説明

吸収性物品

【課題】
排泄物が押し潰されて圧縮され、吸収性物品内に拡散し、さらには排泄物が吸収性物品から漏れ出すことがない吸収性物品を提供する。
【解決手段】
少なくとも肌当接面側に配置されるトップシートと、外面側に配置されるバックシートと、この両シート間に介在された吸収体とにより物品本体が構成され、互いに対向して物品本体の長手方向へ延びる両側縁部と、互いに対向して物品本体の幅方向へ延びる両端縁部とを有し、長手方向には前身頃と、後身頃と、前後身頃の間に位置する脚周り部とを有して成る吸収性物品において、トップシートと吸収体との間に筒状の耐圧縮層と、緩衝層とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て紙おむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン等の吸収性物品に関し、さらに詳細には、排泄物が体圧により押し潰されて圧縮されることのない吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、吸収性物品は排泄物の吸収機能及び保持機能を高めるために種々の構成のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示され、図12に斜視図で、図13に図12のX−X断面図で示されるようなテープ式の紙おむつ100は、通常、肌当接面側に配置され、不織布等から成るトップシート101と、外面側に配置され、ポリエチレン等のプラスチックシートや不織布、あるいはこれらの組み合わせから成るバックシート102と、これらの両シート101,102間に介在され、全体がティッシュ等の吸水紙103で被覆された吸収体104とにより、平面形状が砂時計形状に形成された紙おむつ本体105が構成されている。
【0004】
また、このテープ式の紙おむつ100は、おむつ本体105の長手方向(縦方向)に前身頃FP及び後身頃BPと、これらの前後身頃FP,BPの間に位置する脚周り部LOとを有しており、脚周り部LOのおむつ本体105の幅方向(横方向)の中央部であって、脚周り部LOの後半分には、トップシート101と、バックシート102と、吸収体104とをおむつ本体105の厚み方向へ貫通させることによって、排泄物収容部106となる開孔107が形成されている。
【0005】
また、バックシート102の外面には、開孔107を覆うように不透液性の被覆シート108が設けられており、さらにまた、被覆シート108の内面、すなわち排泄物収容部106側には吸水性内装シート109が設けられており、この内装シート109の両端部はバックシート102の外面と貼着されている。
【0006】
このように構成された紙おむつ100に、例えば軟便が排泄された場合、軟便が開孔107を通過して、排泄物収容部106に収容され、軟便に含まれる水分が内装シート109に吸収されるので、内装シート109上には軟便に含まれる固形分のみが残る。従って、軟便が高い流動性を維持したままの状態で排泄物収容部106に残存することがなくなるので、排泄物が開孔107から漏れ出し、トップシート101の上面を流動することを減少させることはできた。
【0007】
しかし、上述した紙おむつ100は、例えば着用者が寝る、座る等の動作をすることにより吸収体104に着用者の体重、すなわち体圧がかかった場合、吸収体104が体圧により押し潰されることによって、開孔107の周縁部110が潰れ、排泄物収容部106がなくなる。従って、排泄物が特に硬便である場合、排泄物が押し潰されて圧縮されてしまい、トップシート101上に拡散し、さらには紙おむつ100から排泄物が漏れ出してしまい、着用者に不快感を与えていた。また、排泄物が着用者の皮膚に付着してしまうため、特に着用者が乳幼児である場合には、肌荒れの発生が深刻な問題であった。さらにまた、紙おむつ100から排泄物が漏れ出した場合、被着用者の手を汚すことなく後処理をすることが難しいという問題もあった。
