説明

含水汚泥の処理方法

【課題】下水汚泥など含水率の高く、悪臭のある廃棄物をセメント製造設備に大量に安定的に処理できる方法を提供する。
【解決手段】含水汚泥を配管を通じてセメント製造装置の窯尻部9または仮焼炉2に供給して処理する含水汚泥の処理方法において、前記配管と前記窯尻部または仮焼炉の接続部付近の前記配管に液体と空気を別々に供給する。前記液体は、前記配管の底部から供給されることが好ましい。また、接続部付近の前記配管の先端内部が放射状に仕切られている構造となっていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水汚泥をセメント製造装置の窯尻部または仮焼炉に供給して処理する含水汚泥の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、終末下水処理場から廃棄される脱水汚泥の処分方法として、焼却処理や溶融処理等による埋立て処分だけでなく、資源として再利用処理がかなり進められている。セメント工業界においては、この脱水汚泥、下水汚泥、汚泥の焼却灰等をセメント原料として有効利用しながら処理する等、環境問題への寄与について積極的に取り組んでいる。
【0003】
図1は、下水汚泥の輸送装置を備えたセメント製造装置の焼成炉を示す一般的な模式図であって、1はサスペンジョンプレヒータ、2は仮焼炉、3はロータリーキルン、4はクリンカクーラ、6は排気ファン、5は燃焼用のバーナーである。セメント粉末原料はサスペンジョンプレヒータ1の上部から投入され、5段のサイクロン装置と仮焼炉2によって予熱と仮焼を行い、ロータリーキルン3の窯尻部9へ投入され、温度が約1500℃の高温で焼成された後、クリンカクーラ4によって、急冷されてセメントクリンカとなる。含水汚泥は、圧送ポンプ7によって、輸送配管8を経由して窯尻部9または仮焼炉2へ投入され、温度850乃至1150℃にて高熱処理される。
【0004】
例えば、特許文献1には、汚泥を乾燥するか、または添加剤等を用いることなく含水率が高いままのいずれかで、セメント製造装置のロータリーキルン3の窯尻部9、または仮焼炉2に輸送配管8によって圧送を行い投入して熱分解処理する技術が提案されている。また、特許文献2には、工場廃液と事前にタンクで混合して配管輸送してセメント製造装置のロータリーキルン3による熱分解によって処理をしているものが提案されている。
【0005】
しかし、これら汚泥の処理では周囲に悪臭が洩れないように圧送ポンプを用いて、配管により受入れ設備からセメント製造装置の投入位置まで輸送していることから、輸送距離が一般的に長い。この為、輸送途中で圧送による圧縮によって汚泥が押し固められ、汚泥の周囲の配管内壁側に液体のみが分離し搾り出されて、汚泥が脱水してしまうので、セメント製造装置への投入位置においては硬い粘土状態となる。
【0006】
これにより、配管から長距離をある程度送り出した後、特に、投入直前の下り方向の配管中において汚泥の自重により汚泥の連続体が切れることによって、分離した塊になってセメント製造装置の中に落下していく。そのため、投入が断続的となり、また汚泥中の水分が急激に蒸発して起こる水蒸気爆発等によって、セメント製造装置内でのプロセスが変動する要因となり、セメント製造装置の安定運転を阻害していた。大量に下水汚泥を圧送する場合に特に顕著な現象であった。
【特許文献1】特開平8−276199号公報
【特許文献2】特開2000−239050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、下水汚泥など含水率の高く、悪臭のある含水汚泥をセメント製造設備に大量に投入して処理する際に、圧送配管の途中にて閉塞を起こすことなく、汚泥をセメント製造装置の焼成炉内に分散させ連続的に投入し汚泥を安定的に処理することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、含水汚泥を配管を通じてセメント製造装置の窯尻部または仮焼炉に供給して処理する含水汚泥の処理方法において、前記配管と前記窯尻部または仮焼炉の接続部付近の前記配管に液体と空気を別々に供給することを特徴とする含水汚泥の処理方法である。前記接続部付近は、前記窯尻部または仮焼炉の壁面から100cm以内の前記配管部分である。
また、前記液体は、前記配管の底部から供給されることが好ましい。
