説明

周波数変換装置及び周波数変換方法

【課題】本発明は、入力されたアナログ信号の周波数を中間周波数に変換する周波数変換装置及び周波数変換方法において、スプリアス等のノイズによる影響を低減することを目的とする。
【解決手段】本願発明の周波数変換装置は、周波数帯域の異なる複数のチャンネルの境界の周波数を有する校正用信号を発生する校正用信号発生部21と、位相がランダムに変動する位相変動信号を発生する位相変動信号発生部22と、校正用信号発生部からの校正用信号に、信号発生部からの位相変動信号を合成する信号合成部23と、信号合成部からの合成信号を、チャンネルの周波数帯に応じた中間周波数信号に周波数変換する周波数変換部12−1〜12−Nと、周波数変換部からの中間周波数信号をサンプリングしてデジタル信号に変換するADC13−1〜13−Nと、異なるADCのデジタル信号の位相差をアベレージングして算出する演算処理部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変換装置及び周波数変換方法に関し、特に位相測定時におけるノイズの影響を低減するための周波数変換装置及び周波数変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広帯域のアナログ信号を周波数変換する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の装置は、広帯域のアナログ信号を周波数帯域の異なる複数のチャンネルに分波し、チャンネルごとに周波数変換を行って中間周波数信号に変換し、中間周波数信号をデジタル信号に変換した後に、各デジタル信号の位相が合うように各チャンネルのデジタル信号を合成する。各デジタル信号の位相を合わせるために、各チャンネルの境界の周波数を有する校正用信号を周波数変換して各チャンネル間の位相差を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−246956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、校正用信号のスプリアス等のノイズによる影響は考慮されていない。このため、校正用信号を用いて測定した各チャンネル間の位相差には、スプリアス等のノイズによる影響を受けている。
【0005】
そこで、本発明は、各チャンネル間の位相差を測定する際におけるスプリアス等のノイズによる影響を低減する周波数変換装置及び周波数変換方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明の周波数変換装置及び周波数変換方法は、位相差を測定するためのアナログ信号に、位相がランダムに変動する位相変動信号を合成することを特徴とする。
【0007】
具体的には、本願発明の周波数変換装置は、位相がランダムに変動する位相変動信号を発生する位相変動信号発生部(22)と、入力されたアナログ信号に、前記位相変動信号発生部からの位相変動信号を合成する信号合成部(23)と、前記信号合成部からの合成信号を、前記入力されたアナログ信号の周波数に応じた中間周波数信号に周波数変換する周波数変換部(12)と、を備える。
【0008】
位相変動信号発生部及び信号合成部を備えるため、入力されたアナログ信号に位相がランダムに変動する位相変動信号を合成した合成信号を用いて周波数変換を行うことができる。周波数変換部が周波数変換後の信号に平均化処理を施すことで、スプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。したがって、本願発明の周波数変換装置は、各チャンネル間の位相差を測定する際におけるスプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。
【0009】
本願発明の周波数変換装置では、前記入力されたアナログ信号又は前記位相変動信号の信号強度を可変する信号強度調整部(24)をさらに備えていてもよい。
スプリアス等のノイズよりも位相変動信号の振幅が大きいときに、スプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。このため、信号強度調整部をさらに備えることで、スプリアス等のノイズが大きい場合であっても、スプリアス等のノイズの影響を低減することができる。
【0010】
具体的には、本願発明の周波数変換装置は、周波数帯域の異なる複数のチャンネルの境界の周波数を有する校正用信号を発生する校正用信号発生部(21)と、位相がランダムに変動する位相変動信号を発生する位相変動信号発生部(22)と、前記校正用信号発生部からの校正用信号に、前記信号発生部からの位相変動信号を合成する信号合成部(23)と、前記信号合成部からの合成信号を、前記チャンネルの周波数帯に応じた中間周波数信号に周波数変換する周波数変換部(12−1〜12−N)と、前記周波数変換部からの中間周波数信号をサンプリングしてデジタル信号に変換するADC(Analog Digital Converter)(13−1〜13−N)と、異なる前記ADCのデジタル信号から算出された各チャンネル間の位相差をアベレージングして算出する演算処理部(14)と、を備える。
【0011】
校正用信号発生部と、位相変動信号発生部と、信号合成部と、周波数変換部と、ADCと、を備えるため、校正用信号に位相変動信号を合成した合成信号を用いて、各チャンネル間のデジタル信号の位相差を測定することができる。演算処理部は、デジタル信号から算出した位相差をアベレージングして算出するため、スプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。したがって、本願発明の周波数変換装置は、各チャンネル間の位相差を測定する際におけるスプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。
