説明

回折光学素子及び計測装置

【課題】広い領域に均一な光量分布の回折パターンが得られる回折光学素子を提供する。
【解決手段】入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第1の回折光学部と、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第2の回折光学部と、を有し、前記第1の回折光学部に光を入射することにより発生した回折光を前記第2の回折光学部に入射させ、前記第2の回折光学部より回折光を発生させるものであって、前記第1の回折光学部における回折角度がθであり、前記第2の回折光学部における回折角度がθである場合、θ≦θであることを特徴とする回折光学素子を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折光学素子及び回折光学素子を用いた計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光の少なくとも一部を回折する回折光学素子は、様々な光学機器及び光学装置等に用いられている。例えば、光学的な3次元計測装置は、所定の光の投影パターンを測定対象物に照射し、所定の光の投影パターンの照射されている測定対象物の画像を取得することにより、3次元計測を行なう装置である。このような3次元計測装置において、回折光学素子は所定の光の投影パターンを生成するために用いられている。
【0003】
3次元計測装置では、広い範囲に光を投影することが求められており、このため、回折光学素子の回折角度が大きくなり、回折光学素子を直進透過する回折光である0次回折光の光量が大きくなりやすい傾向にある。このような0次回折光の光量は他の回折光の光量に対し高くなると、3次元計測装置の撮像画像が0次回折光の周囲でにじみ等が生じ、画像の劣化につながる可能性がある。従って、0次回折光の光量は低い方が望ましい。
【0004】
特許文献1には、3次元計測を行う際に、計測対象物に照射される光の投影パターンとして、回折光学素子により生成されたスペックルパターンを照射する方法が開示されている。また、特許文献2には、2枚の回折光学素子を用いて0次回折光の光量を低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−530604号公報
【特許文献2】特表2011−510344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示されている方法は、1枚目の回折光学素子に光を入射し、1枚目の回折光学素子により回折された光を2枚目の回折光学素子に入射させ回折させるものであり、これにより、矩形の回折光のパターンを2次元的に分布させることができる。
【0007】
回折光学素子を3次元計測等に用いる場合、上述したように回折光学素子には回折光を広い範囲に分布させることが求められるが、2枚の回折光学素子を用いた場合、1枚目の回折光学素子の回折角度と2枚目の回折光学素子の回折角度の和が全体の回折角度となるため、回折角度が広くなり、回折光を広い範囲に分布させることができる。
【0008】
ところで、一般的に、回折光学素子は、回折光学素子の面に対し垂直方向より入射することを前提として作製されている。しかしながら、2枚の回折光学素子を用いた場合には、2枚目の回折光学素子に入射する光は、回折光であるため回折光学素子の面に対し垂直に入射するのではなく斜め方向から入射する。このため、2枚目の回折光学素子からの回折光は所望の分布が得られず、回折光の光量にばらつきが生じ、更には、0次回折光の光量が高くなる場合がある。
【0009】
本発明は、上記点に鑑みたものであり、複数の回折面を有する回折光学素子において、投影面において所望の回折光を得ることができ、得られた各々の回折光の光量を均一にできる回折光学素子を提供することを目的とし、更には、精密な計測を行うことのできる計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第1の回折光学部と、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第2の回折光学部と、を有し、前記第1の回折光学部に光を入射することにより発生した回折光を前記第2の回折光学部に入射させ、前記第2の回折光学部より回折光を発生させるものであって、前記第1の回折光学部における回折角度がθであり、前記第2の回折光学部における回折角度がθである場合、θ≦θであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第1の回折光学部と、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第2の回折光学部と、を有し、前記第1の回折光学部に光を入射することにより発生した回折光を前記第2の回折光学部に入射させ、前記第2の回折光学部より回折光を発生させるものであって、前記第1の回折光学部に形成される回折部の段数と、前記第2の回折光学部に形成される回折部の段数とが等しいものであり、前記第1の回折光学部に形成される回折部の高さがhであり、前記第2の回折光学部に形成される回折部の高さがhである場合、h>hであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記第2の回折光学部における回折光の回折角度の平均をαとした場合、h≒hcosαであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第1の回折光学部と、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第2の回折光学部と、を有し、前記第1の回折光学部に光を入射することにより発生した回折光を前記第2の回折光学部に入射させ、前記第2の回折光学部より回折光を発生させるものであって、前記第1の回折光学部に形成される回折部の段数がm段であり、前記第2の回折光学部に形成される回折部の段数がm段であり、前記第1の回折光学部に形成される回折部の高さがhであり、前記第2の回折光学部に形成される回折部の高さがhである場合、h×m/(m−1)>h×m/(m−1)であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記第2の回折光学部における回折光の回折角度の平均をαとした場合、h×m/(m−1)≒{h×m/(m−1)}×cosαであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第1の回折光学部と、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第2の回折光学部と、を有し、前記第1の回折光学部に波長λの光を入射することにより発生した回折光を前記第2の回折光学部に入射させ、前記第2の回折光学部より回折光を発生させるものであって、前記第1の回折光学部における回折角度がθであり、前記第2の回折光学部に光が垂直に入射する場合に、波長λ/β以上、波長λ未満の波長の光に対して第2の回折光学部で発生する回折光の強度の標準偏差、または、0次回折光の強度が極小値をとることを特徴とする回折光学素子。ここで、β=ΔL(θ)/ΔL(0)、ΔL(θ)=h(Ncosθ11−Ncosθ12)、ΔL(0)=h(N−N)、h:第2の回折光学部の高さ、N、N:第2の回折光学部の凹凸を形成する媒質の屈折率、θ11、θ12:角度θで第2の回折光学部に入射する光の第2の回折光学部の凹凸中における角度。
【0016】