【特許文献1】特開2003−275247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排泄物が押し潰されて圧縮され、吸収性物品内に拡散し、さらには排泄物が吸収性物品から漏れ出すことがない吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、少なくとも肌当接面側に配置されるトップシートと、外面側に配置されるバックシートと、前記両シート間に介在された吸収体とにより物品本体が構成され、互いに対向して前記物品本体の長手方向へ延びる両側縁部と、互いに対向して前記物品本体の幅方向へ延びる両端縁部とを有し、前記長手方向には前身頃と、後身頃と、前記前後身頃の間に位置する脚周り部とを有して成る吸収性物品において、前記トップシートと前記吸収体との間に筒状の耐圧縮層と、緩衝層とを設けることを特徴とする吸収性物品を提供することによって、達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、前記耐圧縮層は、少なくとも前記脚周り部と前記後身頃との間で、物品本体の幅方向の略中央部に設けられていることを特徴とする吸収性物品を提供することによって、効果的に達成される。
【0011】
また、本発明の上記目的は、前記吸収体には、前記耐圧縮層の中空部に対応する位置に、前記耐圧縮層の投影面の面積よりも小さな平面積を有する凹部が設けられていることを特徴とする吸収性物品を提供することによって、より効果的に達成される。
【0012】
また、本発明の上記目的は、前記吸収体には、少なくとも前記脚周り部と前記後身頃との間で、前記吸収体の幅方向の略中央部に、前記耐圧縮層の投影面の面積と同じ大きさの平面積、あるいは前記耐圧縮層の投影面の面積よりも大きな平面積を有する凹部が設けられており、前記耐圧縮層が前記凹部の内部に設けられていることを特徴とする吸収性物品を提供することによって、効果的に達成される。
【0013】
また、本発明の上記目的は、前記耐圧縮層は、厚みが4mm以上、幅が5mm以上前記吸収体の幅以下であり、また耐圧縮層により形成される排泄物収容部の投影面の面積が1000mm以上であることを特徴とする吸収性物品を提供することによって、より効果的に達成される。
【0014】
また、本発明の上記目的は、前記緩衝層は、前記耐圧縮層の肌当接面に設けられていることを特徴とする吸収性物品を提供することによって、より効果的に達成される。
【0015】
また、本発明の上記目的は、前記緩衝層は、厚みが1mm以上であり、また少なくとも前記耐圧縮層の縁部の肌当接面を覆うことができる大きさであることを特徴とする吸収性物品を提供することによって、より効果的に達成される。
【0016】
さらにまた、本発明の上記目的は、前記緩衝層の略中央部に切り込みが設けられていることを特徴とする吸収性物品を提供することによって、より一層効果的に達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る吸収性物品によれば、トップシートと吸収体との間に体圧がかかっても押し潰されることがない筒状の耐圧縮層を設けることによって、排泄物収容部が耐圧縮層の中空部により形成される。従って、耐圧縮層に体圧がかかっても排泄物収容部を維持することができるので、排泄物収容部内に収容された排泄物が体圧により押し潰されて圧縮され、トップシート上に逆戻りして拡散し、さらには吸収性物品から排泄物が漏れ出すことを防止することができる。この結果、着用者に不快感を与えることがなく、良好な着用感を与えることができ、また、排泄物が着用者の皮膚に付着することがなくなるので、肌荒れの発生を防止することもできる。さらにまた、排泄物が吸収性物品から漏れ出すことを防止することができるので、被着用者にとって吸収性物品の後処理が簡単になる。
【0018】
吸収体の耐圧縮層の中空部に対応する位置に凹部を設けることによって、排泄物収容部の厚みを厚くすることができ、排泄物収容部内に収容され、保持されている排泄物から着用者の皮膚までの距離をより長くすることができるので、着用者の皮膚に排泄物が付着することを防止することができ、この結果、排泄物が体圧により押し潰されて圧縮されることを防止すると共に、肌荒れの発生を防止することができる。また、排泄物収容部の体積を増加させることができるので、排泄物が排泄物収容部から溢れ出すことを防止することができる。
【0019】
また、耐圧縮層の肌当接面に緩衝層を設けることによって、吸収性物品の着用感を向上させることができる。
【0020】
