3の上端側に設けているが、吊り下げ棒3の長手方向中途部であれば、特に取付位置が限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
1:吊り掛け装置 2:取付ベース 3:吊り下げ棒 7:挿入孔
10:シャフト部材 11:連結機構 12:段付き軸部
17:胴部(軸方向連結部) 19:支持筒体 20:回転ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面に取り付け可能でかつ下方に開口する挿入孔を有する取付ベースと、前記挿入孔に着脱自在に挿通される段付き軸部を上端部に有する吊り下げ棒とを備えた吊り掛け装置であって、
前記挿入孔に挿入された前記段付き軸部を前記吊り下げ棒の軸心回りに回動させることにより、前記段付き軸部の落下を規制する連結位置と、当該段付き軸部の落下を許容する解除位置とのいずれかに切り替え自在な着脱機構が、前記取付ベースの内部に設けられ、 前記段付き軸部の軸心回りの相対回動を規制する上方位置と、当該段付き軸部の軸心回りの相対回動を許容する下方位置のいずれかに切り替え自在な連結機構が、前記吊り下げ棒に設けられていることを特徴とする吊り掛け装置。
【請求項2】
前記連結機構は、前記吊り下げ棒が吊り下げ状態の時に、その自重によって自動的に下方位置になる請求項1に記載の吊り掛け装置。
【請求項3】
前記連結機構は、下方位置の時に、当該連結機構より下方のシャフト部分を揺動自在に支持する請求項1又は2に記載の吊り掛け装置。
【請求項4】
前記連結機構は、前記段付き軸部と同軸心状に連結された支持筒体と、この支持筒体の下部に回動自在でかつ揺動自在に収納された回動ヘッドと、この回動ヘッドを前記支持筒体内で上昇させることで当該回動ヘッドと前記支持筒体との相対回動を規制する軸方向連結部と、有する請求項1〜3のいずれかに記載の吊り掛け装置。
【請求項5】
前記支持筒体は前記段付き軸部の下端部に同軸心状に直結され、前記軸方向連結部は前記段付き軸部の下端部に一体形成されている請求項4に記載の吊り掛け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−284488(P2010−284488A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160205(P2009−160205)
【出願日】平成21年6月14日(2009.6.14)
【出願人】(000140306)株式会社奥田製作所 (50)
【Fターム(参考)】