味覚とエネルギーによる非可食性物質の特定方法
【課題】非可食性物質の特性を簡便に特定する方法を提供する。
【解決手段】非可食性物質を味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定する。非可食性物質として被検者から得た血液などの生体材料を評価し、予め得た疾患を有する生体材料の味覚評価データおよびエネルギーデータとの相同から、被検者の疾患を診断することもできる。
【解決手段】非可食性物質を味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定する。非可食性物質として被検者から得た血液などの生体材料を評価し、予め得た疾患を有する生体材料の味覚評価データおよびエネルギーデータとの相同から、被検者の疾患を診断することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿、河川水、観葉植物などの非可食性物質を既存の味覚センシング装置やカロリー測定器で評価したデータを指標として特定し、または前記指標に基づいて前記非可食性物質を類似するグループに区分し、前記非可食性物質を特定して評価することを特徴とする、非可食性物質の特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、化学物質の特定には、化学構造式、融点、沸点、溶解度、比旋光度などが測定され、河川水などの天然物は、その特性に応じて一般細菌数、pH値、含有金属種、特定化学成分の含有量などが測定されてきた。また、医薬品は、主成分の化学構造式や薬効などで特定される。更に、尿や血液などが疾患との関係で評価される場合には、疾患に由来する成分、例えば蛋白質や糖の有無や含有量が評価されることが多い。これらは、特定の含有成分の結果に基づいてその物質の特性が評価される一例である。このような分析は、公知の化学分析、発光分光分析、質量分析、原子吸光分析、血液検査、尿検査によって行われている。
【0003】
一方、経口医薬品、食品や飲料はその性質上味が重要視される物質である。経口医薬品は、服用に際して矯味が重要な要素となり、また酒類などの嗜好品では、吟醸酒、純米酒、本醸造酒などの製造方法による区分の他に、甘口か辛口かなど味覚の相違に基づいて区分される。味覚は、健康状態や心理的要素などによって影響を受け易いため、これを客観的に評価できる味覚センシング装置が開発されている。例えば、特定構造の脂質膜を味覚センサーに使用し、サンプルと同一または類似のアジを呈する基準液に前記味覚センサーを浸漬して前記基準液を測定し、ついで前記味覚センサーでサンプルを測定し、前記基準液の測定値と前記サンプルの測定値との差からアジを検出するもの(特許文献1、特許文献2)や、類似する複数のサンプルを複数の味覚センサーで評価し、使用した味覚センサーの数に応じた山部を有するレーダーチャートを入手し、サンプルの味の違いを最もよく表す主成分に着目して分析を行うものなどがある(特許文献3)。
【0004】
一方、近年の健康志向によって、食品のエネルギーが評価される場合も多い。食品のエネルギーを非破壊的に測定する装置としては、近赤外領域の波長に対する吸光度を測定し、この測定値に基づいて被検体のエネルギーを測定する方法であって、予め、エネルギー既知のサンプル物体に近赤外線を照射して反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により回帰式を算出しておき、被検対象の物体の近赤外線の吸光度を測定し、これらの吸光度と上記回帰式とから物体のエネルギーを算出する物体のカロリー測定方法がある(特許文献4)。食品のエネルギーに帰属する近赤外線の波長域を見出し、その波長域を用いてエネルギーを測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2578370号
【特許文献2】特許3037971号
【特許文献3】特許3390194号
【特許文献4】特許第4104075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、物質の特定方法や評価方法としては、その物質に由来する成分を分析する方法が採用されてきたが、含まれる複数成分をそれぞれ化学的に分析する場合には測定に時間と手間とがかかる。一方、例えば基準品に対する相違など2者間の相違のみを検出したい場合があり、これにより簡便に基準外品を検出することができる。これを品質管理や工程管理に応用すれば2者間の変動情報を検出し、このような変動情報が検出された場合にのみ各成分の詳細な測定を行えば、成分の化学分析を行うことなく、効率的に品質したり、工程を管理することができる。
【0007】
また、例えば、河川の源流、中流、下流の河川水を区分できる新たな指標があれば、予めその指標と河川水とを関連づけ、未知の河川水を同様の指標で評価することで、それがいずれの河川のいずれから採取した水であるかを容易に判断することができる。また、温泉などの天然物をその特性で区分する場合に、温泉の特性を評価できる新たな指標があれば、既存の温泉水を前記指標に基づく新たなグループに分けることができる。更に、未知の温泉について同様に前記指標を評価すれば、その温泉がいずれの温泉グループに属するかを迅速に判断することができる。
【0008】
このような新たな指標によって物質間の変動情報を検出する必要性は、尿や血液などの生体材料を被検物とする場合にもある。例えば、ある動物の糞尿を経時的に評価し、飼育環境の相違を迅速に検出しおよび評価することもできる。また、生体材料に基づいて疾患と健常者とを区別しうる新たな指標があれば、生体材料を前記指標で評価し、特定疾患を検出することができる。
【0009】
このような2者間の相違を検出し、または類似群に区分することが要求される物質としては、上記した糞尿や血液などの生体材料、河川や温泉などの天然物、タバコや大麻などの植物、毒物、化粧水や歯磨きなどの化学製品、その他の非可食性物質がある。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、尿、河川水、化粧水などの非可食性物質を特定する新たな指標を使用した物質特定方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記指標に基づいて非可食性物質を類似する特性に区分して評価する非可食性物質の評価方法を提供することを目的とする。
【0011】
更に、非可食性物質における前記指標の変動を用いて非可食性物質の品質や工程を管理する方法や診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、糞尿や血液などの生体材料、河川や温泉などの天然物、タバコや大麻などの植物、毒物、化粧水や歯磨きなどの化学製品、その他の非可食性物質の特定や分類方法を詳細に検討した結果、類似する非可食性物質間の相違を表出しうる新たな指標があれば、含有成分によらず物質間の相違を検出できること、このような指標として食品の味覚を評価する味覚センシング装置による味覚評価データを使用しうること、更に、味覚評価データに加えてエネルギーデータを併用することで、より精度高く非可食性物質を特定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明は、非可食性物質を味覚センシング装置で評価し、得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、非可食性物質の特定方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、非可食性物質を味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、前記非可食性物質の特定方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置で評価し、得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質を評価することを特徴とする、非可食性物質の評価方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、得られた味覚評価データおよびエネルギーデータを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質の特性を評価することを特徴とする、前記非可食性物質の評価方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、非可食性物質を味覚センシング装置から得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定し、前記味覚評価データの変動を評価することで前記非可食性物質の品質および工程を管理することを特徴とする、非可食性物質の品質管理および工程管理方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、非可食性物質を味覚センシング装置およびカロリー測定器から得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定し、前記前記味覚評価データおよびエネルギーデータの変動を評価することで前記非可食性物質の品質を管理することを特徴とする、前記非可食性物質の品質管理方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置で評価して得られた味覚評価データを指標として前記生体材料を特定し、疾患を有する生体材料の味覚評価データとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、診断方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置およびカロリー測定器とで評価して得られた味覚評価データおよびエネルギーデータを指標として前記生体材料を特定し、疾患を有する生体材料の味覚評価データおよびエネルギーデータとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、前記診断方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明は上記いずれかの方法に使用する、味覚センシング装置とカロリー測定器とを提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来の味覚センシング装置によって取得した味覚評価データで非可食性物質を特定することができ、かつ前記味覚評価データの相違に基づいて非可食性物質間の相違を評価することができるため、新たな装置を構築する必要がなく、簡便に非可食性物質の特定ならびに評価を行うことができる。
【0023】
本発明によれば、味覚評価データを経時的に評価することで非可食性物質の変動情報を入手することができ、簡便に品質管理や工程管理を行うことができる。
本発明によれば、非可食性物質が、非検者から得た尿、血液、唾液などの生体材料である場合には、特定疾患と健常者との相違を上記指標によって区別することで、被検者の疾患との関連性を評価することができる。
【0024】
前記味覚評価データに加えて、カロリー測定器によって得られたエネルギーデータを併用することでより高い精度で非可食性物質を特定することができる。
本発明によれば、従来の味覚センシング装置やカロリー測定器の新たな用途を提供することができる。
【0025】
本発明によれば、既存の装置を使用して、河川水、海水、降水、動植物などの自然科学の分野、尿、血液などの医学医療分野、麻薬などの毒物薬物の分野における非可食性物質の特定やグループ分けなどに応用することができ、環境保全やその調査などに有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】味覚センサーを使用して味覚評価データを取得する方法を説明する図である。
【図2】味覚センサーを使用して先味と後味の味覚評価データを取得する方法を説明する図である。
【図3】実施例1におけるサンプルを採取した場所を説明する図である。
【図4】実施例1における先味の全味覚センサーによる味覚評価データである。
【図5】実施例1において、先味の13chと22chとによる二次元分散図である。
【図6】実施例1において、先味の22chと40chとによる二次元分散図である。
【図7】実施例1において、先味の13chと40chとによる二次元分散図である。
【図8】実施例1において、後味の13chと41chとによる二次元分散図である。
【図9】実施例2における先味の全味覚センサーによる味覚評価データである。
【図10】実施例2において、先味の22chと40chとによる二次元分散図である。
【図11】実施例3における先味の全味覚センサーによる味覚評価データである。
【図12】実施例3において、先味の22chと40chとによる二次元分散図である。
【図13】実施例4における先味の全味覚センサーによる味覚評価データである。
