説明

喘息の処置

【課題】喘息の新規な処置方法を提供すること。
【解決手段】喘息の処置方法につき開示する。この方法は、VLA−4を認識する抗体、ポリペプチドもしくは他の分子、たとえば好酸球のような或る種の白血球の表面で発現される蛋白質を投与することからなっている。本発明は、喘息罹患者に有効量のたとえばモノクローナル抗体HP1/2のような抗−VLA−4抗体を投与する工程からなる方法を提供する。抗−VLA−4抗体は慢性アレルゲン誘発喘息を有する患者にインビボで有利に投与され、アレルゲンに対する後期反応を阻止すると共に気道過反応性を軽減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は喘息の処置に関するものである。より詳細には本発明は、喘息の処置におけるベリーレイト抗原−4(Very Late Antigen−4)(VLA−4)、すなわち内皮細胞リセプタ血管細胞付着分子−1(VCAM−1)のための或る種の白血球におけるリガンドを認識する抗体の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
喘息は広範な可逆性気道狭窄(気管支収縮)および各種の刺激に対する気道の過敏性増大(過反応症)を特徴とする気道の症状である。喘息の周知された徴候、たとえば咳、喘鳴、胸詰、呼吸困難は気道平滑筋の収縮、気管支粘液分泌の増加および炎症によって生ずる。殆ど致命的でないが、喘息は世界中の学齢児童の10〜20%を占めると推定され、小児喘息の病院収容が近年劇的に増大しており、米国の1調査が示すところでは喘息を有する15才未満の児童の病院収容は少なくとも1970年から1984年の間に少なくとも145%増大している(M.R.シアーズ、1990[1]参照)。全体として、1,000万人のアメリカ人(人口の4%)が喘息を有すると推定され、約40億ドルがその処置に毎年費やされている(L.K.アルトマン、1991[2];C.スタール、1991[3])。
【0003】
喘息の原因は完全には理解されていないが、急性喘息症状を引き起こす薬剤の研究は、喘息が個人の環境における特定アレルゲンに対し反応する個人の免疫学的反応であるという理論を支持している。これらの「引き金」は、気道過反応性の一時的増大を引き起こすことにより喘息を悪化させる。気道過反応性を誘発することが判明している引き金はアレルゲン吸入、個人が敏感になっている(たとえば職業的露呈による)低分子量物質の吸入、ウィルス性もしくはマイコプラズマ性呼吸器感染、並びにたとえばオゾンおよび二酸化窒素のような酸化性ガスを包含する。これら「誘発性」引き金は運動、冷気、感情ストレス、薬理学的引き金、刺激剤の吸入を包含する気管支痙攣症状の「興奮性」引き金とは区別することができる。誘発性引き金の一般的特徴は、気道炎症を伴うことである。興奮性引き金は平滑筋収縮(気管支痙攣)を生ぜしめ、これは気道反応性の増大でなく或る程度の過反応性に依存する(D.W.コッククロフト、1990[4]参照)。
【0004】
気道炎症が一時的(急性)および永続的な気道過反応性の原因であるという認識は、喘息罹患者の処置に衝撃を与えている。喘息の早期治療は気管支収縮に集中し、多くの有効な気管支拡張剤の開発をもたらしている。最も一般的に処方されるものはβ2−アドレノセプタ作用剤(エピネフィリン、イソプロテレノール、アルブテロール、サルメテロールなど)、キサンチン(カフェイン、テオフィリンなど)およびコリノセプタ拮抗剤(アトロピン、アセチルコリンなど)であった。しかしながら極く最近、抗炎症剤が喘息の最も重要な治療として気管支拡張剤の代替になり始めた。一般的に処方される喘息用の抗炎症剤はジソジウムクロモグリケート(DSCG)、ネドクロミルソジウム、ケトチフェンのような抗ヒスタミン剤およびプレドニゾロンのようなコルチコステロイドを包含する(F.M.C.クス、1990[5]およびP.M.オービルネ、1990[6]参照)。
【0005】
喘息における炎症反応は粘膜により覆われた組織に典型的であって血管拡張、血漿滲出、たとえば好中球、単球、大食細胞、リンパ球および好酸球のような炎症性細胞の炎症部位に対する補充および常在性組織細胞(たとえばマスト細胞)による炎症性媒介物の放出または炎症細胞の移動を特徴とする(J.C.ホッグ、1990 [7])。アレルゲン誘発の喘息において、罹患者はしばしばアレルゲンに対する露出に二重の応答を示し、すなわち露出の直後に開始して露出の1〜2時間後まで持続する「早期」反応、およびそれに続く露出後の約3時間で開始して露出後の8〜10時間もしくはそれ以上にわたりしばしば持続する「後期」反応を示す(D.W.コッククロフト、1990[4])。アレルゲン誘発喘息における後期反応および持続性の過反応症は、炎症肺組織への白血球および特に好酸球の補充に関連している(W.M.アブラハム等、1988[8])。好酸球は数種の炎症性媒介物、たとえば15−HETE、ロイコトリエンC4、PAF、カチオン性蛋白質、好酸球ペルオキシダーゼを放出することが知られている(K.F.チャング、1990[9])。
