説明

同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動装置及び方法

【課題】温度等の変化にともなう共振周波数の変化、給電側と受電側のアンテナコイルの相対位置の変化、等があっても、非接触電力伝送の効率を自動的に高く維持することができる同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動装置及び方法を提供する。
【解決手段】同一負荷パターンにおける非接触電力伝送装置40の1次側電力量Wを計算する電力量演算器81と、非接触電力伝送装置のパラメタ(給電側の発振周波数)を複数の値に変化させ、各パラメタにおける1次側電力量を比較し、1次側電力量を最小にするパラメタを選択して、非接触電力伝送装置40に指令するパラメタ選択・指令器83とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、非接触電力伝送装置によって電力供給されるモータで駆動され、同一負荷パターンを有する装置を対象とする。以下、かかる装置を「同一負荷パターン装置」と呼ぶ。
なお、同一負荷パターン装置は、無人搬送台車等の移動体上に設置された搬送装置、物流装置などの産業用装置を主に想定するが、それらには限定されない。
【0003】
上述した同一負荷パターン装置における損失量は、非接触電力伝送装置のパラメタ、例えば非接触電力伝送装置の発振周波数により変化する。
ここで「損失量」とは、非接触電力伝送装置による給電電力とモータ出力との差、すなわち、非接触電力伝送装置からモータに到る電気回路およびモータ内部の磁気回路において発熱や電磁放射の形で失われる仕事量を意味する。
【0004】
非接触電力伝送装置における伝送効率を高める手段として、例えば特許文献1〜6が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−225551号、「電力伝送システム」
【特許文献2】特開2008−236916号、「非接触電力伝送装置」
【特許文献3】特開2010−158151号、「非接触電力伝送装置」
【特許文献4】特開2010−141977号、「非接触電力伝送装置における電力伝送方法及び非接触電力伝送装置」
【特許文献5】特開2010−130878号、「非接触電力伝送装置」
【特許文献6】特開2010−141976号、「非接触電力伝送装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1〜6は、「同一負荷パターン」を対象としていなかった。
そのため、非接触電力伝送装置を構成する給電用アンテナコイルと受電用アンテナコイルの相対位置が変動した場合、例えば、無人搬送台車等の移動体が停止したときに非接触で電力伝送する場合に、停止するごとに停止位置が変動するような場合の影響は補償できず、電力伝送の効率が低下する問題点があった。
【0007】
また、非接触電力伝送装置は、温度変化によっても電力伝送の効率が低下する問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、温度等の変化にともなう共振周波数の変化、給電側と受電側のアンテナコイルの相対位置の変化、等があっても、非接触電力伝送の効率を自動的に高く維持することができる同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、非接触電力伝送装置によって電力供給されるモータで駆動され、同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動装置であって、
前記同一負荷パターンにおける非接触電力伝送装置の1次側電力量を計算する電力量演算器と、
非接触電力伝送装置のパラメタを複数の値に変化させ、各パラメタにおける前記1次側電力量を比較し、該1次側電力量を最小にするパラメタを選択して、非接触電力伝送装置に指令するパラメタ選択・指令器と、を備える、ことを特徴とする同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動装置が提供される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記負荷パターンのサイクル開始信号とサイクル終了信号を出力する指令値生成器を備える。
