説明

回動扉の支持装置

【課題】従来の蛇腹構造等の複雑な機構を用いずに、簡便な両開き構造を実現しつつ、回動扉を一方に回動させた場合に他方への回動を規制する回動扉の支持装置を提供する。
【解決手段】回動扉11の第1の側辺側と、第1の側辺に対向する第2の側辺側とのいずれか一側辺側周りに回動扉11を回動可能な両開き構造を有し、回動扉11を本体に対して支持する回動扉11の支持装置25であって、両開き構造は、一端が回動扉11における第1の側辺側に回動可能に連結され、他端が本体における回動扉11の閉塞状態の第2の側辺側に回動可能に連結された第1の連結アーム22と、一端が回動扉11における第2の側辺側に回動可能に連結され、他端が本体における回動扉11の閉塞状態の第1の側辺側に回動可能に連結された第2の連結アーム23と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容部が形成された本体と、前記収納部に連通する開口を開閉可能な回動扉と、から成る収納キャビネットに設けられ、回動扉の第1の側辺側と、この第1の側辺に対向する第2の側辺側とのいずれか一側辺側周りに回動扉を回動可能な両開き構造を有し、回動扉を本体に対して支持する回動扉の支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回動扉の支持装置としては、収納部に連通する開口面を左右のいずれか一端に蝶番を設けて、収納部に対し開閉可能に取付けた内扉と、内扉の他端に更に蝶番を設けて、内扉に対し開閉可能に取付けた外扉とで構成する回動扉の支持装置が知られており、このような支持装置には、開口面と内扉の間、及び内扉と外扉の間に、マグネットと励磁板より構成するマグネット式係止具が取付けられている場合が多く、このマグネット式係止具により内扉と外扉とが蛇腹状に開かれてしまうのを防いでいるものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、収納部に連通する開口面の左右のいずれか一端に蝶番を設けて、開口した側辺側を回動軸にして収納部に対し開閉可能に取付けたコ字状フレームと、コ字状フレームの他端に蝶番を設けて、コ字状フレームに対し開閉可能に取付けた外扉とで構成する回動扉の支持装置が知られており、両蝶番に切欠を形成するとともにコ字状フレームと外扉の蝶番近傍にストッパ片を固着させることで、コ字状フレーム若しくは外扉を開放方向に所定角度回動させるとストッパ片が切欠に当接し、所定角度以上の回動を規制するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−278436号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】特開2005−66364号公報(第6項、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の回動扉の支持装置にあっては、マグネット式係止具の磁力が比較的弱いと、内扉と外扉が簡単に蛇腹状に開いてしまうという問題があり、逆に、磁力が比較的強いと、内扉若しくは外扉が開きにくくなってしまうため、スムーズな回動ができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2にあっては、開口面とコ字状フレームの間、コ字状フレームと外扉の間をそれぞれ係止する特段のストッパ機構が存在しないので、切欠とストッパ片によるコ字状フレームと外扉の所定角度以上の回動を規制することはできても、コ字状フレームと外扉が蛇腹状に開いてしまうのを防ぐことはできないという問題があった。
【0007】
また、特許文献1及び2共に回動扉の両開きに蛇腹機構を用いているので、両開き構造が複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、従来の蛇腹構造等の複雑な機構を用いずに、簡便な両開き構造を実現しつつ、回動扉を一方に回動させた場合に他方への回動を規制する回動扉の支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の回動扉の支持装置は、
内部に収容部が形成された本体と、前記収納部に連通する開口を開閉可能な回動扉と、から成る収納キャビネットに設けられ、
前記回動扉の第1の側辺側と、該第1の側辺に対向する第2の側辺側とのいずれか一側辺側周りに前記回動扉を回動可能な両開き構造を有し、前記回動扉を前記本体に対して支持する回動扉の支持装置であって、
