説明

吸収性物品

【課題】着用者の排泄部付近の排泄液を素早く吸収し、着用者の肌面から離れた位置で排泄液を保持することで、着用時の濡れによる不快感を解消し得る吸収体および吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体4は、裏面シート側である下層に本体吸収体40、表面シート側である上層に中高吸収体41を備え、中高吸収体41は、装着者の排泄部に対向する領域Aに本体吸収体40よりも幅狭に配置されてなり、中高吸収体40は、ブロック状の吸収部が多数、互いに離間して規則正しく配置されてなり、離間した部位は、隣りあうブロック状の吸収部間に長手方向及び幅方向に規則的に形成された溝状部を有し、中高吸収体41のブロック状吸収部及び本体吸収体40のブロック状吸収部と接合する部位が厚さ方向に亘り圧密化されている吸収性物品1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、女性用失禁パッド、パンティーライナーなどの吸収性物品(女性用吸収性物品)に関する。特に、中高吸収体を備えた、排泄量の多い用途の吸収性物品であり、特に夜用の生理用ナプキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン等の吸収性物品において、身体への密着性や漏れ防止性を向上させるために、着用者の排泄部と対向する排泄部対向部や該排泄部対向部から着用者の臀部に対応する部分にかけて、吸収体を凸状に突出させて中高部を設けることが知られている。また、生理用ナプキン等の吸収性物品では、漏れ防止性や装着性を向上させるために、その肌当接面側に、表面シートおよび吸収体を圧密化した溝部を形成することも知られている。排泄部に対向する領域は、中高部を備えた生理用ナプキンの場合は、排泄部(膣口)に中高吸収体が当接されることから、中高吸収体が配置された領域が通常排泄対応領域である。また、ショーツに巻きつけてナプキンを固定するウイングを有する場合、該ウイングを有する長手方向の領域に通常、中高吸収体を備える。
【0003】
例えば、特許文献1には、肌当接面側の下層吸収体と非肌当接面側の上層吸収体が積層されてなり、上層吸収体と下層吸収体との積層部分が中高部を成している吸収体を備えた吸収性物品が開示されている。この中高部は、吸収体の長手方向に窪みを有している。この吸収性物品では、窪みの底部が下層吸収体側に没入して成る圧密化領域の毛管力が高められるので、素早く液を下層吸収体に移行させて表面の液残りを抑えることができるため、快適な装着感が得られる。
【0004】
また特許文献2には、表面シートと裏面シートとの間でかつ平面方向にわたって、個々に独立した多数の吸収部からなる吸収体が配され、さらに吸収体と裏面シートとの間に中間シートが配されている吸収性物品が開示されている。この中間シートは、吸収性物品に排泄された液の引き込みおよび液の拡散機能を有していて、固定点を介して吸収部を固定している。この吸収性物品は、着用者の体型への適合性および動作追従性に優れ、伸縮に起因する吸収性能の低下が起こりにくくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−112590号公報
【特許文献2】特開2009−273868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、着用者の排泄部付近の排泄液を素早く吸収し、着用者の肌面から離れた位置で排泄液を保持し、中高吸収体の排泄部付近に排泄液が滞留を防いで、濡れによる不快感を解消し、より快適な装着感が得られる吸収性物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、肌当接面側に液透過性の表面シート、非肌当接面側に液防漏性の裏面シート、及び前記両シート間に配置された液保持性の吸収体を備えた縦長の吸収性物品であって、前記吸収体は、裏面シート側である下層に本体吸収体、表面シート側である上層に中高吸収体を備え、該中高吸収体は、装着者の排泄部に対向する領域に本体吸収体よりも幅狭に配置されてなり、前記中高吸収体は、パルプ繊維と吸水性ポリマーを含むブロック状の吸収部が多数、互いに離間して規則正しく配置されてなり、該離間した部位は、隣りあう前記ブロック状の吸収部間に長手方向及び幅方向に規則的に形成された溝状部を有し、
前記中高吸収体のブロック状吸収部及び本体吸収体の前記ブロック状吸収部と接合する部位が厚さ方向に亘り圧密化されている吸収性物品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、着用者の排泄部付近の排泄液が多量であっても、その排泄液を吸収体の中高吸収体に配した中高溝状部を通じて着用者の肌面から離れた本体吸収体が素早く吸収することができるので、着用時の濡れによる不快感を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る吸収性物品の好ましい一実施形態としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した平面図である。
【図2】本実施形態の生理用ナプキンに用いられる吸収体の好ましい一実施形態の第1実施例を示した斜視図。
【図3】図1の中高吸収体及び本体吸収体の積層部分のY方向断面を模式的に示した断面図である。
【図4】第1実施例の吸収体における液の取り込みを模式的に示した断面図である。
【図5】本実施形態の生理用ナプキンに用いられる吸収体の第2実施例を示した斜視図。
【図6】本実施形態の生理用ナプキンに用いられる吸収体の第3実施例を示した斜視図。
