説明

吐水装置

【課題】角パイプ材を用いて構成した吐水パイプに対して、吐水口部材を全周に亘り水密に取り付けることができ且つ見た目に小さくてすっきりとした形状で且つ安価に構成することのできる吐水装置を提供する。
【解決手段】角パイプ材を用いて構成した吐水パイプ44の先端部に取付部材48を固定状態に設けて、扁平な形状の滝口の吐水口64を有する吐水口部材46を取付部材48に取り付けて吐水装置22の先端部を構成する。その取付部材48には、内周面に、全周に亘り連続した曲面形状をなすシール面を兼ねた雌嵌合面58を形成しておく。一方吐水口部材46には、外周面に、雌嵌合面58に対応した形状の曲面形状をなす雄嵌合面68を形成して、そこにOリング72を保持させておき、Oリング72を径方向に弾性圧縮させる状態に雄嵌合面68を雌嵌合面58に嵌合させて吐水口部材46を取り付けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は吐水装置に関し、詳しくは角パイプ材を用いて吐水パイプを構成して成る吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者から見て即ち吐水パイプに対する正面視において吐水口を左右方向に長く、前後方向に短い扁平な形状とし、吐水をあたかも滝の如く吐水する滝口吐水口となした吐水装置がバスタブに給水を行う水栓の吐水装置として知られている。
例えば下記特許文献1,特許文献2,特許文献3にこの種の滝口吐水口を有する吐水装置の一例が開示されている。
【0003】
この種の滝口吐水口を有する吐水装置は、従来、吐水パイプが鋳物製とされており、そしてその鋳物製の吐水パイプの先端部に上記の扁平な形状の吐水口を有する吐水口部材を取り付けて吐水装置を構成していた。
【0004】
しかしながらこのような鋳物製の吐水パイプを用いた吐水装置は必然的に肉厚も厚くなり、また見た目にも大きなものとなってしまい、スリムで外観的にすっきりとした吐水装置を構成することが難しいのに加えてコストも高く、また吐水口部材を取り付けるための切削加工などの後加工も必要となってしまう。
【0005】
そこで吐水パイプとして横断面の内周形状が左右方向に長い扁平形状のパイプ材を用いることが考えられる。但しこのようなパイプ材を用いる場合は、通常は内周形状が横長の矩形状の角パイプ材を用いることとなる。
【0006】
このような角パイプ材を用いて吐水パイプを構成すれば、見た目に小さくてスリムな外観形状の吐水装置を容易に構成でき、またコストも安価に抑えることができるとともに、鋳物製の吐水パイプに必要とされる後加工も不要化することができる。
但しこの場合、吐水パイプの先端部に挿入状態に取り付けられる吐水口部材と吐水パイプとの間のシール構造が問題となる。
【0007】
吐水口部材と吐水パイプとの間のシール構造として、吐水口部材の外周面にOリング(全周に亘って角部を有しないリング形状をなした弾性を有するシール部材)を装着して、そのOリングを吐水口部材の外周面と吐水パイプの内周面とで径方向に弾性圧縮させ、シールするといったことが考えられるが、吐水パイプを角パイプ材を用いて構成した場合、通常は吐水口部材のOリングの装着個所の外周形状(横断面形状)を楕円形状等の周方向に連続した曲面形状となしておいて、そこにOリングを保持させ、これを吐水パイプの内周面に径方向に押し付けてシールすることとなるが、角パイプ材を用いて構成した吐水パイプでは、その内周形状が角部を有する形状であるため、Oリングをその角部において径方向に挟み込むことができず、必要なシールを実現できない。
【0008】
尤も吐水口部材におけるOリングの装着個所の外周形状を矩形状とするといったことも考えられなくはないが、この場合においてもOリングを全周に亘って均等に弾性圧縮し、シール作用させるといったことは実際上難しい。
【0009】
シール構造としては、その他に、角パイプ材から成る吐水パイプに対して吐水口部材を押し込んで、吐水口部材と吐水パイプとでシール部材を管軸方向に挟み込んで弾性圧縮し、シール作用させることが考えられるが、その場合、吐水口部材を押し込み且つその押込状態に維持するために、吐水口部材の先端面からビス等をねじ込んで吐水口部材を吐水パイプに固定するといったことが必要となる。
