同軸ケーブル
【課題】内部導体を安定して保持することが可能な同軸ケーブルの提供。
【解決手段】内部導体2Aと外部導体3Aとの間の隙間αに充実または中空の絶縁体ロッド4Aを複数設ける。絶縁体ロッド4Aは、ポリプロピレンまたはポリエーテル・エーテル・ケトンからなり、内部導体2Aの外周に均等に配置されたうえで同心撚りされて外部導体3Aに接している。
【解決手段】内部導体2Aと外部導体3Aとの間の隙間αに充実または中空の絶縁体ロッド4Aを複数設ける。絶縁体ロッド4Aは、ポリプロピレンまたはポリエーテル・エーテル・ケトンからなり、内部導体2Aの外周に均等に配置されたうえで同心撚りされて外部導体3Aに接している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報機器、通信機器等に用いられる同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的強度に優れかつ低コストに提供できる同軸ケーブルとして、内部導体と外部導体との間に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる絶縁チューブを設けたものがある。絶縁チューブは内部導体の外周に同心撚りされて配置されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−338536号公報
【特許文献2】特開2005−294209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例においては、曲げなどによって、同軸ケーブルに張力の変動が生じると内部導体が正規の位置(通常内部導体はケーブル軸心位置に配置されている)からずれてしまう。このような内部導体の位置ずれは同軸ケーブルの伝送特性の劣化要因となる。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、ケーブル内で内部導体を安定して保持することが可能な同軸ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の同軸ケーブルは、
内部導体と、
前記内部導体の外側に同軸配置された外部導体と、
前記内部導体と前記外部導体との間の隙間に複数設けられた充実または中空の絶縁体ロッドと、
を備え、
前記絶縁体ロッドは、ポリプロピレンまたはポリエーテル・エーテル・ケトンからなり、前記内部導体の外周に均等に配置されたうえで同心撚りされて前記外部導体に接している。
【0007】
ポリプロピレンまたはポリエーテル・エーテル・ケトンは、絶縁体ロッドとして構成可能な他の材料[LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PTFE]に比して、物理的強度で優れており、曲げなどによって、同軸ケーブルに張力の変動が生じた場合等においても、内部導体を正規の位置に強固に保持することが出来る。
【0008】
なお、本発明は、前記外部導体の内径が10mm以下であるのが好ましい。外部導体の内径が10mm以下であるという小径のケーブルにおいては、大径のケーブルに比してケーブル曲げがケーブル内部に及ぼす影響は顕著になる。すなわち、一般に同軸ケーブルにおいては、ケーブル曲げ等に起因して内部導体に位置ずれが生じた場合、その影響は曲げ径とケーブル径との相対比率に準じて変動し、曲げ径のケーブル径に対する比率が同じであればケーブル径が小さくなるほど、その影響は大きくなり伝送特性の劣化が増大する。外部導体の内径が10mm以下となった小径ケーブルでは、内部導体の位置ずれはケーブルに多大な影響を及ぼして伝送特性を大きく劣化させる。そのため、外部導体の内径が10mm以下となった小径の同軸ケーブルに本発明を実施すればその効果は多大なものになる。
【0009】
本発明では、前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記絶縁体ロッドの撚りピッチp1は、以下の(1)式を満足するのが好ましい。
【0010】
(D1+D2)×4≦p1≦(D1+D2)×10 …(1)
ケーブル曲げ等に起因する内部導体の位置ずれは、絶縁体ロッドの撚りピッチp1の影響も受け、撚りピッチp1が大きくなると、内部導体の位置ずれも大きくなる。これは撚りピッチp1が大きくなるにつれて、絶縁体ロッドで支持される内部導体の面積密度が減少するためだと思われる。このことから理解されるように、内部導体の位置ずれを防止するためには撚りピッチp1の上限値を設定する必要がある。本発明では、撚りピッチp1の上限値を、(内部導体の直径D1+絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径D2)の10倍とすることで内部導体の位置ずれをさらに確実に防止して所望の伝送特性を得ている。
【0011】
なお、撚りピッチp1の下限値は以下のようにして設定されている。すなわち、良好な伝送特性を得るためには、絶縁体ロッドを周方向に均等に同心撚りする必要がある。絶縁体ロッドの配置が周方向で不均等になると、軸方向でも絶縁体ロッドの配置が不均等になってそのために伝送特性が軸方向で不連続になってしまう。さらには、軸方向でも絶縁体ロッドの配置が不均等になると、内部導体を支持する力のバランスが崩れて内部導体と外部導体との間の位置関係(同軸配置)がずれてしまう要因にもなる。内外導体の相互の位置ずれは伝送特性に多大な悪影響を及ぼす。撚りの均等性を維持するためには、撚られた絶縁体ロッド同士が互いに当接しないようにすることが肝要である。しかしながら、撚りピッチが小さくなると隣り合う絶縁体ロッドの距離が可及的に小さくなって、互いに当接し易くなる。このことから理解されるように、絶縁体ロッド同士の無用な当接を阻止して撚りの均等性を維持するためには、撚りピッチの下限値を設定する必要がある。そこで本発明では、撚りピッチp1の下限値を(内部導体の直径D1+絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径D2)の4倍とすることで、絶縁体ロッド同士の無用な当接を阻止して良好な伝送特性を得ている。
【0012】
本発明では、複数の導線または導体テープを前記絶縁体ロッドと逆方向に同心撚りしてなるものから前記外部導体を構成するのが好ましい。複数の導線または導体テープから外部導体を構成することで外部導体がケーブル曲げに追随しやすくなる。また、絶縁体ロッドと逆方向に外部導体(複数の導線または導体テープ)を同心撚りすることで、さらに外部導体がケーブル曲げに追随しやすくなる。
