説明

吸収性物品

【課題】 尿などの排泄物の前後左右の漏れを確実に防ぐことのできる失禁用パッド又はライナーのような吸収性物品を提供する。
【解決手段】 吸収性物品は、トップシートと、バックシートと、これらの間に配置される吸収体とを含み、上面にはエンボスパターンが施されている。エンボスパターンは、中央領域においては、前側領域側の所定の位置から長さ方向に延びる、物品の幅方向中心線に対向して形成される一対の前方サイドエンボスと、該前方サイドエンボスからわずかに離間した位置から、後側領域方向に延びる、中心線に対向して形成される一対の後方サイドエンボスとを有する。後側領域には、吸収体の後側外形の一部に対応するような形状の点状のほぼ半長円形の後部第3エンボスと、これの内側に含まれるように後部第3エンボスとほぼ相似形の後部第2エンボスが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。より詳細には、本発明は、複数のエンボスからなるパターンが上面に施された失禁ライナーまたは尿取りパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、軽い失禁の症状のための失禁用ライナーやパッドが開発されてきている。失禁用ライナーやパッドの代替として生理用ナプキンを採用することも考えられが、月経時における排泄物と尿とを比較すると、尿は、粘性が低いために、パッドなどの表面上を走り流れやすい。従って従来の生理用ナプキンを、失禁用のパッドとして利用することは好ましいものでなかった。
従来の生理用ナプキンには、表面シート、裏面シート及びこれらの間に配置された吸収性コアとからなるナプキンの表面シート上に、コアが位置する領域の上面両側に長さ方向に延びる一対の圧搾条溝を有し、圧搾条溝は高低圧搾部からなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、別の従来の生理用ナプキン等の吸収性物品において、表面シート上において、物品の前後領域、側部領域等に複数の対になった線状エンボスを有するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特許番号第3053561号掲載公報
【特許文献2】特許出願公開番号特開2002−291806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
尿を吸収するためのパッド等では、パッドの前後左右からの尿漏れを低減させるように、すばやく尿を吸収することが必要である。また、できるだけ尿をパッドの左右方向よりも前後方向へ拡散させることも重要である。特許文献1の場合、圧搾条溝が表面シート上にパッドの前後方向にわたり形成されているが、パッドの前後方向の尿の拡散を制御できない。さらに、特許文献2の吸収性物品も、複数のエンボスが表面上に形成されているが、尿の前後方向の拡散を制御するには十分なものではなかった。
以上のように、従来の生理用ナプキン等の吸収性物品では、パッド上における尿の流れを十分にコントロールして吸収させるものはなかった。また、パッドの外観も見た目に優れたものではなかった。
従って、本発明は、着用時に尿の前後および左右方向の流れと拡散を制御でき、尿をすばやく吸収できるようになっており、さらに保型性に優れ、美観的な点においても優れた、尿などの低粘性の流体であっても横漏れ,前後の漏れなどを防ぐことのできる、エンボスパターンが施されたパッドやライナーなどの吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の吸収性物品は、トップシートと、バックシートと、これらの間に配置される吸収体とを含み、着用者のほぼ前部に対応する前側領域と、ほぼ後部に対向する後側領域と、これらを接続し股部に対応するようになった中央領域とを有し、物品の前後側部方向に延びる長さと、幅とを有し、該吸収性物品の上面には、エンボスパターンが施されている。本発明に係るエンボスパターンは、中央領域においては、前側領域側の所定の位置から長さ方向に延びる、物品の幅方向中心線に対向して形成される一対の前方サイドエンボスと、該前方サイドエンボスからわずかに離間した位置から、後側領域方向に延びる、中心線に対向して形成される一対の後方サイドエンボスとを有する。前側及び後側領域のそれぞれにおいて、前方サイドエンボスの前方及び後方サイドエンボスの後方に位置し、各対のサイドエンボスを囲い込む形状の一対の前部第1エンボスと後部第1エンボスとが形成されている。さらに、前後領域のそれぞれにおいて、前部第1エンボスと後部第1エンボスの前方及び/又は後方に前部エンボスあるいは後部エンボスの各々に相似形に形成された第2及び/又は第3の前部エンボスと後部エンボスとを含むようになっている。前部第3エンボス、後部第3エンボスは点状であることが好ましい。