さらにまた、緩衝層に切り込みを形成することによって、排泄物をスムーズに排泄物収容部内に移行させ、保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る吸収性物品について、吸収性物品がパンツ型の紙おむつである場合を例に図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は必ずしも以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更できるものであることはいうまでもない。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係るパンツ型の紙おむつ(以下、「本紙おむつ」と言う。)10の使用状態を示す斜視図であり、図2は、図1の紙おむつ10を展開し、肌当接面側から見た場合の幅方向の断面図である。なお、本紙おむつ10は後述するように、トップシートと吸収体との間に耐圧縮層と緩衝層とを設けたことを除くその他の構成については前述した従来の紙おむつ100と実質的に同様である。
【0023】
本紙おむつ10は、前述した従来の紙おむつ100と同様に、肌当接面側に配置されるトップシート11と、非肌当接面側(外面側)に配置されるバックシート12と、これらの両シート11,12間に介在され、クレープ紙等の吸水紙13で全体が被覆されている吸収体14とにより、平面形状が略砂時計形状に形成されたおむつ本体15が構成されており、また、本紙おむつ10は互いに対向しておむつ本体15の長手方向へ延びる両側縁部10SFと、互いに対向しておむつ本体15の幅方向へ延びる両端縁部10EFとを有しており、さらにまた、おむつ本体15の長手方向には前身頃10FPと、後身頃10BPと、この前後身頃10FP,10BPの間に位置する脚周り部10LOとを有している。
【0024】
なお、本紙おむつ10には、図2に示されるように、バックシート12と吸収体14との間に防水フィルム16が配設され、またトップシート11と吸収体14との間にセカンドシート17が配設されているが、この防水フィルム16及びセカンドシート17は必要に応じ、適宜省略することもできる。
【0025】
なお、本紙おむつ10で用いられるトップシート11は、排泄物を吸収体14へ透過させるシートであって、肌着に近い感触を有し、きめが細かく繊維密度が高い素材、例えば有孔又は無孔の不織布や多孔性のプラスチックシート等が好適に用いられるが、必ずしもこれらの素材に限定されるものではなく、公知の種々のものを使用することができる。なお、トップシート11に多数の透孔を形成すると、排泄物が吸収体14に、より速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0026】
バックシート12には透明ないし半透明のポリエチレン、ポリプロピレン等のシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等の不織布を積層したラミネート不織布や、さらには後述する防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とでバックシート12を構成する。)等を用いることができる。なお、バックシート12は不透液性であることが好ましい。また、近年はムレ防止の観点から、透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。
【0027】
吸収体14は排泄物を吸収、保持し得るものであれば良く、通常、綿状パルプを主体とし、これに超吸収性ポリマー(SAP)を混在させたものが使用されるが、この他、綿状パルプのみから成るもの、SAPシート、エアレイド不織布(エアレイドとSAP)等、公知の種々のものを使用することができる。また、図2に示されるように吸収体14をティッシュ等の吸水紙13で被覆すると、吸水紙13によって排泄物を速やかに吸収体14に拡散させて、排泄物がトップシート11へ逆戻りすることを防止することができる。なお、この吸水紙13は適宜省略することもできる。
【0028】
また、吸収体14の長手方向の1辺の長さlは少なくとも30mm以上であることが吸収機能を果たす上で好ましい。
【0029】
