吸塵装置
【課題】 切削粉が撒き散らされてしまうことを防止する。
【解決手段】 切削装置に装着される吸塵装置である。吸塵装置は、下端部が開放され、切削装置の主軸に取り付けられた切削工具を囲むダクトと、ダクト内の大気を吸引する吸引部とを備えている。ダクト内には、主軸に同期して回転し、上昇気流を発生させる複数のフィンを有するファン部が設けられている。
【解決手段】 切削装置に装着される吸塵装置である。吸塵装置は、下端部が開放され、切削装置の主軸に取り付けられた切削工具を囲むダクトと、ダクト内の大気を吸引する吸引部とを備えている。ダクト内には、主軸に同期して回転し、上昇気流を発生させる複数のフィンを有するファン部が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸塵装置に係り、特に切削後の切り粉を吸塵するための吸塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金属等を切削する場合に発生する切削粉を回収すべく、切削工具の軸芯に吸引口を設け、当該吸引口から切削粉を吸引・回収する切削装置が知られている(例えば特許文献1参照)。近年においては、繊維強化樹脂複合材(FRP:Fiber Reinforced Plastics)を切削する場合もあるが、金属と比して切削粉が細かいために、切削工具の周辺に切削粉がまき散らされるという弊害があった。このため、切削工具の周囲に、切削粉が撒き散らされることを防止するカバーを設ける技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−274147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、切削時においては、切削工具のインサートと切削対象であるワークとは接しているものの、カバーとワークとの間には隙間が存在する。この隙間があるため、カバーを設けていたとしても結局微少な切削粉が切削工具周辺に撒き散らされてしまうという問題があった。
このため、本発明の課題は、切削粉が撒き散らされてしまうことを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、
切削装置に装着される吸塵装置において、
下端部が開放され、前記切削装置の主軸に取り付けられた切削工具を囲むダクトと、
前記ダクト内の大気を吸引する吸引部とを備え、
前記ダクト内には、前記主軸に同期して回転し、前記吸引部へ向かう空気流を発生させる複数のフィンを有するファン部が設けられていることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の吸塵装置において、
前記ダクト内には、前記主軸の回転軸側から外周側に向けて延在し、前記ファン部に対向するように配置された少なくとも一枚のプレートが固定されていて、
前記複数のフィンは、前記プレートと協働することによって前記ダクト内を流れる切削粉を切断することを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の吸塵装置において、
前記ダクトから前記吸引部まで連通する流路の断面積は、前記ダクトの開放端部側の流路の断面積以下に設定されていることを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸塵装置において、
前記ダクトの内周面は、前記ファン部に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面を有することを特徴としている。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸塵装置において、
外気が連通する連通孔を有した前記切削工具の当該連通孔に接続され、前記連通孔内の大気を吸引する切削工具用吸引部をさらに備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切削装置の主軸に同期して回転し、吸引部へ向かう空気流を発生させる複数のフィンを有するファン部がダクト内に設けられているので、切削粉をダクト内部に吸い込むことができる。これにより、切削粉がダクト外に撒き散らされてしまうことが防止できる。
また、複数のフィンによって発生した空気流によって、ダクト外から外気を取り込むことができ、ダクト内に熱がこもってしまうことも防止できる。これによって、放熱効果を高めることができる。
【0011】
また、ダクト内に配置された少なくとも一枚のプレートと、複数のフィンとが協働することによってダクト内を流れる切削粉が切断されるので、切削粉を効率的に吸引することができる。
【0012】
また、ダクトから吸引部まで連通する流路の断面積が、ダクトの開放端部側の流路の断面積以下に設定されているので、吸引部まで連通する流路で流速が高まることになり、切削粉を確実に吸引部で吸引することができる。
【0013】
また、ファン部に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面をダクトの内周面が有しているので、ダクト内部に螺旋気流を発生させることができる。この螺旋気流によって切削粉をより効率的に吸引することが可能となる。
【0014】
また、切削工具用吸引部が切削工具の連通孔内の大気を吸引するので、切削工具から切削直後に巻き散ろうとする切削粉を連通孔まで吸い寄せることができる。吸い寄せられた切削粉はダクト内に吸い込まれるので、切削粉がダクト外に撒き散らされてしまうことをより防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一の実施の実施形態に係る切削装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】第一の実施の形態に係る吸塵装置の概略構成を模式的に示す説明図である。
【図3】第一の実施の形態に係るトリム用の切削工具に対して取り付けられた第一の実施の形態に係るファン部を示す斜視図である。
【図4】第一の実施の形態に係る工具ホルダからファン部及び切削工具を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】面切削用の切削工具に対して取り付けられた第一の実施の形態に係るファン部を示す斜視図である。