【0011】
前記非接触電力伝送装置のパラメタは、給電側の発振周波数である、ことが好ましい。
【0012】
また本発明によれば、非接触電力伝送装置によって電力供給されるモータで駆動され、同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動方法であって、
非接触電力伝送装置のパラメタを複数の値に変化させ、
前記各パラメタにおける前記同一負荷パターンによる非接触電力伝送装置の1次側電力量を計算し、
各パラメタにおける前記1次側電力量を比較し、該1次側電力量を最小にするパラメタを選択して、非接触電力伝送装置に指令する、ことを特徴とする同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の装置及び方法によれば、電力量演算器とパラメタ選択・指令器とを備え、非接触電力伝送装置のパラメタを複数の値に変化させ、各パラメタにおける同一負荷パターンによる非接触電力伝送装置の1次側電力量を計算して比較し、該受電電力量を最小にするパラメタを選択して、非接触電力伝送装置に指令するので、温度等の変化にともなう共振周波数の変化、給電側と受電側のアンテナコイルの相対位置の変化、等があっても、非接触電力伝送の効率を自動的に高く維持することができる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による省電力駆動装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態が対象としている同一負荷パターン装置の作動説明図である。
【図3】第1実施形態によるパラメタ選択・指令器83の作動説明図である。
【図4】100サイクルごとにパラメタの探索・決定をやり直す例を示す図である。
【図5】複数の動作パターンを有する装置において、パラメタの探索・決定をやり直す例を示す図である。
【図6】本発明による省電力駆動装置の第2実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明による省電力駆動装置の第1実施形態を示す図である。
【0017】
この図において、11は外部電源であり、電力会社から供給される電源や、自家発電装置である。外部電源11は、この実施形態では3相交流を供給すると仮定するが、単相交流など他の形態の電源でもよい。
13はコンバータであり、外部電源11から供給される電力を直流に変換して非接触電力伝送装置40に供給する。コンバータ13は、この実施形態ではダイオードブリッジを仮定するが、位相制御により電圧可変なサイリスタブリッジや、パワーMOSFETやIGBTなどの電力制御素子を用いたブリッジでもよい。
【0018】
19はインバータであり、非接触電力伝送装置40からモータ21へ流れる電流・電圧を制御し、モータ21が所望のトルクを発生するようにする。インバータ19は、この実施形態では電圧型インバータを仮定するが、電流型インバータでもよい。電流型インバータの場合、非接触電力伝送装置の出力のキャパシタの代わりにリアクトルを用いる。
また、インバータ19は、この実施形態では、モータ21の正逆回転、力行・回生が可能な4象限駆動のインバータを仮定するが、機械負荷23(同一負荷パターン装置)の特性および動作によっては、回転方向が一方向のみ、もしくは力行のみが可能なインバータでもよい。
【0019】
21はモータであり、インバータ19とモータ21の組み合わせにより、制御器27から入力されるトルク指令値に追従してモータ21がトルクを発生する。
モータ21は、この実施形態では、3相誘導モータないし3相永久磁石同期モータを仮定するが、インバータとの組み合わせでトルク・回転速度が可変であれば、他の形式のモータでもよい。
【0020】
23は機械負荷、すなわち同一負荷パターン装置であり、モータ21により駆動される。
25はモータエンコーダであり、モータ21の回転位置(角度)を測定する。モータエンコーダ25として、光学式や磁気式のロータリーエンコーダやレゾルバが用いられる。なお、制御器27が速度制御を行う場合には、モータ21の回転速度(角速度)を測定すればよい。この場合、ロータリーエンコーダやレゾルバで測定した回転位置を時間微分してもよいし、タコメータのように回転速度を直接測定してもよい。