【0013】
上記構成においては、前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記外部導体の撚りピッチp2は、以下の(2)式を満足するのが好ましい。
【0014】
(D1+D2)×0.5≦p2≦(D1+D2)×2 …(2)
ここで上限値[(D1+D2)×2]は、隣り合う絶縁体ロッドの間の隙間に外部導体が入り込まないことを考慮して設定されている。撚りピッチp2が上限値[(D1+D2)×2]を超えると、隣り合う絶縁体ロッドの間の隙間に外部導体が入り込み易くなって内部導体と外部導体との間の相対的な配置関係(同軸配置)を維持できなくなるうえに、最悪の場合、内部導体と外部導体とがショートしてしまう。なお、下限値は、製造上の都合から設定されており、下限値未満の撚りピッチp2を有する同軸ケーブルは現状の製造方法で工業生産することは困難となる。
【0015】
また、本発明では、前記絶縁体ロッドと逆方向に巻回された螺旋コルゲート管から前記外部導体を構成するのが好ましい。螺旋コルゲート管から外部導体を構成することで外部導体はケーブル曲げに追随しやすくなる。また、絶縁体ロッドと逆方向に巻回された螺旋コルゲート管から外部導体を構成することで、さらに外部導体はケーブル曲げに追随しやすくなる。
【0016】
またこの構成においても、前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記外部導体の螺旋ピッチp3は、以下の(3)式を満足するのが好ましい。その理由は、前述した撚りピッチp2の設定における理由と同様である。
【0017】
(D1+D2)×0.5≦p3≦(D1+D2)×2 …(3)
また、本発明では、前記内部導体は、銀メッキ鋼線の単線または撚線、あるいは銀メッキ銅覆鋼線の単線または撚線からなるのが好ましく、そうすれば、内部導体の曲げ強度が向上する。ここで、銀メッキ銅覆鋼線とは、鋼線の表面に銅被覆層を形成したうえで銅被覆層にさらに銀メッキを施したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ケーブル内で内部導体を安定して保持することが可能な同軸ケーブルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図2】第1の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図4】第2の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図6】第3の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図8】第4の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図10】第5の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図12】第6の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1、図2を参照して説明する。図1は、発明の第1の実施の形態の同軸ケーブル1Aの一部切欠側面図であり、図2は同軸ケーブル1Aの正面図である。
【0021】
同軸ケーブル1Aは、内部導体2Aと外部導体3Aと絶縁体ロッド4Aとシース5Aとを備える。内部導体2Aは銀メッキ鋼線の単線または撚線からなる(図2では単線)。外部導体3Aは螺旋コルゲート銅管からなり、内部導体2Aの外側に隙間αを空けて内部導体2Aと同軸配置されている。絶縁体ロッド4Aはポリプロピレン(以下、PPと略する)またはポリエーテル・エーテル・ケトン(以下、PEEKと略する)からなり、充実または中空の円筒紐形状(図2では中空円筒紐形状)をしている。絶縁体ロッド4Aは3本であって、それぞれ内部導体2Aの外周に周方向に均等に配置されたうえで同心撚りされており、この状態で絶縁体ロッド4Aはその一部を外部導体3Aに当接させて隙間αに収納されている。絶縁体ロッド4Aの撚り方向は外部導体3Aの螺旋とは逆方向に設定されている。シース5Aは、熱可塑性樹脂、ゴム等から構成されており、外部導体3Aの外周を覆って外部導体3Aを保護している。以上の構成を備えた同軸ケーブル1Aは、外部導体3Aの内径が10mm以下(本実施の形態では10mm)の細径ケーブルである。なお、内部導体2Aは、銀メッキ銅覆鋼線の単線または撚線から構成されていてもよい。
【0022】
同軸ケーブル1Aでは、内部導体2Aの直径をD1とし、複数の絶縁体ロッド4Aが配置される領域(=隙間α)の外接円直径(=管状の外部導体3Aの内接円直径)をD2とすると、絶縁体ロッド4Aの撚りピッチp1は、前述した(1)式を満足するように設定されている。(1)式は以下に再記載する。
【0023】
(D1+D2)×4≦p1≦(D1+D2)×10 …(1)
また、外部導体3Aの螺旋ピッチp3は、前述した(3)式を満足するように設定されている。(3)式は以下に再記載する。
【0024】
(D1+D2)×0.5≦p3≦(D1+D2)×2 …(3)
本実施の形態では、外部導体3Aの内径が10mm以下という小径のケーブルにおいて本発明を実施しているので、本発明の効果(ケーブル曲げに起因する伝送特性の劣化を抑制する)は顕著なものとなる。
【0025】
また、本実施の形態では、絶縁体ロッド4Aの撚りピッチp1の上限値/下限値を、前述した(1)式を満足する値に設定しているので、内部導体2Aの位置ずれを確実に防止できる。
【0026】
本実施の形態では、外部導体3A(螺旋コルゲート管)の螺旋方向と、絶縁体ロッド4Aの撚り方向とを互いに逆方向にすることで、外部導体3Aがケーブル曲げに追随しやすくなっている。
【0027】
本実施の形態では、絶縁体ロッド4Aと逆方向に巻回された螺旋コルゲート管から外部導体3Aを構成しているので、外部導体3Aはケーブル曲げに追随しやすくなっている。さらには、外部導体3Aの螺旋ピッチp3の上限値/下限値を、前述した(2)式を満足する値に設定しているので、絶縁体ロッド4Aの位置ずれを確実に防止することができる。
【0028】