【0010】
しかしながらこのようにビス等を用いてシール確保するようになした場合、吐水口部材の先端面にビスねじ込みのためのスペースが必要となり、特に吐水口を左右方向に幅広く確保することが必要な滝口吐水口を有する吐水装置にあっては、そのようなスペースを確保することが困難である。
【0011】
滝口吐水口から見た目に美しい滝のような吐水を行うためには、滝口吐水口をできるだけ左右方向に幅広い形状としておくことが望ましいが、ビスねじ込みのためのスペースを吐水口部材の先端面に設けると、吐水口の左右方向の幅が必然的に小さくなってしまい、幅の広い美しい滝のような吐水を実現できなくなってしまう。
【0012】
以上滝口吐水口を有する吐水装置を代表例として説明したが、角パイプ材を用いて吐水パイプを構成し、且つ吐水口の形状を角パイプ材の内周形状とは異なった形状とするために、別体の吐水口部材を吐水パイプに取り付けてシール部材をそれら吐水口部材と吐水パイプとで管軸方向に弾性圧縮してシールする場合、吐水口が左右又は前後等に狭小化する問題を生じる点で、滝口吐水口以外の吐水口を有する吐水装置においても上記と同様の問題を生じる。
【0013】
尚本発明に対する先行技術として、特許文献4には吐水パイプの先端部に吐水口部材を挿入状態に取り付けた点が開示されている。
しかしながら特許文献4に開示のものは、整流機構部(吐水口部材)に対して、吐水パイプ内部に挿入した通水可撓管を給水ホースとして接続した形態のもので、吐水口部材と吐水パイプとの間をシールする必要は生じず(従ってこの文献に記載のものではそのためのシール部材は備えていない)、この特許文献4に開示のものは本発明の課題を解決することのできないもので本発明とは別異のものである。
【0014】
本発明に対する先行技術として、他に特許文献5に開示されたものがある。即ちこの特許文献5には、流出管(吐水パイプ)の先端部に整流部材(吐水口部材)を挿入状態に取り付けた点が開示されているが、この特許文献5に開示のものにおいても、吐水口部材と吐水パイプの先端部との間のシール構造については示されておらず、本発明とは別異のものである。
【0015】
【特許文献1】実開平1−124866号公報
【特許文献2】特開2001−20332号公報
【特許文献3】特開2007−262738号公報
【特許文献4】特開平10−259628号公報
【特許文献5】実開平2−93370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、角パイプ材を用いて構成した吐水パイプに対して、吐水口部材を全周に亘り水密に取り付けることができ且つ見た目に小さくてすっきりとした外観を呈し且つ安価に構成することのできる吐水装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、横断面の内周形状が角形状をなす角パイプ材を用いて、内周面が直接流水面を形成する吐水パイプを構成し、該吐水パイプの先端部に、該吐水パイプの管軸方向に貫通した吐水口を有する吐水口部材用の取付部材を固定状態に設けて、該取付部材に該吐水口部材を取り付けて成り、(イ)前記取付部材は、内周面に、前記吐水パイプの角部に対応した部分が曲面をなし且つ全周に亘り角部を形成することなく連続した面を成すシール面を兼ねた雌嵌合面が形成してあって、前記吐水パイプの先端の開口から該吐水パイプ内に挿入されて該吐水パイプの内周面に対し全周に亘りシール状態で固定してあり、(ロ)前記吐水口部材は、外周面に、前記雌嵌合面に対応した形状で周方向に連続した面を成す雄嵌合面が形成してあって、該雄嵌合面に、径方向に弾性圧縮されてシール作用する、全周に亘って角部を有しないリング形状をなしたシール部材が保持させてあり、該吐水口部材を前記吐水パイプの先端の開口より該吐水パイプ内に挿入して、前記シール部材を前記雄嵌合面と雌嵌合面とで径方向に弾性圧縮させる状態に該雄嵌合面を該雌嵌合面に対して嵌合させ、該嵌合状態で該吐水口部材を固定手段にて前記吐水パイプに抜止状態に固定してあることを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記取付部材は、外周面に前記吐水パイプの内周形状に対応した角形状の雄嵌合面を有し、該雄嵌合面において該吐水パイプの内周面に嵌合し、該雄嵌合面と該吐水パイプの内周面との間が全周に亘りシールしてあることを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記吐水パイプと前記取付部材とが金属製となしてあって、それら吐水パイプと取付部材とを全周溶接してシール状態に接合してあることを特徴とする。