【0006】
本発明の1態様において、エンボスパターンは、一対の後方サイドエンボスの間に挟まれるようにして形成された後側領域方向に向いた、中心を物品の内方に有するほぼ半長円形状の中央エンボスを中央領域に含んでいることが好ましい。
【0007】
さらに、本発明の別の態様において、エンボスパターンは、後側領域において、点状半長円形状第3エンボスの後方に、第3エンボスとほぼ相似する点状半長円形状の後部第4エンボスが形成されていてもよい。
【0008】
本発明の好ましい態様において、中央領域に形成される一対の前方サイドエンボスは弧状であり、その曲率中心を前記物品の外方に有するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の尿取りパッドまたはライナーような吸収性物品は、その上面に形成される複数のエンボスを組み合わせた独特のエンボスパターンにより、排泄される液体が各エンボス線に順次沿うようにして、パッド等の前後方向に素早く流れ拡散されるとともに、吸収体に吸収され、さらに、パッド等の物品の前後両端部に形成されるエンボス線により、液体の前後の漏れを防ぐことができる。もちろん、パッド等の物品の側部長手方向に形成されるエンボス線により、横漏れを防ぐこともできる。さらに、本発明のエンボスパターンにおいて、パッド等の側部に沿って形成される一対のエンボス線の内側に別のエンボスが形成されることによって、前後方向の伝い漏れを防ぐようになる。さらに、これらエンボスによりパッド等の形状を維持し、保持することができる。また、パッド等の前後両端部に形成される点状のエンボスにより、パッド全体の美観を高める効果を有する。さらに、このように点状エンボスを施すことは、これの下方に位置する吸収体を圧縮することになり剛性が高まり、その結果、尿吸収時の吸収体の型崩れや、パッド前後端部における着用時のまくれを防止する効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の一形態を添付の図を参照して説明する。以下の説明は、失禁用パッドを例として説明するが、失禁用のライナーにも適用できることはむろんである。また、本発明のパッドやライナーは、生理用ナプキン、紙おむつなどの尿などを含む排泄物を吸収する製品にも適用できるものである。
本明細書において、「吸収性物品の長手方向」、「パッドの長手方向」等とは、吸収性物品、パッドが着用されたときに着用者の前後にわたる方向を意味するものであり、「本体の幅方向」、「吸収体の幅方向」等とは、長手方向に対して横又は直交する方向を意味するものである。
【0011】
図1は、本発明に係る典型的な失禁用パッド10の全体を示す平面図であり、パッド10の表面上には様々な形状のエンボスが施され、エンボスパターンを有するようになっている。パッド10は、着用者のほぼ前部に対応する前側領域6と、ほぼ後部に対応する後側領域5と、これらの間に位置し、着用者の股部に対応する中央領域4を有する。図2は、図1に示すパッド10のX−X線に沿った断面図である。
【0012】
図2を参照すると、パッド10は、トップシート11とバックシート12との間に配置された吸収性コア13とを有する。パッド10の全体形状は、矩形状、I字形状といった様々な形状から選択することができる。吸収性コア13は、所定の幅を有し、パッド10の長手方向に延びている。吸収性コア13は、砂時計形状、I字型形状といった一般的な形状であればよい。吸収性コア13は、一般的に超吸収性材料として既知である高吸収性材料の粒子と混合された、木材パルプフラフのようなセルロースフラフのウェブの親水性繊維マトリックスを含んでいればよい。木材パルプフラフの代わりに合成繊維、ポリマー繊維などを使用してもよい。トップシート11は、一般的な不織布から形成されていればよく、着用者の皮膚に面する側となるので柔らかな感触で、着用者の皮膚に刺激を与えないような材料から形成されていることが好ましい。バックシート12は、吸収性コア13内において保持している液体などが下着に漏れないような防水機能を有するように、液体に対し不透過である材料から形成されていればよく、ポリエチレンフィルムなどの薄いプラスチックフィルムや、これとは別のクロスライクな可撓性液体不透過性フィルムから形成されていることが好ましい。