説明

含フッ素ポリエーテル化合物

低い蒸気圧および粘性を有し、使用時の劣化の問題を防ぎ、潤滑剤、表面改質剤等、または界面活性剤等として有用に用いうる化合物を提供する。
次式(X−)Y(−Z)で表わされる含フッ素ポリエーテル化合物。
ただし、Xは次式HO−(CHCHO)・(CHCH(OH)CHO)−(CH−CFO(CFCFO)−で表される基(aは0〜100の整数、bは0〜100の整数、cは1〜100の整数、dは1〜200の整数。)、Zは次式RO(CFCFO)−で表わされる基(Rは炭素数1〜20の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されたペルフルオロアルキル基等、gは3〜200の整数。)、Yは(x+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基等、xは2以上の整数、zは0以上の整数、(x+z)は3〜20の整数。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤、表面改質剤、または界面活性剤等として有用な新規な含フッ素ポリエーテル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロ化されたポリエーテル化合物は、潤滑剤、表面改質剤、または界面活性剤等として広く使用される。たとえば、末端基を−CHOHに変換した化合物として下式(I)で表される化合物(ただし、hおよびiは、それぞれ1以上の整数を示す。)が知られている(たとえば、非特許文献1参照)。
HO−CHCFO−(CFCFO)−(CFO)−CFCHOH (I)
該化合物(I)を基材表面に塗布することにより形成した被膜の一部が欠損したときには、欠損部周辺の化合物(I)が欠損部を覆い、該欠損部を修復する性質(自己修復性)があることが文献上知られている。また自己修復性には、化合物(I)の分子末端に存在する−CHOH基が関与していることも知られている。
【0003】
化合物(I)等のペルフルオロ化されたポリエーテル化合物が高温条件で使用されるようになるにつれ、より低い蒸気圧を有する化合物が望まれている。低い蒸気圧を達成する試みとして、高分子量化が行われている。しかし、上記化合物(I)を高分子化すると、粘度が著しく上昇して、塗布が困難になる問題があった。また高分子量化により単位体積当たりの−CHOH基の比率が低くなり、自己修復性が低下する問題があった。
【0004】
これらの問題を解決する化合物として、下式(II)で示される化合物(ただしhおよびiは、それぞれ1以上の整数を示す。)も提案されているが粘度が高かった。
HO−CHCH(OH)CFO−(CFCFO)−(CFO)−CFCH(OH)CH−OH (II)
【0005】
さらに、化合物(I)および化合物(II)は、いずれも分子構造中に−OCFO−単位を必須とする。該単位は化合物の分解反応の原因となる単位であり、該単位を有する化合物は使用により劣化がおこる問題があった(たとえば、非特許文献2、非特許文献3、および非特許文献4参照)。
【0006】
−OCFO−単位が存在しないペルフルオロ化されたポリエーテル化合物としては、末端が−COOH基である化合物が報告されている(たとえば、非特許文献5参照)。しかし、末端が−COOH基である化合物は、高温条件下におかれると−COOH末端が脱COして極性の末端基を喪失する問題、および、自己修復性が低下する問題があった。また、−COOH基を有する化合物の−COOH基の酸性は大であるため、腐食の原因となる問題があった。
【0007】
【非特許文献1】C.Tonelliら、J.Fluorine Chem.、95巻、1999年、51−70頁
【非特許文献2】W.Fongら、「IEEE Transactions on Magnetics」、35巻2号、1999年3月、911−912頁
【非特許文献3】J.Scheirs著、「Modern Fluoropolymers」、John Wiley & Sons Ltd.,1997年、466−468頁
【非特許文献4】P.H.Kasai、「Macromolecules」、25巻、1992年、6791頁
【非特許文献5】Kyle W. Felllingら、J.Fluorine Chem.、125巻、2004年、749−754頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決する目的でなされたものであり、低い蒸気圧および粘性を有し、化学的な安定性に優れ、使用時の劣化の問題のない新規な含フッ素ポリエーテル化合物の提供を目的とする。また本発明は自己修復性に優れ、かつ、潤滑油またはコーティング剤等として有用に用いうる含フッ素ポリエーテル化合物、および該化合物を含む溶剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の発明を提供する。
1.下式(A)で表わされる含フッ素ポリエーテル化合物。
(X−)Y(−Z) (A)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
X:下式(X)で表される基(ここで、aは0〜100の整数、bは0〜100の整数、cは1〜100の整数、dは1〜200の整数を示す。)。
HO−(CHCHO)・(CHCH(OH)CHO)−(CH
−CFO(CFCFO)− (X)
Z:下式(Z)で表わされる基(ここで、Rは炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基または該ペルフルオロアルキル基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基(ただし、該基中には−OCFO−構造は存在しない。)を示す。gは3〜200の整数を示す。)。
O(CFCFO)− (Z)
Y:(x+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された(x+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基を示し、該基中には−OCFO−構造は存在しない。
x、z:xは2以上の整数であり、zは0以上の整数であり、(x+z)は3〜20の整数である。xが2以上である場合の式(X)で表される基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、zが2以上である場合の式(Z)で表される基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0010】
2.式(X)で表される基が下式(X−1)で表される基〜下式(X−4)で表される基から選ばれるいずれかの基である上記1に記載の化合物。ただし、dは前記と同じ意味を示す。
HOCHCFO(CFCFO)− (X−1)
HOCHCH(OH)CHOCHCFO(CFCFO)− (X−2)
HOCHCHCFO(CFCFO)− (X−3)
HOCHCHOCHCFO(CFCFO)− (X−4)
【0011】
3.式(A)で表される化合物が下式(A−1)で表される化合物または下式(A−2)で表される化合物である上記2に記載の化合物。ただし、X10は式(X−1)で表される基〜下式(X−4)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、Yはペルフルオロアルカン−トリイル基を示し、Yはペルフルオロアルカン−テトライル基を示す。
(X10−) (A−1)
(X10−) (A−2)
【0012】
4.式(A)で表される化合物が下式(A−3)で表される化合物である上記2に記載の化合物。ただし、X10は式(X−1)で表される基〜下式(X−4)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、Yはペルフルオロアルカン−トリイル基を示し、Zは前記と同じ意味を示す。
(X10−)−Z (A−3)
【0013】
5.式(A)で表される化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した分子量が500〜100万であり、かつ、分子量分布が1.0〜1.5である上記1〜4のいずれかに記載の含フッ素ポリエーテル化合物。
【0014】
6.上記1〜5のいずれかに記載の含フッ素ポリエーテル化合物と有機溶媒とを含む溶液組成物。
【0015】
7.溶液組成物中の含フッ素ポリエーテル化合物の濃度が、0.01〜50質量%である上記6に記載の溶液組成物。
【0016】
8.上記1〜5のいずれかに記載の含フッ素ポリエーテル化合物を必須成分とする潤滑剤、表面改質剤、または界面活性剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、潤滑剤、表面改質剤等、または界面活性剤等として有用な新規な含フッ素ポリエーテル化合物が提供される。本発明の含フッ素ポリエーテル化合物は、低い蒸気圧および粘性を有し、使用時の劣化の問題が少ない性質を有する。また本発明の含フッ素ポリエーテル化合物は、自己修復性に優れる化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書においては、式(A)で表わされる含フッ素ポリエーテル化合物を化合物(A)のように記す。また式(X)で表わされる基を基(X)のように記す。他の式においても同様に記す。