【図7】第1実施例の吸収体の製造工程を示した製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る吸収性物品の好ましい一実施形態としての生理用ナプキン1について、図1〜3を参照しながら、以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態の生理用ナプキン1は、肌当接面側に配される表面シート2、非肌当接面側に配される裏面シート3、およびこれら両シート間に介在された吸収体4を備え、縦長の形状(図5に示すように平面視において一方向に長い形状)に構成されている。
【0011】
なお、本明細書において、生理用ナプキン1またはその構成部材における肌当接面は、生理用ナプキン1の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、生理用ナプキン1の着用時に肌側とは反対側(衣類側)に向けられる面である。また、長手方向は、生理用ナプキン1またはその構成部材の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。図面では、上記長手方向が符号Xで示す方向であり、上記幅方向が符号Yで示す方向である。また吸収体4の長手方向は生理用ナプキン1の長手方向と一致しており、吸収体4の幅方向は生理用ナプキン1の幅方向と一致している。
【0012】
表面シート2および裏面シート3は、吸収体4よりも大きな寸法を有し、吸収体4の長手方向両端から延出し、それらの延出部の端部において互いにヒートシール等により接合されてエンドシール部を形成している。表面シート2および裏面シート3には、吸収体4の長手方向Xに沿う両側縁から外方に延出しフラップ部5を有している。フラップ部5には、着用時に着用者の排泄部(膣口)に対向配置される排泄部対向領域Aにおいて幅方向(図面Y方向)の外方にさらに延出した一対のウイング部6,6を有している。さらに、着用時に排泄部対向領域Aより着用者の背中側に配される後方領域Bにおいて生理用ナプキン1の幅方向(図面Y方向)の外方にさらに延出した一対の後方フラップ部7,7を有している。この生理用ナプキン1は、その長手方向に、前述の排泄部対向領域Aと、該排泄部対向領域Cよりも後方の臀部側に配置される後方領域Bと、該排泄部対向領域Aよりも前方の下腹に配置される前方領域Cとに区分して示すことができる。本実施形態のナプキン1は、後方に臀部を覆う左右幅広な後方フラップ7を有する夜用のものであるが、この場合の排泄部対向領域Aは、ナプキンを長手方向に2等分した際の前側の中央よりにある。また本実施形態に係らず昼用のナプキンなど前後対象に形成される場合は、ナプキンを長手方向に3等分した場合の中央領域である。昼用、夜用にかかわらず、ショーツの股下部に折り曲げて固定するウイングを備える場合は、該ウイングの存在する領域に沿った長手方向領域が排泄部に対応する。
【0013】
生理用ナプキン1の非肌当接面(裏面シート3の非肌当接面)は、着用時にショーツのクロッチ部等、衣類側に向けられる。この非肌当接面は、生理用ナプキン1をショーツ等の下着のクロッチ部に固定するための粘着部(図示せず)を有している。また、一対のウイング部6,6の非肌当接面は、ショーツの外面(非肌当接面)に固定するための粘着部(図示せず)を有している。また、上記一対の後方フラップ部7,7は、ナプキン1の着用時に、ショーツの内面(肌当接面)上に配されるもので、その非肌当接面には粘着部(図示せず)を有している。これらの粘着部は、ホットメルト粘着剤を所定箇所に塗布することにより設けられており、生理用ナプキン1の使用前においてはフィルム、不織布、紙などからなる図示しない剥離シートによって被覆されている。
【0014】
吸収体4は、平面視において角が丸みを帯びた矩形形状をしており、その長手方向を生理用ナプキン1の長手方向Xに一致させて、その幅方向(図面Y方向)の中央に配されている。より具体的には、吸収体4は、排泄部対向領域Aよりも長手方向(図中X方向)の前側に位置する領域から排泄部対向領域Aを介して後方部Bにわたって延びる縦長の本体吸収体40と、排泄部対向領域Aにおいて本体吸収体40の肌当接面上に配置された縦長の中高吸収体41とを具備している。ナプキン1において、本体吸収体40は裏面シート3側である下層に配され、中高吸収体41は表面シート2側である上層に配されている。中高吸収体41は、平面視において略矩形形状でかつ本体吸収体40よりも幅狭で、その長手方向を吸収体4の長手方向に一致させて、排泄部対向部Aにおける本体部40の幅方向(図1Y方向)の中央部に配置されている。また中高吸収体41は、ナプキン1の後方領域Bへ向けて先細りの略舟形形状となっている。吸収体4は、後述するように、互いに別体の2つの吸収構造体を重ね合わせ、両吸収構造体を一体化する工程を経て形成されている。
吸収体4はパルプ繊維等の繊維材料で構成され、または繊維間に吸水性ポリマーを保持させたもので構成され、それをティッシュペーパーや透水性の不織布からなるコアラップシート(図示せず)で被覆している。表面シート2と吸収体4との間、吸収体4と裏面シート3との間は、ドット、スパイラル、ストライプ等のパターン塗工された接着剤(ホットメルト接着剤等)により互いに接合されている。吸収体4の平面視形状は、矩形形状に限定されることはなく、中間部の幅を狭くしたもの、前部と後部の幅を異ならせたもの等、種々の形状のものに適用することができる。
【0015】
