説明

哺乳瓶用人工乳首

【課題】母乳による育児に近い授乳形態を有する人工乳首を提供することを目的とする。
【解決手段】哺乳瓶用人工乳首1の先端に中空形状の先端部10を設け、前記先端部10より先端と反対側に胴部20を設け、前記先端部10と前記胴部20との間に隔膜部30を設け、前記隔膜部30に弁31を設ける哺乳瓶用人工乳首1であって、前記隔膜部30に前記隔膜部30から前記胴部20側に向けて突出する湾曲部32を設け、前記湾曲部32に前記弁31を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳瓶等に装着される人工乳首に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、哺乳瓶によって搾乳された母乳、人工栄養等を間接的に授乳する際に、哺乳瓶の吸入部に人工乳首が取り付けられて使用されている。人工乳首は、母親の乳首の代替物であり、母乳による育児において補助的に利用されるものである。
元来、母乳には育児に必要な栄養分や成分等が含まれており、近年では母乳による育児が大幅に見直されている(例えば、ユニセフ及びWHOによる「母乳育児を成功させるための10カ条」等参照)。母親による直接母乳の利点の例として以下のようなものがある。例えば、乳児にとっては、高い栄養価を有し、この栄養は乳児の成長とともに変化するため、フォローアップミルクが不要となる。一方、母親にとっては、乳児とのスキンシップにより、母性愛を育むことにより、ホルモンバランスの安定、ひいては精神状態の安定を促す効果がある。
【0003】
しかし、直接母乳による母乳だけでは乳児の水分補給等には十分に対応できず、哺乳瓶及び人工乳首を用いた間接授乳又は水分補給は必要不可欠である。
このため、母乳で授乳される直接母乳の乳児が一時的に利用する人工乳首への移行をスムーズに行なえるように、また人工乳首で間接授乳される乳児の母乳による育児への移行をスムーズに行なえるように、母親の乳首と人工乳首との特性や感触を近似させる必要がある。そこで、母親の乳首に近似する人工乳首の開発・研究が広く行なわれている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
特許文献1に開示される技術は、乳首胴部と、この乳首胴部から突出して形成されている乳頭部とを有する人工乳首であって、前記乳頭部及び/又は前記乳首胴部のうち、この人工乳首を乳児がくわえた際に、乳児の舌と当接する部分には、他の部分より伸長し易い肉薄部が設けられ、この肉薄部は、人工乳首の長手方向に沿って、この肉薄部より肉厚が厚い剛性部を介して所定の間隔を空けて形成されていることを特徴とするものである。
これにより、この人工乳首を乳児がくわえた際に、乳児の舌と当接する部分が伸長し易い肉薄部により構成されるため、舌によって伸ばされることとなる。また、舌に圧力を加えられても剛性部により人工乳首が潰れにくくなっている。
特許文献2に開示される技術は、哺乳瓶に取り付けられる取付手段と、取付手段に連設された乳首胴部と、乳首胴部から突出して形成された乳頭部と、を有し、少なくとも乳頭部及び/又は乳首胴部の一部に柔軟な素材より成る伸長部が形成されると共に、少なくとも、取付手段及び乳首胴部の取付手段側は、伸長部より剛性を有する素材より成る剛性部となっており、取付手段には、哺乳瓶に取り付けられた人工乳首の内外を連通する通気手段が形成され、少なくとも、前記取付手段は、前記伸長部より剛性を有する素材より成る剛性部となっており、前記伸長部及び前記剛性部が、分離不能に結合されるよう一体成形で形成されることを特徴とするものである。
これにより、前記伸長部が乳児等の舌の蠕動様運動により、伸長する伸展可能な人工乳首となる。
【特許文献1】特許第3209271号公報
【特許文献2】特開2006−6809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の技術においては、その形状及び使用感等を母親の乳首に近づけているものである。