【0020】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記吐水口部材には、通水用の細孔を面状に分散形成して成るストレーナが整流部材として水路を横切る状態に保持させてあることを特徴とする。
【0021】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記吐水パイプは前記内周形状が正面視において横長の矩形状をなしているとともに、前記吐水口部材の前記吐水口は、該正面視において左右方向に横長の扁平形状をなし、吐水を滝状に吐出する滝口吐水口となしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項6のものは、請求項4,5の何れかにおいて、前記固定手段は、前記吐水パイプの外部から操作可能で、前記吐水口部材を脱着可能に固定するものであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0023】
以上のように本発明は、内周形状が角形状をなす角パイプ材を用いて構成した吐水パイプに対し、内周面に、吐水パイプの角部に対応した部分が曲面をなし且つ全周に亘り角部を形成することなく連続した面を成すシール面を兼ねた雌嵌合面を形成した取付部材を、吐水パイプの先端の開口から内部に挿入して、全周に亘りこれをシール状態で吐水パイプに固定した上、その取付部材に対し、外周面に上記雌嵌合面に対応した形状の雄嵌合面を有し且つその雄嵌合面にリング形状のシール部材を保持させた吐水口部材を、それら雄嵌合面と雌嵌合面とでシール部材を径方向に弾性圧縮させる状態に雄嵌合面において雌嵌合面に嵌合させ、その嵌合状態で吐水口部材を固定手段にて吐水パイプに対し抜止状態に固定するようになしたものである。
【0024】
かかる本発明によれば、角パイプ材を用いて吐水パイプを構成しつつ、これに吐水口部材を取り付けることにより、吐水装置を安価に構成することができるとともに、吐水装置における吐水口を角パイプ材の内周形状とは異なった所望の吐水口形状となすことができ、またOリング等のシール部材を径方向に弾性圧縮させることで、良好に吐水口部材と吐水パイプとの間を取付部材を介して水密シール状態とすることができる。
【0025】
また径方向に弾性圧縮してシール作用するリング状のシール部材を用いることができるため、吐水口部材と吐水パイプとでシール部材を管軸方向に弾性圧縮してシールする場合のように、シール部材を管軸方向に弾性圧縮し且つ圧縮状態を維持するためのねじ等を吐水口の先端面からねじ込まなくてもよく、即ちねじ等のねじ込みのためのスペースを吐水口の先端面に確保しなくてもよく、これにより吐水口の先端面に吐水口のためのスペースを十分に確保することが可能となって、容易に所望の吐水口形状を実現することが可能となる。
【0026】
ここで上記取付部材は、外周面に、吐水パイプの内周形状に対応した角形状の雄嵌合面を有するものとなし、その雄嵌合面において取付部材を吐水パイプの内周面に嵌合させ、それら雄嵌合面と吐水パイプの内周面との間を全周に亘りシールしておくことができる(請求項2)。
【0027】
また吐水パイプと取付部材とは、それぞれを金属製となし、それらを全周溶接して互いをシール状態に接合しておくことができる(請求項3)。
【0028】
次に請求項4は、上記吐水口部材に、通水用の細孔を面状に分散形成して成るストレーナを整流部材として水路を横切る状態に保持させたもので、この請求項4によれば、整流部材として働くストレーナにより、吐水口部材の吐水口からの吐水を整流状態で綺麗な吐水として吐出させることができる。
【0029】
請求項5は、内周形状が横長の矩形状をなす角パイプ材を用いて吐水パイプを構成し、そして吐水口の形状を、左右方向に横長の扁平形状をなし、吐水を滝状に吐出する滝口吐水口となしたもので、この請求項5によれば、吐水口から見た目に美しい滝状の吐水を吐出することができる。
