説明

吸収体物品

【課題】使用時に尿と便とを効果的に分離することができ、かつ、尿の吸収能力が高い吸収体物品の提供。
【解決手段】シート状の第1防漏体と、前記第1防漏体の上部の後部に存在するシート状の第2防漏体と、前記第1防漏体の上部の前部から前記第2防漏体の下側に至るまで、少なくとも1層配置された、高吸水性樹脂を含有し体液を吸収しうる吸収体とを具備する吸収体物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規吸収体物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ等の吸収体物品は、木材パルプ、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう。)等の吸収成分を用いた吸収体により着用者から排出された尿を吸収し、また、便(大便)を受容する物品である。従来の吸収体物品には、尿と便とを分離する機能がないため、使用時に尿と便とが混じりやすい。そして、尿と便とが混じり合うと、臭いが強くなり、かぶれが発生しやすくなるなどの問題が生じる。
【0003】
これに対して、尿と便とを分離する方法が種々提案されている。
例えば、尿と便とを仕切り部材により分離する方法が提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
また、吸収体物品の後部に開口を設け、この開口の中に便を収容させ、尿と分離する方法が提案されている(例えば、特許文献2〜5参照。)。
また、尿を速やかに吸収して吸収体物品の内部表面から除去することにより、尿と便とが接触しないようにする方法が提案されている(例えば、特許文献6および7参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−299092号公報
【特許文献2】国際公開第02/24130号パンフレット
【特許文献3】特開平6−327715号公報
【特許文献4】特開平6−343660号公報
【特許文献5】特開平8−56986号公報
【特許文献6】特開平6−90977号公報
【特許文献7】特開平9−28732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の吸収体物品では、尿と便との分離を効果的にすることができなかった。また、尿の吸収能力が低いため、交換する回数を多くする必要があった。
したがって、本発明は、使用時に尿と便とを効果的に分離することができ、かつ、尿の吸収能力が高い吸収体物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、新規構造を有する吸収体物品を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(10)を提供する。
【0008】
(1)シート状の第1防漏体と、
前記第1防漏体の上部の後部に存在するシート状の第2防漏体と、
前記第1防漏体の上部の前部から前記第2防漏体の下側に至るまで、少なくとも1層配置された、高吸水性樹脂を含有し体液を吸収しうる吸収体と
を具備する吸収体物品。
【0009】
(2)前記第2防漏体の前端部の下面の一部に、尿導入部形成材が結合している、上記(1)に記載の吸収体物品。
【0010】
(3)前記第2防漏体の前端部またはその周辺に、尿便ストップ部材を有する、上記(1)または(2)に記載の吸収体物品。
【0011】
(4)前記第1防漏体の前部において、前記吸収体が、左右に分かれて配置されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の吸収体物品。
【0012】
(5)前記第1防漏体の後部において、前記吸収体が、左右に分かれて配置されている、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の吸収体物品。
【0013】
(6)前記第1防漏体が周囲の一部または全部において上側に立ち上がっている、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の吸収体物品。
【0014】
(7)前記第1防漏体の左右の側壁が中側に折り返されている、上記(6)に記載の吸収体物品。
【0015】
(8)前記第1防漏体の左右の側壁がひだ状に形成されている、上記(6)または(7)に記載の吸収体物品。
【0016】
(9)ひだ状に形成されている前記第1防漏体の前記左右の側壁により規定される2段以上の空間のうち、少なくとも二つに、前記吸収体が配置されている、上記(8)に記載の吸収体物品。
【0017】
(10)前記第2防漏体が周囲の一部または全部において上側に立ち上がっている、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の吸収体物品。
【発明の効果】
【0018】
本発明の吸収体物品は、使用時に尿と便とを効果的に分離することができ、かつ、尿の吸収能力が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の吸収体物品を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書においては、本発明の吸収体物品を実際に着用した場合に、着用者の肌に近い側を「上」といい、遠い側を「下」という。また、本発明の吸収体物品を実際に着用した場合に、着用者の体の前側に対応する側を「前」といい、後側に対応する側を「後」という。また、各図中、理解を容易にするために、実際には接触している部材を離間させて示すことがある。
【0020】
図1は、本発明の吸収体物品の例を示す模式図である。図1(A)は平面図であり、図1(B)は図1(A)中のIB−IB線に沿った縦端面図であり、図1(C)は図1(A)中のIC−IC線に沿った横端面図である。
なお、添付した図面中の各平面図においては、図の上側に吸収体物品等の前側が位置するように図示してある。
【0021】
本発明の吸収体物品100は、基本的に、シート状の第1防漏体10と、第1防漏体10の上部の後部に存在するシート状の第2防漏体12と、第1防漏体10の上部の前部から第2防漏体12の下側に至るまで、少なくとも1層配置された、高吸水性樹脂を含有し体液を吸収しうる吸収体14とを具備する。
【0022】
第1防漏体10および第2防漏体12の材質は、それぞれ、一般に、バックシートとして用いられているものを用いることができる。具体的には、例えば、PE、PP、PET、EVA等の樹脂のフィルム;前記樹脂の発泡シート等の体液不透過性シートを用いることができる。体液不透過性シートは、通気性フィルム等の通気性を有するものも好適に用いられる。
また、前記樹脂のフィルムを用いる場合には、感触や外観を向上させるために、フィルムと不織布との複層シートとして用いることもできる。この場合、不織布としては、比較的低目付のSB、SMS、サーマルボンド不織布等が好適に用いられる。
また、前記樹脂のフィルムと後述するシート状吸収体との複層シートを用いることもできる。
また、高耐水性不織布を用いることもできる。この場合、単独で用いてもよく、フィルムと高耐水性不織布との複層シートとして用いることもできる。
【0023】