本発明は下記化合物(A)を提供する。本発明の化合物(A)中には−OCFO−構造は存在しない。
(X−)Y(−Z) (A)
化合物(A)中のXは下式(X)で表される1価の基を示す。
HO−(CHCHO)・(CHCH(OH)CHO)−(CHCF−O(CFCFO)− (X)
ここで、aは−(CHCHO)−単位の数を示し、0〜100の整数であり、0〜10の整数が好ましく、0〜2が特に好ましく、0または1がとりわけ好ましい。
【0019】
bは−(CHCH(OH)CHO)−単位の数を示し、0〜100の整数であり、0〜10の整数が好ましく、0〜2が特に好ましく、0または1がとりわけ好ましい。
【0020】
aとbとの組み合わせとしては、aもbも0である場合、aが0でありbが1以上(bは1であるのが好ましい。)である場合、aが1以上(aは1であるのが好ましい)でありbが0である場合が好ましい。
【0021】
cは−(CH)−単位の数を示し、1〜100の整数であり、1〜10の整数が好ましく、1または2が特に好ましい。cが2以上である場合、cは偶数であるのが、製造のしやすさの点で好ましい。
【0022】
dは−(CFCFO)−単位の数を示し、1〜200の整数であり、3〜100の整数が好ましく、3〜200の整数が特に好ましく、3〜70の整数がとりわけ好ましく、5〜50の整数がさらに好ましい。a、b、およびcのいずれかが0である場合には、該単位は存在しないことを意味する。
【0023】
式(X)においては、aが0、bが0、cが1、およびdが3〜200である基(X)、aおよびbの一方が1以上であり他方が0であり、cが1、およびdが3〜200である基(X)が好ましい。
【0024】
式(X)における「−(CHCHO)・(CHCH(OH)CHO)−」部分の表記は、−(CHCHO)−単位および−(CHCH(OH)CHO)−単位の両単位がそれぞれ1単位以上存在する場合の並び方が、限定されないことを意味する。すなわち、−(CHCHO)−単位および−(CHCH(OH)CHO)−単位がそれぞれ1つずつ存在する場合には、水酸基に結合する単位は、−(CHCHO)−単位であっても−(CHCH(OH)CHO)−単位であってもよい。
【0025】
また−(CHCHO)−単位および−(CHCH(OH)CHO)−単位が存在し、かつ、少なくとも一方の単位が2単位以上存在する場合には、これらの単位の配列はブロック状であってもランダム状であってもよく、ブロック状であるのが好ましく、水酸基末端から式(X)で表記した各単位の順列でブロック状に配列しているのが特に好ましい。
【0026】
基(X)としては、以下の例が挙げられる。ただし、dは前記と同じ意味を示す。
HOCHCFO(CFCFO)− (X−1)
HOCHCH(OH)CHOCHCFO(CFCFO)− (X−2)
HOCHCHCFO(CFCFO)− (X−3)
HOCHCHOCHCFO(CFCFO)− (X−4)
このうち基(X)としては、基(X−1)または基(X−2)が製造のしやすさ、および化合物が分解しにくく、安定である点で好ましい。
【0027】
式(A)中のZは下式(Z)で表わされる1価の基を示す。
−O−(CFCFO)− (Z)
ここで、Rは炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基、または、炭素数1〜20の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されたペルフルオロアルキル基(ただし、該基中には、−OCFO−単位は存在しない。)示す。Rの構造としては、直鎖構造、分岐構造、環構造、または部分的に環構造を有する構造が挙げられ、直鎖構造または分岐構造が好ましく、直鎖構造が特に好ましい。Rの炭素数は1〜20が好ましく、1〜16が特に好ましい。
【0028】
の具体例としては、以下の基が挙げられ、基(RF1)が好ましい。ただし、sは0〜15の整数を示し、Cはペルフルオロシクロヘキシル基を示し、tは0〜15の整数を示し、Aはペルフルオロ化アダマンタンチル基を示し、tは0〜15の整数を示す。
CF(CF− (RF1)、
−(CF−、
−(CF−。
【0029】
gは−(CFCFO)−単位の数を示し、3〜200の整数を示し、3〜100の整数が好ましく、3〜70の整数が特に好ましく、5〜50の整数がとりわけ好ましい。
【0030】
基(Z)としては、以下の例が挙げられる。
CF−O−(CFCFO)− (Z−1)
CF(CF−O−(CFCFO)− (Z−2)
CF(CF−O−(CFCFO)− (Z−3)
化合物(A)は、Yにx個の1価の基(X)およびz個の1価の基(Y)が結合した化合物であり、Yは(x+z)価の基である。
【0031】
Yの価数である(x+z)は3以上の整数であり、3〜20の整数が好ましく、3〜10の整数が特に好ましい。(x+z)の値は、化合物(A)の用途に応じて適宜調節するのが好ましく、化合物(A)を後述する潤滑剤として使用する場合の(x+z)は3〜10の整数が好ましく、3または4がとりわけ好ましく、3がさらに好ましい。Yの価数が3または4である化合物(特に3である化合物)は、製造がしやすく、沸点も適切であり、かつ自己修復性に優れる。
【0032】
基(X)の数(x)は2以上の整数であり、3〜20の整数が好ましく、3〜10の整数が特に好ましく、3または4がとりわけ好ましい。基(Z)の数(z)は0以上の整数であり、zは0〜17の整数が好ましく、0〜7の整数が特に好ましく、0(すなわち基(Z)は存在しない)または1がとりわけ好ましい。xが2以上である場合の基(X)はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、zが2以上である場合の基(Z)はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
Yの炭素数は1〜50が好ましく、1〜20が特に好ましく、とりわけ3〜5が好ましい。Yが(x+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基である場合の該基とは、炭素原子とフッ素原子のみからなる(x+z)価の飽和の基である。Yがエーテル性酸素原子を含む基である場合の該エーテル性酸素原子の数は、1個または2個以上であり、1〜3個が好ましい。該エーテル性酸素原子は、炭素−炭素原子間に存在することから、XとZに結合するYの末端部分にはエーテル性酸素原子は存在しない。また化合物(A)中には−OCFO−構造が存在しないことから、Y中には−OCFO−構造は存在しない。また、Y中のエーテル性酸素原子は結合末端の炭素原子には結合しない。Yはエーテル性酸素原子を含まない基である(x+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基が好ましい。3価の基(Y)としては、ペルフルオロアルカン−トリイル基、4価の基(Y)としては、ペルフルオロアルカン−テトライル基が特に好ましく、炭素数1〜20のこれらの基がとりわけ好ましく、さらに炭素数3〜5のこれらの基が好ましい。
【0034】
Zが存在せず、基(Y)が3価の基(Y)である場合の化合物(A)としては、下記化合物(A−1)が好ましい。ただし、X10は基(X−1)〜基(X−4)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、Yはペルフルオロアルカン−トリイル基を示す。
(X10−) (A−1)
【0035】
化合物(A−1)としては、X10が基(X−1)または基(X−2)である場合の下記化合物が好ましい。
(HOCHCFO(CFCFO)−) (A−11)
(HOCHCH(OH)CHOCHCFO(CFCFO)−) (A−12)
【0036】
Zが存在せず、基(Y)が4価の基(Y)である場合の化合物(A)としては、下記化合物(A−2)が好ましい。ただし、X10は基(X−1)〜基(X−4)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、Yはペルフルオロアルカン−テトライル基を示す。
(X10−) (A−2)
【0037】
化合物(A−2)としては、X10が基(X−1)または基(X−2)である場合の下記化合物(A−21)または下記化合物(A−22)が好ましい。
(HOCHCFO(CFCFO)−) (A−21)
(HOCHCH(OH)CHOCHCFO(CFCFO)−) (A−22)
【0038】
Zが存在する場合、基(Y)が3価の基(Y)である下記化合物(A−3)が好ましい。ただし、X10は式(X−1)で表される基〜下式(X−4)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、Yはペルフルオロアルカン−トリイル基を示し、Zは式(Z)で表される基を示す。
(X10−)−Z (A−3)
【0039】
化合物(A−3)としては、X10が基(X−1)または基(X−2)である場合の下記化合物(A−31)および下記化合物(A−32)が好ましい。
(HOCHCFO(CFCFO)−)−Z (A−31)
(HOCHCH(OH)CHOCHCFO(CFCFO)−)−Z (A−32)
上記の式中、Y(ペルフルオロアルカン−トリイル基)としては、下記の基が挙げられる。
【0040】
【化1】