前記両開き構造は、
一端が前記回動扉における第1の側辺側に回動可能に連結され、他端が前記本体における前記回動扉の閉塞状態の第2の側辺側に回動可能に連結された第1の連結アームと、
一端が前記回動扉における第2の側辺側に回動可能に連結され、他端が前記本体における前記回動扉の閉塞状態の第1の側辺側に回動可能に連結された第2の連結アームと、から構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、一方の連結アームを利用して、回動扉をいずれか一側辺側周りに回動する場合に、他方の連結アームにより、回動扉の一側辺側を支持しながらスムーズに回動出来るため、従来の蛇腹機構等の複雑な機構を要さずに簡便に両開き構造にできる。また、この場合に、一方の連結アームにより、他方の連結アームを利用した回動が規制されるため、従来の磁石等を用いたストッパ機構を構成する必要がない。
【0010】
本発明の請求項2に記載の回動扉の支持装置は、請求項1に記載の回動扉の支持装置であって、
前記第1の連結アームと前記第2の連結アームとは、同じ形状寸法の部材により構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、両開き構造の回動扉の回動半径を同じく出来るばかりか、連結アームの部材を共通化して製造コストを抑えることが出来る。
【0011】
本発明の請求項3に記載の回動扉の支持装置は、請求項1または2に記載の回動扉の支持装置であって、
前記両開き構造は、前記本体における前記開口の互いに対向する両端縁側に、一対に構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、開口の互いに対向する両端縁側を除く中央側に特段の回動部材を構成する必要が無いため、開口を広く取ることが出来、収納物を収納部へ出し入れし易い。
【0012】
本発明の請求項4に記載の回動扉の支持装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の回動扉の支持装置であって、
前記第1の連結アームと前記第2の連結アームとは、夫々略水平に設けられているとともに、上下方向に交わして設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1の連結アームと第2の連結アームとが、互いに干渉することなくスムーズに回動扉を回動させることが出来る。
【0013】
本発明の請求項5に記載の回動扉の支持装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の回動扉の支持装置であって、
前記連結アームは、一端が前記回動扉にリンクを介して回動可能に連結され、他端が前記本体にリンクを介して回動可能に連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、回動扉が、リンクを介して連結された連結アームにより回動することにより、回動軸を適宜移動出来るため、隣りの回動扉と干渉することなく回動することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例における収納キャビネットを備えたキッチンを示す平面図であり、図2(a)は、収容キャビネットの回動扉を閉塞した状態を示す斜視図であり、図2(b)は、同じく右側2枚の回動扉を観音開きにした状態を示す斜視図であり、図2(c)は、同じく左側2枚の回動扉を観音開きにした状態を示す斜視図であり、図3は、収容キャビネットを示す平面図であり、図4は、収容キャビネットの支持装置を示す正面図であり、図5(a)は、支持装置を示す平面図であり、図5(b)は、支持装置を示すA−A正面図であり、図6は、中央回動扉の左開きを示す斜視図であり、図7(a)は、中央回動扉が閉塞した状態を示す平面図であり、図7(b)は、中央回動扉が前方に引出された状態を示す平面図であり、図8(a)は、中央回動扉の左開きを示す平面図であり、図8(b)は、中央回動扉の右開きを示す平面図であり、図9はリンクを有さない支持装置の概念図である。以下、図3の紙面下側を収納キャビネットの正面側として説明する。
【0016】
図1は、本実施例のキッチン1に本発明の回動扉の支持装置を用いた収納キャビネット2を適用した一例である。キッチン1における各什器の配置について説明すると、冷蔵庫5、収納キャビネット2、そして食器棚6が、全体で平面視略L字状に成るように、夫々の背面若しくは側面同士を当接させて配置されている。そして通路4を挟んでこれらに対向するように、平面視上方向と左方向に延びた略L字状のキッチン台3が配置されている。キッチン台3上面における紙面上方にはコンロ7、左方にはシンク8が備えられている。
