説明

吊掛装置

【課題】本発明は、支持具の厚さを薄くして、天井に取り付けた場合に極力目立たないようにすることを課題としている。
【解決手段】支持具1は、基体2の中に、抜止具4、伝達具5及び振り分けばね6を内蔵している。抜止具4は基体2に摺動可能に、伝達具5は基体2に回動可能に設けられる。吊掛具8は、上端部に、伝達具5を回動する駆動部24を設け、下端部に引掛部21を設けてあり、その間にクラッチ部25を設けてある。クラッチ部25は、吊掛具8が支持具1に吊り下げられていると、動力が遮断された状態で、吊掛具8の駆動部24が伝達具5を回動する時は、動力が連結された状態になる。吊掛具8によって伝達具5が回動させられると、抜止具4が摺動して吊掛具8は支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、室内の天井に取り付けて、物干具や観葉植物や絵画等を吊り下げて使用する吊掛装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、前述のような吊掛装置として特開平6−121725号公報に記載された発明が提案されている。この従来例においては、吊掛具の駆動部と支持具の係合部は、着脱の操作時には係合すると共に、使用時には、係合が外れて十分離れていなければならないものである。
【0003】
なぜなら、使用時において、吊掛具の駆動部と支持具の係合部が係合していると、吊り下げられている吊掛具に洗濯物が吊り下げられている状態で、人や風が洗濯物に当たって、洗濯物を回転する力が加わった時に、吊掛具が回動することがあり、そうすると駆動部が係合部を介して伝達具を回動し、抜止具を開放する方向に摺動して、吊掛具が落下してしまうことがあるためである。また、吊掛具の駆動部と支持具の係合部が係合していなくても、十分離れていない場合には、吊掛具が揺動した時に係合して、上記と同様に、吊掛具が落下してしまうことがある。
【0004】
吊掛具の駆動部と支持具の係合部が離れていなければならない距離について説明する。
駆動部と係合部との係合量(厚さ方向の量)は、小さすぎると、繰り返しの使用で回動できなくなってしまったり、少しでも斜め状態で係合すると回動できなかったりするため、ある程度の寸法が必要である。また、駆動部と係合部との係合が外れている使用時には、吊掛具が揺動しても駆動部と係合部が係合しないように、係合部の下端面から駆動部の上端面までの隙間が必要である。
従って、吊掛具の駆動部と支持具の係合部が、使用時に離れていなければならない距離は、係合部の厚さ方向の量と、上記の隙間量を加えた寸法となり、かなり大きいものである。
【特許文献1】特開平6−121725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
天井に取り付ける支持具は、美観を損なわないようにするために、なるべく薄いデザインのものが求められているのが現状であるが、上記のように従来例においては、吊掛具の駆動部と支持具の係合部が、使用時に離れていなければならない距離は大きいものであり、支持具の中には吊掛具の駆動部が上下するための大きなスペースが必要であり、支持具の厚さが厚くなってしまうという問題がある。
【0006】
また、薄く見せるために、わざわざ天井に孔を開けて埋め込む方法もあるが、工事する手間やコストが増えてしまうという問題がある。
本発明は、支持具の厚さを薄くしても、使用中に吊掛具が落下してしまう危険がないようにすること、また、天井に孔を開けて埋め込む必要がないようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、支持具と吊掛具を有し、支持具は、挿入孔を設けた基体の中に可動の抜止具と、係合部を設けた伝達具とを有し、抜止具は、伝達具によって動かされて挿入孔の一部を閉塞する閉塞部を有して成り、吊掛具は、引掛部を設けると共に、一端部に、挿入孔から挿入可能な挿入部を設け、挿入部には、伝達具の係合部に係合させて回動することによって伝達具を動かすことができる駆動部を設けて成り、駆動部が伝達具を介して抜止具を動かし、閉塞