(ペルフルオロアルカン−テトライル基)としては、下記の基が挙げられる。
【0041】
【化2】

上記以外の基(Y)の例は、化合物(A)の例中に示される。
【0042】
化合物(A)は、1種の化合物として存在しても、2種以上の化合物としても存在してもよい。後者の例としては、化合物(A)中に存在する基(X)および/または基(Z)が異なる2種以上の化合物を含む組成物としても存在する例が挙げられる。
【0043】
化合物(A)が化合物(A)の2種以上からなる組成物である場合、基(X)におけるaの平均は0〜2の正数が好ましく、0が特に好ましい。bの平均は0〜2の正数が好ましい。cの平均は1が好ましい。dの平均は3〜100の正数が好ましい。gの平均は3〜100の正数が好ましい。
【0044】
化合物(A)の分子量は500〜10万が好ましく、1000〜2万が特に好ましい。また化合物(A)が2種以上の化合物の混合物からなる場合、化合物(A)の分子量分布(M/M)は1.0〜1.5が好ましく、1.0〜1.25が特に好ましい。分子量および分子量分布が該範囲にある場合には、粘度が低く、蒸発成分が少なく、溶媒に溶解した際の均一性に優れる利点がある。化合物(A)の分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定でき、測定条件は、後述する実施例中に記載した条件が採用できる。
【0045】
本発明における化合物(A)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。ただし、下式中のXおよびZは前記と同じ意味を示す。kは1〜10の整数を示し、同一分子中にkが2個以上存在する場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
【化3】

【0047】
本発明の化合物(A)中には−(OCFO)−で表される単位は存在しない。−(OCFO)−単位が存在しない化合物とは、通常の分析手法(19F−NMR等)では該単位の存在が検出できない化合物を意味する。
【0048】
本発明の化合物(A)は、該化合物(A)に対応する炭素骨格を有する多価ポリエチレングリコールから本発明者によるWO02/4397等に記載される方法と同様の方法で製造できる。原料となる多価ポリエチレングリコールとしては、種々の構造、分子量のものが安価に市販されており、容易に入手できる。また、多価アルコールにエチレンオキサイドを付加することによって容易に合成できる。
【0049】
具体的には、化合物(A)におけるcが1である化合物は以下の方法で製造できる。
ただし、下式中の記号は前記の意味と同じ意味を示す。YはYと同一の基、または、Yのフッ素原子の1部または全部が水素原子に置換された基を示す。RはRと同一の基、またはRのフッ素原子の1部または全部が水素原子に置換された基を示し、Rと同一の基が好ましい。Rは、1価の含フッ素有機基を示し、ペルフルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含有するペルフルオロアルキル基(ただし、該基中には−OCFO−単位は存在しない。)が好ましい。RbFは、1価のペルフルオロ化有機基を示し、Rと同一のペルフルオロアルキル基またはRと同一のエーテル性酸素原子を含有するペルフルオロアルキル基が好ましい。Rはアルキル基を示す。Xは塩素原子またはフッ素原子を示す。
【0050】
すなわち、下記化合物(D1)を下記化合物(D2)と反応させて下記化合物(D3)を得て、該化合物(D3)をペルフルオロ化して下記化合物(D4)を得て、該化合物(D4)においてエステル結合の分解反応を行って下記化合物(D5)を得る。つぎに化合物(D5)に下記化合物(D6)を反応させて下記化合物(D7)を得て、または化合物(D5)を加水分解して下記化合物(D8)を得て、つぎに化合物(D7)を還元およびエステル結合の分解反応を行なって、または化合物(D8)をそれぞれ還元して、下記化合物(A−4)を得る。また化合物(D7)は、化合物(D4)と式R−OH(ただし、Rは前記と同じ意味を示す。)で表される化合物とをエステル交換反応することによっても得られる。該化合物(A−4)は、化合物(A)におけるcが1であり、aおよびbが0である化合物である。
【0051】
【化4】

【0052】
化合物(A)において、cが2以上であり、aおよびbが0である下記化合物(A−5)は、前記方法における化合物(D5)にヨウ素(I)またはLiI等を反応させることにより、末端−COF基を−I(ヨウ素原子)に変換して化合物(D9)を得る。つぎに化合物(D9)に任意のモル数のエチレンを付加反応させて化合物(D10)とした後に、化合物(D10)の末端ヨウ素原子を発煙硫酸またはベタインによってアルコール化する方法によって得ることができる。
【0053】
【化5】