【0017】
図2(a)〜(c)及び図3に示すように、収納キャビネット2について説明すると、先ず収納キャビネット2の基本的な平面視形状は、平面視正方形の正面方向(紙面下方)に向けられている仮想の角部を直線で切り落としたような略五角形として形成されている。収納キャビネット2の構成部材として、上記した略五角形に形成された天板13及び底板14と、平面視二辺の長さが等しく且つ略直角に形成されたL字状の背板12とを互いに組付けることで、前面側に連続した開口面17,18,19を有する本体が構成され、この開口面17,18,19をそれぞれ開閉する回動扉9,10,11が、後述のように、並設して回動可能に取り付けられている。
【0018】
また、収納キャビネット2の本体内部について説明すると、天板13と底板14間において、背板12の内壁部15の一面と略同じ長さの長辺を有する長方形状の板と、内壁部15の一面の略半分長さの辺を有する正方形状の板とを、平面視L字状となるように同一平面上で突合わせて一段の棚板16として構成し、複数段の棚板16をそれぞれ床面と平行となるように配置している。
【0019】
次に、 図2(b)及び図2(c)に示すように、収納キャビネット2の正面方向の三面には平面視所定角度を有する開口面17,18,19が連続して形成されており、この開口面17,18,19に沿って、3枚の回動扉9,10,11がそれぞれ開閉自在に取り付けられる。
【0020】
詳しくは、図3に示すように、開口面17の左端部に位置する背板12の左側端面20に、左側回動扉9が右開きに、すなわち中央回動扉11に対向する一側辺周りに回動可能に枢支されて取り付けられる。逆に、開口面18の右端部に位置する背板12の右側端面21には、右側回動扉10が左開きに、すなわち中央回動扉11に対向する一側辺周りに回動可能に枢支されて取り付けられる。尚、左側回動扉9と右側回動扉10が枢支される軸の図示は省略する。
【0021】
尚、ここで右開きとは、回動扉の開く方向が平面視右回り方向であることをいい、左開きとは、回動扉の開く方向が平面視左回り方向であることをいう。更に尚、後述する右回動とは、平面視右回り回動であることをいい、左回動とは、平面視左回り回動であることをいう。
【0022】
また、開口面19の中央に取り付けられる中央回動扉11の平面視形状は、左右両幅方向に開口面19を超えて平面視所定角度を持って更に延び、隣り合う開口面17,18における開口面19寄りの一部を被覆するよう平面視左右対称形状に形成されている。そして、開口面17,18に取り付けられる左側回動扉9と右側回動扉10の幅は、開口面17,18の幅よりも幅狭に形成される。図に示されるように、回動扉9,10,11の閉塞状態においては、各回動扉9,10,11の隣合う側辺同士が近接している。
【0023】
次に、中央回動扉11の回動に用いられる本発明の一実施例である回動扉の支持装置25について説明する。
【0024】
図3及び図4に示すように、中央回動扉11の背面には、上端側及び下端側にそれぞれ、中央回動扉11を右開き及び左開きの両方に回動可能に枢支する支持装置25が設けられている。中央回動扉11の背面において、上端側及び下端側にそれぞれ設けられた支持装置25は、上下左右を逆にして配置した同一の装置であるため、下端側に設けられた支持装置25の説明を省き、上端側に設けられた支持装置25のみについて以下に説明する。
【0025】
図5(a)及び図5(b)に示すように、支持装置25は、第1の連結アーム22、第2の連結アーム23、リンク部材24とから主として構成される両開き構造を有している。第1の連結アーム22は、一端が中央回動扉11における第1の側辺側(図示右側辺側)にリンク部材24を介して回動可能に連結され、他端が収納キャビネット2の本体における中央回動扉11の閉塞状態の第2の側辺側(図示左側辺側)にリンク部材24を介して回動可能に連結されている。また、第2の連結アーム23は、上記した第1の連結アーム22とは逆に、一端が中央回動扉11における第2の側辺側(図示左側辺側)にリンク部材24を介して回動可能に連結され、他端が収納キャビネット2の本体における中央回動扉11の閉塞状態の第1の側辺側(図示右側辺側)にリンク部材24を介して回動可能に連結されている。
【0026】