【0012】
本願発明の周波数変換装置では、前記校正用信号又は前記位相変動信号の信号強度を可変する信号強度調整部(24)をさらに備えていてもよい。
スプリアス等のノイズよりも位相変動信号の振幅が大きいときに、スプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。このため、信号強度調整部をさらに備えることで、スプリアス等のノイズが大きい場合であっても、スプリアス等のノイズの影響を低減することができる。
【0013】
具体的には、本願発明の周波数変換方法は、入力されたアナログ信号に、位相がランダムに変動する位相変動信号を合成する合成手順と、前記合成手順で合成後の合成信号を、前記入力されたアナログ信号の周波数に応じた中間周波数信号に周波数変換する周波数変換手順と、を順に有する。
【0014】
合成手順を実行するため、入力されたアナログ信号に位相がランダムに変動する位相変動信号を合成した合成信号を用いて周波数変換を行うことができる。周波数変換後の信号に平均化処理を施すことで、スプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。したがって、本願発明の周波数変換方法は、各チャンネル間の位相差を測定する際におけるスプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。
【0015】
本願発明の周波数変換方法では、前記合成手順において、前記入力されたアナログ信号又は前記位相変動信号の信号強度を可変してもよい。
スプリアス等のノイズよりも位相変動信号の振幅が大きいときに、スプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。このため、本発明により、スプリアス等のノイズが大きい場合であっても、スプリアス等のノイズの影響を低減することができる。
【0016】
具体的には、本願発明の周波数変換方法は、周波数帯域の異なる複数のチャンネルの境界の周波数を有する校正用信号を発生すると共に位相がランダムに変動する位相変動信号を発生して前記校正用信号及び前記位相変動信号を合成し、前記合成信号を前記チャンネルの周波数帯に応じた中間周波数信号に周波数変換してデジタル信号に変換し、前記チャンネル間での前記デジタル信号の位相差をアベレージングして算出することで、前記複数のチャンネル間の位相差を測定する位相差測定手順と、入力されたアナログ信号を前記チャンネルの周波数帯に分波し、分波したアナログ信号を前記チャンネルの周波数帯に応じた中間周波数信号に周波数変換してデジタル信号に変換し、前記位相差測定手順で測定した前記複数のチャンネル間の位相差を用いて前記デジタル信号の位相を補正し、位相を補正後の前記デジタル信号を前記チャンネルの周波数帯域に対応させて合成するアナログ信号周波数変換手順と、を順に有する。
【0017】
位相差測定手順を実行するため、校正用信号に位相変動信号を合成した合成信号を用いて、各チャンネルのデジタル信号の位相差を測定することができる。ここで、デジタル信号の位相差をアベレージングして算出するため、スプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。
アナログ信号周波数変換手順を実行するため、デジタル信号の位相を補正することができる。ここで、位相差測定手順で測定したチャンネル間の位相差を用いているため、スプリアス等のノイズによる影響を低減した補正値を用いて、デジタル信号の位相を補正することができる。したがって、本願発明の周波数変換方法は、各チャンネル間の位相差を測定する際におけるスプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。
【0018】
本願発明の周波数変換方法では、前記位相差測定手順において、前記校正用信号又は前記位相変動信号の信号強度を可変してもよい。
スプリアス等のノイズよりも位相変動信号の振幅が大きいときに、スプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。このため、本発明により、スプリアス等のノイズが大きい場合であっても、スプリアス等のノイズの影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、各チャンネル間の位相差を測定する際におけるスプリアス等のノイズによる影響を低減する周波数変換装置及び周波数変換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ノイズが加わっている系の一例を示す。
【図2】実施形態1に係る周波数変換装置の構成例を示す。
【図3】合成信号xの一例を示す。
【図4】実施形態1に係る周波数変換装置の系の一例を示す。
【図5】出力信号yの信号ベクトルを示す。
【図6】C/Bに対する誤差の比較を示す。
【図7】実施形態2に係る周波数変換装置の一例を示す。
【図8】入力されるアナログ信号Xmの一例を示す。
【図9】位相変動信号発生部及び合成部の第1例を示す。
【図10】位相変動信号発生部及び合成部の第2例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0022】
(実施形態1)
図1に、ノイズが加わっている系の一例を示す。アナログ信号xo(t)が入力端子から入力される。チャンネル1からは、出力信号yo(t)が出力される。チャンネル2のアナログ信号xo(t)は、回路51を介して出力信号yo(t)が出力される。xo(t)がAcos(ωt+θ)で表され、回路51での位相のずれΔθがθ2であるとする。このとき、チャンネル2に、周波数成分を含んでいるノイズn(t)=Bcos(ωt+θ)が加わると、出力信号yo(t)及び出力信号yo(t)は、次式で表される。
【0023】
【数1】