また、本発明は、前記第1の回折光学部及び前記第2の回折光学部のうちいずれか一方または、双方は、複数の基本ユニットが2次元的に配列されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記第1の回折光学部は一方の透明基板に形成されており、前記第2の回折光学部は他方の透明基板に形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記一方の透明基板と前記他方の透明基板とは接着することにより一体化していることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記第1の回折光学部は透明基板の一方の面に形成されており、前記第2の回折光学部は前記透明基板の他方の面に形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、光を発する光源と、前記光を入射させ回折光が出射される前記記載の回折光学素子と、前記回折光が照射された測定対象物の画像を撮像する撮像部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明における回折光学素子では、複数の回折面を有する回折光学素子において、投影面において所望の回折光を得ることができ、得られた各々の回折光の光量を均一にできる。また、本発明における計測装置では、本発明の回折光学素子を用いることにより、精密で正確な計測を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態における計測装置の構造図
【図2】第1の実施の形態における回折光学素子の構成図
【図3】回折光学素子により生じる光スポットの説明図
【図4】第1の実施の形態における回折光学素子の説明図
【図5】第1の回折光学部及び第2の回折光学部の構造図
【図6】他の第1の回折光学部及び第2の回折光学部の構造図
【図7】回折光学素子に入射する光の入射角度の説明図
【図8】第1の実施の形態における回折光学素子の回折光の説明図
【図9】第1の実施の形態における第2の回折光学部の説明図
【図10】第1の実施の形態における他の回折光学素子の回折光の説明図
【図11】第2の実施の形態における回折光学素子の構成図
【図12】第2の実施の形態における他の回折光学素子の構成図(1)
【図13】第2の実施の形態における他の回折光学素子の構成図(2)
【図14】第2の実施の形態における他の回折光学素子の構成図(3)
【図15】第2の実施の形態における他の回折光学素子の構成図(4)
【図16】実施例1及び4に用いられる一方の回折光学部の説明図
【図17】実施例1及び4に用いられる他方の回折光学部の説明図
【図18】実施例1及び4における回折光学素子により形成される光スポット
【図19】実施例2、3及び5に用いられる一方の回折光学部の説明図
【図20】実施例2、3及び5に用いられる他方の回折光学部の説明図
【図21】実施例2、3及び5における回折光学素子により形成される光スポット
【図22】実施例6に用いられる一方の回折光学部の説明図
【図23】実施例6に用いられる他方の回折光学部の説明図
【図24】実施例6における回折光学素子により形成される光スポット
【図25】実施例7に用いられる一方の回折光学部の説明図
【図26】実施例7に用いられる他方の回折光学部の説明図
【図27】実施例7における回折光学素子により形成される光スポット
【図28】実施例8に用いられる一方の回折光学部の説明図
【図29】実施例8に用いられる他方の回折光学部の説明図
【図30】実施例8における回折光学素子により形成される光スポット
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0024】
〔第1の実施の形態〕
(計測装置)
図1に基づき本実施の形態における計測装置について説明する。図1は、本実施の形態における計測装置の構成の一例を示す。本実施の形態における計測装置10は、光源20、回折光学素子30及び撮像素子50を有している。回折光学素子30は、後述する本実施の形態における回折光学素子であり、光源20から出射された光束(入射光)11を入射させることにより、回折光12を発生させる。また、撮像素子50は、回折光12により生じた光スポットの投影パターンが照射されている測定対象物40a及び40bを撮像するためのものである。
【0025】
回折光学素子30は、複数の回折光12を発生させるものであり、この回折光12により生じた光スポットにより、所望の投影パターンが形成される。従って、この投影パターンを測定対象物40a及び40bに照射し、投影パターンが照射された状態の画像を撮像素子50により撮像することにより、測定対象物40a及び40bの3次元形状等の情報が取得される。尚、3次元計測を行なうためには、光スポットの数は100以上であることが好ましく、また、回折光学素子30は、最大の回折角度θxmin、θxmaxが30°以上となるように、即ち、回折角度が30°以上の回折光を発生させることができるように形成されていることが好ましい。
【0026】
(回折光学素子)
次に、本実施の形態における回折光学素子30について説明する。図2に示されるように、本実施の形態における回折光学素子30は、第1の回折光学部110と第2の回折光学部120とを有している。尚、本実施の形態における回折光学素子30は、第1の回折光学部110と第2の回折光学部120とを有するものであるが、第1の回折光学部110及び第2の回折光学部120について、各々第1の回折光学部110となる回折光学素子及び第2の回折光学部120となる回折光学素子等と記載する場合がある。第1の回折光学部110は、光束11を入射させることにより回折光111a、111b、111c、・・・のn個の回折光群111を発生させる回折光学素子である。第2の回折光学部120は、回折光111a、111b、111c、・・・のn個の回折光群111を入射させることにより、n個の回折光群121a、121b、121c・・・を発生させる回折光学素子である。これにより、回折光の数を増やすことができ、回折角の大きな回折光を発生させることができる。従って、投影面140の広い範囲に回折光の光スポットを分布させることができる。尚、本実施の形態では、入射光となる光束11の光軸101方向をZ軸とし、光束11の光軸101に対し垂直方向をX軸、Y軸とする。尚、X軸とY軸とは直交するものとする。
【0027】
本実施の形態における回折光学素子を形成している第1の回折光学部110と第2の回折光学部120は、ともに回折光を発生させるものであり、この点においては同様のものである。よって、第1の回折光学部110となる回折光学素子及び第2の回折光学部120となる回折光学素子について、図3において回折光学素子230として説明する。
【0028】
図3に示すように、回折光学素子230に入射光となる光束210を入射させることにより、回折光群211が発生する。回折光群211のうち、光軸101に対する回折角度が最大となる回折光211aの回折角度をθとし、これを回折角度範囲θとする。また、このときの回折範囲の中心の光軸101に対する角度(中心角度)θは0°とする。尚、光軸101に対して回折光211aと反対の位置の近傍に、回折角度がθとなる回折光211bが発生するが、θとθの差が大きい場合、例えば、θとθとの差が3°以上ある場合には、回折角度範囲θ=(θ+θ)/2とし、中心角度θ=(θ−θ)/2としてもよい。
【0029】
また、光軸101に対し回折光211aの反対側には回折光が発生しない場合、即ち、光軸101に対し回折光211aが発生している側にのみ回折光群が発生する場合も考えられる。このような場合、光軸101に最も近い回折光の回折角度がθであるとすると、回折角度範囲θ=(θ−θ)/2とし、中心角度θ=(θ+θ)/2としてもよい。
【0030】
本実施の形態では、この回折角度範囲θについては、第1の回折光学部110における回折角度範囲をθ、第2の回折光学部120における回折角度範囲をθ、本実施の形態における回折光学素子30における回折角度範囲をθと記載する。
【0031】
次に、回折光学素子230についてより詳細に説明する。入射光となる光束210を回折光学素子230に入射させることにより、回折光211が発生する。この回折光211は、数1に示すグレーティング方程式において、Z軸方向を基準として、X方向における角度θ、Y方向における角度θに回折された光である。数1に示す式において、mはX方向の回折次数であり、mはY方向の回折次数であり、λは光束210の波長であり、P、Pは後述する回折光学素子の基本ユニットのX軸方向、Y軸方向におけるピッチである。この回折光12をスクリーンまたは測定対象物等の投影面に照射させることにより、照射された領域に複数の光スポットが生成される。
【0032】
【数1】