さらに、接続部付近の前記配管の先端内部が放射状に仕切られていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、含水汚泥の使用によるセメント製造設備の操業への悪影響を軽減し、セメント生産量の低減や、燃料原単位の悪化が少なくなり、操業が安定して含水汚泥を有効に使用することができる。輸送配管の途中での閉塞が大幅に軽減され、連続安定した汚泥の輸送が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられる含水汚泥としては、下水汚泥、上水汚泥、し尿汚泥、製紙汚泥、ヘドロ汚泥などが挙げられる。含水率は70重量%以上のものを好適に使用することができる。含水汚泥は、セメント工場内において配管を通じて輸送される。これにより、汚泥の悪臭を系外に排出しないようにしている。
図2に本発明における含水汚泥の受入れからセメント製造装置への供給までの概略図を示す。汚泥の受入れホッパ11から圧送ポンプ7によって、輸送配管8を経由して、セメント製造装置の窯尻部9または仮焼炉2に供給される。セメント工場へ、貨車積コンテナ・トレーラ、ダンプ積トラックなどの各種車両によって受入れられた含水汚泥は、受入れホッパ11への受入れ中のみ受入れホッパ11の蓋21が開いて、一旦受入れられる。受入れホッパ11の周辺は、下水汚泥が発生する悪臭を周辺に洩らさないような建屋20の構造になっている。受入れホッパ11の投入口周辺は建屋20の外部に空気が洩れないように、建屋20の内部は外気圧よりも若干低い圧力に調整されており、該建屋20内の空気の排気ガスは図2に記載されていない他の装置で脱臭処理される。
【0011】
受入れホッパ11に搬入された含水汚泥は、下部の抜き出し装置12から抜き出される。抜き出し装置12は、スクリュー式、チェーン式、升式などいずれでもよいが、好ましくはスクリュー式がよい。このスクリューは1軸式でも2軸式タイプでもよいが、スクリューの羽根にセルフ・クリーニング機能をもったものが好ましい。抜き出し装置12を出た含水汚泥は圧送ポンプ7への供給機22へ送られる。供給機22は、撹拌機能を有したバネ形状の2軸オーガフィーダが好ましく、この羽根もセルフ・クリーニング機能をもったものがよい。供給機22から供給された含水汚泥は圧送ポンプ7へ送られる。圧送ポンプ7はシリンダによる吸い込み・押し出し方式が好ましい。圧送ポンプ7を出た含水汚泥は、輸送配管8でセメント製造装置へ圧送される。
【0012】
輸送配管8は、窯尻部9から仮焼炉2まで間のいずれかの温度850乃至1150℃の高温領域へ接続されている。含水汚泥は、圧送ポンプ7からの圧送によって、炉内へ投入される。輸送配管と前記窯尻部または仮焼炉の接続部付近の前記配管には、液体と空気が別々に供給される。この接続部付近の配管を以下においては気水混合管という。気水混合管16からの炉内への含水汚泥の投入方向は、水平から下向き角度0乃至45度の任意の投入方向であってもよい。気水混合管16を下向きにする場合は、含水汚泥が炉内に投入される位置において、対向側の炉壁に汚泥が突き当たる可能性がある際に行うものである。
【0013】
気水混合管に空気を供給する態様を説明する。図4には、水平配置された気水混合管16の例を示す。管径がφ65mmの空気噴射口15は、管径がφ250乃至300mmの気水混合管16における水平面の左右2箇所から斜め角度25乃至40度で含水汚泥へ空気が合流する構造となっている。空気噴射口15の設置は、気水混合管16の外管壁周囲から1乃至4方向のいずれの箇所であってもよい。空気を複数箇所から供給することにより、配管内部における偏流を抑制することができる。空気噴射口15内の空気圧力は、13乃至20Mpaが好ましい。空気供給口は、炉壁面から100cm以内、好ましくは25乃至50cmである。
【0014】
空気噴射口15の途中でエアパージ多孔板23を経由して気水混合管16に導入することができる。エアパージ多孔管23の口径φ2乃至5mm孔の配列は、均一間隔の網状であってもよく、図5に示すような数珠輪の環状であってもよい。エアパージ多孔板23の設置によって、気水混合管16の内部で均等な撹拌を行うことができる。エアパージ多孔板23が設置されない場合は、空気噴射口15からの空気流が、管内の対向する内壁に直接ぶつかりやすくなって、気水混合管16の内壁部を空気のみが偏流通過することによって、気水混合管16の内部での短時間での混合が不十分となるおそれがある。また、空気噴射口15が1箇所の場合でも、気水混合管16の内部で管壁部を偏流し、混合特性が悪くなるおそれがある。
【0015】