となる。
【0024】
出力信号yo(t)及び出力信号yo(t)を周波数分析すると、
【数2】

【0025】
となり、θεが誤差となる。θに起因する誤差θεは、平均化処理を行っても減少しないため、出力信号yo(t)の位相の測定を正しく行うことができない。
【0026】
図2に、実施形態1に係る周波数変換装置の構成例を示す。本実施形態に係る周波数変換装置は、位相変動信号発生部22と、信号合成部23と、周波数変換部12と、信号強度調整部24と、を備え、本実施形態に係る周波数変換方法を実行する。本実施形態に係る周波数変換方法は、合成手順と、周波数変換手順と、を順に有する。
る。
【0027】
合成手順では、位相変動信号発生部22が、位相がランダムに変動する位相変動信号γ(t)を発生する。次に、信号合成部23が、入力されたアナログ信号xo(t)に、位相変動信号発生部22からの位相変動信号γ(t)を合成する。ここで、合成は、加算合成を示している。周波数変換手順では、周波数変換部12が、信号合成部23からの合成信号x(t)を、入力されたアナログ信号xo(t)の周波数に応じたローカル信号Lで周波数変換する。これにより、周波数変換部12は、アナログ信号xo(t)の周波数に応じた中間周波数信号IF(t)に変換する。
【0028】
図3に、合成信号xの一例を示す。合成信号xは、周波数faのアナログ信号xoと、周波数faを含みかつ周波数幅Δfaの範囲で位相がランダムに変動している位相変動信号γが合成されている。
【0029】
図4に、実施形態1に係る周波数変換装置の系の一例を示す。図1に示すアナログ信号xo(t)に代えて合成信号x(t)が入力される。この場合、この合成信号x(t)は、次式で表される。
【数3】

【0030】
ここで、γ(t)の周波数ωにおける位相はθγ(n)とし、全位相領域にランダムに分布するとする。この場合、出力信号y(t)及び出力信号y(t)は、次式で表される。
【数4】

【0031】
出力信号y(t)及び出力信号y(t)を周波数分析すると、
【数5】

となる。
【0032】
図5に、出力信号yの信号ベクトルを示す。平均化処理をN回行うとすると、γ(t)は位相がランダムなため、周波数ωにおけるγ(t)の位相θγ(n)は
【数6】

