説明

吸収性物品

【課題】着用時に違和感を生じ難く、使用中に漏れが生じ難い吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品1Aは、表面シート2、裏面シート3及びこれら両シート間に配された吸収構造体4とを備えた縦長のものである。表面シート2,裏面シート3はY方向に伸縮性を有している。吸収構造体4は、個々に独立した多数のブロック状吸収部41を備えている。多数のブロック状吸収部41はY方向に間欠的に配されてX方向に多数の吸収部列41fを形成している。ブロック状吸収部41は繊維材料と高吸収性ポリマーとを有する。多数のブロック状吸収部41は、裏面シート3側に強く固定されている強固定領域ST及び弱く固定されている弱固定領域WTを形成している。強固定領域STは、吸収性物品1Aの長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sそれぞれに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品(女性用吸収性物品)に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、パンツ型のオムツも含めて、表面シート、裏面シート、及びこれらシート間に配された吸収体を具備した平面のパッドを基本形として形成されている。該吸収性物品が身体に着用され、所定の吸収性・着用快適性を発揮する為には、該吸収性物品が身体の立体曲面通りに変形してフィットすること、及び身体の動作変形に追従して変形回復可能であることが望まれる。しかし、一般的に、吸収性物品の有する吸収体は吸収性物品の就中、剛性が高いものであり、曲面形状にきめ細かく変形することが難しい。特に生理用ナプキンを着用する際、生理用ナプキンにおける着用者の液排出部(膣口等)に対向配置される領域を盛り上げ、着用者の体型に合うように湾曲させることが難しい。例えば、特許文献1には、体液排出口に対する密着性を上げて漏れを防止する観点から、表面シートと裏面シートとの間に介在する吸収体が、表面側に隆起する中高部を有している生理用ナプキンが記載されている。
【0003】
しかし特許文献1に記載の生理用ナプキンは、吸収体が予め決められた形で表面側に隆起する中高部を有しているため、着用者の体型に合わず、着用時に違和感を生じる場合がある。また、特許文献1に記載の生理用ナプキンの着用時に、体液排出口から吸収体の中高部がずれると、漏れを生じてしまう場合がある。
【0004】
ところで、本出願人は先に、伸縮性吸収体を提案した(特許文献2参照)。特許文献2に記載の伸縮性吸収体によれば、着用者の体型への適合性及び動作追従性に優れ、伸縮に起因する吸収性能の低下が起こりづらい。しかし、特許文献2には、特許文献2に記載の伸縮性吸収体を用いた吸収性物品に関し、伸縮性吸収体と吸収性物品を構成する裏面シートとの固定位置や固定強度について何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−131101号公報
【特許文献2】特開2009−136498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面シートと、裏面シートと、これらシート間に配された吸収構造体とを備えた縦長の吸収性物品であって、
前記表面シート及び前記裏面シートは、少なくとも長手方向に伸縮性を有しており、前記吸収構造体は、個々に独立した多数のブロック状吸収部を備え、多数の前記ブロック状吸収部は、長手方向に間欠的に配されて幅方向に多数の吸収部列を形成しており、多数の前記ブロック状吸収部それぞれは、繊維材料と高吸収性ポリマーとを有し、多数の前記ブロック状吸収部は、前記裏面シート側に該ブロック状吸収部が強く固定されている強固定領域及び該ブロック状吸収部が弱く固定されている弱固定領域を形成しており、前記強固定領域は、前記吸収性物品の長手方向の両側縁部それぞれに形成されている吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、着用時に違和感を生じ難く、使用中に漏れが生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である生理用ナプキンを表面シート側から見た一部破断平面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態である生理用ナプキンを裏面シート側から見た平面図である。
【図3】図3は、図1のX1−X1線断面図である。
【図4】図4は、図1に示す生理用ナプキンの使用中に弱固定領域のブロック状吸収部が排泄部領域に集まる説明をするための説明図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態である生理用ナプキンを表面シート側から見た一部破断平面図である(図1相当図)。
【図6】図6は、図5のX2−X2線断面図である(図3相当図)。
【図7】図7(a)〜(c)は、フィラー入りの裏面シートを用いた生理用ナプキンの使用中に弱固定領域のブロック状吸収部が排泄部領域に集まる説明をするための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の吸収性物品の第1実施形態である生理用ナプキン1A(以下、ナプキン1Aともいう)は、図1〜図2に示すように、液透過性の表面シート2と、液難透過性の裏面シート3と、これら両シート2,3間に配された吸収構造体4とを備えた縦長の本体部5を有する。本発明における液難透過性の裏面シート3は、着用者から排泄される経血や尿などの排泄物を吸収構造体4で吸収し、裏面シート3で液防漏性を有する必要があることから、液不透過性、撥水性などのシートが好ましい。
ナプキン1Aは、図1に示すように、ナプキン1Aの長手方向に延びる中心線CLに対して左右対称に形成されている。