ここで、数1に示す式は、入射光が回折光学素子に対し垂直に入射する場合における式である。図1において、入射光11が回折光学素子30に対して垂直に入射している状態を示しているが、光源がレーザ光源等の場合には、回折光学素子30からの反射光が戻り光となりレーザ光源等に入射することを防ぐため、回折光学素子30に垂直な方向より傾けた方向より入射光11を入射させてもよい。レーザ光源等に戻り光が入射すると干渉の影響によりレーザの発振が不安定となる場合があるからである。
【0033】
このような回折光学素子30としては、反復フーリエ変換法等により設計された回折光学素子を用いることができる。ここで、回折光学素子とは、所定の位相分布を生じさせる基本ユニットを周期的に、例えば、2次元的に配列させたものである。このような回折光学素子においては、遠方における回折光の回折次数の分布は基本ユニットにおけるフーリエ変換により得ることができる。このことはスカラー回折理論によって説明されている。電磁場はベクトル量であるが、等方的な媒質中ではスカラー量により表わすことができ、時間t、点Aにおけるスカラー関数u(A、t)は、数2に示す式で表わされる。
【0034】
【数2】

数2に示す式は、入射する光が単色光の場合を示しており、U(A)は点Aにおける複素振幅であり、ωは角周波数である。数2に示すスカラー関数は、全空間で数3に示す波動方程式を満たす。
【0035】
【数3】

数2に示す式を数3に示す式に代入すると、数4に示すヘルムホルツ方程式を得ることができる。
【0036】
【数4】

ここで、kは波数であり、k=2π/λである。数3に示される式を解くことにより、空間におけるスカラー関数の分布が計算される。また、ある位相分布を与える十分に薄い平面スクリーンをΣで示し、Σ上における点をAとし、平面波がΣを透過した場合の点Aにおけるスカラー関数をキルヒホッフの境界条件を用いて、数4に示す式から計算すると、r01を点Aと点Aの距離とした場合、数5に示す式が得られる。
【0037】
【数5】

更に、点Aにおける座標(x、y、0)、点Aにおける座標(x、y、z)とし、zが|x−x|、|y−y|よりも十分大きな値であるものとすると、r01を展開することにより、数6に示されるフラウンホーファー近似式を得ることができる。
【0038】
【数6】

これは、スクリーンによって与えられる位相分布のフーリエ変換に相当する。特に、スクリーン後における位相分布u(A)がX軸方向にピッチP、Y軸方向にピッチPの周期性を有する場合、u(A)は、下記に示す数7に示す式のように、(m、n)次の回折光が発生する。
【0039】
【数7】

この際、(m、n)次の回折光の回折効率ηmnは、周期性の基本ユニットが有する位相分布u'(x、y)を用いて、下記数8に示す式で表わされる。尚、m、nは整数、θxin及びθyinは入射光におけるX方向及びY方向におけるZ軸となす角度、θxout及びθyoutは出射光におけるX方向及びY方向におけるZ軸となす角度である。
【0040】
【数8】

従って、基本ユニットの位相分布が得られれば、そのフーリエ変換によって回折光における強度分布の計算ができるため、基本ユニットの位相分布を最適化することにより、所望の分布の回折光を発生させる回折光学素子が得られる。
【0041】
次に、図4に基づき、回折光学素子230の構造について説明する。回折光学素子230は、図4(a)に示されるように、X軸方向にピッチP、Y軸方向にピッチPの基本ユニット231が2次元状に周期的に配列されている。具体的には、図4(b)に示されるような位相分布を有している。図4(b)では、黒く塗りつぶされた領域が凸部となり、白抜きの領域が凹部となるように凹凸パターンが形成されている回折光学素子230を示す。回折光学素子230は、位相分布を発生させることができればよく、ガラスや樹脂材料等の光を透過する部材の表面に凹凸パターンを形成した構造のものや、凹凸パターンが形成された透明な部材の上に、この部材とは屈折率の異なる部材を貼り合わせ、表面の凹凸パターンを平坦なものとしたものや、更には、透明な部材において屈折率を変化させた構造のものであってもよい。つまり、ここで、凹凸パターンとは、表面形状が凹凸である場合のみを意味するものではなく、入射光に位相差を与えることのできる構造のものを含むものを意味する。尚、回折光学素子230に基本ユニット231を2次元的に配置する際に基本ユニットは整数個である必要はなく、凹凸パターン内に1つ以上の基本ユニットが含まれていれば凹凸パターンと凹凸パターンを有さない領域の境界が基本ユニットの境界と一致していなくともよい。
【0042】
図5には、回折光学素子230の一例として、ガラス等からなる透明基板232の表面に凸部233を形成することにより凹凸パターンを形成した構造の回折光学素子230の断面模式図を示す。尚、この回折光学素子230では、透明基板232の表面において、凸部233の形成されていない領域が凹部234となる。
【0043】
透明基板232は、入射光に対し透明であればよく、ガラス基板の他、樹脂基板、樹脂フィルム等の種々の材料を使用できるが、ガラスや石英等の光学的等方材料は、透過光に複屈折性の影響を与えることがなく好ましい。また、透明基板232は、例えば、空気との界面に、多層膜による反射防止膜を形成することにより、フレネル反射による光反射を低減できる。
【0044】
また、凸部233を形成する材料としては、有機材料、無機材料、有機無機複合材料を用いることができる。凸部233を形成する方法、即ち、凸部233と凹部234からなる凹凸パターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィとエッチングにより形成する方法や、型によって凹凸パターンを転写する射出成形やインプリントによる方法等を用いることができる。また、凸部233は単一の材料により形成されている必要はなく、例えば、無機材料からなる多層膜により凸部233を形成してもよい。更に、凸部233の表面には表面反射を低減するための反射防止膜を設けた構造や、反射防止構造を形成してもよい。
【0045】
また、図6に示されるように、回折光学素子230は、表面に凸部233が形成されている透明基板232の凸部233が形成されている側に、透明基板235を設け、透明基板232と透明基板235との間に、凸部233を形成する材料の屈折率とは異なる屈折率の透明樹脂236を埋め込んだものである。尚、透明基板235を設けることなく、透明基板232の凸部233が形成されている側に、凸部233を形成する材料の屈折率とは異なる屈折率の透明樹脂236を形成し、透明樹脂236の表面を平坦化したものであってもよい。
【0046】
このような回折光学素子230は、反復フーリエ変換法等の手法を用いて作製できる。より詳細に説明すると、回折光学素子における基本ユニット231の位相分布と回折光の電場分布はフーリエ変換の関係にあるため、回折光の電場分布を逆フーリエ変換することにより、基本ユニット231における位相分布を得ることができる。
【0047】
また、回折光学素子230を作製する際には、回折光の強度分布のみ制限条件となり、位相の条件が含まれないため、基本ユニット231の位相分布は任意なものとなる。反復フーリエ変換法では、回折光の光強度分布の逆フーリエ変換より基本ユニットの位相分布の情報を抽出し、得られた位相分布を基本ユニットの位相分布とし、更にフーリエ変換を行う。これにより、フーリエ変換の結果と、所定の回折光の光強度の分布との差分が評価値となり、上記計算を繰り返すことにより、評価値が最小となるような回折光学素子の位相分布を最適な設計として得ることができる。
【0048】
回折光学素子の設計アルゴリズムは、上記以外にも、Bernard Kress,Patrick Meyrueis著、「デジタル回折光学」(丸善)等に記載されているように各種ある。また、フーリエ変換の方法としては、高速フーリエ変換アルゴリズム等を用いることができる。
【0049】
(第1の回折光学部と第2の回折光学部との関係)
次に、第1の回折光学部110と第2の回折光学部120との関係について説明する。本実施の形態においては、光束11は第1の回折光学部110の面に略垂直に入射するが、第2の回折光学部120には、第1の回折光学部110の回折光が入射するため、第2の回折光学部120の面の法線に対し傾いた角度より光が入射する。
【0050】
図7に基づき回折光学素子230の透明基板232の表面に高さhの凸部233が形成されている場合について、より詳細に説明する。図7(a)に示すように、回折光学素子230の面に対して垂直に光213a及び213bを入射させた場合、凸部233を透過する光213bと凹部234を通る光213aとにおいて、凸部233の高さhと凸部233を形成している材料と空気等の屈折率差の積の位相差が生じる。一方、図7(b)に示すように、回折光学素子230の面の法線に対して角度φで光214a及び214bを入射させた場合、凸部233を透過する光214bの光路はh/cosφとなり、これに対応する光214aの光路はh/cosφとなる。ここで、φは、凸部233に光214bを角度φで入射させた際に凸部233内部において屈折する角度である。よって、光路h/cosφと凸部233を形成している材料の屈折率の積と、光路h/cosφと空気等の屈折率の積との差の位相差が生じる。また、φavg=(φ+φ)/2とすると、平均的には、光路h/cosφavgと凸部233を形成している材料と空気等の屈折率差の積の位相差が生じる。尚、本実施の形態では、第1の回折光学部110では、図7(a)に示すように光が入射し、第2の回折光学部120では、図7(b)に示すように光が入射する。
【0051】
このように、回折光学素子230に入射する光の入射する光の角度により位相差は変化し、回折光学素子230の面の法線に対する角度(入射角度)が大きくなればなるほど位相差が大きくなる。一般的な回折光学素子の場合では、光を垂直入射させることを前提として作製されているため、回折光学素子に入射する光の入射角度が大きくなればなるほど、所望の回折光が得られなくなる。
【0052】
また、回折光学素子230の凹凸パターンが屈折率の異なる2種類の材料により形成されている場合には、2種類の材料の界面における光の入射角度及び出射角度をφ、φとした場合、φavg=(φ+φ)/2とすると、平均的には、光路h/cosφavgと凸部233を形成している材料と空気等の屈折率差の積の位相差が生じる。ここで、φ、φは、2種類の媒質の屈折率をN、Nとすると、スネルの法則、N×sinφ=N×sinφより算出される。
【0053】
例えば、凸部233を形成している材料の屈折率Nを1.5とし、凹部234となる部分は大気等であり屈折率が1である場合、入射角度φに対応するφ、1/cosφ、1/cosφavg、ΔL(φ)/ΔL(0)=ΔL(φ)/{h(N−1)}の値を表1に示す。尚、ΔL(φ)/{h(N−1)}は光が垂直に入射した場合に対する光が角度φで入射した場合の位相差の変調を示すものであり、光路差ΔL(φ)=h(Ncosφ−cosφ)とした場合の値である。ここで、凹凸パターンが屈折率の異なる2種類の材料により形成されている場合には、光路差ΔL(φ)=h(Ncosφ−Ncosφ)、ΔL(0)=h(N−N)を用いればよい。また、1/cosφavgを平均的な位相差の変調として示したが、表1に示すように光路差から計算される位相差の変調であるΔL(φ)/{h(N−1)}の値は1/cosφavg近い値となるため、位相差の変調として1/cosφavgとΔL(φ)/{h(N−1)}のどちらを用いてもよい。
【0054】
【表1】