第1防漏体10および第2防漏体12は、いずれも複数の部材から構成されていてもよい。
【0024】
第2防漏体は、便を受容することができれば、前後方向の長さおよび位置、左右方向の長さ等を特に限定されない。
【0025】
また、第2防漏体12は、シート状であれば、その形状を特に限定されない。例えば、図2に示される形状とすることができる。
図2は、第2防漏体の種々の形状を示す模式図である。図2(A)〜図2(J)は、いずれも平面図である。
【0026】
本発明に用いられる吸収体14は、体液を吸収しうるものであれば特に限定されず、例えば、粉末状の木材パルプ、無加工のSAP等の粉体状吸収体を用いることもできるが、形態安定性、脱落の可能性等を考慮すると、シート状吸収体が好ましい。
シート状吸収体の中でも、SAPを50質量%以上、好ましくは60〜95質量%含有する高吸水性シートであるのが好ましい。
【0027】
高吸水性シートは、SAPを主成分とする極薄のシート状吸収体である。高吸水性シートは、SAPの含有量が極めて高いため、厚さが極めて薄い。高吸水性シートの厚さは、1.5mm以下であるのが好ましく、1mm以下であるのがより好ましい。
高吸水性シートは、SAPを主成分とする極薄のシート状吸収体であれば、構成や製造方法を特に限定されない。
例えば、Air Laid法で得られる高吸水性シートが挙げられる。Air Laid法は、粉砕した木材パルプとSAPとを混合し、結合剤を添加してシート状に成形して高吸水性シートを得る方法である。この方法で得られる高吸水性シートとしては、例えば、米国レオニヤ(Rayonier)社製のNOVATHIN(米国登録商標)、王子キノクロス社製のB−SAPが知られている。
また、SAPの分散スラリーを不織布等の体液透過性シートの上にコーティングする方法で得られる高吸水性シートも挙げられる。ここで、SAPの分散スラリーは、SAPとミクロフィブリル化セルロース(MFC)とを、水とエタノールとの混合溶媒に分散させたものであるのが好ましい。この方法で得られる高吸水性シートとしては、例えば、(株)日本吸収体技術研究所製のMegaThin(登録商標)が知られている。
そのほかに、例えば、起毛状不織布にSAPを大量に担持させ、ホットメルトバインダー、エマルションバインダー、水性繊維等で固定する方法で得られる高吸水性シート、繊維状SAPをPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維と混合してウェブ状に成形する方法で得られる高吸水性シート、SAP層の上下をティッシュで挟んだSAPシートが挙げられる。
【0028】
吸収体14は、第1防漏体10の上部の前部から第2防漏体12の下側に至るまで、少なくとも1層配置される。即ち、吸収体14は、1層であってもよく、2層以上(複数層)であってもよい。
また、吸収体14は、折りたたんだ状態で配置することもできる。
【0029】
つぎに、吸収体物品100の作用について説明する。
図3は、本発明の吸収体物品の作用を説明する模式図である。図3は吸収体物品の縦断面図を示す。
【0030】
吸収体物品100は、着用者の尿道口mが第1防漏体10の上部に位置し、肛門aが第2防漏体12の上部に位置するような状態で、着用される。
そして、着用者の尿道口mから、第1防漏体10の上部に存在する吸収体14の上側に排出された尿は、図2中、矢印で示されるように、吸収体14の全体に拡散しつつ吸収される。
一方、着用者の肛門aから、第2防漏体12に排出された便は、第2防漏体12に収容される。
本発明の吸収体物品100は、第1防漏体10の上部に存在する吸収体14で尿を受容し、また、第2防漏体12で便を受容するため、尿が第2防漏体12にオーバーフローしたり、便が吸収体14にオーバーフローしたりしない限り、尿と便とが接触することがない。
また、本発明の吸収体物品100においては、吸収体14が、第1防漏体10の上部の前部から第2防漏体12の下側に至るまで配置されているため、尿と便とを仕切り部材により分離して尿を前部のみで吸収する従来の方法に比べて、尿の吸収量が格段に多くなる。
【0031】
以下、本発明の好適実施形態の他の例を挙げて、より詳細に説明する。
図4は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図4(A)は平面図であり、図4(B)は図4(A)中のIVB−IVB線に沿った縦端面図であり、図4(C)は図4(A)中のIVC−IVC線に沿った横端面図である。
図4に示される吸収体物品110は、基本的に吸収体物品100と同じであるが、第2防漏体12の前端部の下面の一部が、左右方向の中央で、吸収体14の上面と、尿導入部形成材16により結合している点で相違する。
【0032】
排出された尿を、第2防漏体12の下側に存在する吸収体14に円滑に移動させるためには、特に第2防漏体の前端部の付近で、第2防漏体12と吸収体14との間に安定した間隙を設けるのが好ましい。
吸収体物品110においては、第2防漏体12の前端部の下面と、吸収体14の上面との間に尿導入部形成材16が設けられており、第2防漏体12と吸収体14との間の間隙が確保されている。また、第2防漏体12の下側に移動する尿は、尿導入部形成材16により左右に分割され、整流されるため、移動が円滑に行われる。更に、第2防漏体12と吸収体14とが尿導入部形成材16を介して結合しているため、使用中においても、第2防漏体12と吸収体14とが尿導入部形成材16との位置関係がほぼ一定に維持される。なお、尿導入部形成材16は、第2防漏体12と結合していればよく、吸収体14とは結合していなくてもよい。
【0033】
尿導入部形成材16は、第2防漏体12と吸収体14との間の間隙を確保するためにある程度の厚さが必要であるが、それ以外は特に限定されない。尿導入部形成材16の材料としては、例えば、接着剤、ゴム、フィルム、フォーム(発泡体)、嵩高不織布が挙げられる。接着剤の場合、ある程度の厚さとなるように塗布する。また、ゴム、フィルム、フォームまたは嵩高不織布の場合、細片または帯状体として、その表面と第2防漏体12の表面とを接着剤等により結合させる。
【0034】
尿導入部形成材16は、縦(前後方向の長さ)が10mm、横(左右方向の長さ)が20mm、厚さが3mmのウレタンフォームのブロックをホットメルト接着剤で第2防漏体12の前端部の下面と吸収体物品14の上面との間に配置し、固定させたものである。
吸収体物品110においては、尿は、図4(A)中、矢印で示されるように、尿導入部形成材16の両側を通って吸収体14の後部に移動する。これは尿導入部形成材16に用いられたウレタンフォームには液透過性がないためである。このように、尿の流路をある程度制限することにより、大量の尿が特定の箇所に集中して流れるようになるので、尿が吸収体14の後部に移動しやすくなる。
【0035】
図5は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図5(A)は平面図であり、図5(B)は図5(A)中のVB−VB線に沿った縦端面図であり、図5(C)は図5(A)中のVC−VC線に沿った横端面図である。