【図6】第二の実施の形態に係る集塵装置の概略構成を模式的に示す説明図である。
【図7】第三の実施の形態に係る集塵装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
【図8】第三の実施の形態に係るフィンとプレートとの位置関係を示す説明図である。
【図9】トリム用の切削工具に対して取り付けられた第三の実施の形態に係るファン部を示している。
【図10】図9のファン部の変形例を示す斜視図である。
【図11】面切削用の切削工具に対して取り付けられた第三の実施の形態に係るファン部を示す斜視図である。
【図12】第三の実施の形態に係るファン部及びプレートの変形例を示す説明図である。
【図13】第三の実施の形態に係るファン部及びプレートの変形例を示す説明図である。
【図14】第三の実施の形態に係るファン部及びプレートの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
[第一の実施の形態]
図1は本実施形態に係る切削装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように切削装置1は、ベッド2と、該ベッド2の奥部分に立設されたコラム3と、該コラム3の前面に上下方向(Z軸方向)に移動自在に支持された主軸頭4と、前記ベッド2の手前部分に前後方向(Y軸方向)に移動自在に支持されたサドル5と、該サドル5上に左右方向(X軸方向)に移動自在に支持されたテーブル6とを備えている。テーブル6には、例えばFRPやCFRP等の繊維強化樹脂あるいは金属などから形成された被切削物であるワークWが載置されている。
【0018】
主軸頭4内には、主軸7が回転自在に支持され、該主軸7は主軸頭4に内蔵された駆動モータ(不図示)により回転駆動される。主軸7の下端部には、着脱自在の工具ホルダ8が取り付けられている。この工具ホルダ8の下端部には、切削工具9が取り付けられている。切削工具9には、先端面91から基端面92にかけて貫通した貫通孔93が形成されている(図2参照)。また、切削工具9の外周面には貫通孔93に連通する複数の吸入孔94が形成されている。これら貫通孔93と吸入孔94とが本発明に係る連通孔であり、この連通孔によって切削工具9の内部を外気が連通するようになっている。なお、工具ホルダ8及び主軸7にも切削工具9の連通孔に連通する流路77,88が形成されている。
【0019】
この切削装置1には、切削粉を吸塵する吸塵装置10が装着されている。図2は吸塵装置10の概略構成を模式的に示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。この図2に示すように、切削装置1には、主軸頭4の下端部に取り付けられたダクト11と、配管12を介してダクト11に接続された吸引部13と、主軸7に同期して回転するファン部14とが設けられている。
【0020】
ダクト11は、円筒状に形成されていて下端部が開放されており、切削装置1の主軸7、工具ホルダ8及び切削工具9を囲むように主軸頭4に取り付けられている。ダクト11の上部には、当該ダクト11の内部と連通する配管12が取り付けられている。吸引部13が駆動すると、配管12を介してダクト11内の空気が吸引されるため、ダクト11内に吸引部13へ向かう空気流(上昇気流)が発生することとなる。
ここで、ダクト11から吸引部13まで連通する配管12(流路)の断面積は、ダクト11の開放端部側の流路の断面積(図2(a)中、斜線部)以下に設定されている。なお、上記の断面積は、気流に対して直交する平面で切断した場合の断面積である。
また、吸引部13は、主軸7の流路77にも連通していて、流路77,88を介して切削工具9の連通孔(貫通孔93及び吸入孔94)内の大気を吸引するようになっている。つまり、吸引部13が本発明に係る切削工具用吸引部である。なお、本実施形態では、吸引部13が切削工具用吸引部を兼ねる場合を例示して説明したが、吸引部13とは別の切削工具用吸引部を設置してもよい。
【0021】
ファン部14には、主軸7と同期して回転する際、上昇気流を発生させる複数のフィン15が設けられている。図3は、トリム用の切削工具9に対して取り付けられたファン部14を示す斜視図である。図3に示すように、ファン部14は、切削工具9を囲むように下方が開口した椀形状となっている。そしてファン部14の側面には、多数の開口141が形成されている。この多数の開口141を隔てる複数の壁部がフィン15である。そして、ファン部14の下端面142は、切削工具9の先端面91よりも上方に配置されており、これによりトリム用の切削工具9の下端部がファン部14の下端面142から突出するようになっている。また、ファン部14の上部には、当該ファン部14を工具ホルダ8に固定するための複数のネジ穴143が形成されている。
【0022】
図4は、工具ホルダ8からファン部14及び切削工具9を取り外した状態を示す斜視図である。工具ホルダ8にファン部14及び切削工具9を取り付ける際には、工具ホルダ8の下端面と、ファン部14の上端面とを位置合わせし、ファン部14のネジ穴143にネジ144を挿通して、工具ホルダ8の雌ネジ81に螺合することで両者が固定される。固定後、工具ホルダ8に切削工具9を取り付ける。
【0023】
図5は、面切削用の切削工具9Aに対して取り付けられたファン部14Aを示す斜視図である。このファン部14Aは図3に示したファン部14とほぼ同じ構成のため同一部分においては同一の符号を付してその説明を省略する。ファン部14Aの下端面142aは、切削工具9Aの先端面91aとほぼ同じ位置に配置されている。このため、切削工具9Aの先端面91aに取り付けられたインサート92aがファン部14Aの下端面142aから突出するようになっている。
【0024】
上述したように工具ホルダ8に対してファン部14が取り付けられているために、主軸7が回転すると、当該主軸7に同期して工具ホルダ8とともにファン部14と切削工具9とが回転するようになっている。
【0025】
次に、本実施形態の作用について説明する。