例えば、回折光学素子230における入射光の入射角度φ=30°の場合では、回折光学素子230に光が垂直に入射する場合に対し、最大で15%の位相差の変調を受ける。このような位相差の変調は基本ユニット231における位相分布の変調となり、回折光学素子の面に垂直に入射する光を前提に作製された回折光学素子における所望の回折光の光量等のずれが生じる。このように入射角度φが大きくなると、回折光学素子を透過する0次回折光の光量が変化し、出射された回折光の光量のバラツキが生じる。このことは、2枚の回折光学素子を用いた場合には、必然的に生じる問題である。
【0055】
(本実施の形態の説明1)
本実施の形態における回折光学素子は、図8に示すように、第1の回折光学部110における回折角度範囲θを第2の回折光学部120における回折角度範囲θよりも小さくしたもの、即ち、θ≦θとしたものである。第2の回折光学部120に入射する光の入射角度を小さくし、第2の回折光学部120の面に垂直に入射する状態に近づけることにより、光量バラツキのない回折光を得ることができる。これにより広い範囲に略均一な光量の回折光を発生させることのできる回折光学素子30を得ることができる。本実施の形態では、回折角度範囲θは30°以下であることが好ましく、更には、15°以下であることが好ましい。
【0056】
(本実施の形態の説明2)
また、図9(a)に示すように、第2の回折光学部120において透明基板122の表面に形成される凸部123の高さhを入射光の入射角度φに対応して低くし、所望の光路差となるように形成してもよい。即ち、第2の回折光学部120は、第1の回折光学部110により発生した回折光の回折角度で第2の回折光学部120に光が入射するように設計されていれば、前述した問題は生じない。よって、第1の回折光学部110により発生した回折光の回折角度範囲θ以下となる角度を角度αとし、この角度αで第2の回折光学部120に光が入射することとして第2の回折光学部120を作製することにより、上記問題は解消される。
【0057】
ここで、角度αで第2の回折光学部120に入射した回折光が、第2の回折光学部120の凹凸を形成する2種類の媒質中で第2の回折光学部120の法線方向と角度α、角度αをなし、αavg=(α+α)/2とすると、前述のように回折光が第2の回折光学部120に垂直に入射する場合に対して1/cosαavgの位相差の変調を受ける。また、第1の回折光学部の回折角度範囲である角度θで第2の回折光学部120に回折光が入射する場合は、回折光が第2の回折光学部120の凹凸を形成する2種類の媒質中で第2の回折光学部120の法線方向と角度θ11、角度θ12をなし、θ1avg=(θ11+θ12)/2とすると、回折光が第2の回折光学部120に垂直に入射する場合に対して1/cosθ1avgの位相差の変調が発生する。第1の回折光学部110によって発生する回折光が付与されうる垂直入射に対する最大の位相差の変調が1/cosθ1avgとなるため、1/cosαavg=1/2cosθ1avgを満たす角度αで第2の回折光学部120に光が入射することとして第2の回折光学部120を作製することで、垂直入射で第2の回折光学部120に光が入射することとして第2の回折光学部120を作製する場合に対し、第2の回折光学部で発生する位相差の変調を半分にすることができる。ここで、上記の関係を満たす角度αavgを以下ではαとする。
【0058】
従って、第2の回折光学部120として、具体的には、h=hcosαとなるように形成する。尚、高さhは第1の回折光学部110における凸部の高さである。このため、第2の回折光学部120における凸部123の高さhは、光が垂直に入射する第1の回折光学部110における凸部の高さhよりも低くなる。即ち、高さhと高さhとの関係は、下記(1)に示す式となり、更には、下記(2)に示す式であることが好ましい。