図5に示される吸収体物品120は、構造および機能のいずれも、基本的に吸収体物品110と同じであるが、尿導入部形成材の形状が相違する。尿導入部形成材16が左右方向に直線状であるのに対し、尿導入部形成材18は、前側に頂点がくるようなV字型の形状をしている。このような形状にすることにより、尿が吸収体14の前部から後部へと円滑に移動することを促進するとともに、尿が吸収体14の後部から前部へと逆流することを効果的に防止することができる。
【0036】
図6は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図6(A)は平面図であり、図6(B)は図6(A)中のVIB−VIB線に沿った縦端面図であり、図6(C)は図6(A)中のVIC−VIC線に沿った横端面図である。
図6に示される吸収体物品130は、構造および機能のいずれも、基本的に吸収体物品110と同じであるが、尿導入部形成材の存在位置が相違する。尿導入部形成材20は、左右に離間して位置している。
【0037】
図7は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図7(A)は平面図であり、図7(B)は図7(A)中のVIIB−VIIB線に沿った縦端面図であり、図7(C)は図7(A)中のVIIC−VIIC線に沿った横端面図である。
図7に示される吸収体物品140は、構造および機能のいずれも、基本的に吸収体物品130と同じであるが、尿導入部形成材の形状が相違する。尿導入部形成材22は、左右に離間して、外側が前側、内側が後側になるように配置されている。このような形状にすることにより、尿を中央に集中させて吸収体14の前部から後部へと円滑に移動することを促進するとともに、尿が吸収体14の後部から前部へと逆流することを効果的に防止することができる。
【0038】
図8は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図8(A)は平面図であり、図8(B)は図8(A)中のVIIIB−VIIIB線に沿った横端面図である。
図8に示される吸収体物品150は、基本的に吸収体物品100と同じであるが、第2防漏体12の前端部の下面の一部が、左右方向の全長にわたって、吸収体14の上面と、複数のハニカム状の孔を有する尿導入部形成材24を介して結合している点で相違する。第2防漏体12と尿導入部形成材24との間、および、吸収体14と尿導入部形成材24との間は、接着剤等により結合されている。
吸収体物品150においては、尿は、図8(A)中、矢印で示されるように、尿導入部形成材24を通って吸収体14の後部に移動する。尿導入部形成材24により、尿の流れが分割され、整流されるとともに、尿が吸収体14の後部から前部へと逆流することを極めて効果的に防止することができる。
【0039】
図9は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図9(A)は平面図であり、図9(B)は図9(A)中のIXB−IXB線に沿った縦端面図であり、図9(C)は図9(A)中のIXC−IXC線に沿った横端面図である。
図9に示される吸収体物品160は、基本的に吸収体物品100と同じであるが、第2防漏体12の前端部の下面の一部が、左右方向の全長にわたって、吸収体14の上面と、液透過性の尿導入部形成材26を介して結合している点で相違する。第2防漏体12と尿導入部形成材26との間、および、吸収体14と尿導入部形成材26との間は、接着剤等により結合されている。
【0040】
液透過性の尿導入部形成材26としては、液透過性であれば特に限定されず、例えば、PP不織布、PET不織布、PE不織布等の合成繊維の不織布;ネット状フィルター(例えば、イノアック社製のモルトフィルター);連続気泡を有する高発泡フォーム等のシート状の切片を用いることができる。不織布としては、嵩高で繊維が太いものが、クッション性および液透過性に優れる点で好ましい。
吸収体物品160においては、尿は、図9(A)中、矢印で示されるように、液透過性の尿導入部形成材26の中を通って吸収体14の後部に移動する。
【0041】
図10は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図10(A)は平面図であり、図10(B)は図10(A)中のXB−XB線に沿った縦端面図である。
図10に示される吸収体物品170は、第2防漏体12の前端部に、尿便ストップ部材30を有する。
尿便ストップ部材は、尿を第1防漏体内に保持する作用および/または便を第2防漏体内に保持する作用を奏し、これにより、尿と便とが接触することを防止したり、尿および/または便が漏れることを防止したりする。
【0042】
尿便ストップ部材30の材料としては、特に限定されないが、全体として液不透過性であるのが好ましく、例えば、発泡体(例えば、PU、PP、PP/EVA製);発泡体を芯とし、周囲を親水性素材で被覆した材料;発泡体を芯とし、周囲を親水性素材で被覆し、更に、その周囲を不織布または体液不透過性シートで被覆した材料が挙げられる。尿便ストップ部材は、第2防漏体12が延長して構成されていてもよい。
【0043】
図11は、尿便ストップ部材の種々の例を示す模式図である。図11(A)〜図11(C)および図11(E)はいずれも縦端面図であり、図11(D)は平面図である。
図11(A)に示される尿便ストップ部材32は、第2防漏体12の前端部から、その上端が前側に位置するように設けられている。これにより、尿が第2防漏体12に入り込むことを特に効果的に防止している。
図11(B)に示される尿便ストップ部材34は、第2防漏体12の前端部から、その上端が後側に位置するように設けられている。これにより、便が第2防漏体12から漏れることを特に効果的に防止している。
図11(C)に示される尿便ストップ部材36は、T字型の形状を示している。これにより、尿が第2防漏体12に入り込むことおよび便が第2防漏体12から漏れることを、いずれも効果的に防止している。
【0044】
尿便ストップ部材は、左右方向の全幅にわたって設けられるのが一般的であるが、図11(D)に示される尿便ストップ部材38は、第2防漏体12の前端部の中央の一部に設けられている。この形態は、尿および便が特に接触しやすい左右方向の中央部位において、それらの接触を防止することを目的としている。
図11(E)に示される尿便ストップ部材39は、第2防漏体12の前方に約2〜3cmの距離をとって、吸収体14の表面に設けられている。これにより、仮に尿が尿便ストップ部材39を乗り越えて後側に流れ込んでも、尿便ストップ部材39と第2防漏体12との間に存在する吸収体14に吸収されるため、尿が第2防漏体12上にオーバーフローすることを効果的に防止している。
【0045】
上述した尿便ストップ部材30、32、34および36は、いずれも尿便ストップ部材38の構造とすることができる。
【0046】
尿便ストップ部材は、その形状を特に限定されない。例えば、上述したほか、図12〜図14に示される形状とすることができる。
図12〜図14は、尿便ストップ部材の種々の例を示す模式図である。図12(A)〜図12(M)はいずれも平面図であり、図13(A)〜図13(D)はいずれも側面図であり、図14(A)〜図14(E)はいずれも横端面図である。図12〜図14中、12a〜12mは第2防漏体を表し、27は液透過性の尿導入部形成材を表し、42a〜42m、44a〜44dおよび46a〜46eは尿便ストップ部材を表す。