また、本実施の形態では、内部導体2Aは、銀メッキ鋼線の単線または撚線、あるいは銀メッキ銅覆鋼線の単線または撚線から構成されているので、内部導体2Aの曲げ強度が向上している。
【0029】
次に、絶縁体ロッド4Aの材料選定について説明する。絶縁体ロッド4Aの材料としては、次のものが考えられる。
1.ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
2.低密度ポリエチレン(LDPE)
3.高密度ポリエチレン(HDPE)
4.ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
5.ポリプロピレン(PP)
一般に同軸ケーブルの特性インピーダンスZ0は以下の(4)式により算出される。
Z0=(60/√ε)ln(D2/D1) …(4)
ε:内部導体と外部導体との間の比誘電率
D1:内部導体の直径
D2:外部導体の平均内径
例えば、特性インピーダンス(50Ω)で外部導体の内径が10mmである低損失フレキシブル同軸ケーブルにおいては、その構造からD2/D1=2.8となるため、非誘電率εは1.53が必要となる。
【0030】
さらに、内部導体と外部導体との間の隙間(本実施の形態では隙間αと表記)において、この隙間に配置される絶縁体(本発明では絶縁体ロッド4A)の断面積比kは、以下の(5)式で算出される。
k=(ε−1)/(ε0−1) …(5)
ε0:絶縁体を構成する材料の非誘電率
ε:内部導体と外部導体との間の比誘電率
このように、断面積比kは、既知の特性データである絶縁体材料の非誘電率ε0から算出することができる。
【0031】
断面が円形となった絶縁体ロッドでは、ロッド外径D3は、次の(6)式で算出される。
D3=(D2−D1)/2 …(6)
D1:内部導体の直径
D2:外部導体の平均内径
さらには、上記(6)式に基づけば、内部導体と外部導体との間の隙間において、絶縁体ロッド1本当たりが占める断面積比k0は、次の(7)式で算出される。
k0=π[[(D2−D1)/2]/2]2/[π(D2/2)2−π(D1/2)2] …(7)
前述したように、特性インピーダンス(50Ω)で外部導体の内径が10mmである低損失フレキシブル同軸ケーブルにおいては、その構造からD2/D1=2.8となるため、この値を変形したD2=2.8・D1を(7)式に代入することで、k0≒0.103(=10.3%)が得られる。
【0032】
絶縁体ロッドを充実の材料から構成する場合、所望の特性インピーダンスを得るために最低限必要となる絶縁体ロッドの本数Nの最小値は以下の(8)式を満足する値となる。
N>k/k0 …(8)
k:内部/外部導体間の隙間に配置される絶縁体ロッドの総体としての断面積比
k0:絶縁体ロッド1本当たりが上記隙間で占める断面積比
絶縁体ロッドを中空の材料から構成する場合、絶縁体ロッドの中空率が増加するにつれてロッド本数を増加させる必要がある。そのため、充実/中空に関わらず、絶縁体ロッドの最低限本数Nは、上記(8)式から算出される。
【0033】
内部導体と外部導体との間の隙間において単位断面積当たりに占める絶縁体ロッドに1Nの引っ張りを加えた際において絶縁体ロッドが伸びる量の最低値σは、次の(9)式で算出される。
σ=N/kE …(9)
N:所望の特性インピーダンスを得るのに最低限必要となる絶縁体ロッドの本数
k:内部/外部導体間の隙間に配置される絶縁体ロッドの総体としての断面積比
E:絶縁体ロッドの引っ張り弾性係数
上述した各絶縁体材料(PEEK、LDPE、HDPE、PTFE、PP)の特性(代表値)を、上記(4)〜(9)式で算出したデータを表1に記載する。
【0034】
【表1】
表1からは次のことが読み取れる。
【0035】
・ PEEK、PPは、他の材料に比べ伸び量が小さくて張力変動に対する形状の安定性が高く、反射特性が良好である。
【0036】
・特にPEEKでは、必要となる絶縁体ロッド本数を最も少なくすることができるため、ロッドの撚りピッチを、屈曲性を考慮して設定された撚りピッチより小さくできる。これによりPEEKでは、張力変動に対する形状の安定性が最も高く、反射特性が最良である。
【0037】
以上のことから、本実施の形態では、絶縁体ロッド4Aの材料として、PEEKまたはPPが、最適にはPEEKが選択されている。
【0038】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図3、図4を参照して説明する。図3は、本発明の第2の実施の形態の同軸ケーブル1Bの一部切欠側面図であり、図4は同軸ケーブル1Bの正面図である。
【0039】
同軸ケーブル1Bは、内部導体2Bと外部導体3Bと絶縁体ロッド4Bとシース5Bとを備えており、内部導体2Bと外部導体3Bとシース5Bの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、絶縁体ロッド4Bの構成(特に個数)に特徴を有する。絶縁体ロッド4Bは、ポリプロピレン(PP)またはポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)からなり、充実または中空の円筒紐形状(図4では中空円筒紐形状)をしている。絶縁体ロッド4Bは6本であって、それぞれ内部導体2Bの外周に周方向に等間隔空けて同心撚りされて配置されており、この状態で絶縁体ロッド4Bはその一部を外部導体3Bに当接させて隙間αに収納されている。本実施の形態は、絶縁体ロッド4Bの個数(6本)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。
【0040】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態を図5、図6を参照して説明する。図5は、本発明の第3の実施の形態の同軸ケーブル1Cの一部切欠側面図であり、図6は同軸ケーブル1Cの正面図である。
【0041】
同軸ケーブル1Cは、内部導体2Cと外部導体3Cと絶縁体ロッド4Cとシース5Cとを備えており、内部導体2Cと絶縁体ロッド4Cとシース5Bの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、外部導体3Cの構成に特徴を有する。外部導体3Cは直管波付け加工されたコルゲート銅管からなり、内部導体2Cの外側に隙間αを空けて内部導体2Cと同軸配置されている。本実施の形態は、外部導体3Cの形状(直管波付け構造)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。