防水フィルム16は、排泄物の漏れ防止及びムレ防止の観点から、遮水性と透湿性とを有する材料、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシート状に形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等が好ましく用いられる。また、不織布等の基材にアクリル樹脂やポリウレタン樹脂等を直接コーティングしたものを用いても良い。
【0030】
セカンドシート17は、繊維密度がトップシート11の繊維密度よりも小さいものが好ましく使用される。また、セカンドシート17は着用者の皮膚に直接接触しないので、短繊維不織布から成るものを用いることもできる。さらに、セカンドシート17として、メッシュ状のフィルムや孔開き不織布等も用いることができ、また、保水性繊維を含むものであっても良い。さらにまた、セカンドシート17に親水剤を添加することもできる。
【0031】
図3は、本紙おむつ10に使用される吸収体14、耐圧縮層18、及び緩衝層19の組立図であり、図4は組立後の吸収体14の斜視図である。図示されるように、本紙おむつ10は、セカンドシート17(セカンドシート17を省略する場合には、トップシート11)と吸収体14との間、すなわち吸収体14の肌当接面上で、少なくとも脚周り部10LOと後身頃10BPとの間で、さらにおむつ本体15の幅方向の略中央部に、筒状の耐圧縮層18が設けられており、また耐圧縮層18の肌当接面には、耐圧縮層18の縁部20の肌当接面を覆うように緩衝層19が設けられている。
【0032】
耐圧縮層18とは、筒状に形成されており、着用者の体重(体圧)がかかっても押し潰されることがなく、筒の中空部21を維持することができる層である。
【0033】
この耐圧縮層18の形成材料としては、体圧に耐え得る材料、例えば熱可塑性繊維の構造体(エアレイド不織布)、合成樹脂製の発泡体、気泡性の軟質ウレタンスポンジ等の公知の種々の材料を使用することができる。
【0034】
耐圧縮層18は、上述したように筒状に形成されているので、吸収体14の肌当接面に設けられると、耐圧縮層18の中空部21によって排泄物を収容し、保持する排泄物収容部22を形成することができる。
【0035】
また、この耐圧縮層18が、おむつ本体15の少なくとも脚周り部10LOと後身頃10BPとの間の位置に設けられると、本紙おむつ10の着用時に、排泄物収容部22の略中央部に着用者の肛門が位置するので、軟便や硬便の排泄物は、確実に排泄物収容部22に移行することができる。従って、着用者の皮膚に排泄物が付着することがなくなるので肌荒れを防止することができる。なお、排泄物の尿等の水分は、従来の紙おむつ100と同様に、吸収体14に吸収されて保持される。
【0036】
また、耐圧縮層18は、耐圧縮層18の中空部21を維持することができる、すなわち排泄物収容部22が着用者の体圧により押し潰されることがないので、排泄物収容部22に収容された排泄物が押し潰されて圧縮され、トップシート11上に拡散することを防止することができる。従って、着用者に快適な着用感を与えることができると共に、排泄物が着用者の皮膚に付着することをより防止することができる。また、排泄物が紙おむつ10から漏れ出すことを防止することもできるので、被着用者にとっては紙おむつ10の後処理が簡単になる。
【0037】
耐圧縮層18は、厚みd1が少なくとも4mm以上、好ましくは10〜25mm、幅(おむつ本体15の幅方向の長さ)wが5mm以上吸収体14の幅以下、好ましくは50〜130mmである。このような厚みd1及び幅wを有する耐圧縮層18であると、体圧により耐えることができ、耐圧縮層18が押し潰されることをより防止することができる。
【0038】
また、耐圧縮層18を上方から見た場合(図3中、矢印A側から見た場合)における耐圧縮層18の中空部21により形成される排泄物収容部22の投影面(図3中、点線円にて示す部分)23の面積が1000mm以上であると、十分な大きさの排泄物収容部22を形成することができるので、排泄物が多量に排泄されても、排泄物が排泄物収容部22から溢れ出し、トップシート11上に排泄物が拡散し、さらには紙おむつ10から漏れ出すことを防止することができる。
【0039】
なお、排泄物収容部22の投影面23の形状は、図3及び図4に示されるような円状に限定されるものではなく、投影面23の面積が1000mm以上であれば、この他、星型、四角形、三角形、動物の形状等の公知の種々の形状とすることができる。
【0040】