【0006】
喘息を処置するため使用される多くの薬剤は、炎症反応を調整する炎症性媒介物の放出の作用を阻止し或いは中和することが判明している。たとえば、β2−アドレノセプタ作用剤およびDSCGはマスト細胞の有力な安定剤であって、マスト細胞はヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、血小板活性化因子(PAF)、並びに好中球および好酸球の走化性因子を包含する多くの媒介物を放出することができる。他の例としてはコルチコステロイド、たとえばステロイドホルモンリセプタとの複合体はたとえばリポコルチンのような蛋白質の合成をもたらして抗炎症作用を生ぜしめる(F.M.C.クス、1990[5])。
【0007】
公知の喘息薬物投与は肺への白血球補充に若干の作用を示すが(W.M.アブラハム等、1990[8])、これら薬剤はいずれも炎症組織への白血球の移動を直接阻止するのに有効ではない。
【0008】
炎症性白血球は、内皮細胞の表面で発現されて白血球表面蛋白もしくは蛋白複合体に対するリセプタとして作用する細胞付着分子によって炎症の部位に補充される。最近、好酸球は血管内皮に対する3種の異なる細胞付着経路に関与して細胞間付着分子−1(ICAM−1)、内皮細胞付着分子−1(ELAM−1)および血管細胞付着分子−1(VCAM−1)を発現する細胞に結合することが判明した(P.F.ウェラー等、1991[10];G.M.ワルシュ等、1991[11];B.S.ボホナー等、1991[12];およびA.ドブリナ等、1991[13])。VCAM1は、好酸球を包含する各種のリンパ細胞で発現されるα4β1 インテグリン、すなわちVLA−4に結合する(ウェラー等、1991[10];エリシス等、1990[14])。好酸球がVLA−4を発現するという事実は、ELAM−1およびICAM−1に結合するがVCAM−1には結合しない好中球のような他の炎症細胞から好酸球を区別する。
【0009】
VLA−4媒介の付着経路が喘息モデルで研究されて、炎症肺組織への白血球補充におけるVLA−4の可能な役割を検討した。今回、抗−VLA−4抗体の投与はアレルギー性ヒツジにおける後期反応と気道過反応症との両者を阻止することが突き止められた。驚くことに、抗−VLA−4の投与はアレルゲン攻撃誘発の4時間後に肺における好中球および好酸球の両者の個数を、両細胞がこれらを肺組織に補充しうる代替の付着経路を有するとしても減少させた。また驚くことに、処置されたヒツジにおける過反応症の阻止は、好中球および好酸球を含む白血球の浸潤が経時的に顕著には低下しなくても、1週間まで持続することが観察された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要点)
本発明は喘息の新規な処置方法を提供し、さらに喘息の処置に有用な新規な医薬組成物をも提供する。特に本発明は、喘息罹患者に有効量のたとえばモノクローナル抗体HP1/2のような抗−VLA−4抗体を投与する工程からなる方法を提供する。抗−VLA−4抗体は慢性アレルゲン誘発喘息を有する患者にインビボで有利に投与され、アレルゲンに対する後期反応を阻止すると共に気道過反応性を軽減させる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 喘息に罹患した哺乳動物に抗−VLA−4抗体からなる組成物を投与することを特徴とする喘息の処置方法。
(項目2) 抗−VLA−4抗体組成物を静脈内投与する項目1に記載の方法。
(項目3) 抗−VLA−4抗体組成物を吸入によりエアロゾルとして投与する項目1に記載の方法。
(項目4) 抗−VLA−4抗体がHP1/2、HP2/1、HP2/4、L25およびP4C2から選択される項目1に記載の方法。
(項目5) 抗−VLA−4抗体がHP1/2またはVLA−4に結合しうるその断片である項目1に記載の方法。
(項目6) 組成物を、喘息罹患者の体重に対し0.05〜5.0mg/kgの抗体を供給するような投与量で投与する項目1に記載の方法。
(項目7) 組成物を、喘息罹患者の体重に対し0.5〜2.0mg/kgの抗体を供給するような投与量にて投与する項目6に記載の方法。
(項目8) 組成物を、少なくとも10μg/mlの哺乳動物における抗体の血漿レベルを与えるのに有効な量で投与する項目1に記載の方法。
(項目9) 組成物を、喘息罹患者が過敏性であるアレルゲンに露呈する前に投与する項目1に記載の方法。
(項目10) 哺乳動物がヒトである項目1に記載の方法。
(項目11) 組成物を、哺乳動物が過敏性であるアレルゲンに露呈した後に投与する項目1に記載の方法。
(項目12) アレルギー性喘息に罹患した哺乳動物に対し抗体、組換抗体、キメラ抗体、これら抗体の断片、VLA−4のα4サブユニットに結合しうるポリペプチドもしくは小分子または前記したこれらの組合せ物を、罹患者が過敏性であるアレルゲンに対する後期反応を阻止しまたはアレルゲン攻撃誘発の後の前記哺乳動物にて気道過敏症を減少させるのに有効な量で投与することを特徴とする喘息の処置方法。