【0021】
27は制御器であり、インバータ19、モータ21、モータエンコーダ25、制御器27でフィードバックループを構成し、モータ21が指令値生成器29からの指令値に追随するよう制御する。
制御器27は、この実施形態では、位置制御を仮定するが、速度制御でもよい。制御器内部の演算手法としては、PID(Proportional Integral Derivative)制御やI−PD(Integral Proportional Derivative)制御などが多く用いられるが、その他の制御手法を用いてもよい。制御性を改善するためのフィードフォワード演算を組み合わせてもよい。制御器27は、DSP(Digital Signal Processor)やマイコンを用いたプログラマブル装置もしくはアナログ回路もしくはそれらの組み合わせにより実現可能である。
【0022】
29は指令値生成器であり、それぞれの時刻において、モータ21が追随すべきモータ回転角度指令値Acを制御器27へ出力する。モータ回転角度指令値Acの伝送には、90度位相がずれた2相パルス列による伝送や、各種通信ネットワークによる伝送が用いられる。モータ21の回転角と機械負荷23は機械的に連動しているので、モータ21の回転角度を指令することは、機械負荷23の位置を指令することと同じ意味である。
【0023】
指令値生成器29は、半導体メモリのような記憶装置を有するDSPやマイコンを用いたプログラマブル装置により実現可能である。
【0024】
40は非接触電力伝送装置であり、直流を入力および出力として、給電側から受電側へ電力を非接触で伝送する。
図1において、非接触電力伝送装置40は、給電側回路と受電側回路からなる。
給電側回路は、この例では、給電用アンテナコイル41、発振回路43、駆動クロック生成回路44、ドライバ制御回路45、及びドライバ46からなる。
受電側回路は、この例では、受電用アンテナコイル42、コンデンサC1及び4つの整流ダイオードからなる整流回路47、及び平滑コンデンサC2からなる。受電用アンテナコイル42とコンデンサC1は、共振回路を形成している。
【0025】
給電用アンテナコイル41には、発振回路43、駆動クロック生成回路44、ドライバ制御回路45、及びドライバ46から任意の周波数(発振周波数)の信号が供給される。
給電用アンテナコイル41に任意の周波数(発振周波数)の信号が供給されると、電磁結合により、受電用アンテナコイル42の両端には誘起電圧が発生し、この誘起電圧は、整流回路47を介して平滑コンデンサC2に蓄電されて、平滑された直流電圧となり、インバータ19へ供給される。
【0026】
給電側回路の発振回路43は、例えば所望の周波数からなるパルスを発生する回路である。この発振回路43の発振動作の制御は、パラメタ選択・指令器83が行うようになっている。
駆動クロック生成回路44は、発振回路43の出力に基づいて所定の周波数の駆動クロックを生成する回路であり、その周波数の制御は、パラメタ選択・指令器83が行うようになっている。
ドライバ制御回路45は、駆動クロック生成回路44が生成する駆動クロックに基づいてドライバ46を動作する信号を生成し、ドライバ46に出力する。
ドライバ46は、複数の増幅器とコンデンサC3とからなり、直列共振回路を駆動する回路である。
【0027】
発振回路43が発信周波数指令値に応じた周波数で発振するようにする手段として、以下のような手段がある。
(1)発振周波数よりはるかに高い周波数を有する水晶発振器の出力を、デジタルカウンタで分周する。カウンタがカウントアップする値を変えることにより発振周波数を変えることができる。
(2)デジタルPLLで発振回路を構成し、PLLの分周カウンタのカウントアップ値を変える。
(3)アナログ発振回路とし、電圧で容量が変わるバリキャップ等の素子を用いて構成する。
【0028】
50は無線信号伝送装置であり、送信側の無線信号伝送装置52と受信側の無線信号伝送装置54とからなる。非接触電力伝送のメリットを生かすため、給電側と受電側との間で信号伝送用のケーブル接続も無くし、サイクル開始信号Cs・サイクル終了信号Ceを無線で伝送する。無線LANなど電波による伝送方式や、非接触電力伝送の動作時に、信号伝送用の発光素子と受光素子が対向するように配置しておいて光を変調して伝送する方式などがある。
【0029】