【0054】
aが1以上である化合物(A)は、前記の方法で得た化合物(A−4)または化合物(A−5)に、それぞれ、エチレンカーボネートおよび/またはエチレンオキサイドを付加することにより得られる。またbが1以上である化合物(A)は、化合物(A−4)または化合物(A−5)に、それぞれ、グリシジルアルコールを付加することによって得られる。
【0055】
エチレンカーボネートおよび/またはエチレンオキサイドの付加反応は、公知の方法および条件にならって実施できる。ここで化合物(A−4)または化合物(A−5)のフッ素含有量が高い場合には、付加反応に用いるエチレンカーボネートおよび/またはエチレンオキサイドとの相溶性が低いため、付加反応の反応系が2相分離することがある。相分離が起こると、反応時間が長くなり効率的ではないため、相溶性を高めるための溶媒を反応系中に添加して反応を行うのが好ましい。該溶媒としては、ヒドロフルオロカーボン類(HCFC類)が挙げられる。
【0056】
該製造方法の出発物質である化合物(D1)は、通常の場合、−(CHCHO)−単位の数が異なる2種以上の混合物であるものが入手しやすい。混合物である化合物(D1)を用いて上記製造方法を実施した場合には、生成する化合物(A)もまた混合物として生成する。
【0057】
化合物(A)の製造方法における各反応工程は、公知の反応の手法および条件(たとえばWO02/4397号パンフレット等に記載される方法)にならって実施できる。また化合物(D5)の化合物(D7)および化合物(D8)への反応工程も、公知の方法にしたがって実施できる。たとえば、化合物(D7)および化合物(D8)の製造における還元工程は、特開平10−72568号公報(段落0021)等に記載される方法にしたがって実施できる。該還元工程は、NaBH、ボラン−THF、リチウムアルミニウムヒドリド等の還元剤を用いて実施するのが好ましい。
上記方法で得た化合物(A)を含む生成物は、通常の場合、目的に応じた精製処理を行って高純度の化合物(A)を得た後に目的とする用途に用いるのが好ましい。
【0058】
精製処理によって、生成物中に含まれる金属不純物、陰イオン不純物、および反応副生物(たとえば、水酸基数の異なる副生物等)を除去するのが好ましい。精製処理の手法としてはイオン吸着ポリマーによって、金属不純物、陰イオン不純物等を除去する公知の方法、および超臨界抽出による方法が挙げられる。
【0059】
また生成処理に、カラムクロマトグラフィを採用した場合には、副生成物等を効率的に除去できることから工業的に有利である。カラムクロマトグラフィの固定相としては、シリカゲル、活性アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、およびケイ酸マグネシウム(たとえば商品名:Forisil)等が挙げられ、細孔の平均直径が200オングストローム未満であるものを用いるのが好ましい。移動相としては、一般の非極性溶媒および極性溶媒を用いることができ、さらに必要に応じてこれらの溶媒の比率を変えて極性を変化させるのが好ましい。また本発明の化合物(A)は含フッ素化合物であり一般にはフッ素系溶媒に対する溶解性に優れるが、カラムクロマトグラフィにおける移動相にフッ素系溶媒は必須ではない。
【0060】
非極性溶媒としてはヘキサンおよびオクタン等の炭化水素系溶媒;R−113およびR−225等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。極性溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール溶媒;ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン化アルコール;アセトン、よびメチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸等のカルボン酸溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ジメチルスルホキシド等のアルキルスルホキシド等、が挙げられる。
【0061】
本発明の方法で得られる化合物(A)は、潤滑剤、表面改質剤、または界面活性剤として有用な化合物である。すなわち本発明は含フッ素ポリエーテル化合物(A)を必須成分とする潤滑剤、表面改質剤、または界面活性剤を提供する。
【0062】
潤滑剤としては、磁気ディスク用のダイヤモンド状炭素保護膜(DLC膜)上に塗布する潤滑剤が挙げられる。表面改質剤としては、ポリマーの表面に塗布してポリマーの屈折率を制御する、またはポリマーの耐薬品性を改善する等の用途に用いうる。
【0063】
化合物(A)を潤滑剤または表面改質剤として使用する場合には、化合物(A)を溶液組成物として用いるのが好ましい。溶液組成物とする場合の溶剤としては、ペルフルオロトリプロピルアミン、トリブチルアミン等のパーフルオロアミン類やバートレル(デュポン社製)などのパーフルオロアルカン類を用いるのが好ましい。溶液組成物中の化合物(A)の濃度は、用途に応じて適宜調節でき、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましい。
【0064】
化合物(A)を含む溶液組成物は、溶液、懸濁液、または乳化液のいずれであってもよく、溶液であるのが好ましい。また溶剤としては、後述するコーティング(たとえばディップコート工程におけるコーティング)に適した沸点を持つ溶剤を用いるのが好ましい。溶液組成物中には、化合物(A)と溶剤以外の成分(以下、他の成分という)が含まれていてもよい。化合物(A)を潤滑剤として用いる場合の他の成分としては、ラジカルスカベンジャー(たとえば、Dow Chemicals社製商品名:X−1p。)等が挙げられる。化合物(A)をコーティング材料として用いる場合には、シラン系、エポキシ系、チタン系、アルミニウム系などのカップリング剤が挙げられ、これらは基材と化合物(A)との接着性を向上させうる。
【0065】
化合物(A)を潤滑剤または表面改質剤として使用する場合には、化合物(A)または化合物(A)を含む溶液組成物を基材表面に塗布し、乾燥することによって化合物(A)の薄膜を形成させて、目的とする機能を発現させるのが好ましい。
【0066】
塗布方法としては、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、スピンコート法、水上キャスト法、ダイコート法、ラングミュア・プロジェット法、および真空蒸着法などの方法が挙げられ、スピンコート法、ディップコート法、または真空蒸着法が好ましい。
【0067】
スピンコート法、ディップコート法により塗布する場合には、溶液組成物として用いるのが好ましい。溶液組成物においては、ハンドリンクのしやすさ、沸点、入手しやすさ等を適宜考慮して溶剤を選択するのが好ましい。
【0068】
本発明の化合物(A)を用いて形成した薄膜は、透明であり、屈折率が低く、または耐熱性もしくは耐薬品性に優れる。また該薄膜は、高い潤滑性を保持し、かつ自己修復性を有する。該薄膜の膜厚は、通常0.001〜50μmが好ましい。基材の形状および材質は特に限定されない。本発明の化合物(A)を含む溶液組成物を塗布した基材の用途としては、ハードディスク基板、光ファイバ、鏡、太陽電池、光ディスク、タッチパネル、感光および定着ドラム、フィルムコンデンサ、ガラス窓用反射防止フィルムなどの各種フィルムなどが挙げられる。
【0069】
化合物(A)を界面活性剤として用いる例としては、塗料の表面張力を低下させる添加剤またはレベリング剤、研磨液のレベリング剤などが挙げられる。塗料に添加する場合には、塗料に対する化合物(A)の量が0.01〜5質量%程度になるように添加するのが好ましい。
【0070】
化合物(A)は上記以外の他の用途にも有用に用いうる。化合物(A)を他の用途に用いる場合においては、化合物(A)をそのまま用いても、または溶液組成物等の形態で用いてもよい。他の用途としては、電線被覆材、撥インク剤(たとえば塗装用、インクジェットなどの印刷機器用)、半導体素子用接着剤(たとえばLOC(リードオンチップ)テープ用接着剤、半導体用保護コート(たとえば防湿コート剤、半田用這い上がり防止剤)、光学分野に用いる薄膜(たとえばペリクル膜等)への添加剤、ディスプレイ用反射防止膜の潤滑剤、レジスト用反射防止膜)等が挙げられる。
本発明の化合物(A)をこれらの用途に用いた場合には長期にわたり安定した性能を維持できる等の利点がある。
【実施例】
【0071】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下において、テトラメチルシランをTMS、CClFCClFをR−113、ジクロロペンタフルオロプロパンをR−225、CClFCFCClCFCFをR−419と記す。
また、Mは質量平均分子量を、Mは数平均分子量を示す。平均分子量はMを意味し、分子量分布はM/Mを意味する。
【0072】
分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと記す。)によって測定した。GPCによる測定は、特開2001−208736に記載する方法にしたがった。具体的には、R−225(旭硝子社製商品名:アサヒクリンAK−225SECグレード1)およびヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)の(99:1)混合溶媒を移動相として用い、PLgel MIXED−Eカラム(ポリマーラボラトリーズ社製、商品名)を2本直列に連結して分析カラムとした。分子量測定用標準試料として、M/Mが1.1未満である分子量が2000〜10000のペルフルオロポリエーテル4種およびM/Mが1.1以上である分子量が1300のペルフルオロポリエーテル1種を用いて分析した。移動相流速を1.0mL、カラム温度を37℃とし、検出器としては、蒸発光散乱検出器を用いた。
H−NMR(300.4MHz)の基準物質にはTMSを用い、19F−NMR(282.7MHz)の基準物質にはCFClを用いた。NMRの溶媒は特に記載しない限りR−113を用いた。
【0073】
[例1]エステル化反応の例
式HC(CHOH)で表されるトリオールに、公知の方法でエチレンオキシドを付加し、つぎに、R−225(50g)、NaF(2.88g)をフラスコに入れ、内温を25℃に保ちながら激しく撹拌して、窒素をバブリングさせて、下記化合物(D2−1)を得る。そこにFCOCF(CF)OCFCF(CF)O(CFF(34.3g)を、内温を10℃以下に保ちながら1.0時間かけて滴下する。滴下終了後、室温で24時間撹拌して、粗液を回収する。さらに粗液を減圧ろ過し、その後、回収液を真空乾燥機(100℃、666.5Pa(絶対圧))で12時間乾燥する。ここで得た粗液をR−225(100mL)に溶解し、飽和重曹水(1000mL)で3回水洗を行い、有機相を回収する。さらに、回収した有機相に硫酸マグネシウム(1.0g)を加え、12時間撹拌を行う。その後、加圧ろ過を行って硫酸マグネシウムを除去し、エバポレーターでR−225を留去し、室温で液体のポリマー(52.8g)を得る。H−NMR、19F−NMRの結果、得られたポリマーは下記化合物(D3−1)であることを確認する。ただし、(k+r+p)の平均値は27.0。Rは−CF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF。Mは2600であり、M/Mは1.15である。
【0074】
【化6】