なお、図13(C)および図13(D)は、それぞれ、図13(A)および図13(B)の第2防漏体12の左右両側にも、尿便ストップ部材を設けたものである。
【0047】
図15は、吸収体の配置の種々の例を示す模式図である。図15(A)〜図15(F)はいずれも平面図である。
上述した図1に示される吸収体14は、第1防漏体10の左右方向のほぼ全幅にわたって配置されている。この場合、吸収体の量が多くなるので、尿の吸収量を多くすることができる。
図15(A)に示される吸収体14aは、第1防漏体10の前部において、左右に分かれて配置されており、第1防漏体10の後部において、その左右方向のほぼ全幅にわたって配置されている。この場合、吸収初期において、主に吸収体14aの前部が尿を吸収して膨張し、それにより左右方向の中央部に凹みが形成される。その後、尿が更に排出されると、その凹みが流路となって吸収体14aの後部への尿の移動が促進される。したがって、吸収体14aの後部における利用効率が優れたものになる。
【0048】
図15(B)に示される吸収体14bは、第1防漏体10の前部において、その左右方向のほぼ全幅にわたって配置されており、第1防漏体10の後部において、左右に分かれて配置されている。この場合、吸収体14bの後部が尿を吸収して膨張すると、左右方向の中央部に凹みが形成される。これにより、第2防漏体12が左右方向の中央部において垂れ下がってくることができるようになるので、便受容量が多くなる。
【0049】
この態様においては、第2防漏体12の前端部の下面の一部を、第1防漏体10の上面と結合させることができる。図15(F)においては、第2防漏体12の前端部の下面の一部が第1防漏体10の上面と結合部17を介して結合している。この態様においては、使用当初から便を受容するための空間が形成されている。
結合部17の位置は、その前端が第2防漏体12の前端部から後側に0〜40mmの位置であるのが好ましく、また、その後端が第2防漏体12の前端部から後側に20mmの位置から第2防漏体12の後端部の位置までの間であるのが好ましい。
結合部17の左右方向の長さは、2〜20mmであるのが好ましい。
結合部17の位置および大きさが、上記の範囲であると、吸収体の膨張を抑制することがないため、尿の吸収量が多く保たれる。
【0050】
図15(C)に示される吸収体14cは、第1防漏体10の前部から後部にわたって、左右に分かれて配置されている。この場合、上述した吸収体14aおよび吸収体14bの両方の効果を奏する。
【0051】
図15(D)に示される吸収体14dは、基本的に吸収体14aと同じであるが、前端において左右が結合している点で相違する。この場合、上述した吸収体14aとほぼ同じ効果を奏する。
【0052】
図15(E)に示される吸収体14eは、基本的に吸収体14bと同じであるが、後端において左右が結合している点で相違する。この場合、上述した吸収体14bとほぼ同じ効果を奏する。
【0053】
図16は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図16(A)は平面図であり、図16(B)は図16(A)中のXVIB−XVIB線に沿った横端面図である。図16(C)および図16(D)は、それぞれ別の態様の吸収体物品の横端面図である。
図16(A)および図16(B)に示される吸収体物品180においては、吸収体14fの左右方向の長さが第2防漏体12の左右方向の長さよりも短くなっている。
図16(C)に示される吸収体物品190は、基本的に吸収体物品180と同じであるが、第2防漏体12nがその左右両辺において下側に垂れ下がり側壁を形成しており、更に、その側壁が中側に折り返されて吸収体14fを包囲している点で相違する。
図16(D)に示される吸収体物品200は、基本的に吸収体物品190と同じであるが、第2防漏体12oの側壁の末端が重なって吸収体14fを完全に包囲している点で相違する。
【0054】
第1防漏体は、周囲の一部または全部において上側に立ち上がっているのが好ましい。
図17は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図17(A)は平面図であり、図17(B)は図17(A)中のXVIIB−XVIIB線に沿った縦端面図であり、図17(C)は図17(A)中のXVIIC−XVIIC線に沿った横端面図である。
図17に示される吸収体物品210は、第1防漏体10aが左右両辺において上側に立ち上がっている。これにより、尿が第1防漏体10aの左右から漏れにくくなっている。
【0055】
図18は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図18(A)は平面図であり、図18(B)は図18(A)中のXVIIIB−XVIIIB線に沿った縦端面図であり、図18(C)は図18(A)中のXVIIIC−XVIIIC線に沿った横端面図である。
図18に示される吸収体物品220は、第1防漏体10bが周囲の全周において上側に立ち上がっている。これにより、尿が第1防漏体10bの周囲から漏れにくくなっている。
【0056】
図19は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図19(A)は平面図であり、図19(B)は図19(A)中のXIXB−XIXB線に沿った縦端面図であり、図19(C)は図19(A)中のXIXC−XIXC線に沿った横端面図である。
図19に示される吸収体物品230は、第1防漏体10cが左右両辺において上側に立ち上がり側壁を形成しており、更に、その側壁が中側に折り返されている。これにより、尿が第1防漏体10cの左右から漏れにくくなっているうえ、この側壁により形成された空間が流路となって吸収体14の後部への尿の移動が促進される。
【0057】
図20は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図20(A)は平面図であり、図20(B)は図20(A)中のXXB−XXB線に沿った縦端面図であり、図20(C)は図20(A)中のXXC−XXC線に沿った横端面図である。
図20に示される吸収体物品240は、基本的に吸収体物品230と同じであるが、第1防漏体10dの左右の側壁がひだ状に形成されている点で相違する。これにより、第1防漏体10dが形成しうる空間の容積が大きくなるため、吸収体14の量を多くして尿の吸収量を多くすることができる。
【0058】
図21は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図21は横端面図である。
図21に示される吸収体物品220は、基本的に吸収体物品210と同じであるが、2層の吸収体14gが配置されている点で相違する。
【0059】
図22は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図22(A)および図22(B)はいずれも横端面図である。
図22(A)に示される吸収体物品260は、第1防漏体10eが左右両辺において上側かつ内側に立ち上がり側壁を形成している。第2防漏体12pは、その左右両端において下方に垂れ下がり、第1防漏体10eの左右の側壁を被覆している。