また、本実施形態においては、中高吸収体41の外方の本体吸収体40に、表面シート2および吸収体4の本体吸収体40が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥した、線状の防漏溝8を有する。防漏溝8は、中高吸収体41を挟んで両側に一対が配されている。ここで、「線状」とは、防漏溝(凹陥部)の形状が平面視において直線に限られず、曲線を含み、各線は、連続線でも破線でも良い。また防漏溝8の底面では、表面シート2および吸収体4が熱融着等により一体化している。防漏溝8は、経血等の排泄液の拡散防止、着用時の身体に対する密着性の向上等に特に有効である。防漏溝8は、熱を伴うかまたは伴わないエンボス、もしくは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成される。防漏溝8の底部と裏面シート3とに挟まれた部分は、中高溝状部44はもとより、吸収体4全体において最も密度(全構成材料の密度)が高い部分である。また、本体吸収体40において、防漏溝8を挟んで幅方向(図面Y方向)の内方側と外方側とは、密度は略同じである。
【0016】
一対の防漏溝8,8は、それぞれ、生理用ナプキン1の肌当接面(表面シート2の肌当接面)に形成されており、排泄部対向領域Aにおいて中高吸収体41に沿って長手方向(図中X方向)に延び、且つ排泄部対向領域Aよりも長手方向(図面X方向)の前側および後方部Bのそれぞれにおいて互いに連結し、平面視において中高吸収体41を包囲する環状を形成していることがより好ましい。
【0017】
本実施形態における吸収体4の本体吸収体40及び中高吸収体41について、図2を参照して以下に説明する。図2は、生理用ナプキン1に用いられる第1実施例としての吸収体4(4A)について示しており、中高吸収体41が配される排泄部対向領域A及びその前後の部分を部分的に示している。
図2に示すように、吸収体4(4A)は、縦長の本体吸収体40と、その本体吸収体40の表面側(肌当接面側)に複数に分立されて配置されていて液体を吸収して貯えるブロック状の中高吸収部42(以下、中高ブロック部42又中高ブロック状吸収部42ともいう。)の集合体である中高吸収体41とを有する。中高吸収体41において、中高吸収部42は、パルプ繊維と吸水性ポリマーとを含み、多数、互いに離間して規則正しく配置されている。また、中高吸収部42と隣接する別の中高吸収部42との間には中高溝状部44を有する。中高溝状部44は、隣りあう中高吸収部42間に吸収体3の長手方向及び幅方向に規則的形成されている。少なくとも中高溝状部44は中高吸収体41の長手方向の全長に亘って直線状に形成されている。
上記中高吸収体41は、装着者の排泄部に対向し排泄液が供給される位置にあたる排泄部対向領域Aに配置され、中高吸収体41の周辺部よりも本体吸収体40を含めた厚みが厚くなっている。また中高吸収体41は、平面視において略矩形形状でかつ本体吸収体40よりも幅狭で、その長手方向(図面X方向)を本体吸収体40の長手方向に一致させて、排泄部対向領域Aにおける本体吸収体40の幅方向(図面Y方向)の中央部に配置されている。本体吸収体40の厚みは、好ましくは1mm以上5mm以下、より好ましくは1mm以上3mm以下であり、中高吸収体41の厚みは、好ましくは1mm以上7mm以下、より好ましくは1mm以上5mm以下である。
また上記中高吸収体41の平面視形状は、図示したような一方端が先細り形状の舟形であっても、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形であっても、それらの角部に丸みが付けられたものでも、それらの辺が直線や曲線であってもよい。また、長手方向中央部の幅がその両端部の幅より太く形成されたものでも、両端部の形状や幅が異なるものであってもよい。
【0018】
図3に示すように、排泄部対向領域Aの幅方向に沿う断面視において、中高ブロック部42の密度および中高ブロック部42の底部側と接合する本体吸収体40の部位40Hの密度は、中高溝状部44の底部側と接合する本体吸収体40の部位40Lの密度より高くなっている。すなわち、中高ブロック部42とその底部側と接合する本体吸収体40の部位40Hとで構成される吸収体コア43は、中高溝状部44の底部にある本体吸収体40Lとの比較において全構成材料の密度が高くなっている。一方、中高溝状部44の底部側にある本体吸収体40Lは、吸収体コア43との比較において、全構成材料(繊維、吸水性ポリマー等)の密度が低くなっている。つまり、中高ブロック部42とこれに接合する本体吸収体40の部位40Hとが厚さ方向に亘り、吸収体の他の部分よりも圧密化されている。
【0019】
中高溝状部44の底部側にある密度の低い本体吸収体40の部位40Lおよび密度の高い吸収体コア43の本体吸収体40の部位40Hは、何れも上記長手方向(図面X方向)の全長にわたって連続して配されている。また、幅方向(図面Y方向)には、吸収体コア43の本体吸収体40Hと、中高溝状部44の底部側にある密度の低い本体吸収体40Lとは交互に配列されている。さらに、中高ブロック部42は、本体吸収体40H上に配され、かつ1列ごとに、中高ブロック部42の長さの例えば1/2ずつ長手方向にずらして配置されている。
【0020】
上記吸収体4の各部の密度、寸法等は、それぞれ、下記の範囲にあることが好ましい。
中高溝状部44の底部側と接合する本体吸収体40の部位40Lの全構成材料の密度は、0.03g/cm以上0.20g/cm以下、特に0.05g/cm以上0.15g/cm以下であることが好ましい。
吸収体コア43の全構成材料の密度は、0.05g/cm以上0.35g/cm以下、特に0.1g/cm以上0.3g/cm以下であることが好ましい。
中高溝状部44の底部側と接合する本体吸収体40の部位40Lの第1領域、および吸収体コア43の中高ブロック部42の第2領域の密度比(第1領域/第2領域)は、0.05以上4.0以下、特に0.15以上1.5以下であることが好ましい。