切削開始時には、吸引部13が駆動してから主軸7が回転し始める。主軸7の回転に同期して、工具ホルダ8、ファン部14及び切削工具9が高速で回転する。切削時においても吸引部13は駆動しているために、貫通孔93及び吸入孔94からは外気が取り込まれ、切削工具9から切削直後に巻き散ろうとする切削粉Sがダクト11内に吸い寄せられる。
また、ダクト11内には、吸引部13による上昇気流と、ファン部14の回転による上昇気流とが発生しているため、切削粉Sが上昇し配管12から吸引部13に吸い込まれる。
【0026】
以上のように、本実施形態によれば、切削装置1の主軸7に同期して回転し、上昇気流を発生させる複数のフィン15を有するファン部14がダクト11内に設けられているので、切削粉Sをダクト11内部に吸い込むことができる。これにより、切削粉Sがダクト11外に撒き散らされてしまうことが防止できる。
また、複数のフィン15によって発生した上昇気流によって、ダクト11外から外気を取り込むことができ、ダクト11内に熱がこもってしまうことも防止できる。これによって、放熱効果を高めることができる。
【0027】
また、ダクト11から吸引部13まで連通する配管12の断面積が、ダクト11の開放端部側の流路の断面積以下に設定されているので、配管12内で流速が高まることになり、切削粉Sを確実に吸引部13で吸引することができる。
なお、ダクト11から配管12までの流れに淀みが生じてしまうと切削粉Sがダクト11内に堆積しやすくなるために、ダクト11内の流路と、配管12の断面積とを等しくして、流れに淀みが生じないようにすることが好ましい。
【0028】
[第二の実施の形態]
第一の実施の形態では、ダクト11が円筒形状である場合を例示して説明したが、この第二の実施の形態では、ダクト11の内周面がテーパー面を有している場合について説明する。なお、以下の説明において、第一の実施の形態と同一の部分においては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図6は、第二の実施の形態に係る集塵装置10Aの概略構成を模式的に示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。図6に示すように、集塵装置10Aにおけるダクト11aの内周面は、ファン部14に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面18aを有している。また、ダクト11aにおけるテーパー面18aから開放端部にかけては、内径が一定の筒状部19aとなっている。
【0030】
以上のように、第二の実施の形態によれば、ファン部14に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面18aをダクト11aの内周面が有しているので、ダクト11a内部に螺旋気流(図6における点線の矢印参照)を発生させることができる。この螺旋気流によって切削粉Sをより効率的に吸引することが可能となる。
【0031】
[第三の実施の形態]
この第三の実施の形態では、ファン部と協働して切削粉を切断するプレートがダクト内に設けられた集塵装置について説明する。なお、以下の説明において、上記実施の形態と同一の部分においては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図7は、第三の実施の形態に係る集塵装置10Bの概略構成を模式的に示す正面図である。図7に示すように集塵装置10Bのダクト11内には、主軸7の回転軸側から外周側に向けて延在する少なくとも一枚の矩形状のプレート60が固定されている。また、ファン部14Bの複数のフィン15bは、それぞれ主軸7の回転軸側から外周側に向けて延在する矩形プレート状に形成されている。
図8は、フィン15bとプレート60との位置関係を示す説明図である。この図8に示すように、フィン15bは、水平面となす角度θが鋭角となるように傾斜しており、その下端部が、ファン部14Bの回転した際にプレート60の上面を摺擦するようになっている。このような位置関係であるために、ファン部14Bの回転中にフィン15bの下端部とプレート60の後端部との間に介在した切削粉Sは、フィン15bとプレート60との協働によって切断されることになる。なお、フィン15bの下端部と、プレート60の後端部との少なくとも一方は刃状に形成されていることが好ましい。
【0033】
次に、ファン部14Bの具体例について説明する。図9は、トリム用の切削工具9に対して取り付けられたファン部14Bを示している。図9に示すように、ファン部14Bには、工具ホルダ8に固定される固定部141bと、固定部141bの中央から下方に向けて延在し、切削工具9を囲む本体部142bと、本体部142bの下端部から外周側に向けて延在する矩形プレート状に形成された4枚のフィン15bとが設けられている。4枚のフィン15bは、それぞれ90度の角度を空けて配置されている。また、固定部141bには、ファン部14Bを工具ホルダ8に固定するための複数のネジ穴143bが形成されている。そして、本体部142bの下端面144bは、切削工具9の先端面91よりも上方に配置されており、これによりトリム用の切削工具9の下端部がファン部14Bの下端面144bから突出するようになっている。
また、図10はトリム用の切削工具9に対して取り付けられたファン部の変形例を示す斜視図である。このファン部14Cでは、フィン15cが8枚設けられており、各フィン15cは45度の角度を空けて配置されている。
【0034】
また、図11は、面切削用の切削工具9Aに対して取り付けられたファン部14Dを示す斜視図である。この図11に示すファン部14Dにおいても8枚のフィン15dを備えた場合を示している。ファン部14Dの下端面142dは、切削工具9Aの先端面91aとほぼ同じ位置に配置されている。このため、切削工具9Aの先端面91aに取り付けられたインサート92aがファン部14Dの下端面142dから突出するようになっている。
【0035】
なお、フィン15bの枚数は、プレート60の枚数との関係で決定される。以下の表1は、フィン15bとプレート60とがそれぞれ16枚以下である場合の好適な枚数の組み合わせを示している。
【0036】
【表1】
【0037】