しかし、一般的に、乳児が母親から直接母乳を吸飲する際は、母体の乳首を乳輪部まで深く捕獲した状態で、上顎と下顎とを吸啜動作させながら、舌先で、乳輪部から乳頭部側へ押圧力を加えてしごきつつ吸啜している。すなわち、母体から直接授乳する場合には、母体の乳首先端の乳頭部を吸っただけでは、母乳を十分に吸飲できない場合がある。
さらに、人工栄養が流出しやすい人工乳首では、先端部の変形のみにより人工栄養が流出する場合があり、乳児が先端部のみを変形させて人工栄養を飲む可能性がある。仮にこのような人工乳首による間接授乳に乳児が慣れると、母親の乳首の先端だけをくわえる、いわゆる「先飲み」になる傾向があり、母乳からの直接授乳をしにくくなる傾向があり、人工乳首による間接授乳から母乳による育児への移行をスムーズにしにくい場合がある。
【0006】
本発明は、上記の如き状況を鑑み、母親の乳首にさらに近い人工乳首を提供することを目的とし、ひいては、母乳による育児に近い授乳形態を有する人工乳首を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、哺乳瓶用人工乳首の先端に中空形状の先端部を設け、前記先端部より先端と反対側に胴部を設け、前記先端部と前記胴部との間に隔膜部を設け、前記隔膜部に弁を設ける哺乳瓶用人工乳首であって、前記隔膜部に前記隔膜部から前記胴部側に向けて突出する湾曲部を設け、前記湾曲部に前記弁を設けるものである。
前記隔膜部は、当該隔膜部の全部を湾曲部として構成してもよい。
【0009】
請求項2においては、さらに前記弁の周囲に、当該弁と所定の間隔を空けて前記胴部側に向けたリブを設けるものである。
【0010】
請求項3においては、さらに前記胴部は、それぞれ曲率の異なる第一胴部と第二胴部とを有し、前記第一胴部と前記第二胴部との間の周上に、前記胴部内側に凹んだ段部を設けるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1の如く構成される本発明によれば、弁の開き方向が吸飲方向と逆方向に限定され、弁を通過する際に勢いが弱まり、哺乳瓶内の収容物を吸飲するために必要な吸飲力が大きくなるので、母体から母乳を吸飲する際に適した飲み方の授乳形態を実現でき、母乳による育児への移行、および母乳による育児から人工乳首への移行をスムーズにできる。
【0013】
請求項2の如く構成される本発明によれば、さらに、哺乳瓶用人工乳首をくわえた時の周囲からの圧力によってリブが弁の開き方向に変形するため、弁の開閉を担保できるとともに、弁の剛性を向上させることができる。これにより、弁の開口量を経時的にほぼ一定に保つことができる。
【0014】
請求項3の如く構成される本発明によれば、さらに、哺乳瓶用人工乳首の剛性を高めることができるとともに、母親の乳首および乳輪の形状、感触により近づけることができる。また、哺乳瓶用人工乳首における乳児の唇の位置をあわせやすく、乳児に直接母乳に近い吸飲運動を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の哺乳瓶用人工乳首に係る実施の一形態である哺乳瓶用人工乳首1について、図面を参照して説明する。
なお、以下において、図中における矢印Aの指す方向を上とし、上下方向を規定する。
【0016】
以下では、図1乃至図3を参照して、哺乳瓶用人工乳首1の全体構成について説明する。
【0017】
哺乳瓶用人工乳首1は、取り付け部40を介して哺乳瓶(不図示)に装着されるものである。哺乳瓶用人工乳首1は、本実施例ではシリコーンゴムからなる部材であるが、これに限定されず、イソプレンゴム、天然ゴム等の可曉性及び伸縮性を有する素材から成る部材であってもよい。また、哺乳瓶用人工乳首1は、インジェクション成形、コンプレッション成形等により成形される。
図1乃至図3に示すように、哺乳瓶用人工乳首1は、それぞれ一体的に成形される、先端部10、胴部20、隔膜部30、取り付け部40等を具備する。哺乳瓶用人工乳首1は、釣鐘形状に構成されており、下部に側方に延出された取り付け部40が設けられた形状となっている。