気水混合管16の内部の流れは基本的には乱流であるが、図3に示すように、空気噴射口15の導入方向を調節することによって旋回流を発生するように空気導入をした方が好ましい。空気噴射口15の導入方向について、気水混合管16の中心軸から角度が双方プラスマイナス10度程度ほど上下に偏向させて接続し導入させることによって内部で旋回流を起こすことが可能となる。気水混合管16の内部で旋回流を起こすことによって、含水汚泥の炉内での分散性を高めることができる。
【0016】
次に、気水混合管に液体を供給する態様を説明する。本発明で用いられる液体としては、水や酸性廃水、アルカリ性廃水、有機物や無機物を含む廃液などの工場廃液などが挙げられる。図4に示すように、2次注水口14は、炉壁へ水平方向に設置された気水混合管16の垂直面方向の底部から斜め角度25乃至40度で、水が合流する管径φ50mmの構造とする。2次注水口14の数は気水混合管16の外管壁に斜めから、1箇所ほど水を合流させることが好ましいが、2箇所から合流させてもよい。液体の流量は、圧送汚泥の流量の2乃至6重量%であって、圧力は3.0乃至4.0MPaである。液体の供給口は、炉壁面から100cm以内、好ましくは25乃至50cmである。
2次注水口14の役割については、含水汚泥の炉内投入口の付着物を除去することと、含水汚泥の塊が炉内の下方に落下しないようにすることを目的としている。これらの目的のため、気水混合管16の下部から斜め上方に向けて1乃至2箇所ほど噴射している。汚泥は、圧送する過程で管内の圧力による脱水現象によって管壁近隣部へ水分が移動し、そのために管内の中心部が硬くなってくる。また、気水混合器16が設置されている場所は、炉内の温度が850乃至1150度の高温であるため気水混合器16の先端が加熱されるので、気水混合管16の内部管壁のうち、特に下面の管壁に乾燥途中の汚泥が付着し易くなる。液体を追加し混合することにより、中心部の軟化を促進し、汚泥の塊を小さくして分散しやくすることができる。また、管壁に付着した汚泥の除去を行い、汚泥の冷却を行って付着を抑制することができる。
【0017】
液体と空気は、別々に気水混合管16に供給される。液体と空気の供給位置は同一平面状でも、異なる平面状でも良い。前述した管壁に付着した汚泥の除去と汚泥の冷却を行って付着を抑制する観点から、液体の供給口を炉壁により近くすることが好ましい。
【0018】
炉壁に近い気水混合管16の先端内部は、放射状に仕切られた構造とすることができる。図3には、十字の放射状に仕切った構造を示す。気水混合管16の内部に旋回流を起こす形状の場合は、十字板17も旋回流方向に、スパイラル形状にする方がよい。十字板17の寸法は、板厚が5乃至7mmで、長さが80乃至150mmである。このようにして、炉内で含水汚泥を分散させることによって、炉内の高温ガスと効率的に接触し、短時間で熱処理を行うことができる。
【0019】
気水混合管16に到達するまでの輸送配管8については、圧送中に配管内の圧力が異常に上昇する場合に、配管輸送の途中に注水することで配管内の管壁の摩擦抵抗を低減させるための別の注水装置を取り付けてもよい。注水装置の必要なケースは、汚泥の水分が低くても受入れホッパ11から抜き出しやすい場合や、輸送配管8が長距離・高階層の位置などの際で汚泥の輸送困難な場合であり、注水装置を設置する方が好ましい。注水量は輸送汚泥流量の2乃至6重量%程度が好ましい。
【実施例】
【0020】
図2から図5を使用しながら本実施例を説明する。常温の含水率80重量%の下水汚泥は汚泥輸送用のコンテナに入れてダンプ式トレーラ10によって輸送され、セメント工場の受入れホッパ11へ投入された。受入れホッパ11では、汚泥の硬さは水を添加して調整した。硬さの調整は、受入れホッパ11の下部に位置する1軸式スクリューフィーダである抜き出し装置12の電流値が電流設定値より大きい場合は抜き出し装置12の出口におけるオーガフィーダである供給機22で1次注水口13から注水し、供給機22の電流が電流設定値を下回る場合は該注水を停止する。なお本実施例では、輸送配管8の途中での注水装置を使用しなかった。
【0021】
含水量を調整された汚泥は、7.5MPaの吐出圧の圧送ポンプ7によってセメント製造装置へ向かって輸送配管8を通って気水混合管16まで輸送されることによって、仮焼炉2の内部温度が880℃の位置に投入された。輸送距離は、水平115m、揚程の高さが35mで、配管径はφ200mmである。また、輸送量は5.3t/hrである。次にセメント製造装置の炉内投入位置から25cm手前の気水混合管16の途中位置で汚泥を軟弱化させるための水は、0.16t/hrほど2次注水口14から注入した。この時の液体として工場のアルカリ成分を含有する廃液を使用した。2次注水口14は、気水混合管16の管壁周囲の最下部から垂直方向の傾斜角度31度の傾斜方向にて1個所ほど設置し、注水口径はφ50mmであった。