【0042】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態を図7、図8を参照して説明する。図7は、本発明の第4の実施の形態の同軸ケーブル1Dの一部切欠側面図であり、図8は同軸ケーブル1Dの正面図である。
【0043】
同軸ケーブル1Dは、内部導体2Dと外部導体3Dと絶縁体ロッド4Dとを備えており、内部導体2Dと絶縁体ロッド4Dの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、シースを省略しているとともに、外部導体3Dの構成に特徴を有する。外部導体3Dは直管状の銅管からなり、内部導体2Dの外側に隙間αを空けて内部導体2Dと同軸配置されている。本実施の形態は、シースの省略並びに外部導体3Dの形状(直管構造)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。ただし、外部導体3Dは直管状の銅管からなるため、外部導体3Dの螺旋ピッチp3を所望の値に設定することは不可能である。
【0044】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態を図9、図10を参照して説明する。図9は、本発明の第5の実施の形態の同軸ケーブル1Eの一部切欠側面図であり、図10は同軸ケーブル1Eの正面図である。
【0045】
同軸ケーブル1Eは、内部導体2Eと外部導体3Eと絶縁体ロッド4Eとシース5Eとを備えており、内部導体2Eと絶縁体ロッド4Eとシース5Eの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、外部導体3Eの構成に特徴を有する。外部導体3Eは絶縁体ロッド4Eとは逆方向に撚られた複数の銅細線からなっており。内部導体2Cの外側に内部導体2Cと同軸配置されている。本実施の形態は、外部導体3Eの形状(絶縁体ロッド4Eとは逆方向に撚られた複数の銅細線)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態では、内部導体2Eの直径をD1とし、絶縁体ロッド4Eが配置される領域の外接円直径をD2とすると、外部導体3Eの撚りピッチp2は、前述した(2)式を満足する値に設定されている。これにより絶縁体ロッド4Eの位置ずれを防止することができる。(2)式は以下に再記載する。
【0046】
(D1+D2)×0.5≦p2≦(D1+D2)×2 …(2)
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態を図11、図12を参照して説明する。図11は、本発明の第6の実施の形態の同軸ケーブル1Fの一部切欠側面図であり、図12は同軸ケーブル1Fの正面図である。
【0047】
同軸ケーブル1Fは、内部導体2Fと外部導体3Fと絶縁体ロッド4Fとシース5Fとを備えており、内部導体2Fと絶縁体ロッド4Fとシース5Fの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、外部導体3Fの構成に特徴を有する。外部導体3Fは互いに編組された複数の銅テープからなっており、内部導体2Fの外側に内部導体2Fと同軸配置されている。本実施の形態は、外部導体3Fの形状(編組された複数の銅テープ)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。
【0048】
なお、上述した各実施の形態では、絶縁体ロッド4A〜4Eは、中空の部材から構成されていたが、充実の部材から構成してもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1A、1B、1C、1D、1E、1F 同軸ケーブル
2A、2B、2C、2D、2E、2F 内部導体
3A、3B、3C、3D、3E、3F 外部導体
4A、4B、4C、4D、4E、4F 絶縁体ロッド
5A、5B、5C、5D、5E、5F シース
α 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報機器、通信機器等に用いられる同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的強度に優れかつ低コストに提供できる同軸ケーブルとして、内部導体と外部導体との間に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる絶縁チューブを設けたものがある。絶縁チューブは内部導体の外周に同心撚りされて配置されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−338536号公報
【特許文献2】特開2005−294209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例においては、曲げなどによって、同軸ケーブルに張力の変動が生じると内部導体が正規の位置(通常内部導体はケーブル軸心位置に配置されている)からずれてしまう。このような内部導体の位置ずれは同軸ケーブルの伝送特性の劣化要因となる。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、ケーブル内で内部導体を安定して保持することが可能な同軸ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の同軸ケーブルは、
内部導体と、
前記内部導体の外側に同軸配置された外部導体と、
前記内部導体と前記外部導体との間の隙間に複数設けられた充実または中空の絶縁体ロッドと、
を備え、
前記絶縁体ロッドは、ポリプロピレンまたはポリエーテル・エーテル・ケトンからなり、前記内部導体の外周に均等に配置されたうえで同心撚りされて前記外部導体に接している。
【0007】
ポリプロピレンまたはポリエーテル・エーテル・ケトンは、絶縁体ロッドとして構成可能な他の材料[LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PTFE]に比して、物理的強度で優れており、曲げなどによって、同軸ケーブルに張力の変動が生じた場合等においても、内部導体を正規の位置に強固に保持することが出来る。