【0018】
図1乃至図3に示すように、先端部10は、中空の略円筒形状の部材であり、上端に設けられる開口部11において開口される。この開口部11より前記哺乳瓶に収容される搾乳された母乳、人工栄養等が吸飲、漏出可能に構成される。
【0019】
図1乃至図3に示すように、胴部20は、上端部において先端部10の下端部と接続される。胴部20は、中空の略円錐形状の部材である。この胴部20に外側から圧力を加えることにより、胴部20が変形するとともに弁31が開き状態になり、先端部10と胴部20とが連通される構成である。
【0020】
図3に示すように、隔膜部30は、先端部10と胴部20との間に設けられてそれぞれの内部空間を仕切る部材である。平面視において隔膜部30の中心部分に弁31が設けられ、上述の如く、この弁31が開き状態になることによって先端部10と胴部20とが連通される構成である。
隔膜部30は湾曲した形状となっており、図3に示すごとく、弁31の位置は、高さにおいて、隔膜部30と先端部10および胴部20との接続部に対してオフセットした位置にある。本実施例において、隔膜部30は下方に突出した湾曲部もしくは凹部により構成され、弁31は隔膜部30の周縁より下方に位置している。これにより、胴部20の変形による応力により、隔膜部30の弁31を開きやすくでき、弁31によるミルクなどの飲料の流出特性が制御しやすい。また、隔膜部30と胴部20との接続部は円滑な曲面を形成しているので、効率的に応力を分散でき、応力の局所的な集中を解消しやすく、洗浄も容易にできる。
【0021】
図1乃至図3に示すように、取り付け部40は、上端部において胴部20の下端部と接続される、略ドーナツ形状の部材である。取り付け部40の周囲には段41が形成され、下面にはリブ42・42が設けられ、取り付け部40の上面と下面とを連通する空気孔43が設けられる。この取り付け部40により哺乳瓶用人工乳首1が哺乳瓶に装着される構成である。
【0022】
以下では、図3乃至図6を参照して、本実施例における弁31について詳しく説明する。
【0023】
図3に示すように、湾曲部32は、断面視において中心部が最下端部となるように下方に(胴部20側に)向けて湾曲する略球面形状を有し、下方に向けて突出して設けられる。そして、湾曲部32の前記最下端部に弁31が設けられる。
なお、本実施例において湾曲部32は、断面視において中央部が最下端部となるように下方に(胴部20側に)向けて湾曲する略球面形状を有する構成であるが、これに限らず、弁31の形状や構成に応じて、図4(a)に示すような、断面視U形状を有する構成、図4(b)に示すような、断面視V形状を有する略円錐形状を有する構成等としてもよい。
また、本実施例において弁31は、平面視円形状を有するとともに中心部分を有する哺乳瓶用人工乳首1の中心部である湾曲部32の平面視中心部(つまり、最下端部)に設けられることが好ましい。
【0024】
図5に示すように、本実施例における弁31は、平面視X形状のクロスカットによる切り目により形成されるが、図6に示すように、平面視I形状のシングルカット(図6(a)参照)、平面視Y形状のトリプルカット(図6(b)参照)、平面視「*」形状のカット(図6(c)参照)、平面視米形状のカット(図6(d)参照)等の切り目により形成されるもの、断面視V形状を有する切り欠き(スリット)により形成されるもの(図6(e)、(f)参照)、円錐形状の孔により形成されるもの(図6(g)、(h)参照)等であってもよく、例えば、図6(e)又は図6(g)に示すような、上面側の開口面積が下面側の開口面積より小さい形状の場合には、吸飲する際に弁31を通過しやすい形状とすることができ、図6(f)又は図6(h)に示すような、上面側の開口面積が下面側の開口面積より大きい形状の場合には、吸飲する際に弁31における逆流を防ぐ形状とすることができる。
【0025】
以下では、図7を参照して、母体内での母乳生成のメカニズムについて説明する。