となる。
【0033】
そのため、平均化処理をN回行うとすると、出力信号y(t)より算出される位相ψは次式で表される。
【数7】

【0034】
出力信号y(t)より算出される位相ψは次式で表される。
【数8】

【0035】
ここで、B<<Cと限定した場合、
【数9】

となる。
【0036】
このため、
【数10】

となる。このように、アベレージングを行うことで、出力信号y(t)の位相ψにおけるノイズn(t)の影響を減少させることができる。
【0037】
図6に、C/Bに対する誤差の比較を示す。横軸はC/Bを示し、縦軸は位相θを算出した際の位相における誤差(rad)を示す。平均化処理の回数は100である。C/Bが10程度であれば、出力信号y(t)の位相ψにおけるノイズn(t)の影響を減少させることができる。
【0038】
そこで、実施形態1に係る周波数変換装置は、入力されたアナログ信号xo(t)の信号強度を可変する信号強度調整部24をさらに備えることが好ましい。これにより、C/Bの値を、10以上にすることができる。したがって、実施形態1に係る周波数変換装置は、入力されたアナログ信号xo(t)の周波数を中間周波数IF(t)に変換する周波数変換装置において、各チャンネル間の位相差を測定する際におけるスプリアス等のノイズn(t)による影響を低減することができる。なお、信号強度調整部24は、位相変動信号γ(t)の信号強度を可変してもよい。
【0039】
(実施形態2)
図7に、実施形態2に係る周波数変換装置の一例を示す。実施形態2に係る周波数変換装置は、分配部11と、周波数変換部12−1〜12−Nと、ADC13−1〜13−Nと、演算処理部14と、記憶部18と、校正用信号発生部21と、位相変動信号発生部22と、信号合成部23と、信号強度調整部24と、を備える。
【0040】
図8に、入力されるアナログ信号Xmの一例を示す。分配部11は、入力されたアナログ信号XmをN個(ただし、Nは2以上の整数。)のチャンネルCH1〜CHNの周波数帯に分波する。例えば、周波数フィルタ11−1がチャンネルCH1の周波数帯を抽出し、周波数フィルタ11−NがチャンネルCHNの周波数帯を抽出する。
【0041】
図7に示す周波数変換部12−1〜12−Nは、チャンネルCH1〜CHNの周波数帯に応じた中間周波数信号IF1〜IFNに周波数変換する。ADC13−1〜13−Nは、中間周波数信号IF1〜IFNをサンプリングしてデジタル信号D1〜DNに変換する。演算処理部14は、ADC13−1〜13−Nからのデジタル信号D1〜DNを、各チャンネルCH1〜CHNの周波数帯域に対応させて合成する。これにより、本実施形態に係る周波数変換装置は、入力されるアナログ信号Xmの周波数変換を行うことができる。
【0042】
校正用信号発生部21は、チャンネルCH1〜CHNの境界の周波数fa2〜faNを有する校正用信号xrを発生する。位相変動信号発生部22は、位相がランダムに変動する位相変動信号γを発生する。信号強度調整部24は、位相変動信号γの信号強度が予め定められた値となるように、位相変動信号γの信号強度を調整する。これにより、図6で説明したように、C/Bの値を10以上の一定値に保つことができる。信号合成部23は、校正用信号発生部21からの校正用信号xrに、位相変動信号発生部22からの位相変動信号γを合成する。これにより、校正用信号xrと位相変動信号γの合成された合成信号Xrを用いて、デジタル信号D1〜DN間の位相差の測定を行う。
【0043】
実施形態2に係る周波数変換装置は、実施形態2に係る周波数変換方法を実行する。実施形態2に係る周波数変換方法は、位相差測定手順と、アナログ信号周波数変換手順と、を順に有する。
【0044】
位相差測定手順では、チャンネルCH1〜CHNの境界の周波数を有する校正用信号xrを発生すると共に位相がランダムに変動する位相変動信号γを発生して校正用信号xr及び位相変動信号γを合成する。例えば、チャンネルCH1及びチャンネルCH2の境界の周波数fa2を有する校正用信号xrを発生すると共に位相がランダムに変動する位相変動信号γを発生して校正用信号xr及び位相変動信号γを合成する。これにより、図3に示す周波数faとして周波数fa2を有する合成信号Xrが、分配部11に入力される。合成信号Xrは周波数fa2を有するため、分配部11は、チャンネルCH1の周波数帯及びチャンネルCH2の周波数帯を抽出して出力する。
【0045】