【0008】
なお、本発明は、前記外部導体の内径が10mm以下であるのが好ましい。外部導体の内径が10mm以下であるという小径のケーブルにおいては、大径のケーブルに比してケーブル曲げがケーブル内部に及ぼす影響は顕著になる。すなわち、一般に同軸ケーブルにおいては、ケーブル曲げ等に起因して内部導体に位置ずれが生じた場合、その影響は曲げ径とケーブル径との相対比率に準じて変動し、曲げ径のケーブル径に対する比率が同じであればケーブル径が小さくなるほど、その影響は大きくなり伝送特性の劣化が増大する。外部導体の内径が10mm以下となった小径ケーブルでは、内部導体の位置ずれはケーブルに多大な影響を及ぼして伝送特性を大きく劣化させる。そのため、外部導体の内径が10mm以下となった小径の同軸ケーブルに本発明を実施すればその効果は多大なものになる。
【0009】
本発明では、前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記絶縁体ロッドの撚りピッチp1は、以下の(1)式を満足するのが好ましい。
【0010】
(D1+D2)×4≦p1≦(D1+D2)×10 …(1)
ケーブル曲げ等に起因する内部導体の位置ずれは、絶縁体ロッドの撚りピッチp1の影響も受け、撚りピッチp1が大きくなると、内部導体の位置ずれも大きくなる。これは撚りピッチp1が大きくなるにつれて、絶縁体ロッドで支持される内部導体の面積密度が減少するためだと思われる。このことから理解されるように、内部導体の位置ずれを防止するためには撚りピッチp1の上限値を設定する必要がある。本発明では、撚りピッチp1の上限値を、(内部導体の直径D1+絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径D2)の10倍とすることで内部導体の位置ずれをさらに確実に防止して所望の伝送特性を得ている。
【0011】
なお、撚りピッチp1の下限値は以下のようにして設定されている。すなわち、良好な伝送特性を得るためには、絶縁体ロッドを周方向に均等に同心撚りする必要がある。絶縁体ロッドの配置が周方向で不均等になると、軸方向でも絶縁体ロッドの配置が不均等になってそのために伝送特性が軸方向で不連続になってしまう。さらには、軸方向でも絶縁体ロッドの配置が不均等になると、内部導体を支持する力のバランスが崩れて内部導体と外部導体との間の位置関係(同軸配置)がずれてしまう要因にもなる。内外導体の相互の位置ずれは伝送特性に多大な悪影響を及ぼす。撚りの均等性を維持するためには、撚られた絶縁体ロッド同士が互いに当接しないようにすることが肝要である。しかしながら、撚りピッチが小さくなると隣り合う絶縁体ロッドの距離が可及的に小さくなって、互いに当接し易くなる。このことから理解されるように、絶縁体ロッド同士の無用な当接を阻止して撚りの均等性を維持するためには、撚りピッチの下限値を設定する必要がある。そこで本発明では、撚りピッチp1の下限値を(内部導体の直径D1+絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径D2)の4倍とすることで、絶縁体ロッド同士の無用な当接を阻止して良好な伝送特性を得ている。
【0012】
本発明では、複数の導線または導体テープを前記絶縁体ロッドと逆方向に同心撚りしてなるものから前記外部導体を構成するのが好ましい。複数の導線または導体テープから外部導体を構成することで外部導体がケーブル曲げに追随しやすくなる。また、絶縁体ロッドと逆方向に外部導体(複数の導線または導体テープ)を同心撚りすることで、さらに外部導体がケーブル曲げに追随しやすくなる。
【0013】
上記構成においては、前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記外部導体の撚りピッチp2は、以下の(2)式を満足するのが好ましい。
【0014】
(D1+D2)×0.5≦p2≦(D1+D2)×2 …(2)
ここで上限値[(D1+D2)×2]は、隣り合う絶縁体ロッドの間の隙間に外部導体が入り込まないことを考慮して設定されている。撚りピッチp2が上限値[(D1+D2)×2]を超えると、隣り合う絶縁体ロッドの間の隙間に外部導体が入り込み易くなって内部導体と外部導体との間の相対的な配置関係(同軸配置)を維持できなくなるうえに、最悪の場合、内部導体と外部導体とがショートしてしまう。なお、下限値は、製造上の都合から設定されており、下限値未満の撚りピッチp2を有する同軸ケーブルは現状の製造方法で工業生産することは困難となる。
【0015】
また、本発明では、前記絶縁体ロッドと逆方向に巻回された螺旋コルゲート管から前記外部導体を構成するのが好ましい。螺旋コルゲート管から外部導体を構成することで外部導体はケーブル曲げに追随しやすくなる。また、絶縁体ロッドと逆方向に巻回された螺旋コルゲート管から外部導体を構成することで、さらに外部導体はケーブル曲げに追随しやすくなる。
【0016】
またこの構成においても、前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記外部導体の螺旋ピッチp3は、以下の(3)式を満足するのが好ましい。その理由は、前述した撚りピッチp2の設定における理由と同様である。
【0017】
(D1+D2)×0.5≦p3≦(D1+D2)×2 …(3)
また、本発明では、前記内部導体は、銀メッキ鋼線の単線または撚線、あるいは銀メッキ銅覆鋼線の単線または撚線からなるのが好ましく、そうすれば、内部導体の曲げ強度が向上する。ここで、銀メッキ銅覆鋼線とは、鋼線の表面に銅被覆層を形成したうえで銅被覆層にさらに銀メッキを施したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ケーブル内で内部導体を安定して保持することが可能な同軸ケーブルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図2】第1の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図4】第2の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図6】第3の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図8】第4の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図10】第5の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態の同軸ケーブルの一部切欠側面図である。