【0030】
請求項6は、吐水口部材を抜止状態に固定するための固定手段を、吐水パイプの外部から操作可能で、吐水口部材を脱着可能に固定するものとなしたもので、この請求項6によれば、吐水口部材をメンテナンスする必要が生じたとき、吐水口部材を簡単に吐水パイプから外部に取り出してメンテナンス作業することができる。
【0031】
特に請求項4に従って吐水口部材にストレーナを整流部材として保持させてある場合、このストレーナには細かな砂その他の異物が付着して目詰まりを生じることがあり、この場合吐水口部材を取り外すことによってストレーナを掃除し、目詰まりを解消するための作業を簡単に行うことができる。
ストレーナが目詰まりを生じていると、ストレーナによる整流作用が良好に行われず、吐水が乱れたものとなってしまって、吐水の美観が損なわれてしまう。
【0032】
特に請求項5に従って吐水口を滝口吐水口となし、吐水口からの吐水を滝状に吐出するようになしたものにおいては、ストレーナに目詰まりが生じると、せっかくの見た目に綺麗な滝状の吐水が不完全な滝状吐水となって、僅かなストレーナの目詰まりによってもその美観が大きく損なわれてしまう問題が生ずる。
しかるに請求項6に従って吐水口部材を脱着可能としておくことで、吐水の美しさを常に所望の目的とする美しさに保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に本発明を手洗用の水栓に適用した場合の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は手洗器で、12は手洗器10における鉢部、14はその鉢部12の排水口を開閉するポップアップ式の排水栓である。
16は手洗器10におけるカウンタ部で、このカウンタ部16に手洗用の水栓18が取り付けられている。
水栓18はここでは湯水混合水栓で、水栓本体20と吐水装置22とを有しており、それらがカウンタ部16に離隔して取り付けられている。
ここで水栓本体20と吐水装置22とには、それぞれ着座プレート24,26が設けられており、それらをカウンタ部16に着座させる状態に水栓本体20と吐水装置22とがカウンタ部16に取り付けられている。
【0034】
図2は水栓18を単独で示している。同図に示しているように水栓本体20はここではシングルレバー式のもので、ハウジングの内部に混合弁を有しており、その混合弁における可動弁体に対してレバーハンドル28が作動的に連結されている。
この水栓18では、レバーハンドル28を図中左右回動操作することで湯水の混合比率の変化即ち吐水の温度調節が行われ、また上下回動操作することで吐止水及び吐水の水量調節が行われる。
【0035】
水栓本体20には、水,湯の供給管を接続するための接続口30が設けられている。供給管を通じて送られた水,湯は、この接続口30から水栓本体内部に入り込み、そこで混合弁によって水と湯との混合が行われる。
その混合水は、水栓本体20から延び出した流出管32へと流出し、更にこの流出管32に接続された可撓性のホース34を通じて吐水装置22へと送られる。
尚、吐水装置22の側には上記の排水栓14を操作するための操作棒36が上下に移動可能に設けられている。
【0036】
水栓本体20,吐水装置22はそれぞれカウンタ部16の取付穴への挿通部38,40を有しており、それら挿通部38,40に雄ねじ部42が設けられている。
水栓本体20,吐水装置22は、各挿通部38,40をカウンタ部16の取付穴に下向きに挿通し、そしてカウンタ部16の裏側で各雄ねじ部42に固定ナットを締め込むことでカウンタ部16に取付固定される。
【0037】
図2において、44は吐水装置22の主要素をなす吐水パイプで全体が逆U字状のグースネック形状をなしている。
ここで吐水パイプ44は、横断面形状が内周形状及び外周形状ともに左右方向(使用者から見た正面視において左右方向)に長い横長の矩形状をなし、且つ全長に亘って同一の横断面形状をなす金属製(この例では真ちゅう製)の角パイプ材を用いて構成してある。
【0038】
図3,図4及び図5に吐水装置22の先端部の構造が具体的に示してある。
図に示しているように吐水装置22の先端部は、角パイプ材から成る吐水パイプ44に対して、吐水口部材46をその取付用の取付部材48とともに組み付けて構成してある。