【0022】
また、空気噴射口15については、気水混合管16の先端から30cmの位置で、気水混合管16の管壁から水平方向角度31度の斜め方向に左右両側から2箇所の口径φ65mmの配管を接続し、汚泥の分散性の向上を図った。気水混合管16の内部にて、空気噴射口15からの空気が直接的に衝突し難いように、左右両側からの空気噴射口15の上下方向を互いに逆方向に管芯から角度10度ほど上下させた。空気噴射口15の途中に設置されるエアパージ多孔板18は、図5に示す。エアパージ多孔板18の断面には、口径φ2mmの孔が数珠輪のような多孔の環状に12個ほど孔が空けてあり、この孔からの噴出流によって、気水混合管16の内部で旋回流は発生し、内部での混合特性を向上させることができた。なお、空気噴射を行う送風機は15MPaの送風圧力を有するものを使用した。
【0023】
さらに、図3に示すように、分散性をよくするために気水混合管16の汚泥投入口先端部に十字板17を設置した。十字板17は、配管の口径がφ250mmで長さ100mmの十字型の羽を有するものを設置した。なお、この十字板17の羽の断面形状はクサビ状を構成しており、汚泥の流れがスムースになるようになっている。これによって、汚泥の炉内への分散放出の向上が図ることができた。なお、図4の水平断面図に示すように気水混合管16の先端は、仮焼炉2の炉壁19の壁面と同じ位置にあって、仮焼炉2内部のセメント原料が直接、気水混合管16に衝突しない位置としている。
【0024】
これらにより、セメント製造設備の操業への悪影響を軽減し、セメント生産量の低減や、燃料原単位の悪化が少なくなり、操業が安定して含水汚泥を有効に使用することができた。輸送配管の途中での閉塞が大幅に軽減され、連続安定した汚泥の輸送が達成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、含水汚泥を配管輸送し工業用燃焼炉で焼却処理をし、原燃料として利用する際に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一般的なセメント製造装置の焼成炉を示す模式図である。
【図2】本発明における含水汚泥の受入れからセメント製造装置への供給までの概略図である。
【図3】本発明における汚泥吹込み用の気水混合管の形状を示す。
【図4】本発明における右図は水平断面で、左図が垂直断面の概略図である。
【図5】本発明における気水混合管のエアパージ多孔板の一例で、孔が数珠輪の環状の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1 サスペンジョンプレヒータ
2 仮焼炉
3 ロータリーキルン
4 クリンカクーラ
5 排気ファン
6 バーナー
7 圧送ポンプ
8 輸送配管
9 窯尻部
10 ダンプ式トレーラ
11 受入れホッパ
12 抜き出し装置
13 1次注水口
14 2次注水口
15 空気噴射口
16 気水混合管
17 十字板
18 エアパージ多孔板
19 炉壁
20 建屋
21 蓋
22 供給機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水汚泥を配管を通じてセメント製造装置の窯尻部または仮焼炉に供給して処理する含水汚泥の処理方法において、前記配管と前記窯尻部または仮焼炉の接続部付近の前記配管に液体と空気を別々に供給することを特徴とする含水汚泥の処理方法。
【請求項2】
前記接続部付近は、前記窯尻部または仮焼炉の壁面から100cm以内の前記配管部分である請求項1記載の含水汚泥の処理方法。
【請求項3】
前記液体は、前記配管の底部から供給される請求項1または2記載の含水汚泥の処理方法。
【請求項4】
接続部付近の前記配管の先端内部が放射状に仕切られている請求項1から3のいずれか1項に記載の含水汚泥の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−226236(P2009−226236A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71090(P2008−71090)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】