(項目13) 抗体、ポリペプチドもしくは分子がモノクローナル抗体HP1/2;この種の抗体のFab、Fab′、F(ab′)2もしくはF(v)断片;可溶性VCAM−1ポリペプチド;またはVLA−4のVCAM−1結合性ドメインに結合する小分子から選択される項目12に記載の方法。
(項目14) 組成物が複数の抗−VLA−4モノクローナル抗体またはそのVLA−4結合性断片からなる項目12に記載の方法。
(項目15) 組成物が抗−VLA−4の他に抗−ELAM−1抗体もしくは抗−ICAM−1抗体または抗−ELAM−1抗体と抗−ICAM−1抗体との両者を含む項目12に記載の方法。
(項目16) 抗−VLA−4抗体がHP1/2またはVLA−4に結合しうるその断片である項目12に記載の方法。
(項目17) 組成物を、喘息罹患者の体重に対し0.05〜5.0mg/kgの抗体、抗体断片、ポリペプチドもしくは小分子を供給するような投与量にて投与する項目12に記載の方法。
(項目18) 組成物を、喘息罹患者の体重に対し1.0〜2.0mg/kgの抗体、抗体断片、ポリペプチドもしくは小分子を供給するような投与量にて投与する項目17に記載の方法。
(項目19) 組成物を、7日間にわたり少なくとも10μg/mlの哺乳動物における抗体の血漿レベルを与えるのに有効な量で投与する項目12に記載の方法。
(項目20) 喘息症の哺乳動物における後期反応を軽減させ、またはその気道過敏症を顕著に減少させるのに有効な医薬組成物であって、医薬上許容しうるキャリヤ中で実質的にVLA−4を認識するモノクローナル抗体よりなる医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、二重応答アレルギー性ヒツジにおいてアレルゲン(アスカリス・スウム抗原)に対する反応に及ぼすモノクローナル抗体HP1/2(静脈内)の作用を示すグラフである。比肺抵抗(SR)における変化%をアレルゲン攻撃誘発の後に経時的に測定する。星印は統計的に有意な結果を示す。
【図2】図2は、最初に投与してから経時的に測定したヒツジにおけるモノクローナル抗体HP1/2(静脈内)の血漿濃度を示すグラフである。
【図3】図3は、二重応答ヒツジにおける気道過反応性に対するモノクローナル抗体HP1/2(静脈内)の効果を示すグラフである。1%(重量/容量)カルバコール溶液(公知の気管支収縮剤)(これは希釈剤のみを用いて得られる数値よりも比肺抵抗を400%増大させる)の積算呼吸数における呼吸単位(BU)で測定した気道反応性を示す。星印は統計的に有意な結果を示す。
【図4】図4(第4A、4B、4Cおよび4D図を含む)は、アスカリス・スウム抗原のみを投与したアレルギー性ヒツジおよびモノクローナル抗体HP1/2(静脈内)で予備処置した後のアレルギー性ヒツジにおける気管支肺胞洗浄により検出された全細胞数(第4A図)、並びに異なる白血球(リンパ球(第4B図)、好中球(第4C図)および好酸球(第4C図))のレベルを示す一連の4種のグラフである。全細胞およびリンパ球もしくは好中球もしくは好酸球であった全細胞の比率をアレルゲン攻撃誘発の4時間後、8時間後、24時間後、48時間後および1週間後の時点で測定した。
【図5】図5は、二重応答アレルギー性ヒツジにおけるアレルゲン(アスカリス・スウム抗原)に対する反応に及ぼすモノクローナル抗体HP1/2(16mg、エアロゾル)および1E6(16mg、エアロゾル)の効果を示すグラフである。比肺抵抗(SR)における変化%をアレルゲン攻撃誘発の後に経時的に測定した。星印は統計的に有意な結果を示す。
【図6】図6は、二重応答ヒツジにおける気道過反応性に及ぼすモノクローナル抗体HP1/2(16mg、エアロゾル)および1E6(16mg、エアロゾル)の効果を示すグラフである。1%(重量/容量)カルバコール溶液(公知の気管支収縮剤)(これは希釈剤のみを用いて得られる数値よりも比肺抵抗を400%増大させる)の積算呼吸数における呼吸単位(BU)で測定した気道反応性を示す。星印は統計的に有意な結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
モノクローナル抗体を産生する技術は周知である。要するに、不死細胞ライン(典型的には骨髄腫細胞)を所定の抗原(たとえばVLA−4)を発現する全細胞で免疫化した哺乳動物からのリンパ球(典型的には脾細胞)に融合させ、得られたハイブリドーマ細胞の培養上澄液を抗原に対する抗体につきスクリーニングする(一般にコーラー等、1975[15]参照)。
【0013】