【0039】
取付部材48は、ここでは金属製(この例では真ちゅう製)のもので、全体として矩形筒状をなしている。
詳しくは、全体の外周形状が吐水パイプ44の内周形状に対応した横長の矩形状をなしており、図6にも示しているようにその外周面全体が四隅に直角の角部Kを有する矩形状の雄嵌合面50を成している。
【0040】
取付部材48は、角部Kを吐水パイプ44の内周形状の角部Kに合致させる状態に、吐水パイプ44の先端の開口から内部に挿入されて吐水パイプ44の内周面に嵌合し、図4及び図5に示しているようにその嵌合状態の下で、図中上端側が吐水パイプ44に対して全周溶接(ろう付又ははんだ付)されて吐水パイプ44にシール状態で接合されている。
【0041】
図4及び図5中52はその溶接による接合部を表している。
この溶接による接合部52は、同時に取付部材48の外周面と吐水パイプ44の内周面とを全周に亘りシールするシール部としての働きもなしている。
尚この取付部材48には、図4及び図5に示しているように雄嵌合面50から中心側に僅かに引き込んだ位置で図中上向きに4角環状に立ち上がる堤部54を有している。
【0042】
ここで吐水パイプ44に対する取付部材48の溶接は次のよにして行うことができる。
即ち、図8(I)に示しているように取付部材48を吐水パイプ44内部に挿入し、且つ取付部材48の外周位置に溶接材料56を環状に配置した状態で、吐水パイプ44の外側からバーナ等でこれを加熱し溶接材料56を溶かすことで、吐水パイプ44に対する取付部材48の溶接を全周に亘って行うことができる。
【0043】
この取付部材48はその内周面が、吐水パイプ44の角部Kに対応した部分が曲面をなし且つ全周に亘り角部を形成することなく連続した面を成すシール面を兼ねた雌嵌合面58とされている。
ここではこのシール面を兼ねた雌嵌合面58は、図3に示しているように図中左右方向に平行に延びる前,後の内面60と、その両端を前,後に結ぶ半円形状の曲面62で繋いだ形状の横長の楕円ないし長円形状、詳しくはトラック楕円形状(グラウンドのトラック形状)をなしている。
【0044】
一方、吐水口部材46はここでは樹脂製(この実施形態ではPPO樹脂(ポリフェニレンオキシド樹脂)製)で、全体として筒状をなしており、その内側に吐水パイプ44の管軸方向に貫通した吐水口64を有している。
【0045】
ここで吐水口64は、正面視において左右方向に長く、前後方向に短い横長の扁平なスリット形状をなしており、吐水を滝状に吐出する滝口吐水口をなしている。
この吐水口64は、図4中左,右位置の内面が先端(図中下端)に向かって進むにつれ吐水口64の左右方向の幅を漸次拡げる形状の傾斜面とされている。
【0046】
一方これと直角方向の前,後位置の内面は、図5に示すように基端から先端に向かって互いに平行に延びるストレート形状の面とされている。
但し前,後位置の内面を、図9に示すように基端から先端に向かって吐水口64の前,後幅を漸次狭小化するような傾斜形状の面としておくこともできる。
尚この吐水口部材46の内面には、図4に示しているように管軸方向に縦に延びる整流板66が一体に設けてある。
【0047】
この吐水口部材46は、図3及び図7に示すように上部の外周面が、取付部材48の雌嵌合面58に対応したトラック楕円形状の雄嵌合面68とされている。
この雄嵌合面68には、周方向に環状をなす保持溝70が形成されていて、そこに弾性を有するシール部材としてのOリング72(図4及び図5参照)が保持されている。
【0048】
吐水口部材46は、この雄嵌合面68を取付部材48の雌嵌合面58に嵌合させることによって、取付部材48を介して吐水パイプ44に取り付けられる。
このとき、雄嵌合面68の保持溝70に保持されたOリング72は、雄嵌合面68と取付部材48の雌嵌合面58とによって全周に亘り径方向に弾性圧縮され、その弾性圧縮状態の下で取付部材48と吐水口部材46との間を全周に亘り水密にシール作用する。
【0049】
この吐水口部材46には、メッシュ部材,パンチングメタル材等から成り、通水用の細孔を全面に分散形成して成る異物除去用のストレーナ74-1,74-2が整流部材として水路を横切る状態にストレーナ保持部材76を介して取り付けられ保持されている。