図7に示すように、乳房100内の乳腺組織の一つである乳腺房101・101・・・内で母乳が作られた後、乳腺房101・101・・・にそれぞれ接続される乳管102・102・・・を介して乳管洞103・103・・・に一時的に貯蓄され、この乳管洞103・103・・・から母乳の出口である乳口104・104・・・に運ばれ、乳口104・104・・・から母乳が漏出される。
【0026】
以下では、図8を参照して、乳児が母乳を母体より直接的に吸飲する場合と、乳児が本実施例における哺乳瓶用人工乳首1を用いて間接的に吸飲する場合と、について説明する。
乳児が母乳を母体より直接的に吸飲する場合は、図8(a)に示すように、乳房100を乳管洞103・103・・・付近まで捕獲して、上顎と下顎とを吸啜動作させながら、舌先で、乳輪部105から乳頭部側へ押圧力を加えてしごきつつ吸啜する。そして同時に適当な圧力で吸飲することにより乳管洞103・103・・・から乳口104・104・・・に母乳が運ばれ、乳口104・104・・・より母乳が漏出する構成である。
【0027】
他方、乳児が本実施例における哺乳瓶用人工乳首1を用いて間接的に吸飲する場合は、図8(b)に示すように、胴部20の上下中央部付近まで上唇と下唇で挟み込んで捕獲し、上顎と下顎とを吸啜動作させて胴部20の外側から押圧力を加え、胴部20を変形させるとともに弁31を開き状態にし、舌先で胴部20の上端部側から先端部10にかけてしごきつつ吸啜することにより哺乳瓶内に収容される搾乳された母乳、人工栄養等が弁31を通過する。そして、弁31を通過した後は先端部10の内部空間に溜まり、引き続き吸啜することにより吸飲可能となる構成である。
【0028】
以下では、図9乃至図11を参照して、本実施例における胴部20に対して外側から挟み込むように押圧力を加えたときの弁31の動きについて説明する。
【0029】
図9及び図10に示すように、胴部20(第一胴部21近傍)に対して外側から押圧力が加えられると、胴部20が変形し、この変形による力が隔膜部30に伝わり、弁31が開く方向に動く。
以下に、このときの弁31の動きについて具体的に説明する。
【0030】
図11(a)に示すように、押圧力が加えられる箇所においては、押圧力が加えられる方向(図中矢印Fの指す方向)に変形し、隔膜部30は加えられた押圧力に応じて内側に向けて押圧される。つまり、弁31は閉じる方向、かつ、下方に向けて押圧される。
これに対して、図11(b)に示すように、押圧力が加えられる方向から平面視略90度回転させた箇所においては、哺乳瓶用人工乳首1の変形による弾性力により、外側に向かう方向(図中矢印Gの指す方向)に内力が発生する。この内力は、下方に向けて突出させて設けられる湾曲部32において外側に向かう方向に発生し、かつ、内力が発生する箇所に近い湾曲部32の下側に発生する力の大きさが、同じく上側に発生する力の大きさよりも大きく作用するので、弁31が下方に向けて開く方向に動く。
このようにして、胴部20に対して外側から挟み込むように押圧力を加えることで弁31が開き状態になる(図9及び図10参照)。また、上述のような吸飲動作と同時に、哺乳瓶用人工乳首1を吸飲方向に吸い込むことによって、胴部20が上下方向に伸び、哺乳瓶用人工乳首1の上下方向の変形量が大きくなるので、弁31の開度が大きくなる。
【0031】
以上のように、本実施例における隔膜部30には弁31が設けられ、隔膜部30から胴部20側に向けて突出する湾曲部32が設けられ、弁31は湾曲部32の平面視中央部であって、最下端部に設けられるので、前記哺乳瓶に収容される搾乳された母乳、人工栄養等が弁31を通過する際に、弁31が上方に向けて開きにくくなる。
【0032】
これにより、弁31の開き方向が下方向(吸飲方向と逆方向)に限定され、弁31が抵抗となり、弁31を通過する際の勢いが弱まり、上方向(吸飲方向)への噴出を防止することができるとともに、哺乳瓶用人工乳首1を介して哺乳瓶に収容される搾乳された母乳、人工栄養等を強く吸飲する必要があるので、母体から母乳を吸飲する際に適した飲み方の授乳形態を実現でき、母乳による育児への移行、および母乳による育児から人工乳首への移行をスムーズにできる。