>h・・・・・・・・・・・・・(1)
≒hcosα・・・・・・・・(2)

尚、「≒」は、本実施の形態においては、約±2%の範囲内であることを意味するものであり、これは後述する例3における値に基づくものである。
【0059】
また、上記(1)(2)に示す式は、第1の回折光学部110における回折部の段数と第2の回折光学部120における回折部の段数が等しい場合であり、第1の回折光学部110における回折部の段数と第2の回折光学部120における回折部の段数が異なっている場合には、第1の回折光学部110における回折部の段数をm、最下段から最上段までの高さをhとし、第2の回折光学部120における回折部の段数をm、最下段から最上段までの高さをhとした場合には、下記(3)に示す式となり、更には、下記(4)に示す式であることが好ましい。例えば、図9(b)に示すように、第1の回折光学部110を階段形状で近似する場合、階段形状の稜線を結んだ線の高さに凹凸材料の屈折率差を乗じたものが設計波長となるようにするとよい。この場合、一段の高さがh/(m−1)となるので、稜線を結んだ線の高さはh×m/(m−1)となり、この値が設計波長に比例する。また、第2の回折光学部120についても同様である。

×m/(m−1)>h×m/(m−1)・・・・・・・・・・・・(3)
×m/(m−1)≒{h×m/(m−1)}×cosα・・・・(4)

また、視点を変えてみると、第2の回折光学部120の設計を下記(5)に示す式を満たすように作製することが好ましい。

Max(θ、θ−θ)<α≦θ+θ・・・・・・(5)

Max(θ、θ−θ)とは、θとθ−θのうちどちらか大きい方を示すものであり、第2の回折光学部120を作製する際に用いる第2の回折光学部120に入射する光の入射角度である。尚、第2の回折光学部120を作製する際には、第2の回折光学部120に角度αで光を入射させた際に、0次光の光量が最小となるように最適化を行なう。または、第2の回折光学部120から出射される回折光群の光量分布が極小値となるように最適化を行なう。
【0060】
このように、第2の回折光学部120を形成することにより、入射角度範囲θはMax(α−Max(θ、θ−θ)、θ+θ−α)へと低減される。αの値としては0≦α≦θとすると好ましく、αavg≒αを満たすαとすると、第2の回折光学部120に対する入射角の広がりの影響を実質的に半分にできるのでより好ましい。
【0061】
ところで、光の電場の位相項は入射光の波長をλとして2πΔL(φ)/λに依存する。ここで、波長λ、入射角度αで回折部が最適化されているとして、ΔL(α)/ΔL(0)=βとすると、入射角度が0度の場合の位相項は2πΔL(α)/(βλ)となる。したがって入射角度が0度の場合、λ=λ/βとすると最適化された位相項である2πΔL(α)/λと同じものが得られる。つまり、入射角度αで回折部が最適化されているということは、λよりも短波長の波長λにおいて最適設計がなされていると言い換えることもできる。したがって、第2の回折光学部120の分光を行った際に入射光111の波長よりも短波長の波長において、第2の回折光学部120の0次回折光の光量が極小値を有する、または、第2の回折光学部120から出射される回折光群121a、121b、121c・・・等の光量分布が極小値を有するように作製される。このとき、β=1/cosα、β=ΔL(θ)/ΔL(0)として、回折光学素子が最適化される波長が入射光の波長λに対して、λ/β≦λ<λである波長λにおいて前述の最適化特性を満たすと好ましく、λ≒λ/βを満たすとより好ましい。また、以上のような第2の回折光学部120の設計は、図8に示すようなθ≦θの場合に適用でき、更には、図10に示すようにθ>θの場合にも適用することもできる。
【0062】
尚、0次回折光は波長依存性や角度依存性によって他の回折光と比べて大きな値となることがあるため、回折光群の光量分布を評価する際に0次回折光を含めると回折光群の光量分布の正確な評価ができなくことがある。したがって、第2の回折光学部120から出射される各回折光の光量が、例えば0次回折光の10分の1以下であるように、0次回折光の光量に比べて小さな場合には光量分布を評価する際に0次回折光を除いてもよい。
【0063】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態における回折光学素子は、第1の回折光学部と第2の回折光学部とを一体化した構造のもの、また、一枚の基板の一方の面に第1の回折光学部となる凸部を形成し他方の面に第2の回折光学部となる凸部を形成したものである。これにより、第1の回折光学部と第2の回折光学部との位置合せが不要となり、回折光学素子が小型化される。
【0064】
図11に示す回折光学素子は、透明基板302の一方の面には、第1の回折光学部の凸部303を形成することにより、凸部303の形成されていない領域の凹部304と凸部303により凹凸パターンを形成し、透明基板302の他方の面には、第2の回折光学部の凸部305を形成することにより、凸部305の形成されていない領域の凹部306と凸部305により凹凸パターンを形成したものである。
【0065】
また、図12から図15は、第1の回折光学部310と第2の回折光学部320とを接着材等により接着し接合した構造の回折光学素子である。第1の回折光学部310は、透明基板312の表面に凸部313を形成することにより、凸部313の形成されていない領域の凹部314と凸部313により凹凸パターンを形成したものである。また、第2の回折光学部320は、透明基板322の表面に凸部323を形成することにより、凸部323の形成されていない領域の凹部324と凸部323により凹凸パターンを形成したものである。尚、本実施の形態における第1の回折光学部310等は、第1の実施の形態における第1の回折光学部110に相当し、第2の回折光学部320等は、第1の実施の形態における第2の回折光学部120に相当する。
【0066】
図12に示す回折光学素子は、第1の回折光学部310において凸部313が形成されていない面と第2の回折光学部320において凸部323が形成されていない面とを対向させ、対向している面同士を接着剤340により接合したものである。
【0067】
また、図13に示す回折光学素子は、第1の回折光学部310において凸部313が形成されている面と第2の回折光学部320において凸部323が形成されている面とを対向させ、対向している面同士を接着剤340により接合したものである。
【0068】
また、図14に示す回折光学素子は、第1の回折光学部310において凸部313が形成されていない面と第2の回折光学部320において凸部323が形成されている面とを対向させ、対向している面同士を接着剤340により接合したものである。
【0069】
また、図15に示す回折光学素子は、第1の回折光学部310において凸部313が形成されていない面と第2の回折光学部320において凸部323が形成されている面とを対向させ、対向している面同士の周囲を接着剤340により接合したものである。
【実施例】
【0070】
次に、実施例について説明する。例1〜例10に示される回折光学素子の構成についてまとめたものを表2〜表4に示す。尚、本願においては、例1〜例8が実施例1〜8であり、例9、例10が比較例1、2である。例1〜例10では、第1の回折光学部及び第2の回折光学部における透明基板として石英を用いており、入射する光束の波長λを830nmとする。表2では第1の回折光学部によって発生するスポット数n、発生させる次数のうちX方向で最大、最小の次数、Y方向で最大、最小の次数、基本ユニットを配置させるX方向、Y方向のピッチP、P、回折部の段数、各段の高さを示している。また、このような構成とした場合に得られる回折角度θを示しており、同時にX軸上における回折光の回折角度、Y軸上における回折光の回折角度の取りうる最大値を示している。
【0071】
【表2】