【0075】
H−NMR(溶媒:CDCl) δ(ppm):3.4〜3.8,4.5。
19F−NMR(溶媒:CDCl) δ(ppm):−76.0〜−81.0,−81.0〜−82.0,−82.0〜−82.5,−82.5〜−85.0,−128.0〜−129.2,−131.1,−144.7。
【0076】
[例2]例1で得た化合物(D3−1)のフッ素化例
(例2−1)反応溶媒にR−113を用いる例
500mLのハステロイ製オートクレーブに、R−113(312g)を加えて撹拌し、25℃に保つ。オートクレーブガス出口には、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および−20℃に保持した冷却器を直列に設置する。−20℃に保持した冷却器からは、凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置する。窒素ガスを1.0時間吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、20%フッ素ガスと記す。)を、流速16.97L/hで1時間吹き込む。
【0077】
つぎに、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例1で得た生成物(D3−1)(15g)をR−113(200g)に溶解した溶液を11時間かけて注入する。
つぎに、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、R−113溶液を6mL注入する。さらに、窒素ガスを1.0時間吹き込む。
【0078】
反応終了後、粗液を回収し、溶媒を真空乾燥(60℃、6.0h)にて留去して、室温で液体の生成物(21.4g)を得る。該生成物を分析した結果は、例1で得た化合物(D3−1)中の水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換された下記化合物(D4−1)であることを確認する。化合物(D3−1)中の水素原子数に対する化合物(D4−1)のフッ素原子数の99.9モル%以上であった。Mは4600であることから下式中の(k+r+p)はMが4600となる値である。また、M/Mは1.20である。
【0079】
【化7】

【0080】
1H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−77.5〜−86.0,−88.2〜−92.0,−120.0〜−139.0,−142.0〜−146.0,−181.5〜−184.5。
【0081】
(例2−2)反応溶媒がR−419を用いる例
例2−1におけるR−113をR−419に変えた以外は、同様に反応を行う。生成物を分析した結果、例2−1の生成物と同一の化合物(D4−1)の生成を確認する。
【0082】
(例2−3)反応溶媒がFCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFである例
例2−1におけるR−113をFCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFに変えた以外は、同様に反応を行う。生成物を分析した結果、例2−1の生成物と同一の化合物(D4−1)の生成を確認する。
【0083】
[例3]例2−1で得た化合物(D4−1)の熱分解例
スターラーチップを投入した50mLの丸底フラスコを充分に窒素置換する。該丸底フラスコに1,1,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタン(25g)、KF(0.20g)および、例2−1で得た化合物(D4−1)(20g)を加えて激しく撹拌し、120℃に保つ。丸底フラスコ出口には、20℃に保持した冷却器、およびドライアイス−エタノール冷却管を直列に設置し、窒素シールを行う。
8時間後内温を室温まで下げ、続いて冷却管に真空ポンプを設置して系内を減圧に保ち、溶媒および反応副性物を留去する。3時間後、室温で液体の生成物(13.3g)を得る。
生成物を分析した結果、下記化合物(D5−1)の生成を確認する。化合物(D4−1)中のエステル結合の総数に対する、生成物中の−COF基数の割合は99モル%以上である。
【0084】
【化8】