また、耐圧縮層18は筒状に形成されていれば、図3及び図4に示されるような円筒状に限定されるものではなく、この他、耐圧縮層18を上方から見た場合における投影面23′の形状が星型や、四角形、三角形、動物の形状等の公知の種々の形状とすることができる。
【0041】
さらにまた、排泄物収容部22の投影面23と耐圧縮層18の投影面23′との形状は、必ずしも同一の形状である必要はなく、例えば、排泄物収容部22の投影面23の形状は星型で、耐圧縮層18の投影面23′の形状は四角形のように異なる形状であっても良い。
【0042】
耐圧縮層18は、上述したように体圧がかかっても押し潰されることがないようにある程度の硬度を有する素材で形成されているので、耐圧縮層18が着用者の皮膚に当接してしまうと、着用感が悪くなり、また着用者の皮膚を傷つけてしまうおそれもある。従って、本紙おむつ10は、耐圧縮層18の肌当接面に、クッション性を有する緩衝層19を設け、耐圧縮層18による衝撃を和らげることによって、着用感を向上させている。
【0043】
この緩衝層19の形成材料は、スポンジや、スポンジゴム等のクッション性を有し、耐圧縮層18の衝撃を和らげることができる資材であれば特に限定されるものではなく、例えば不織布、開孔プラスティックフィルム、その他の開孔された合成樹脂等、着用感を向上させることができる公知の種々のものを使用することができる。また、このような材料で形成された緩衝層19をさらに不織布や、ラミネート不織布等で被覆すると、着用感をより一層向上させることができる。
【0044】
緩衝層19は、上述したようにスポンジ等の資材で形成されているため、通水性には優れているが、便等の固形物の通過性は悪く、排泄物が排泄物収容部22に移行し難い。すなわち、排泄物の固形物が緩衝層19の肌当接面上に残ってしまい、この結果、排泄物がトップシート11上に逆戻りし、拡散してしまう。
【0045】
そこで、図示するように、緩衝層19の略中央部に切り込み24を設ける。これにより、排泄物は切り込み24を介して排泄物収容部22にスムーズに移行することができる。従って、排泄物が体圧により押し潰され、トップシート11上に逆戻りすることを防止することができる。
【0046】
緩衝層19の厚みd2は、少なくとも1mm以上、好ましくは3〜15mmである。厚みd2が1mm未満であると、緩衝層19の有するクッション効果が得られず、着用感を低下させてしまう。一方、緩衝層19の厚みd2が厚すぎると、排泄物が排泄物収容部22へ移行することを妨げてしまう。
【0047】
また、緩衝層19の大きさは、図示するように耐圧縮層18と同じ大きさでなくても良く、少なくとも耐圧縮層18の縁部20の肌当接面を覆うことができる大きさであれば、耐圧縮層18が着用者に当接することがないので着用感を向上させることができる。
【0048】
なお、緩衝層19の投影面の形状についても、特に限定されるものではないので、少なくとも耐圧縮層18の縁部20の肌当接面を覆うことができる形状であれば図3及び図4に示されるような円形状に限らず、この他、例えば四角形、三角形、動物の形状、星型、十字型等の公知の種々の形状とすることができる。
【0049】
また、図3及び図4に示すように、必ずしも耐圧縮層18と緩衝層19との投影面の形状を同一形状にする必要はなく、耐圧縮層18の縁部20の肌当接面が緩衝層19で覆われていれば、例えば耐圧縮層18の投影面23′の形状が四角形で、緩衝層19の投影面の形状が円形状のように両者が異なる投影面の形状であっても良い。
【0050】
また、図2に示すように、トップシート11及びセカンドシート17に切れ目25が、緩衝層19に設けられた切り込み24の位置と対応する位置に形成されていると、排泄物がスムーズかつ確実に排泄物収容部22に移行することができるようになり、排泄物がトップシート11上に滞留することがなくなる。従って、着用感をより向上させることができると共に、排泄物が紙おむつ10から漏れ出すことを効果的に防止することができる。なお、切れ目25の形状は直線に限らず、この他、例えば波線や十字型等の種々の形状とすることができる。
【0051】
なお、上述したような本紙おむつ10は、従来の吸収性物品100と同様に、通常、バックシート12上に防水フィルム16、吸収体14、耐圧縮層18、緩衝層19、セカンドシート17、及びトップシート11を順に積層して製造される。
【0052】