図2に図示したパッド10は、最も基本的な構造を示すものにすぎず、吸収すべき尿の量によっては、様々な構成を付加することができる。例えば、パッドの側部方向からの漏れをより確実に防ぐのに立体ギャザーを形成してもよい。また、トップシート11と吸収性コア13との間にトランスファーシートを設けて尿の分散吸収をより早く行なえるようにしてもよい。さらに、バックシート12下方には、パッド10を下着等に固定するための一般的なずれ止めが配置されて、さらにずれ止めの下方に、これを覆うように剥離紙が配置されていてもよい。付加的な構成要素は使用される用途に応じて適宜変更可能であり、このような技術は、本分野において公知であるので、これ以上詳しく説明しない。
【0013】
図3は、本発明の第1の実施形態を示すエンボスパターン概略平面図であり、本発明の基本的なエンボスパターンを図示するものである。原則として、図3以降に図示するエンボス線のそれぞれは、パッド10の幅方向中心線Pに対しほぼ対称に、対向して形成されていることを前提とする。
【0014】
トップシート11上に形成される前方サイドエンボス14A、Bは、パッド10の前側領域6と中央領域4との境点をほぼ始点とし、この始点からパッド10の長手側部方向に延びて、中心線Pに対し対向して形成される。本実施例において、サイドエンボス14A、Bは、パッド10の長手方向のほぼ中央から前後に延びて中心線Pに対し対向して形成される弧状であることが好ましい。この場合、サイドエンボス14A、Bの外方側にこれの曲率中心を有する。後方サイドエンボス15A、Bは、前方サイドエンボス14A、14Bのそれぞれの後方終点の近傍点から中心線Pへ近接するように緩やかな曲線を描き、中心線Pに対向するように形成される。後部第1エンボス17は、後方サイドエンボス15A、Bを部分的に囲い込むように、後方サイドエンボス15A、Bの後方終点からわずかに離間した地点から中心線Pを通過し半長円形状となるように、パッド10のほぼ後側領域5に形成される。後部第1エンボス17はパッドの内方側に中心を有する。さらに、後部第1エンボス17の後方でパッド外方側に後部第3エンボス18が形成されている。後部第3エンボス18は、吸収性コア13の長手方向のほぼ後部の外形に対応するように該外形に沿った半長円形状の点状エンボスであることが好ましい。前部第1エンボス20が、後部第1エンボス17と対をなすように、前方サイドエンボス14A、Bを部分的に囲い込むようにパッド10の前側領域6に形成され、一対の前方サイドエンボス14A、Bの始点同士を、わずかに離間した状態で接続するような円弧形状になっている。前部第1エンボス20の率中心はパッドの内方に有する。さらに、前側領域6には、前部第1エンボス20よりも前方のパッド外方側に、後部第3エンボス18と対をなすようにして、前部第1エンボス20とほぼ相似形の前部第3エンボス21が点状に形成されている。前部第3エンボス21は、後部第3エンボス18と同様に、吸収性コア13の前側領域における外形に対応するようにほぼ該外形に沿った形状になっている。このように、後部第3エンボス18と前部第3エンボス21が吸収性コア13の外形の前後端部に対応するように形成されているので、エンボスパターンは吸収性コア13の外形内に収められるようになる。
【0015】
従って、本実施形態において、パッド10の上面の前側領域6には、前部第1エンボス20と、前部第3エンボス21が、中央領域4には、前方サイドエンボス14A、B、後方サイドエンボス15A、Bが、そして、後側領域5には、後部第1、第3エンボスが形成されることになる。しかし、これらエンボスの位置は、各領域から多少ずれて配置されてもよい。
【0016】
図4は、本発明の第2の実施形態を示すエンボスパターン概略平面図である。
図4を参照すると、トップシート11上に形成される前方サイドエンボス14A、Bは、パッド10の前側領域6と中央領域4との境点をほぼ始点とし、この始点からパッド10の長手側部方向に延びる弧状で、中心線Pに対し対向して形成される。つまり、サイドエンボス14A、Bは、パッド10の長手方向のほぼ中央から前後に延びて中心線Pに対し対向して形成された弧状である。サイドエンボス14A、Bの外方側にこれの曲率中心を有する。しかし、サイドエンボス14A、Bは弧状に限定されるものではない。後方サイドエンボス15A、Bは、前方サイドエンボス14A、14Bのそれぞれの後方終点の近傍点から中心線Pへ近接するように緩やかな曲線を描き、中心線Pに対向するように形成される。後部第1エンボス17は、後方サイドエンボス15A、Bの後方終点からわずかに離間した地点から中心線Pを通過し半長円形状となるように、パッド10のほぼ後側領域5に形成される。