説明

回動足乗台付入浴用車椅子

【課題】
回動足乗台付入浴用車椅子の足乗台を邪魔にならない退避位置へ移動できる回動足乗台付入浴用車椅子を提供すること。
【解決手段】
回動足乗台付入浴用車椅子(1)において、座部フレーム(4)の前上部の左右に、回動部(7)が設けられ、該回動部(7)に足乗台(8)が設けられ、回動部(7)は、座部フレーム(4)の前上部の左右にそれぞれ取着される基部(14)と、基部(14)に水平面状に回動可能に設けられ回動の始終端が基部(14)で規制されるよう所定形状に形成された回動板(15)と、基部(14)に設けられ回動板(15)を軸支する支持軸(16)とからなり、回動板(15)に足乗台(8)の基部が取着されており、足乗台(8)は車椅子部(13)の正面向きと背面向きとの間で往復移動できる回動足乗台付入浴用車椅子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護を必要とする人(=以下入浴者という)が入浴する時に使用される回動足乗台付入浴用車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術には、足置き体、垂直フレームに嵌合する筒体、支持棒、足置き板とからなり、垂直フレームと筒体との間に位置決め手段を付設したシャワー入浴装置等の車椅子足置機構が開示されている。
【0003】
従来の技術に係る車椅子足置機構は、回動部が、垂直フレームの上部に設けられず、座面と床面の中間の高さ位置に設けられているので、垂直フレームごと退避させることはできず、垂直フレームが前部に残る。
又足置き体の回動中心が外側に突出していないので、足置き体を開放すると90度外方へ回動できるが、足置き体が外方に突出し、患者の乗り降り動作や移動の邪魔になる。
【特許文献1】特開2001−61900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、足置き体を開放した時、車椅子の正面に垂直フレームが残りこの垂直フレームが入浴者が車椅子への乗り降り動作の邪魔になり、又、足置き体が幅方向の外方に突出し、入浴者及び介助者の移動の邪魔になる点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決したものであり、回動足乗台付入浴用車椅子の足乗台を邪魔にならない退避位置へ移動できる回動足乗台付入浴用車椅子を提供することである。
即ち本発明は、回動足乗台付入浴用車椅子(1)において、座部フレーム(4)の前上部の左右に、回動部(7)が設けられ、該回動部(7)に足乗台(8)が設けられ、回動部(7)は、座部フレーム(4)の前上部の左右にそれぞれ取着される基部(14)と、基部(14)に水平面状に回動可能に設けられ回動の始終端が基部(14)で規制されるよう所定形状に形成された回動板(15)と、基部(14)に設けられ回動板(15)を軸支する支持軸(16)とからなり、回動板(15)に足乗台(8)の基部が取着されており、足乗台(8)は車椅子部(13)の正面向きと背面向きとの間で往復移動できることを特徴とする回動足乗台付入浴用車椅子である。
又、基部(14)における支持軸(16)は、座部フレーム(4)の上フレーム部(5)より幅方向の外方へ突出した位置に設けられており、足乗台(8)は支持軸(16)を中心に使用位置から退避位置へ180度回動する。
更に、基部(14)は、基部上板(17)と基部下板(18)とでなり、
回動板(15)が基部上・下板(17)・(18)の間に回動可能に挟着されてなる。
更に又、基部(14)に、回動板(15)を回動不自在に掛止する掛止具(25)が設けられ、回動板(15)の回動始点で掛止具(25)のピン(21)が嵌る使用位置穴(19)が回動板(15)に開設され、更に、回動板(15)の回動終点でピン(21)が嵌る退避位置穴(20)が回動板(15)に開設され、足乗台(8)が使用位置又は退避位置に至ると該足乗台(8)が回動部(7)へ自動的に回動不自在に掛止される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、回動板15に足乗台8の基部が取着されており、足乗台8は車椅子部13の正面向きと背面向きとの間で往復移動できるから、足乗台8の全体が退避位置へ退避でき、車椅子部13の正面部に突出部材が無く乗降し易く、好都合であり、又、回動板15と共に足乗台8を円滑に回動でき、好都合であり、又、回動板15の回動限度での規制を、回動板15を所定の形状の形成してこれを基部14で規制して行ない足乗台8を容易に回動始終両端の好適位置で止めることができ、好都合である。