従って、あらかじめ切り込み24が形成された緩衝層19、及び切れ目25が形成されたトップシート11とセカンドシート17とを積層して本紙おむつ10を製造することもできるが、上述した構成物品を全て積層し、接着した後に、トップシート11の上から緩衝層19に対応する位置に切り込み24及び切れ目25を形成して本紙おむつ10を製造することもできる。
【0053】
また、耐圧縮層18及び緩衝層19の接着には、ホットメルト接着剤等の接着剤、粘着剤、熱融着による接合等、公知の種々の手段で耐圧縮層18を吸収体14の上面に接着でき、また緩衝層19を耐圧縮層18及びセカンドシート17に接着することができる。
【0054】
図5は、上述した第1実施形態に係る紙おむつ10の変更例に係る紙おむつに使用される吸収体14′、耐圧縮層18、及び緩衝層19′の組立図であり、図6は図5に示す吸収体14′を使用した紙おむつ10の幅方向の断面図である。なお、本変更例に係る吸収体14′は、緩衝層19に形成される切り込み24′の形状を除くその他の構成については、上述した第1実施形態に係る紙おむつ10と実質的に同一なものであるので、以下では対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0055】
図示されるように、切り込み24′の平面形状を円形状とし、緩衝層19′に開孔が設けられると、排泄物をよりスムーズに排泄物収容部22に移行させることができる。なお、この切り込み24′の平面形状は、少なくとも耐圧縮層18の縁部20の肌当接面を覆うことができれば、図5に示されるような円形状に限らず、この他、例えば四角形、三角形、星型、十字型等公知の種々の形状とすることができる。
【0056】
以上、本発明に係る吸収性物品を一実施形態に基づき説明したが、本発明はその構成を以下のように変更することができる。
【0057】
図7は、本発明の第2実施形態に係る紙おむつに使用される吸収体14A、耐圧縮層18、及び緩衝層19の組立図であり、図8は図7に示す吸収体14Aを使用した紙おむつ10の幅方向の断面図である。なお、本実施形態に係る紙おむつは、吸収体14Aの構造を除くその他の構成は、前述した第1実施形態に係る紙おむつ10と実質的に同一なものであるので、以下では対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0058】
図示するように、本実施形態に係る紙おむつは、第1実施形態に係る紙おむつと同様に、吸収体14Aの肌当接面上で、少なくとも脚周り部10LOと後身頃10BPとの間で、さらにおむつ本体15の幅方向の略中央部に、筒状の耐圧縮層18が設けられており、また耐圧縮層18の肌当接面には、耐圧縮層18の縁部20の肌当接面を覆うように、切り込み24が形成されている緩衝層19が設けられている。上述した第1実施形態と異なる点は、吸収体14Aには、耐圧縮層18の中空部20に対応する位置に、耐圧縮層18の投影面23′の面積よりも小さな平面積を有する凹部26が設けられている点である。
【0059】
このように吸収体14Aの耐圧縮層18の中空部20に対応する位置に、耐圧縮層18の投影面23′の面積よりも小さな平面積を有する凹部26が設けられていると、耐圧縮層18の中空部20と凹部26とによって排泄物収容部22が形成されるので、排泄物収容部22の厚みd3は、耐圧縮層18の厚みd1と、凹部26の厚み(深さ)d4とを合計した厚みとなる。従って、着用者の皮膚と排泄物収容部22内に保持されている排泄物との間の距離が長くなるので、排泄物が着用者の皮膚に付着することをより防止することができ、この結果、排泄物が体圧により押し潰されて圧縮されることを防止することができると共に、肌荒れの発生をより防止することができる。
【0060】
また、排泄物収容部22の厚みd4を厚くすることによって、排泄物収容部22の体積を増加させることができる。従って、より多くの排泄物を収容し、保持することができると共に、排泄物が排泄物収容部22から溢れ出すことを防止することができる。さらにまた、吸収体14の凹部26の周縁部からも排泄物の水分を吸収することができるので、排泄物が特に軟便である場合、軟便を素早く水分と流動性の低い固形物とに分離し、固形物のみを排泄物収容部22内に収容し、保持することができるので、排泄物が流動してトップシート11上に逆戻りすることを防止することができ、着用者の快適な着用感を与えることができる。