図22(B)に示される吸収体物品270においては、基本的に吸収体物品260と同じであるが、第2防漏体12qがその左右両端において下方に垂れ下がり、吸収体14fの左右両端を被覆している点で相違する。
【0060】
図23は、左右の側壁がひだ状に形成されている第1防漏体と第2防漏体との位置関係の種々の例を示す模式図である。図23(A)〜図23(O)はいずれも横端面図である。図23中、白抜きの部材が第1防漏体であり、網掛けの部材が第2防漏体である。図23においては、吸収体は省略してある。
【0061】
図24は、左右の側壁がひだ状に形成されている第1防漏体と第2防漏体と吸収体との位置関係の種々の例を示す模式図である。図24(A)〜図24(H)はいずれも横端面図である。図24中、白抜きの部材が第1防漏体であり、網掛けの部材が第2防漏体であり、斜線の部材が吸収体である。
中でも、ひだ状に形成されている第1防漏体の左右の側壁により規定される2段以上の空間のうち、少なくとも二つに、吸収体が配置されているのが好ましい。具体的には、図24(C)〜図24(H)の態様である。このように2層以上の吸収体を有すると、尿の吸収能力が大きくなる。
【0062】
図35は、本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。図35(A)は平面図であり、図35(B)は図35(A)中のXXXVB−XXXVB線に沿った縦端面図であり、図35(C)は図35(A)中のXXXVC−XXXVC線に沿った横端面図である。
図35に示される吸収体物品280は、第2防漏体12rが周囲の全周において上側に立ち上がっている。このように、第2防漏体が周囲の一部または全部において上側に立ち上がっていると、便が第2防漏体の周囲から漏れにくくなる。
【0063】
以下、より具体的な実施態様を挙げて更に詳細に説明する。
<実施態様1>
図25〜図27は、テープ型おむつの態様とした本発明の吸収体物品を示す模式図である。図25は平面図であり、図26(A)は図25中のXXVIA−XXVIA線に沿った縦端面図であり、図26(B)は図21中のXXVIB−XXVIB線に沿った横端面図であり、図27は着用時の状態を示す斜視図である。
【0064】
吸収体物品300においては、シート状の第1防漏体10が前後方向の中央部でやや狭くなった長方形の形態を示し、後側の両端部に結合用テープ64を有している。
第1防漏体101の上部の後部には、シート状の第2防漏体121が設けられている。また、第1防漏体101の上部の前部から第2防漏体121の下側に至るまで、ほぼ長方形の吸収体141が配置されている。第2防漏体121の左右両辺は下に垂れ下がって側壁を形成しており、その側壁は更に中側に折り返されており、吸収体141を被覆している。なお、図26(A)では第1防漏体101と第2防漏体121とが完全に離間しているが、実際には吸収体物品300の前後端において一体化されており、尿や便が漏れることを防止している。
前後方向の中央付近には、断面がほぼ楕円形である棒状の尿便ストップ部材40が設けられ、その前側が尿受容部P、後側が便受容部Qとなっている。尿便ストップ部材40は、やや後側に傾斜して設けられている。
【0065】
吸収体141の上にはスキンコンタクトシート50が設けられている。スキンコンタクトシート50を具備すると、着用時の表面感触が優れたものになる。スキンコンタクトシートは、体液透過性であれば特に限定されず、従来トップシートとして用いられてきた公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、PP不織布、PET不織布、PE不織布等の合成繊維の不織布を用いることができる。また、レーヨン、コットン等の親水性繊維と合成繊維とを混合してなる乾式不織布を用いることもできる。
スキンコンタクトシート50は、吸収体141の前端より前側の位置から第2防漏体121の前端の後側の位置まで吸収体141の上面を被覆している。
【0066】
第1防漏体101の左右両辺の中央部には、伸縮性帯状部材であるアウターギャザー60が設けられている。また、第1防漏体101上には、第2防漏体121の左右方向の両側に、帯状部材であるインナーギャザー62が設けられている。
【0067】
吸収体物品300は、図27に示されるように、着用時には、結合用テープ64により、第1防漏体101の前端と後端とが結合し、一つのウエストホールWと二つのレッグホールLHとを形成する。
【0068】
<実施態様2>
図28〜図30は、テープレス型おむつの態様とした本発明の吸収体物品を示す模式図である。図28は着用時の状態を示す斜視図であり、図29は図28中の結合部70を分離させて開いた平面図であり、図30(A)は図29中のXXXA−XXXA線に沿った縦端面図であり、図30(B)は図29中のXXXB−XXXB線に沿った横端面図である。
図28に示される吸収体物品310は、結合部70により前身頃と後身頃とが結合し、一つのウエストホールWと二つのレッグホールLHとを有するパンツの形状となっている。図29は、図28中の結合部70を分離させて開いた平面図である。
【0069】
シート状の第1防漏体102は、左右両辺が上に立ち上がって側壁を形成しており、更にその側壁が中側に折り返されている。第1防漏体102の側壁の端部には、周縁部形態保持材68がほぼ全長にわたって設けられている。
周縁部形態保持材68は、側壁の端部の形態を保持させる機能を有する。これにより、尿が体液受容領域の外側に漏れることが効果的に防止される。更に、着用時に、側壁の端部において、不均一で大きな凹凸が生じることを防止することができる。
周縁部形態保持材68の材料としては、クッション性(弾性)と、ある程度の厚さがあるのが好ましい。例えば、発泡体(例えば、PU、PP、PP/EVA製)、合成ゴムシート、伸縮性弾性フィルム、ゴムフィラメント、ポリウレタンフィラメントが好適に挙げられる。
【0070】
この周縁部形態保持材68の前側の部分は、本発明の吸収体物品の着用時において、尿道口の両側に位置してその上表面が着用者の体と接触して、吸収体物品を弾力的に固定し、尿道口が吸収体物品と直接接触しないように、または、接触しても尿道口に強い圧力がかからないようにする。このようにすることにより、着用時における尿道口への圧迫感をなくすことができる。また、二つの周縁部形態保持材68の間に形成される空間が、尿の流路となるため、着用者の尿道口およびその周囲が濡れるだけで、その他の部位を濡らすことなく、排尿することができる。
また、吸収体物品310の前側においては、二つの周縁部形態保持材68の間に性器が収容されることにより、尿が外側に漏れることが防止される。吸収体物品310の後側においては、臀部の丸みに沿って周縁部形態保持材68が着用者の肌に密着するようになり、便、特に軟便が排出されても、外側に漏れることが防止される。その結果、インナーギャザーおよびアウターギャザーが不要となる。ただし、これらを有していてもよい。本実施態様においては、アウターギャザー60のみが配置されている。
【0071】
第1防漏体102の上部の後部には、シート状の第2防漏体122が設けられている。また、第1防漏体102の上部の前部から第2防漏体122の下側に至るまで、チューブ状に形成された吸収体142が左右に分かれて配置されている。吸収体142は、第1防漏体102の側壁が形成する空間に収納されており、一部のみが露出している。