部が挿入孔の一部を閉塞することによって挿入部を抜け止めして吊掛具を支持する吊掛装置において、吊掛具にはクラッチ部を設けて、吊掛具の駆動部と引掛部との回動する動きを間接的に連結及び遮断することができるように成し、支持具に吊掛具を支持させて吊下して引掛部に荷重がかかった状態では、クラッチ部は遮断されるようにすると共に、駆動部を伝達具の係合部に押し当てて係合させた状態では、クラッチ部は連結されるように構成し、駆動部を伝達具の係合部に押し当てて係合させて着脱操作をする時は、駆動部も共に回動して伝達具を動かすことができ、支持具に吊掛具を支持させて吊下して引掛部に荷重がかかった時は、駆動部が回動せずに引掛部だけが回動できるようにして成るものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明によれば、吊掛具の駆動部と支持具の係合部とを常に係合させておいたとしても、あるいは、その係合を外して少ししか離れていなかったとしても、吊掛具を支持具に支持させて引掛部に何かかけてある使用時には、クラッチ部は遮断しており、吊掛具の引掛部が回動した場合に、駆動部は回動することがなく、抜止具を開放する方向に摺動させることがない。
【0009】
従って、吊掛具の駆動部と支持具の係合部とを常に係合させておいてもいいし、あるいは、その係合を外して離す距離を極めて小さくしてもよく、支持具内で吊掛具の駆動部が上下するスペースを極めて小さくすることができ、支持具の厚さを薄くして、天井に取り付けた場合に極力目立たないようにすることができ美観を損なうことがないという効果がある。
【0010】
また、支持具の厚さを薄くすることができるので、天井に孔を開けて埋め込む必要がなく、工事する手間やコストが増えることがないという効果もある。
【実施例1】
【0011】
支持具1は、上方が開口する有底円筒状の円筒部9の周縁に鍔部10を有し、鍔付き帽子を上下逆にしたような形状の基体2の中に、抜止具4、伝達具5及び振り分けばね6を内蔵し、裏面に蓋体3を被せ、表面にカバー7を被せて成るものである。
【0012】
基体2の円筒部9には、底板の内面に直線溝の誘導部12を設け、この誘導部12の中央に円形の貫通孔の挿入孔11を設けてある。鍔部10には、2箇所に取付孔13・13を設け、その中間に三角形状の凹部30を設けてある。基体2には、取付孔13・13に挿通する取付ねじを隠して美観を向上させるために、カバー7を被せるようになっている。
【0013】
抜止具4は、中央側を円弧状に切り欠いて閉塞部14を形成し、反対側には上方に突出する受動部15を設けてあり、2つを一組として基体2の誘導部12に、それぞれの閉塞部14・14を対向するように、摺動可能に設けられる。
【0014】
伝達具5は、略円板状で、基体2の中に回動可能に収容され、一面側(下面側)に楕円形状溝の案内部18を設けると共に、その中央に略半球形状の挿入凹部16を設け、挿入凹部16の上部内面を六角形にして係合部17を設けてある。また、挿入凹部16の底面は貫通している。
【0015】
また、伝達具5の他面側(上面側)には、一部切り欠いて一段低い面を形成してあり、そこに突起31を設け、振り分けばね6の一端が取り付けられるようになっている。この振り分けばね6は、他端が基体2の三角形状の凹部30の頂部に挿入されて係合され、伝達具5を回動した時、中間点を境にして振り分けるものである。
【0016】
一対の抜止具4・4の受動部15・15は伝達具5の案内部18に係合するようになっており、伝達具5が回動すると、案内部18と受動部15・15の係合により、抜止具4・4は摺動され、閉塞部14・14が基体2の挿入孔11の一部を閉塞したり、開口したりするようになっている。
【0017】
吊掛具8は、シャフト19の一端にばね22が取り付けられ、その先端にクラッチ部25を介して頭体20を設け、他端にリング状の引掛部21を設けてある。頭体20の上端部には、略半球形状の挿入部23を設け、下端には略円筒状の収納部32を設け、その底面に断面六角形孔の従動部29を設けてある。挿入部23の上部には、外形形状が六角形の駆動部24を形成してある。この駆動部24は、伝達具5の係合部17と係脱するものである。