【0021】
また、幅方向(Y方向)において、中高吸収体41の幅W1は、吸収体4の幅Wの20%以上70%以下、特に30%以上50%以下であることが好ましい。中高吸収体41の幅W1が狭い場合、身体に強く当たっての違和感や排出された液を中高吸収体41で受け取ることが困難となり、幅が広い場合には、股間部分にフィットせず、違和感や身体との隙間を形成してしまう。
中高溝状部44の幅W2は、吸収体4の幅Wの1%以上15%以下、特に1%以上5%以下であることが好ましい。また、幅W2は1mm以上15mm以下、特に1mm以上5mm以下であることが好ましい。中高溝状部44の幅W2が狭い場合、排出された液を適切となる領域に導く事ができなくなって、表面上で液の拡散が起こり易くなり、幅が広い場合には、中高吸収体41の吸収体コア43が強く当たっての違和感や、中高溝状部44の幅W2の隙間が倒れたり潰されて消失し易い。
さらに、中高吸収体41の吸収体コア43の幅W3は、吸収体4の幅Wの5%以上40%以下、特に5%以上30%以下であることが好ましい。また、幅W3は5mm以上30mm以下、特に5mm以上20mm以下であることが好ましい。前記範囲内にあることで、吸収性を良好とし、違和感の発生を起し難くできる。
防漏溝8の幅W4は、好ましくは0.5mm以上3mm以下、さらに好ましくは0.75mm以上2mm以下である。
【0022】
本発明において、圧密化されている部位は、かかる部位がロール等で圧縮されて密度が比較的高い部位を指している。本発明では、本体吸収体40の上に中高吸収体41を積層する際に平滑な一対のロールで圧縮されると、上層に位置する中高吸収体41の中高ブロック部42はロールから加圧されて圧縮され、中高溝状部44は、ロールから窪んだ部位で接触することなく殆ど加圧されることはない。そのため中高溝状部44は、中高ブロック部42に比べて低密度のまま存在し、下層に位置する本体吸収体40は上層の中高吸収体41から受ける加圧の強弱がそのまま下層の本体吸収体40に加圧伝播されて、上記したような密度構造ができあがると考えられる。この製造方法については後述する。
【0023】
上述の吸収体4の各部における全構成材料の密度の測定方法を以下に説明する。
吸収体4(中高吸収体41)より各々の部位を長さ30mm、幅5mmの大きさに切り出しサンプルを調製し、電子天秤(A&D社製電子天秤GR−300、精度:小数点以下4桁)を用い、各サンプルの質量を測定した。また定圧式厚み計を用い、各サンプル厚みを測定し、測定したサンプルの質量を、サンプルの体積(厚み×長さ×幅)で除して各々の部位の全材料の密度を算出した。なお、低圧式厚み計の測定時圧力は3.0g/cmとした。
【0024】
また、上記密度計測の際、中高吸収体41と本体吸収体40との境界は、中高吸収体41と本体吸収体40との間に紙の境界への挿入やホットメルト型粘着剤で固定される等で識別可能な要素を有していることが多い。特に識別できる要素がない場合であっても、本発明における吸収体では、中高吸収体41と本体吸収体40が個々にパルプ等の繊維材料が絡み合い形成されて重ねあわされていることから、中高吸収体41と本体吸収体40に直接的な繊維材料の絡み合いがないことから、比較的容易に境界で分離可能とされている。
【0025】
上記吸収体4Aは、その本体吸収体40上に中高吸収体41を有し、中高吸収体41が本体吸収体40の長手方向に中高溝状部44を有していることから、表面シート2から透過され中高吸収体41に供給された排泄液は、中高溝状部44を流れるとともにその底面から本体吸収体40Lに浸透し、本体吸収体40中を拡散して広がる。一方、中高吸収体41の中高ブロック部42は、中高溝状部44の底部側の本体吸収体40Lよりも密度が高いことから、毛管力により密度の低い本体吸収体40Lに吸収された排泄液が密度の高い本体吸収体40Hおよび中高ブロック部42に吸い上げられ、貯えられる。
なお、中高吸収体41の排泄部対向領域Aに供給された排泄液は、主に本体吸収体40が吸収するが、中高ブロック部42も表面からの吸収性能を有するので、排泄液の一部は中高ブロック部42の表面からも吸収される。
さらに中高溝状部44の底部側の本体吸収体40Lは密度が低いので、中高溝状部44に供給された排泄液を素早く吸収することができるようになる。このため、吸収体4Aの表面側(肌当接面側)における排泄液の滞留がなくなり、着用者の濡れによる不快感を解消することができる。また、一度の排泄液量が多くても、吸収体4により吸収することができるようになる。
さらに、中高ブロック部44は、中高溝状部44よりも高密度であり、その底部に位置する本体吸収体40(40H)も密度が高いことから、液保持性が高く液戻りを起し難い。
このように、本発明の吸収性物品に用いられる吸収体4Aによれば、着用者の排泄部付近の排泄液を吸収体4Aの中高吸収体41に配した中高溝状部44を通じて着用者の肌面から離れた本体吸収体40が素早く吸収することができるので、吸収体4Aの着用時に排泄液量が多いときでもドライ感が維持されるので快適な着用感を持続させることができる。
【0026】
また、中高吸収体41を中高ブロック部42の集合体とし、中高ブロック部42間に中高溝状部44を配していることから、中高ブロック部42だけで供給された排泄液を吸収することなく本体吸収体40でも液を吸収する。このため、中高吸収体41の吸収性能を大幅に高める必要がないので、中高吸収体41の高さを低くすることができる。したがって、吸収体4Aの厚さを薄くすることができる。この点からも、吸収体4Aの着用感の良さが高まる。
【0027】