【0007】
本発明に係る基部14における支持軸16は、座部フレーム4の上フレーム部5より幅方向の外方へ突出した位置に設けられており、足乗台8は支持軸16を中心に使用位置から退避位置へ180度回動するから、足乗台8を正面向きの使用位置と背面向きの退避位置との間に180度回動でき、足乗台8を退避位置に移動させた時、足乗台8が、車椅子部13の幅方向の外方に突出しないで車椅子部13の幅方向の外側に並列状に添い、安全であり、好都合である。
【0008】
本発明に係る基部14は、基部上板17と基部下板18とでなり、回動板15が基部上・下板17・18の間に回動可能に挟着されてなるから、基部上・下板17・18と回動板15とのスライド部分の面積が広く足乗台8のガタつきが少なく、好都合である。
【0009】
本発明に係る基部14に、回動板15を回動不自在に掛止する掛止具25が設けられ、回動板15の回動始点で掛止具25のピン21が嵌る使用位置穴19が回動板15に開設され、更に、回動板15の回動終点でピン21が嵌る退避位置穴20が回動板15に開設され、足乗台8が使用位置又は退避位置に至ると足乗台8が自動的に回動部7へ回動不自在に掛止されるから、回動板15の掛止・解除に係る操作が容易であり、又、確実に使用位置又は退避位置へ固定でき、好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の足乗台8を邪魔にならない退避位置へ移動できる回動足乗台付入浴用車椅子1を提供する目的を、座部フレーム4の前上部の左右に、回動部7が設けられ、該回動部7に足乗台8が設けられ、回動部7は、座部フレーム4の前上部の左右にそれぞれ取着される基部14と、基部14に水平面状に回動可能に設けられ回動の始終端が基部14で規制されるよう所定形状に形成された回動板15と、基部14に設けられ回動板15を軸支する支持軸16とからなり、回動板15に足乗台8の基部が取着されており、足乗台8は車椅子部13の正面向きと背面向きとの間で往復移動できる回動足乗台付入浴用車椅子1をもって、実現した。
【実施例1】
【0011】
図1、2、3、4、5に本発明の実施例1の回動足乗台付入浴用車椅子1を示している。
実施例1は、入浴用の車椅子部13に水平面状に回動する足乗台8が取り付けられてなる。
車椅子部13は、台車部2と、台車部2に載設される座席部3とからなる。車椅子部13において、座部フレーム4の上フレーム部5(=左上フレーム部5a及び右上フレーム部5b)のそれぞれの前部に、足乗台取付板6(=左足乗台取付板6a及び右足乗台取付板6b)を介して回動部7(=左回動部7a及び右回動部7b)が設けられる。
回動部7に足乗台8(=左足乗台8a及び右足乗台8b)が取り付けられる。
【0012】
実施例1は、リクライニング式分離型であり、足乗台取付板6は、背凭れ部9を後傾させた時、足乗台取付板6と背凭れ部9の間にリンクして設けられる縦連接棒10及び横連接棒11に押されて、板取付軸12を中心に垂直面状に回動する。
背凭れ部9の後傾動に連動して足乗台取付板6が回動し、足乗台8は上方へ移動する。この移動で実施例1上の入浴者は長座位のリクライニング姿勢になる。
【0013】
入浴の際、実施例1を上記リクライニング姿勢にして、実施例1を前方へ移動させて、扉を開放した扉付き浴槽(図示省略)へ押し込む。
この時、車椅子部13の座席部3と台車部2が分離し、座席部3は浴槽内に入り、台車部2は浴槽下方外部の空間へ進入する。
扉を閉め、湯を入れ、入浴する。
【0014】
左右足乗台取付板6a・6bの各前端部に前軸37が幅方向に懸け渡して取り付けられる。前軸37の左右両端に回動部7が設けられる。