【0085】
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):12.7,−78.1,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0,−181.5〜−184.5。
【0086】
[例4]例3で得た化合物(D5−1)のメチルエステル化例
(例4−1)エステル化反応による製造例
例3で得た化合物(D5−1)が入った丸底フラスコにKF(0.9g)、R−113(5.0g)を投入し、内温を25℃に保ちながら激しく撹拌する。さらに、メタノール(0.5g)を内温を25℃以上に保ちながらゆっくりと滴下する。
8時間後、撹拌を停止し、粗液を加圧ろ過器にてろ過し、KFを除去する。続いて、エバポレーターにてR−113、および過剰のメタノールを完全に除去して室温で液状の生成物(13.5g)を得る。
生成物を分析した結果、下記化合物(D7−1)の生成を確認する。化合物(D5−1)中の−COF基の全てがメチルエステル化されている。Mは3200であり、M/Mは1.17である。
【0087】
【化9】

【0088】
H−NMR δ(ppm):3.95,5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−78.3,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0,−181.5〜−184.5。
【0089】
(例4−2)エステル交換反応による製造例
スターラーチップを投入した50mLの丸底フラスコを充分に窒素置換する。例2−1と同様の方法で得た化合物(D4−1)(20.0g)とメタノール(1.0g)を加えて、室温にてバブリングを行いながら、激しく撹拌した。丸底フラスコ出口は窒素シールを行う。
8時間後、冷却管に真空ポンプを設置して系内を減圧に保ち、過剰のメタノール、および反応副性物を留去する。3時間後、室温で液体の生成物(13.6g)を得る。
生成物を分析した結果、化合物(D7−1)の生成を確認する。生成物のMは3200であった。化合物(D4−1)中のエステル結合数に対する生成物中の−COOCH基数は99.9モル%である。
H−NMR δ(ppm):3.95,5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−78.3,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0,−181.5〜−184.5。
【0090】
[例5]例4で得た化合物(D7−1)の変換例
例4−2の方法で得た化合物(D7−1)(13.0g)とR−225(240mL)とテトラヒドロフラン(200mL)を混ぜ、ボラン・テトラヒドロフラン錯体(4.0g)を窒素気流下で加え、室温で一夜撹拌する。溶媒をエバポレーターで留去し、残存物に2mol/Lの塩酸を加えて、R−225で抽出し、抽出物を濃縮して粗生成物(11.95g)を得る。粗生成物をシリカゲルカラム(溶離液:R−225/ヘキサフルオロイソプロピルアルコール)で精製する。H−NMR、および19FNMRによって下記化合物(A−11a)の生成を確認する。また化合物中には−(OCFO)−単位が実質的に含まれていないことを確認する。Mは3000であり、M/Mは1.12である。
【0091】
【化10】

【0092】
H−NMR δ(ppm):3.94。
19F−NMR δ(ppm):−80.1,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0,−181.5〜−184.5。
【0093】
[例6]例5で得た化合物(A−11a)へのエチレンカーボネート付加反応例
例5で得た化合物(A−11a)(10.0g)、R−419(10mL)、およびエチレンカーボネ−ト(1.0g)を丸底フラスコ(50mL)に投入して撹拌する。つぎに窒素雰囲気下でポタジウムフルオリド(0.9g)を加え、フラスコ上部に20℃に冷却した還流装置を設置し、装置出口を窒素で置換した状態で150℃に加熱しながら、36時間撹拌して反応粗液を得る。該液をフィルター(孔径0.1μm、PTFE製)を通して加圧ろ過して、ろ別して得たろ液の溶媒をエバポレーターで留去すると、25℃で液体の薄黄色化合物(10.80g)を生成物として得る。
【0094】
該生成物をH−NMRおよび19F−NMRで分析した結果、化合物(A−11a)の−CFCHOH基が−CFCHOCHCHOH基に変換された下記化合物(A−11b)の生成を確認する。反応に用いた化合物(A−11a)の−CFCHOH基に対する生成物中の−CFCHOCHCHOH基の割合は97.3モル%であり、生成物は末端基の異なる2種以上の混合物からなっている。Mは3050であり、M/Mは1.25である。また19F−NMRによって、該化合物(A−11b)中には−(OCFO)−構造が存在しないことを確認する。
【0095】
【化11】

【0096】
H−NMR δ(ppm):4.31、3.9,3.76。
19F−NMR δ(ppm):−77.0,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0,−181.5〜−184.5。
【0097】
[例7]例5で得た化合物(A−11a)への2,3−エポキシ−1−プロパノール付加反応例
窒素雰囲気下の丸底フラスコ(250mL)に例5と同様の方法で得た化合物(A−11a)(10g)、および2−メチル−2−プロパノール(5.0g)を投入し、均一混合するまで撹拌する。丸底フラスコ出口に20℃の出口を窒素ガスで置換した還流管を設置する。
【0098】
次にt−ブトキシドカリウム(0.20g)をオートクレーブに投入し、70℃に加熱して30分間撹拌する。さらに内温を70℃に保持して、2,3−エポキシ−1−プロパノール(0.8g)を2時間かけて滴下し、12時間撹拌する。丸底フラスコを25℃に冷却し窒素ガスで置換してから、0.2g/Lの塩酸(50mL)を滴下して2層分離液を得る。該液の有機層を回収しR−225(50mL)を加えた溶液を、蒸留水(500mL)で2回洗浄し硫酸マグネシウムで脱水してから、エバポレーターで溶媒を留去すると、25℃で液体の薄黄色化合物(10.68g)を生成物として得る。
【0099】
生成物をH−NMRおよび19F−NMRで分析した結果、化合物(A−11b)中の−CFCHOH基が−CFCHOCHCH(OH)CHOHに変換された下記化合物(A−12a)の生成を確認する。反応に用いた化合物(A−11b)中の−CFCHOH基に対する生成物中の−CFCHOCHCH(OH)CHOHの割合は92.5モル%であり、生成物は末端基の異なる2種以上の混合物からなっている。19F−NMRによって、−(OCFO)−構造が存在しない化合物であることを確認する。またMは3060であり、M/Mは1.28である。
【0100】
【化12】

