説明

商品表示具

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、商品陳列棚等に取り付けて用いられる商品表示具に係り、更に詳しくは、陳列された商品に対する商品名、価格、商品特長等の表示を、商品の陳列スペースや陳列態様に合わせて効率的且つ効果的に行うことのできる商品表示具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、店頭における商品の陳列構造には、購買者の目を引くために様々な工夫が凝らされている。最近では、商品陳列棚自体も変化に富み、また各種各様のPOPが開発されてそれぞれの店頭で用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】確かに、購買者の目を引く売り場を展開するためには、商品を陳列する棚自体に変化をもたせることが効果的ではあるが、そのためにはコストがかかりすぎるという問題がある。そして、すべての売り場が充分な陳列スペースをもっているというわけではなく、また、通常の商品は季節の変わり目等に都度切り換えられるものであるため、陳列棚や什器そのものに斬新さを求めることには限界があった。このようなことから、多くの売り場では、ごく一般的な陳列棚、すなわち支柱に対して水平に棚板を取り付ける方式の陳列棚を設置しているというのが実情である。
【0004】しかしながら、上記ような通常の陳列棚においては、陳列商品に対して行われる表示は、ほとんどの場合が単に棚板の前面に樹脂製の名札のようなものを取り付けてそこに商品名、価格等を示すにとどまっている。従って、このような状況のもと、商品のメーカーが購買者に伝えたいセールスポイントを売り場においていかに的確に表示するかということが、メーカー側の課題であった。そこで、メーカー側が各種POPや表示ラベルを売り場に提供して使用してもらうという手段がとられているが、それぞれの売り場の規模によって設置されている陳列棚の大きさも異なるため、すべての売り場において有効に使用されるものを提供することは極めて困難であった。
【0005】本発明は、上述のような実情に鑑みなされたものであって、陳列された商品に対する商品名、価格、商品特長等の表示を、商品の陳列スペースや陳列態様に合わせて効率的且つ効果的に行うことができ、且つ複雑な構造を必要とすることなく、低コストで製作可能で使い勝手の良好な商品表示具の提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の商品表示具は次のような構成をとる。すなわち、商品陳列棚に陳列された複数の商品の前方に取り付けられる商品表示具であって、正面部と背面部との間に収納部が形成された細長板状の基板と、上記収納部内に収納され、収納部の長手方向に沿ってスライドさせることにより収納部内から引き出し可能なスライド板とからなり、上記基板及びスライド板が、それぞれの正面に商品の商品名等が表示された複数の商品表示部を有するとともに、上記収納部からスライド板を引き出した状態でスライド板の抜けを抑止するストッパ機構を備え上記収納部からスライド板を引き出すことにより、基板の商品表示部とスライド板の商品表示部とが陳列されている複数の商品と対応した状態で商品の前方に並ぶことを特徴とする商品表示具である。そして、上記ストッパ機構は、スライド板の端縁を折り返してなる係合部と、収納部からスライド板を引き出した状態で上記係合部と係合しうるように基板の端縁を折り返してなる被係合部とから構成することができる。
【0007】
【作用】上記の構成をとる本発明の商品表示具においては、正面部と背面部との間に形成された収納部内にスライド板が収納され、このスライド板が、上記収納部の長手方向に沿ってスライドさせることで収納部内から引き出されるようになっており、なおかつ収納部からスライド板を引き出した状態でスライド板の抜けを抑止するストッパ機構が設けられているため、ストッパ機構が作用する位置を終点としてスライド板をスライドさせながら基板から適宜引き出すことにより、全体の長さを、基板の長さからスライド板を最大に引き出した長さまでの範囲内で容易に設定することができる。また、基板及びスライド板それぞれの正面に複数の商品表示部が設けられているため、商品の陳列幅に合わせて上記のように基板の収納部内からスライド板を適宜引き出して全体の長さを設定し、基板の商品表示部とスライド板の商品表示部とを陳列されている複数の商品と対応した状態で商品の前方に並べることにより、複数の商品に対応させて商品名、価格、商品特長等を表示することができ、商品の陳列態様にフレキシブルに対応した表示を的確且つ容易に行うことが可能となるのである。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0009】図1は、本発明の商品表示具の一実施例を示す正面図である。同図に示すように、この商品表示具は、長さ約30cm×幅約5cmの細長い矩形状の基板(1)と、この基板(1)の左右両側から端部を突出させた状態で基板(1)の内部に収納されている2枚のスライド板A(2a)及びB(2b)とから構成されている。