本明細書において、「肌対向面」とは、本体部5などの各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、「非肌対向面」とは、本体部5などの各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。
【0011】
本体部5は、図1中Y方向に長い形状を有し、裏面シート3の非肌対向面に、該本体部5を、下着のクロッチ部(不図示)の肌対向面(着用者の肌側に向けられる面)に固定するための本体粘着部6(図2参照)が形成されている。ここで、図中のY方向とは、ナプキン1A又は本体部5の長手方向と同方向であり、中心線CLに平行な方向である。また、図中のX方向とは、ナプキン1A又は本体部5の幅方向と同方向であり、中心線CLに垂直な方向である。
【0012】
本体部5は、図1に示すように、着用者の液排出部(膣口等)に対向配置される領域である排泄部領域A、ナプキン1Aの着用時に排泄部領域Aより着用者の腹側に配される前方領域B、及びナプキン1Aの着用時に排泄部領域Aよりも着用者の背中側に配される後方領域Cを有している。ここで、「排泄部領域A」とは、ナプキン1Aのように、所謂ウイング部を有していない場合には、生理用ナプキンが個装形態に折り畳まれた際に生じるY方向に直交する2つの折り線で囲まれた領域を意味し、生理用ナプキンの製品長が長く3つの折線が生じる場合には、Y方向の前端から数えて第1折り線と第2折り線とに囲まれた領域、又はY方向の前端から数えて第1折り線と第3折り線とに囲まれた領域を意味する。尚、所謂ウイング部を有している場合には、「排泄部領域A」とは、ウイング部の位置する領域を意味する。
【0013】
本体部5は、図3に示すように、表面シート2、裏面シート3及びこれら両シート2,3間に配された液保持性の吸収構造体4を具備する。表面シート2及び裏面シート3は、何れも、図1〜図2に示すように、本体部5の長手方向(Y方向)に長い縦長の形状を有しており、ナプキン1Aにおいては、表面シート2と裏面シート3とが同形同大に形成されている。
【0014】
表面シート2は、図1に示すように、本体部5の排泄部領域A、前方領域B及び後方領域Cそれぞれにおいて、本体部5の輪郭と一致する輪郭を有している。裏面シート3も、表面シート2と同様に、図1に示すように、本体部5の排泄部領域A、前方領域B及び後方領域Cそれぞれにおいて、本体部5の輪郭と一致する輪郭を有している。
【0015】
ナプキン1Aにおいては、図1に示すように、表面シート2と裏面シート3とが、吸収構造体4の肌対向面及び非肌対向面を被覆しており、吸収構造体4の周縁から延出した部分が熱エンボス加工によって接合されて、ナプキン1Aの周縁部に周縁シール部7を形成している。
尚、ナプキン1Aにおいては、周縁シール部7が熱エンボス加工により形成されているが、超音波シールにより形成されていてもよく、ホットメルト等の接着剤等により形成されていてもよい。周縁シール部7は、太股部や臀部の着用感向上の観点から、ホットメルト接着剤、及び、図1の如く格子状又は線状の熱エンボスを併用して形成されていることが好ましい。
【0016】
表面シート2は、少なくとも長手方向(Y方向)に伸縮性を有するものであり、長手方向(Y方向)及び幅方向(X方向)の2方向に伸縮性を有するものであることが好ましく、あらゆる方向に伸縮性を有するものであることが更に好ましく、ナプキン1Aにおいては、あらゆる方向に伸縮性を有するシートを用いている。
【0017】
ナプキン1Aの表面シート2としては、熱収縮性繊維を含む第1繊維層と、実質的に熱収縮しない繊維又は前記熱収縮性繊維の収縮開始温度では実質的に熱収縮しない繊維を含む第2繊維層とを積層して部分的に接合させた後、熱風処理により、第1繊維層を収縮させて得た凹凸シート(図3参照)を用いている。この凹凸シート(表面シート2)においては、第2繊維層が、第1繊維層との接合部以外の部分において突出して凸部21を形成している一方、前記接合部が凹部22を形成しており、ナプキン1Aにおいては、凹凸シート(表面シート2)における第2繊維層側を、着用者の肌に向けて使用している。熱収縮性繊維は、潜在捲縮性繊維が好ましい。このような凹凸シート(表面シート2)としては、特開2002−187228号公報、特開2003−250836号公報、特開2004−166849号公報、特開2004−202890号公報等に記載のものを用いることがでる。
【0018】
裏面シート3も、少なくとも長手方向(Y方向)に伸縮性を有するものであり、長手方向(Y方向)及び幅方向(X方向)の2方向に伸縮性を有するものであることが好ましく、あらゆる方向に伸縮性を有するものであることが更に好ましく、ナプキン1Aにおいては、あらゆる方向に伸縮性を有するシートを用いている。ナプキン1Aの裏面シート3としては、液難透過性又は撥水性のオレフィン系エラストマーフィルム、液難透過性又は撥水性のウレタン系エラストマーフィルム、立体エンボス加工した液難透過性又は撥水性のフィルム等を用いることができる。
【0019】
吸収構造体4は、図1,図3に示すように、個々に独立した多数のブロック状吸収部41を備えている。ブロック状吸収部41は、ナプキン1Aにおいては、図1,図2に示すように、平面視して、長手方向(Y方向)に長い矩形状に形成されている。尚、ナプキン1Aのブロック状吸収部41は、矩形状に形成されているが、平面視の形状はこれに限られず、円形状、楕円形状、菱形状、三角形状等の形状であってもよく、これらの形状を2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0020】
各ブロック状吸収部41は、使用中の可動性,フィット性,吸収量確保の観点から、長手方向(Y方向)の長さL1(図1参照)が20mm以下であることが好ましく、5〜15mmであることが更に好ましい。
同様な観点から、各ブロック状吸収部41は、幅方向(X方向)の長さW1(図1参照)が15mm以下であることが好ましく、5〜12mmであることが更に好ましい。