【0101】
H−NMR δ(ppm):3.45,3.67,4.67。
19F−NMR δ(ppm):−77.1,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0,−181.5〜−184.5。
【0102】
[例8]化合物(A−11a)をコーティングした例
例5で得た化合物(A−11a)(1g)およびペルフルオロ(t−ブチル)アミン(99g、トクヤマ社製、IL−263)をガラス製フラスコ中に投入し2時間撹拌して無色透明な均一溶液を得る。該溶液をスピン速度700rpmのアルミ板上に20秒スピンコートし、80℃で1時間加熱処理した結果、アルミ板上に厚さが0.05μmの均一な透明の膜が形成する。アルミ板表面の摩擦係数は著しく低下している。
【0103】
[例9]化合物(A−11a)の安定性試験例
窒素雰囲気(100mL/min)下、10℃/minの割合で25℃から500℃まで昇温した際の、例5で得た化合物(A−11a)(25mg)の質量減少を示差熱天秤上で測定した結果、300℃まで重量減少が認められず、質量減少プロフィールは一定であることから優れた安定性を示す。
【0104】
さらに、γ−アルミナ微粉(0.5g、日揮化学社製、N−611N)を存在させた場合の、表記化合物(25mg)の安定性試験を行った場合でも、質量減少プロフィールはγ−アルミナ微粉が存在しない場合と同様であり、ルイス酸触媒存在下においても優れた安定性を示す。
【0105】
[例10]公知のペルフルオロポリエーテルの安定性試験(比較例)
−OCFO−構造を必須とするペルフルオロポリエーテル(アウジモント社製、フォンブリンZ DiOL4000)を用いて、例9と同様の方法で安定性試験を行った結果、γ−アルミナ微粉の存在下では該エーテルは240〜250℃で全量が分解し、低分子量化合物となって気化した。
【0106】
[例11]
(例11−1)化合物(A−11d)の製造例および評価例
例1の化合物(D2−1)を市販のポリオキシエチレングリセロールエーテル(日本油脂製、ユニオックスG1200)に変更し、例1、例2−1、例3、例4−1、例5の反応と同じ反応を行い、化合物(A−11d)を得た。各例において得た化合物の構造と、NMRスペクトルは以下のとおりであった。化合物(A−11d)中には−(OCFO)−単位が含まれていないことを確認した。化合物(A−11d)のMは3000であった。さらに該化合物(A−11d)を用いて、例8および例9と同様の評価を行い、化合物(A−11a)と同じ結論を得た。化合物(A−11d)のMは2600であり、M/Mは1.14であった。
【0107】
【化13】

【0108】
化合物(D3−2)のNMRスペクトル
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):3.4〜3.8,4.5。
19F−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):−76.0〜−81.0,−81.0〜−82.0,−82.0〜−82.5,−82.5〜−85.0,−128.0〜−129.2,−131.1,−144.7。
【0109】
化合物(D4−2)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−77.5〜−86.0,−88.2〜−92.0,−120.0〜−139.0,−142.0〜−146.0。
【0110】
化合物(D5−2)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):12.7,−78.1,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0111】
化合物(D7−2)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):3.95,5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−78.3,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0112】
化合物(A−11d)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):3.94。
19F−NMR δ(ppm):−80.1,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0113】
(例11−2)
例6における化合物(A−11a)を例11−1で製造した化合物(A−11d)に変更して例6と同様に反応を行い、下記化合物(A−11e)を得た。化合物(A−11e)のMは3050であった。M/Mは1.26であった。19F−NMRによって、該化合物(A−11e)中には−(OCFO)−構造が存在しないことを確認した。
【0114】
【化14】

【0115】
H−NMR δ(ppm):4.31、3.9,3.76。
19F−NMR δ(ppm):−77.0,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0116】
(例11−3)
例7における化合物(A−11a)を例11−1で製造した化合物(A−11d)に変更して例7と同様に反応を行い、下記化合物(A−12b)を得た。化合物(A−12b)のMは3060であった。M/Mは1.29であった。
また19F−NMRによって、化合物(A−12b)中には−(OCFO)−構造が存在しないことを確認した。
【0117】
【化15】

【0118】
H−NMR δ(ppm):3.45,3.67,4.67。
19F−NMR δ(ppm):−77.1,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0119】
[例12]
(例12−1)化合物(A−21a)の製造例
例1の化合物(D3−1)を下記化合物(D3−3)に変更し、例1、例2−1、例3、例4−1、例5の反応を同様に行い、化合物(A−21a)を得た。各例において得た化合物の構造と、NMRスペクトルは以下のとおりであった。化合物(A−21a)中には−(OCFO)−単位が含まれていないことを確認した。化合物(A−21a)のMは26003600であった。さらに該化合物(A−21a)を用いて、例8および例9と同様の評価を行い、化合物(A−21a)と同じ結論を得た。化合物(A−21a)のM/Mは1.21であった。
C(CHO(CHCHO)CHCHOCOR (D3−3)
→ C(CFO(CFCFO)CFCFOCOR (D4−3)
→ C(CFO(CFCFO)CFCOF) (D5−3)
→ C(CFO(CFCFO)CFCOOCH (D7−3)
→ C(CFO(CFCFO)CFCH2OH) (A−21a)
【0120】
化合物(D3−3)のNMRスペクトル
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):3.4〜3.8,4.5。
19F−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):−76.0〜−81.0,−81.0〜−82.0,−82.0〜−82.5,−82.5〜−85.0,−128.0〜−129.2,−131.1,−144.7。
【0121】
化合物(D4−3)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−65.2〜−68.8,−77.5〜−86.0,−88.2〜−92.0,−120.0〜−139.0,−142.0〜−146.0。
【0122】
化合物(D5−3)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):12.7,−60.2〜−68.8,−78.1,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0123】
化合物(D7−3)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):3.95,5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−63.2〜−65.8,−78.3,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0124】
化合物(A−21a)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):3.94。
19F−NMR δ(ppm):−64.2〜−65.8,−80.1,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0125】
(例12−2)
例6における化合物(A−11a)を例12−1で製造した化合物(A−21a)に変更して例6と同様に反応を行い、下記化合物(A−21b)を得た。化合物(A−21b)のMは2670であった。M/Mは1.30であった。
また19F−NMRによって、該化合物(A−21b)中には−(OCFO)−構造が存在しないことを確認した。
C(CFO(CFCFO)CFCH2OCH2CH2OH) (A−21b)
H−NMR δ(ppm):4.31、3.9,3.76。
19F−NMR δ(ppm):−64.2〜−65.8,−77.0,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0126】
(例12−3)
例7における化合物(A−11a)を例12−1で製造した化合物(A−21a)に変更して例7と同様に反応を行い、下記化合物(A−22a)を得た。化合物(A−22a)のMは2650であった。M/Mは1.34であった。
また19F−NMRによって、化合物(A−22a)中には−(OCFO)−構造が存在しないことを確認した。
【0127】
C(CFO(CFCFO)CFCH2OCH2CH(OH)CH2OH)(A−22a)
H−NMR δ(ppm):3.45,3.67,4.67。
19F−NMR δ(ppm):−64.2〜−65.8,−77.1,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0128】
[例13]
(例13−1)化合物(A−31a)の製造例および評価例
例1の化合物(D3−1)を下記化合物(D3−4)に変更し、例1、例2−1、例3、例4−1、例5の反応を同様に行い、化合物(A−31a)を得た。なお、化合物(D3−4)の原料であるポリオキシエチレングリセロールエーテル(D2−4)は、特許(PERFECTの基本特許)に記載の方法を用いて得た化合物(D0−4)に公知の方法で2,3−エポキシ−1−プロパノールを付加して(D1−4)とし、さらにエチレンオキシドを付加することで得た。各例において得た化合物の構造と、NMRスペクトルは以下のとおりであった。化合物(A−31a)中には−(OCFO)−単位が含まれていないことを確認した。化合物(A−31a)のMは2900であった。さらに該化合物(A−11d)を用いて、例8および例9と同様の評価を行い、化合物(A−11a)と同じ結論を得た。化合物(A−31a)のM/Mは1.13であった。
【0129】
【化16】