切削粉Sを切断するタイミングが複数のフィン15bで重なってしまうと、主軸7に対する負荷が大きくなってしまうため好ましくない。したがって各フィン15bでの切削タイミングを分散することが望ましく、表1で「○」と示された組み合わせであると切削タイミングを分散することができる。この表1からもわかるように、プレート60の枚数は、フィン15bの枚数の素因数の倍数でないことが好ましい。なお、回転バランスを安定させるために、フィン15bの枚数は二枚以上であることが好ましく、二枚以上の場合であっても各フィン15bが等間隔で配置されていることがより好ましい。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
切削開始時には、吸引部13が駆動してから主軸7が回転し始める。主軸7の回転に同期して、工具ホルダ8、ファン部14B及び切削工具9が高速で回転する。切削時においても吸引部13は駆動しているために、貫通孔93及び吸入孔94からは外気が取り込まれ、切削工具9から切削直後に巻き散ろうとする切削粉Sがダクト11内に吸い寄せられる。
また、ダクト11内には、吸引部13による上昇気流と、ファン部14の回転による上昇気流とが発生しているため、切削粉Sが上昇し配管12から吸引部13に吸い込まれる。このとき、ファン部14Bの回転中にフィン15bの下端部とプレート60の後端部との間に介在した切削粉Sは、フィン15bとプレート60との協働によって切断されることになる。
【0039】
以上のように、第三の実施の形態によれば、ダクト11内に配置された少なくとも一枚のプレート60と、複数のフィン15bとが協働することによってダクト11内を流れる切削粉Sが切断されるので、切削粉Sを効率的に吸引することができる。
【0040】
なお、第三の実施の形態では、フィン15bが矩形プレート状である場合を例示したが、プレート60と協働して切削粉Sを切断可能であれば如何なる形状であってもよい。
例えば、図12に示すように外側に向かって広がる扇状のフィン15eが挙げられる。この場合、プレート60とフィン15eとが重なる位置Pが回転に伴って徐々に外側へと移動するため、ハサミと同じような切断効果を得ることができる。ただ、図12の場合、切断された切削粉Sがフィン15eの外側に排出されるため、フィン15eの外周縁とダクト11の内周との間に隙間を形成しておかなければ、フィン15eとダクト11との間で切削粉Sが詰まるおそれがある。
【0041】
これを防止すべく、例えば図13に示すように、主軸7の接線方向に沿ってプレート60eを配置することが考えられる。この場合、プレート60eとフィン15eとが重なる位置P1が回転に伴って徐々に内側へと移動するため、ハサミと同じような切断効果を得るだけでなく、遠心力によって切削粉Sが外側へと飛び散る動作によって、より切断効果を高めることができる。ただ、吸引の流速が比較的遅い内側に切削粉Sが堆積しやすいおそれがある。
【0042】
切削粉Sの堆積を防止するには、例えば図14に示すように、プレート60fの回転方向における後端部61fを前方に向けて湾曲させることが考えられる。この場合、後端部61fの中央部、つまり、比較的流速の速い位置で切削粉Sを切断できるため、内側に切削粉Sが堆積してしまうことを防止できる。なお、プレート60fの後端部61fの湾曲形状を変化させれば、切断位置を任意に調整することも可能である。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。以下の説明においては、上記実施形態と同一部分においては同一符号を付し、その説明を省略する。
例えば、上記実施形態では、連通孔が貫通孔93と吸入孔94とを備えている場合を例示したが、吸入孔94を省略し貫通孔93のみからなる連通孔であってもよいし、貫通孔93の先端部を封止して、吸入孔94から貫通孔93の基端部までが連通した連通孔であってもよい。
また、上記実施形態では、主軸7が鉛直方向のいわゆる縦型の切削装置1であり、ファン部14によって上昇気流が発生される場合を例示したが、いわゆる横型の切削装置など、主軸が鉛直方向でない場合においても、ファン部14によって吸引部13へ向かう空気流が発生されればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 切削装置
2 ベッド
3 コラム
4 主軸頭
5 サドル
6 テーブル
7 主軸
8 工具ホルダ
9 切削工具
10 吸塵装置
11 ダクト
12 配管(流路)
13 吸引部(切削工具用吸引部)
14 ファン部
15 フィン
60 プレート
93 貫通孔(連通孔)
94 吸入孔(連通孔)
S 切削粉
W ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸塵装置に係り、特に切削後の切り粉を吸塵するための吸塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金属等を切削する場合に発生する切削粉を回収すべく、切削工具の軸芯に吸引口を設け、当該吸引口から切削粉を吸引・回収する切削装置が知られている(例えば特許文献1参照)。近年においては、繊維強化樹脂複合材(FRP:Fiber Reinforced Plastics)を切削する場合もあるが、金属と比して切削粉が細かいために、切削工具の周辺に切削粉がまき散らされるという弊害があった。このため、切削工具の周囲に、切削粉が撒き散らされることを防止するカバーを設ける技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−274147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、切削時においては、切削工具のインサートと切削対象であるワークとは接しているものの、カバーとワークとの間には隙間が存在する。この隙間があるため、カバーを設けていたとしても結局微少な切削粉が切削工具周辺に撒き散らされてしまうという問題があった。
このため、本発明の課題は、切削粉が撒き散らされてしまうことを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、
切削装置に装着される吸塵装置において、
下端部が開放され、前記切削装置の主軸に取り付けられた切削工具を囲むダクトと、
前記ダクト内の大気を吸引する吸引部とを備え、