【図14】実施例4において、尿糖、尿蛋白の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第一は、非可食性物質を味覚センシング装置で評価し、得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、非可食性物質の特定方法である。また、本発明の第二は、類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置で評価し、得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質を評価することを特徴とする、非可食性物質の評価方法である。前記味覚評価データに加えて、カロリー測定器で得たエネルギーデータを併用することもできる。
【0028】
従来の味覚センシング装置は、ショ糖(甘味)、塩化ナトリウム(塩味)、塩酸(酸味)、塩酸キニーネ(苦味)、L−グルタミン酸(旨味)などに反応する脂質膜を味覚センサとして、前記脂質膜と呈味物質との応答を膜電位や膜抵抗で評価するものである。ある食品を甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の5種類の味覚センサで評価すれば、その食品について5次元の味覚情報が得られる事は公知である。一方、非可食性物質であっても食品と同様に味覚センシング装置で味覚評価データを入手することができ、味覚が食品ごとに異なるように非可食性物質ごとに異なる味覚評価データを入手することができる。本発明は、食品に限定して使用された味覚センシング装置による味覚評価データを非可食性物質を特定する新たな指標として使用することを特徴とするものである。味覚センサーの数に応じた多次元の味覚評価データを使用し、その同一性を判断することで非可食性物質を特定することができる。また、味覚評価データの類似性から、非可食性物質を類似するグループに区分することができる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
(1)非可食性物質
本発明で物質を特定しうる非可食性物質としては、味覚センシング装置で味覚評価データを採取できるものであれば、特に制限はない。たとえば、味覚センシング装置が、生体の舌の表面にある脂質二重膜が固有の膜電位が種々の甘味、塩味などの呈味物質との化学反応や吸着反応により変化する原理を応用したものである場合には、非可食性物質としては、食品と同様に前記脂質二重膜と反応して呈味情報を提供しうるものを広く対象とすることができる。このような脂質二重膜は、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、カルボキシル基、炭化水素基から構成され、膜電位や膜抵抗を発生するものであるため、非可食性物質はこのような測定が可能な液状物質に調製しうるものとなる。
【0030】
例えば、雨水、融雪水、河川水、海水、温泉水などの天然水、畑地、牧草地、山林などの土壌、尿、便、血液、唾液などの生体材料、動物飼料、肥料、化粧水などの製品、大麻やタバコなどの植物、燃焼灰その他を対象とすることができる。非可食性物質が固形物である場合には、適当な溶媒によって調製した溶液を被検液として使用し、味覚評価データを取得して非可食性物質の特定を行うことができる。したがって、非可食性物質が砂などの固形物を含む土壌である場合には、土壌を水などで溶解し、予め固形物を除去した溶液を対象物とすればよい。木材など、それ自体は水に溶解しないものであってもこれを粉末に加工し、得られた木材粉末を水その他の溶液で抽出して溶液を調製できれば、非可食性物質として本発明の特定方法の対象とすることができる。
【0031】
なお、本発明では、非可食性物質を対象とするが、食品などの可食性物質についても同様に物質特定に応用することができる。この際、味覚評価データを物質特定の新たな指標として使用する点で、非可食性物質を対象とする場合と同質だからである。
【0032】
(2)味覚センシング装置
本発明は、味覚センシング装置によって得られる味覚評価データを使用する。使用する味覚センシング装置に限定はないが、センサーが人工脂質膜型の電極であり膜電位を測定するものが好適である。本発明では、市販の味覚センシング装置を使用することができ、例えば、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製の味認識装置などが好適である。なお、本発明は、非可食性物質を測定対象とし、味覚自体を問題とするものではないが、便宜上、味覚センシング装置で得られる測定データを「味覚評価データ」と称する。
【0033】
(i)非可食性物質の特定
以下、味認識装置「TS−5000Z」を味覚センシング装置として説明する。
味覚センシング装置は、食品に含まれる甘味、塩味、酸味、苦味、旨味などを評価する味覚センサーを有する。各味覚センサーは呈味物質に反応する脂質膜が装着された電極であり、前記脂質膜の呈味物質に対する膜電位や膜抵抗を測定することで呈味情報を取得することができる。味覚センシング装置では、味覚センサーの数に応じた味覚評価データを入手できるため、例えばn種類の味覚センサーを使用すればn次元の味覚評価データによって物質を特定することができる。
【0034】
このような味覚センサーとしては、カルシウム系の苦味に応答する塩基性苦味センサー、雑味や苦味渋みに応答する苦味雑味センサー、雑味渋味に応答する渋味刺激センサー、旨味に応答する旨味センサー、塩味に応答する塩味センサー、酸味に応答する酸味センサー、甘味に応答する甘味センサーなどがある。
【0035】
味覚評価データは、以下の方法で取得することができる。たとえば塩味センサーを使用して塩味に関する味覚評価データを取得するには、図1に示すように塩味センサー(1)と参照電極(3)とを基準液(11)に浸漬し基準膜電位(Vr)を測定する。ついで、非可食性物質のサンプル液(21)に塩味センサー(1)と参照電極(3)とを浸漬して膜電位(Vs)を測定する。VsとVrとを差を塩味の味覚評価データとして取得することができる。旨味や酸味などの別の味覚センサーによる情報を取得するには、この操作を各味覚センサーごとに行えばよい。
【0036】
一方、味覚センシング装置が、食品を口に含んだ瞬間の味(先味)と、食品を飲み込んだ後に残る持続性の味(後味)の2種類を評価できる場合には、非可食性物質についても食品と同様に味覚評価データを取得し、物質特定情報として使用することができる。非可食性物質は味覚と無関係であるが、データが再現性ある場合には、その物質を特性する指標として使用することができる。
【0037】
このような先味と後味の味覚評価データを取得するには、図2に示すように、(a)塩味センサー(1)と参照電極(3)とを基準液(11)に浸漬し基準膜電位(Vr)を測定し、ついで、(b)非可食性物質のサンプル液(21)に塩味センサー(1)と参照電極(3)とを浸漬して膜電位(Vs)を測定する。VsとVrとを差を先味の味覚評価データとして取得する。次いで、(c)前記センサー(1)と参照電極(3)と基準液で洗浄し、再度、(d)基準液(11)の中で基準膜電位(Vr')を測定する。Vr'とVrとを差を後味の味覚評価データとして取得することができる。(e)基準膜電位(Vr')を測定した後は、アルコール溶液(31)でセンサー(1)と参照電極(3)とを洗浄し、次のサンプル液を測定する。別の味覚センサーによる情報を取得するには、この操作を各味覚センサーごとに行えばよい。なお、参照電極、味覚センサー、基準液は、その味覚センシング装置で特定するものを使用することができる。一般には、基準液として30mMのKClと0.3mMの酒石酸とを含む無味の溶液が使用され、これは人の唾液に相当するものとして使用されている。しかしながら、本発明では本来味覚を評価するものではないため、上記基準液に限定されず、非可食性物質の特性に適する溶液を調製し、使用することもできる。
【0038】
本発明では、味覚センシング装置の味センサーの出力を呈味情報として使用するものでなく、物質を特定する指標として利用するものである。この味覚評価データは、使用する味覚センサーの数に応じて多次元で取得でき、予め取得した非可食性物質の味覚評価データとの同一性を判断することで、未知の非可食性物質を特定することができる。
【0039】
(ii)非可食性物質間の相違の検出
一方、測定対象物がビールとワインの場合には各味覚センサーの出力が大きく異なるが、ビールどうしであれば各味覚センサーの出力は類似する。ビールどうしの相違を表出しやすい味覚センサーを使用することで、全ての味覚センサーを使用することなく類似するビール間の相違を検出することができる。このことは非可食性物質を測定する場合でも同様である。類似する非可食性物質について複数の味覚評価データを取得し、非可食性物質の相違を表出しやすい味覚センサーのデータを用いることで、より簡便に物質を特定することができる。なお、このような類似する非可食性物質間の相違を表示しうる味覚センサーを選択するには、予め類似する非可食性物質について味覚評価データを取得し、非可食性物質間の相違が表出されている味覚センサーを選択すればよい。
【0040】
味覚センサーの選択方法は任意であって、特に制限されるものではない。例えば、各味覚センサーにおいて、最大出力と最小出力とを検出し、その差(出力幅)が所定値以下のものを除外する方法や、前記出力幅の大きなものから2種以上の味覚センサーを選択する方法がある。また、各味覚センサーについて複数回の測定を行い、統計学的に処理して味覚センサーを特定してもよい。例えば、統計学的に類似群の相違を検出できる変数を導入し、前記変数の大きなもの、または小さなものから順に2種以上を選択する方法や、前記変数の基準値を満たさないものを除外する方法がある。更に、前記変数の基準値よりも低いセンサーや前記出力幅の基準値をしたまわるものを除外する方法がある。変数や出力幅の基準値を満たすものが多数残された場合には、更に出力幅の大きなものから順に2種以上を選択し、または前記変数の大きなもの、または小さなものから順に2種以上を選択する方法などがある。味覚センシング装置がこのような統計処理機能を有している場合には、この機能によって味覚センサーを特定することができる。なお、味覚センシング装置は、本来食品の味覚を客観的に検出するものであるため、上記統計処理機能がある非可食性物質の特定に不適当である場合がある。このような場合には新たな方法で統計処理を行い、味覚センサーを選択することができる。
【0041】
本発明によれば、味覚評価データが異なる場合は、非可食性物質が同一でないと推定することができる。この同一性の判断には、特に類似する非可食性物質間の相違を表出しやすい味覚センサーによる味覚評価データを効果的に使用することができる。
【0042】
(iii)非可食性物質のグループ分け
本発明では、非可食性物質を味覚評価データを指標として特定することができ、この味覚評価データに基づいて非可食性物質をグループ分けすることができる。すなわち、新たな指標による新たなグループ分けを提供するものである。一方、味覚評価データという新たな指標によるグループ分けと従来のグループ分けとが同一または近似する場合には、未知の非可食性物質について味覚評価データを取得することで、その非可食性物質がいずれのグループに属するかを簡便に評価することができる。
【0043】
このようなグループ分けは、非可食性物質を測定した全ての味覚評価データを基準に行ってもよいが、非可食性物質どうしの相違を表出しやすい特定の味覚センサーのデータから2次元散布図などを作成し、データの分散を視覚的に判断してグループ分けすることもできる。このような味覚センサーは、上記(ii)非可食性物質間の相違の検出の項で記載した方法で選択しうる。
【0044】
(3)カロリー測定器
本発明では、非可食性物質の味覚評価データに加えて、非可食性物質のエネルギーデータを併用することで、より正確に非可食性物質を特定することができる。
【0045】
このようなエネルギーデータを提供しうるカロリー測定器としては、市販のカロリー測定器を使用することができ、例えばジョイ・ワールド・パシフィック社製の商品名カロリーアンサーなどを好適に使用することができる。このカロリー測定器は、食品に近赤外線領域の光を照射し、音響光学フィルタで分光し、照射した光の戻りを吸光度として捉え、特定波長に所定の係数を乗じて食品のエネルギーを算出する方法である。非破壊的にエネルギーを算出しうる点で優れる。しかしながら、カロリー測定器としては、他の方法でエネルギーを算出するものであってもよく、例えば、食品に含まれる蛋白質、脂質、糖質を分析し、これらの含有量にそれぞれの単位あたりの熱量を乗じて食品のエネルギーを測定する方法であってもよい。
【0046】
また、カロリー測定器は食品のエネルギーを測定することを前提に調整されるため、食品の水分含有量や食品形状に応じた各種のモードを設定できる場合がある。本発明では、いずれのモードでエネルギーを測定するものであってもよい。類似する非可食性物質を測定する場合には、同じ測定器を使用し同じ測定モードでエネルギーを測定することで、類似する非可食性物質どうしの区別する指標とすることができるからである。また、カロリー測定器によっては、蛋白含有量や炭水化物含有量、脂質含有量が算出できるものがある。このような装置を使用する場合には、これらの数値も非可食性物質を特定する指標として使用することができる。
【0047】