吸収体をチューブ状に形成する方法としては、例えば、特開平10−314217号公報において本発明者により提案されている方法を用いることができる。このように、吸収体142がチューブ状であると、狭いスペースの中で効果的に尿を吸収させることができる点で、好ましい。具体的には、吸収体142がチューブ状であるため、チューブの内部を尿が通ることができるのでブロッキングが起こりにくく、前後に長い連続形状とすることができる。また、吸収体142がチューブ状であるため、尿を吸収したときにつぶれにくく、膨張した二つの吸収体142の間に空間が形成されるため、尿の流路が確保される。
【0072】
前後方向の中央付近には、尿便ストップ部材40が設けられ、その前側が尿受容部P、後側が便受容部Qとなっている。尿便ストップ部材40は、それぞれ断面がほぼ楕円形である棒状の尿ストップ部40aと便ストップ部40bとこれらを結合させるシート状の基底部40cとを有する。尿ストップ部40aは前側に傾斜し、尿が後側に移動することを防止する。便ストップ部40bは後側に傾斜し、便が前側に移動することを防止する。尿便ストップ部材40は、第1防漏体102の左右方向の全幅にわたって設けられている。
尿便ストップ部材40の下面と第2防漏体122の前端部の上面とは、結合部19により、中央部においては直接に、また、左右両側においては第1防漏体102の側壁の折り返された部分および周縁部形態保持材68を介して結合している。即ち、尿便ストップ部材40と第2防漏体122と第1防漏体102の側壁の折り返された部分と周縁部形態保持材68とは、結合部19により一体化されている。結合部19は、例えば、感熱性接着剤等の接着剤により形成させることができる。
【0073】
第2防漏体122の前端の下側には、液透過性の尿導入部形成材28が配置されている。したがって、尿ストップ部40aによって止められた尿は、液透過性の尿導入部形成材28を通過して第2防漏体122の下側に移動する。
【0074】
吸収体142の上には、実施態様1と同様に、スキンコンタクトシート50が設けられている。スキンコンタクトシート50は、吸収体142の前端より前側の位置から第2防漏体122の前端の後側の位置まで吸収体142の上面を被覆している。
【0075】
第1防漏体102の側壁の外側には、第1防漏体102、スキンコンタクトシート50、第2防漏体122および尿便ストップ部材46の側縁に接合された不織布からなるアウター部材61が設けられ、アウター部材61の左右両辺の中央部には、伸縮性帯状部材であるアウターギャザー60が設けられている。
第1防漏体102およびアウター部材61の前後両端には、ウエストギャザー66が設けられている。
【0076】
この実施態様2においては、第1防漏体102と第2防漏体122とが、それぞれ袋状となっており、相互に独立しているため、尿と便との分離をほぼ完全に行うことができる。
【0077】
<実施態様3>
図31〜図34は、テープ型おむつの態様とした別の本発明の吸収体物品を示す模式図である。図31は平面図であり、図32は図31中のXXXII−XXXII線に沿った縦端面図であり、図33(A)〜図33(C)はそれぞれ図31中のXXXIIIA−XXXIIIA線、XXXIIIB−XXXIIIB線およびXXXIIIC−XXXIIIC線に沿った横端面図であり、図34は着用時の状態を示す斜視図である。
【0078】
吸収体物品320においては、シート状の第1防漏体103は、前後左右の四辺が上に立ち上がって壁を形成しており、更にその壁が中側に折り返されている。第1防漏体103の壁の端部には、周縁部形態保持材68が長方形を形成するように設けられている。
この周縁部形態保持材68の前側の部分は、本発明の吸収体物品の着用時において、尿道口の両側および前側に位置してその上表面が着用者の体と接触して、吸収体物品を弾力的に固定し、尿道口が吸収体物品と直接接触しないように、または、接触しても尿道口に強い圧力がかからないようにする。このようにすることにより、着用時における尿道口への圧迫感をなくすことができる。また、左右の二つの周縁部形態保持材68の間に形成される空間が、尿の流路となるため、着用者の尿道口およびその周囲が濡れるだけで、その他の部位を濡らすことなく、排尿することができる。
また、吸収体物品320の前側においては、左右の二つの周縁部形態保持材68の間に性器が収容され、また、前側の周縁部形態保持材68が着用者の体と密着する一方で、第1防漏体103の前側の壁が袋状となっているため、尿が外側に漏れることが極めて効果的に防止される。特に、通常、前側から尿が漏れやすい伏臥位において、その効果が大きい。
【0079】
吸収体物品320の後側においては、臀部の丸みに沿って周縁部形態保持材68が着用者の肌に密着するようになり、また、後側の周縁部形態保持材68が着用者の体と密着する一方で、第1防漏体103の後側の壁が袋状となっているため、便が外側に漏れることが極めて効果的に防止される。特に、通常、後側から便、特に軟便が漏れやすい仰臥位において、その効果が大きい。その結果、インナーギャザーおよびアウターギャザーが不要となる。これにより、着用者の身体に対する締め付けがなく、着用感に優れる。ただし、これらを有していてもよい。
【0080】
第1防漏体103の左右の側壁は、ひだ状に形成されており、途中の折り返し部分により、上下2段に分かれている。これにより、より多量の尿を吸収することが可能になり、長時間の装着に耐えられるようになっている。
第1防漏体103の上段の後部には、シート状の第2防漏体123が設けられている。また、第1防漏体103の下段の前部から第2防漏体123の下側に至るまで、および、第1防漏体103の上段の前部には、ほぼ長方形の吸収体143が左右に分かれて配置されている。即ち、吸収体143は、吸収体物品320の前側では2層、後側では1層となっている。吸収体143は、第1防漏体103の側壁が形成する空間に収納されており、一部のみが露出している。
このように第2防漏体123の下に存在する吸収体143は、1層のみであるので、便を受容した際に下側に垂れ下がりやすくなっている。即ち、便の受容量が多くなっている。特に、本実施態様では、第2防漏体123の前側の中央部がその下の部材(ここでは、液ガイドシート80)と結合部17により結合しているため、あらかじめ便の受容領域の容積が大きくなっている。
また、吸収体143が左右に分かれて存在するので、吸収体143が尿を吸収すると、中央部の容積がより大きくなる。
【0081】
前後方向の中央付近には、尿便ストップ部材40が設けられ、その前側が尿受容部P、後側が便受容部Qとなっている。尿便ストップ部材40は、それぞれ断面がほぼ楕円形である棒状の尿ストップ部40aと便ストップ部40bとこれらを結合させるシート状の基底部40cとを有する。尿ストップ部40aは前側に傾斜し、尿が後側に移動することを防止する。便ストップ部40bは後側に傾斜し、便が前側に移動することを防止する。尿便ストップ部材40は、第1防漏体103の左右方向の全幅にわたって設けられている。
尿便ストップ部材40の下面と第2防漏体123の前端部の上面とは、結合部17により直接に結合している。結合部17は、例えば、感熱性接着剤等の接着剤により形成させることができる。