次に、各部材自体の形状について説明すると、第1の連結アーム22と第2の連結アーム23とは、同じ形状寸法の部材により構成されている。第1の連結アーム22及び第2の連結アーム23の平面視形状は、中央回動扉11の平面視形状をほぼ同形に縮小した概略形状であって、且つ角度を持って延びる両端のうち一端の角度を他端より大きく形成した平面視左右非対称形状に形成されている。また、リンク部材24は、第1リンク部材33と第2リンク部材34とからなっており、第1リンク部材33は略直線状に形成されている。第2リンク部材34は、直線形状から角度を持って延びる平面視略L字状に形成されている。
【0027】
また、天板下面28に設けられた吊下金具29の平面視形状は、中央回動扉11の平面視形状とほぼ同形に縮小した概略形状であって、且つ角度を持って延びる両端部が幅広に形成された形状である。正面視では略コ字状であり、コ字の開口を上向きにして両端部が天板下面28に螺着されている。
【0028】
連結金具27は、左右方向に延びる取付面を有する方形部30と、方形部30に対し垂直に延びたヒンジ部31からなる。方形部30の左右端には螺着孔32が形成されており、この螺着孔32に挿通したネジ(図示略)によって、連結金具27が中央回動扉11の裏面26の左右端部に螺着されて固定に取り付けられる。
【0029】
連結アーム22,23の取り付けについて説明すると、第1の連結アーム22の一端を、中央回動扉11の裏面26の一側辺側にリンク部材24を介して、連結金具27に回動可能に連結するとともに、他端を、収納キャビネット2の天板下面28に設けられた吊下金具29の他側辺側に、リンク部材24を介して回動可能に連結する。同様に、第2の連結アーム23の一端を、中央回動扉11の裏面26の他側辺側にリンク部材24を介して、連結金具27に回動可能に連結するとともに、他端を、収納キャビネット2の天板下面28に設けられた吊下金具29の一側辺側に、リンク部材24を介して回動可能に連結する。
【0030】
次に、支持装置25の具体的な構成を説明する。
【0031】
図5(a),(b)に示すように、中央回動扉11が閉じた状態において、中央回動扉11の裏面26の図示右端上方に取り付けられた連結金具27は、ヒンジ部31が吊下金具29よりも上方となるように取り付けられる。
【0032】
このヒンジ部31の先端には、第1リンク部材33と第2リンク部材34の一端がヒンジ部31の上方から軸ピン41,42により回動可能に枢支されている。更に、第1リンク部材33と第2リンク部材34の他端が、第1の連結アーム22の図示右端部近傍に上方から軸ピン39,40により回動可能に枢支されている。
【0033】
また、第2の連結アーム23の図示右端近傍に第1リンク部材33と第2リンク部材34が下方から軸ピン49,50により回動可能に枢支され、更に第1リンク部材33と第2リンク部材34の他端が、吊下金具29に下方から軸ピン47,48により回動可能に枢支されている。尚、上方から枢支される第1リンク部材33及び第2リンク部材34と、下方から枢支される第1リンク部材33及び第2リンク部材34は、吊下金具29を挟んで上下方向に対向する位置に枢支されている。
【0034】
中央回動扉11の裏面26の図示左端上方に取り付けられる連結金具27の位置は、図示右端の連結金具27と比較すると、ヒンジ部31が吊下金具29の下方となるよう取り付けられている。これにより、第1の連結アーム22と第2の連結アーム23が上下方向に交わして回動可能となるため、互いの動きを干渉してしまうことを防ぐことができる。
【0035】
図示左端上方に取り付けられた連結金具27のヒンジ部31の先端には、第1リンク部材33と第2リンク部材34の一端がヒンジ部31の下方から軸ピン44,43により回動可能に枢支されている。更に、第1リンク部材33と第2リンク部材34の他端が、第2の連結アーム23の左端近傍に下方から軸ピン46,45により回動可能に枢支されている。
【0036】
また、第1の連結アーム22左端近傍に第1リンク部材33と第2リンク部材34が上方から軸ピン36,35により回動可能に枢支され、更に第1リンク部材33と第2リンク部材34の他端が、吊下金具29に上方から軸ピン38,37により回動可能に枢支されている。尚、右端の連結金具27周りと同様に、上方から枢支される第1リンク部材33及び第2リンク部材34と、下方から枢支される第1リンク部材33及び第2リンク部材34は、吊下金具29を挟んで上下方向に対向する位置に枢支されている。
【0037】