61は電圧測定器であり、63は電流測定器である。電圧測定器61と電流測定器63は、非接触電力伝送装置40へ流入する電力量を計算するため、それぞれ電圧と電流を測定し、電圧測定値V(t)と電流測定値I(t)を電力量演算器81へ出力する。電圧測定値V(t)、電流測定値I(t)の伝送には、電圧振幅や電流振幅としてアナログ伝送する手段や、各種通信ネットワークを用いてデジタル伝送することが可能である。
電圧測定器61で測定される時刻tにおけるマイナス側に対するプラス側の電圧をV(t)と記す。また電流測定器63で測定される時刻tにおける直流のプラス側を図中で左から右へ流れる電流をI(t)と記す。電流測定値が負の値の場合、電流が図中で右から左へ流れることを示す。
【0030】
81は電力量演算器であり、1サイクルの電力量Wを演算する。すなわち、電圧測定値V(t)と電流測定値I(t)を乗算した値を、サイクル開始信号Csが入力された時点からサイクル終了信号Ceが入力される時間まで時間積分して出力する。1サイクルの電力量Wの伝送には、電圧振幅や電流振幅としてアナログ伝送する手段や、各種通信ネットワークを用いてデジタル伝送することが可能である。
電力量演算器81は、DSPやマイコンを用いたプログラマブル装置もしくはアナログ電子回路もしくはそれらの組み合わせにより実現可能である。
電力量演算器81は、以下のような演算を行う。
時刻tにおける電力P(t)は電圧と電流の積であり、式(1)であらわされる。ここで、P(t)が正の値であれば電力が図中の左から右へ、P(t)が負の値であれば電力が図中の右から左へ流れることを示す。
P(t)=V(t)×I(t)・・・(1)
【0031】
1サイクルの電力量Wは、電力の時間積分なので、そのサイクルに対するサイクル開始信号の時刻をT1、サイクル終了信号の時刻をT2と書けば、数1の式(2)であらわされる。
【0032】
【数1】

【0033】
電力量演算器81での演算が時間ΔT周期で行われるとすれば、式(2)を差分化し、時刻T1から時刻T2までV(t)×I(t)×ΔTを積算すれば、1サイクルの電力量Wとなる。すなわち、サイクル終了時点において、そのサイクルに対する1サイクルの電力量を出力可能である。
以上の説明のように、電流測定値と電力に負の値も許容することにより、1サイクル中で力行と回生が混在している場合にも本発明は適用可能となる。すなわち、電力の正、負が、それぞれ力行、回生に相当する。
【0034】
83はパラメタ選択・指令器であり、損失量に影響するパラメタの値を指令するとともに、各サイクルにおける1サイクルの電力量にもとづいて、適切なパラメタの値を選択する。この実施形態では、パラメタは非接触電力伝送装置の発振周波数であり、パラメタ選択・指令器83は、発振周波数指令値Fを発信回路43へ出力する。パラメタ選択・指令器83は、DSPやマイコンをもちいたプログラマブル装置により実現可能である。
【0035】
図2は、第1実施形態が対象としている同一負荷パターン装置の作動説明図である。
本発明は同一負荷パターンで繰り返し運転される装置(同一負荷パターン装置)を対象としているので、この実施形態において、図に示すように、モータ回転角度指令値Acはサイクル(繰り返される同一パターン)を有し、サイクルの開始時点と終了時点において、指令値生成器29はサイクル開始信号Csとサイクル終了信号Ceをそれぞれ出力するものとする。
【0036】
図2において、C1、C2、C3がそれぞれサイクルを示している。サイクルとサイクルの間では、任意の指令値、たとえば機械負荷23を停止させておくような指令値や機械負荷23を手動操作にしたがって動作させるための指令値を出力してかまわないが、本発明の動作には関係しないので、以下の説明においては単純化のため、サイクルとサイクルの間では機械負荷23を停止させておくような指令値を出力するものとする。
なお、この図ではサイクル開始信号Cs、サイクル終了信号Ceはパルス信号としたが、サイクル開始を信号の立上がりエッジで、サイクル終了を信号の立下りエッジで示すようにするなど、他の信号波形でもよい。
また、制御器27が速度制御を行う場合には、指令値生成器29はモータ回転速度指令値を出力するようにすればよい。
【0037】
図3は、パラメタ選択・指令器83の作動説明図である。