なお、異なる原理のカロリー測定器で測定すると非可食性物質のエネルギー測定値が相違する場合がある。しかしながら、本発明はある測定器によるデータを非可食性物質を特定する指標とするものであって、正確なエネルギーを要求するものではない。したがって、測定データに再現性がある限り、いずれのサンプルも同じ装置で測定することを条件にいずれの測定器も使用することができる。
【0048】
(4)非可食性物質の品質管理方法
本発明の第三は、非可食性物質を味覚センシング装置から得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定し、前記味覚評価データの変動を評価することで前記非可食性物質の品質を管理することを特徴とする、非可食性物質の品質管理方法である。
【0049】
前記したように、本発明では、非可食性物質を味覚センシング装置で評価して得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定し、および非可食性物質をカロリー測定器で評価して得られたエネルギーデータを併用して前記非可食性物質を特定することができる。
【0050】
前記指標は、非可食性物質を構成する成分に基づいて特定するものでない点で、非可食性物質を相対的に特定するものである。このことは、上記指標の変動を検出することで、非可食性物質どうしの差を検出しうることを示す。例えば、化粧水の製造ラインにおいてロット毎の変動を評価する場合には、予め化粧水について味覚評価データを取得し、その化粧水の特徴を表出する味覚センサーを選択し、その味覚センサーの数値と各ロットの化粧水との味覚評価データの同一性を評価し、同一でない製品を簡便に検出することができる。これにより非可食性物質に含まれる複数の含有成分を個別に測定することなく、簡便に規定外品を検出することができる。味覚評価データに加えてエネルギーデータを併用することで、更に精度高く品質を管理することができる。なお、本発明の品質管理方法によって製造ラインを管理できるため、上記方法は、工程管理方法ということもできる。
【0051】
(5)診断方法
本発明の第四は、被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置で評価して得られた味覚評価データを指標として前記生体材料を特定し、疾患を有する生体材料の味覚評価データとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、診断方法である。更に、生体材料をカロリー測定器で評価して得られたエネルギーデータを指標として併用することもできる。
【0052】
予め、疾患を有する生体材料について、その疾患に特徴的な味覚評価データが取得できる場合には、未知の生体材料の味覚評価データとの異同から、その生体材料の疾患を予測することができる。
【0053】
(6)味覚センシング装置およびカロリー測定器の新たな用途
本発明は、従来公知の味覚センシング装置およびカロリー測定器を使用し、非可食性物質を測定して得られた測定結果を、前記非可食性物質を特定する新たな指標とものである。このことは、食品の味覚を測定する味覚センシング装置やカロリー測定器の用途を拡大したものといえる。更に、本発明では、非可食性物質の測定に際して同じ装置を使用することを条件として、従来公知のいずれの味覚センシング装置やカロリー測定器を使用することができる。類似する非可食性物質間の相違を検出することで品質管理や疾患の診断などを行うことができるからである。
【0054】
本発明において好適に使用できる味覚センシング装置は、呈味物質に反応する脂質膜が装着された電極を味覚センサーとし、前記脂質膜の呈味物質に対する膜電位や膜抵抗を測定して呈味情報を提供できる装置であることが好ましい。味覚センサーの数に応じた味覚評価データを入手できるため、多次元の味覚評価データを取得できるからである。この際、基準液と被検液との膜電位の差を呈味情報としうるものがより好適である。非可食性物質の種類に応じて基準液を選択し、より物質特定に好適な条件を選択できるからである。
【0055】
また、カロリー測定器としては、非可食性物質に近赤外線領域の光を照射し、音響光学フィルタで分光し、照射した光の戻りを吸光度として捉え、特定波長に所定の係数を乗じて食品のエネルギーとして算出しうる装置が好適である。非破壊的に測定することができるからである。
【0056】
本発明によれば、新たな指標によって非可食性物質を特定でき、例えば河川水の場合は、降水に伴う大気中の物質や河川水に溶解した物質などを総合的に味覚評価データとして検出できるため、その推移を評価すること環境の変動を検出することができる。このように、本発明によれば、上記装置は環境保全やその調査への用途に拡大できる。
【0057】
更に、非可食性物質としてタバコや大麻などの有害物質や有毒物の特定に加え、尿や血液などから疾患を診断することができ、医学医療の分野へも用途が拡大できる。
【実施例】
【0058】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
測定方法および測定装置
(i)味覚評価データ
味覚評価データは、市販の味覚センシング装置(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製、商品名「TS−5000Z」)にて測定した。
【0059】
非可食性物質が液体である場合は、ろ紙(ADVANTEC No.5A)でろ過し、測定試料とした。固体である場合は、成分を蒸留水に溶解して測定試料とした。濃度は、非可食性物質に応じて適宜選択した。
【0060】
基準液:0.3mMの酒石酸を含有する30mMの塩化カリウム水溶液を使用した。
味覚センサーは前記装置に配備される下記のものを使用し、測定する非可食性物質に応じて適宜選択した。味覚センサー:Bch(AAE)、40ch(CTO)、41ch(CAO)、16ch(COO)、22ch(AE1)、3ch(ACO)、13ch(ANO)を使用した。
【0061】
測定方法:図2に示すように、(a)上記基準液中で味覚センサーの基準電位(Vr)を測定した。ついで、(b)測定試料溶液中で上記味覚センサーの電位(Vs)を測定した。ついで、(c)この味覚センサーを基準液で洗浄し、(d)再度基準液中で基準電位(Vr')を測定した。その後、(e)アルコール溶液で上記センサーを洗浄した。上記工程を4回繰り返した。これを各味覚センサーごとに測定した。Vs−Vrを先味、Vr'−Vrを後味として味覚評価データとした。
【0062】
データ解析:各味覚センサーの基準電位と被検液の電位(Vs)の4回のデータを使用して平均値、標準偏差および誤差率を算出した。
類似する非可食性物質の特徴を表出しやすい味覚センサーを選択するために、以下の選別を行った。
【0063】
(a) 各味覚センサーについて、最小出力と最大出力との差で示される出力幅が5mV以下のものは非可食性物質の味覚評価データの識別が有意でないと判断し、不使用とした。
【0064】
(b)「誤差率」の概念を導入し、誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意でないと判断し、不使用とした。
なお、誤差率(m2)とは、ある味覚センサーによって1検体をm回測定した際の平均値(Av1)±標準偏差(SD1)を算出し、同様にして類似する非可食性物品をn検体測定した場合のn個の平均値(Av1、Av2、...、Avn)を母集団としてその標準偏差(S2)を求め、n検体の前記標準偏差(SD1、SD2、...、SDn)から下記式によって測定誤差の平均(g)を算出し、下記式に示すように全検体の標準偏差(S2)に対する測定誤差の平均(g)を百分率で示したものである。誤差率が20%であれば、検体は最大5グループに区分され、誤差率が50%であれば、検体は最大2グループに区分されうる。
【0065】
【数1】
【0066】
【数2】
【0067】
(ii)エネルギーデータ
エネルギーデータは、市販のカロリー測定器(株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック製、商品名「カロリーアンサー CA−HN02」)にて測定した。測定は、非可食性物質が液体である場合にはアルコールモードで、固体の場合はヘルシーモードで測定した。
【0068】
(iii)ICP−MS
ICP−MSは、ヒューレッドパッカード社製、型式「HP4500Series」で測定した。
【0069】
味覚評価データの採取の際に調製した測定試料50mlに対して2.5mlの硝酸を加えて熱した後、濾紙(ADVANTEC No.5A)でろ過して測定試料とした。分析項目は、Cr,Ni,Cd,As,Pb,Mn,CuおよびZnとした。
【0070】
(iv)原子吸光光度計
原子吸光度は、バリアン社製、型式「SpectrAA220」で測定した。なお、試料調整は、ICP−MSの測定と同様に行った。分析項目は、Ca,Fe,KおよびMgとした。
【0071】
(実施例1)
2008年12月15日に、図3に示す荒川の源流から河口にかけて5箇所(荒川源流、荒川熊谷、荒川戸田、荒川木場、台場)で河川水を、東京大学構内(文京区)ならびに埼玉県秩父市で2種の雨水を採取した。なお、サンプル記号は、A−1:荒川源流、A−2:荒川熊谷、A−3:荒川戸田、A−4:荒川木場、A−5:台場、A−6:東京大学構内雨水、A−7:埼玉県秩父市雨水である。
【0072】
(1)味覚評価データ
各サンプルは、採取試料を濾紙(ADVANTEC No.5A)でろ過した後に測定試料として使用した。味覚センサーとしてBch(AAE)、40ch(CTO)、41ch(CAO)、16ch(COO)、22ch(AE1)、3ch(ACO)、13ch(ANO)の7種を使用した。
【0073】
上記7サンプルについて先味および後味からなる味覚評価データを取得した。荒川源流水の4回の各味覚センサーによる先味と後味の味覚評価データおよびその平均値と標準偏差とを表1に示す。ついで、他の7種のサンプルについても荒川源流水と同様に操作し、各味覚センサーにおける4回測定の平均値(Av1、...、Av7)とその標準偏差(SD1、・・・、SD7)とを算出した。表2にその結果を示す。
【0074】
更に、表2において、平均値(Av1、...、Av7)とその標準偏差(SD1、・・・、SD7)とから測定誤差の平均(g)、平均値(Av1、Av2、...、Av7)を母集団とするその標準偏差(S2)、誤差率(m2)とを算出した。また、出力最大値、最小値および出力幅を算出した。これらの結果も表2に示す。また、先味の全味覚センサーによる味覚評価データを図4に示す。
【0075】
一方、サンプル間の相違を検出しやすい味覚センサーを選択するため、先味および後味のデータにおいて、それぞれ出力幅が5mV以下のものおよび誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意図でないと判断し、不使用とした。ついで、出力幅の大きなものから順に選択した。この結果、先味では、13ch、22ch、40chの味覚センサーを選択した。先味の13chと22chとの二次元分散図、22chと40chとの二次元分散図、13chと40chとの二次元分散図を、それぞれ図5、図6、図7に示す。一方、後味では上記条件により13chのみが選択されたが、二次元分散図を作成するため、ついで出力幅の大きい41chを便宜的に選択した。後味の13chと41chとの二次元分散図を図8に示す。
【0076】
(2)エネルギーデータ
エネルギーデータは、株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック製、商品名「カロリーアンサー CA−HN02」)を使用し、アルコールモードで測定した。結果を表3に示す。
【0077】
(3)原子分析
ICP−MSによる分析を表4に、原子吸光光度計によるデータを表5に示す。
(4)結果
(i)河川水や雨水などの天然水は、味覚センシング装置によって味覚評価データを取得することができた。使用した味覚センサーの出力は、図4に示すように、サンプルごとに相違するものであり、同一のものは存在しなかった。
【0078】
(ii)表2の結果に基づいて上記サンプルをグループ分けするため、上記サンプルの相違を特徴づける味覚センサーを検討して得た2種の味覚センサーの出力からなる二次元分散図によれば、図5(先味の13chと22chとの二次元分散図)に示すように、A−1、A−2、A−3からなるI群と、A−4、A−5からなるII群、A−6、A−7からなるIII群の3群に区分することができた。I群は、荒川源流、荒川熊谷、荒川戸田の河川水であり、II群は、荒川木場、台場の汽水または海水であり、III群は、東京大学(文京区)雨水、埼玉県秩父市雨水であるから、河川水、汽水(海水)、雨水とのグループ分けされたと考えられる。
【0079】
(iii)図5の二次元分散図において、22chの出力は、汽水(A−4)や海水(A−5)が低く、次いで河川水(A−1、A−2、A−3)となり、雨水(A−6、A−7)がもっとも高くなっていた。この数値は、表5に示すマグネシウム含量が、雨水で0.01〜0.04mg/l、河川水0.2〜0.6mg/l、汽水や海水では1.7mg/l、1.8mg/lであることと相関した。この傾向は、カルシウム、カリウム、鉄含有量でも同様であった。味覚評価データが、金属イオン量を間接的に表示しうると推測される。また、13chの出力も22chと同様の傾向にあった。