【0082】
第2防漏体123の前端の下側には、液透過性の尿導入部形成材28が配置されている。したがって、尿ストップ部40aによって止められた尿は、液透過性の尿導入部形成材28を通過して第2防漏体123の下側に移動する。
【0083】
第2防漏体123の左右両辺の上面は、第1防漏体103の側面と結合部21により結合している。これにより、第2防漏体123の左右から便が漏れることが防止される。
【0084】
第2防漏体123の上側には、便処理用シート13が設けられている。便処理用シートは、便、特に軟便の水分を吸収し、便が広範囲に広がらないようにする。また、便受容用シートは、排便されていない状体では、スキンコンタクトシートとしても機能する。
便処理用シートとしては、例えば、パルプ等で作られた吸水性不織布、具体的には、王子キノクロス社製のキノクロスが好適に用いられる。
【0085】
第1防漏体103の上部に配置された吸収体143の上には、実施態様1と同様に、スキンコンタクトシート50が設けられている。スキンコンタクトシート50は、吸収体143の前端より前側の位置から第2防漏体123の前端の後側の位置まで吸収体143の上面を被覆している。
【0086】
第1防漏体103の下部に配置された吸収体143の下には、液ガイドシート80が設けられている。
液ガイドシート80は、尿の移動を可能とする流路を有する構造であれば特に限定されないが、体液吸収性や体液保持性を有しないのが、尿の移動が速やかに行われる点で好ましい。具体的には、凸部に開孔を有する凹凸シート部材(開孔凹凸シート部材)が好適に挙げられる。
【0087】
第1防漏体103の後端には、帯状のウエストバンド72が設けられており、その両末端には着脱部材74が設けられている。第1防漏体103の前端の下面には、着脱部材76が設けられている。着脱部材74と着脱部材76とは、互いに着脱自在になっている。例えば、各種面ファスナーにより構成されている。
【0088】
この実施態様3においては、第1防漏体103と第2防漏体123とが、それぞれ袋状となっており、相互に独立しているため、尿と便との分離をほぼ完全に行うことができる。
また、実施態様3においては、着用者が自ら装着することが難しい場合、介助者が着用者の尿道口や肛門の位置を確認しながら装着させることができる。
【0089】
本発明の吸収体物品においては、第2防漏体は、着脱可能とすることができる。この場合、便を受容した後に、第2防漏体を取り外して廃棄することができる。そして、未使用の第2防漏体を装着して再び使用することができる。また、未使用の第2防漏体を装着せず、尿と便とを分離しない通常のおむつとして使用することもできる。
また、本発明の吸収体物品が便処理用シートを有するときも、同様に、便処理用シートを着脱可能とすることができる。そして、未使用の便処理用シートを装着して再び使用することができる。また、未使用の便処理用シートを装着せずに使用することもできる。
【0090】
第2防漏体等を着脱可能とする構成は、特に限定されない。例えば、便処理用シートのみが着脱可能である態様、第2防漏体のみが着脱可能である態様(便処理用シートがない場合)、第2防漏体および尿便ストップ部材が着脱可能である態様、第2防漏体、尿便ストップ部材および尿導入部形成材が着脱可能である態様が挙げられる。尿便ストップ部材が着脱可能である場合には、その一部(例えば、尿ストップ部、便ストップ部)だけが着脱可能であってもよく、その全部が着脱可能であってもよい。
【0091】
これらの着脱可能な部材は、それぞれの部材が独立に着脱可能であってもよく、一体となって着脱可能であってもよい。
【0092】
以上、本発明の吸収体物品を図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮しうる任意の構成と置換することができる。
また、各実施形態における各部の構成を任意に組み合わせて、別の実施形態とすることもできる。
【0093】
本発明の吸収体物品は、成人男性用、成人女性用および子供用のいずれの用途にも好適に用いられる。
【実施例】
【0094】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
以下のようにして、本発明の吸収体物品および市販の吸収体物品を用いて、着用試験を行った。
1.吸収体物品
実施例としては、図31〜図34に示される本発明の吸収体物品を用いた。吸収体としては、SAPの分散スラリーを不織布の上にコーティングする方法で得られる高吸水性シート((株)日本吸収体技術研究所製のMegaThin(登録商標)、SAP目付量140g/m2)を用いた。
吸収体物品の各部における高吸水性シートの含有量、設計脱水吸収量および設計自由吸収量を第1表に示す。なお、設計自由吸収量は、JIS K7223−1996の「高吸水性樹脂の吸収量試験方法」の規定に準じて行った。設計脱水吸収量は、設計自由吸収量を測定した後、1,000Gで10分間遠心分離をすることにより脱水して求めた。
【0095】
【表1】

【0096】
2.着用試験
着用者として、正常な排尿機構および排便機構を持つ健常者4名(男性1:38才、男性2:64才、女性1:32才、女性2:54才)に、吸収体物品を着用させ、以下のようにして排尿および排便を行わせた。
まず、着用者に、立位、座位、横臥位および仰臥位の各体位を維持させ、通常の尿意を感じたところで排尿させた。排尿が終了した時点で吸収体物品を取り外させ、尿の吸収量を測定した。ついで、同じ吸収体物品を着用させ、同様に、尿の吸収量を測定した。
その後、立位および座位の場合は同じ吸収体物品を着用させ、便意を感じた時点で排便させた。排便が終了した時点で吸収体物品を取り外させ、便の捕獲量を測定し、また、吸収体物品および着用者の汚れの有無ならびに尿便の分離の程度を観察した。
【0097】
排尿1回目および2回目における4人の尿の吸収量の平均を第2表に示す。
第2表から明らかなように、尿の吸収量は、いずれの体位でも設計脱水吸水量を大きく超えており、中でも、立位および座位においては、設計自由吸水量と同程度という高水準まで達した。
【0098】
【表2】

【0099】
また、便の捕獲量ならびに吸収体物品および着用者の汚れの有無を第3表に示す。
第3表から明らかなように、排便後の吸収体物品の汚れは、観察されず、または、観察されてもわずかであった。
排便後の着用者の汚れは観察されなかった。ここで、第3表における着用者腎部とは、臀部のうち肛門周囲を除いた部分を指す。したがって、便の排出に伴い汚れる肛門周囲以外の部分が汚れなかったということは、便が便受容郡にしっかり捕獲されたことを示している。
更に、いずれの着用者においても、尿と便とは完全に分離されており、混じり合っていなかった。
【0100】
【表3】



【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の吸収体物品の例を示す模式図である。
【図2】第2防漏体の種々の形状を示す模式図である。
【図3】本発明の吸収体物品の作用を説明する模式図である。
