説明

回転・二方向移動装置、アライメントユニットおよびアライメントステージ

【課題】大きな推力を必要とするアライメント装置を小型化出来、ステージが傾いた場合でも自重による移動がないアライメントステージを提供する。
【解決手段】支持機構を設けた直動ガイド103を回転機構102が載置し、その回転機構102をリニアモータ装置101が載置することにより、支持機構を回転・二方向に移動可能とする回転・二方向移動装置Iを構成し、この回転・二方向移動装置Iを2台備えて、その各リニアモータ装置101の固定子駆動軸101bを共通とし、この固定子駆動軸101bに各可動子101aを直列配置し、可動子側101aにマグネットM、固定子駆動軸101b側に電機子Cを配置し、かつブレーキをそのブレーキシューがレールの側面に押圧可能となるように可動子101aに配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持対象物をX軸とY軸の二方向の移動とθの回転可能に駆動することのできるアライメントステージに関し、特にその基礎となる回転・二方向移動装置およびアライメントユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアライメントステージは、並進駆動を2つと、回転駆動を1つとを重ね合わせた3層構造をしている。また、該一方向駆動をボールネジ駆動とし、該一方向と直交する方向には直動リニアガイド及び回動方向には回転ベアリングを装着したアライメントユニット面上に複数配置した一層構造のXYθアライメントステージもある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−38837号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のアライメント装置は、X軸ステージ、Y軸ステージ、θ軸ステージを積み重ねた構成となっていて装置が大型化、高さが高くなる欠点があった。
さらに、アライメントする対象が液晶パネルのように大型化すると、θ上のテーブルが1点支持なので歪が生じ、平面度が悪化するという問題があった。
また、一方向駆動をボールネジ駆動としたアライメントモジュールを同一平面上に複数配置した一層構造のXYθアライメントステージのような場合は、装置の大型化に対応するために大容量のモータを必要とし、結果的に装置が大型化し、高さが高くなった。
また、アライメントモジュールを増やすことも考えられるが、アライメントモジュールを装着する支持体の大きさが大型化するという問題もあった。
さらに、アライメントステージが傾きを持って使用される場合は、一方向駆動の駆動源が絶たれるとステージは自重により落下するという問題もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、一方向駆動にリニアモータを用い、そのリニアモータの可動子を2台以上直列配置し、省スペースで大きな推力を得ることができ、また、一方向駆動部或いは直交する方向に移動可能な直動ガイドにブレーキを装着し、駆動源が絶たれてもその姿勢を一定に保つことができ、さらにリニアモータ駆動をムービングマグネット方式にすることにより、ケーブルベアの不要、ケーブルの屈曲が無くなり、装置の簡素化ができるアライメントステージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1記載の発明は、回転・二方向移動装置に係り、位置決め対象物を支持する支持機構と、載置物を回動可能に支持する回転機構と、載置物を一方向に移動させることが可能な直動ガイドと、載置物を支持する可動子と前記可動子を前記一方向と直交する方向に移動させることが可能な固定子駆動軸とから成るリニアモータ装置と、を備え、前記回転機構又は前記直動ガイドが前記支持機構を載置し、前記支持機構を載置するのが前記回転機構の場合は前記直動ガイドが前記回転機構を載置し逆に前記回転機構を載置するのが前記直動ガイドの場合は前記回転機構が前記直動ガイドを載置し、かつ前記リニアモータ装置が前記直動ガイドと前記回転機構を載置することにより、前記支持機構を回転・二方向に移動可能とすることを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の回転・二方向移動装置において、前記リニアモータ装置が、前記可動子側にマグネットを配置し、前記固定子駆動軸側に電機子(コイル)を配置したことを特徴としている。
請求項3記載の発明は、アライメントユニットに係り、請求項1又は2記載の回転・二方向移動装置を複数台備え、かつ前記回転・二方向移動装置の各リニアモータ装置の固定子駆動軸を共通とし、この固定子駆動軸に各可動子を直列配置したことを特徴としている。
請求項4記載の発明は、請求項3記載のアライメントユニットにおいて、ブレーキを前記可動子に取付け、前記ブレーキのブレーキシューを前記リニアモータ装置のレールの側面に押圧可能に配設し、ブレーキ動作時に前記ブレーキシューで前記レールの側面を押圧することを特徴としている。