【0080】
(iv)図5、図6、図7、図8の結果から、図5の傾向は、図6に示す先味の22chと40chとの二次元分散図や、図7に示す先味の13chと40chとの二次元分散図、図8に示す後味の13chと41chとの二次元分散図でも同様に現れたることが判明した。一方、表4に示すICP−MSのデータは、上記3つの群と相関関係を有しない。このことは、表4に示す成分の分析では分類できないが、味覚評価データという新たな指標によって天然水が3種に区分できることを示すものである。なお、上記I群、II群、III群のグループ分けは、図4でも認識できるものであり、任意の2種の味覚センサーによる二次元分散図の作成により、より簡便にグループに分けることができた。
【0081】
(v)図5と表3のエネルギーデータとを併用すると、例えば、同じII群に該当するA−4とA−5とのカロリーは、それぞれ10、21であり大きくことなる。エネルギーデータを併用することで、同じ群に属する非可食性物質を更に特定しうることが判明した。即ち、河川水から汽水、海水へと成分変化を味覚センシング装置によって検出し区分することができ、類似する区分においては、エネルギーデータによって詳細に物質を特定することができる。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
(実施例2)
時期を変えて採取したポンセチア葉(緑葉、紅葉、枯葉)のそれぞれ3.6gに対し蒸留水296.4mlを加え、121℃で5分間加熱処理を行い、濾紙(ADVANTE No.5A)でろ過して試料溶液を調製した。なお、サンプル記号は、C−1:緑葉、C−2:紅葉、C−3:枯葉である。
【0088】
(1)味覚評価データ
この溶液を使用し、味覚センサーとして、;Bch(AAE)、40ch(CTO)、41ch(CAO)、16ch(COO)、22ch(AE1)の5種を使用し、実施例1と同様に味覚評価データを取得した。また、実施例1と同様に測定誤差の平均(g)、標準偏差(S2)、誤差率(m2)とを算出した。また、出力最大値、最小値および出力幅を算出した。この結果を表6に示す。また、先味の全味覚センサーによる味覚評価データを図9に示す。
【0089】
一方、サンプル間の相違を検出しやすい味覚センサーを選択するため、実施例1と同様に操作し、先味および後味のデータにおいて、それぞれ出力幅が5mV以下のものおよび誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意でないと判断し、不使用とした。この結果、先味では、16ch、22ch、40chの味覚センサーを選択した。後味では選択すべき味覚センサーはなかった。40chと22chとの二次元分散図を図10に示す。
【0090】
(2)エネルギーデータ、ICP−MS、原子分析
エネルギーデータは、株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック製、商品名「カロリーアンサー CA−HN02」)を使用し、ポンセチア葉(緑葉、紅葉、枯葉)の所定量を装置に供給し、ヘルシーモードで測定した。また、実施例1と同様にICP−MSによる分析データ、原子吸光光度計による分析データを取得した。それらの結果をそれぞれ表7、表8、表9に示す。
【0091】
(3)結果
(i)測定試料が少ないためグループ化は困難であったが、図10に示すように、22chおよび40chによって3種の葉は明確に区分された。その傾向は、枯葉(C−3)、緑葉(C−1)、紅葉(C−2)の順に出力値が向上した。これは、表9に示すマグネシウム、カリウム、カルシウムの含有量と相関するものであった。味覚評価データが、金属イオン量を間接的に表示しうると推測される。
【0092】
(ii)表7のエネルギーデータは、C−1、C−2、C−3の順にエネルギーが低減することを示すものであり、植物の老化と共にエネルギーが低減することと相関する。一方、このエネルギーの推移は、図10に示す枯葉(C−3)、緑葉(C−1)、紅葉(C−2)の順に出力値が向上する傾向とは一致しない。このことは、エネルギーデータと味覚評価データとを併用することで、非可食性物質をより高度に特定しうることを示唆するものと考えられる。
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
(実施例3)
ニコチンおよびタールの含有量の異なる3種類のタバコ、ニコチン1mg(D−1)、ニコチン8mg(D−2)、ニコチン14mg(D−3)をサンプルとした。市販煙草を分解し、紙およびフィルター部を除いた乾燥葉20gに対し蒸留水280mlを加え、121℃で5分間加熱処理を行い、濾紙(ADVANTE No.5A)でろ過して試料溶液を調製した。
【0098】
(1)味覚評価データ
この溶液を使用し、味覚センサーとして、;Bch(AAE)、40ch(CTO)、41ch(CAO)、16ch(COO)、22ch(AE1)の5種を使用し、実施例1と同様に味覚評価データを取得した。また、実施例1と同様に測定誤差の平均(g)、標準偏差(S2)、誤差率(m2)とを算出した。また、出力最大値、最小値および出力幅を算出した。この結果を表10に示す。また、先味の全味覚センサーによる味覚評価データを図11に示す。
【0099】
一方、サンプル間の相違を検出しやすい味覚センサーを選択するため、実施例1と同様に操作し、先味および後味のデータにおいて、それぞれ出力幅が5mV以下のものおよび誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意でないと判断し、不使用とした。この結果、先味では、16ch、22ch、40chの味覚センサーを選択した。後味では選択すべき味覚センサーはなかった。40chと22chとの二次元分散図を図12に示す。
【0100】
(2)エネルギーデータ、ICP−MS、原子分析
また、実施例1と同様にエネルギーデータ、ICP−MSによる分析データ、原子吸光光度計による分析データを取得した。それらの結果をそれぞれ表11、表12、表13に示す。
【0101】
(3)結果
(i)測定試料が少ないためグループ化は困難であった。16chでは、D−1、D−2、D−3の順に、22chでは、D−1、D−3、D−2の順に出力値が向上した。傾向が異なる2種の味覚センサーを組み合わせることで、図12に示すように3種のタバコを明確に区分することができた。
【0102】
(ii)表11のエネルギーデータは、D−1、D−2、D−3において近似する値であった。タバコのニコチン含有量との相関も少ないと推察される。このことは、味覚評価データにより、ニコチン含有量や原子分析とは異なる非可食性物質の特定が可能となることを示唆するものである。
【0103】
【表10】
【0104】
【表11】
【0105】
【表12】
【0106】
【表13】
【0107】
(実施例4)
60歳男性尿と20代男性尿の原液5mlに対し蒸留水45mlを加え10倍に希釈した。さらに、20代男性尿の原液5mlに対し蒸留水45mlを加え10倍に希釈した。また、前記60歳男性尿の原液2.5mlに対し蒸留水47.5mlを加え20倍に希釈した。それぞれ50ml以上を測定試料とした。なお、サンプル記号は、F−1:60代男性試料(10倍希釈)、F−2:20代男性試料(10倍希釈)、F−3:60代男性試料(20倍希釈))である。また、F−1尿提供者、F−1尿提供者の血液を採取し、HbAICを測定した。
【0108】
(1)味覚評価データ
この溶液を使用し、味覚センサーとして、;Bch(AAE;旨味センサー)、40ch(CTO;塩味センサー)、41ch(CAO;酸味センサー)、16ch(COO;苦味センサー)、22ch(AE1;渋みセンサー)の5種を使用し、実施例1と同様に味覚評価データを取得した。また、実施例1と同様に測定誤差の平均(g)、標準偏差(S2)、誤差率(m2)とを算出した。また、出力最大値、最小値および出力幅を算出した。この結果を表14に示す。また、先味の全味覚センサーによる味覚評価データを図13に示す。
【0109】
一方、サンプル間の相違を検出しやすい味覚センサーを選択するため、実施例1と同様に操作し、先味および後味のデータにおいて、それぞれ出力幅が5mV以下のものおよび誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意でないと判断し、不使用とした。この結果、先味では、16ch、22ch、40chの味覚センサーを選択した。後味では選択すべき味覚センサーはなかった。
【0110】
(2)エネルギーデータ、ICP−MS、原子分析、尿糖、尿蛋白
また、実施例1と同様にエネルギーデータ、ICP−MSによる分析データ、原子吸光光度計による分析データを取得し、それらの結果をそれぞれ表15、表16、表17に示す。また、尿糖、尿蛋白の結果を図14に示す。
【0111】
(3)HbAIC
F−1尿提供者のHbAICは、6.9であり、F−2尿提供者のHbAICは、4.5であった。なお、正常値は4.0〜5.8である。
【0112】
(4)結果
(i)測定試料が少ないためグループ化は困難であったが、表2に示すように41chでは、F−3、F−2、F−1の順に、22chでは、F−2、F−1、F−3の順に出力値が向上した。傾向が異なる2種の味覚センサーを組み合わせることで、3種のサンプルを明確に区分することができた。
【0113】
(ii)図14のデータおよびHbAICの結果から、F−1は、糖尿病の疑いがある。これに対応して表15のエネルギーデータにおいても、F−1で高値となっている。このことは、味覚評価データとエネルギーデータとを併用することで、疾患を診断しうることを示唆するものである。
【0114】
【表14】
【0115】
【表15】
【0116】
【表16】
【0117】
【表17】
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、従来の装置を使用して非可食性物質を新たな指標で分類または特定することができ、品質管理、工程管理や診断などに応用でき、自然科学、有毒物質、医学医療の分野で有用である。
【符号の説明】
【0119】
1・・・塩味センサー、
3・・・参照電極、
11・・・基準液、
21・・・サンプル液、
31・・・アルコール溶液
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿、河川水、観葉植物などの非可食性物質を既存の味覚センシング装置やカロリー測定器で評価したデータを指標として特定し、または前記指標に基づいて前記非可食性物質を類似するグループに区分し、前記非可食性物質を特定して評価することを特徴とする、非可食性物質の特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、化学物質の特定には、化学構造式、融点、沸点、溶解度、比旋光度などが測定され、河川水などの天然物は、その特性に応じて一般細菌数、pH値、含有金属種、特定化学成分の含有量などが測定されてきた。また、医薬品は、主成分の化学構造式や薬効などで特定される。更に、尿や血液などが疾患との関係で評価される場合には、疾患に由来する成分、例えば蛋白質や糖の有無や含有量が評価されることが多い。これらは、特定の含有成分の結果に基づいてその物質の特性が評価される一例である。このような分析は、公知の化学分析、発光分光分析、質量分析、原子吸光分析、血液検査、尿検査によって行われている。
【0003】
一方、経口医薬品、食品や飲料はその性質上味が重要視される物質である。経口医薬品は、服用に際して矯味が重要な要素となり、また酒類などの嗜好品では、吟醸酒、純米酒、本醸造酒などの製造方法による区分の他に、甘口か辛口かなど味覚の相違に基づいて区分される。味覚は、健康状態や心理的要素などによって影響を受け易いため、これを客観的に評価できる味覚センシング装置が開発されている。例えば、特定構造の脂質膜を味覚センサーに使用し、サンプルと同一または類似のアジを呈する基準液に前記味覚センサーを浸漬して前記基準液を測定し、ついで前記味覚センサーでサンプルを測定し、前記基準液の測定値と前記サンプルの測定値との差からアジを検出するもの(特許文献1、特許文献2)や、類似する複数のサンプルを複数の味覚センサーで評価し、使用した味覚センサーの数に応じた山部を有するレーダーチャートを入手し、サンプルの味の違いを最もよく表す主成分に着目して分析を行うものなどがある(特許文献3)。
【0004】
一方、近年の健康志向によって、食品のエネルギーが評価される場合も多い。食品のエネルギーを非破壊的に測定する装置としては、近赤外領域の波長に対する吸光度を測定し、この測定値に基づいて被検体のエネルギーを測定する方法であって、予め、エネルギー既知のサンプル物体に近赤外線を照射して反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により回帰式を算出しておき、被検対象の物体の近赤外線の吸光度を測定し、これらの吸光度と上記回帰式とから物体のエネルギーを算出する物体のカロリー測定方法がある(特許文献4)。食品のエネルギーに帰属する近赤外線の波長域を見出し、その波長域を用いてエネルギーを測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2578370号