尚、長手方向(Y方向)の長さとは、ブロック状吸収部41の最も長い位置での長さであり、幅方向(X方向)の長さも、ブロック状吸収部41の最も長い位置での長さである。
また、同様な観点から、各ブロック状吸収部41は、排泄部領域Aにおいては、その高さが1.5〜20mmであることが好ましく、2〜12mmであることが更に好ましい。
【0021】
各ブロック状吸収部41は、繊維材料と高吸収性ポリマーとを有している。
ブロック状吸収部41を構成する繊維材料としては、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成樹脂からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であってもよい。吸収性の観点から、繊維材料の量は、120〜450g/m2であることが好ましく、150〜350g/m2であることが更に好ましい。
【0022】
ブロック状吸収部41を構成する高吸収性ポリマーとしては、自重の5倍以上の体液を吸収・保持でき、かつゲル化し得るものが好ましい。形状は特に問わず、球状、塊状、ブドウ状、粉末状又は繊維状であり得る。好ましくは大きさが1〜1000μm、より好ましくは10〜500μmの粒子状のものである。吸収性の観点から、このような高吸収性ポリマーの量は、4〜250g/m2であることが好ましく、20〜100g/m2であることが更に好ましい。高吸収性ポリマーの例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合体も好ましく使用し得る。
【0023】
多数のブロック状吸収部41は、図1,図2に示すように、長手方向(Y方向)に間欠的に配されて幅方向(X方向)に多数の吸収部列41fを形成している。図1に示すように、吸収部列41fは、長手方向(Y方向)に10〜35個のブロック状吸収部41が間欠的に配されて形成されている。長手方向(Y方向)に隣り合うブロック状吸収部41同士の間隔は、1〜5mmであることが好ましい。このように形成される吸収部列41fが、幅方向(X方向)に6〜16個間欠的に配されて吸収構造体4を形成している。幅方向(X方向)に隣り合うブロック状吸収部41同士の間隔は、0.5〜5mmであることが好ましい。
ナプキン1Aにおいては、隣り合う別の吸収部列4fを形成する幅方向(X方向)に隣り合うエンボス部41,41同士が、幅方向(X方向)から見て重なっており、吸収部列4fを形成する多数のブロック状吸収部41と、隣り合う別の吸収部列4fを形成する多数のブロック状吸収部41とが半ピッチずつズレて規則的なパターンで配されている。多数のブロック状吸収部41の配置パターンは、前記パターンに限られず、例えば、吸収部列4fを形成する多数のブロック状吸収部41と、隣り合う別の吸収部列4fを形成する多数のブロック状吸収部41がズレてない規則的なパターンで配されていてもよく、ランダムなパターンで配されていてもよい。
【0024】
このように多数のブロック状吸収部41を配して形成された吸収構造体4は、例えば、繊維材料及び高吸収性ポリマーを均一に混合積層したシート状の積層体を、公知の切断手段を用いて多数のブロック状吸収部41の形状に合わせてカットすることにより形成することができ、また、公知の切断手段を用いて、多数のブロック状吸収部41の形状に合わせてパターン積層することにより形成することができる。
【0025】
多数のブロック状吸収部41は、図1,図3に示すように、裏面シート3側にブロック状吸収部41が強く固定されている強固定領域ST及びブロック状吸収部41が弱く固定されている弱固定領域WTを形成しており、強固定領域STは、ナプキン1Aの長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sそれぞれに形成されている。このように形成されているため、弱固定領域WTの多数のブロック状吸収部41が、使用中に排泄部領域Aに集まるようになっている。詳述すると、ナプキン1Aにおいては、ナプキン1Aの長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sそれぞれに位置する吸収部列41fsのブロック状吸収部41が、裏面シート3に直接強く固定されており、強固定領域STが、ナプキン1Aの長手方向(Y方向)の側縁部5sに沿って両側縁部5s,5sそれぞれに形成されている。尚、「ブロック状吸収部41が弱く固定されている」とは、強固定領域STを形成するブロック状吸収部41の固定よりも弱く固定されていることを意味し、ブロック状吸収部41が裏面シート3側に固定されていないことを含む意味である。
【0026】
更に、図1,図3に示すように、ナプキン1Aにおいては、強固定領域STが、ナプキン1Aの幅方向(X方向)の中央部5eにも形成されている。詳述すると、図1,図3に示すように、ナプキン1Aの幅方向(X方向)の中央部5eに位置する吸収部列41fcにおいても、排泄部領域Aに位置するブロック状吸収部41が、裏面シート3に強く固定されている。ナプキン1Aにおいては、中央部5eに位置する2列の吸収部列41fcを形成する多数のブロック状吸収部41全てが、裏面シート3に直接強く固定されている。即ち、強固定領域STが、ナプキン1Aの幅方向(X方向)の中央部5eに中心線CLに沿って形成されている。尚、ナプキン1Aにおいては、吸収部列41fcを形成する多数のブロック状吸収部41全てが、裏面シート3に直接強く固定されているが、使用中に弱固定領域WTの多数のブロック状吸収部41を排泄部領域Aに更に集める観点から、吸収部列41fcにおける排泄部領域Aに位置するブロック状吸収部41のみが裏面シート3側に強く固定されていることが好ましい。本実施形態では、強固定領域STのブロック状吸収部41は、直接裏面シート3に固定されている。
【0027】