前記ダクト内には、前記主軸に同期して回転し、前記吸引部へ向かう空気流を発生させる複数のフィンを有するファン部が設けられていることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の吸塵装置において、
前記ダクト内には、前記主軸の回転軸側から外周側に向けて延在し、前記ファン部に対向するように配置された少なくとも一枚のプレートが固定されていて、
前記複数のフィンは、前記プレートと協働することによって前記ダクト内を流れる切削粉を切断することを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の吸塵装置において、
前記ダクトから前記吸引部まで連通する流路の断面積は、前記ダクトの開放端部側の流路の断面積以下に設定されていることを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸塵装置において、
前記ダクトの内周面は、前記ファン部に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面を有することを特徴としている。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸塵装置において、
外気が連通する連通孔を有した前記切削工具の当該連通孔に接続され、前記連通孔内の大気を吸引する切削工具用吸引部をさらに備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切削装置の主軸に同期して回転し、吸引部へ向かう空気流を発生させる複数のフィンを有するファン部がダクト内に設けられているので、切削粉をダクト内部に吸い込むことができる。これにより、切削粉がダクト外に撒き散らされてしまうことが防止できる。
また、複数のフィンによって発生した空気流によって、ダクト外から外気を取り込むことができ、ダクト内に熱がこもってしまうことも防止できる。これによって、放熱効果を高めることができる。
【0011】
また、ダクト内に配置された少なくとも一枚のプレートと、複数のフィンとが協働することによってダクト内を流れる切削粉が切断されるので、切削粉を効率的に吸引することができる。
【0012】
また、ダクトから吸引部まで連通する流路の断面積が、ダクトの開放端部側の流路の断面積以下に設定されているので、吸引部まで連通する流路で流速が高まることになり、切削粉を確実に吸引部で吸引することができる。
【0013】
また、ファン部に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面をダクトの内周面が有しているので、ダクト内部に螺旋気流を発生させることができる。この螺旋気流によって切削粉をより効率的に吸引することが可能となる。
【0014】
また、切削工具用吸引部が切削工具の連通孔内の大気を吸引するので、切削工具から切削直後に巻き散ろうとする切削粉を連通孔まで吸い寄せることができる。吸い寄せられた切削粉はダクト内に吸い込まれるので、切削粉がダクト外に撒き散らされてしまうことをより防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一の実施の実施形態に係る切削装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】第一の実施の形態に係る吸塵装置の概略構成を模式的に示す説明図である。
【図3】第一の実施の形態に係るトリム用の切削工具に対して取り付けられた第一の実施の形態に係るファン部を示す斜視図である。
【図4】第一の実施の形態に係る工具ホルダからファン部及び切削工具を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】面切削用の切削工具に対して取り付けられた第一の実施の形態に係るファン部を示す斜視図である。
【図6】第二の実施の形態に係る集塵装置の概略構成を模式的に示す説明図である。
【図7】第三の実施の形態に係る集塵装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
【図8】第三の実施の形態に係るフィンとプレートとの位置関係を示す説明図である。
【図9】トリム用の切削工具に対して取り付けられた第三の実施の形態に係るファン部を示している。
【図10】図9のファン部の変形例を示す斜視図である。
【図11】面切削用の切削工具に対して取り付けられた第三の実施の形態に係るファン部を示す斜視図である。
【図12】第三の実施の形態に係るファン部及びプレートの変形例を示す説明図である。
【図13】第三の実施の形態に係るファン部及びプレートの変形例を示す説明図である。
【図14】第三の実施の形態に係るファン部及びプレートの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
[第一の実施の形態]
図1は本実施形態に係る切削装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように切削装置1は、ベッド2と、該ベッド2の奥部分に立設されたコラム3と、該コラム3の前面に上下方向(Z軸方向)に移動自在に支持された主軸頭4と、前記ベッド2の手前部分に前後方向(Y軸方向)に移動自在に支持されたサドル5と、該サドル5上に左右方向(X軸方向)に移動自在に支持されたテーブル6とを備えている。テーブル6には、例えばFRPやCFRP等の繊維強化樹脂あるいは金属などから形成された被切削物であるワークWが載置されている。
【0018】
主軸頭4内には、主軸7が回転自在に支持され、該主軸7は主軸頭4に内蔵された駆動モータ(不図示)により回転駆動される。主軸7の下端部には、着脱自在の工具ホルダ8が取り付けられている。この工具ホルダ8の下端部には、切削工具9が取り付けられている。切削工具9には、先端面91から基端面92にかけて貫通した貫通孔93が形成されている(図2参照)。また、切削工具9の外周面には貫通孔93に連通する複数の吸入孔94が形成されている。これら貫通孔93と吸入孔94とが本発明に係る連通孔であり、この連通孔によって切削工具9の内部を外気が連通するようになっている。なお、工具ホルダ8及び主軸7にも切削工具9の連通孔に連通する流路77,88が形成されている。