本実施形態の生理用ナプキン1は、図4に示すように、主として吸収体4(4A)の中高吸収体41に配した中高溝状部44を通じて着用者の肌面から離れた本体吸収体40が着用者の排泄部付近の排泄液を素早く吸収し、着用時の濡れによる不快感を解消し、横漏れを効果的に防止することができる。すなわち、吸収体4においては、着用者の排泄部に近接する中高吸収体41上に排泄された経血等の排泄液は、太い矢印で示したように、素早く中高溝状部44内に移行する。そのため、排泄部付近に排泄液が滞留しにくくなり、着用者に着用時の濡れによる不快感を与えないようになる。また、前述した吸収体4内の密度差により、中高溝状部44の底部側の本体吸収体40Lから吸収体コア43の本体吸収体40H方向に強い毛管力が働くため、中高溝状部44の底部側の本体吸収体40L内に移行した排泄液は、液の拡散性(移動性)に優れる、吸収体コア43の本体吸収体40H内に導かれる。吸収体コア43の本体吸収体40H内に導かれた排泄液は、吸収体コア43の中高吸収体41内にも拡散され、吸収体コア43全体で吸収、保持される。
【0028】
また、吸収体コア43の吸収容量を超えた排泄液が、吸収体コア43の中高吸収体41よりも外方に流れてきても、そこには所定幅の低密度部の本体吸収体40Lが存在しており、さらには、吸収体4において最も密度の高い防漏溝8が存在しているため、排泄液は、防漏溝8で堰き止められ、防漏溝8よりも外方には移行されにくい。このように、吸収体4においては、着用者の排泄部付近の排泄部対向領域Aから幅方向(図面Y方向)外方に向かって、低密度部(中高溝状部44の底部側の本体吸収体40L)、高密度部(吸収体コア43)、低密度部(中高吸収体41の周囲の本体吸収体40L)、高密度部(防漏溝8の底部側の本体吸収体40H)が順次配置されているため、幅方向(図面Y方向)での液拡散が抑制され、横漏れを起こし難い。
【0029】
また、吸収体4においては、中高溝状部44の底部側にある本体吸収体40Lおよび吸収体コア43の本体吸収体40Hは長手方向(図中X方向)の全長に亘って連続しているため、排泄液を長手方向に拡散させることができる。このような長手方向での液拡散の促進と、前述した幅方向(図面Y方向)での液拡散の抑制とにより、本実施形態の生理用ナプキン1は、吸収体4の液吸収に寄与する利用効率が高く、排泄液の吸収性、漏れ防止性に優れている。
【0030】
次に、本実施形態の生理用ナプキンに用いられる吸収体の第2実施例(吸収体4(4B))について、図5を参照しながら、以下に説明する。図5は、吸収体4(4B)について、中高吸収体3が配される排泄部対向領域A及びその前後の部分を部分的に示している。
図5に示すように、第2実施例の吸収体4(4B)は、前述の第1実施例の吸収体4(4A)において、本体吸収体40の全域にブロック状の本体吸収部45(以下、本体ブロック部45又は本体ブロック状吸収部45ともいう。)が構成され、本体ブロック部45とそれに隣接する別の本体ブロック部45との間に本体溝状部46を有するものである。この本体溝状部46は、完全に本体部40を離間するものではなく、本体吸収体40の表面側から厚さ方向に途中まで構成されたものであり、本体溝状部46の底部側には本体吸収体40が残されている。
上記本体溝状部46の底部側の本体吸収体40は、上記本体ブロック部45の底部側の本体吸収体40よりも低い密度であることが好ましく、また、本体ブロック部45は、その底部側の本体吸収体40と同等の密度もしくは高い密度であることが好ましい。
【0031】
また、中高吸収体41および中高吸収体41の底部側の本体吸収体40の構成は、前述の第1実施例の吸収体4Aと同様である。平面視、中高ブロック部42と本体ブロック部45とが少なくとも一部が一致するように配されることが好ましく、中高ブロック部42と本体ブロック部45とが一致するように配されることがより好ましい。言い換えれば、中高溝状部44と本体溝状部46とが少なくとも互いに幅方向の位置が重なり長手方向において一致するように本体吸収体40上の所定位置に中高吸収体41が配されることが好ましく、中高溝状部44と本体溝状部46とが一致するように本体吸収体40上の所定位置に中高吸収体41が配されることがより好ましい。本体吸収体40に対する中高吸収体41の配置位置は前述の第1実施例と同様である。また、吸収体4Bの各構成部品のサイズおよび密度は前述の第1実施例と同様である。上下層の溝状部を一致させることで、上層の溝状部から下層の溝状部に液が素早く伝達し、下層の溝状部を伝わり長手方向にスムーズに広がりながら、下層吸収体のブロック吸収部全面にスムーズに液拡散しやすくなり、排泄部がある領域のみに液が留まることもない。特に排泄量の多い場合に、本体吸収体の広い後方領域の吸収部を有効に利用することが出来る。
【0032】
上記吸収体4Bは、上記吸収体4Aと同様な作用効果を奏するとともに、本体吸収体40の全域に本体ブロック部45と本体溝状部46とを有することから、吸収体4の周辺部における肌面への体型適合性が良くなる。このため、肌面への密着性が良くなり、着用感に優れる。また、本体溝状部46に対して中高溝状部44の少なくとも一部もしくは全部が重なるように配置されている構成では、中高溝状部44に供給された排泄液は本体溝状部46にも到達する。このため、一度に大量の排泄液が供給された場合であっても、一時的に中高溝状部44と本体溝状部46とで貯えることができ、横漏れを防止することができる。そして、中高溝状部44および本体溝状部46に貯まった排泄液は、中高溝状部44および本体溝状部46からその側部の密度の高い本体吸収体40を経て中高ブロック部42に吸収されて貯えられる。このように一度の大量の排泄液が供給された場合であっても横漏れせずに吸収体4に吸収させることができる。