次に、合成信号XrをチャンネルCH1〜CHNの周波数帯に応じた中間周波数信号IF1〜IFNに周波数変換してデジタル信号D1〜DNに変換し、チャンネルCH1〜CHN間でのデジタル信号D1〜DNの位相差Δφ〜Δφをアベレージングして算出することで、複数のチャンネル間の位相差を測定する。例えば、周波数変換部12−1が合成信号XrをチャンネルCH1の周波数帯に応じた中間周波数信号IF1に周波数変換し、ADC13−1が中間周波数信号IF1をデジタル信号D1に変換する。周波数変換部12−2が合成信号XrをチャンネルCH2の周波数帯に応じた中間周波数信号IF2に周波数変換し、ADC13−2が中間周波数信号IF2をデジタル信号D2に変換する。演算処理部14は、チャンネル間でのデジタル信号D1とデジタル信号D2の位相差Δφを算出する。これにより、実施形態2に係る周波数変換装置は、デジタル信号D1とデジタル信号D2の位相差Δφを補正するための係数を測定することができる。
【0046】
位相差測定手順では、上記手順を繰り返し行い、デジタル信号D1及びデジタル信号D2の位相差のアベレージングを行う。これにより、デジタル信号D1とデジタル信号D2の位相差Δφを測定する際における、デジタル信号D1及びデジタル信号D2に含まれるスプリアス等のノイズによる影響を低減することができる。
【0047】
デジタル信号D2とデジタル信号D3の位相差などの他の各チャンネル間のデジタル信号の位相差Δφ〜Δφについても、同様にして測定することができる。そして、測定した位相差Δφ〜Δφを記憶部18に記憶する。
【0048】
アナログ信号周波数変換手順では、入力されたアナログ信号XmをチャンネルCH1〜CHNの周波数帯に分波し、分波したアナログ信号XmをチャンネルCH1〜CHNの周波数帯に応じた中間周波数信号IF1〜IFNに周波数変換してデジタル信号D1〜DNに変換する。次に、演算処理部14は、記憶部18から位相の補正係数を読み出し、位相差測定手順で測定した複数のチャンネルCH1〜CHNの位相差Δφ〜Δφを用いてデジタル信号D1〜DNの位相差Δφ〜Δφを補正する。次に、演算処理部14は、位相を補正後のデジタル信号D1〜DNをチャンネルCH1〜CHNの周波数帯域に対応させて合成する。
【0049】
実施形態2に係る周波数変換装置は、デジタル信号D1〜DNの位相差Δφ〜Δφの測定に際し、校正用信号xrに位相変動信号γが合成された合成信号Xrを用い、デジタル信号D1〜DNの位相差Δφ〜Δφをそれぞれアベレージングしている。このため、測定されたデジタル信号D1〜DNの位相差Δφ〜Δφへの、スプリアス等のノイズn(t)による影響を低減することができる。
【0050】
なお、信号強度調整部24は、校正用信号xrの信号強度が予め定められた値となるように、校正用信号xrの信号強度を調整してもよい。
【0051】
位相変動信号発生部及び合成部は、例えば、図9に示す構成にしてもよい。図9に示す位相変動信号発生部及び合成部の第1例では、位相変動信号発生部22は、ノイズ発生器31と、BPF(Band−pass filter)32と、を備える。ノイズ発生器31は、例えばPRBS(Pseudo−random bit sequence)又はPN(Pseudo random Noise)発振器である。BPF32は、ノイズ発生器31からの信号から、校正用信号xrの周波数を中心とする周波数幅Δfaの周波数帯域を抽出する。これにより、位相変動信号発生部22は、位相がランダムに変動する位相変動信号γを出力する。
【0052】
周波数幅Δfaは任意であるが、例えば、校正用信号xrの周波数が900MHzであり、校正用信号xrと位相変動信号γの信号強度の差が60dBの場合には、周波数幅Δfaはおよそ1MHzである。
【0053】
位相変動信号発生部及び合成部は、例えば、図10に示す構成にしてもよい。図10に示す位相変動信号発生部及び合成部の第2例では、位相変動信号発生部22は、2つのPN発振器33a及び33bと、信号合成部25a及び信号合成部25bと、加算器34と、を備える。PN発振器33a及びPN発振器33bは、それぞれ、位相がランダムに変動する信号を出力する。信号合成部25a及び信号合成部25bは、それぞれ、互いに位相をπ/2ずらした校正用信号xrを、PN発振器33aの出力信号及びPN発振器33bの出力信号で乗算合成する。加算器34は、信号合成部25a及び信号合成部25bからの信号を加算合成する。これにより、加算器34から、位相変動信号γが出力される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