【図4】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図5】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図6】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図7】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図8】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図9】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図10】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図11】尿便ストップ部材の種々の例を示す模式図である。
【図12】尿便ストップ部材の種々の例を示す模式図である。
【図13】尿便ストップ部材の種々の例を示す模式図である。
【図14】尿便ストップ部材の種々の例を示す模式図である。
【図15】吸収体の配置の種々の例を示す模式図である。
【図16】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図17】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図18】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図19】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図20】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図21】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図22】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【図23】第1防漏体と第2防漏体との位置関係の種々の例を示す模式図である。
【図24】第1防漏体と第2防漏体と吸収体との位置関係の種々の例を示す模式図である。
【図25】テープ型おむつの態様とした本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図26】テープ型おむつの態様とした本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図27】テープ型おむつの態様とした本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図28】テープレス型おむつの態様とした本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図29】テープレス型おむつの態様とした本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図30】テープレス型おむつの態様とした本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図31】テープ型おむつの態様とした別の本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図32】テープ型おむつの態様とした別の本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図33】テープ型おむつの態様とした別の本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図34】テープ型おむつの態様とした別の本発明の吸収体物品を示す模式図である。
【図35】本発明の吸収体物品の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0102】
10、10a〜10e、101、102、103 第1防漏体
12、12a〜12r、121、122、123 第2防漏体
13 便処理用シート
14、14a〜14g、141、142、143 吸収体
16、18、20、22、24、26、27、28 尿導入部形成材
17、19、21、70 結合部
30、32、34、36、38、39、40、42a〜42m、44a〜44d、46a〜46e 尿便ストップ部材
40a 尿ストップ部
40b 便ストップ部
40c 基底部
50 スキンコンタクトシート
60 アウターギャザー
61 アウター部材
62 インナーギャザー
64 結合用テープ
66 ウエストギャザー
68 周縁部形態保持材
72 ウエストバンド
74、76 着脱部材
80 液ガイドシート
100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、300、310、320 吸収体物品
LH レッグホール
W ウエストホール
a 肛門
m 尿道口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の第1防漏体と、
前記第1防漏体の上部の後部に存在するシート状の第2防漏体と、
前記第1防漏体の上部の前部から前記第2防漏体の下側に至るまで、少なくとも1層配置された、高吸水性樹脂を含有し体液を吸収しうる吸収体と
を具備する吸収体物品。
【請求項2】
前記第2防漏体の前端部の下面の一部に、尿導入部形成材が結合している、請求項1に記載の吸収体物品。
【請求項3】
前記第2防漏体の前端部またはその周辺に、尿便ストップ部材を有する、請求項1または2に記載の吸収体物品。
【請求項4】
前記第1防漏体の前部において、前記吸収体が、左右に分かれて配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項5】
前記第1防漏体の後部において、前記吸収体が、左右に分かれて配置されている、請求項1〜4のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項6】
前記第1防漏体が周囲の一部または全部において上側に立ち上がっている、請求項1〜5のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項7】
前記第1防漏体の左右の側壁が中側に折り返されている、請求項6に記載の吸収体物品。
【請求項8】
前記第1防漏体の左右の側壁がひだ状に形成されている、請求項6または7に記載の吸収体物品。
【請求項9】
ひだ状に形成されている前記第1防漏体の前記左右の側壁により規定される2段以上の空間のうち、少なくとも二つに、前記吸収体が配置されている、請求項8に記載の吸収体物品。
【請求項10】
前記第2防漏体が周囲の一部または全部において上側に立ち上がっている、請求項1〜9のいずれかに記載の吸収体物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2006−55308(P2006−55308A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239172(P2004−239172)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(592034744)株式会社日本吸収体技術研究所 (28)
【Fターム(参考)】