後部第1エンボス17はパッドの内方側に中心を有する。さらに、後部第1エンボス17の後方でパッド外方側に後部第3エンボス18が形成されている。後部第3エンボス18は、吸収性コア13の長手方向のほぼ後部の外形に対応するように該外形に沿った半長円形状の点状エンボスであることが好ましい。後部第2エンボス16が、後部第1エンボス17の前方でパッド内方側に後部第2エンボス17とほぼ相似形でこれの中に含まれるような状態で、半長円形状で形成される。後部第2エンボス16は、後方サイドエンボス15A、Bの終点部分に近接した領域に位置にする。さらに、中央エンボス19がパッド10のほぼ中央に形成されており、一対の後方サイドエンボス15A、B内に挟まれて含まれるようになっている。エンボス19は、中心をパッドの中央側に有し、中心線Pを通過しこれに対し対称な半長円形の形状を有する。前部第1エンボス20が、パッド10の前側領域6に形成され、一対の前方サイドエンボス14A、Bの始点同士を、わずかに離間した状態で接続するような円弧形状になっており、曲率中心はパッドの内方に有する。さらに、前側領域6には、前部第1エンボス20よりも前方のパッド外方側に、前部第1エンボス20とほぼ相似形の前部第3エンボス21が点状に形成されている。前部第3エンボス21は、後部第3エンボス18と同様に、吸収性コア13の前側領域における外形に対応するようにほぼ該外形に沿った形状になっている。このように、後部第3エンボス18と前部第3エンボス21が吸収性コア13の外形の前後端部に対応するように形成されているので、エンボスパターンは吸収性コア13の外形内に収められるようになる。
【0017】
従って、パッド10の上面の前側領域6には、前部第1エンボス20と、前部第3エンボス21が、中央領域4には、前方サイドエンボス14A、B、後方サイドエンボス15A、B及び中央エンボス19が、そして、後側領域5には、後部第1、第2、第3エンボス17、16、18が形成されていることになる。しかし、これらエンボスの位置は、各領域から多少ずれて配置されてもよい。
【0018】
このようにパッド10の表面上に形成された複数のエンボスは、それぞれが異なる機能を発揮する。各々のエンボスの機能について説明する。パッド10の長手方向に前後に延びる一対の前方サイドエンボス14A、Bは、特に、パッドの中央領域4すなわち股領域における横漏れを防止するとともに、パッド10の全体形状の保型性に大きく貢献する。後方サイドエンボス15A、Bは、前方サイドエンボス14A、Bから後部第1エンボス17の中央へ向かうように形成されているので、排出された液体をエンボス14A、Bから後部第1エンボス17の方向へ誘導することによって、伝い漏れを防止する機能を果たす。前部第1エンボス20と後部第1エンボス17は、パッド10の長手方向両端側である前後領域6、5にそれぞれ位置し、液の前後からの漏れを防止する機能を有する。パッド10の長手方向の最も外方向の両端部に形成された点状の前部第3エンボス21と後部第3エンボス18はパッドの外観上の美観性を呈する効果を与えるようになっている。また、前部第3エンボス21と後部第3エンボス18を点状に形成することは、エンボス18、21がこれらの下方に位置する吸収体の外形に沿った形状に施されているので、吸収体を圧縮することになり剛性が高まり、その結果、尿吸収時の吸収体の型崩れや、パッドの前後領域の端部のまくれを防止する効果も期待できることになる。そして、中央エンボス19は、パッドの後方向への液体の伝い漏れを防止するようになっている。このエンボスパターンによりパッド上の液体の前後左右方向の流れ拡散を良好に制御できる。そして、以上のような各エンボスの機能は、それぞれが相互に補助しあうことにより、各機能を高めるようになっている。
【0019】
図4に図示したエンボスパターンが施されたパッド上において、液体は、極めて滑らかに横漏れすることなく流れ、吸収性コア13に吸収されることができる。この液体の流れの様子を図4の矢印Mで示した。具体的には、股部に対応する中央領域において排出された液体は、まずパッド10の長手方向側部に延びるように施されたエンボス14A、Bのそれぞれに沿って後方へエンボス17に向かうようにエンボス15A、Bを伝って流れる。エンボス15A、Bの存在により、液体の伝い漏れが発生しない。そして、パッド10の前後両端部に施されたエンボス17、20は前後の後漏れを防止する。さらに、パッドの中央に形成されたエンボス19により、中央領域を流れる液体の後方への伝いもれを防ぐことができる。