11:分配部
11−1、11−2、11−N:周波数フィルタ
12−1、12−2、12−N:周波数変換部
13−1、13−2、13−N:ADC
14:演算処理部
18:記憶部
21:校正用信号発生部
22:位相変動信号発生部
23:信号合成部
24:信号強度調整部
25a、25b:信号合成部
31:ノイズ発生器
32:BPF
33a、33b:PN発振器
34:加算器
51:回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相がランダムに変動する位相変動信号を発生する位相変動信号発生部(22)と、
入力されたアナログ信号に、前記位相変動信号発生部からの位相変動信号を合成する信号合成部(23)と、
前記信号合成部からの合成信号を、前記入力されたアナログ信号の周波数に応じた中間周波数信号に周波数変換する周波数変換部(12)と、
を備える周波数変換装置。
【請求項2】
前記入力されたアナログ信号又は前記位相変動信号の信号強度を可変する信号強度調整部(24)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の周波数変換装置。
【請求項3】
周波数帯域の異なる複数のチャンネルの境界の周波数を有する校正用信号を発生する校正用信号発生部(21)と、
位相がランダムに変動する位相変動信号を発生する位相変動信号発生部(22)と、
前記校正用信号発生部からの校正用信号に、前記信号発生部からの位相変動信号を合成する信号合成部(23)と、
前記信号合成部からの合成信号を、前記チャンネルの周波数帯に応じた中間周波数信号に周波数変換する周波数変換部(12−1〜12−N)と、
前記周波数変換部からの中間周波数信号をサンプリングしてデジタル信号に変換するADC(Analog Digital Converter)(13−1〜13−N)と、
異なる前記ADCのデジタル信号から算出された各チャンネル間の位相差をアベレージングして算出する演算処理部(14)と、
を備える周波数変換装置。
【請求項4】
前記校正用信号又は前記位相変動信号の信号強度を可変する信号強度調整部(24)をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の周波数変換装置。
【請求項5】
入力されたアナログ信号に、位相がランダムに変動する位相変動信号を合成する合成手順と、
前記合成手順で合成後の合成信号を、前記入力されたアナログ信号の周波数に応じた中間周波数信号に周波数変換する周波数変換手順と、
を順に有する周波数変換方法。
【請求項6】
前記合成手順において、前記入力されたアナログ信号又は前記位相変動信号の信号強度を可変することを特徴とする請求項5に記載の周波数変換方法。
【請求項7】
周波数帯域の異なる複数のチャンネルの境界の周波数を有する校正用信号を発生すると共に位相がランダムに変動する位相変動信号を発生して前記校正用信号及び前記位相変動信号を合成し、前記合成信号を前記チャンネルの周波数帯に応じた中間周波数信号に周波数変換してデジタル信号に変換し、前記チャンネル間での前記デジタル信号の位相差をアベレージングして算出することで、前記複数のチャンネル間の位相差を測定する位相差測定手順と、
入力されたアナログ信号を前記チャンネルの周波数帯に分波し、分波したアナログ信号を前記チャンネルの周波数帯に応じた中間周波数信号に周波数変換してデジタル信号に変換し、前記位相差測定手順で測定した前記複数のチャンネル間の位相差を用いて前記デジタル信号の位相を補正し、位相を補正後の前記デジタル信号を前記チャンネルの周波数帯域に対応させて合成するアナログ信号周波数変換手順と、
を順に有する周波数変換方法。
【請求項8】
前記位相差測定手順において、前記校正用信号又は前記位相変動信号の信号強度を可変することを特徴とする請求項7に記載の周波数変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−211393(P2011−211393A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75686(P2010−75686)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)