免疫化は標準的方法を用いて行なうことができる。単位投与量および免疫化方式は、免疫化される哺乳動物の種類、その免疫状態、哺乳動物の体重などに依存する。典型的には免疫化された哺乳動物を出血させ、各血液試料からの血清を適するスクリーニング分析により特定の抗体につき分析する。たとえば抗−VLA−4抗体は、VLA−4−発現性細胞からの125I標識細胞溶解物の免疫沈澱により同定することができる(サンチェズ・マドリッド等、1986[16]およびヘムラー等、1987[17])。さらに抗−VLA−4抗体は、VLA−4を認識すると思われる抗体と共にインキュベートしたRamos細胞の蛍光染色を測定することによりフロー・サイトメトリーによっても同定することができる (エリシス等、1990[14]参照)。ハイブリドーマ細胞の産生に用いられるリンパ球は典型的には、この種のスクリーニング分析を用いて抗−VLA−4抗体の存在につき陽性と既に試験された血清を有する免疫化された哺乳動物から分離される。
【0014】
典型的には、不死細胞ライン(たとえば骨髄腫細胞ライン)はリンパ球と同じ種類の哺乳動物から得られる。好適な不死細胞ラインはヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する培地(「HAT培地」)に対し感受性であるマウス骨髄腫細胞ラインである。
【0015】
典型的にはHAT−感受性のマウス骨髄腫細胞を、分子量1500のポリエチレングリコール(「PEG 1500」)を用いてマウス脾細胞に融合させる。次いで、融合から得られるハイブリドーマ細胞をHAT培地を用いて選択し、この培地は未融合および非産生融合の骨髄腫細胞を死滅させる(未融合の脾細胞は形質転換されないので数日間後に死滅する)。所望の抗体を産生するハイブリドーマをハイブリドーマ培養上澄液をスクリーニングして検出する。たとえば抗−VLA−4抗体を産生すべく作成したハイブリドーマは、たとえばトランスフェクトされたK−562細胞のような組換α4サブユニット−発現性細胞ラインに結合する能力を持った分泌抗体につきハイブリドーマ培養上澄液を試験してスクリーニングすることができる(エリシス等[14]参照)。
【0016】
抗−VLA−4抗体を産生させるには、この種のスクリーニング分析にて陽性と試験されたハイブリドーマ細胞を、これらハイブリドーマ細胞によりモノクローナル抗体を培地中へ分泌させるのに充分な条件および時間にて栄養培地で培養した。ハイブリドーマ細胞に適する組織培養技術および培地は周知されている。細胞を除いたハイブリドーマ培養上澄液を集め、抗−VLA−4抗体を必要に応じさらに周知方法で精製することができる。
【0017】
或いは、ハイブリドーマ細胞を未免疫化マウスの腹腔内に注射して所望の抗体を産生させることもできる。ハイブリドーマ細胞は腹腔内で増殖して抗体を分泌し、この抗体は腹液として蓄積する。この抗体を、腹腔内から注射器により腹液を抜取って回収することができる。
【0018】
数種の抗−VLA−4モノクローナル抗体が従来記載されている(たとえばサンチェズ−マドリッド等、1986[16];ヘムラー等、1987[17];プリド等、1991[19]参照)。ここの実験ではHP1/2と称する抗−VLA−4モノクローナル抗体(バイオジェン・インコーポレーション社・ケンブリッジ、MAから入手)を使用した。抗−VLA−4抗体HP1/2の重鎖および軽鎖の可変領域はクローン化され、配列決定され、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖の定常領域と組合せて発現されている。この種のキメラHP1/2抗体はネズミHP1/2抗体に特異性および能力において類似し、本発明による処置方法に有用である。同様に、人間適合させた組換抗−VLA−4抗体もこれら方法に有用である。HP1/2 VH DNA配列およびその翻訳アミノ酸配列をそれぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2で示す。HP1/2 VK DNA配列およびその翻訳アミノ酸配列をそれぞれSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4で示す。
【0019】
たとえばHP1/2のようなモノクローナル抗体およびVLA−4のα鎖を認識しうる他の抗−VLA−4抗体(たとえばMAb HP2/1、HP2/4、L25、P4C2)が本発明に有用である。抗体はVLA−α4鎖のB1もしくはB2エピトープを認識することが特に好ましい(プリド等、1991[19]参照)。特定の理論に拘束されるものでないが、本発明の方法に使用される抗−VLA−4抗体はアレルゲン攻撃誘発の後の少なくとも最初の期間にわたり肺の炎症部分へのVLA−4発現性リンパ球の移動を特異的に阻止することができる。VLA−4白血球移動の阻止は次いで白血球浸潤の病理学的二次作用、たとえば毒性物質の放出、可溶性炎症細胞媒介物の誘発、白血球走化性作用剤(たとえば好中球走化性因子)の誘発などを防止する。その結果、アレルゲンに対する後期反応および気道の持続過敏性を軽減することができる。或いは、抗−VLA−4抗体は炎症媒介物および/または細胞走化性作用剤の放出に必要な信号導入を軽減することができる。
【0020】