次に、支持装置25の動きを説明する。図7(a)及び(b)に示すように、先ず、中央回動扉11を開口面19に対し略平行に前方に引出すことで、回動中心である左右のヒンジ部31,31を略均等に前方に移動させて、中央回動扉11の端部が隣接する回動扉9,10への当接を防止する。すなわち、仮に中央回動扉11を閉塞状態からそのまま回動させて開いた場合に、回動中心であるヒンジ部31の近傍である中央回動扉11の端部が、隣接する回動扉9,10に当接してしまい、うまく開くことができないという不具合を解消できる。
【0038】
図6及び図8(a)に示すように、図7(b)の中央回動扉11を前方に引出した状態から、中央回動扉11の図示左側を前方に引出すことで、中央回動扉11は図示右側のヒンジ部31周りに、すなわち軸ピン39〜42周りに左回動し、左開きの状態となる(図8(a)白抜き矢印参照)。このとき、第1の連結アーム22は、吊下金具29から前方に僅かに突出した位置で留まり、中央回動扉11の右端のヒンジ部31を、回動中心となる軸ピン39〜42近辺から動かないように拘束し、支持する。このようにすることで、中央回動扉11は、軸ピン39〜42周りにスムーズに回動可能となる。
【0039】
一方、第2の連結アーム23は、図7(b)の平面視第1の連結アーム22と交差した状態から、中央回動扉11の左回動とともに、図示右側のヒンジ部31周りに左回動し、中央回動扉11の裏面26に沿って移動する。
【0040】
また、図8(b)に示すように、図7(b)の中央回動扉11を前方に引出した状態から、中央回動扉11の図示右側を前方に引出すことで、中央回動扉11は図示左側のヒンジ部31周りにすなわち軸ピン43〜46周り(図5(b)参照)に右回動し、右開きの状態となる(図8(b)白抜き矢印参照)。このとき、上述した左開きの状態と逆に、第2の連結アーム23は、吊下金具29から前方に僅かに突出した位置で留まり中央回動扉11の左端のヒンジ部31を、回動中心となる軸ピン43〜46近辺から動かないように拘束し、支持する。このようにすることで、中央回動扉11は、軸ピン43〜46周りにスムーズに回動可能となる。
【0041】
一方、第1の連結アーム22は、図7(b)の平面視第2の連結アーム23と交差した状態から、中央回動扉11の右回動とともに、図示左側のヒンジ部31周りに右回動し、中央回動扉11の裏面に沿って移動する。
【0042】
上述したように、収納キャビネット2には、中央に配置された左右両開き構造の中央回動扉11、中央回動扉11の左側に設けられた右開き構造の左側回動扉9、そして中央回動扉11の右側に設けられた左開き構造の右側回動扉10の計3枚の扉が並設して設けられている。開口面17,18,19を開放する際には、図2(b)及び図2(c)に示すように、右側回動扉10と中央回動扉11、左側回動扉9と中央回動扉11の組み合わせで、それぞれ観音開きが可能となっているので、2方向からの物品の出し入れが可能となっている。
【0043】
このように収納キャビネット2が設けられたキッチン1において、コンロ7及びシンク8の使用者は、収納キャビネット2内の収容物を出し入れするために収納キャビネット2の正面に立ってから収納キャビネット2の扉を開閉させる必要が無く、コンロ7及びシンク8のどちらの方向からでも収容物の出し入れを行えるようになっている。
【0044】
上記したように収納キャビネット2を構成することで、隣りの中央回動扉11に対向する側辺側周りに回動可能な片開き構造の右側回動扉10、左側回動扉9と、両隣りの右側回動扉10、左側回動扉9に隣接する二側辺側のいずれか一側辺側周りに回動可能な両開き構造の中央側に設けた中央回動扉11とを組合わせて配置することにより、製造コストを抑えるとともに、任意の隣り合った2枚の回動扉を観音開きにして開口面積を大きく取ることが出来る。
【0045】
また、上記したように収納キャビネット2を構成することで、任意の隣り合った2枚の回動扉9,10,11を観音開きにして、連続した開口面17,18,19からなる開口面積を大きく取った一の開口を利用し、収納部に収納物を出し入れ出来る。
【0046】
また、上記したように収納キャビネット2を構成することで、所定角度を有する開口を設けた収納キャビネットの形状に合わせて、回動扉9,10,11を適宜設置出来るばかりか、所定角度分を除いた小さい開き角度で、開口面17,18,19を全開に出来る。
【0047】
更に、上記したように収納キャビネット2を構成することで、中央の両開き構造の回動扉が、角部を切り落して形成した中央の開口面を開閉するため、3面形成した開口を設けた収納キャビネットを、キッチン等の比較的狭い場所のコーナーに配置しても、邪魔になることなく回動扉を回動出来る。