【0019】
この切削装置1には、切削粉を吸塵する吸塵装置10が装着されている。図2は吸塵装置10の概略構成を模式的に示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。この図2に示すように、切削装置1には、主軸頭4の下端部に取り付けられたダクト11と、配管12を介してダクト11に接続された吸引部13と、主軸7に同期して回転するファン部14とが設けられている。
【0020】
ダクト11は、円筒状に形成されていて下端部が開放されており、切削装置1の主軸7、工具ホルダ8及び切削工具9を囲むように主軸頭4に取り付けられている。ダクト11の上部には、当該ダクト11の内部と連通する配管12が取り付けられている。吸引部13が駆動すると、配管12を介してダクト11内の空気が吸引されるため、ダクト11内に吸引部13へ向かう空気流(上昇気流)が発生することとなる。
ここで、ダクト11から吸引部13まで連通する配管12(流路)の断面積は、ダクト11の開放端部側の流路の断面積(図2(a)中、斜線部)以下に設定されている。なお、上記の断面積は、気流に対して直交する平面で切断した場合の断面積である。
また、吸引部13は、主軸7の流路77にも連通していて、流路77,88を介して切削工具9の連通孔(貫通孔93及び吸入孔94)内の大気を吸引するようになっている。つまり、吸引部13が本発明に係る切削工具用吸引部である。なお、本実施形態では、吸引部13が切削工具用吸引部を兼ねる場合を例示して説明したが、吸引部13とは別の切削工具用吸引部を設置してもよい。
【0021】
ファン部14には、主軸7と同期して回転する際、上昇気流を発生させる複数のフィン15が設けられている。図3は、トリム用の切削工具9に対して取り付けられたファン部14を示す斜視図である。図3に示すように、ファン部14は、切削工具9を囲むように下方が開口した椀形状となっている。そしてファン部14の側面には、多数の開口141が形成されている。この多数の開口141を隔てる複数の壁部がフィン15である。そして、ファン部14の下端面142は、切削工具9の先端面91よりも上方に配置されており、これによりトリム用の切削工具9の下端部がファン部14の下端面142から突出するようになっている。また、ファン部14の上部には、当該ファン部14を工具ホルダ8に固定するための複数のネジ穴143が形成されている。
【0022】
図4は、工具ホルダ8からファン部14及び切削工具9を取り外した状態を示す斜視図である。工具ホルダ8にファン部14及び切削工具9を取り付ける際には、工具ホルダ8の下端面と、ファン部14の上端面とを位置合わせし、ファン部14のネジ穴143にネジ144を挿通して、工具ホルダ8の雌ネジ81に螺合することで両者が固定される。固定後、工具ホルダ8に切削工具9を取り付ける。
【0023】
図5は、面切削用の切削工具9Aに対して取り付けられたファン部14Aを示す斜視図である。このファン部14Aは図3に示したファン部14とほぼ同じ構成のため同一部分においては同一の符号を付してその説明を省略する。ファン部14Aの下端面142aは、切削工具9Aの先端面91aとほぼ同じ位置に配置されている。このため、切削工具9Aの先端面91aに取り付けられたインサート92aがファン部14Aの下端面142aから突出するようになっている。
【0024】
上述したように工具ホルダ8に対してファン部14が取り付けられているために、主軸7が回転すると、当該主軸7に同期して工具ホルダ8とともにファン部14と切削工具9とが回転するようになっている。
【0025】
次に、本実施形態の作用について説明する。
切削開始時には、吸引部13が駆動してから主軸7が回転し始める。主軸7の回転に同期して、工具ホルダ8、ファン部14及び切削工具9が高速で回転する。切削時においても吸引部13は駆動しているために、貫通孔93及び吸入孔94からは外気が取り込まれ、切削工具9から切削直後に巻き散ろうとする切削粉Sがダクト11内に吸い寄せられる。
また、ダクト11内には、吸引部13による上昇気流と、ファン部14の回転による上昇気流とが発生しているため、切削粉Sが上昇し配管12から吸引部13に吸い込まれる。
【0026】
以上のように、本実施形態によれば、切削装置1の主軸7に同期して回転し、上昇気流を発生させる複数のフィン15を有するファン部14がダクト11内に設けられているので、切削粉Sをダクト11内部に吸い込むことができる。これにより、切削粉Sがダクト11外に撒き散らされてしまうことが防止できる。
また、複数のフィン15によって発生した上昇気流によって、ダクト11外から外気を取り込むことができ、ダクト11内に熱がこもってしまうことも防止できる。これによって、放熱効果を高めることができる。
【0027】
また、ダクト11から吸引部13まで連通する配管12の断面積が、ダクト11の開放端部側の流路の断面積以下に設定されているので、配管12内で流速が高まることになり、切削粉Sを確実に吸引部13で吸引することができる。
なお、ダクト11から配管12までの流れに淀みが生じてしまうと切削粉Sがダクト11内に堆積しやすくなるために、ダクト11内の流路と、配管12の断面積とを等しくして、流れに淀みが生じないようにすることが好ましい。
【0028】
[第二の実施の形態]
第一の実施の形態では、ダクト11が円筒形状である場合を例示して説明したが、この第二の実施の形態では、ダクト11の内周面がテーパー面を有している場合について説明する。なお、以下の説明において、第一の実施の形態と同一の部分においては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図6は、第二の実施の形態に係る集塵装置10Aの概略構成を模式的に示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。図6に示すように、集塵装置10Aにおけるダクト11aの内周面は、ファン部14に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面18aを有している。また、ダクト11aにおけるテーパー面18aから開放端部にかけては、内径が一定の筒状部19aとなっている。
【0030】