【特許文献2】特許3037971号
【特許文献3】特許3390194号
【特許文献4】特許第4104075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、物質の特定方法や評価方法としては、その物質に由来する成分を分析する方法が採用されてきたが、含まれる複数成分をそれぞれ化学的に分析する場合には測定に時間と手間とがかかる。一方、例えば基準品に対する相違など2者間の相違のみを検出したい場合があり、これにより簡便に基準外品を検出することができる。これを品質管理や工程管理に応用すれば2者間の変動情報を検出し、このような変動情報が検出された場合にのみ各成分の詳細な測定を行えば、成分の化学分析を行うことなく、効率的に品質したり、工程を管理することができる。
【0007】
また、例えば、河川の源流、中流、下流の河川水を区分できる新たな指標があれば、予めその指標と河川水とを関連づけ、未知の河川水を同様の指標で評価することで、それがいずれの河川のいずれから採取した水であるかを容易に判断することができる。また、温泉などの天然物をその特性で区分する場合に、温泉の特性を評価できる新たな指標があれば、既存の温泉水を前記指標に基づく新たなグループに分けることができる。更に、未知の温泉について同様に前記指標を評価すれば、その温泉がいずれの温泉グループに属するかを迅速に判断することができる。
【0008】
このような新たな指標によって物質間の変動情報を検出する必要性は、尿や血液などの生体材料を被検物とする場合にもある。例えば、ある動物の糞尿を経時的に評価し、飼育環境の相違を迅速に検出しおよび評価することもできる。また、生体材料に基づいて疾患と健常者とを区別しうる新たな指標があれば、生体材料を前記指標で評価し、特定疾患を検出することができる。
【0009】
このような2者間の相違を検出し、または類似群に区分することが要求される物質としては、上記した糞尿や血液などの生体材料、河川や温泉などの天然物、タバコや大麻などの植物、毒物、化粧水や歯磨きなどの化学製品、その他の非可食性物質がある。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、尿、河川水、化粧水などの非可食性物質を特定する新たな指標を使用した物質特定方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記指標に基づいて非可食性物質を類似する特性に区分して評価する非可食性物質の評価方法を提供することを目的とする。
【0011】
更に、非可食性物質における前記指標の変動を用いて非可食性物質の品質や工程を管理する方法や診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、糞尿や血液などの生体材料、河川や温泉などの天然物、タバコや大麻などの植物、毒物、化粧水や歯磨きなどの化学製品、その他の非可食性物質の特定や分類方法を詳細に検討した結果、類似する非可食性物質間の相違を表出しうる新たな指標があれば、含有成分によらず物質間の相違を検出できること、このような指標として食品の味覚を評価する味覚センシング装置による味覚評価データを使用しうること、更に、味覚評価データに加えてエネルギーデータを併用することで、より精度高く非可食性物質を特定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明は、非可食性物質を味覚センシング装置で評価し、得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、非可食性物質の特定方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、非可食性物質を味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、前記非可食性物質の特定方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置で評価し、得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質を評価することを特徴とする、非可食性物質の評価方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、得られた味覚評価データおよびエネルギーデータを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質の特性を評価することを特徴とする、前記非可食性物質の評価方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、非可食性物質を味覚センシング装置から得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定し、前記味覚評価データの変動を評価することで前記非可食性物質の品質および工程を管理することを特徴とする、非可食性物質の品質管理および工程管理方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、非可食性物質を味覚センシング装置およびカロリー測定器から得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定し、前記前記味覚評価データおよびエネルギーデータの変動を評価することで前記非可食性物質の品質を管理することを特徴とする、前記非可食性物質の品質管理方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置で評価して得られた味覚評価データを指標として前記生体材料を特定し、疾患を有する生体材料の味覚評価データとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、診断方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置およびカロリー測定器とで評価して得られた味覚評価データおよびエネルギーデータを指標として前記生体材料を特定し、疾患を有する生体材料の味覚評価データおよびエネルギーデータとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、前記診断方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明は上記いずれかの方法に使用する、味覚センシング装置とカロリー測定器とを提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来の味覚センシング装置によって取得した味覚評価データで非可食性物質を特定することができ、かつ前記味覚評価データの相違に基づいて非可食性物質間の相違を評価することができるため、新たな装置を構築する必要がなく、簡便に非可食性物質の特定ならびに評価を行うことができる。
【0023】
本発明によれば、味覚評価データを経時的に評価することで非可食性物質の変動情報を入手することができ、簡便に品質管理や工程管理を行うことができる。
本発明によれば、非可食性物質が、非検者から得た尿、血液、唾液などの生体材料である場合には、特定疾患と健常者との相違を上記指標によって区別することで、被検者の疾患との関連性を評価することができる。
【0024】
前記味覚評価データに加えて、カロリー測定器によって得られたエネルギーデータを併用することでより高い精度で非可食性物質を特定することができる。
本発明によれば、従来の味覚センシング装置やカロリー測定器の新たな用途を提供することができる。
【0025】
本発明によれば、既存の装置を使用して、河川水、海水、降水、動植物などの自然科学の分野、尿、血液などの医学医療分野、麻薬などの毒物薬物の分野における非可食性物質の特定やグループ分けなどに応用することができ、環境保全やその調査などに有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】味覚センサーを使用して味覚評価データを取得する方法を説明する図である。
【図2】味覚センサーを使用して先味と後味の味覚評価データを取得する方法を説明する図である。
【図3】実施例1におけるサンプルを採取した場所を説明する図である。
【図4】実施例1における先味の全味覚センサーによる味覚評価データである。
【図5】実施例1において、先味の13chと22chとによる二次元分散図である。
【図6】実施例1において、先味の22chと40chとによる二次元分散図である。
【図7】実施例1において、先味の13chと40chとによる二次元分散図である。
【図8】実施例1において、後味の13chと41chとによる二次元分散図である。
【図9】実施例2における先味の全味覚センサーによる味覚評価データである。
【図10】実施例2において、先味の22chと40chとによる二次元分散図である。
【図11】実施例3における先味の全味覚センサーによる味覚評価データである。
【図12】実施例3において、先味の22chと40chとによる二次元分散図である。
【図13】実施例4における先味の全味覚センサーによる味覚評価データである。
【図14】実施例4において、尿糖、尿蛋白の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第一は、非可食性物質を味覚センシング装置で評価し、得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、非可食性物質の特定方法である。また、本発明の第二は、類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置で評価し、得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質を評価することを特徴とする、非可食性物質の評価方法である。前記味覚評価データに加えて、カロリー測定器で得たエネルギーデータを併用することもできる。
【0028】
従来の味覚センシング装置は、ショ糖(甘味)、塩化ナトリウム(塩味)、塩酸(酸味)、塩酸キニーネ(苦味)、L−グルタミン酸(旨味)などに反応する脂質膜を味覚センサとして、前記脂質膜と呈味物質との応答を膜電位や膜抵抗で評価するものである。ある食品を甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の5種類の味覚センサで評価すれば、その食品について5次元の味覚情報が得られる事は公知である。一方、非可食性物質であっても食品と同様に味覚センシング装置で味覚評価データを入手することができ、味覚が食品ごとに異なるように非可食性物質ごとに異なる味覚評価データを入手することができる。本発明は、食品に限定して使用された味覚センシング装置による味覚評価データを非可食性物質を特定する新たな指標として使用することを特徴とするものである。味覚センサーの数に応じた多次元の味覚評価データを使用し、その同一性を判断することで非可食性物質を特定することができる。また、味覚評価データの類似性から、非可食性物質を類似するグループに区分することができる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
(1)非可食性物質
本発明で物質を特定しうる非可食性物質としては、味覚センシング装置で味覚評価データを採取できるものであれば、特に制限はない。たとえば、味覚センシング装置が、生体の舌の表面にある脂質二重膜が固有の膜電位が種々の甘味、塩味などの呈味物質との化学反応や吸着反応により変化する原理を応用したものである場合には、非可食性物質としては、食品と同様に前記脂質二重膜と反応して呈味情報を提供しうるものを広く対象とすることができる。このような脂質二重膜は、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、カルボキシル基、炭化水素基から構成され、膜電位や膜抵抗を発生するものであるため、非可食性物質はこのような測定が可能な液状物質に調製しうるものとなる。
【0030】
例えば、雨水、融雪水、河川水、海水、温泉水などの天然水、畑地、牧草地、山林などの土壌、尿、便、血液、唾液などの生体材料、動物飼料、肥料、化粧水などの製品、大麻やタバコなどの植物、燃焼灰その他を対象とすることができる。非可食性物質が固形物である場合には、適当な溶媒によって調製した溶液を被検液として使用し、味覚評価データを取得して非可食性物質の特定を行うことができる。したがって、非可食性物質が砂などの固形物を含む土壌である場合には、土壌を水などで溶解し、予め固形物を除去した溶液を対象物とすればよい。木材など、それ自体は水に溶解しないものであってもこれを粉末に加工し、得られた木材粉末を水その他の溶液で抽出して溶液を調製できれば、非可食性物質として本発明の特定方法の対象とすることができる。
【0031】
なお、本発明では、非可食性物質を対象とするが、食品などの可食性物質についても同様に物質特定に応用することができる。この際、味覚評価データを物質特定の新たな指標として使用する点で、非可食性物質を対象とする場合と同質だからである。
【0032】
(2)味覚センシング装置