【0033】
次に、本実施形態の生理用ナプキンに用いられる吸収体の第3実施例(吸収体4(4C))について、図6を参照しながら、以下に説明する。図6は、吸収体4(4C)について、中高吸収体3が配される排泄部対向領域A及びその前後の部分を部分的に示している。
図6に示すように、第2実施例の吸収体4(4C)は、前述の第1実施例の吸収体4(4A)において、中高吸収体41の周囲の本体吸収体40に本体ブロック部45が構成され、本体ブロック部45とそれに隣接する別の本体ブロック部45との間に本体溝状部46を有するものである。この本体溝状部46は、本体吸収体40を完全に離間するものではなく、本体吸収体40の表面側から厚さ方向に途中まで構成されたものであり、本体溝状部46の底部側には本体吸収体40が残されている。
上記本体溝状部46の底部側の本体吸収体40は、上記本体ブロック部45の底部側の本体吸収体40よりも低い密度であることが好ましく、また、本体ブロック部45は、その底部側の本体吸収体40と同等の密度もしくは高い密度であることが好ましい。
【0034】
また、中高吸収体41および中高吸収体41の底部側の本体吸収体40の構成は、前述の第1実施例の吸収体4Aと同様である。また、吸収体4Cの各構成部品のサイズおよび密度は前述の第1実施例と同様である。
【0035】
上記吸収体4Cは、上記吸収体4Aと同様な作用効果を奏するとともに、中高吸収体41の周囲の本体吸収体40に本体ブロック部45と本体溝状部46とを有することから、吸収体4の周辺部における肌面への体型適合性が良くなる。このため、肌面への密着性が良くなり、着用感に優れる。
【0036】
次に、生理用ナプキン1における構成材料について説明する。表面シート2および裏面シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、例えば、不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。裏面シート3としては、例えば、透湿性を有しない樹脂フィルムや、微細孔を有して透湿性を有するが液不透過性の樹脂フィルム、はっ水不織布等の不織布、これらと他のシートとのラミネート体等を用いることができる。
【0037】
吸収体4の本体吸収体40および中高吸収体41の構成材料としては、従来、生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等のセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン等の合成繊維の短繊維等が用いられる。これらの繊維は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、繊維材料は、全体または一部がパルプ繊維であることが好ましく、繊維材料中のパルプ繊維の割合は50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは100質量%である。なお、吸収性コアには、繊維材料以外に、消臭剤や抗菌剤等を必要に応じて配合しても良い。また、吸水性ポリマーを配合しても良い。
【0038】
次に、本発明の吸収性物品の製造方法について、一例として、前述した吸収体4を備えるナプキン1の製造方法を、図7を参照して説明する。生理用ナプキン1の製造方法は、以下に説明する吸収体4の製造工程に主たる特徴を有し、その他の工程は、この種の生理用ナプキンの製造時における各工程と同様である。
【0039】
図7に示すように、吸収体4の製造工程は、吸収体前駆体(以下、前駆体という)50を製造する前駆体製造工程と、前駆体50を圧縮する圧縮工程とを有している。前駆体50は、下層部51の一面側に下層部51よりも幅狭の凸部52を有する、中高構造の吸収体であり、パルプ繊維および吸水性ポリマーを含んで構成され、その組成は吸収体4と同じであり、その密度は、前駆体50の全域にわたって略均一である。前駆体50は、この種の生理用ナプキンにおける吸収体と同様に、公知の積繊装置を用いて製造することができる。
【0040】
本製造方法では、2種類の前駆体50A,50Bの何れか一方を使用する。前駆体50Aは、下層部51と凸部52とが一体に形成されていて分離不可なものであり、前駆体50Bは、下層部51と凸部52とが別体となっていて分離可能なものである。前駆体50Aは、下層部51および凸部52の一体化物と、該一体化物全体を被覆するコアラップシート(図示せず)とから構成されている。一方、前駆体50Bにおいては、下層部51および凸部52はそれぞれ個別にコアラップシート54(一部図示)で被覆されている。
【0041】
前記圧縮工程では、加圧手段60とこの圧力を受ける受け手段61との間に、前駆体50を供給し、前駆体50の凸部52をその厚み方向に圧縮する。加圧手段60および受け手段61は、エンボス加工などに用いられる回転可能なロール状のものでも良く、上下に往復動する板状のものでも良い。
【0042】
このような、前駆体50に対する圧縮工程を経て得られた吸収体4には、前述した密度差が与えられる。得られた吸収体4においては、前記圧縮工程において、圧縮された部分が中高吸収体41の吸収体コア43となり、圧縮されていない中高溝状部44の底部側の本体吸収体40Lおよび中高吸収体41よりも幅方向外方域の本体吸収体40Lが、低密度領域となっている。
【0043】
前記圧縮工程後、得られた吸収体4の中高吸収体配置面側に表面シート2(図示せず)を、反対側に裏面シート3(図示せず)をそれぞれ供給し、中高吸収体41が存する領域に対し、該表面シート2側から公知のエンボス加工を施して防漏溝8を形成する。さらに、吸収体4の周囲において表面シート2と裏面シート3との間を接合することにより、前記図5によって説明したような生理用ナプキン1が得られる。