表3には、第2の回折光学部によって発生するスポット数n、発生させる次数のうちX方向で最大、最小の次数、Y方向で最大、最小の次数、基本ユニットを配置させるX方向、Y方向のピッチP、P、回折部の段数、各段の高さを示している。また、このような構成とした場合に得られる回折角度θを示しており、同時にX軸上における回折光の回折角度、Y軸上における回折光の回折角度の取りうる最大値を示している。第2の回折光学部では、所定の入射角で光束が入射した場合に発生する位相差を基準として設計されており、そのときの入射角を設計入射角φとして示している。設計入射角φから計算される1/cosφavgおよびλcosφavgの値を同時に示しており、第2の回折光学部に光束を入射した場合に、分光測定をすると波長λcosφavgにおいて、波長λ、入射角φで入射場合と類似の特性を示す。
【0072】
【表3】

表4には、2つの回折部を透過した光束の回折角度θを示しており、同時にX軸上における回折光の回折角度、Y軸上における回折光の回折角度の取りうる最大値を示している。
【0073】
【表4】

例1〜例10に示される回折光学素子の特性値についてまとめたものを表5及び表6に示す。表5及び表6には第1の回折光学部に強度1の光束が入射する場合に得られる回折光の強度の平均値μ、標準偏差σを計算によって求めたものを示す。計算では、回折部の界面によって発生する反射を考慮していない。また、平均値μで除算した標準偏差σの値をパーセントで表示しており、これを第1の回折光学部による光量ばらつきと呼ぶ。
【0074】
また、第2の回折光学部に強度1の光束が所定の入射角度で入射する場合に得られる回折光の強度の平均値μ、標準偏差σを計算によって求めたものを示している。計算では、回折部の界面によって発生する反射を考慮していない。また、平均値μで除算した標準偏差σの値をパーセントで表示しており、これを第2の回折光学部120による光量ばらつきと呼ぶ。さらに、回折光学素子の光量ばらつきをσ={(σ/μ+(σ/μ0.5によって求めている。また、各々の入射角度における第2の回折光学部120の0次回折光の光量を示している。
【0075】
また、回折光学素子によって発生する回折光のうち、設計によって発生させる回折光のスポットを回折光学素子から所定の位置はなれたスクリーン上で計測した場合の計算結果について示している。スクリーンの位置を計測位置として示しており、スクリーン上における座標(X、Y)を用いて長方形の計測範囲を示している。また、回折光学素子の位置から測定した計測範囲の対角方向の角度を計測範囲角度として示している。スポット計測の際に、計測範囲をX方向に9分割し、Y方向に9分割した面積が均一となる計測領域内のスポットを計測している。表4及び表5では、X座標、Y座標が最も小さくなる計測領域をR(1、1)、X座標、Y座標が最も大きくなる計測領域をR(9、9)とした場合に、中心領域R(5、5)のスポット、周辺領域R(1、1)、R(1、9)、R(9、1)、R(9、9)のスポット数の平均値、領域R(1、1)〜R(9、9)におけるスポット数の最大値、最小値を示している。
【0076】
また、表7は、例3〜例5に示される回折光学素子において、第2の回折光学素子に対して光が垂直に入射した場合に、表7に記載の各波長で第2の回折光学部に強度1の光束が所定の入射角度で入射する際に得られる回折光の強度の平均値μ、標準偏差σを計算によって求めたものを示している。計算では、回折部の界面によって発生する反射を考慮していない。また、各々の波長における第2の回折光学部120の0次回折光の光量を示している。
【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