【0130】
化合物(D3−4−2)のNMRスペクトル
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):3.4〜3.8,3.95,4.5。
19F−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):−54.0〜−56.0,−76.0〜−81.0,−81.0〜−82.0,−82.0〜−82.5,−82.5〜−85.0,−87.0〜−92.0,−128.0〜−129.2,−131.1,−144.7。
【0131】
化合物(D4−4−2)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−54.0〜−56.0,−77.5〜−86.0,−88.2〜−92.0,−120.0〜−139.0,−142.0〜−146.0。
【0132】
化合物(D5−4−2)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):12.7,−54.0〜−56.0,−78.1,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0133】
化合物(D7−4−2)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):3.95,5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−54.0〜−56.0,−78.3,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0134】
化合物(A−11d)のNMRスペクトル
H−NMR δ(ppm):3.94。
19F−NMR δ(ppm):−54.0〜−56.0,−80.1,−88.2〜−90.5。
【0135】
(例13−2)
例6における化合物(A−11a)を例13−1で製造した化合物(A−31a)に変更して例6と同様に反応を行い、下記化合物(A−31b)を得た。化合物(A−31b)のMは2950であった。M/Mは1.19であった。
また19F−NMRによって、該化合物(A−31b)中には−(OCFO)−構造が存在しないことを確認した。
【0136】
【化17】

【0137】
H−NMR δ(ppm):4.31、3.9,3.76。
19F−NMR δ(ppm):−54.0〜−56.0,−77.0,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0138】
(例11−3)
例7における化合物(A−11a)を例13−1で製造した化合物(A−31a)に変更して例7と同様に反応を行い、下記化合物(A−32a)を得た。化合物(A−32a)のMは2960であった。M/Mは1.21であった。
また19F−NMRによって、化合物(A−32a)中には−(OCFO)−構造が存在しないことを確認した。
【0139】
【化18】

【0140】
1H−NMR δ(ppm):3.45,3.67,4.67。
19F−NMR δ(ppm):−54.0〜−56.0,−77.1,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、潤滑剤、表面改質剤等、または界面活性剤等として有用な新規な含フッ素ポリエーテル化合物を提供する。本発明の含フッ素ポリエーテル化合物は、低い蒸気圧および粘性を有し、化学的な安定性が高く使用時の劣化の問題が少ない性質を有する。また本発明の含フッ素ポリエーテル化合物は、自己修復性に優れる化合物であることから、上記用途に有用に用いうる。
なお、本発明の明細書の開示として、本出願の優先権主張の基礎となる日本特許願2004−5586号(2004年1月13日に日本特許庁に出願)の全明細書の内容をここに引用し取り入れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(A)で表わされる含フッ素ポリエーテル化合物。
(X−)Y(−Z) (A)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
X:下式(X)で表される基(ここで、aは0〜100の整数、bは0〜100の整数、cは1〜100の整数、dは1〜200の整数を示す。)。
HO−(CHCHO)・(CHCH(OH)CHO)−(CH
−CFO(CFCFO)− (X)
Z:下式(Z)で表わされる基(ここで、Rは炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基または該ペルフルオロアルキル基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基(ただし、該基中には−OCFO−構造は存在しない。)を示す。gは3〜200の整数を示す。)。
O(CFCFO)− (Z)
Y:(x+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された(x+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基を示し、該基中には−OCFO−構造は存在しない。
x、z:xは2以上の整数であり、zは0以上の整数であり、(x+z)は3〜20の整数である。xが2以上である場合の式(X)で表される基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、zが2以上である場合の式(Z)で表される基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
式(X)で表される基が下式(X−1)で表される基〜下式(X−4)で表される基から選ばれるいずれかの基である請求項1に記載の化合物。ただし、dは前記と同じ意味を示す。
HOCHCFO(CFCFO)− (X−1)
HOCHCH(OH)CHOCHCFO(CFCFO)− (X−2)
HOCHCHCFO(CFCFO)− (X−3)
HOCHCHOCHCFO(CFCFO)− (X−4)
【請求項3】
式(A)で表される化合物が下式(A−1)で表される化合物または下式(A−2)で表される化合物である請求項2に記載の化合物。ただし、X10は式(X−1)で表される基〜下式(X−4)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、Yはペルフルオロアルカン−トリイル基を示し、Yはペルフルオロアルカン−テトライル基を示す。
(X10−) (A−1)
(X10−) (A−2)
【請求項4】
式(A)で表される化合物が下式(A−3)で表される化合物である請求項2に記載の化合物。ただし、X10は式(X−1)で表される基〜下式(X−4)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、Yはペルフルオロアルカン−トリイル基を示し、Zは前記と同じ意味を示す。
(X10−)−Z (A−3)
【請求項5】
式(A)で表される化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した分子量が500〜100万であり、かつ、分子量分布が1.0〜1.5である請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素ポリエーテル化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素ポリエーテル化合物と有機溶媒とを含む溶液組成物。
【請求項7】
溶液組成物中の含フッ素ポリエーテル化合物の濃度が、0.01〜50質量%である請求項6に記載の溶液組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素ポリエーテル化合物を必須成分とする潤滑剤、表面改質剤、または界面活性剤。

【国際公開番号】WO2005/068534
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517045(P2005−517045)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000256
【国際出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】