請求項5記載の発明は、アライメントステージに係り、請求項1若しくは2記載の回転・二方向移動装置を4台、又は請求項3若しくは4記載のアライメントユニットを4台、それぞれ、仮想四角形の各辺に対応する位置に配置し、その際前記各直動ガイドが前記辺に対してそれぞれ直角となる向きとなるように配置し、かつ前記各支持機構の上に共通のテーブルを支持させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明によると、回転・二方向移動装置の構成を低くでき、さらに全体の構成を小型化できる。
さらに、請求項2記載の発明によると、ケーブルベアが不要になり、ケーブルの屈曲が無くなり、装置の簡素化ができる
また、請求項3記載の発明によると、安定の良いアライメントユニットが得られる。
また、請求項4記載の発明によると、駆動源が絶たれてもその姿勢を一定に保つことが可能になる。
そして、請求項5記載の発明によると、全体の構成を小型で、安定の良い、駆動源が絶たれてもその姿勢を一定に保つことができるアライメントステージが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の実施例1に係るアライメントステージを説明する図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。図において、Iは回転・二方向移動装置、IIは2台の回転・二方向移動装置Iで構成されるアライメントで、そのうち、II−1は第1アライメントユニット、II−2は第2アライメントユニット、II−3は第3アライメントユニット、II−4は第4アライメントユニットである。図から判るように、第2アライメントユニットII−2は、第1のアライメントユニットII−1を90°回転した位置に配備している。さらに、第3アライメントユニットII−3及び第4アライメントユニットII−4は、必要に応じて第1及び第2のアライメントユニットII−1、II−2と平行に配置し、アライメントステージIIIを構成することが可能となっている。
本発明に係る回転・二方向移動装置Iを2台並列に配置して、そのリニアモータ装置(後述)の固定子駆動軸を共通軸とてし、この固定子駆動軸にそれぞれ可動子を配置して1台のアライメントユニットIIを構成し、このアライメントユニットIIを4台(II−1〜II−4)、図1(a)の仮想四角形の四辺にそれぞれ配置し(第1アライメントユニットII−1、第2アライメントユニットII−2、第3アライメントユニットII−3、第4アライメントユニットII−4)、各アライメントの上に共通して1枚の大きなテーブル5を載置することでアライメントステージIIIを構成している。
【0008】
図2は図1の回転・二方向移動装置Iを説明する拡大図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。両図において、101はそれ自体公知のリニアモータ装置で、可動子101aと、この可動子01aを図(a)で左右方向(図(b)で紙面に垂直方向)に移動可能する固定子駆動軸101bとから成る。
図(b)において、Mはマグネット、Cはコイル付電機子で、ムービングコイル型リニアモータ装置となっている。
102は回転機構で、回転子102aと、回転子102aを回転可能に収納する固定子102bとから成り、回転機構102には自由回転ができるように回転用ベアリングを各々に有している。そして、その固定子102bがリニアモータ装置101の可動子101aの上に固定されている。
103は直動ガイドで、断面U字状のガイドブロック103bを回転機構102の回転子102aの上に固定して、このガイドブロック103bのU字の中をガイドレール103aが滑動する構成となっている。
このように構成された回転・二方向移動装置Iにおいては、頂上のガイドレール103は回転できてかつX方向(図(a)で左右方向、図(b)で紙面に垂直方向)に移動できると共に、Y方向(図(a)で紙面に垂直方向、図(b)で左右方向)にも移動できるようになっている。
【0009】
なお、図2では、リニアモータ装置101の上に回転機構102を、そして回転機構102の上に直動ガイド103を取り付けてしているが、重ねる順序はこれに限るものではなく、リニアモータ装置101の上にまず直動ガイド103を取り付け、そしてこの直動ガイド103の上に回転機構102を取り付けるようにしてもよい。このようにしても、頂上の回転機構102は回転できてかつX方向(図(a)で左右方向、図(b)で紙面に垂直方向)に移動できると共に、Y方向(図(a)で紙面に垂直方向、図(b)で左右方向)にも移動できるようになる。
【0010】
図1に戻って、以上のような回転・二方向移動装置Iを2台、並列に配置し、その際、リニアモータ装置101(図2)の固定子駆動軸101bを共通軸とてし、この固定子駆動軸101bにそれぞれ可動子101a、101aを配置して1台のアライメントユニットII−1を構成している。