本発明は、味覚センシング装置によって得られる味覚評価データを使用する。使用する味覚センシング装置に限定はないが、センサーが人工脂質膜型の電極であり膜電位を測定するものが好適である。本発明では、市販の味覚センシング装置を使用することができ、例えば、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製の味認識装置などが好適である。なお、本発明は、非可食性物質を測定対象とし、味覚自体を問題とするものではないが、便宜上、味覚センシング装置で得られる測定データを「味覚評価データ」と称する。
【0033】
(i)非可食性物質の特定
以下、味認識装置「TS−5000Z」を味覚センシング装置として説明する。
味覚センシング装置は、食品に含まれる甘味、塩味、酸味、苦味、旨味などを評価する味覚センサーを有する。各味覚センサーは呈味物質に反応する脂質膜が装着された電極であり、前記脂質膜の呈味物質に対する膜電位や膜抵抗を測定することで呈味情報を取得することができる。味覚センシング装置では、味覚センサーの数に応じた味覚評価データを入手できるため、例えばn種類の味覚センサーを使用すればn次元の味覚評価データによって物質を特定することができる。
【0034】
このような味覚センサーとしては、カルシウム系の苦味に応答する塩基性苦味センサー、雑味や苦味渋みに応答する苦味雑味センサー、雑味渋味に応答する渋味刺激センサー、旨味に応答する旨味センサー、塩味に応答する塩味センサー、酸味に応答する酸味センサー、甘味に応答する甘味センサーなどがある。
【0035】
味覚評価データは、以下の方法で取得することができる。たとえば塩味センサーを使用して塩味に関する味覚評価データを取得するには、図1に示すように塩味センサー(1)と参照電極(3)とを基準液(11)に浸漬し基準膜電位(Vr)を測定する。ついで、非可食性物質のサンプル液(21)に塩味センサー(1)と参照電極(3)とを浸漬して膜電位(Vs)を測定する。VsとVrとを差を塩味の味覚評価データとして取得することができる。旨味や酸味などの別の味覚センサーによる情報を取得するには、この操作を各味覚センサーごとに行えばよい。
【0036】
一方、味覚センシング装置が、食品を口に含んだ瞬間の味(先味)と、食品を飲み込んだ後に残る持続性の味(後味)の2種類を評価できる場合には、非可食性物質についても食品と同様に味覚評価データを取得し、物質特定情報として使用することができる。非可食性物質は味覚と無関係であるが、データが再現性ある場合には、その物質を特性する指標として使用することができる。
【0037】
このような先味と後味の味覚評価データを取得するには、図2に示すように、(a)塩味センサー(1)と参照電極(3)とを基準液(11)に浸漬し基準膜電位(Vr)を測定し、ついで、(b)非可食性物質のサンプル液(21)に塩味センサー(1)と参照電極(3)とを浸漬して膜電位(Vs)を測定する。VsとVrとを差を先味の味覚評価データとして取得する。次いで、(c)前記センサー(1)と参照電極(3)と基準液で洗浄し、再度、(d)基準液(11)の中で基準膜電位(Vr')を測定する。Vr'とVrとを差を後味の味覚評価データとして取得することができる。(e)基準膜電位(Vr')を測定した後は、アルコール溶液(31)でセンサー(1)と参照電極(3)とを洗浄し、次のサンプル液を測定する。別の味覚センサーによる情報を取得するには、この操作を各味覚センサーごとに行えばよい。なお、参照電極、味覚センサー、基準液は、その味覚センシング装置で特定するものを使用することができる。一般には、基準液として30mMのKClと0.3mMの酒石酸とを含む無味の溶液が使用され、これは人の唾液に相当するものとして使用されている。しかしながら、本発明では本来味覚を評価するものではないため、上記基準液に限定されず、非可食性物質の特性に適する溶液を調製し、使用することもできる。
【0038】
本発明では、味覚センシング装置の味センサーの出力を呈味情報として使用するものでなく、物質を特定する指標として利用するものである。この味覚評価データは、使用する味覚センサーの数に応じて多次元で取得でき、予め取得した非可食性物質の味覚評価データとの同一性を判断することで、未知の非可食性物質を特定することができる。
【0039】
(ii)非可食性物質間の相違の検出
一方、測定対象物がビールとワインの場合には各味覚センサーの出力が大きく異なるが、ビールどうしであれば各味覚センサーの出力は類似する。ビールどうしの相違を表出しやすい味覚センサーを使用することで、全ての味覚センサーを使用することなく類似するビール間の相違を検出することができる。このことは非可食性物質を測定する場合でも同様である。類似する非可食性物質について複数の味覚評価データを取得し、非可食性物質の相違を表出しやすい味覚センサーのデータを用いることで、より簡便に物質を特定することができる。なお、このような類似する非可食性物質間の相違を表示しうる味覚センサーを選択するには、予め類似する非可食性物質について味覚評価データを取得し、非可食性物質間の相違が表出されている味覚センサーを選択すればよい。
【0040】
味覚センサーの選択方法は任意であって、特に制限されるものではない。例えば、各味覚センサーにおいて、最大出力と最小出力とを検出し、その差(出力幅)が所定値以下のものを除外する方法や、前記出力幅の大きなものから2種以上の味覚センサーを選択する方法がある。また、各味覚センサーについて複数回の測定を行い、統計学的に処理して味覚センサーを特定してもよい。例えば、統計学的に類似群の相違を検出できる変数を導入し、前記変数の大きなもの、または小さなものから順に2種以上を選択する方法や、前記変数の基準値を満たさないものを除外する方法がある。更に、前記変数の基準値よりも低いセンサーや前記出力幅の基準値をしたまわるものを除外する方法がある。変数や出力幅の基準値を満たすものが多数残された場合には、更に出力幅の大きなものから順に2種以上を選択し、または前記変数の大きなもの、または小さなものから順に2種以上を選択する方法などがある。味覚センシング装置がこのような統計処理機能を有している場合には、この機能によって味覚センサーを特定することができる。なお、味覚センシング装置は、本来食品の味覚を客観的に検出するものであるため、上記統計処理機能がある非可食性物質の特定に不適当である場合がある。このような場合には新たな方法で統計処理を行い、味覚センサーを選択することができる。
【0041】
本発明によれば、味覚評価データが異なる場合は、非可食性物質が同一でないと推定することができる。この同一性の判断には、特に類似する非可食性物質間の相違を表出しやすい味覚センサーによる味覚評価データを効果的に使用することができる。
【0042】
(iii)非可食性物質のグループ分け
本発明では、非可食性物質を味覚評価データを指標として特定することができ、この味覚評価データに基づいて非可食性物質をグループ分けすることができる。すなわち、新たな指標による新たなグループ分けを提供するものである。一方、味覚評価データという新たな指標によるグループ分けと従来のグループ分けとが同一または近似する場合には、未知の非可食性物質について味覚評価データを取得することで、その非可食性物質がいずれのグループに属するかを簡便に評価することができる。
【0043】
このようなグループ分けは、非可食性物質を測定した全ての味覚評価データを基準に行ってもよいが、非可食性物質どうしの相違を表出しやすい特定の味覚センサーのデータから2次元散布図などを作成し、データの分散を視覚的に判断してグループ分けすることもできる。このような味覚センサーは、上記(ii)非可食性物質間の相違の検出の項で記載した方法で選択しうる。
【0044】
(3)カロリー測定器
本発明では、非可食性物質の味覚評価データに加えて、非可食性物質のエネルギーデータを併用することで、より正確に非可食性物質を特定することができる。
【0045】
このようなエネルギーデータを提供しうるカロリー測定器としては、市販のカロリー測定器を使用することができ、例えばジョイ・ワールド・パシフィック社製の商品名カロリーアンサーなどを好適に使用することができる。このカロリー測定器は、食品に近赤外線領域の光を照射し、音響光学フィルタで分光し、照射した光の戻りを吸光度として捉え、特定波長に所定の係数を乗じて食品のエネルギーを算出する方法である。非破壊的にエネルギーを算出しうる点で優れる。しかしながら、カロリー測定器としては、他の方法でエネルギーを算出するものであってもよく、例えば、食品に含まれる蛋白質、脂質、糖質を分析し、これらの含有量にそれぞれの単位あたりの熱量を乗じて食品のエネルギーを測定する方法であってもよい。
【0046】
また、カロリー測定器は食品のエネルギーを測定することを前提に調整されるため、食品の水分含有量や食品形状に応じた各種のモードを設定できる場合がある。本発明では、いずれのモードでエネルギーを測定するものであってもよい。類似する非可食性物質を測定する場合には、同じ測定器を使用し同じ測定モードでエネルギーを測定することで、類似する非可食性物質どうしの区別する指標とすることができるからである。また、カロリー測定器によっては、蛋白含有量や炭水化物含有量、脂質含有量が算出できるものがある。このような装置を使用する場合には、これらの数値も非可食性物質を特定する指標として使用することができる。
【0047】
なお、異なる原理のカロリー測定器で測定すると非可食性物質のエネルギー測定値が相違する場合がある。しかしながら、本発明はある測定器によるデータを非可食性物質を特定する指標とするものであって、正確なエネルギーを要求するものではない。したがって、測定データに再現性がある限り、いずれのサンプルも同じ装置で測定することを条件にいずれの測定器も使用することができる。
【0048】
(4)非可食性物質の品質管理方法
本発明の第三は、非可食性物質を味覚センシング装置から得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定し、前記味覚評価データの変動を評価することで前記非可食性物質の品質を管理することを特徴とする、非可食性物質の品質管理方法である。
【0049】
前記したように、本発明では、非可食性物質を味覚センシング装置で評価して得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定し、および非可食性物質をカロリー測定器で評価して得られたエネルギーデータを併用して前記非可食性物質を特定することができる。
【0050】
前記指標は、非可食性物質を構成する成分に基づいて特定するものでない点で、非可食性物質を相対的に特定するものである。このことは、上記指標の変動を検出することで、非可食性物質どうしの差を検出しうることを示す。例えば、化粧水の製造ラインにおいてロット毎の変動を評価する場合には、予め化粧水について味覚評価データを取得し、その化粧水の特徴を表出する味覚センサーを選択し、その味覚センサーの数値と各ロットの化粧水との味覚評価データの同一性を評価し、同一でない製品を簡便に検出することができる。これにより非可食性物質に含まれる複数の含有成分を個別に測定することなく、簡便に規定外品を検出することができる。味覚評価データに加えてエネルギーデータを併用することで、更に精度高く品質を管理することができる。なお、本発明の品質管理方法によって製造ラインを管理できるため、上記方法は、工程管理方法ということもできる。
【0051】
(5)診断方法
本発明の第四は、被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置で評価して得られた味覚評価データを指標として前記生体材料を特定し、疾患を有する生体材料の味覚評価データとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、診断方法である。更に、生体材料をカロリー測定器で評価して得られたエネルギーデータを指標として併用することもできる。
【0052】
予め、疾患を有する生体材料について、その疾患に特徴的な味覚評価データが取得できる場合には、未知の生体材料の味覚評価データとの異同から、その生体材料の疾患を予測することができる。
【0053】
(6)味覚センシング装置およびカロリー測定器の新たな用途
本発明は、従来公知の味覚センシング装置およびカロリー測定器を使用し、非可食性物質を測定して得られた測定結果を、前記非可食性物質を特定する新たな指標とものである。このことは、食品の味覚を測定する味覚センシング装置やカロリー測定器の用途を拡大したものといえる。更に、本発明では、非可食性物質の測定に際して同じ装置を使用することを条件として、従来公知のいずれの味覚センシング装置やカロリー測定器を使用することができる。類似する非可食性物質間の相違を検出することで品質管理や疾患の診断などを行うことができるからである。
【0054】
本発明において好適に使用できる味覚センシング装置は、呈味物質に反応する脂質膜が装着された電極を味覚センサーとし、前記脂質膜の呈味物質に対する膜電位や膜抵抗を測定して呈味情報を提供できる装置であることが好ましい。味覚センサーの数に応じた味覚評価データを入手できるため、多次元の味覚評価データを取得できるからである。この際、基準液と被検液との膜電位の差を呈味情報としうるものがより好適である。非可食性物質の種類に応じて基準液を選択し、より物質特定に好適な条件を選択できるからである。