【図12】第6の実施の形態の同軸ケーブルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1、図2を参照して説明する。図1は、発明の第1の実施の形態の同軸ケーブル1Aの一部切欠側面図であり、図2は同軸ケーブル1Aの正面図である。
【0021】
同軸ケーブル1Aは、内部導体2Aと外部導体3Aと絶縁体ロッド4Aとシース5Aとを備える。内部導体2Aは銀メッキ鋼線の単線または撚線からなる(図2では単線)。外部導体3Aは螺旋コルゲート銅管からなり、内部導体2Aの外側に隙間αを空けて内部導体2Aと同軸配置されている。絶縁体ロッド4Aはポリプロピレン(以下、PPと略する)またはポリエーテル・エーテル・ケトン(以下、PEEKと略する)からなり、充実または中空の円筒紐形状(図2では中空円筒紐形状)をしている。絶縁体ロッド4Aは3本であって、それぞれ内部導体2Aの外周に周方向に均等に配置されたうえで同心撚りされており、この状態で絶縁体ロッド4Aはその一部を外部導体3Aに当接させて隙間αに収納されている。絶縁体ロッド4Aの撚り方向は外部導体3Aの螺旋とは逆方向に設定されている。シース5Aは、熱可塑性樹脂、ゴム等から構成されており、外部導体3Aの外周を覆って外部導体3Aを保護している。以上の構成を備えた同軸ケーブル1Aは、外部導体3Aの内径が10mm以下(本実施の形態では10mm)の細径ケーブルである。なお、内部導体2Aは、銀メッキ銅覆鋼線の単線または撚線から構成されていてもよい。
【0022】
同軸ケーブル1Aでは、内部導体2Aの直径をD1とし、複数の絶縁体ロッド4Aが配置される領域(=隙間α)の外接円直径(=管状の外部導体3Aの内接円直径)をD2とすると、絶縁体ロッド4Aの撚りピッチp1は、前述した(1)式を満足するように設定されている。(1)式は以下に再記載する。
【0023】
(D1+D2)×4≦p1≦(D1+D2)×10 …(1)
また、外部導体3Aの螺旋ピッチp3は、前述した(3)式を満足するように設定されている。(3)式は以下に再記載する。
【0024】
(D1+D2)×0.5≦p3≦(D1+D2)×2 …(3)
本実施の形態では、外部導体3Aの内径が10mm以下という小径のケーブルにおいて本発明を実施しているので、本発明の効果(ケーブル曲げに起因する伝送特性の劣化を抑制する)は顕著なものとなる。
【0025】
また、本実施の形態では、絶縁体ロッド4Aの撚りピッチp1の上限値/下限値を、前述した(1)式を満足する値に設定しているので、内部導体2Aの位置ずれを確実に防止できる。
【0026】
本実施の形態では、外部導体3A(螺旋コルゲート管)の螺旋方向と、絶縁体ロッド4Aの撚り方向とを互いに逆方向にすることで、外部導体3Aがケーブル曲げに追随しやすくなっている。
【0027】
本実施の形態では、絶縁体ロッド4Aと逆方向に巻回された螺旋コルゲート管から外部導体3Aを構成しているので、外部導体3Aはケーブル曲げに追随しやすくなっている。さらには、外部導体3Aの螺旋ピッチp3の上限値/下限値を、前述した(2)式を満足する値に設定しているので、絶縁体ロッド4Aの位置ずれを確実に防止することができる。
【0028】
また、本実施の形態では、内部導体2Aは、銀メッキ鋼線の単線または撚線、あるいは銀メッキ銅覆鋼線の単線または撚線から構成されているので、内部導体2Aの曲げ強度が向上している。
【0029】
次に、絶縁体ロッド4Aの材料選定について説明する。絶縁体ロッド4Aの材料としては、次のものが考えられる。
1.ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
2.低密度ポリエチレン(LDPE)
3.高密度ポリエチレン(HDPE)
4.ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
5.ポリプロピレン(PP)
一般に同軸ケーブルの特性インピーダンスZ0は以下の(4)式により算出される。
Z0=(60/√ε)ln(D2/D1) …(4)
ε:内部導体と外部導体との間の比誘電率
D1:内部導体の直径
D2:外部導体の平均内径
例えば、特性インピーダンス(50Ω)で外部導体の内径が10mmである低損失フレキシブル同軸ケーブルにおいては、その構造からD2/D1=2.8となるため、非誘電率εは1.53が必要となる。
【0030】
さらに、内部導体と外部導体との間の隙間(本実施の形態では隙間αと表記)において、この隙間に配置される絶縁体(本発明では絶縁体ロッド4A)の断面積比kは、以下の(5)式で算出される。
k=(ε−1)/(ε0−1) …(5)
ε0:絶縁体を構成する材料の非誘電率
ε:内部導体と外部導体との間の比誘電率
このように、断面積比kは、既知の特性データである絶縁体材料の非誘電率ε0から算出することができる。
【0031】
断面が円形となった絶縁体ロッドでは、ロッド外径D3は、次の(6)式で算出される。
D3=(D2−D1)/2 …(6)
D1:内部導体の直径
D2:外部導体の平均内径
さらには、上記(6)式に基づけば、内部導体と外部導体との間の隙間において、絶縁体ロッド1本当たりが占める断面積比k0は、次の(7)式で算出される。
k0=π[[(D2−D1)/2]/2]2/[π(D2/2)2−π(D1/2)2] …(7)
前述したように、特性インピーダンス(50Ω)で外部導体の内径が10mmである低損失フレキシブル同軸ケーブルにおいては、その構造からD2/D1=2.8となるため、この値を変形したD2=2.8・D1を(7)式に代入することで、k0≒0.103(=10.3%)が得られる。
【0032】
絶縁体ロッドを充実の材料から構成する場合、所望の特性インピーダンスを得るために最低限必要となる絶縁体ロッドの本数Nの最小値は以下の(8)式を満足する値となる。
N>k/k0 …(8)
k:内部/外部導体間の隙間に配置される絶縁体ロッドの総体としての断面積比
k0:絶縁体ロッド1本当たりが上記隙間で占める断面積比
絶縁体ロッドを中空の材料から構成する場合、絶縁体ロッドの中空率が増加するにつれてロッド本数を増加させる必要がある。そのため、充実/中空に関わらず、絶縁体ロッドの最低限本数Nは、上記(8)式から算出される。