回動部7は、前軸37の端部に取着される基部14と、基部14に水平面状に回動可能に設けられ回動の始終端が基部14で規制されるよう所定形状に形成された回動板15と、基部14に設けられ回動板15を軸支し縦向きに設けられる支持軸16とからなる。
【0015】
基部14は、基部上板17と、基部下板18とでなる。
回動板15が基部上板17と基部下板18の間に回動可能に挟着されてなる。回動板15に、使用位置穴19及び退避位置穴20が開設される。該両穴19・20は、後記するピン21が嵌る穴である。
【0016】
基部14おける支持軸16は、上フレーム部5より車椅子部13の幅方向の外方へ突出した位置に設けられる。
【0017】
足乗台8は、足乗台腕22と、足乗台腕22の先部に取着される足乗板23と、足乗台腕22の前面部に取着され入浴者の脹脛を受ける受板24とからなる。
回動板15に足乗台腕22の基部が取着され、足乗台8は、支持軸16を中心に回動板15と共に回動する。
足乗台8は、車椅子部13の正面向きと、車椅子部13の外方を回して至る背面向きとの間で往復移動できる。
支持軸16は、前述した様に、上フレーム部5より左右外方へ突出した位置に設けられているため、足乗台8は使用位置から退避位置へ180度回動できる。
【0018】
基部上板17に、回動板15を回動不自在に掛止する掛止具25が設けられる。掛止具25の具体例は手動プランジャ26であり、該手動プランジャ26は、基部上板17上に縦方向に突設される筐体27と、筐体27に支持され上下に移動できるピン21と、ピン21の上部に形成されるツマミ28と、ピン21を下方に付勢するバネ29とからなる。
【0019】
基部上板17に設けられるピン21の位置は、回動板15の使用位置穴19に合致できる位置であり、該穴19とピン21が合致した時、ピン21はバネ29力で下降し、使用位置穴19に嵌入する。退避位置穴20は、支持軸16を中心に使用位置穴19と対称する位置にあり、回動板15を180度回動させると、ピン21は退避位置穴20に合致する。
使用位置穴19はピン21が回動板15の回動始点で嵌る穴であり、退避位置穴20はピン21が回動板15の回動終点で嵌る穴である。
【0020】
即ち、ピン21が使用位置穴19に嵌入することにより足乗台8が使用位置(=正面方向に突出した位置)に回動不自在に掛止され、ピン21が退避位置穴20に嵌入することにより足乗台8が退避位置(=背面に向いた位置)に回動不自在に掛止される。
【0021】
尚、図1中、30はローラー、36は座部、39は前回動支持枠、40は支持枠、44は中フレーム、45は下フレーム、42は車輪、図3中、31は取手、32は背凭れ解除ハンドル、33は解除連接棒、34は後傾掛止板、35は回動手摺、図5中、38は枕、41は中回動支持枠、43は後回動支持枠である。
【0022】
実施例1を使用する際、先ず、実施例1のセッティングを行なう。介助者は、ツマミ28を持ち上げ掛止具25の掛止作用を解除する。
続いて、車椅子部13の正面方向に突出した足乗台8を、回動板15と共に支持軸16を中心に回動させ背面へ向け、車椅子部13の外側に添わせる。
【0023】
回動板15は、基部上板17と基部下板18との間に挟着されてガタつくことなく円滑に回動する。
支持軸16は上フレーム部5より幅方向外方に設けられており、足乗台8は180回動できる。
【0024】
足乗台8を背面方向へ回動させた時、回動終端で、ピン21がバネ29力により自動的に退避位置穴20に嵌入し、足乗台8は回動部7へ移動不自在に掛止される。
左・右足乗台8a・8bの二個を背面方向へ向けるが、必要に応じて片側の足乗台8一個だけを背面方向へ向けることも有る。又、必要に応じて回動手摺35を、跳ね上げて背面方向へ退避させてもよい。
【0025】
上記セッティングの後、介助者は入浴者を、車椅子部13の座部36に腰掛け乗せる。
続いて、ツマミ28を摘み上げて、掛止具25の掛止機能を解除し、入浴者の足を上げ、背面へ向いた足乗台8を正面方向へ回動させ使用位置へ至らせ、入浴者の足を足乗せ台8に乗せる。足乗台8が正面に向き、所定の位置に至った時、ピン21が使用位置穴19に嵌入し、足乗台8が回動部7に掛止固定される。
【0026】
実施例1を開扉した前記浴槽に押し込み、入浴者を浴槽内に入れ、続いて扉を閉め、給湯し、入浴を行なう。