【0044】
上述の前駆体50には、下層部51と凸部52とが一体に形成されている前駆体50A、これらが別体となっている前駆体50Bの何れを用いても構わないが、前駆体50Bを用いた方が、前駆体50Bに前述した密度差を与えることが容易である。即ち、吸収体4は、パルプ繊維および吸水性ポリマーを含んで構成される第1吸収構造体(下層部51に相当)の一面上に、パルプ繊維および吸水性ポリマーを含んで構成され且つ該第1吸収構造体よりも幅狭の第2吸収構造体(凸部52に相当)を重ね合わせ、両吸収構造体を一体化する工程を経て構成されているものであることから、凸部52に相当する第2吸収構造体の幅を制御することが容易であり、設計通りの密度差を与えることが容易な点で好ましい。
【0045】
なお、前述したように、前駆体50Bにおいては、下層部51および凸部52がそれぞれ個別にコアラップシートで被覆されているため、前駆体50Bを用いて得られた吸収体4においては、中高吸収体41と下層部51との間に、これらのコアラップシートが挟持固定される。前駆体50Aを用いて得られた吸収体4においては、中高吸収体41と本体吸収体40との間に、コアラップシートが挟持固定されることはない。
【0046】
本発明の吸収性物品(生理用ナプキン1)は、前述した実施形態に制限されず、適宜変更することができる。例えば、生理用ナプキン1は、ウイング部6を有しないものであっても良く、後方のフラップ部5を有しないものであっても良く、ウイング部6および後方のフラップ部7を有しないものであっても良い。また、生理用ナプキン1は、その肌当接面側の左右両側に立体ギャザーを有するものであっても良い。また、本発明の吸収性物品は、生理用ナプキン1の他、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド、使い捨ておむつ等の他の吸収性物品であっても良い。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0048】
前記図1に示す構成の生理用ナプキンを常法に従って製造し、これを実施例1のサンプルとした。吸収体を構成する吸収性コアの構成材料として、パルプ繊維および吸水性ポリマーを用い、これらの混合積繊体(吸収性コア)と該混合積繊体を被覆するコアラップシートとからなる前駆体50Aを常法に従って製造し、前述した方法により吸収体を製造した。実施例1の吸収体中における吸水性ポリマーの含有量は、該吸収体の全重量に対して20重量%であった。また、前記コアラップシートとして、坪量16g/mの吸収紙で被覆して使用した。また、表面シートとして、坪量25g/mのエアスルー不織布を使用し、裏面シートとして、坪量30g/mの非透湿ポリエチレン製フィルムを使用した。
【0049】
実施例1は、吸収体に前述の実施例1の吸収体4を用いた。その吸収体4の寸法は、本体吸収体40の長さL1が150mm、本体吸収体40の幅Wが75mm、本体吸収体40の厚みT1が2mm、中高吸収体41の長さL2が120mm、中高吸収体41の幅W1が35mm、中高吸収体41の吸収体厚みT2が2mm、中高溝状部44の中高吸収体41の厚みT3が1mmであった。
また、中高溝状部44の幅W2は長手方向に1.5mm、幅方向に2mm、防漏溝8の幅W4は5mm、中高吸収体41の側部から防漏溝8までの離間距離D1は15mmであった。
また、中高溝状部44の底部側にある本体吸収体40の坪量は160g/m、密度は0.1g/cm以上0.2g/cm以下であり、吸収体コア43の坪量は400g/m、密度は0.2g/cm以上0.5g/cm以下であった。これらの密度比は、前述した方法により算出した。
【0050】
実施例2は、吸収体に前述の実施例3の吸収体4を用いた。その吸収体4の寸法は、本体吸収体40の長さL1が150mm、本体吸収体40の幅Wが75mm、本体吸収体40の厚みT1が2mm、中高吸収体41の長さL2が120mm、中高吸収体41の幅W1が35mm、中高吸収体41の吸収体厚みT2が2mm、中高溝状部44の底部側の中高吸収体41の厚みT3が1mmであった。
また、中高溝状部44および本体溝状部46の幅W2は長手方向に1.5mm、幅方向に2mmであった。
また、中高溝状部44の底部側にある本体吸収体40の坪量は160g/m、密度は0.1g/cm以上0.2g/cm以下であり、吸収体コア43の坪量は400g/m、密度は0.2g/cm以上0.5g/cm以下であった。これらの密度比は、前述した方法により算出した。
【0051】
比較例のサンプルは、特許文献1に記載の方法に従って吸収体を製造し、その吸収体を用いて実施例1と同様にして生理用ナプキンを製造して得た。比較例1で用いた吸収体の構成材料ならびに各部の長さおよび幅は、概ね実施例1で用いた吸収体4と同じである。また、中高吸収体の坪量は400g/m、密度は0.1g/cm以上0.2g/cm以下であり、中高吸収体の窪み領域の坪量は400g/m、密度は0.2g/cm以上0.4g/cm以下であった。また、中高吸収体と中高吸収体の窪み領域との密度比(前者/後者)は0.3であった。
【0052】
実施例および比較例のサンプル(生理用ナプキン)について、表層液戻り量、液拡散性をそれぞれ下記方法により測定した。それらの結果を下記表1に示す。
【0053】
表層液戻り量の測定方法を以下に説明する。この表層液戻り量とは、吸収体に吸収された液が加圧によってどれだけ表層(表面シート)側へ戻るかを示したものである。この量が少ないほど、吸収体の液保持性が高く、装着時のドライ感が得られ易い。