【0055】
また、カロリー測定器としては、非可食性物質に近赤外線領域の光を照射し、音響光学フィルタで分光し、照射した光の戻りを吸光度として捉え、特定波長に所定の係数を乗じて食品のエネルギーとして算出しうる装置が好適である。非破壊的に測定することができるからである。
【0056】
本発明によれば、新たな指標によって非可食性物質を特定でき、例えば河川水の場合は、降水に伴う大気中の物質や河川水に溶解した物質などを総合的に味覚評価データとして検出できるため、その推移を評価すること環境の変動を検出することができる。このように、本発明によれば、上記装置は環境保全やその調査への用途に拡大できる。
【0057】
更に、非可食性物質としてタバコや大麻などの有害物質や有毒物の特定に加え、尿や血液などから疾患を診断することができ、医学医療の分野へも用途が拡大できる。
【実施例】
【0058】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
測定方法および測定装置
(i)味覚評価データ
味覚評価データは、市販の味覚センシング装置(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製、商品名「TS−5000Z」)にて測定した。
【0059】
非可食性物質が液体である場合は、ろ紙(ADVANTEC No.5A)でろ過し、測定試料とした。固体である場合は、成分を蒸留水に溶解して測定試料とした。濃度は、非可食性物質に応じて適宜選択した。
【0060】
基準液:0.3mMの酒石酸を含有する30mMの塩化カリウム水溶液を使用した。
味覚センサーは前記装置に配備される下記のものを使用し、測定する非可食性物質に応じて適宜選択した。味覚センサー:Bch(AAE)、40ch(CTO)、41ch(CAO)、16ch(COO)、22ch(AE1)、3ch(ACO)、13ch(ANO)を使用した。
【0061】
測定方法:図2に示すように、(a)上記基準液中で味覚センサーの基準電位(Vr)を測定した。ついで、(b)測定試料溶液中で上記味覚センサーの電位(Vs)を測定した。ついで、(c)この味覚センサーを基準液で洗浄し、(d)再度基準液中で基準電位(Vr')を測定した。その後、(e)アルコール溶液で上記センサーを洗浄した。上記工程を4回繰り返した。これを各味覚センサーごとに測定した。Vs−Vrを先味、Vr'−Vrを後味として味覚評価データとした。
【0062】
データ解析:各味覚センサーの基準電位と被検液の電位(Vs)の4回のデータを使用して平均値、標準偏差および誤差率を算出した。
類似する非可食性物質の特徴を表出しやすい味覚センサーを選択するために、以下の選別を行った。
【0063】
(a) 各味覚センサーについて、最小出力と最大出力との差で示される出力幅が5mV以下のものは非可食性物質の味覚評価データの識別が有意でないと判断し、不使用とした。
【0064】
(b)「誤差率」の概念を導入し、誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意でないと判断し、不使用とした。
なお、誤差率(m2)とは、ある味覚センサーによって1検体をm回測定した際の平均値(Av1)±標準偏差(SD1)を算出し、同様にして類似する非可食性物品をn検体測定した場合のn個の平均値(Av1、Av2、...、Avn)を母集団としてその標準偏差(S2)を求め、n検体の前記標準偏差(SD1、SD2、...、SDn)から下記式によって測定誤差の平均(g)を算出し、下記式に示すように全検体の標準偏差(S2)に対する測定誤差の平均(g)を百分率で示したものである。誤差率が20%であれば、検体は最大5グループに区分され、誤差率が50%であれば、検体は最大2グループに区分されうる。
【0065】
【数1】
【0066】
【数2】
【0067】
(ii)エネルギーデータ
エネルギーデータは、市販のカロリー測定器(株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック製、商品名「カロリーアンサー CA−HN02」)にて測定した。測定は、非可食性物質が液体である場合にはアルコールモードで、固体の場合はヘルシーモードで測定した。
【0068】
(iii)ICP−MS
ICP−MSは、ヒューレッドパッカード社製、型式「HP4500Series」で測定した。
【0069】
味覚評価データの採取の際に調製した測定試料50mlに対して2.5mlの硝酸を加えて熱した後、濾紙(ADVANTEC No.5A)でろ過して測定試料とした。分析項目は、Cr,Ni,Cd,As,Pb,Mn,CuおよびZnとした。
【0070】
(iv)原子吸光光度計
原子吸光度は、バリアン社製、型式「SpectrAA220」で測定した。なお、試料調整は、ICP−MSの測定と同様に行った。分析項目は、Ca,Fe,KおよびMgとした。
【0071】
(実施例1)
2008年12月15日に、図3に示す荒川の源流から河口にかけて5箇所(荒川源流、荒川熊谷、荒川戸田、荒川木場、台場)で河川水を、東京大学構内(文京区)ならびに埼玉県秩父市で2種の雨水を採取した。なお、サンプル記号は、A−1:荒川源流、A−2:荒川熊谷、A−3:荒川戸田、A−4:荒川木場、A−5:台場、A−6:東京大学構内雨水、A−7:埼玉県秩父市雨水である。
【0072】
(1)味覚評価データ
各サンプルは、採取試料を濾紙(ADVANTEC No.5A)でろ過した後に測定試料として使用した。味覚センサーとしてBch(AAE)、40ch(CTO)、41ch(CAO)、16ch(COO)、22ch(AE1)、3ch(ACO)、13ch(ANO)の7種を使用した。
【0073】
上記7サンプルについて先味および後味からなる味覚評価データを取得した。荒川源流水の4回の各味覚センサーによる先味と後味の味覚評価データおよびその平均値と標準偏差とを表1に示す。ついで、他の7種のサンプルについても荒川源流水と同様に操作し、各味覚センサーにおける4回測定の平均値(Av1、...、Av7)とその標準偏差(SD1、・・・、SD7)とを算出した。表2にその結果を示す。
【0074】
更に、表2において、平均値(Av1、...、Av7)とその標準偏差(SD1、・・・、SD7)とから測定誤差の平均(g)、平均値(Av1、Av2、...、Av7)を母集団とするその標準偏差(S2)、誤差率(m2)とを算出した。また、出力最大値、最小値および出力幅を算出した。これらの結果も表2に示す。また、先味の全味覚センサーによる味覚評価データを図4に示す。
【0075】
一方、サンプル間の相違を検出しやすい味覚センサーを選択するため、先味および後味のデータにおいて、それぞれ出力幅が5mV以下のものおよび誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意図でないと判断し、不使用とした。ついで、出力幅の大きなものから順に選択した。この結果、先味では、13ch、22ch、40chの味覚センサーを選択した。先味の13chと22chとの二次元分散図、22chと40chとの二次元分散図、13chと40chとの二次元分散図を、それぞれ図5、図6、図7に示す。一方、後味では上記条件により13chのみが選択されたが、二次元分散図を作成するため、ついで出力幅の大きい41chを便宜的に選択した。後味の13chと41chとの二次元分散図を図8に示す。
【0076】
(2)エネルギーデータ
エネルギーデータは、株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック製、商品名「カロリーアンサー CA−HN02」)を使用し、アルコールモードで測定した。結果を表3に示す。
【0077】
(3)原子分析
ICP−MSによる分析を表4に、原子吸光光度計によるデータを表5に示す。
(4)結果
(i)河川水や雨水などの天然水は、味覚センシング装置によって味覚評価データを取得することができた。使用した味覚センサーの出力は、図4に示すように、サンプルごとに相違するものであり、同一のものは存在しなかった。
【0078】
(ii)表2の結果に基づいて上記サンプルをグループ分けするため、上記サンプルの相違を特徴づける味覚センサーを検討して得た2種の味覚センサーの出力からなる二次元分散図によれば、図5(先味の13chと22chとの二次元分散図)に示すように、A−1、A−2、A−3からなるI群と、A−4、A−5からなるII群、A−6、A−7からなるIII群の3群に区分することができた。I群は、荒川源流、荒川熊谷、荒川戸田の河川水であり、II群は、荒川木場、台場の汽水または海水であり、III群は、東京大学(文京区)雨水、埼玉県秩父市雨水であるから、河川水、汽水(海水)、雨水とのグループ分けされたと考えられる。
【0079】
(iii)図5の二次元分散図において、22chの出力は、汽水(A−4)や海水(A−5)が低く、次いで河川水(A−1、A−2、A−3)となり、雨水(A−6、A−7)がもっとも高くなっていた。この数値は、表5に示すマグネシウム含量が、雨水で0.01〜0.04mg/l、河川水0.2〜0.6mg/l、汽水や海水では1.7mg/l、1.8mg/lであることと相関した。この傾向は、カルシウム、カリウム、鉄含有量でも同様であった。味覚評価データが、金属イオン量を間接的に表示しうると推測される。また、13chの出力も22chと同様の傾向にあった。
【0080】
(iv)図5、図6、図7、図8の結果から、図5の傾向は、図6に示す先味の22chと40chとの二次元分散図や、図7に示す先味の13chと40chとの二次元分散図、図8に示す後味の13chと41chとの二次元分散図でも同様に現れたることが判明した。一方、表4に示すICP−MSのデータは、上記3つの群と相関関係を有しない。このことは、表4に示す成分の分析では分類できないが、味覚評価データという新たな指標によって天然水が3種に区分できることを示すものである。なお、上記I群、II群、III群のグループ分けは、図4でも認識できるものであり、任意の2種の味覚センサーによる二次元分散図の作成により、より簡便にグループに分けることができた。
【0081】
(v)図5と表3のエネルギーデータとを併用すると、例えば、同じII群に該当するA−4とA−5とのカロリーは、それぞれ10、21であり大きくことなる。エネルギーデータを併用することで、同じ群に属する非可食性物質を更に特定しうることが判明した。即ち、河川水から汽水、海水へと成分変化を味覚センシング装置によって検出し区分することができ、類似する区分においては、エネルギーデータによって詳細に物質を特定することができる。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
(実施例2)
時期を変えて採取したポンセチア葉(緑葉、紅葉、枯葉)のそれぞれ3.6gに対し蒸留水296.4mlを加え、121℃で5分間加熱処理を行い、濾紙(ADVANTE No.5A)でろ過して試料溶液を調製した。なお、サンプル記号は、C−1:緑葉、C−2:紅葉、C−3:枯葉である。
【0088】
(1)味覚評価データ
この溶液を使用し、味覚センサーとして、;Bch(AAE)、40ch(CTO)、41ch(CAO)、16ch(COO)、22ch(AE1)の5種を使用し、実施例1と同様に味覚評価データを取得した。また、実施例1と同様に測定誤差の平均(g)、標準偏差(S2)、誤差率(m2)とを算出した。また、出力最大値、最小値および出力幅を算出した。この結果を表6に示す。また、先味の全味覚センサーによる味覚評価データを図9に示す。
【0089】
一方、サンプル間の相違を検出しやすい味覚センサーを選択するため、実施例1と同様に操作し、先味および後味のデータにおいて、それぞれ出力幅が5mV以下のものおよび誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意でないと判断し、不使用とした。この結果、先味では、16ch、22ch、40chの味覚センサーを選択した。後味では選択すべき味覚センサーはなかった。40chと22chとの二次元分散図を図10に示す。
【0090】
(2)エネルギーデータ、ICP−MS、原子分析
エネルギーデータは、株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック製、商品名「カロリーアンサー CA−HN02」)を使用し、ポンセチア葉(緑葉、紅葉、枯葉)の所定量を装置に供給し、ヘルシーモードで測定した。また、実施例1と同様にICP−MSによる分析データ、原子吸光光度計による分析データを取得した。それらの結果をそれぞれ表7、表8、表9に示す。
【0091】
(3)結果
(i)測定試料が少ないためグループ化は困難であったが、図10に示すように、22chおよび40chによって3種の葉は明確に区分された。その傾向は、枯葉(C−3)、緑葉(C−1)、紅葉(C−2)の順に出力値が向上した。これは、表9に示すマグネシウム、カリウム、カルシウムの含有量と相関するものであった。味覚評価データが、金属イオン量を間接的に表示しうると推測される。
【0092】