本発明の方法は、アレルギー性喘息に罹患した哺乳動物に抗−VLA−4抗体からなる組成物を投与することを特徴とする。下記する実施例は喘息ヤギで観察された結果を示す。しかしながら、ヤギとヒトとの間における生理学的反応および薬理学的作用の類似性が記載されており(たとえばW.M.アブラハム、1989[20]参照)、さらにヤギと他の動物との喘息モデル(ウサギ、リスザル、モルモットおよび感作したイヌ)の間における類似性も記載されている(たとえばW.M.アブラハム等、1988[8]参照)。したがって、ここで報告する結果はアレルギー性喘息に罹患した人間を含む任意の哺乳動物に適切かつ適用され、本発明の方法はこれらに有用である。
【0021】
本発明により投与される抗−VLA−4抗体は、喘息誘発性アレルゲンに露呈する前に予防投与することができる。さらに、抗体をアレルゲン露呈の時点もしくはその直後、後期反応の程度を軽減させる早期反応と後期反応との間、或いは気道過反応性を減少もしくは除去するアレルゲン露呈後の任意の時点で投与すれば有利な作用が得られる。
【0022】
抗−VLA−4抗体は、抗−VLA−4抗体と医薬上許容しうるキャリヤとから組成物として投与することができる。好ましくは、組成物は静脈内注射に適する形態である。さらに、無菌の水溶液または燐酸塩緩衝塩水溶液の形態の抗体組成物も考えられ、例えば吸入器により噴霧され喘息罹患者が肺中へ直接に吸入することができる。投与量は特定アレルゲンに対する喘息罹患者の感受性、露呈時のアレルゲン濃度および露呈の頻度/持続時間、提案される投与方式(たとえば注射もしくは吸入)、所望の抗体の血漿レベル、特定抗体の効果または気道反応性を抑制する抗体の組合せ、抗体組成物の消失速度もしくは半減期、並びにアレルギー性喘息の処置を経験した医者に熟知される他の因子に応じて変化する。一般に、投与量は1〜1000μg/mlの範囲に抗体の血漿レベルを維持するよう計算かつ調整されるが、それより高いもしくは低い投与量も患者の年齢、感受性、耐性および他の特性、炎症の急激性、病気の履歴および過程、並びに担当医により日常的に考慮される同様な因子を考えて可能である。用いる抗体の効能および半減期に応じ、処置を受ける患者の体重に対し約0.05〜5.0mg/kgの抗体、特に好ましくは0.5〜2.0mg/kgの抗体を使用するのが好適である。
【0023】
適する医薬キャリヤは、たとえば無菌の塩水および生理学的緩衝溶液を包含する。吸入投与には燐酸塩緩衝塩水(PBS)が好適である。医薬組成物はさらに、活性成分の放出を調節し或いは患者体内におけるその存在を長期化させるよう処方することもできる。多数の適する薬物放出系がこの目的で知られており、たとえばヒドロゲル、ヒドロキシメチルセルロース、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロエマルジョン、微小球などを包含する。
【0024】
さらに本発明の目的には、VLA−4のα4 サブユニットに結合しうる抗体を用いねばならないことも認識されよう。モノクローナル抗体を使用するのが好適である。
【0025】
天然産の抗体の他に、代案としてVLA−4に結合しうる適する組換抗体も使用することができる。この種の組換抗体は、組換DNA技術により産生される抗体、たとえば宿主細胞を所望抗体の免疫グロブリン軽および重鎖をコードするDNAを含有した適する発現ベクターで形質転換させて産生させた抗体、並びに抗−VLA−4抗体の重鎖および/または軽鎖のヒンジおよび定常領域の幾つかまたは全部が、異なる種の免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖の対応領域で置換されている組換キメラ抗体を用いることもできる(すなわち、好ましくは投与抗体に対する免疫反応を最小化させるため処置される喘息罹患者と同じ種のもの)(たとえばP.T.ジョーンズ等、1986 [21];E.S.ワード等、1989[22]および米国特許第4,816,397号(ボス等)[23]参照、これら全てを参考のためここに引用する)。
【0026】
さらに、たとえばFab、Fab′、F(ab′)およびF(v)断片のような抗−VLA−4抗体のVLA−4結合性断片;重鎖モノマーもしくはダイマー;軽鎖モノマーもしくはダイマー;並びに1個の重鎖と1個の軽鎖とよりなるダイマーもここで考えられる。この種の抗体断片は化学法により、たとえば完全抗体をたとえばペプシンもしくはパパインのようなプロテアーゼで切断させるか、或いは組換DNA技術により、たとえば端を切取った重鎖および/または軽鎖遺伝子により形質転換された宿主細胞を用いて産生させることもできる。重鎖および軽鎖モノマーも同様に、完全抗体をたとえばジチオスレイトール(dithiothreitol)もしくはβ−メルカプトエタノールのような還元剤で処理して、或いは所望の重鎖もしくは軽鎖またはその両者をコードするDNAで形質転換された宿主を用いて産生することができる。
【0027】