暫時後の退浴の際は、浴槽から湯を排水し、実施例1を浴槽から引き出す。引き出し中に、浴槽内の座席部3と浴槽の下方外部の台車部2とは自動的に合体し、両部材を一体的に引き出せる。
【0027】
実施例1から入浴者を降ろす時、掛止具25を解除し、入浴者の足を持ち上げ、足乗台8を背面方向へ回動させる。車椅子部13の直前を空間にした後、入浴者を座部36から降ろし、入浴を終わる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
回動足乗台付入浴用車椅子1において、座部フレーム4の前上部の左右に、回動部7が設けられ、該回動部7に足乗台8が設けられ、回動部7は、座部フレーム4の前上部の左右にそれぞれ取着される基部14と、基部14に水平面状に回動可能に設けられ回動の始終端が基部14で規制されるよう所定形状に形成された回動板15と、基部14に設けられ回動板15を軸支する支持軸16とからなり、回動板15に足乗台8の基部が取着されており、足乗台8は車椅子部13の正面向きと背面向きとの間で往復移動できる回動足乗台付入浴用車椅子1に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1の回動部を示す部分右側面図である。
【図2】本発明の実施例1の部分平面図である。
【図3】本発明の実施例1の背面図である。
【図4】本発明の実施例1の座席部を透視した平面図である。
【図5】本発明の実施例1の右側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 回動足乗台付入浴用車椅子
4 座部フレーム
5 上フレーム部
7 回動部
8 足乗台
13 車椅子部
14 基部
15 回動板
16 支持軸
17 基部上板
18 基部下板
19 使用位置穴
20 退避位置穴
21 ピン
25 掛止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動足乗台付入浴用車椅子(1)において、座部フレーム(4)の前上部の左右に、回動部(7)が設けられ、該回動部(7)に足乗台(8)が設けられ、
回動部(7)は、座部フレーム(4)の前上部の左右にそれぞれ取着される基部(14)と、基部(14)に水平面状に回動可能に設けられ回動の始終端が基部(14)で規制されるよう所定形状に形成された回動板(15)と、基部(14)に設けられ回動板(15)を軸支する支持軸(16)とからなり、
回動板(15)に足乗台(8)の基部が取着されており、足乗台(8)は車椅子部(13)の正面向きと背面向きとの間で往復移動できることを特徴とする回動足乗台付入浴用車椅子。
【請求項2】
基部(14)における支持軸(16)は、座部フレーム(4)の上フレーム部(5)より幅方向の外方へ突出した位置に設けられており、
足乗台(8)は支持軸(16)を中心に使用位置から退避位置へ180度回動することを特徴とする請求項1記載の回動足乗台付入浴用車椅子。
【請求項3】
基部(14)は、基部上板(17)と基部下板(18)とでなり、
回動板(15)が基部上・下板(17)・(18)の間に回動可能に挟着されてなることを特徴とする請求項1記載の回動足乗台付入浴用車椅子。
【請求項4】
基部(14)に、回動板(15)を回動不自在に掛止する掛止具(25)が設けられ、回動板(15)の回動始点で掛止具(25)のピン(21)が嵌る使用位置穴(19)が回動板(15)に開設され、更に、回動板(15)の回動終点でピン(21)が嵌る退避位置穴(20)が回動板(15)に開設され、
足乗台(8)が使用位置又は退避位置に至ると該足乗台(8)が回動部(7)へ自動的に回動不自在に掛止されることを特徴とする請求項1記載の回動足乗台付入浴用車椅子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−313092(P2007−313092A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146795(P2006−146795)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】