このように、液体は、パッド10に施されたエンボスパターン内で速やかに流れ、エンボスパターンの直下に存在する吸収性コア13へ向けて下方へ吸収される。従って、本実施形態のパッドでは、横漏れ,前後漏れといった事態は発生しにくい。また、前後両端部に形成されたエンボス18、21により、吸収体が圧縮され剛性が高まり、尿吸収時の吸収体の型崩れや、パッドの端部のまくれ防止できるといった効果を基体することができる。また、エンボスパターン全体が吸収性コア13の外形内に含まれるような形状で構成されているから、万が一、尿がサイドエンボスから多少でも漏れるようなことがあっても、エンボスパターンの周囲下方に存在することになり、すぐに吸収されるようになっている。
【0020】
図5は、本発明の第3の実施形態であるエンボスパターンを示す平面図である。前方サイドエンボス14A、B、後方サイドエンボス15A、B、後部第1エンボス17、前部第1エンボス20及び前部第3エンボス21は、第2実施形態とほぼ同様な状態で施され、そして同様の機能を有する。従って、これらのエンボスの形状並びに機能についての説明は省略する。
【0021】
第3実施形態のパッド10には第2実施形態の後部第2エンボス16は施されていない。その代わりに、パッド10の後部領域5には、点状で半長円形状の後部第3エンボスとしてエンボス18、18’が2本形成されている。中央エンボス19’が、第2実施形態のエンボス19とほぼ同様の位置に形成されているが、エンボス19よりも多少丸みを帯びた半円に近い形状に形成されている。さらに前部領域6には、中央エンボス19’から長手方向に距離をあけて、エンボス19’に対応するような形状で、前部第2エンボス22が、前部第1エンボス20内に含まれるように、中心線Pを通過して半長円形状に形成されている。エンボス22は、パッド10の中心側に中心を有する。
【0022】
図5に図示した第3実施形態において、前部領域6には、第1、第2及び第3の前部エンボス20、21、22が、中央領域4には、前後サイドエンボス14A、B、15A、B及び中央エンボス19’が、後部領域5には、後部第2エンボス17と、2本の点状エンボス18、18’が、それぞれ形成されている。これらエンボスの位置は、各領域から多少ずれて形成されていてもよい。
第3実施形態のパッド10に施される各エンボスは、第2実施形態とほぼ同様の機能を果たす。第2実施形態には形成されておらず、本実施形態に形成された、異なるエンボス22は、エンボス19’とほぼ同様の機能、つまり、前方向への液体の伝い漏れを防ぐようになっている。液体は、後部方向へ流れる液体量に比較して前部方向へ流れる量は比較的少ないと考えられるが、前部にこのようなエンボスを施すことにより、さらに前方向への伝い漏れを防ぐことができる。
【0023】
図5に図示した実施形態におけるエンボスパターンを有するパッド上の液体の流れの様子を矢印Nで示した。具体的には、股部に対応する中央領域において排出された液体は、まずパッド10の長手方向側部に延びるエンボス14A、Bのそれぞれに沿って後方へエンボス17に向かうようにエンボス15A、Bを伝って流れる。エンボス15A、Bの存在により、液体の伝い漏れが発生しない。そして、パッド10の前後両端部に施されたエンボス17、20により前後の後漏れを防止する。さらに、パッドの中央に形成されたエンボス19’により、中央領域を流れる液体の後方への伝い漏れを防ぐことができる。また、前部においては、エンボス22により、中央領域を流れる液体の前方への伝い漏れを防ぐことができる。このように、液体は、パッド10に施されたエンボスパターン内で速やかに流れ、エンボスパターンの直下に存在する吸収性コア13へ向けて下方へ素早く送り出され吸収される。従って、本実施形態のパッドでは、横漏れ,前後漏れといった事態は発生しにくい。また、前後両端部に形成されたエンボス18’と21により、パッドの端部のまくれなどをより確実に防ぐことができるといった効果を期待できる。
【0024】
図6は、本発明に係るエンボスパターンを有するパッドの第4の実施形態を示す。このエンボスパターンは、後方サイドエンボス15A、Bの形状が相違する点を除けば、第2実施形態のエンボスパターンとほぼ同様である。第4のパターンにおける、エンボス15’A、Bは、前方サイドエンボス14A、Bの後方終点からわずかに離間した地点から多少幅外方向に膨らみを持つような輪郭を持ち、最も外方に膨らんだ後は、各エンボス線15’A、Bは中心線Pに近づきつつ、後方第1エンボス17に近づくような弧状となっている。エンボス15’A、Bの終点は交わることはない。