【0048】
上記したように支持装置25を構成することで、一方の連結アーム22,23を利用して、中央回動扉11をいずれか一側辺側周りに回動する場合に、他方の連結アーム23,22により、中央回動扉11の一側辺側を支持しながらスムーズに回動出来るため、従来の蛇腹機構等の複雑な機構を要さずに簡便に両開き構造にできる。また、この場合に、一方の連結アーム22,23により、他方の連結アーム23,22をリンク部材24を用いて拘束して支持するので、中央回動扉11が他側辺側周りに回動しようとする動きを規制できるため、従来の磁石等を用いたストッパ機構を構成する必要がない。
【0049】
また、上記したように支持装置25を構成することで、両開き構造の中央回動扉11の回動半径を同じく出来るばかりか、連結アーム22,23の部材を共通化して製造コストを抑えることが出来る。
【0050】
また、上記したように支持装置25の両開き構造を構成することで、開口の互いに対向する上下の両端縁側を除く中央側に特段の回動部材を構成する必要が無いため、開口を広く取ることが出来、収納物を収納部へ出し入れし易い。
【0051】
更に、上記したように支持装置25を構成することで、第1の連結アーム22と第2の連結アーム23とが、互いに干渉することなくスムーズに中央回動扉11を回動させることが出来る。
【0052】
また、上記したように支持装置25を構成することで、リンク部材24を介して連結された連結アーム22,23により回動することにより、中央回動扉11の回動軸を適宜移動出来るため、両隣りの回動扉9,10と干渉することなく回動することが出来る。
【0053】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0054】
例えば、上記実施例では、収納キャビネット2は平面視略五角形に形成されており、前面に所定角度を有して連続した開口面17,18,19が開口しているが、例えば収納キャビネットの平面視形状は、長手方向に幅広の前面を有した長方形状であって、右側回動扉、左側回動扉、中央回動扉が、前記前面一面に設けられていてもよいし、例えば収納キャビネットの平面視形状は、正方形状であって、1つの面を両開き可能な中央回動扉で開閉し、その左右の面を片開きする右側回動扉と左側回動扉で開閉するようにしてもよい。また、中央回動扉の形状若しくは吊下金具の形状は、必ずしも本実施例に限られず、収納キャビネットの形状等に応じて、適宜設計上の変更があっても構わない。
【0055】
また、1つの面に形成された開口面の左右両端を、片開きの右側回動扉と左側回動扉で開閉できるようにし、その間の開口面を両開き可能な複数枚の回動扉が並設されていてもよい。
【0056】
また、上記実施例では、回動扉9,10,11を水平に取り付け、垂直方向に枢支することで左右方向に開閉可能となっているが、例えば回転扉を垂直方向に立設して、且つ、収納キャビネットの本体における開口の互いに対向する左右の両端縁側に、第1の連結アームと第2の連結アームとから構成される両開き構造が、一対に構成され、水平方向の回動軸周りに開閉可能としてもよい。このようにすることで、本体における開口の互いに対向する左右の両端縁側を除く中央側に特段の回動部材を構成する必要が無いため、開口を広く取ることが出来、収納物を収納部へ出し入れし易い。
【0057】
また、上記実施例では、連結アームの両端がリンクを介して回動扉若しくは収納キャビネットの本体と連結されているが、必ずしも上記構成に限られず、例えば、リンクを省略して連結アームを連結してもよい。すなわち、図9に示されるように、回動扉110により開口面190を開閉可能とする収納キャビネット200において、第1の連結アーム220の一端を、回動扉110の裏面の一側辺側に、直接、連結金具300に軸ピン390により回動可能に連結するとともに、他端を、収納キャビネット200本体の上部前面に設けられた他側辺側の連結金具290に、直接、軸ピン350により回動可能に連結する。同様に、第2の連結アーム230の一端を、回動扉110の裏面の他側辺側に、直接、連結金具300に軸ピン430により回動可能に連結するとともに、他端を、収納キャビネット200本体の上部前面に設けられた一側辺側の連結金具290に、直接、軸ピン470により回動可能に連結してもよい。このようにすることで、上述のようにリンクを介した連結よりも、更に構造を簡便にして回動扉の左右両開き構造を構成することが出来る。
【0058】