(ii)表7のエネルギーデータは、C−1、C−2、C−3の順にエネルギーが低減することを示すものであり、植物の老化と共にエネルギーが低減することと相関する。一方、このエネルギーの推移は、図10に示す枯葉(C−3)、緑葉(C−1)、紅葉(C−2)の順に出力値が向上する傾向とは一致しない。このことは、エネルギーデータと味覚評価データとを併用することで、非可食性物質をより高度に特定しうることを示唆するものと考えられる。
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
(実施例3)
ニコチンおよびタールの含有量の異なる3種類のタバコ、ニコチン1mg(D−1)、ニコチン8mg(D−2)、ニコチン14mg(D−3)をサンプルとした。市販煙草を分解し、紙およびフィルター部を除いた乾燥葉20gに対し蒸留水280mlを加え、121℃で5分間加熱処理を行い、濾紙(ADVANTE No.5A)でろ過して試料溶液を調製した。
【0098】
(1)味覚評価データ
この溶液を使用し、味覚センサーとして、;Bch(AAE)、40ch(CTO)、41ch(CAO)、16ch(COO)、22ch(AE1)の5種を使用し、実施例1と同様に味覚評価データを取得した。また、実施例1と同様に測定誤差の平均(g)、標準偏差(S2)、誤差率(m2)とを算出した。また、出力最大値、最小値および出力幅を算出した。この結果を表10に示す。また、先味の全味覚センサーによる味覚評価データを図11に示す。
【0099】
一方、サンプル間の相違を検出しやすい味覚センサーを選択するため、実施例1と同様に操作し、先味および後味のデータにおいて、それぞれ出力幅が5mV以下のものおよび誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意でないと判断し、不使用とした。この結果、先味では、16ch、22ch、40chの味覚センサーを選択した。後味では選択すべき味覚センサーはなかった。40chと22chとの二次元分散図を図12に示す。
【0100】
(2)エネルギーデータ、ICP−MS、原子分析
また、実施例1と同様にエネルギーデータ、ICP−MSによる分析データ、原子吸光光度計による分析データを取得した。それらの結果をそれぞれ表11、表12、表13に示す。
【0101】
(3)結果
(i)測定試料が少ないためグループ化は困難であった。16chでは、D−1、D−2、D−3の順に、22chでは、D−1、D−3、D−2の順に出力値が向上した。傾向が異なる2種の味覚センサーを組み合わせることで、図12に示すように3種のタバコを明確に区分することができた。
【0102】
(ii)表11のエネルギーデータは、D−1、D−2、D−3において近似する値であった。タバコのニコチン含有量との相関も少ないと推察される。このことは、味覚評価データにより、ニコチン含有量や原子分析とは異なる非可食性物質の特定が可能となることを示唆するものである。
【0103】
【表10】
【0104】
【表11】
【0105】
【表12】
【0106】
【表13】
【0107】
(実施例4)
60歳男性尿と20代男性尿の原液5mlに対し蒸留水45mlを加え10倍に希釈した。さらに、20代男性尿の原液5mlに対し蒸留水45mlを加え10倍に希釈した。また、前記60歳男性尿の原液2.5mlに対し蒸留水47.5mlを加え20倍に希釈した。それぞれ50ml以上を測定試料とした。なお、サンプル記号は、F−1:60代男性試料(10倍希釈)、F−2:20代男性試料(10倍希釈)、F−3:60代男性試料(20倍希釈))である。また、F−1尿提供者、F−1尿提供者の血液を採取し、HbAICを測定した。
【0108】
(1)味覚評価データ
この溶液を使用し、味覚センサーとして、;Bch(AAE;旨味センサー)、40ch(CTO;塩味センサー)、41ch(CAO;酸味センサー)、16ch(COO;苦味センサー)、22ch(AE1;渋みセンサー)の5種を使用し、実施例1と同様に味覚評価データを取得した。また、実施例1と同様に測定誤差の平均(g)、標準偏差(S2)、誤差率(m2)とを算出した。また、出力最大値、最小値および出力幅を算出した。この結果を表14に示す。また、先味の全味覚センサーによる味覚評価データを図13に示す。
【0109】
一方、サンプル間の相違を検出しやすい味覚センサーを選択するため、実施例1と同様に操作し、先味および後味のデータにおいて、それぞれ出力幅が5mV以下のものおよび誤差率(m2)が50を超えるものは、非可食性物質間の識別が有意でないと判断し、不使用とした。この結果、先味では、16ch、22ch、40chの味覚センサーを選択した。後味では選択すべき味覚センサーはなかった。
【0110】
(2)エネルギーデータ、ICP−MS、原子分析、尿糖、尿蛋白
また、実施例1と同様にエネルギーデータ、ICP−MSによる分析データ、原子吸光光度計による分析データを取得し、それらの結果をそれぞれ表15、表16、表17に示す。また、尿糖、尿蛋白の結果を図14に示す。
【0111】
(3)HbAIC
F−1尿提供者のHbAICは、6.9であり、F−2尿提供者のHbAICは、4.5であった。なお、正常値は4.0〜5.8である。
【0112】
(4)結果
(i)測定試料が少ないためグループ化は困難であったが、表2に示すように41chでは、F−3、F−2、F−1の順に、22chでは、F−2、F−1、F−3の順に出力値が向上した。傾向が異なる2種の味覚センサーを組み合わせることで、3種のサンプルを明確に区分することができた。
【0113】
(ii)図14のデータおよびHbAICの結果から、F−1は、糖尿病の疑いがある。これに対応して表15のエネルギーデータにおいても、F−1で高値となっている。このことは、味覚評価データとエネルギーデータとを併用することで、疾患を診断しうることを示唆するものである。
【0114】
【表14】
【0115】
【表15】
【0116】
【表16】
【0117】
【表17】
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、従来の装置を使用して非可食性物質を新たな指標で分類または特定することができ、品質管理、工程管理や診断などに応用でき、自然科学、有毒物質、医学医療の分野で有用である。
【符号の説明】
【0119】
1・・・塩味センサー、
3・・・参照電極、
11・・・基準液、
21・・・サンプル液、
31・・・アルコール溶液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可食性物質を味覚センシング装置で評価し、
得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、非可食性物質の特定方法。
【請求項2】
非可食性物質を味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、
得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、請求項1記載の非可食性物質の特定方法。
【請求項3】
類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置で評価し、
得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質を評価することを特徴とする、非可食性物質の評価方法。
【請求項4】
類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、
得られた味覚評価データおよびエネルギーデータを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質の特性を評価することを特徴とする、請求項3記載の非可食性物質の評価方法。
【請求項5】
非可食性物質を味覚センシング装置から得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定し、
前記味覚評価データの変動を評価することで前記非可食性物質の品質を管理することを特徴とする、非可食性物質の品質管理方法。
【請求項6】
非可食性物質を味覚センシング装置およびカロリー測定器から得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定し、
前記前記味覚評価データおよびエネルギーデータの変動を評価することで前記非可食性物質の品質を管理することを特徴とする、請求項5記載の非可食性物質の品質管理方法。
【請求項7】
被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置で評価して得られた味覚評価データを指標として前記生体材料を特定し、
疾患を有する生体材料の味覚評価データとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、診断方法。
【請求項8】
被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置およびカロリー測定器とで評価して得られた味覚評価データおよびエネルギーデータを指標として前記生体材料を特定し、
疾患を有する生体材料の味覚評価データおよびエネルギーデータとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、請求項7記載の診断方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの方法に使用する、味覚センシング装置。
【請求項10】
請求項2、請求項4、請求項6または請求項8のいずれかの方法に使用する、カロリー測定器。
【請求項1】
非可食性物質を味覚センシング装置で評価し、
得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、非可食性物質の特定方法。
【請求項2】
非可食性物質を味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、
得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定することを特徴とする、請求項1記載の非可食性物質の特定方法。
【請求項3】
類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置で評価し、
得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質を評価することを特徴とする、非可食性物質の評価方法。
【請求項4】
類似する複数の非可食性物質をそれぞれ味覚センシング装置とカロリー測定器とで評価し、
得られた味覚評価データおよびエネルギーデータを指標として前記非可食性物質を類似するグループに区分して前記非可食性物質の特性を評価することを特徴とする、請求項3記載の非可食性物質の評価方法。
【請求項5】
非可食性物質を味覚センシング装置から得られた味覚評価データを指標として前記非可食性物質を特定し、
前記味覚評価データの変動を評価することで前記非可食性物質の品質を管理することを特徴とする、非可食性物質の品質管理方法。
【請求項6】
非可食性物質を味覚センシング装置およびカロリー測定器から得られた味覚評価データおよびエネルギーデータとを指標として前記非可食性物質を特定し、
前記前記味覚評価データおよびエネルギーデータの変動を評価することで前記非可食性物質の品質を管理することを特徴とする、請求項5記載の非可食性物質の品質管理方法。
【請求項7】
被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置で評価して得られた味覚評価データを指標として前記生体材料を特定し、
疾患を有する生体材料の味覚評価データとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、診断方法。
【請求項8】
被検者から得た血液、尿、唾液、およびその他の生体材料からなる群から選択されるいずれか1種の生体材料を味覚センシング装置およびカロリー測定器とで評価して得られた味覚評価データおよびエネルギーデータを指標として前記生体材料を特定し、
疾患を有する生体材料の味覚評価データおよびエネルギーデータとの相同から、前記被検者の疾患を診断することを特徴とする、請求項7記載の診断方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの方法に使用する、味覚センシング装置。
【請求項10】
請求項2、請求項4、請求項6または請求項8のいずれかの方法に使用する、カロリー測定器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−197233(P2010−197233A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42865(P2009−42865)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(300054631)有限会社エフ・テイ・イノベーション (14)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(300054631)有限会社エフ・テイ・イノベーション (14)
[ Back to top ]