ナプキン1Aにおいては、弱固定領域WTとは、ナプキン1Aの両側縁部5s,5sに形成されている強固定領域STと、ナプキン1Aの中央部5eに形成されている強固定領域STとを除く領域のことである。ナプキン1Aにおいては、弱固定領域WTにおける多数のブロック状吸収部41は、裏面シート3側に固定されていない。
【0028】
本発明の吸収性物品において、着用中の歩行動作により、弱固定領域WTのブロック状吸収部41の固定を外し、ブロック状吸収部41を排泄部領域Aに寄せ集め、着用時にフィット性の高い中央領域が形成されるのは以下の理由による。
弱固定領域WTのブロック状吸収部41の固定外れは、体液吸収による濡れと、歩行等の運動による主に裏面シート3側の歪み、の両方が関与する。以下に詳述する。
尚、外れた弱固定領域WTのブロック状吸収部41が排泄部領域Aに寄せ集められる機構、及び該ブロック状吸収部41が濡れた排泄部領域A(中央)に留まって再固定され、中高な形状を安定的に形成する機構は、段落〔0039〕に詳述する。
【0029】
第1に、後述の如く(段落〔0036〕の記載参照)強固定領域STのブロック状吸収部41が高坪量の接着剤(即ちビード状又はスパイラル状のホットメルト粘着剤全面塗工等)と熱エンボス等のシールによって裏面シート3側から強固に固定され、湿潤状態でも外れないのに対して、弱固定領域WTのブロック状吸収部41は、段落〔0027〕に示すように元々固定されていないか、或いは後述の如く(段落〔0043〕〜〔0047〕の記載参照)、ブロック吸収部41と裏面シート3との間に、接着剤が部分的に存在するが、シールなどの異なる接着手段が併用されない。
このように、強固定領域STにおいて、ブロック状吸収部41は裏面シート3と熱的に強固に接着されているのに対し、弱固定領域WTにおいては固定がなされないか、或いは接着剤のタック力のみよって弱く接着されている。特に後述するような接着剤では、接着剤のタック力は、湿潤時には急激に失われ殆ど0となるため、体液吸収時には、液が拡がった領域の弱固定領域WTのブロック状吸収部41は裏面シート3に対して動きやすい状態となる。
【0030】
第2に、ナプキン1が裏面シート3側で下着に固定され、下着と共に動作・変形する為、変形力や歪みは裏面シート3を介して直接ブロック状吸収部41に伝わる。従って(特に濡れてブロック状吸収部41―裏面シート3間接着力が殆どなくなっている場合において)、あらゆる動作によるナプキン1の変形は、該ブロック状吸収部41を浮き上がらせ、固定が外れる要因となりえる。
【0031】
典型的な例として、歩行動作においては、着用者の左右の脚が前後に交互に動く為、ショーツに固定されたナプキン1には、対角線に沿った外方にむけた応力が加わり易く、左右がクロスするように交互に引張りと収縮を繰り返しながら、ブロック状吸収部41に歪が加わり、特に伸長時に弱固定領域WTのブロック状吸収部41の固定が外れて、収縮時に着用者の歩行動作とあいまって、固定が外れたブロック状吸収部41が排泄部領域Aによせ集められて中高な中央部が形成される。そこに排泄液が吸収されると、中央に寄せられたブロック状吸収部41はポリマーなどの発現した粘着力で、中央部に再固定され、中高な形状が一層安定的に形成される。特に、強固定領域STが、吸収性物品長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sに形成されているため、該領域STのブロック状吸収部41が、外れたブロック吸収体を中央に掃き寄せることに寄与する。このような現象は、歩行動作を行う動的モデルに着用して確認できる。
【0032】
上述した観点より、ブロック状吸収部41と裏面シート3との接合強度は、湿潤時の接合強度を測定することが好ましいが、乾燥時の強度とも相関があるため、乾燥時強度で代用することも可能である。強固定領域STにおけるブロック状吸収部41と裏面シート3との接合強度(乾燥状態)は、82cN/cm以上であることが好ましく、98〜440cN/cmであることが更に好ましい。また、弱固定領域WTの接合強度(乾燥状態)は、200cN/cm以下であることが好ましく、98cN/cm以下であることが更に好ましい。
一方、強固定領域STにおけるブロック状吸収部41と裏面シート3との接合強度(湿潤状態)は、64cN/cm以上であることが好ましく、72〜440cN/cmであることが更に好ましい。また、弱固定領域WTの接合強度(湿潤状態)は、98cN/cm以下であることが好ましく、49cN/cm以下であることが更に好ましい。
【0033】
これら接合強度の測定方法は、サンプルをブロック状吸収部41の幅に合わせて切り出し、
表面シート2等の他の要素を取り外して、ブロック状吸収部41と裏面シート3部分(測定対象部分)を取り出して試験片とする。後述する所定の前処理を施した後、ブロック状吸収部41を上側、裏面シート3側を下側にしてオリエンテック(株)製のテンシロン引張試験機にはさみ、測定速度100mm/分でT剥離強度を測定する。測定結果を試験片の幅(cm)で割って、単位幅当り接合強度(cN/cm)とする。
ここで、ブロック状吸収部41のブロック毎の長さが短くてテンシロンにうまく挟めない場合、ブロック上面に同じ幅のガムテープ等を貼り付けて、該ガムテープ先端を挟むなどの方法で、所望の界面の接着力が測定できるように工夫してもよい。
【0034】
また、乾燥状態の接着力は、ナプキン1から取り出した試験片をそのまま測定に供し、一方湿潤状態の接着力は、試験片に生理食塩水を流下して十分濡らして1分以上経過後、ペーパータオルを上面(ブロック状吸収部41)側から軽く押し付けて余分な水分を除去して、同様に強度測定を行う。測定はいずれもN=3平均とし、特に湿潤状態の測定は、濡らして1分後直ちに測定に入れるよう工夫する。尚、ブロック状吸収部41がペーパータオル側に付いて外れてしまう程接着性に乏しい場合、湿潤接合強度は0としてよい。
また、後述するように、ブロック状吸収部41が直接裏面シート3と接着しておらず、別の基板シートと結合している場合もある。その場合は同様の考え方で、ブロック状吸収部41―基板シート間の接着力を測定すればよい。