同様にして、第2アライメントII−2、第3アライメントII−3、第4アライメントII−4を構成し、このような4台のアライメントII−1〜II−4の頂上の部材(直動ガイド103又は回転機構102)上に共通して1枚の大きなテーブル5を載置することでアライメントステージIIが構成されている。
【0011】
図3は、このようにして構成された本発明のアライメントステージIIの動作を示す平面図で、本発明による省スペースで大きな推力で安定した支持のできるアライメントステージIIによって、図1の状態のテーブル5を、1例として、X方向にΔxだけ図で右方向に移動させ、かつ同時に角度θだけ図で反時計方向に回転させて、テーブル5’の状態を実現している。
【0012】
ここで、本発明装置が、特許文献1記載の装置と比べて装置構成を低くでき、したがってまた全体の構成を小型化できる理由について簡単に説明する。
図4は本発明装置の斜視図、図5は特許文献1記載の装置の斜視図(a)と縦断面図(b)である。従来装置の構成は、その断面図(b)から判るように、リニアモータのX軸ステージ501とリニアモータのY軸ステージ502とθ軸ダイレクトモータ503とそれぞれが駆動源を持つものを3重ねにしてその上にステージ5を配設して成るもので、これによりX軸方向の移動時にはX軸リニアモータを駆動し、Y軸方向の移動時にはY軸リニアモータを駆動し、回転したい時にはθ軸モータを駆動することで任意のポジショニングを取れるようにするものである。
一方、本発明装置は、図4から判るように、一方向に移動可能な駆動タイプのリニアモータ101と回転ベアリングを内蔵して回転可能な従動タイプの回転機構102と一方向に移動可能な従動タイプの直動ガイド103とを3重ねにして成る回転・二方向移動装置であってこれを複数台(図では4個)同一平面に配置してその上にステージ5を配設して成るもので、これによりX軸方向の移動時にはX軸方向に移動できるリニアモータを駆動し、Y軸方向の移動時にはY軸方向に移動できるリニアモータを駆動し、回転したい時にはX軸方向に移動できるリニアモータ2台を互いに逆方向に駆動することで任意の回転ができるようになる。
リニアモータはマグネットとコイル付電機子とから成るものであり、特にコイル付電機子の部分が高さをとるので、装置が嵩張る要因となっている。特許文献1記載の装置ではこのリニアモータをX軸ステージとY軸ステージにそれぞれ積み重ね構成としているので、装置構成が高くなり、全体は大型化となっていた。
これに対して、本発明装置では嵩張るリニアモータを上記のように重ねて使用することをしないで、平面に配置しているため、装置構成が低くなる。
また、回転機構を比べても、前者は駆動源を内蔵しているので大型となっているが、後者は単なる回転ベアリングで構成されるだけなので、この点でも本発明の方が全体は小型化となる。
このようにして、本発明装置は特許文献1記載の装置と比べて装置構成を低くでき、したがってまた全体の構成を小型化できる。
【0013】
以上の説明から判るように、本発明が特許文献1記載の発明と異なる部分は、駆動装置に図2に示すようなリニアモータ装置を使用し、駆動軸上に複数の可動子を備えたことである。そして、その動作は、図3に示すようにXYθ移動可能なことは勿論であるが、その駆動推力の大きさはリニアモータ装置の台数を調整することにより可能である。
【実施例2】
【0014】
図6は実施例2の構成を示す平面図である。
実施例2では、ブレーキ6を可動子101aに取り付けた点が特徴である。
ブレーキ6は断面凹状のブレーキ本体6aと凹状の対向する内側にそれぞれブレーキシュー6bを備え、電磁的又は油圧・空気圧的にブレーキシュー6bを出没可能にし、常時はブレーキシュー6bはブレーキ本体6aに没入しており、ブレーキ時にブレーキシュー6bを押出すことによりレールRの両側面をブレーキシュー6bが挟み込んで、レールRを把持してブレーキがかかるようにしている。
このように、X軸或いはY軸の駆動方向にブレーキ6を装着することによって、例えばアライメントステージIII(図1)が傾きをもった場合は、アライメントステージIIIの自重による落下を防止でき、リニアモータの電源が絶たれてもアライメントステージIIIの姿勢を停止することができるようになり、安全である。
【実施例3】
【0015】
図7は実施例3の構成を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図7の(a)が、図2の(b)と異なる点は、図2の(b)のリニアモータ装置は、ムービングコイル型であるのに対して、実施例3では可動子側にマグネットMを配置し、固定子駆動軸側に電機子のコイルCを配置したいわゆるムービングマグネット型にした点である。