【0018】
シャフト19は、パイプに棒部材を挿入してあり、伸縮できるようになっている。なお、引掛部21は端部ではなく、シャフト19の中間に設けてもよい。
【0019】
クラッチ部25について説明する。
原動体26は、中間に鍔状部を形成した略円筒状で、軸ねじ27で頭体20に上下動可能に取り付けられて、その上部を収納部32に収納されていると共に、その下部を、ばね22の先端に固定されている。そして、この原動体26は、上端部に、外形形状が六角形の原動部28を設けてあり、この原動部28が上下動して頭体20の従動部29に係合及び離脱して、頭体20とシャフト19上端の原動体26の回動する動きを連結及び遮断するようになっている。頭体20と原動体26の回動する動きを連結及び遮断することは、吊掛具8の駆動部24と引掛部21との回動する動きを間接的に連結及び遮断するということである。
【0020】
このクラッチ部25は、吊掛具8を支持具1に支持させた時には、その自重で原動体26が軸ねじ27の頭部にワッシャーを介して当接するまで下降し、原動部28が従動部29から遮断されて、吊掛具8の駆動部24と引掛部21との回動する動きを間接的に遮断すると共に、引掛部21を持って吊掛具8を持ち上げて駆動部24を係合部17に押し当てて係合させた時には、原動体26が上昇し、原動部28が従動部29と連結され、吊掛具8の駆動部24と引掛部21との回動する動きを間接的に連結するようになっている。
【0021】
なお、このクラッチ部25は、吊掛具8を支持具1に支持させた時(引掛部21に何もかかっていない状態)には、弱いばねでその自重に抗して原動体26が上昇して、原動部28が従動部29に連結しており、引掛部21に洗濯物等を掛けた時に、その弱いばねに抗して原動体26が軸ねじ27の頭部にワッシャーを介して当接するまで下降し、原動部28が従動部29から遮断されるようにしてもよい。
【0022】
支持具1を組み立てるには、抜止具4・4を、支持具1の基体2の誘導部12に、受動部15・15を上向きに、閉塞部14・14を対向するようにして(基体2の挿入孔11は開口している状態に)配設し、受動部15・15が案内部18に係合するように、伝達具5を被せ、伝達具5の突起31に振り分けばね6を取り付け、その先端を基体2の凹部30に係合させ、蓋体3を被着し、天井等に取付ねじで取り付け、最後にカバー7を被着する。
【0023】
吊掛具8の挿入部23を基体2の挿入孔11から伝達具5の挿入凹部16に挿入し、駆動部24を係合部17に押し当てて係合させると、上述のようにクラッチ部25が吊掛具8の駆動部24と引掛部21との回動する動きを間接的に連結し、右に90度回転させると、伝達具5の案内部18が抜止具4・4の受動部15・15を動かすので、抜止具4・4は誘導部12に沿って中央(内側)に向かって摺動し、その閉塞部14・14が挿入孔11の一部を閉塞する。閉塞された挿入孔11は挿入部23の直径よりも小さくなり、駆動部24を係合部17から外して、吊掛具8を下ろすと、挿入部23が閉塞部14・14に抜け止めされ、吊掛具8は支持具1に支持される(図1、図2及び図7の状態)。
【0024】
この状態では、駆動部24と係合部17は、多少隙間があってぴったりと係合してはいないが共に回動できる状態であり、係合している状態ということができるものであるが、クラッチ部25が駆動部24と引掛部21との回動する動きを間接的に遮断しており、引掛部21に洗濯物等を吊り下げて、風等で洗濯物等を回転する力が加わった時にも、駆動部24は回動せず、吊掛具8が落下してしまうことはない。
【0025】
なお、従来例のようにクラッチ部がない吊掛具であると、駆動部と係合部の係合を外す距離と、さらにそこから十分に離す隙間距離を加えた寸法を下げなければならず、この実施例では、従来例に比べて、支持具をかなり薄くすることができる。
【0026】