【0010】上記基板(1)は、図1のA−A線断面図である図2に示すように、正面部(3)と、背面部(4)と、これら正面部(3)と背面部(4)との間に挟まれた仕切り部(5)とを備え、正面部(3)と仕切り部(5)との間及び背面部(4)と仕切り部(5)との間に2つの収納部A(6a)及びB(6b)を形成してなるものである。そして、一方の収納部A(6a)に1枚のスライド板A(2a)がスライド可能に収納されるとともに、他方の収納部B(6b)にはもう1枚のスライド板B(2b)がスライド可能に収納されている。これらスライド板A(2a)及びB(2b)は、上記基板(1)の収納部A(6a)及びB(6b)内にスライド可能に挿入しうるように基板(1)の幅(約5cm)よりも若干細幅(約4.5cm)に形成され、基板(1)の長さと略同じ長さを上記収納部A(6a)及びB(6b)内に収納した状態で、図1に示すように、矢印形状を呈する各端部(2c)が基板(1)の左右両側からそれぞれに突出して現れるようになっているものである。
【0011】また、上記スライド板A(2a)において基板(1)の収納部A(6a)に収納されている側の端縁には仕切り部(5)に向けて折り返された係合部A(7a)が形成され、同じくスライド板B(2b)において基板(1)の収納部B(6b)に収納されている側の端縁には背面部(4)に向けて折り返された係合部B(7b)が形成されている。そして一方、基板(1)においては、仕切り部(5)及び背面部(4)の端縁が、それぞれ上記スライド板A(2a)及びB(2b)に向けて折り返され、スライド板A(2a)及びB(2b)を最大に引き出した状態で上記係合部A(7a)及びB(7b)と係合しうる被係合部A(8a)及びB(8b)が形成されている。従って、図2中に矢印X及びYで示すように、スライド板A(2a)及びB(2b)を基板(1)の収納部A(6a)及びB(6b)内でスライドさせながら外に引き出すようにすると、ある時点で上記係合部A(7a)、B(7b)と被係合部A(8a)、B(8b)とがそれぞれに係合し、その係合が基板(1)の収納部A(6a)及びB(6b)からのスライド板A(2a)及びB(2b)の抜けを抑止するストッパ作用を奏するようになるのである。例えば、スライド板B(2b)の側を基板(1)の収納部(6b)から引き出した場合には、図3に示すような状態となるが、これを最後まで引き出したときには、上記係合部B(7b)と被係合部B(8b)とが相互に係合してストッパ作用を奏し、それ以上は引き出すことのできない状態となるのである。
【0012】このように構成された商品表示具は、上で説明した図2及びその背面図である図4に示されているように、基板(1)の左右両端部に設けられた接着シール部A(9)と、上記スライド板A(2a)及びB(2b)の端部に設けられた接着シール部B(10)とをそれぞれの背面側に有するものである。すなわち、上記接着シール部A(9)によって基板(1)を陳列棚の棚板前面等に位置決め固定するとともに、商品の陳列幅に合わせて上記スライド板A(2a)及びB(2b)を基板(1)から適宜引き出し、その長さを設定した上で上記接着シール部B(10)によってスライド板A(2a)及びB(2b)を位置決め固定することができるのである。
【0013】また、基板(1)の正面部(3)及びスライド板A(2a)及びB(2b)の正面側には、略矩形状の商品表示部(11)がそれぞれ4個ずつ枠取りによって設けられており(図3参照)、更にスライド板A(2a)及びB(2b)の矢印状端部(2c)には、ある商品のセールスポイントを訴求するキャッチコピー等が示されている。従って、図5に示すように、陳列棚(12)に商品(13)を陳列した前面にこの商品表示具の基板(1)とスライド板A(2a)及びB(2)とを適宜位置決め固定し、陳列されている商品(13)に合わせて上記商品表示部(11)に商品名、価格、商品特長等を表示したシールを貼着することにより、商品(13)の陳列スペースや陳列態様に合わせて効果的な表示を合理的に行うことができるのである。
【0014】この商品表示具は、図6に示す一枚のシート(14)を折り畳んでなる基板(1)と、上述した2枚のスライド板A(2a)及びB(2b)とから形成することができる。同図は、説明の便宜上、シート(14)を裏面側から見た図を示しているが、この図に示すように、上記シート(14)は、上から順に糊代部A(15)、正面部(3)、背面部(4)、仕切り部(5)及び糊代部B(16)が連設されるとともに、上記背面部(4)の右端及び仕切り部(5)の左端に、それぞれ折り込み部A(17)及び折り込み部B(18)が連設されてなるものである。そして、まず糊代部B(16)の表面(同図における裏面)に接着剤を塗布し、折線A(19)及びB(20)を谷折りにして上記接着剤を塗布した糊代部B(16)を背面部(4)に設けられた第1の接着部(21)に接着する。このとき、図7に示すように、上記折り込み部A(17)を内側に折り込むとともに、端縁を折り返して係合部B(7b)を形成したスライド板B(2b)を仕切り部(5)と背面部(4)との間に挟むようにする。次に、糊代部A(15)の表面(同図における裏面)に接着剤を塗布して折線C(22)及びD(23)を谷折りにし、この糊代部A(15)を仕切り部(5)に設けられた第2の接着部(24)に接着する。そして、このときに、上記折り込み部A(17)を折り込む際の手順と同様に、折り込み部B(18)を内側に折り込むとともに、端縁を折り返して係合部A(7a)を形成したスライド板A(2a)を仕切り部(5)と正面部(3)との間に挟むことによって、上述の構成をとる商品表示具が完成するのである。
【0015】次に、上記の構成をとる商品表示具の使用方法について説明する。