パラメタ選択・指令器83により、損失を小さくするパラメタを探索・決定するための手順は以下のようになる。
パラメタ選択・指令器83は、1サイクルごとに異なる発振周波数指令値Fを出力する。サイクル終了時点において、電力量演算器81から各サイクルに対する1サイクルの電力量Wが出力されるので、パラメタ選択・指令器83の内部に記憶しておく。パラメタ選択・指令器83は、記憶した1サイクルの電力量Wを比較し、もっとも電力量が小さくなる発振周波数指令値Fを、以降の発振周波数指令値Fとして出力する。
【0038】
例として、図3に示すように、5サイクル(図中、C1、C2、C3、C4、C5)のそれぞれに発振周波数指令値FをF1、F2、F3、F4、F5に変化させたとし、それぞれのサイクルにおける1サイクルの電力量がW1、W2、W3、W4、W5であったとする。W1、W2、W3、W4、W5を記憶しておき、サイクル5(図中、C5)が終了した時点で比較し、W4がもっとも小さかったとすると、W4に対応する発振周波数指令値F4がもっとも損失を小さくする発振周波数指令値ということがわかる。そこで、パラメタ選択・指令器83は、以降、発振周波数指令値としてF4を出力し続ける。
【0039】
なお、図3に示す例では、発振周波数指令値FをF1〜F5の5通りに変化させ、パラメタ(発振周波数指令値)の探索・決定にC1〜C5の5サイクルを要するものとしたが、発振周波数指令値Fを変化させる数は5に限らず、2以上の数Qでよい。この場合、パラメタ(発振周波数指令値)の探索・決定にQサイクル要することになる。
【0040】
パラメタの探索・決定を行うタイミングとしては、たとえば以下の(1)〜(3)が考えられる。
【0041】
(1)給電用アンテナコイルと受電用アンテナコイルとの相対位置関係が変化した場合。
例えば、典型的には、受電用アンテナコイルが移動体に搭載されていて移動体の停止中に電力伝送する場合において、移動体が移動して停止し直した場合である。
【0042】
(2)回路素子の温度など共振周波数を変化させる環境条件が変化したとき。
例えば、温度計等を使用して環境条件の変化を実際に測定して一定値以上の変化が生じたときにパラメタを探索・決定してもよいし、一定のサイクル数もしくは一定時間が経過したらパラメタを探索・決定し直すようにしてもよい。
後者を実現する方法としては、たとえば、サイクル開始信号もしくはサイクル終了信号の発生回数をカウントするカウンタもしくは経過時間を計測するタイマをパラメタ選択・指令器内に設け、カウンタの値もしくはタイマの値が一定値に達したらパラメタの探索・決定をやり直すようにし、同時にカウンタもしくはタイマをリセットしてサイクル数のカウントもしくは経過時間の計測を再スタートするようにすればよい。
【0043】
(3)複数の動作パターンを有する装置(たとえば、複数の対象物を搬送する搬送装置で、対象物によって搬送軌跡が変わる場合)に本発明を適用する場合には、動作パターンが切り替えられた直後にパラメタの探索・決定を行う。たとえば、動作パターンの切り替えを指示する制御器(図示せず)からパラメタ選択・指令器へ動作パターンの切り替えを通知するように構成し、動作パターンの切り替えが通知されたらパラメタの探索・決定を行う。
【0044】
なお以上のタイミングの組み合わせでパラメタの探索・決定を行うタイミングを決めてもよい。また以上は例であり、パラメタの探索・決定のタイミングはこれらに限定されるものではない。
【0045】
図4は、100サイクルごとにパラメタの探索・決定をやり直す例を示す図である。
この例では、図4に示すように発振周波数指令値を変化させる。最初の5サイクル(図中、C1、C2、C3、C4,C5)のそれぞれに対して発振周波数指令値FをF1、F2、F3、F4、F5に変化させ、それぞれのサイクルにおける1サイクルの電力量がW1、W2、W3、W4、W5であったとする。W1、W2、W3、W4、W5を記憶しておき、サイクル5(図中、C5)が終了した時点で比較し、W4がもっとも小さかったとすると、W4に対応する発振周波数指令値F4がこの時点においてもっとも損失を小さくする発振周波数指令値ということがわかるので、パラメタ選択・指令器83は、以降、100サイクルが経過するまで(すなわち、サイクルC6〜C100に対して)発振周波数指令値としてF4を出力し続ける。
【0046】