このように形成されたエンボスパターンは、第2実施形態と同様な機能および液体の流れを形成することができる。従って、これ以上説明しない。
【0025】
第1、第2、第3及び第4の実施形態のいずれにおいても、液体はエンボスパターン内側において、これにより形成された流路に沿って流れ、これの下方に存在する吸収性コア13に吸収される。さらに、サイドエンボス14A、Bにより、パッドの形状が維持され保持される。また、パッド前後両端部に形成される点状エンボスによりパッドの美点が高まり、点状エンボスを施すことで吸収体が圧縮され剛性が高まることになり、尿吸収時における吸収体の型崩れや前後端部のまくれを防ぐ効果も期待できる。
【0026】
パッド10の前後両端部に形成されるエンボス18、18’21は点状エンボスである。図7に図示するように、点状エンボス18、18’、21の始点は、エンボス18、18’、21が中心線Pと交わる地点のエンボスまで、その半径が漸次大きくなり、中心線Pを通過すると、これとは対称的に終点に至るまでエンボスの半径は漸次小さくなる。
【0027】
本発明に係るエンボスパターンの各エンボスの幅は、用途に応じて変更することができる。例えば、サイドエンボス14、15の幅は、エンボスの始点から中間地点に至るまでは漸次太くなり、終点に至るまでは漸次細くなるようになっていてもよい。また均一の太さを有するものであってもよい。同様に、パッドの前後に形成される半長円形のエンボスのそれぞれの太さは、均一であってもよいし、変化させてもよい。
【0028】
本発明の好ましい実施形態の1例として、全長が約300mm、幅が約120mmの一般的な成人用失禁パッドが使用される場合、エンボスパターン全体の長さは約213mmで、前端部の幅は約55mmであり、後端部の幅は約50mmである。このような条件下で、第1の実施態様のエンボスパターンにおいて、サイドエンボス14A、Bの幅は、始点が2mmで漸次増大し、中間地点では約3mmであり、漸次減少し、終点においては約2mmである。またサイドエンボス15A、Bの始点の幅は、約2mmであり、漸次増大しほぼ中間地点では3mmであり、漸次減少し、終点では約0.5mmである。さらに、半長円エンボス17の幅は、約3mmであり、半長円エンボス16の幅は、約2mmから漸次増大し3mmとなり、さらに漸次減少し約2mmである。同様に、中央エンボス19の幅は、約2mmから漸次増大し3mmとなり、さらに漸次減少し約2mmとなる。さらに、前部半長円エンボス20の幅は、同様に約2mmから漸次増大し3mmとなり、さらに漸次減少し約2mmとなる。本例において、前方サイドエンボス14と後方サイドエンボス15との離間距離は約5mmである。また、前方サイドエンボス14と前部第1エンボス21との離間距離は約10mmである。
【0029】
点状エンボス18、21の始点の半径は約1mmであり、次の段階に形成されるエンボスの半径は約1.25mm、中間すなわち中心線を通過する地点のエンボスの半径は約1.5mmである。さらに、これと対称的に終点のエンボスの半径は約1mmであり、中間地点と終点との間のエンボスの半径は約1.25mmである。後部エンボス18’もエンボス18、21と同様にして形成される。このような点状のエンボスは、トップシートに穴を開けずにフィルム状とするように形成されていればよいが、トップシートを貫通する穴であってもよい。点状エンボスの数はあまりに多すぎると美観を与えにくくなるので、図7に図示するようにある程度の間隔を持って形成されることが好ましい。
点状エンボス以外の線状または弧状エンボスは、交互に凹凸形状が形成されるような一般的なエンボスである。例えば、図7に図示した、エンボス17の斜線部は凸部であり、その間の部分が押圧される凹部である。製品の肌触り、フィット性を考慮すれば、エンボスの深さは、製品厚さに対し35から50%の範囲から選択されることが好ましい。本発明のエンボスパターンは通常の熱エンボス加工により形成されていればよく、点状エンボス、線状エンボスともに一般的技術であり、本明細書では説明しない。
なお、本発明において、後部第3エンボス、前部第3エンボスについて点状エンボスを採用することを説明してきたが、用途に応じて点状エンボスの代わりに通常のエンボス加工を施すことも可能である。
【0030】
本発明に係る吸収性物品は、失禁用ライナーとして、またはパッドとして下着や、紙おむつに取付けることによって使用されるものであるが、もちろん成人用だけではなく、子供のトイレットトレーニングにも使用できる。さらに、女性の生理用ナプキンにも適用できるものであるし、もちろん、紙おむつ等の他の様々な吸収性物品にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る失禁用パッドの全体斜視図である。