【0033】
内部導体と外部導体との間の隙間において単位断面積当たりに占める絶縁体ロッドに1Nの引っ張りを加えた際において絶縁体ロッドが伸びる量の最低値σは、次の(9)式で算出される。
σ=N/kE …(9)
N:所望の特性インピーダンスを得るのに最低限必要となる絶縁体ロッドの本数
k:内部/外部導体間の隙間に配置される絶縁体ロッドの総体としての断面積比
E:絶縁体ロッドの引っ張り弾性係数
上述した各絶縁体材料(PEEK、LDPE、HDPE、PTFE、PP)の特性(代表値)を、上記(4)〜(9)式で算出したデータを表1に記載する。
【0034】
【表1】
表1からは次のことが読み取れる。
【0035】
・ PEEK、PPは、他の材料に比べ伸び量が小さくて張力変動に対する形状の安定性が高く、反射特性が良好である。
【0036】
・特にPEEKでは、必要となる絶縁体ロッド本数を最も少なくすることができるため、ロッドの撚りピッチを、屈曲性を考慮して設定された撚りピッチより小さくできる。これによりPEEKでは、張力変動に対する形状の安定性が最も高く、反射特性が最良である。
【0037】
以上のことから、本実施の形態では、絶縁体ロッド4Aの材料として、PEEKまたはPPが、最適にはPEEKが選択されている。
【0038】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図3、図4を参照して説明する。図3は、本発明の第2の実施の形態の同軸ケーブル1Bの一部切欠側面図であり、図4は同軸ケーブル1Bの正面図である。
【0039】
同軸ケーブル1Bは、内部導体2Bと外部導体3Bと絶縁体ロッド4Bとシース5Bとを備えており、内部導体2Bと外部導体3Bとシース5Bの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、絶縁体ロッド4Bの構成(特に個数)に特徴を有する。絶縁体ロッド4Bは、ポリプロピレン(PP)またはポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)からなり、充実または中空の円筒紐形状(図4では中空円筒紐形状)をしている。絶縁体ロッド4Bは6本であって、それぞれ内部導体2Bの外周に周方向に等間隔空けて同心撚りされて配置されており、この状態で絶縁体ロッド4Bはその一部を外部導体3Bに当接させて隙間αに収納されている。本実施の形態は、絶縁体ロッド4Bの個数(6本)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。
【0040】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態を図5、図6を参照して説明する。図5は、本発明の第3の実施の形態の同軸ケーブル1Cの一部切欠側面図であり、図6は同軸ケーブル1Cの正面図である。
【0041】
同軸ケーブル1Cは、内部導体2Cと外部導体3Cと絶縁体ロッド4Cとシース5Cとを備えており、内部導体2Cと絶縁体ロッド4Cとシース5Bの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、外部導体3Cの構成に特徴を有する。外部導体3Cは直管波付け加工されたコルゲート銅管からなり、内部導体2Cの外側に隙間αを空けて内部導体2Cと同軸配置されている。本実施の形態は、外部導体3Cの形状(直管波付け構造)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。
【0042】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態を図7、図8を参照して説明する。図7は、本発明の第4の実施の形態の同軸ケーブル1Dの一部切欠側面図であり、図8は同軸ケーブル1Dの正面図である。
【0043】
同軸ケーブル1Dは、内部導体2Dと外部導体3Dと絶縁体ロッド4Dとを備えており、内部導体2Dと絶縁体ロッド4Dの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、シースを省略しているとともに、外部導体3Dの構成に特徴を有する。外部導体3Dは直管状の銅管からなり、内部導体2Dの外側に隙間αを空けて内部導体2Dと同軸配置されている。本実施の形態は、シースの省略並びに外部導体3Dの形状(直管構造)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。ただし、外部導体3Dは直管状の銅管からなるため、外部導体3Dの螺旋ピッチp3を所望の値に設定することは不可能である。
【0044】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態を図9、図10を参照して説明する。図9は、本発明の第5の実施の形態の同軸ケーブル1Eの一部切欠側面図であり、図10は同軸ケーブル1Eの正面図である。
【0045】
同軸ケーブル1Eは、内部導体2Eと外部導体3Eと絶縁体ロッド4Eとシース5Eとを備えており、内部導体2Eと絶縁体ロッド4Eとシース5Eの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、外部導体3Eの構成に特徴を有する。外部導体3Eは絶縁体ロッド4Eとは逆方向に撚られた複数の銅細線からなっており。内部導体2Cの外側に内部導体2Cと同軸配置されている。本実施の形態は、外部導体3Eの形状(絶縁体ロッド4Eとは逆方向に撚られた複数の銅細線)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態では、内部導体2Eの直径をD1とし、絶縁体ロッド4Eが配置される領域の外接円直径をD2とすると、外部導体3Eの撚りピッチp2は、前述した(2)式を満足する値に設定されている。これにより絶縁体ロッド4Eの位置ずれを防止することができる。(2)式は以下に再記載する。
【0046】
(D1+D2)×0.5≦p2≦(D1+D2)×2 …(2)
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態を図11、図12を参照して説明する。図11は、本発明の第6の実施の形態の同軸ケーブル1Fの一部切欠側面図であり、図12は同軸ケーブル1Fの正面図である。