(実施例1)
実施例1は、表2〜5における例1に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部110の回折角度θと第2の回折光学部120の回折角度θがθ≦θを満たす場合の例を示す。第1の回折光学部110の基本ユニットを図16(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図16(b)に示す。
【0080】
第2の回折光学部120の基本ユニットを図17(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図17(b)に示す。本実施例の回折光学素子、即ち、2つの第1の回折光学部110及び第2の回折光学部120を透過した光のうち、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図18に示す。
【0081】
第1の回折光学部110によって回折角度範囲12.5°に光束が出射され、表5に示すように、第2の回折光学部120では入射角12.5°の光束に対して3.9%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部110による光量ばらつき5.2%とあわせて、回折光学素子全体として最大6.5%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.538となる。
【0082】
(実施例2)
実施例2は、表2〜4、6における例2に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部110の回折角度θと第2の回折光学部120の回折角度θがθ≦θを満たす場合の例を示す。第1の回折光学部110の基本ユニットを図19(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、342.8mmの位置にあるスクリーン上設計によって発生させる回折光の光スポットの分布を図19(b)に示す。
【0083】
第2の回折光学部120の基本ユニットを図20(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図20(b)に示す。本実施例の回折光学素子、即ち、2つの第1の回折光学部110及び第2の回折光学部120を透過した光のうち、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図21に示す。
【0084】
第1の回折光学部110によって回折角度範囲17.6°に光束が出射され、表6に示すように、第2の回折光学部120では入射角17.6°の光束に対して7.6%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部110による光量ばらつき5.2%とあわせて、回折光学素子全体として最大9.2%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.215となる。
【0085】
(実施例3)
図は設計上のパターンとスポット位置を表しているので図19、20、21は実施例2と同じとなるが、回折光学部120の1段高さは表2、3となる。
【0086】
実施例3は、表2〜4、6、7における例3に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部110の回折角度θと第2の回折光学部120の回折角度θがθ≦θを満たし、第2の回折光学部120の設計入射角を12.5°とする場合の例を示す。第1の回折光学部110の基本ユニットを図19(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図19(b)に示す。
【0087】
第2の回折光学部120の基本ユニットを図20(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図20(b)に示す。2つの回折部を透過した光束のうち、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図21に示す。また、第2の回折光学部120は入射角12.5°で光量ばらつき、0次回折光が最小となるように設計されており、垂直入射の光束を用いて分光を行う場合、波長816nmにおいて光量ばらつき、0次回折光が最小となる。尚、β=ΔL(θ)/ΔL(0)=1.03であり、λ/β=803nmであるので、これは波長λ/βから波長λの範囲である。
【0088】
第1の回折光学部110によって回折角度範囲17.6°に光束が出射され、表6に示すように、第2の回折光学部120では入射角17.6°の光束に対して3.9%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部110による光量ばらつき5.2%とあわせて、回折光学素子全体として最大6.5%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.215となる。
【0089】
(実施例4)
図は設計上のパターンとスポット位置を表しているので図16、17、18は実施例1と同じとなるが、回折光学部120の1段高さは表2、3となる。
【0090】
実施例4は、表2〜5、7における例4に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部110の回折角度θと第2の回折光学部120の回折角度θがθ>θであり、第2の回折光学部120が入射角度18.5°で設計されている場合の例を示す。第1の回折光学部110の基本ユニットを図17(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図17(b)に示す。
【0091】
第2の回折光学部120の基本ユニットを図16(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図16(b)に示す。2つの回折部を透過した光束のうち、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図18に示す。また、第2の回折光学部120は入射角18.5°で光量ばらつき、0次回折光が最小となるように設計されており、垂直入射の光束を用いて分光を行う場合、波長800nmにおいて光量ばらつき、0次回折光が最小となる。尚、β=ΔL(θ)/ΔL(0)=1.07であり、λ/β=773nmであるので、これは波長λ/βから波長λの範囲である。
【0092】
第1の回折光学部110によって回折角度範囲25.9°に光束が出射され、表5に示すように、第2の回折光学部120では入射角25.9°の光束に対して6.1%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部110による光量ばらつき0.4%とあわせて、回折光学素子全体として最大6.1%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.538となる。
【0093】
(実施例5)
図は設計上のパターンとスポット位置を表しているので図19、20、21は実施例2と同じとなるが、回折光学部120の1段高さは表2、3となる。
【0094】
実施例5は、表2〜4、6、7における例5に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部110の回折角度θと第2の回折光学部120の回折角度θがθ>θであり、第2の回折光学部120が入射角度27.2°で設計されている場合の例を示す。第1の回折光学部110の基本ユニットを図20(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図20(b)に示す。
【0095】
第2の回折光学部120の基本ユニットを図19(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図19(b)に示す。2つの回折部を透過した光束のうち、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図21に示す。また、第2の回折光学部120は入射角27.2°で光量ばらつき、0次回折光が最小となるように設計されており、垂直入射の光束を用いて分光を行う場合、波長765nmにおいて光量ばらつき、0次回折光が最小となる。尚、β=ΔL(θ)/ΔL(0)=1.16であり、λ/β=714nmであるので、これは波長λ/βから波長λの範囲である。
【0096】
第1の回折光学部110によって回折角度範囲37.6°に光束が出射され、表6に示すように、第2の回折光学部120では入射角37.6°の光束に対して8.5%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部110による光量ばらつき0.4%とあわせて、回折光学素子全体として最大8.5%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.215となる。
【0097】
(実施例6)
実施例6は、表2〜5における例6に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部110の回折角度θと第2の回折光学部120の回折角度θがθ≦θを満たし、第1の回折光学部110によって発生するスポット数nと第2の回折光学部120によって発生するスポット数nがn≦nを満たす場合の例を示す。第1の回折光学部110の基本ユニットを図22(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図22(b)に示す。
【0098】
第2の回折光学部120の基本ユニットを図23(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図23(b)に示す。本実施例の回折光学素子、即ち、2つの第1の回折光学部110及び第2の回折光学部120を透過した光のうち、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図24に示す。
【0099】
第1の回折光学部110によって回折角度範囲2.6°に光束が出射され、表5に示すように、第2の回折光学部120では入射角2.6°の光束に対して3.0%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部110による光量ばらつき0.5%とあわせて、回折光学素子全体として最大3.1%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.768となる。
【0100】
(実施例7)
実施例7は、表2〜5における例7に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部110の回折角度θと第2の回折光学部120の回折角度θがθ≦θを満たし、第1の回折光学部110によって発生するスポット数nと第2の回折光学部120によって発生するスポット数nがn≦nを満たす場合で、第1の回折光学部110と第2の回折光学部120がそれぞれ2段の回折部からなる場合の例を示す。第1の回折光学部110と第2の回折光学部120から出射される投影パターンは0次回折光を中心に点対称なものとなっている。第1の回折光学部110の基本ユニットを図25(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図25(b)に示す。
【0101】
第2の回折光学部120の基本ユニットを図26(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって第1の回折光学部を形成した基板の裏面に加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図26(b)に示す。本実施例の回折光学素子、即ち、2つの第1の回折光学部110及び第2の回折光学部120を透過した光のうち、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図27に示す。