【図2】図1のパッドのX−X線に沿った概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による本発明に係る失禁用パッドに形成されるエンボスパターンの概略平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による本発明に係る失禁用パッドに形成されるエンボスパターンの概略平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態による本発明に係る失禁用パッドに形成されるエンボスパターンの概略平面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態による本発明に係る失禁用パッドに形成されるエンボスパターンの概略平面図である。
【図7】本発明のエンボスパターンの一部の拡大概略図である。
【符号の説明】
【0032】
10 パッド
11 トップシート
12 バックシート
13 吸収体
14A、B 前方サイドエンボス
15A、B、15’A、B 後方サイドエンボス
16 後部第2エンボス
17 後部第1エンボス
18、18’ 後部第3エンボス
19、19’ 中央エンボス
20 前部第1エンボス
21 前部第2エンボス
22 前部第3エンボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップシートと、バックシートと、これらの間に配置される吸収体とを含み、着用者のほぼ前部に対応するようになった前側領域と、ほぼ後部に対向するようになった後側領域と、これらを接続し股部に対応するようになった中央領域とを有し、前後側部方向に延びる長さと、幅とを有する吸収性物品であって、該吸収性物品の上面には複数のエンボスからなるパターンが施されており、該エンボスパターンは、
前記前側領域の起点から前記中央領域を長さ方向に延びる、前記物品の幅方向中心線に対向して形成される一対の前方サイドエンボスと、
前記中央領域において、前記前方サイドエンボスの前記物品後方側からわずかに離間した位置から、前記後側領域方向に延びる、前記中心線に対向して形成される一対の後方サイドエンボスと、
前記前側領域及び前記後側領域のそれぞれにおいて、前記前方サイドエンボスの前方及び前記後方サイドエンボスの後方にあり、前記前後サイドエンボスのそれぞれを囲い込む形状の一対の前部第1エンボス及び後部第1エンボスと、
前記前側領域及び前記後側領域のそれぞれにおいて、前記前部第1エンボスと前記後部第1エンボスの前方及び/または後方に、前記前部第1エンボスと前記後部第1エンボスの各々に相似形に形成された第2及び/または第3の前部エンボスと後部エンボスと、
を含むことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載した吸収性物品であって、前記エンボスパターンは、
前記中央領域において、前記一対の後方サイドエンボスの間に挟まれるように位置し、中心を前記物品の内方に有する、前記中心線を通過しこれに対し対称となるよう前記後側領域方向に向いて形成されたほぼ半長円形状の中央エンボスを含むことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記前部第3エンボスと前記後部第3エンボスは点状に形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、前記後側領域において、前記後部第3エンボスの後方に、該第3エンボスとほぼ相似形状の該第3エンボスよりも大きい点状の後部第4エンボスが形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、前記一対の前方サイドエンボスは弧状であり、その曲率中心を前記物品の外方に有するものであることを特徴とする吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−181080(P2006−181080A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377491(P2004−377491)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000183462)株式会社クレシア (112)
【Fターム(参考)】