さらに上記の検討から明らかなように、VLA−4−媒介結合を阻止またはブロックする他のポリペプチドおよび分子も、抗−VLA−4抗体と同様に喘息の処置に有効である。たとえば、VCAM−1(VLA−4の内皮細胞リセプタ)の可溶型またはその断片を投与して、VLA−4結合部位に競合させることにより抗VLA−4抗体の投与と同様な作用を得ることもできる。たとえばVLA−4−リガンドの結合ドメインを模倣すると共にVLA−4のリセプタドメインに適合する、たとえばオリゴ糖のような小分子も用いることができる(J.J.デブリン等1990[24];J.K.スコットおよびG.O.スミス、1990[25]、並びに米国特許第4,833,092号(ゲイセン)[26]参照、これら全てを参考のためここに引用する)。アレルギー患者における後期反応または気道過反応性を効果的に阻止するVLA−4結合性ポリペチチドもしくは分子の使用がここでは喘息を処置するための代案法として考えられる。
【0028】
さらに、抗−VLA−4抗体を気道反応性に対し治療効果を有する他の抗体と組合せて使用することも考えられる。たとえば、ここに報告した有利な作用がVCAM−1−発現性内皮細胞に対する白血球補充の阻止に基づく程度に応じて、抗−VLA−4抗体と、白血球抗原と内皮細胞リセプタ分子との間の付着を阻害する他の抗体との組合せが有利である。たとえば本発明による抗−VLA−4抗体を使用する他、抗−ELAM−1および/または抗−ICAM−1の抗体の使用も有利である(グンデル等、1991[27];ウェグナー等、1990[28]参照)。
【0029】
適するビヒクルにて処方すれば、ここで考えられる医薬組成物はたとえば経口的、食道内もしくは鼻腔内、気管支内(局部処置、たとえば気管支鏡を介する)により、さらに皮下、筋肉内、静脈内、動脈内もしくは非経口的に任意適する手段で投与することができる。通常の吸入を介する投与が好適である。
【実施例】
【0030】
実施例
アブラハム等[8]により実質的に記載されたように実験を行なった。要するに、アスカリス・スウム抽出物(グリアー・ダイアグノスチックス社、レノワ、NC)の1:1000もしくは1:10,000希釈物に対する天然のアレルギー皮膚反応を有するアレルギー性ヒツジを試験し、アスカリス・スウム抗原による吸入攻撃誘発に対し早期および後期気道反応(「二重応答」)を示すヒツジを選択した。気道における呼吸メカニクスおよび物理的変化を測定するため、ヒツジを頭を固定した俯位に拘束した。バルーンカテーテルを食道下側に対する2%リドカイン溶液での局部麻酔下で一方の鼻腔中に前進させると共に、拘束した気管内チューブを他方の鼻腔中に前進させ(可撓性の光学繊維気管支鏡を案内として用いる)、エアロゾル攻撃誘発に際し気道メカニクスを測定した。胸膜圧を、胃食道接合部から5〜10cmに位置せしめた食道バルーンカテーテル(1mlの空気を充填)で推定した。この位置にて、末端呼吸胸膜圧は−2〜−5cmHOの範囲であった。バルーンを設置した後、これを実験の持続時間にわたり所定位置に留めるよう固定した。気管における側圧を横穴カテーテル(内径2.5mm)で測定し、このカーテルを気管内チューブの先端に対し遠位方向に前進させて設置した。経肺圧(気管圧と胸膜圧との間の圧力差)を差圧トランスジューサ・カテーテルシステム(MP45、バリダイン、ノースリッジ、CA)で測定した。圧力トランスジューサ・カテーテルシステムは、周波数9Hzに対する圧力と流動との間の相変化を示さなかった。気管内チューブの近位端部をフライヒ・ニューモタコグラフ(ダイナ・サイエンシス社、ブルー・ベル、PA)に接続することにより肺抵抗(R)を測定した。流動圧および経肺圧を示す信号をオシロスコープ記録計(モデルDR−12型;エレクトロニクス・フォー・メディスン社、ホワイト・プレイン、NY)に記録し、この記録計を経胸圧、呼吸容量(デジタル積算により得られる)および中間容積技術による流動からの胸抵抗(R)を5〜10回の呼吸により分析して自動計算するコンピュータに連結した。胸部ガス容積(Vtg)を、一定容積の人体プレチスモグラフにおけるRの測定の直後に測定した。比肺抵抗 (SR )をこれら数値から計算した(SR =Vtg×R)。
【0031】
吸入カルバコールに対する投与量反応曲線を、作成して気道反応性を決定した。投与量反応曲線を緩衝液(PBS)単独の吸入直後およびPBS中にてカルバコールの濃度を増大させた10回の呼吸の各連続投与の後に採取したSRLの測定値を用いてプロットした。カルバコールの濃度はPBS中で0.25%、0.5%、1.0%、2.0%および4.0%w/vとした。SRL がPBS値から400%を越えて上昇した際または最高のカルバコール濃度が投与された後に、刺激試験を中止した。気道反応性を、投与量反応曲線から後緩衝値を400%越える比肺抵抗(PD400%)に増大する呼吸単位(BU)における積算カルバコール量を計算することにより決定した。1呼吸単位は、1%w/vカルバコール溶液の1呼吸として規定した。すなわち、気道過反応性の抑制が大きいほど、対照で見られると同じ気管支収縮を観察する前に必要とされる呼吸単位数が大となる。
【0032】