【0016】まず、商品のメーカーは、この商品表示具のスライド板A(2a)及びB(2b)の端部(2c)に対象とする商品群のキャッチコピー等を記し、その商品群の各種商品に対応する表示を行った表示シールとともに上記商品表示具を売り場に提供する。すなわち、シャンプー、リンス等の頭髪化粧料を対象とする場合には、上記端部(2c)に「髪の乾燥注意報、髪と地肌にやさしい」というようなキャッチコピーが書かれた商品表示具と、商品の種類に合わせて「地肌ケアまで考えたシャンプー、1,000円」、「サラサラ仕上げリンス、1,000円」というような表示がなされた複数枚の表示シールとがメーカー側で用意され、売り場側に提供されるのである。そして、売り場側では、その陳列スペースを考慮して見栄えの良いように商品を陳列した後、その陳列幅に合わせて基板(1)の収納部A(6a)及びB(6b)からスライド板A(2a)及びB(2b)を適宜引き出し、この表示具全体としての長さを設定する。しかる後、この商品表示具を、上記接着シール部A(9)及びB(10)により陳列棚の棚板前面等に位置決め固定し、陳列されている商品に合わせて、商品表示部(11)に上記表示シールを貼着するのである。尚、上記スライド板A(2a)及びB(2b)を基板(1)から引き出す操作は、上記接着シール部A(9)で基板(1)の側を先に位置決め固定してから行うようにしてもよい。
【0017】上述したように、この商品表示具は、基板(1)の収納部A(6a)及びB(6b)からのスライド板A(2a)及びB(2b)の引き出し長さを適宜変えることにより、商品の陳列スペースに合わせてそれぞれの商品に対応させた表示を効果的に行うことができるものである。また、その構造も、一枚のシート(14)を折り畳んで形成される基板(1)と2枚のスライド板A(2a)及びB(2b)とを組み合わせてなる簡単なものであり、低コストで極めて容易に製作することのできるものである。
【0018】尚、上記の実施例では、基板(1)を、正面部(3)、背面部(4)及び仕切り部(5)から構成し、これらによって形成される2つの収納部A(6a)及びB(6b)のそれぞれに2枚のスライド板A(2a)及びB(2b)を収納するようにしているが、本発明の商品表示具においては、基板を正面部及び背面部のみから構成し、その間に形成される収納部に2枚のスライド板を重ねて収納するか、あるいはスライド板を1枚だけ収納して一方側から引き出す構造とし、上記の実施例と同様のストッパ機構を設けるようにしてもよい。
【0019】
【発明の効果】以上のように、本発明の商品表示具は、店舗の売り場スペースに合わせて設置された商品陳列棚等における商品の陳列態様に応じて、商品に対する商品名、価格、商品特長等の表示を効率的且つ効果的に行うことを可能とするものであり、複雑な構造を必要とせず、汎用性が高く極めて使い勝手の良いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の商品表示具の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】同実施例の商品表示具の使用状態を説明する説明図である。
【図4】同実施例の商品表示具の背面図である。
【図5】同実施例の商品表示具の使用状態を説明する説明図である。
【図6】同実施例の商品表示具における基板を形成するシートの展開図である。
【図7】同実施例の商品表示具を組み立てる手順を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 基板
2 スライド板
3 正面部
4 背面部
6 収納部
7 係合部(ストッパ機構)
8 被係合部(ストッパ機構)
11 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 商品陳列棚に陳列された複数の商品の前方に取り付けられる商品表示具であって、正面部(3)と背面部(4)との間に収納部(6)が形成された細長板状の基板(1)と、上記収納部(6)内に収納され、収納部(6)の長手方向に沿ってスライドさせることにより収納部(6)内から引き出し可能なスライド板(2)とからなり、上記基板(1)及びスライド板(2)が、それぞれの正面に商品の商品名等が表示された複数の商品表示部(11)を有するとともに、上記収納部(6)からスライド板(2)を引き出した状態でスライド板(2)の抜けを抑止するストッパ機構(7)及び(8)を備え、上記収納部(6)からスライド板(2)を引き出すことにより、基板(1)の商品表示部(11)とスライド板(2)の商品表示部(11)とが陳列されている複数の商品と対応した状態で商品の前方に並ぶことを特徴とする商品表示具。
【請求項2】 請求項1のストッパ機構(7)及び(8)が、スライド板(2)の端縁を折り返してなる係合部(7)と、収納部(6)からスライド板(2)を引き出した状態で上記係合部(7)と係合しうるように基板(1)の端縁を折り返してなる被係合部(8)とから構成されている商品表示具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】特許第3046495号(P3046495)
【登録日】平成12年3月17日(2000.3.17)
【発行日】平成12年5月29日(2000.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−104481
【出願日】平成6年4月19日(1994.4.19)
【公開番号】特開平7−287528
【公開日】平成7年10月31日(1995.10.31)
【審査請求日】平成8年1月29日(1996.1.29)
【出願人】(000000952)鐘紡株式会社 (120)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−194277(JP,A)
【文献】特開 平3−206592(JP,A)
【文献】実開 平6−50076(JP,U)
【文献】実開 昭59−48876(JP,U)
【文献】実開 昭63−8774(JP,U)