このように、X軸或いはY軸のリニアモータ装置の構成をムービングコイル型からムービングマグネット型とすることにより、電機子に電気を供給するためのケーブルベアが不要になり、したがってまたケーブルの屈曲が無くなり、装置の簡素化が可能となる。
【0016】
以上、本発明によると、回転・二方向移動装置の構成を低くでき、さらに全体の構成を小型化できると共に、ムービングマグネット型とすることによりケーブルベアが不要になり、ケーブルの屈曲が無くなり、装置の簡素化ができる。
また、回転・二方向移動装置を複数台用いて1台のアライメントユニットとすることで、安定の良いアライメントユニットが得られ、ブレーキを搭載することで、駆動源が絶たれてもその姿勢を一定に保つことが可能になる。
そして、このようなアライメントユニットを複数台使用することで、全体の構成を小型で、安定の良い、駆動源が絶たれてもその姿勢を一定に保つことができるアライメントステージが得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1に係るアライメントステージを説明する図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1の回転・二方向移動装置Iを説明する拡大図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明のアライメントステージIIの動作を示す平面図である。
【図4】本発明装置のアライメントステージIIの要部構成を示す斜視図である。
【図5】特許文献1記載の装置の要部構成を示す斜視図(a)と縦断面図(b)である。
【図6】本発明の実施例2に係るアライメントユニットの構成を示す平面図である。
【図7】本発明の実施例3に係るアライメントユニットの構成を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0018】
I: 回転・二方向移動装置
II: アライメントユニット
III: アライメントステージ
II−1: 第1アライメントユニット
II−2: 第2アライメントユニット
II−3: 第3アライメントユニット
II−4: 第4アライメントユニット
101: アライメントユニットの駆動軸リニア
101a: 可動子
101b: 固定子駆動軸
102: アライメントユニットの回転機構
102a: 回転子
102b: 固定子
103: アライメントユニットの直動ガイド
103a: ガイドレール
103b: ガイドブロック
5: テーブル
6: ブレーキ
C: コイル付電機子
M: マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め対象物を支持する支持機構と、載置物を回動可能に支持する回転機構と、載置物を一方向に移動させることが可能な直動ガイドと、載置物を支持する可動子と前記可動子を前記一方向と直交する方向に移動させることが可能な固定子駆動軸とから成るリニアモータ装置と、を備え、前記回転機構又は前記直動ガイドが前記支持機構を載置し、前記支持機構を載置するのが前記回転機構の場合は前記直動ガイドが前記回転機構を載置し逆に前記回転機構を載置するのが前記直動ガイドの場合は前記回転機構が前記直動ガイドを載置し、かつ前記リニアモータ装置が前記直動ガイドと前記回転機構を載置することにより、前記支持機構を回転・二方向に移動可能とすることを特徴とする回転・二方向移動装置。
【請求項2】
前記リニアモータ装置は、前記可動子側にマグネットを配置し、前記固定子駆動軸側に電機子(コイル)を配置したことを特徴とする請求項1記載の回転・二方向移動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回転・二方向移動装置を複数台備え、かつ前記回転・二方向移動装置の各リニアモータ装置の固定子駆動軸を共通とし、この固定子駆動軸に各可動子を直列配置したことを特徴とするアライメントユニット。
【請求項4】
ブレーキを前記可動子に取付け、前記ブレーキのブレーキシューを前記リニアモータ装置のレールの側面に押圧可能に配設し、ブレーキ動作時に前記ブレーキシューで前記レールの側面を押圧することを特徴とする請求項3記載のアライメントユニット。
【請求項5】
請求項1若しくは2記載の回転・二方向移動装置を4台、又は請求項3若しくは4記載のアライメントユニットを4台、それぞれ、仮想四角形の各辺に対応する位置に配置し、その際前記各直動ガイドが前記辺に対してそれぞれ直角となる向きとなるように配置し、かつ前記各支持機構の上に共通のテーブルを支持させたことを特徴とするアライメントステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−240213(P2007−240213A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60036(P2006−60036)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】