【0061】
また、耐圧縮層18の厚みd1を薄くしても、排泄物収容部22の厚みd4を維持することができるので、紙おむつ10の肌当接面を略平坦にすることができる。従って、紙おむつ10の着用感をより向上させることができる。さらにまた、耐圧縮層18の厚みd1を薄くし、凹部26の厚み(深さ)d4を厚くする等、排泄物収容部22の厚みd3をニーズに応じて適宜調節することが容易となる。
【0062】
なお、凹部26の平面形状は、図7に示すような円形状に限らず、耐圧縮層18の投影面23′の面積よりも小さな平面積を有していれば、この他、例えば四角形状、楕円形状、三角形状、六角形状、星型等の公知の種々の平面形状とすることができる。また、凹部26の平面形状は、図7に示すように耐圧縮層18や緩衝層19の投影面の形状と必ずしも同一形状である必要はなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、例えば耐圧縮層18の投影面23′の形状は円形状、緩衝層19の投影面の形状は四角形状、吸収体14Aの凹部26の平面形状は星型にする等、異なる形状であっても良い。
【0063】
さらにまた、本発明に係る吸収性物品は、その構成を以下のように変更することもできる。
【0064】
図9は、本発明の第3実施形態に係る紙おむつに使用される吸収体14B、耐圧縮層18、及び緩衝層19の組立図であり、図10は図9に示す吸収体14Bの組立後の斜視図であり、図11は、図9及び図10に示す吸収体14Bを使用した紙おむつ10の幅方向の断面図である。なお、本実施形態に係る紙おむつは、吸収体14Bの構造を除くその他の構成は、前述した第1実施形態及び第2実施形態に係る紙おむつ10と実質的に同一であるので、以下では対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0065】
本実施形態に係る吸収体14Bは、図9ないし図11に示すように、上述した第2実施形態に係る紙おむつ10と同様に、吸収体の肌当接面上で、少なくとも脚周り部10LOと後身頃10BPとの間で、さらにおむつ本体15の幅方向の略中央部に、筒状の耐圧縮層18が設けられており、また耐圧縮層18の肌当接面には、耐圧縮層18の縁部20の肌当接面を覆うように、切り込み24が形成されている緩衝層19が設けられている。また、上述した第2実施形態に係る吸収体14Aと同様に、吸収体14Bには、耐圧縮層18の中空部21に対応する位置に凹部26Bが設けられているが、第2実施形態と異なる点は、凹部16Bの平面積が、耐圧縮層18の投影面23′の面積と同じ大きさの面積、あるいは耐圧縮層18の投影面23′の面積よりも大きな面積であるという点である。
【0066】
このように吸収体14Bに設けられる凹部26Bの平面積が、耐圧縮層18の投影面の面積と同じ大きさの面積、あるいは耐圧縮層18の投影面の面積よりも大きな面積であると、耐圧縮層18を凹部26Bの内部に設けることができる、すなわち吸収体14Bの凹部26Bを耐圧縮層18で埋めることができ、耐圧縮層18の中空部21によって形成される排泄物収容部22が吸収体14Bの内部に形成される。従って、図10及び図11に示すように、紙おむつ10の肌当接面を平坦に形成することができるので、着用感をより向上させることができる。
【0067】
また、排泄物収容部22が吸収体14Bの内部に形成されても、排泄物収容部22は耐圧縮層18で構成されているため、吸収体14Bに着用者の体圧がかかっても押し潰されることがなく、排泄物収容部22内に収容され、保持されている排泄物を押し潰して圧縮することがない。従って、排泄物がトップシート11上に逆戻りし、拡散することを防止することができ、また紙おむつ10から排泄物が漏れ出すことを防止することができる。
【0068】
なお、図10及び図11に示すように、耐圧縮層18及び緩衝層19を吸収体14Bの凹部26B内に設け、吸収体14Bの肌当接面が平坦な面となるように形成しても良いが、この他、図示しないが、耐圧縮層18を吸収体14Bの凹部26B内に設け、緩衝層19は吸収体14Bの肌当接面から突出するように設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、上述したようなパンツ型の紙おむつに限らず、この他テープ式の紙おむつ、失禁者用パッド等公知の種々の吸収性物品についても適用できる。