各ヒツジを対照試験にかけ、ここではプラシーボ(添加剤なしのPBS)を30分間にわたり予備処理として用いた後、アスカリス・スウム抗原(グリア・ダイアグノスティックス社、レノワ、NC)でアレルゲン攻撃誘発した。次いで、このヒツジを同一の試験にかけたが、ただし1mg/kgのモノクローナル抗体HP1/2を各ヒツジに抗原攻撃誘発の30分間前に投与した。プラシーボ(緩衝剤対照またはアイソトープ適合の抗体(1E6、抗−LFA3)対照)およびHP1/2組成物を静脈内注射により投与した。HP1/2組成物(および1E6対照)は、ハイブリドーマ(バイオジェン・インコーポレーション社、ケンブリッジ、MA)から入手した純抗体を無菌の内生毒素フリーのPBSに希釈すると共に各ヒツジの体重に対し1mg/kgの抗体を供給するよう調整して作成した。抗原溶液を使い捨て薬用ネブライザ(レインドロップ(登録商標)、ピューリタン・ベネット社、レネクサ、KS)を用いエアロゾルとして供給し、このネブライザはエアロゾルをアンダーセン・カスケード・インパクタにより測定して3.2μM(幾何学的SD1.9)の質量平均空気力学直径を有するエアロゾルを与えた。アスカリス・スウム抽出物をPBSで82,000蛋白質窒素単位(PNU)/mlの濃度まで希釈した。ネブライザの出口をプラスチックT管に指向させ、その1端部をハーバード・レスピレータの吸入口に接続した。電磁弁と20psi圧縮空気源とよりなるネブライザおよび電磁弁に接続された投与計を、ハーバード・レスピレータの吸入サイクルの開始時点で1秒間作動させた。エアロゾルは波状で500ml容積を毎分20回の呼吸速度で20分間にわたり供給した。各ヒツジは同等量の抗原(400回の呼吸)で対照およびHP1/2の試験につき攻撃誘発した。さらに、投与量反応曲線につきカルバコールエアロゾルを上記のネブライザにより発生させた。
【0033】
細胞分析のため、気管支肺胞洗浄(BLA)を各ヒツジにつき行なった。特殊設計した80cmの光学繊維気管支鏡の遠位端部を、ランダム選択された気管支サブセグメントに緩徐に挿入した。肺洗浄を3×30mlのPBS(pH7.4)を39℃にて緩和に吸引して行ない、その際気管支鏡の操作チャンネルに接続した30mlの注射器を用いた。洗浄戻り液を集め、ガーゼに通過させて粘液を除去し、次いで420×gにて15分間遠心分離した。上澄液をデカントし、細胞をPBSに再懸濁させた。懸濁物の1部を血液計チャンバに移して全細胞を推定した。生存の全細胞をトリパンブルー排除により推定した。第2の細胞懸濁物部分を細胞分離器(10分間にわたり600rpm)にて遠心分離し、ライト・ギエムサ(Wright−Giemsa)で染色し、100倍で観察して細胞集団を確認した。スライド1枚当り500個の細胞が、細胞数差を確認すべく特性化された。特性化した細胞は表皮細胞、大食細胞、好塩基球、単球および未同定細胞(「その他」と名付ける種類に分類)とをリンパ球、好中球および好酸球の他に含んだ。
【0034】
抗体および白血球のカウント数の血漿レベルを末梢脚静脈もしくは頸静脈からの静脈血試料(約5ml)から決定した。
【0035】
実施例1
8匹の二重応答アレルギー性ヒツジを用いる気道攻撃誘発試験を上記手順にしたがって行なった。基線(BSL)気道反応性(PD400%)を抗原攻撃誘発の2〜3日前に確立し、基線気管肺胞洗浄(BAL)を攻撃誘発の1日前に行なった。攻撃誘発の当日、比肺抵抗(SR)の基線値を測定し、次いでヒツジに緩衝剤(対照)またはHP1/2を注射により投与した。この最初の投与(「処理」)の後、SR を測定し、処理の30分間後にヒツジをアスカリス・スウム抗原で攻撃誘発した。SRを攻撃誘発の直後、攻撃誘発してから1〜6時間にわたり毎時間、6.5〜8時間の範囲で30分間毎、並びに抗原攻撃誘発してから24時間、48時間および1週間(すなわち168時間)の後に測定した。BALはSR測定の後に4時間、8時間、24時間および48時間、並びに1週間にて行なった。これらの試験にて末梢血液を抜取り、全白血球のカウント数および細胞集団の測定を処理前(基線)、攻撃誘発の直後、並びに攻撃誘発してから1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、24時間および48時間、並びに1週間の後に行なった。この試験の結果を図面に示す: 第1図は、検体ヒツジにおける抗原誘発の気道反応に対するHP1/2処理の効果を示す。HP1/2の処理は、対照により示される後期反応の顕著な阻止(実質的に完全)を与えた。
【0036】
第2図は、抗原攻撃誘発の直後および次いで攻撃誘発の1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、24時間および48時間の後に測定した処理検体におけるHP1/2の血漿濃度(μg/ml)を示すグラフである。均衡化した後、抗体濃度は約20μg/mlの濃度に落ち着き、この濃度は48時間の時点まで維持された。
【0037】