当該接合強度は、事前観察で接合強度の強い領域のブロックと弱い領域のブロックを選択して測定することによって強固定領域ST、弱固定領域WTの接合強度が得られる。事前観察で強度の違いが明瞭に判別不能な場合は、ブロック列ごとに試験片を作成して各列の乾燥/湿潤接着力を測定し、最も大きい部位を強固定、最も小さい部位を弱固定とする。本来的には接着剤塗工パターン、及び異なる固定手段併用の有無をも観察することによって、容易に判別可能な筈である。
【0035】
弱固定領域WTの多数のブロック状吸収部41を使用中に排泄部領域Aに集まるようにする観点から、裏面シート3側に強く固定されているブロック状吸収部41の割合(強固定領域ST)は、吸収構造体4を構成する全ブロック状吸収部41(強固定領域STと弱固定領域WTとの合計、又は吸収構造体4の表面積)の30%以上であることが好ましく、35〜65%であることが更に好ましい。
【0036】
ナプキン1Aにおいては、強固定領域STは、強固定領域STのブロック状吸収部41を裏面シート3側からシールすることにより裏面シート3側に強く固定して形成されている。具体的には、ナプキン1Aの強固定領域STの多数のブロック状吸収部41は、図3に示すように、裏面シート3側からシールされることにより裏面シート3側に強く固定されている。多数のブロック状吸収部41を裏面シート3側に強く固定するには、表面シート2側からシールしてもよいし、裏面シート3側からシールしてもよいが、シール後のシール部の肌触りの観点から、表面シート2との合体前に裏面シート3側からシールしてシール部8を形成することが最も好ましい。シール方法としては、熱エンボス、超音波シール等が挙げられる。ナプキン1Aにおいては、図1,図3に示すように、裏面シート3側からシールを連続して線状に施して吸収部列41fを形成する多数のブロック状吸収部41を裏面シート3に強く固定しているが、吸収部列41fを形成する多数のブロック状吸収部41毎に裏面シート3側からドット状のシールを施してブロック状吸収部41を裏面シート3に強く固定してもよい。ブロック状吸収部の位置に合わせてやすく、弱固定領域WTの多数のブロック状吸収部41を排泄部領域Aに効率的に集める観点から、図1の如く線状にシールを施す方が好ましい。ナプキン1Aにおいては、線状のシール部8が、ナプキン1Aの長手方向(Y方向)の側縁部5sに沿って両側縁部5s,5sそれぞれに形成されており、更にナプキン1Aの幅方向(X方向)の中央部5eに中心線CLに沿って形成されている。
【0037】
ナプキン1Aの備える本体粘着部6は、図2に示すように、少なくともナプキン1Aの長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sそれぞれに位置する強固定領域STに対応する位置に形成されている。具体的には、本体粘着部6は、両側縁部5s,5sそれぞれに位置する強固定領域STの吸収部列41fsに形成されている。ナプキン1Aにおいては、図2に示すように、ナプキン1Aの両側縁部5s,5sに位置する裏面シート3の肌対向面に配されている吸収部列41fsに対応して、ナプキン1Aの両側縁部5s,5sに位置する裏面シート3の非肌対向面に吸収部列41fsを含むように、直線状に一対形成されている。このように本体粘着部6は、ナプキン1Aにおいては、一対で直線状に形成されているが、ナプキン1Aの中央部5eの吸収部列41fcにおける排泄部領域Aに位置するブロック状吸収部41に対応する位置に形成されていなければよく、一方の本体粘着部6のY方向の両端部それぞれと他方の本体粘着部6のY方向の両端部それぞれとを繋げて、ナプキン1Aの周縁部に沿って形成されていてもよい。
【0038】
本体粘着部6としては、生理用ナプキンなどの吸収性物品に用いられる各種公知の粘着剤を用いることができるが、薄膜状に形成できる観点から、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)ブロックコポリマー系のホットメルト接着剤を用いることが好ましい。本体粘着部6の塗工量は、20〜55g/m2であることが好ましい。
【0039】
上述した本発明の吸収性物品の第1実施形態である生理用ナプキン1A(以下、「ナプキン1A」ともいう。)を使用した際の作用効果について説明する。
ナプキン1Aは、図1,図3に示すように、表面シート2及び裏面シート3が、少なくとも長手方向(Y方向)に伸縮性を有しており、吸収構造体4が、個々に独立した多数のブロック状吸収部41から形成されているので、少なくとも長手方向(Y方向)に伸縮する。また、ナプキン1Aは、図1,図3に示すように、多数のブロック状吸収部41が裏面シート3側に強く固定されている強固定領域STと多数のブロック状吸収部41が弱く固定されている弱固定領域WTとを備えている。このようにナプキン1Aは、着用前には、着用者の液排出部(膣口等)に対向する位置に中高な吸収部を備えていないので、ナプキン1Aを取り付けた下着を着用した着用時に違和感を生じ難い。また、使用中、ナプキン1Aは、図4(a)に示すように、着用者の動きに伴い少なくとも長手方向(Y方向)に、下着と共に伸縮を繰り返す。この際、伸縮性のある表面シート2及び裏面シート3は、長手方向(Y方向)の伸縮に伴って幅方向(X方向)にも伸縮する。具体的には、図4(a)の如く、長手方向(Y方向)に伸びる時には幅方向(X方向)に収縮する(いわゆる「ネッキング」と呼ばれる現象である)。一方、図4(b)の如く、長手方向(Y方向)に縮む時には幅方向(X方向)に膨張する。ネッキングと回復に伴う、この幅方向(X方向)の収縮膨張の変化量は、図4(a)、(b)に示す如く、製品中央部(排泄部領域A付近)で非常に大きくなる。