100サイクル経過後、ふたたび、5サイクル(図中、C101、C102、C103、C104、C105)のそれぞれに対して発振周波数指令値FをF1、F2、F3、F4、F5に変化させ、それぞれのサイクルにおける1サイクルの電力量がW1’、W2’、W3’、W4’、W5’であったとする。W1’、W2’、W3’、W4’、W5’を記憶しておき、サイクル105(図中、C105)が終了した時点で比較し、W3’がもっとも小さかったとすると、W3’に対応する発振周波数指令値F3がこの時点においてもっとも損失を小さくする発振周波数指令値ということがわかるので、パラメタ選択・指令器83は、以降、100サイクルが経過するまで(すなわち、サイクルC106〜C200に対して)発振周波数指令値としてF3を出力し続ける。
以降、100サイクルごとに以上の動作を繰り返す。なおこの図4は最初の201サイクル(図中、C1〜C201)を示している。
【0047】
装置周囲の気温が変化したり、装置の運転を継続して装置が発熱し、回路素子の温度などが変化して共振回路の共振周波数が変化すると、非接触電力伝送装置がもっとも効率よく電力伝送できるパラメタ(本実施例では発振周波数)も変化する可能性があるが、以上の方法により発振周波数指令値を探索・決定し直すことにより、常に非接触電力伝送装置がもっとも効率よく電力伝送できるパラメタ(発振周波数)で運転することができる。
【0048】
図5は、複数の動作パターンを有する装置において、パラメタの探索・決定をやり直す例を示す図である。
【0049】
パターン1で運転する最初の5サイクル(図中、C1、C2、C3、C4,C5)のそれぞれに対して発振周波数指令値FをF1、F2、F3、F4、F5に変化させ、それぞれのサイクルにおける1サイクルの電力量がW1、W2、W3、W4、W5であったとする。W1、W2、W3、W4、W5を記憶しておき、サイクル5(図中、C5)が終了した時点で比較し、W1がもっとも小さかったとすると、W1に対応する発振周波数指令値F1がパターン1に対してもっとも損失を小さくする発振周波数指令値ということがわかるので、パラメタ選択・指令器83は、以降、パターン1で運転している間、発振周波数指令値としてF1を出力し続ける。
【0050】
動作パターンがパターン2に切替わったら、パターン2で運転する最初の5サイクル(図中、C1、C2、C3、C4,C5)のそれぞれに対して発振周波数指令値FをF1、F2、F3、F4、F5に変化させ、それぞれのサイクルにおける1サイクルの電力量がW1’、W2’、W3’、W4’、W5’であったとする。W1’、W2’、W3’、W4’、W5’を記憶しておき、サイクル5(図中、C5)が終了した時点で比較し、W5’がもっとも小さかったとすると、W5’に対応する発振周波数指令値F5がパターン2に対してもっとも損失を小さくする発振周波数指令値ということがわかるので、パラメタ選択・指令器83は、以降、パターン2で運転している間、発振周波数指令値としてF5を出力し続ける。
【0051】
[第2実施形態]
図6は、本発明による省電力駆動装置の第2実施形態を示す図である。
この例では、インバータとモータが複数台あり、指令値生成器29は、それぞれの時刻において、モータ21Aが追随すべきモータ回転角度指令値Ac’を制御器27Aへ、モータ21Bが追随すべきモータ回転角度指令値Ac”を制御器27Bへ出力する。複数のモータの動きは、以下のいずれであってもよい。
(1)すべてのモータが同じ動きをする。たとえば、モータのサイズが制限されるため、一体の機械負荷を複数台のモータで分担して駆動するような場合である。この場合、モータ21Aが追随すべきモータ回転角度指令値Ac’とモータ21Bが追随すべきモータ回転角度指令値Ac”は、常に同じ値とすればよい。
(2)モータ一台ごとに動きが異なる。たとえば、多関節ロボットで、それぞれの関節を駆動するモータを備えているような場合である。この場合、モータ21Aが追随すべきモータ回転角度指令値Ac’とモータ21Bが追随すべきモータ回転角度指令値Ac”は、一般に異なる値とする。
この図は、第1実施形態でインバータとモータを2台とした場合の例を示す。なおこの例では、インバータとモータが2台の場合を示すが、3台以上の場合も同様である。
【0052】
以下の構成要素が各インバータとモータごとにあるので、末尾にA、Bをつけて識別する。各要素の構成は第1実施形態と同じである。