【0102】
第1の回折光学部110によって回折角度範囲2.6°に光束が出射され、表5に示すように、第2の回折光学部120では入射角2.6°の光束に対して5.8%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部110による光量ばらつき0.5%とあわせて、回折光学素子全体として最大5.8%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.768となる。
【0103】
(実施例8)
実施例8は、表2〜4、6における例8に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部110の回折角度θと第2の回折光学部120の回折角度θがθ≦θを満たし、第1の回折光学部110によって発生するスポット数nと第2の回折光学部120によって発生するスポット数nがn≦nを満たす場合の例を示す。第1の回折光学部110の基本ユニットを図28(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図28(b)に示す。
【0104】
第2の回折光学部120の基本ユニットを図29(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図29(b)に示す。本実施例の回折光学素子、即ち、2つの第1の回折光学部110及び第2の回折光学部120を透過した光のうち、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図30に示す。
【0105】
第1の回折光学部110によって回折角度範囲3.5°に光束が出射され、表6に示すように、第2の回折光学部120では入射角3.5°の光束に対して2.5%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部110による光量ばらつき0.5%とあわせて、回折光学素子全体として最大2.5%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.581となる。
【0106】
(比較例1)
図は設計上のパターンとスポット位置を表しているので図16、17、18は実施例2と同じとなるが、回折光学部120の1段高さは表2、3となる。
【0107】
比較例1は、表2〜5における例9に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部の回折角度θと第2の回折光学部の回折角度θがθ>θを満たす場合で場合の例を示す。第1の回折光学部の基本ユニットを図17(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図17(b)に示す。
【0108】
第2の回折光学部120の基本ユニットを図16(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図16(b)に示す。本比較例の回折光学素子を透過した光のうち、554.3mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図18に示す。
【0109】
第1の回折光学部によって回折角度範囲25.9°に光束が出射され、表5に示すように、第2の回折光学部120では入射角25.9°の光束に対して8.3%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部による光量ばらつき0.4%とあわせて、回折光学素子全体として最大8.3%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.538となる。
【0110】
(比較例2)
図は設計上のパターンとスポット位置を表しているので図19、20、21は実施例2と同じとなるが、回折光学部120の1段高さは表2、3となる。
【0111】
比較例2は、表2〜4、6における例10に示す回折光学素子であり、第1の回折光学部の回折角度θと第2の回折光学部の回折角度θがθ>θを満たす場合の例を示す。第1の回折光学部の基本ユニットを図20(a)に示す。このような基本ユニットを表2に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図20(b)に示す。
【0112】
第2の回折光学部の基本ユニットを図19(a)に示す。このような基本ユニットを表3に示すピッチP、P、回折部段数、1段高さとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって加工する。このような回折部に光が垂直に入射した場合に、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図19(b)に示す。本比較例の回折光学素子を透過した光のうち、342.8mmの位置にあるスクリーン上の設計によって発生させる回折光の光スポット分布を図21に示す。
【0113】
第1の回折光学部によって回折角度範囲37.6°に光束が出射され、表6に示すように、第2の回折光学部120では入射角37.6°の光束に対して14.9%の光量ばらつきが生じ、第1の回折光学部による光量ばらつき0.4%とあわせて、回折光学素子全体として最大14.9%の光量ばらつきが生じる。また、スクリーン上における周辺領域と中心領域のスポット数の比をとると0.215となる。
【0114】
(実施例9)
実施例1〜8の回折光学素子を計測装置に用いる。このようにすることで光量ばらつきが小さくでき、高い精度で計測が可能になる。また、第2の回折光学部120によって発生する0次回折光の光量を抑制でき、強い回折光による画像の劣化を抑制できる。
【0115】
以上より、実施例1〜5における回折光学素子のσの値は、比較例1及び2における回折光学素子のσの値よりも全体として小さくできる。特に、第2の回折光学部に入射する光の入射角度が大きな場合において小さくでき、均一な光量の回折光の光スポットを得ることができる。
【0116】
尚、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0117】
10 計測装置
11 光束(入射光)
12 回折光(出射光)
20 光源
30 回折光学素子
40a 測定対象物
40b 測定対象物
50 撮像素子
101 光軸
110 第1の回折光学部
111 回折光群(第1の回折光学部による)
120 第2の回折光学部
121a、121b、121c 回折光群(第1の回折光学部及び第2の回折光学部による)
230 回折光学素子(第1の回折光学部、第2の回折光学部となる)
231 基本ユニット
232 透明基板
233 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第1の回折光学部と、
入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第2の回折光学部と、
を有し、
前記第1の回折光学部に光を入射することにより発生した回折光を前記第2の回折光学部に入射させ、前記第2の回折光学部より回折光を発生させるものであって、
前記第1の回折光学部における回折角度がθであり、前記第2の回折光学部における回折角度がθである場合、
θ≦θ
であることを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】
入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第1の回折光学部と、
入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第2の回折光学部と、
を有し、
前記第1の回折光学部に光を入射することにより発生した回折光を前記第2の回折光学部に入射させ、前記第2の回折光学部より回折光を発生させるものであって、
前記第1の回折光学部に形成される回折部の段数と、前記第2の回折光学部に形成される回折部の段数とが等しいものであり、
前記第1の回折光学部に形成される回折部の高さがhであり、前記第2の回折光学部に形成される回折部の高さがhである場合、
>h
であることを特徴とする回折光学素子。
【請求項3】
前記第2の回折光学部における回折光の回折角度の平均をαとした場合、
≒hcosα
である請求項2に記載の回折光学素子。
【請求項4】
入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第1の回折光学部と、
入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第2の回折光学部と、
を有し、
前記第1の回折光学部に光を入射することにより発生した回折光を前記第2の回折光学部に入射させ、前記第2の回折光学部より回折光を発生させるものであって、
前記第1の回折光学部に形成される回折部の段数がm段であり、前記第2の回折光学部に形成される回折部の段数がm段であり、
前記第1の回折光学部に形成される回折部の高さがhであり、前記第2の回折光学部に形成される回折部の高さがhである場合、
×m/(m−1)>h×m/(m−1)
であることを特徴とする回折光学素子。
【請求項5】
前記第2の回折光学部における回折光の回折角度の平均をαとした場合、
×m/(m−1)≒{h×m/(m−1)}×cosα
である請求項4に記載の回折光学素子。
【請求項6】
入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第1の回折光学部と、
入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる第2の回折光学部と、
を有し、
前記第1の回折光学部に波長λの光を入射することにより発生した回折光を前記第2の回折光学部に入射させ、前記第2の回折光学部より回折光を発生させるものであって、
前記第1の回折光学部における回折角度がθであり、
前記第2の回折光学部に光が垂直に入射する場合に、波長λ/β以上、波長λ未満の波長の光に対して第2の回折光学部で発生する回折光の強度の標準偏差、または、0次回折光の強度が極小値をとることを特徴とする回折光学素子。
ここで、β=ΔL(θ)/ΔL(0)、
ΔL(θ)=h(Ncosθ11−Ncosθ12)、
ΔL(0)=h(N−N)、
:第2の回折光学部の高さ、
、N:第2の回折光学部の凹凸を形成する媒質の屈折率
θ11、θ12:角度θで第2の回折光学部に入射する光の第2の回折光学部の凹凸中における角度。
【請求項7】
前記第1の回折光学部及び前記第2の回折光学部のうちいずれか一方または、双方は、複数の基本ユニットが2次元的に配列されている請求項1から6のいずれかに記載の回折光学素子。
【請求項8】
前記第1の回折光学部は一方の透明基板に形成されており、前記第2の回折光学部は他方の透明基板に形成されている請求項1から7のいずれかに記載の回折光学素子。
【請求項9】
前記一方の透明基板と前記他方の透明基板とは接着することにより一体化している請求項8に記載の回折光学素子。
【請求項10】
前記第1の回折光学部は透明基板の一方の面に形成されており、前記第2の回折光学部は前記透明基板の他方の面に形成されている請求項1から7のいずれかに回折光学素子。
【請求項11】
光を発する光源と、
前記光を入射させ回折光が出射される請求項1から10のいずれかに記載の回折光学素子と、
前記回折光が照射された測定対象物の画像を撮像する撮像部と、
を有することを特徴とする計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−33203(P2013−33203A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37973(P2012−37973)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】