【0050】
このストレーナ保持部材76は、外周面及び内周面がそれぞれトラック楕円形状をなす所定厚みのリング状をなしており、そしてその図中上面の取付面78-1にストレーナ74-1が、また下面の取付面78-2にストレーナ74-2がそれぞれ固着状態に取り付けられ、それらストレーナ74-1,74-2が図中上下に離隔して位置する状態にストレーナ保持部材76に保持されている。
【0051】
このリング状をなすストレーナ保持部材76には、図中下向きに突出する、正面形状が逆T字状の係合片80が設けられていて、この係合片80が、吐水口部材46の雄嵌合面68に形成された対応する逆T字状の係合溝82に係合せしめられ、それらの係合作用によって、ストレーナ保持部材76が吐水口部材46の上端に取り付けられ、一対のストレーナ74-1,74-2とともに保持されている。
【0052】
吐水口部材46にはまた、図中上下方向(吐水パイプ44の管軸方向)の中間位置に、径方向外方に突出した4角形状の当接部84が設けられている。
吐水口部材46は、取付部材48への挿入時にこの当接部84が取付部材48の図中下端に当接することによって、その挿入量が規定される。
【0053】
吐水口部材46にはまた、その先端(図中下端)に吐水口64を残して吐水パイプ44の先端開口を閉鎖する横長の矩形状の閉鎖部86が設けられている。
吐水口部材46は、吐水パイプ44内部への挿入状態で、この閉鎖部86が吐水パイプ44の先端内周面に内嵌状態に嵌合し、吐水パイプ44の先端の開口の、吐水口64周りの部分を閉鎖する。
【0054】
吐水口部材46は、図7に示すようにその前面と後面とが前後対称形状をなしており、そしてそれぞれの面に左右方向に細長い矩形状の係合凹部88が設けられている。
尚前面と後面とが対称形状とされているのは、吐水口部材46を取り付ける際に前後の向きが逆向きであっても取付可能とするためである。
【0055】
図3において、90はこの係合凹部88において吐水口部材46を、吐水パイプ44に脱着可能に固定するための固定部材(ここでは樹脂製)であって、吐水パイプ44にはこれに対応して左右に長穴形状をなす貫通の固定孔92が設けられている。
【0056】
固定部材90は、図5に示しているようにその左右端部に、左右方向に弾性を有する弾性爪93を有しており、またそれら一対の弾性爪93の間に、吐水口部材46の係合凹部88に係合する係合突部94を有している。
ここで一対の弾性爪93のそれぞれには、図5中上下に互いに逆方向に傾斜する傾斜形状のカム面95と96とが設けられている。
また係合突部94の付根部には段付部98が設けられている。
【0057】
この固定部材90による吐水口部材46の吐水パイプ44への固定は次のようにして行われる。
即ち、図5に示しているように吐水口部材46を吐水パイプ44内部に挿入し、そして雄嵌合面68を取付部材48の雌嵌合面58に嵌合させた状態の下で、固定部材90を吐水パイプ44の固定孔92に押し込むと、一対の弾性爪93がカム面95のカム作用で互いに接近する方向に弾性変形し、その弾性変形を伴って固定部材90が固定孔92に嵌め込まれる。
このとき、吐水パイプ44の固定孔92を通過した一対の弾性爪93が、カム面96において固定孔92の縁部に係合し、吐水パイプ44に固定される。
【0058】
またこのとき、固定部材90の係合突部94が吐水口部材46の係合凹部88の内部に入り込んで係合し、ここにおいて吐水口部材46が吐水パイプ44、具体的には取付部材48から抜止状態に固定される。
この固定部材90は、このようにして吐水パイプ44に嵌込状態に固定した後において、必要が生じたとき容易にこれを取り外すことができる。
【0059】
詳しくは、固定部材90の段付部98にマイナスドライバー等の工具の先端部を当てて抜出方向の力を加えると、固定部材90の一対の弾性爪93がカム面96のカム作用で互いに接近する方向で弾性変形して、吐水パイプ44の固定孔92に対する一対の弾性爪93の係合が解除され、ここにおいて固定部材90を吐水パイプ44から外すことができる。
而して固定部材90を外すことによって、吐水口部材46を取付部材48及び吐水パイプ44から容易に外部へと抜き出すことができる。
【0060】
図8は、本実施形態における吐水口部材46の取付けの手順を示している。