更にこの際、伸縮性のないブロック状吸収部41、中でも弱固定領域WTのブロック状吸収部41は、裏面シート3の(特にX方向の)収縮膨張に追従できないため、固定が外れて裏面シートから動けるようになり、強固定領域STのブロック状吸収部に押されて中央部(排泄部領域A)に集まりやすい。この傾向は、幅方向(X方向)変化量の大きい製品長手方向(Y方向)中央部(排泄部領域A)で特に顕著であるため、図4(b)に示すように、弱固定領域WTにある多数のブロック状吸収部41が移動し易く、図4(c)に示すように、着用者の液排出部(膣口等)に対向する位置に集まり易く、その結果、使用中に漏れが生じ難い。このように、移動可能な多数のブロック状吸収部41が着用者の液排出部(膣口等)に対向する位置に集まり易い、更なる理由として、ブロック状吸収部41が体液を吸収することによって、体液を吸収したブロック状吸収部41の滑りの抵抗値が上がるので、体液の出る着用者の液排出部(膣口等)に対向する位置に移動可能なブロック状吸収部41が留まり易く、液排出部(膣口等)に対向する位置に多数のブロック状吸収部41が集まり易いと、本出願の発明者は考えている。
【0040】
また、ナプキン1Aは、図1,図3に示すように、長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sそれぞれに位置する吸収部列41fsのブロック状吸収部41が裏面シート3側に強く固定されており、長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sそれぞれに強固定領域STを形成している。その為、使用中、ナプキン1Aが、図4(a),図4(b)に示すように、着用者の動きに伴い長手方向(Y方向)に伸縮を繰り返すと、両側縁部5s,5sの強固定領域STにある吸収部列41fsによって、両側縁部5s,5sの強固定領域STの間にある弱固定領域WTの多数のブロック状吸収部41が幅方向(X方向)に寄せ集められ易く、図4(c)に示すように、着用者の液排出部(膣口等)に対向する位置に更に集まり易く、使用中に更に漏れが生じ難い。特に、ナプキン1Aにおいては、本体粘着部6が、図2,図3に示すように、長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sそれぞれに位置する吸収部列41fsに対応する位置に形成されているので、着用者の動きを、下着を介してナプキン1Aに伝え易く、着用者の動きに伴い伸縮を繰り返し易い。
【0041】
また、ナプキン1Aは、図1,図3に示すように、幅方向(X方向)の中央部5eに位置する吸収部列41fcの多数のブロック状吸収部41が裏面シート3側に強く固定されており、幅方向(X方向)の中央部5eに強固定領域STを形成している。その為、使用中、ナプキン1Aが、図4(a),図4(b)に示すように、着用者の動きに伴い長手方向(Y方向)に伸縮を繰り返すと、中央部5eの強固定領域STを軸として、弱固定領域WTの多数のブロック状吸収部41が、図4(c)に示すように、着用者の液排出部(膣口等)に対向する位置に更に集まり易く、使用中に更に漏れが生じ難い。
【0042】
次に、本発明の吸収性物品の第2実施形態である生理用ナプキン1Bについて、図4〜図5に基づいて説明する。
第2実施形態の生理用ナプキン1B(以下、「ナプキン1B」ともいう)については、第1実施形態の生理用ナプキン1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の生理用ナプキン1Aと同様であり、第1実施形態の生理用ナプキン1Aの説明が適宜適用される。
【0043】
ナプキン1Bの多数のブロック状吸収部41も、ナプキン1Aと同様に、図5,図6に示すように、裏面シート3側にブロック状吸収部41が強く固定されている強固定領域ST及びブロック状吸収部41が弱く固定されている弱固定領域WTを形成し、強固定領域STは、長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sそれぞれに形成されており、弱固定領域WTの多数のブロック状吸収部41が、使用中に排泄部領域Aに集まるようになっている。詳述すると、ナプキン1Bにおいても、ナプキン1Aと同様に、ナプキン1Aの長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sそれぞれに位置する吸収部列41fsのブロック状吸収部41が、裏面シート3に直接強く固定されており、強固定領域STが、ナプキン1Aの長手方向(Y方向)の側縁部5sに沿って両側縁部5s,5sそれぞれに形成されている。また、ナプキン1Bにおいても、ナプキン1Aと同様に、ナプキン1Aの幅方向(X方向)の中央部5eに位置する吸収部列41fcのブロック状吸収部41が、裏面シート3に直接強く固定されている。
【0044】
ナプキン1Bにおいては、強固定領域STの多数のブロック状吸収部41は、図5,図6に示すように、ホットメルト接着剤9を介して裏面シート3に固定されることにより強く固定されている。ホットメルト接着剤9としては、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等のブロックコポリマー系のホットメルト接着剤が挙げられる。裏面シート3に固定するホットメルト接着剤9の塗工方法としては、ビード状に塗工する方法、スパイラル状に塗工する方法等が挙げられ、ナプキン1Bにおいては、図5に示すように、ホットメルト接着剤9をスパイラル状に塗工している。
【0045】
ホットメルト接着剤9をスパイラル状に塗工する場合には、各塗工部において10〜45g/m2で塗工することが好ましく、15〜25g/m2で塗工することが更に好ましい。また、各塗工幅は、10〜30mmであることが好ましく、12〜20mmであることが更に好ましい。また幅方向(X方向)に隣り合う塗工部同士の間隔は、5mm以上であることが好ましく、7〜12mmであることが更に好ましい。