まず生理用ナプキンを水平に置いた。この生理用ナプキン上に、底部に直径1cmの注入口がついた円筒つきアクリル板を重ねて、サンプルの排泄部対向領域(サンプルの長手方向前端から40mmの位置)に注入口から粘度を8.0±0.1cPに調整した3gの脱繊維馬血を注入した。注入後、その状態を1分間保持した。次に、円筒つきアクリル板を取り除き、表面シートの表面上に、縦6cm×横9.5cmで坪量13g/mの予め質量を測定しておいた吸収紙(市販のティッシュペーパー)を載せた。さらにその上に圧力が4.5×10Paになるように錘を載せて5秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り出し、加圧前後の吸収紙の質量変化を測定し、吸収紙に吸収された脱繊維馬血の質量を表面液残り量とした。
次いで、試験後のサンプルに再び上記のアクリル板を重ね、1回目の注入から3分後に再び注入口から3gの脱繊維馬血を追加して注入した。生理用ナプキンへの馬血の注入位置は、最初の3gを注入した位置と同じとした。そして、その状態を1分間保持した後、アクリル板を取り除き、同様にして表面液残り量を測定した。
【0054】
次に液拡散性の測定方法を以下に説明する。
サンプルの排泄部対向領域(サンプルの長手方向前端から40mmの位置)に、粘度を8.0±0.1cPに調整した馬血を3g、一定間隔ごとに繰り返し注入し、各注入の1分後に注入点より液が長手方向に拡散した距離(液拡散長さ)を測定すると共に、液拡散面積を測定した。液拡散長さおよび液拡散面積は、吸収体の非肌当接面(裏面シートとの対向面)で測定した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1及び2は比較例に比べ、液の吸収速度が高く、累計6g注入後(3g注入を2回繰り返した後)の表層液残り量が少なく、液の引き込み性に優れることがわかった。このように、液の保持性に優れ、着用者の肌側に液を戻しにくいことから、着用者に優れたドライ感を与えてより快適な着用感を提供することができる。また、累計6g注入後(3g注入を2回繰り返した後)の液の拡散状態を観察すると、実施例1及び2は比較例に比べ、吸収体の非肌当接面(裏面シートとの対向面)における製品長手方向の液の移動性が高く、非肌当接面側で広く拡散することが分かった。よって、液が肌側に滞留することなく、吸収体4に素早く拡散、吸収され、保持されるので、快適な装着感を得ることができる。特に、一度の排泄液量が多いときであっても、液の拡散、吸収が素早く行われるので、横漏れの心配がなくなるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0057】
1 吸収性物品(生理用ナプキン)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
8 防漏溝
40 本体吸収体
41 中高吸収体
42 中高吸収部(中高ブロック部)
43 吸収体コア
44 中高溝状部
45 本体吸収部(本体ブロック部)
46 本体溝状部
50,50A,50B 吸収体前駆体
51 吸収体前駆体の下層部
52 吸収体前駆体の上層部
60 加圧手段
61 受け手段
A 排泄部対向領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に液透過性の表面シート、非肌当接面側に液防漏性の裏面シート、及び前記両シート間に配置された液保持性の吸収体を備えた縦長の吸収性物品であって、
前記吸収体は、裏面シート側である下層に本体吸収体、表面シート側である上層に中高吸収体を備え、該中高吸収体は、装着者の排泄部に対向する領域に本体吸収体よりも幅狭に配置されてなり、前記中高吸収体は、パルプ繊維と吸水性ポリマーを含むブロック状の吸収部が多数、互いに離間して規則正しく配置されてなり、該離間した部位は、隣りあう前記ブロック状の吸収部間に長手方向及び幅方向に規則的に形成された溝状部を有し、
前記中高吸収体のブロック状吸収部及び本体吸収体の前記ブロック状吸収部と接合する部位が厚さ方向に亘り圧密化されている吸収性物品。
【請求項2】
前記本体吸収体は、パルプ繊維と吸水性ポリマーを含むブロック状の吸収部が多数、互いに離間して規則正しく配置されてなり、該離間した部位は、隣りあう前記ブロック状の吸収部間に長手方向及び幅方向に規則的に形成された溝状部を有する請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記本体吸収体は、該本体吸収体における前記中高吸収体と接合されない中高吸収体よりも幅広で、縦長の領域には、パルプ繊維と吸水性ポリマーを含むブロック状の吸収部が多数、互いに離間して規則正しく配置されてなり、該離間した部位は、隣りあう前記ブロック状の吸収部間に長手方向及び幅方向に規則的に形成された溝状部を有し、前記本体吸収体における前記中高吸収体と接合して積層される領域は、前記溝状部を有さない平坦な吸収部である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中高吸収体の長手方向の溝状部と前記本体吸収体の長手方向の溝状部とは、互いに幅方向の位置が重なるよう配置されている請求項1又は2記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125366(P2012−125366A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278668(P2010−278668)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】