また、駆動部24と係合部17は係合している状態ではあるが、係合部17が凹球面状になっているので、吊掛具8は、360度どの方向にも一定角度揺動することができるようになっている。吊掛具8は、一定角度以上揺動すると、ばね22が曲がって緩衝するようになっており、吊掛具8に揺動する方向に力がかかった場合でも、支持具1や吊掛具8が容易に壊れないようになっている。そして、吊掛具8が支持具1に支持された状態で引掛部21に物干具や観葉植物や絵画等を吊り下げて使用したり、間隔を離して2つ取り付けて引掛部21・21に物干竿を掛け渡して使用するものである。
【0027】
不使用時は、引掛部21を持って吊掛具8を持ち上げ、挿入部23の駆動部24を係合部17に押し当ててぴったりと係合させると、同様にクラッチ部25が吊掛具8の駆動部24と引掛部21との回動する動きを間接的に連結し、左に90度回転させると、伝達具5の案内部18が抜止具4・4の受動部15・15を動かすので、抜止具4・4は誘導部12に沿って外側に向かって摺動し、その閉塞部14・14が挿入孔11から後退し、挿入孔11の全体が開口し、吊掛具8の挿入部23を抜き外すことができる状態となる(図5、図6及び図8の状態)。
【0028】
吊掛具8に吊り下げられている洗濯物等の重さ等で、挿入部23の下部の球形の形状により、抜止具4・4が開放する方向(外側方向)に力を受けても、抜止具4・4の受動部15・15は、伝達具5の略楕円状の案内部18に係合しているので、容易に吊掛具8は抜け落ちることはない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】使用状態を示す断面図。
【図2】図1のA−A線断面図(挿入孔の一部が閉塞している状態の横断面図。ただし吊掛具の挿入部は図示していない。)。
【図3】要部の分解斜視図。
【図4】要部の分解斜視図。
【図5】挿入孔の全体が開口し、吊掛具を支持具から抜き外せる状態の断面図。
【図6】図5のB−B線断面図(挿入孔の全体が開口している状態の横断面図。ただし吊掛具の挿入部は図示していない。)。
【図7】蓋体を外した状態の支持具の平面図(挿入孔の一部が閉塞している状態)。
【図8】蓋体を外した状態の支持具の平面図(挿入孔の全体が開口している状態)。
【符号の説明】
【0030】
1 支持具
2 基体
4 抜止具
5 伝達具
8 吊掛具
11 挿入孔
14 閉塞部
17 係合部
21 引掛部
23 挿入部
24 駆動部
25 クラッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持具と吊掛具を有し、支持具は、挿入孔を設けた基体の中に可動の抜止具と、係合部を設けた伝達具とを有し、抜止具は、伝達具によって動かされて挿入孔の一部を閉塞する閉塞部を有して成り、吊掛具は、引掛部を設けると共に、一端部に、挿入孔から挿入可能な挿入部を設け、挿入部には、伝達具の係合部に係合させて回動することによって伝達具を動かすことができる駆動部を設けて成り、駆動部が伝達具を介して抜止具を動かし、閉塞部が挿入孔の一部を閉塞することによって挿入部を抜け止めして吊掛具を支持する吊掛装置において、吊掛具にはクラッチ部を設けて、吊掛具の駆動部と引掛部との回動する動きを間接的に連結及び遮断することができるように成し、支持具に吊掛具を支持させて吊下して引掛部に荷重がかかった状態では、クラッチ部は遮断されるようにすると共に、駆動部を伝達具の係合部に押し当てて係合させた状態では、クラッチ部は連結されるように構成し、駆動部を伝達具の係合部に押し当てて係合させて着脱操作をする時は、駆動部も共に回動して伝達具を動かすことができ、支持具に吊掛具を支持させて吊下して引掛部に荷重がかかった時は、駆動部が回動せずに引掛部だけが回動できるようにしたことを特徴とする吊掛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−325867(P2007−325867A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161457(P2006−161457)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000148070)株式会社川口技研 (48)
【Fターム(参考)】