19A、19B インバータ
21A、21B モータ
23A、23B 機械負荷
25A、25B モータエンコーダ
27A、27B 制御器
【0053】
末尾にA、Bを付した2組に対し、電力供給は1台の非接触電力伝送装置を経由して行われるので、第1実施形態と同じ電力量演算、パラメタ探索・決定動作をすることにより、2組の総計の損失を小さくするようにパラメタ(発振周波数指令値F)が探索・決定される。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。例えば、以下のように変更可能である。
【0055】
上述した本発明のサイクルは装置が同一の動きをする区間であればよく、本発明が適用される装置の運転サイクルと厳密に一致する必要はない。たとえば、装置の動きが激しくモータに大きい電流が流れる区間のみを本発明でのサイクルとして扱ってもよい。
【0056】
モータ21は、回転モータのかわりにリニアモータでもよい。
モータエンコーダのかわりに、機械負荷の位置・速度を直接検知するロータリーエンコーダやリニアエンコーダを用いてもよい。
外部電源とコンバータの組み合わせの代わりに、直流電源(直流発電機、燃料電池、バッテリーなど)から直接直流を電力供給してもよい。
【符号の説明】
【0057】
11 外部電源、13 コンバータ、
19、19A、19B インバータ、
21、21A、21B モータ、
23、23A、23B 機械負荷(同一負荷パターン装置)、
25、25A、25B モータエンコーダ、
27、27A、27B 制御器、
29 指令値生成器、
40 非接触電力伝送装置、41 給電用アンテナコイル、
42 受電用アンテナコイル、43 発振回路、
44 駆動クロック生成回路、45 ドライバ制御回路、
46 ドライバ、47 整流回路、
50 無線信号伝送装置、
52 送信側の無線信号伝送装置、54 受信側の無線信号伝送装置、
61 電圧測定器、63 電流測定器、
81 電力量演算器、83 パラメタ選択・指令器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触電力伝送装置によって電力供給されるモータで駆動され、同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動装置であって、
前記同一負荷パターンにおける非接触電力伝送装置の1次側電力量を計算する電力量演算器と、
非接触電力伝送装置のパラメタを複数の値に変化させ、各パラメタにおける前記1次側電力量を比較し、該1次側電力量を最小にするパラメタを選択して、非接触電力伝送装置に指令するパラメタ選択・指令器と、を備える、ことを特徴とする同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動装置。
【請求項2】
前記負荷パターンのサイクル開始信号とサイクル終了信号を出力する指令値生成器を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の省電力駆動装置。
【請求項3】
前記非接触電力伝送装置のパラメタは、給電側の発振周波数である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の省電力駆動装置。
【請求項4】
非接触電力伝送装置によって電力供給されるモータで駆動され、同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動方法であって、
非接触電力伝送装置のパラメタを複数の値に変化させ、
前記各パラメタにおける前記同一負荷パターンによる非接触電力伝送装置の1次側電力量を計算し、
各パラメタにおける前記1次側電力量を比較し、該1次側電力量を最小にするパラメタを選択して、非接触電力伝送装置に指令する、ことを特徴とする同一負荷パターンを有する装置の省電力駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−65410(P2012−65410A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206221(P2010−206221)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)