以上のように、第二の実施の形態によれば、ファン部14に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面18aをダクト11aの内周面が有しているので、ダクト11a内部に螺旋気流(図6における点線の矢印参照)を発生させることができる。この螺旋気流によって切削粉Sをより効率的に吸引することが可能となる。
【0031】
[第三の実施の形態]
この第三の実施の形態では、ファン部と協働して切削粉を切断するプレートがダクト内に設けられた集塵装置について説明する。なお、以下の説明において、上記実施の形態と同一の部分においては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図7は、第三の実施の形態に係る集塵装置10Bの概略構成を模式的に示す正面図である。図7に示すように集塵装置10Bのダクト11内には、主軸7の回転軸側から外周側に向けて延在する少なくとも一枚の矩形状のプレート60が固定されている。また、ファン部14Bの複数のフィン15bは、それぞれ主軸7の回転軸側から外周側に向けて延在する矩形プレート状に形成されている。
図8は、フィン15bとプレート60との位置関係を示す説明図である。この図8に示すように、フィン15bは、水平面となす角度θが鋭角となるように傾斜しており、その下端部が、ファン部14Bの回転した際にプレート60の上面を摺擦するようになっている。このような位置関係であるために、ファン部14Bの回転中にフィン15bの下端部とプレート60の後端部との間に介在した切削粉Sは、フィン15bとプレート60との協働によって切断されることになる。なお、フィン15bの下端部と、プレート60の後端部との少なくとも一方は刃状に形成されていることが好ましい。
【0033】
次に、ファン部14Bの具体例について説明する。図9は、トリム用の切削工具9に対して取り付けられたファン部14Bを示している。図9に示すように、ファン部14Bには、工具ホルダ8に固定される固定部141bと、固定部141bの中央から下方に向けて延在し、切削工具9を囲む本体部142bと、本体部142bの下端部から外周側に向けて延在する矩形プレート状に形成された4枚のフィン15bとが設けられている。4枚のフィン15bは、それぞれ90度の角度を空けて配置されている。また、固定部141bには、ファン部14Bを工具ホルダ8に固定するための複数のネジ穴143bが形成されている。そして、本体部142bの下端面144bは、切削工具9の先端面91よりも上方に配置されており、これによりトリム用の切削工具9の下端部がファン部14Bの下端面144bから突出するようになっている。
また、図10はトリム用の切削工具9に対して取り付けられたファン部の変形例を示す斜視図である。このファン部14Cでは、フィン15cが8枚設けられており、各フィン15cは45度の角度を空けて配置されている。
【0034】
また、図11は、面切削用の切削工具9Aに対して取り付けられたファン部14Dを示す斜視図である。この図11に示すファン部14Dにおいても8枚のフィン15dを備えた場合を示している。ファン部14Dの下端面142dは、切削工具9Aの先端面91aとほぼ同じ位置に配置されている。このため、切削工具9Aの先端面91aに取り付けられたインサート92aがファン部14Dの下端面142dから突出するようになっている。
【0035】
なお、フィン15bの枚数は、プレート60の枚数との関係で決定される。以下の表1は、フィン15bとプレート60とがそれぞれ16枚以下である場合の好適な枚数の組み合わせを示している。
【0036】
【表1】
【0037】
切削粉Sを切断するタイミングが複数のフィン15bで重なってしまうと、主軸7に対する負荷が大きくなってしまうため好ましくない。したがって各フィン15bでの切削タイミングを分散することが望ましく、表1で「○」と示された組み合わせであると切削タイミングを分散することができる。この表1からもわかるように、プレート60の枚数は、フィン15bの枚数の素因数の倍数でないことが好ましい。なお、回転バランスを安定させるために、フィン15bの枚数は二枚以上であることが好ましく、二枚以上の場合であっても各フィン15bが等間隔で配置されていることがより好ましい。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
切削開始時には、吸引部13が駆動してから主軸7が回転し始める。主軸7の回転に同期して、工具ホルダ8、ファン部14B及び切削工具9が高速で回転する。切削時においても吸引部13は駆動しているために、貫通孔93及び吸入孔94からは外気が取り込まれ、切削工具9から切削直後に巻き散ろうとする切削粉Sがダクト11内に吸い寄せられる。
また、ダクト11内には、吸引部13による上昇気流と、ファン部14の回転による上昇気流とが発生しているため、切削粉Sが上昇し配管12から吸引部13に吸い込まれる。このとき、ファン部14Bの回転中にフィン15bの下端部とプレート60の後端部との間に介在した切削粉Sは、フィン15bとプレート60との協働によって切断されることになる。
【0039】
以上のように、第三の実施の形態によれば、ダクト11内に配置された少なくとも一枚のプレート60と、複数のフィン15bとが協働することによってダクト11内を流れる切削粉Sが切断されるので、切削粉Sを効率的に吸引することができる。
【0040】
なお、第三の実施の形態では、フィン15bが矩形プレート状である場合を例示したが、プレート60と協働して切削粉Sを切断可能であれば如何なる形状であってもよい。
例えば、図12に示すように外側に向かって広がる扇状のフィン15eが挙げられる。この場合、プレート60とフィン15eとが重なる位置Pが回転に伴って徐々に外側へと移動するため、ハサミと同じような切断効果を得ることができる。ただ、図12の場合、切断された切削粉Sがフィン15eの外側に排出されるため、フィン15eの外周縁とダクト11の内周との間に隙間を形成しておかなければ、フィン15eとダクト11との間で切削粉Sが詰まるおそれがある。
【0041】