ホットメルト接着剤9をビード状に塗工する場合には、各塗工部において20〜450g/m2で塗工することが好ましい。また、各塗工幅は、2〜8mmであることが好ましく、3〜6mmであることが更に好ましい。また幅方向(X方向)に隣り合う塗工部同士の間隔は、5mm以上であることが好ましく、10〜20mmであることが更に好ましい。
【0046】
ナプキン1Bにおいては、図5に示すように、ホットメルト接着剤9をスパイラル状に塗工して強固定領域STを形成している。具体的には、ナプキン1Aの長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sに位置する吸収部列41fsを形成する各ブロック状吸収部41の面積の半分以上の面積にホットメルト接着剤9がかかるように、ホットメルト接着剤9をスパイラル状に塗工してブロック状吸収部41を裏面シート3に強く固定して強固定領域STを形成している。また、ナプキン1Aの幅方向(X方向)の中央部5eに位置する吸収部列41fcを形成する各ブロック状吸収部41の面積の半分以上の面積にホットメルト接着剤9がかかるように、ホットメルト接着剤9をスパイラル状に塗工してブロック状吸収部41を裏面シート3に強く固定して強固定領域STを形成している。尚、ブロック状吸収部41を裏面シート3に更に強く固定して強固定領域STを形成するために、ナプキン1Aのシール方法を併用してもよい。
【0047】
また、ナプキン1Bにおいては、図5に示すように、ホットメルト接着剤9をスパイラル状に塗工して弱固定領域WTも形成している。具体的には、ナプキン1Aの長手方向(Y方向)の両側縁部5s,5sに位置する吸収部列41fsに隣り合う吸収部列41fを形成する各ブロック状吸収部41の面積の1/3より小さい面積にホットメルト接着剤9がかかるように、ホットメルト接着剤9をスパイラル状に塗工してブロック状吸収部41を裏面シート3に固定して弱固定領域WTを形成している。また、ナプキン1Aの幅方向(X方向)の中央部5eに位置する吸収部列41fcに隣り合う吸収部列41fを形成する各ブロック状吸収部41の面積の1/3より小さい面積にホットメルト接着剤9がかかるように、ホットメルト接着剤9をスパイラル状に塗工してブロック状吸収部41を裏面シート3に固定して弱固定領域WTを形成している。
【0048】
第2実施形態の生理用ナプキン1Bの形成材料について説明する。第2実施形態の生理用ナプキン1Bについては、第1実施形態の生理用ナプキン1Aの形成材料と同様である。
【0049】
上述した本発明の第2実施形態の生理用ナプキン1Bを使用した際の作用効果について説明する。
第2実施形態の生理用ナプキン1Bの効果については、第1実施形態の生理用ナプキン1Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の生理用ナプキン1Aの効果と同様であり、第1実施形態の生理用ナプキン1Aの効果の説明が適宜適用される。
【0050】
ナプキン1Bにおいては、図5,図6に示すように、強固定領域STも弱固定領域WTも、ホットメルト接着剤9を塗工してブロック状吸収部41を裏面シート3に固定することにより形成している。そのため、使用前に弱固定領域WTの多数のブロック状吸収部41が移動することがなく、ナプキン1Bを取り付けた下着を着用した着用時に違和感を生じ難い。また、使用中、ナプキン1Bは、ナプキン1Aと同様に、着用者の動きに伴い少なくとも長手方向(Y方向)に伸縮を繰り返すため、弱固定領域WTにある多数のブロック状吸収部41が移動し易く、着用者の液排出部(膣口等)に対向する位置に集まり易く、その結果、使用中に漏れが生じ難い。このように、ナプキン1Bの弱固定領域WTにある多数のブロック状吸収部41が移動し易い理由として、ブロック状吸収部41の備える高吸収性ポリマーが体液を吸収することによって、高吸収性ポリマーが膨潤し、ブロック状吸収部41が裏面シート3から剥がれ易いと、本出願の発明者は考えている。このように剥がれた弱固定領域WTの多数のブロック状吸収部41は、ナプキン1Aと同様な理由により、体液の出る着用者の液排出部(膣口等)に対向する位置に留まり易く、ナプキン1Bの使用中に漏れが生じ難い。
【0051】
上述したように、高吸収性ポリマーの膨潤によってブロック状吸収部41を裏面シート3から剥がす観点から、ブロック状吸収部41は、高吸収性ポリマーの分布が裏面シート3側にリッチとなるように形成されていることが好ましい。このような高吸収性ポリマーが裏面シート3側にリッチに分布したブロック状吸収部41は、繊維材料と高吸収性ポリマーとを混合積繊する際に、高吸収性ポリマーの混合位置を可能な限り下流側に配し、高吸収性ポリマーの混合側を裏面シート3側に対向するようにナプキン1Bを製造することにより形成できる。また、ブロック状吸収部41を2層の繊維材料から形成し、裏面シート3側の繊維材料の高吸収性ポリマーをリッチに混合積繊することにより形成できる。
【0052】
本発明の吸収性物品は、上述の第1,第2実施形態の生理用ナプキンに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1,第2実施形態の生理用ナプキンにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0053】