上述したようにこの実施形態では、図8(I)に示すように取付部材48を溶接材料56とともに吐水パイプ44内部且つ一定深さの奥部まで挿入し、その状態で吐水管44周りから溶接材料56をバーナ等にて炙り加熱することで溶接材料56を溶かし、取付部材48を吐水パイプ44に溶接接合する。
【0061】
そしてその後、一対のストレーナ74-1,74-2をストレーナ保持部材76にて吐水口部材46に組み付けた状態の下で、吐水口部材46を吐水パイプ44の先端開口からその内部に挿入し、そして吐水口部材46の雄嵌合面68を、取付部材48の雌嵌合面58に嵌合させる。
そしてその後、固定部材90を吐水パイプ44の固定孔92に嵌め込むことで、吐水口部材46を吐水パイプ44から抜止状態に且つ脱着可能に固定することができる。
【0062】
この実施形態の場合、図2のホース34を通じて吐水パイプ44に送られた水は、吐水パイプ44の内周面を直接の流水面として吐水パイプ44に沿って先端側まで流れ、そして先ず吐水口部材46に保持された一対のストレーナ74-1,74-2を通過して流れる。
このとき、水の流れは一対のストレーナ74-1,74-2によって2段階に整流され、吐水口部材46の基端部位において先ずこれらストレーナ74-1,74-2によって流れが整えられる。
【0063】
而して吐水パイプ44を先端側に流れて来た水は、その途中での流速分布の不均一や流れの方向の分布の不均一さがこれら一対のストレーナ74-1,74-2を通過することで解消されて均等化され、その上で吐水口部材46の吐水口64の形状に応じて水流の形が整えられて、最終的に左右方向に扁平な形状をなす滝口の吐水口64の先端(出口)から滝状の吐水として下方に吐出される。
【0064】
以上のような本実施形態によれば、内周形状が横長の矩形状をなす角パイプ材を用いて吐水パイプ44を構成しつつ、これに吐水口部材46を取り付けることにより、吐水装置22における吐水口64を角パイプ材の内周形状とは異なった吐水口形状となすことができるとともに、Oリング72を径方向に弾性圧縮させることで、良好に吐水口部材46と吐水パイプ44との間を取付部材48を介して水密シール状態とすることができる。
【0065】
また径方向に弾性圧縮してシール作用するOリング72を用いることができるため、吐水口部材46と吐水パイプ44とでシール部材を管軸方向に弾性圧縮してシールする場合のように、シール部材を管軸方向に弾性圧縮し且つ圧縮状態を維持するためのねじ等を吐水口64の先端面からねじ込まなくてもよく、即ちねじ等のねじ込みのためのスペースを吐水口64の先端面に確保しなくてもよく、これにより吐水口64の先端面に吐水口64のためのスペースを十分に確保することが可能となって、容易に所望の滝口の吐水口形状を実現することができる。
【0066】
また吐水口部材46には、ストレーナ74-1,74-2を整流部材として水路を横切る状態に保持させているため、吐水口64からの吐水を整流状態で綺麗な滝状の流れとして吐出させることができる。
【0067】
更に吐水口部材46を抜止状態に固定するための固定部材を吐水パイプ44の外部から操作可能で、吐水口部材46を脱着可能に固定するものとなしてあることから、吐水口部材46をメンテナンスする必要が生じたときに、簡単に吐水口部材46を吐水パイプ44から外部に取り出し、ストレーナ74-1,74-2等をメンテナンス作業することができる。
【0068】
ストレーナ74-1,74-2に細かな砂その他の異物が付着して目詰まりを生じた場合、ストレーナ74-1,74-2による整流作用が良好に行われず、滝状の吐水が乱れたものとなって吐水の美観が損なわれてしまう。
しかるに本実施形態に従ってストレーナ74-1,74-2を保持した吐水口部材46を脱着可能としておくことで、吐水の美しさを常に所望の目的とする美しさに保持することができる。
【0069】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば吐水口部材を吐水パイプに対して脱着可能に固定するための固定部材として、上例以外の他の様々な構造,形態のものを用いることが可能であるし、また本発明は吐水パイプの内周形状が正方形状その他様々な角形状のものに対して適用することが可能であるし、更に吐水口が上記のような滝口吐水口である場合だけでなく、他の様々な形状の吐水口をなしている場合においても適用可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態である吐水装置を備えた水栓を手洗器に設置状態で示す図である。