これを防止すべく、例えば図13に示すように、主軸7の接線方向に沿ってプレート60eを配置することが考えられる。この場合、プレート60eとフィン15eとが重なる位置P1が回転に伴って徐々に内側へと移動するため、ハサミと同じような切断効果を得るだけでなく、遠心力によって切削粉Sが外側へと飛び散る動作によって、より切断効果を高めることができる。ただ、吸引の流速が比較的遅い内側に切削粉Sが堆積しやすいおそれがある。
【0042】
切削粉Sの堆積を防止するには、例えば図14に示すように、プレート60fの回転方向における後端部61fを前方に向けて湾曲させることが考えられる。この場合、後端部61fの中央部、つまり、比較的流速の速い位置で切削粉Sを切断できるため、内側に切削粉Sが堆積してしまうことを防止できる。なお、プレート60fの後端部61fの湾曲形状を変化させれば、切断位置を任意に調整することも可能である。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。以下の説明においては、上記実施形態と同一部分においては同一符号を付し、その説明を省略する。
例えば、上記実施形態では、連通孔が貫通孔93と吸入孔94とを備えている場合を例示したが、吸入孔94を省略し貫通孔93のみからなる連通孔であってもよいし、貫通孔93の先端部を封止して、吸入孔94から貫通孔93の基端部までが連通した連通孔であってもよい。
また、上記実施形態では、主軸7が鉛直方向のいわゆる縦型の切削装置1であり、ファン部14によって上昇気流が発生される場合を例示したが、いわゆる横型の切削装置など、主軸が鉛直方向でない場合においても、ファン部14によって吸引部13へ向かう空気流が発生されればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 切削装置
2 ベッド
3 コラム
4 主軸頭
5 サドル
6 テーブル
7 主軸
8 工具ホルダ
9 切削工具
10 吸塵装置
11 ダクト
12 配管(流路)
13 吸引部(切削工具用吸引部)
14 ファン部
15 フィン
60 プレート
93 貫通孔(連通孔)
94 吸入孔(連通孔)
S 切削粉
W ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削装置に装着される吸塵装置において、
下端部が開放され、前記切削装置の主軸に取り付けられた切削工具を囲むダクトと、
前記ダクト内の大気を吸引する吸引部とを備え、
前記ダクト内には、前記主軸に同期して回転し、前記吸引部へ向かう空気流を発生させる複数のフィンを有するファン部が設けられていることを特徴とする吸塵装置。
【請求項2】
請求項1記載の吸塵装置において、
前記ダクト内には、前記主軸の回転軸側から外周側に向けて延在し、前記ファン部に対向するように配置された少なくとも一枚のプレートが固定されていて、
前記複数のフィンは、前記プレートと協働することによって前記ダクト内を流れる切削粉を切断することを特徴とする吸塵装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吸塵装置において、
前記ダクトから前記吸引部まで連通する流路の断面積は、前記ダクトの開放端部側の流路の断面積以下に設定されていることを特徴とする吸塵装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸塵装置において、
前記ダクトの内周面は、前記ファン部に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面を有することを特徴とする吸塵装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸塵装置において、
外気が連通する連通孔を有した前記切削工具の当該連通孔に接続され、前記連通孔内の大気を吸引する切削工具用吸引部をさらに備えることを特徴とする吸塵装置。
【請求項1】
切削装置に装着される吸塵装置において、
下端部が開放され、前記切削装置の主軸に取り付けられた切削工具を囲むダクトと、
前記ダクト内の大気を吸引する吸引部とを備え、
前記ダクト内には、前記主軸に同期して回転し、前記吸引部へ向かう空気流を発生させる複数のフィンを有するファン部が設けられていることを特徴とする吸塵装置。
【請求項2】
請求項1記載の吸塵装置において、
前記ダクト内には、前記主軸の回転軸側から外周側に向けて延在し、前記ファン部に対向するように配置された少なくとも一枚のプレートが固定されていて、
前記複数のフィンは、前記プレートと協働することによって前記ダクト内を流れる切削粉を切断することを特徴とする吸塵装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吸塵装置において、
前記ダクトから前記吸引部まで連通する流路の断面積は、前記ダクトの開放端部側の流路の断面積以下に設定されていることを特徴とする吸塵装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸塵装置において、
前記ダクトの内周面は、前記ファン部に対向する部分から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面を有することを特徴とする吸塵装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸塵装置において、
外気が連通する連通孔を有した前記切削工具の当該連通孔に接続され、前記連通孔内の大気を吸引する切削工具用吸引部をさらに備えることを特徴とする吸塵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−91116(P2013−91116A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233078(P2011−233078)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【出願人】(000233066)日立ツール株式会社 (299)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【出願人】(000233066)日立ツール株式会社 (299)
【Fターム(参考)】
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