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係るパンツ型の紙おむつの斜視図である。
【図2】図1を展開して上面から見た図の幅方向の断面図である。
【図3】第1実施形態に係る吸収体、耐圧縮層、及び緩衝層の組立図である。
【図4】図3に示す吸収体の組立後の拡大斜視図である。
【図5】第1実施形態の変更例に係る吸収体の組立図である。
【図6】図5に示す吸収体を使用した紙おむつの幅方向断面図である。
【図7】第2実施形態に係る吸収体、耐圧縮層、及び緩衝層の組立図である。
【図8】図7に示す吸収体を使用した紙おむつの幅方向断面図である。
【図9】第3実施形態に係る吸収体、耐圧縮層、及び緩衝層の組立図である。
【図10】図9に示す吸収体の組立後の拡大斜視図である。
【図11】図9及び図10に示す吸収体を使用した紙おむつの幅方向の断面図である。
【図12】従来の吸収性物品であるテープ式の紙おむつの斜視図である。
【図13】図12のX−X断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10,100 紙おむつ
11,101 トップシート
12,102 バックシート
14,14A,14B,104 吸収体
15,105 おむつ本体
18 耐圧縮層
19 緩衝層
20 耐圧縮層の縁部
21 耐圧縮層の中空部
22 排泄物収容部
24 切り込み
26.26B 凹部
107 開孔
108 被覆シート
109 内装シート
110 開孔の周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも肌当接面側に配置されるトップシートと、外面側に配置されるバックシートと、前記両シート間に介在された吸収体とにより物品本体が構成され、互いに対向して前記物品本体の長手方向へ延びる両側縁部と、互いに対向して前記物品本体の幅方向へ延びる両端縁部とを有し、前記長手方向には前身頃と、後身頃と、前記前後身頃の間に位置する脚周り部とを有して成る吸収性物品において、前記トップシートと前記吸収体との間に筒状の耐圧縮層と、緩衝層とを設けることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記耐圧縮層は、少なくとも前記脚周り部と前記後身頃との間で、物品本体の幅方向の略中央部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体には、前記耐圧縮層の中空部に対応する位置に、前記耐圧縮層の投影面の面積よりも小さな平面積を有する凹部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体には、少なくとも前記脚周り部と前記後身頃との間で、前記吸収体の幅方向の略中央部に、前記耐圧縮層の投影面の面積と同じ大きさの平面積、あるいは前記耐圧縮層の投影面の面積よりも大きな平面積を有する凹部が設けられており、前記耐圧縮層が前記凹部の内部に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記耐圧縮層は、厚みが4mm以上、幅が5mm以上前記吸収体の幅以下であり、また耐圧縮層により形成される排泄物収容部の投影面の面積が1000mm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記緩衝層は、前記耐圧縮層の肌当接面に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記緩衝層は、厚みが1mm以上であり、また少なくとも前記耐圧縮層の縁部の肌当接面を覆うことができる大きさであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記緩衝層の略中央部には切り込みが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−116045(P2006−116045A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306445(P2004−306445)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】