【0047】
同軸ケーブル1Fは、内部導体2Fと外部導体3Fと絶縁体ロッド4Fとシース5Fとを備えており、内部導体2Fと絶縁体ロッド4Fとシース5Fの構成は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明は省略する。本実施の形態は、外部導体3Fの構成に特徴を有する。外部導体3Fは互いに編組された複数の銅テープからなっており、内部導体2Fの外側に内部導体2Fと同軸配置されている。本実施の形態は、外部導体3Fの形状(編組された複数の銅テープ)が第1の実施の形態と異なっているが、他の構成並びにその効果は第1の実施の形態と同様である。
【0048】
なお、上述した各実施の形態では、絶縁体ロッド4A〜4Eは、中空の部材から構成されていたが、充実の部材から構成してもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1A、1B、1C、1D、1E、1F 同軸ケーブル
2A、2B、2C、2D、2E、2F 内部導体
3A、3B、3C、3D、3E、3F 外部導体
4A、4B、4C、4D、4E、4F 絶縁体ロッド
5A、5B、5C、5D、5E、5F シース
α 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体と、
前記内部導体の外側に同軸配置された外部導体と、
前記内部導体と前記外部導体との間の隙間に複数設けられた充実または中空の絶縁体ロッドと、
を備え、
前記絶縁体ロッドは、ポリプロピレンまたはポリエーテル・エーテル・ケトンからなり、前記内部導体の外周に均等に配置されたうえで同心撚りされて前記外部導体に接している、
ことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記外部導体の内径が10mm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記絶縁体ロッドの撚りピッチp1は、以下の式を満足する、
(D1+D2)×4≦p1≦(D1+D2)×10
ことを特徴とする請求項1または2に記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
前記外部導体は、複数の導線または導体テープを前記絶縁体ロッドと逆方向に同心撚りしてなる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の同軸ケーブル。
【請求項5】
前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記外部導体の撚りピッチp2は、以下の式を満足する、
(D1+D2)×0.5≦p2≦(D1+D2)×2
ことを特徴とする請求項5に記載の同軸ケーブル。
【請求項6】
前記外部導体は、前記絶縁体ロッドと逆方向に巻回された螺旋コルゲート管からなる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の同軸ケーブル。
【請求項7】
前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記外部導体の螺旋ピッチp3は、以下の式を満足する、
(D1+D2)×0.5≦p3≦(D1+D2)×2
ことを特徴とする請求項6に記載の同軸ケーブル。
【請求項8】
前記内部導体は、銀メッキ鋼線の単線または撚線メッキ鋼線、あるいは銀メッキ銅覆鋼線の単線または撚線からなる、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の同軸ケーブル。
【請求項1】
内部導体と、
前記内部導体の外側に同軸配置された外部導体と、
前記内部導体と前記外部導体との間の隙間に複数設けられた充実または中空の絶縁体ロッドと、
を備え、
前記絶縁体ロッドは、ポリプロピレンまたはポリエーテル・エーテル・ケトンからなり、前記内部導体の外周に均等に配置されたうえで同心撚りされて前記外部導体に接している、
ことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記外部導体の内径が10mm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記絶縁体ロッドの撚りピッチp1は、以下の式を満足する、
(D1+D2)×4≦p1≦(D1+D2)×10
ことを特徴とする請求項1または2に記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
前記外部導体は、複数の導線または導体テープを前記絶縁体ロッドと逆方向に同心撚りしてなる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の同軸ケーブル。
【請求項5】
前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記外部導体の撚りピッチp2は、以下の式を満足する、
(D1+D2)×0.5≦p2≦(D1+D2)×2
ことを特徴とする請求項5に記載の同軸ケーブル。
【請求項6】
前記外部導体は、前記絶縁体ロッドと逆方向に巻回された螺旋コルゲート管からなる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の同軸ケーブル。
【請求項7】
前記内部導体の直径をD1とし、前記複数の絶縁体ロッドが配置される領域の外接円直径をD2とすると、前記外部導体の螺旋ピッチp3は、以下の式を満足する、
(D1+D2)×0.5≦p3≦(D1+D2)×2
ことを特徴とする請求項6に記載の同軸ケーブル。
【請求項8】
前記内部導体は、銀メッキ鋼線の単線または撚線メッキ鋼線、あるいは銀メッキ銅覆鋼線の単線または撚線からなる、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の同軸ケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−51056(P2013−51056A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187139(P2011−187139)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]