また、上記実施例では、中央に両開き構造の回動扉11を設け、この回動扉11の左右両隣りに片開き構造の回動扉9、10を並設しているが、回動扉の配置については、必ずしも上記実施例に限られず、例えば、一枚の両開き構造の回動扉が単独で設けられていてもよいし、また、複数の両開き構造の回動扉若しくは片開き構造の回動扉を並設してもよい。
【0059】
また、上記実施例では、回動扉9、10,11を取付ける対象として、物品を収納する収納キャビネット2が設けられているが、回動扉を取付ける対象については、必ずしも上記実施例に限られず、例えば、冷蔵庫に回動扉を取付けても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例における収納キャビネットを備えたキッチンを示す平面図である。
【図2】(a)は、収容キャビネットの回動扉を閉塞した状態を示す斜視図であり、(b)は、同じく右側2枚の回動扉を観音開きにした状態を示す斜視図であり、(c)は、同じく左側2枚の回動扉を観音開きにした状態を示す斜視図である。
【図3】収容キャビネットを示す平面図である。
【図4】収容キャビネットの支持装置を示す正面図である。
【図5】(a)は、支持装置を示す平面図であり、(b)は、支持装置を示すA−A正面図である。
【図6】中央回動扉の左開きを示す斜視図である。
【図7】(a)は、中央回動扉が閉塞した状態を示す平面図であり、(b)は、中央回動扉が前方に引出された状態を示す平面図である。
【図8】(a)は、中央回動扉の左開きを示す平面図であり、(b)は、中央回動扉の右開きを示す平面図である。
【図9】リンクを有さない支持装置の概念図である。
【符号の説明】
【0061】
1 キッチン
2 収納キャビネット
3 キッチン台
4 通路
5 冷蔵庫
6 食器棚
9 左側回動扉
10 右側回動扉
11 中央回動扉
12 背板
13 天板
14 底板
16 棚板
17 開口面
18 開口面
19 開口面
22 第1の連結アーム
23 第2の連結アーム
24 リンク部材
25 支持装置
26 裏面
27 連結金具
29 吊下金具
31 ヒンジ部
32 螺着孔
33 第1リンク部材
34 第2リンク部材
35〜50 軸ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容部が形成された本体と、前記収納部に連通する開口を開閉可能な回動扉と、から成る収納キャビネットに設けられ、
前記回動扉の第1の側辺側と、該第1の側辺に対向する第2の側辺側とのいずれか一側辺側周りに前記回動扉を回動可能な両開き構造を有し、前記回動扉を前記本体に対して支持する回動扉の支持装置であって、
前記両開き構造は、
一端が前記回動扉における第1の側辺側に回動可能に連結され、他端が前記本体における前記回動扉の閉塞状態の第2の側辺側に回動可能に連結された第1の連結アームと、
一端が前記回動扉における第2の側辺側に回動可能に連結され、他端が前記本体における前記回動扉の閉塞状態の第1の側辺側に回動可能に連結された第2の連結アームと、から構成されていることを特徴とする回動扉の支持装置。
【請求項2】
前記第1の連結アームと前記第2の連結アームとは、同じ形状寸法の部材により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回動扉の支持装置。
【請求項3】
前記両開き構造は、前記本体における前記開口の互いに対向する両端縁側に、一対に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回動扉の支持装置。
【請求項4】
前記第1の連結アームと前記第2の連結アームとは、夫々略水平に設けられているとともに、上下方向に交わして設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回動扉の支持装置。
【請求項5】
前記連結アームは、一端が前記回動扉にリンクを介して回動可能に連結され、他端が前記本体にリンクを介して回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の回動扉の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−180052(P2008−180052A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16183(P2007−16183)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)