【図2】図1の水栓を単独で示す図である。
【図3】同実施形態の吐水装置を各部品に分解して示す斜視図である。
【図4】同実施形態の吐水装置の要部の縦断面図及び横断面図である。
【図5】図4とは90°異なった方向の縦断面図及びその一部の拡大図である。
【図6】同実施形態における取付部材の単品の斜視図である。
【図7】同実施形態における吐水口部材の単品の斜視図である。
【図8】同実施形態における吐水口部材の取付けの手順を説明するための説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態の要部の図である。
【符号の説明】
【0071】
22 吐水装置
44 吐水パイプ
46 吐水口部材
48 取付部材
50,68 雄嵌合面
58 雌嵌合面
64 吐水口
72 Oリング(シール部材)
74-1,74-2 ストレーナ
90 固定部材(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面の内周形状が角形状をなす角パイプ材を用いて、内周面が直接流水面を形成する吐水パイプを構成し、該吐水パイプの先端部に、該吐水パイプの管軸方向に貫通した吐水口を有する吐水口部材用の取付部材を固定状態に設けて、該取付部材に該吐水口部材を取り付けて成り、
(イ)前記取付部材は、内周面に、前記吐水パイプの角部に対応した部分が曲面をなし且つ全周に亘り角部を形成することなく連続した面を成すシール面を兼ねた雌嵌合面が形成してあって、前記吐水パイプの先端の開口から該吐水パイプ内に挿入されて該吐水パイプの内周面に対し全周に亘りシール状態で固定してあり、
(ロ)前記吐水口部材は、外周面に、前記雌嵌合面に対応した形状で周方向に連続した面を成す雄嵌合面が形成してあって、該雄嵌合面に、径方向に弾性圧縮されてシール作用する、全周に亘って角部を有しないリング形状をなしたシール部材が保持させてあり、
該吐水口部材を前記吐水パイプの先端の開口より該吐水パイプ内に挿入して、前記シール部材を前記雄嵌合面と雌嵌合面とで径方向に弾性圧縮させる状態に該雄嵌合面を該雌嵌合面に対して嵌合させ、該嵌合状態で該吐水口部材を固定手段にて前記吐水パイプに抜止状態に固定してあることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
請求項1において、前記取付部材は、外周面に前記吐水パイプの内周形状に対応した角形状の雄嵌合面を有し、該雄嵌合面において該吐水パイプの内周面に嵌合し、該雄嵌合面と該吐水パイプの内周面との間が全周に亘りシールしてあることを特徴とする吐水装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記吐水パイプと前記取付部材とが金属製となしてあって、それら吐水パイプと取付部材とを全周溶接してシール状態に接合してあることを特徴とする吐水装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記吐水口部材には、通水用の細孔を面状に分散形成して成るストレーナが整流部材として水路を横切る状態に保持させてあることを特徴とする吐水装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記吐水パイプは前記内周形状が正面視において横長の矩形状をなしているとともに、前記吐水口部材の前記吐水口は、該正面視において左右方向に横長の扁平形状をなし、吐水を滝状に吐出する滝口吐水口となしてあることを特徴とする吐水装置。
【請求項6】
請求項4,5の何れかにおいて、前記固定手段は、前記吐水パイプの外部から操作可能で、前記吐水口部材を脱着可能に固定するものであることを特徴とする吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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