例えば、上述の第1,第2実施形態の生理用ナプキン1A,1Bの裏面シート3に、エラストマー樹脂に積極的に炭酸カルシウム等のフィラーを導入して形成されたシート(図7(a)参照)を用いることが好ましい。導入されるフィラーは、40〜60重量%であることが好ましく、混合されるエラストマー樹脂は、34〜60重量%であることが好ましい。このような裏面シート3の目付は、20〜60g/m2であることが好ましい。このように積極的にフィラーを導入して形成された裏面シート3を用いた生理用ナプキンによれば、図7(a)〜図7(c)に示すように、フィラー表面露出の状態が伸張時(図7(b)参照)と収縮時(図7(c)参照)で異なるのに伴い、裏面シート3の摩擦係数(ブロック状吸収部41のくっつけやすさ)が変化する。具体的には、長手方向(Y方向)への伸張時(幅方向(X方向)には収縮する方向、図7(b)参照)では、平滑なフィルム面の露出面積が大きく、ブロック状吸収部41をくっつけやすい為、幅方向(X方向)中央にブロック状吸収部41を掃き寄せやすいが、長手方向(Y方向)への収縮時(幅方向(X方向)には膨張する方向、図7(c)参照)では、凹凸の大きいフィラー部分との接触が大きくなって(摩擦が小さく、ブロック状吸収部41が外れやすい)、ブロック状吸収部41がそのままの位置に留まりやすい。即ちフィラーを積極的に有するフィルムを、裏面シート3に用いれば、フィルムの伸縮によって一方通行的に中央部(排泄部領域A付近)にブロック状吸収部41が集まりやすいので好ましい。
【0054】
また、上述の第1,第2実施形態の生理用ナプキン1A,1Bにおいては、ブロック状吸収部41を裏面シート3に直接固定しているが、ブロック状吸収部41と裏面シート3との間にブロック状吸収部41の基板となるシートを配し、該シートを介してブロック状吸収部41を裏面シート3側に固定していてもよい。このような基板となるシートとしては、少なくとも長手方向(Y方向)に伸縮性を有するものであり、長手方向(Y方向)及び幅方向(X方向)の2方向に伸縮性を有するものであることが好ましく、あらゆる方向に伸縮性を有するものであることが更に好ましい。具体的に、基板となるシートとしては、ウレタン系樹脂とポリプロピレン樹脂とからなる伸縮性のスパンボンド不織布、オレフィン系エラストマー樹脂からなる伸縮性のスパンボンド不織布等が挙げられ、吸収構造体4を形成する多数のブロック状吸収部41全体に体液を拡散し吸収する観点から、公知の方法により親水化処理したものが好ましく用いられる。また、このような基板となるシートを、ブロック状吸収部41と裏面シート3との間に配するのみならず、ブロック状吸収部41と表面シート2との間にも配すれば、更に吸収構造体4を形成する多数のブロック状吸収部41全体に体液を拡散することができる。
【0055】
更に、製品長手方向(Y方向)前後部分のブロック状吸収部41は移動させず、製品長手方向(Y方向)中央部のブロック状吸収部41のみを積極的に排泄部領域Aに動かす目的で、製品長手方向(Y方向)中央部のみに強固定領域STと弱固定領域WTを共存させても良い。この場合、その他の領域は強固定を施す、又はブロック状吸収部が動きにくいように、大きなブロックにまとめる等の方法を用いることができる。
【0056】
更にまた、ブロック状吸収部41の移動範囲を規制する為に、表面シート2と裏面シート3又は前記基板シートを一体化固定する条溝を施すことも可能である。条溝は排泄部領域A付近を囲むラウンド状パターンでも良く、モレ防止に関与する両サイドのブロック状吸収部41の動きを規制する様に、両脇に直線状に配しても良い。
【0057】
本発明の吸収性物品は、生理用ナプキン以外にも、例えば、失禁者用パッド、パンティーライナー等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1A,1B 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
21 凸部
22 凹部
3 裏面シート
4 吸収構造体
41ブロック状吸収部
41f 吸収部列
5 本体部
5s 長手方向(Y方向)の側縁部
5c 幅方向(X方向)の中央部
6 本体粘着部
7 周縁シール部
8 シール部
9 ホットメルト接着剤
ST 強固定領域
WT 弱固定領域
A 排泄部領域
B 前方領域
C 後方領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートと、裏面シートと、これらシート間に配された吸収構造体とを備えた縦長の吸収性物品であって、
前記表面シート及び前記裏面シートは、少なくとも長手方向に伸縮性を有しており、
前記吸収構造体は、個々に独立した多数のブロック状吸収部を備え、
多数の前記ブロック状吸収部は、長手方向に間欠的に配されて幅方向に多数の吸収部列を形成しており、
多数の前記ブロック状吸収部それぞれは、繊維材料と高吸収性ポリマーとを有し、
多数の前記ブロック状吸収部は、前記裏面シート側に該ブロック状吸収部が強く固定されている強固定領域及び該ブロック状吸収部が弱く固定されている弱固定領域を形成しており、
前記強固定領域は、前記吸収性物品の長手方向の両側縁部それぞれに形成されている吸収性物品。
【請求項2】
前記強固定領域が、前記吸収性物品の幅方向の中央部にも形成されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記強固定領域は、該強固定領域の前記ブロック状吸収部を前記裏面シート側からシールすることにより該裏面シート側に強く固定して形成されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性物品は、前記裏面シートの非肌対向面に下着に取り付けるための本体粘着部を備え、
前記本体粘着部は、前記吸収性物品の少なくとも長手方向の両側縁部それぞれに位置する前記強固定領域に対応する位置に形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品を着用し、着用中の体液吸収と、歩行動作等の運動により、前記吸収性物品の弱固定領域のブロック状吸収部の固定を外し、該ブロック状吸収部を該吸収性物品の排泄部領域に寄せ集める吸収性物品の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−105748(P2012−105748A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255474(P2010−255474)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】