また、湾曲部32は隔膜部30の内側面より胴部20側に向けて突出して設けられるとともに、逆太鼓橋形状を有することにより、材料の弾性力を利用することに加えて、形状による内力が発生するので、吸飲時以外に湾曲部32が弁31を閉じる方向に力を強く加えることが可能となり、哺乳瓶の転倒等によって哺乳瓶内に収容される搾乳された母乳、人工栄養等が弁31を通過して漏出することを確実に防止できる。
さらに、先端部10の内部空間において、搾乳された母乳、人工栄養等と唾液とが十分に混ざり合うので、吸飲しながら口腔内に吸飲される搾乳された母乳、人工栄養等を唾液で洗うことができ、口腔内環境を改善できる。
【0033】
また、吸飲動作と同時に、哺乳瓶用人工乳首1を吸飲方向に吸い込むことによって、胴部20が上下方向に伸び、哺乳瓶用人工乳首1の上下方向の変形量が大きくなるので、弁31の開度が大きくなり、吸飲し易くなる。これにより、母体から母乳を吸飲する際により適した飲み方の授乳形態を実現できる。
また、先端部10と胴部20との間に隔膜部30が設けられ、この隔膜部30に弁31が設けられるので、先端部10に押圧力を加えるだけでは弁31が開かない構造を実現できる。これにより、さらに母体から母乳を吸飲する際に適した飲み方の授乳形態を実現できる。
【0034】
以下では、図3、図9乃至図12を参照して、本実施例におけるリブ33について詳しく説明する。
【0035】
図3及び図12に示すように、リブ33は環状形状を有し、隔膜部30に設けられる湾曲部32の下面より弁31の周囲に当該弁31と所定の間隔を空けて、下方に向けて設けられる部材である。
図9乃至図11に示すように、胴部20に外側からの押圧力が加えられると、上述のように湾曲部32に内力が発生し、リブ33は内力が発生する方向(図中矢印Gが指す方向)、つまり、弁31の開く方向と同じ方向に変形し、胴部20に加えられる押圧力がなくなると、逆方向、つまり、弁31を閉じる方向に変形するので、弁31の剛性を向上させることができ、弁31の開閉を担保できる。これにより、弁31の開口量を経時的にほぼ一定に保つことができる。さらには、吸飲時以外に哺乳瓶の転倒等によって哺乳瓶内に収容される搾乳された母乳、人工栄養等が弁31を通過して漏出することをより確実に防止できる。
【0036】
以下では、図2及び図8を参照して、本実施例における胴部20の形状について詳しく説明する。
【0037】
図2に示すように、胴部20は、それぞれ曲率の異なる第一胴部21と第二胴部22とを有し、上下方向において第一胴部21と第二胴部22との間であって、胴部20の外周側の、前記曲率の変曲点には、段部23が設けられる。
図8(b)に示すように、哺乳瓶用人工乳首1を用いて吸飲する際には、段部23付近まで咥え込み、第一胴部21を上顎と下顎で挟み込んで押圧力を加える。
なお、本実施例では、段部23は胴部20の上下略中央部に配置されるが、これに限定されず、乳児が哺乳瓶用人工乳首1を咥えたときに上顎と下顎と(または上唇と下唇と)で挟み込む位置に配置されていればよい。また、図8(a)及び図8(b)に示すように、本実施例における第一胴部21は、母親の乳輪部105と略同じ形状となる曲率を有する。
【0038】
以上のように、胴部20は、それぞれ曲率の異なる曲面から構成される第一胴部21と第二胴部22とを有し、第一胴部21と第二胴部22との間であって、胴部20の外周面上に、内側に凹んだ段部23を設けるので、乳児が哺乳瓶用人工乳首1を咥え込む際に段部23付近まで咥える形状とすることができ、より母親の乳首および乳輪の形状、感触に近づいた哺乳瓶用人工乳首1を実現できる。また、哺乳瓶用人工乳首1における乳児の唇の位置をあわせやすく、乳児に直接母乳に近い吸飲運動を促すことができる。
また、胴部20は、第一胴部21と曲率の異なる第二胴部22を有することによって、胴部20を外側から咥え込む際に、第一胴部21及び第二胴部22に発生する内力の大きさの差が発生するので、胴部20全体の剛性を向上させることができ、ひいては、哺乳瓶用人工乳首1の形状を維持し易くなる。