第3図は、気道反応性に対するHP1/2の処理の効果を示すグラフである。抗原攻撃誘発の24時間、48時間および1週間の後、処理された検体は気道反応性の顕著な減少を示した。抗原攻撃誘発の2週間後においてさえ、処理された検体は気道反応性の減少を示し続けた。抗体の実質的に完全な阻止効果が1週間まで持続するという事実は特に驚異的であり、処理の治療価値の点で有望である。
【0038】
第4図は、抗原攻撃誘発の4時間、8時間、24時間および48時間後、並びに抗原攻撃誘発の1週間後に行なったBALの結果を示す一連のグラフである。結果は、処理検体から回収された全細胞にて、対照と対比し顕著な変化を示さない。しかしながら、処理検体は、攻撃誘発してから4時間後の時点にて好中球および好酸球の両者レベルの減少を示した。抗−VLA−4の投与が好中球の補充に影響を与えない、何故なら好中球はVLA−4を発現しないからと予想すると、これは若干驚異的である。さらに、好中球と好酸球との両者は内皮に対する付着に関与する他のリガンドを発現し、両種の細胞はLFA−1/ICAM−1経路およびCDX/ELAM−1経路を介し内皮細胞に結合することが示されている。
【0039】
抗−VLA−4抗体HP1/2による同様な治療効果が、検体をHP1/2抗体により抗原攻撃誘発の2時間後に処置した際にも観察され、これは上記したように攻撃誘発の30分間前と対比される。HP1/2の効果は投与量依存性であった。たとえば、投与量を0.2mg/kgまで減少させれば、後期反応に対する保護は充分でなかった。1E6(抗−LFA3)をアイソトープ適合対照抗体としてHP1/2の処理に用いた抗原攻撃誘発試験に関し、早期反応もしくは後期反応に対する効果は対照試験で1E6を用いて観察されなかった。1E6抗体を産生する1E6−2C12ハイブリドーマ細胞ラインはATCC HB 10693として寄託されている。
【0040】
実施例2
抗体のエアロゾル供給の効能を検討するため次の実験を行なった。試験は上記と実質的に同様に行なったが、ただし2匹のヒツジを用いると共にHP1/2をエアロゾルとしてネブライザを介し供給した(投与量=動物1匹当り8mgのHP1/2、抗原攻撃誘発の30分間前に投与)。
【0041】
対照ヒツジ(プラシーボを投与)において後期反応は基線値の126%というSRLの平均上昇を特徴とするのに対し、ヒツジを抗−VLA−4抗体で処理すればSRL の平均上昇は基線の26%であった。これらの結果は後期反応の約80%阻止に相当する。これら結果はさらに、24時間における気道反応性の約70%阻止を示した。この試験から明らかなように、抗体の吸入供給を用いて本発明の利点を得ることができる。
【0042】
これらデータを、HP1/2(n=5)もしくは1E6(n=4)の16mg/kgエアロゾル投与量を用いて確認し、対照(アイソタイプ適合1E6(抗−LFA3)抗体対照)と共に5匹のヒツジに拡大した。第5図および第6図は、抗原攻撃誘発を行なう30分間前のこの投与量におけるHP1/2エアロゾルでの処理が後期反応および気道過反応性を阻止するにも有効であることを示す。HP1/2エアロゾル処理は、1E6対照により経験される後期反応の顕著(実際には、実質的に完全)な阻止を与えた。1E6エアロゾル処理は効果がなかった。匹敵する保護は静脈内試験およびエアロゾル試験の両者で達成されたが、エアロゾル試験においてHP1/2により与えられる保護は検出しうる薬剤の血中レベルなしに達成された。HP1/2のこの効果は、同じ投与量の1E6が保護作用を示さないので特異的である(たとえば1E6で処理された動物はPC400にて顕著な低下を示したのに対し、HP1/2はこの作用を阻止した)。HP1/2と1E6との間の生理学的反応における差は、これら群における全WBCの欠如またはカウント差の結果ではない。全WBCおよびHP1/2と1E6との群における差は、静脈内試験で見られたと同様な反応のパターンを示した。
【0043】
以上本発明の方法を実施例として示したが、これらは決して本発明を限定するものでない。上記の開示から当業者には多くの改変が可能であることも明らかであろう。たとえば、用いる実際の投与量、用いる抗体もしくは抗体断片の種類、投与方式、正確な組成、処置の投与時間および投与方式、並びに多くの他の特徴は全て本発明の思想および範囲を逸脱することなく改変することが可能である。
【0044】
(引用刊行物)





【0045】
(配列表)














【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−285444(P2010−285444A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168709(P2010−168709)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【分割の表示】特願2002−286910(P2002−286910)の分割
【原出願日】平成5年1月12日(1993.1.12)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】