さらに、第一胴部21は、母親の乳輪部105と略同じ形状となる曲率を有するので、より母親の乳首および乳輪の形状、感触に近づいた哺乳瓶用人工乳首1を実現できる。
【0039】
さらに、乳児が咥える箇所となる第一胴部21の外周面に螺旋状の突起、凹凸、又はディンプル等を設けることにより、咥えたときのフィット感や触感を母親の乳首および乳輪に近づけることも可能である。これにより、本発明に係る哺乳瓶用人工乳首1から直接母乳への移行がよりスムーズになる。
【0040】
また、本発明の哺乳瓶用人工乳首に係る実施の一形態である哺乳瓶用人工乳首1は、乳児が哺乳瓶から吸飲する場合に限らず、例えば高齢者等が水分補給をする際の飲み口として利用することも可能であり、上述のように、弁31の働きにより勢いの強い噴出を防止することができるので、哺乳瓶内の収容物が喉に直接当たって咽ることを防止でき、より安全な水分補給が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の哺乳瓶用人工乳首に係る実施の一形態を示す斜視図。
【図2】本発明の哺乳瓶用人工乳首に係る実施の一形態を示す側面図。
【図3】図2におけるB−B’線断面図。
【図4】本発明の湾曲部に係る実施の別形態を示す拡大断面図。
【図5】図3におけるC−C’線断面図。
【図6】本発明の弁に係る実施の別形態を示す拡大断面図(a)拡大平面断面図(b)拡大平面断面図(c)拡大平面断面図(d)拡大平面断面図(e)スリット状の弁を示す拡大側面断面図(f)スリット状の弁を示す拡大側面断面図(g)孔状の弁を示す拡大側面断面図(h)孔状の弁を示す拡大側面断面図。
【図7】母乳生成のメカニズムを示す模式図。
【図8】授乳形態を示す模式図(a)直接母乳による授乳形態を示す模式図(b)本発明の哺乳瓶用人工乳首を用いた間接授乳による授乳形態を示す模式図。
【図9】本発明の胴部に外力が加えられた状態を示す平面図。
【図10】本発明の胴部に外力が加えられた状態を示す模式図。
【図11】本発明の胴部に外力が加えられた状態を示す断面図(a)図9におけるD−D’線断面図(b)図9におけるE−E’線断面図。
【図12】本発明の哺乳瓶用人工乳首に係る実施の一形態を示す底面図。
【符号の説明】
【0042】
1 哺乳瓶用人工乳首
10 先端部
11 開口部
20 胴部
21 第一胴部
22 第二胴部
23 段部
30 隔膜部
31 弁
32 湾曲部
33 リブ
40 取り付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳瓶用人工乳首の先端に中空形状の先端部を設け、
前記先端部より先端と反対側に胴部を設け、
前記先端部と前記胴部との間に隔膜部を設け、
前記隔膜部に弁を設ける哺乳瓶用人工乳首であって、
前記隔膜部に当該隔膜部から前記胴部側に向けて突出する湾曲部を設け、
前記湾曲部に前記弁を設ける哺乳瓶用人工乳首。
【請求項2】
前記弁の周囲に、当該弁と所定の間隔を空けて前記胴部側に向けたリブを設ける、ことを特徴とする請求項1に記載の哺乳瓶用人工乳首。
【請求項3】
前記胴部は、それぞれ曲率の異なる第一胴部と第二胴部とを有し、前記第一胴部と前記第二胴部との間の周上に、前記胴部内側に凹んだ段部を設ける、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の哺乳瓶用人工乳首。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−106614(P2009−106614A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283404(P2007−283404)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000107284)ジェクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】