回転刃および回転刃の製造方法
【課題】水中で回転駆動させる水洗い洗浄を行ったとき、付着物を効果的に除去できる回転刃、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】回転刃1は、断面が円弧状に折り曲げられた切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えており、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備えている。ディスク5の周面に切断刃3を固定する。少なくとも一部のディスク5に水流発生部8を形成する。水流発生部8は、ディスク5の周縁部に形成した切欠や、ディスク5を貫通する貫通孔などで構成する。水流を切断刃3の内面や回転軸体2に衝突させることにより、これらに付着した付着物を効果的に除去できる。切断刃3の内部から水流を発生させるので、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【解決手段】回転刃1は、断面が円弧状に折り曲げられた切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えており、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備えている。ディスク5の周面に切断刃3を固定する。少なくとも一部のディスク5に水流発生部8を形成する。水流発生部8は、ディスク5の周縁部に形成した切欠や、ディスク5を貫通する貫通孔などで構成する。水流を切断刃3の内面や回転軸体2に衝突させることにより、これらに付着した付着物を効果的に除去できる。切断刃3の内部から水流を発生させるので、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー式の電気かみそりの内刃などに適用される回転刃と、その回転刃の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内刃(回転刃)の構造に関して、スピンドルとスピンドルに固定される左右一対のディスクと、ディスクで径方向へ移動可能に支持される2個の切断刃と、切断刃を外刃へ向かって押し付け付勢するばねとで構成した内刃が公知である(特許文献1)。
【0003】
また、エッチング法あるいは電鋳法でシート状の内刃体を形成し、丸棒状の内刃支持軸の周面に内刃体を巻き付けて接着固定することが公知である(特許文献2)。内刃体の表面には、内刃支持軸の回転中心に対して斜めに傾くリブ状の刃部が一定間隔おきに形成してあり、隣接する刃部の間の薄肉部に小穴が一定間隔おきに形成してある。得られた内刃は、研削加工を施して刃部の先端に切刃を形成する。
【0004】
また、継ぎ目の無い円筒状の内刃体の製造方法が公知である(特許文献3)。シート状の電鋳母型に電気絶縁膜を形成して一次電着を行い、一次電着層を形成した電鋳母型を円筒状のホルダの内面に沿わせて嵌挿し、二次電着を行う。二次電着層を一次電着層から剥離して、電気絶縁膜に相当する模様の透孔部を備える円筒状の内刃体を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−152495号公報(第2頁左下欄3〜15行、第3図)
【特許文献2】実用新案登録第2502183号公報(第3頁左欄第28〜41行、第1図)
【特許文献3】特開昭59−28586号公報(第2頁左上欄15行〜左下欄7行、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転刃に付着した付着物を除去するには、回転刃を水中で回転駆動させる水洗い洗浄が効果的であり、さらに、回転刃で水を攪拌することにより、回転刃の周囲に水流を発生させると、より効果的に付着物を除去できる。しかし、特許文献1ないし特許文献3の回転刃によれば、切断刃で水を攪拌することはできるが、切断刃を支持する回転軸体で水を攪拌することはできない。つまり、上記各回転刃は水の攪拌能力に乏しく、強い水流を発生させることができず、したがって、回転刃に付着した付着物を除去しきれない。
【0007】
本発明の目的は、水中で回転駆動させる水洗い洗浄を行ったとき、付着物を効果的に除去できる回転刃、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、断面が円弧状に折り曲げられた切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている回転刃に関する。回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備えている。ディスク5の周面に切断刃3を固定する。少なくとも一部のディスク5に水流発生部8を形成することを特徴とする。
【0009】
水流発生部8を、ディスク5の周縁部に形成した切欠で構成する。
【0010】
水流発生部8を、ディスク5を貫通する貫通孔で構成する。
【0011】
ディスク5を、切断刃3を支持する複数の支持ディスク5aと、水流発生部8が形成された複数の水流発生ディスク5bとで構成する。隣接する支持ディスク5a・5aの間に水流発生ディスク5bを配置する。
【0012】
水流発生ディスク5bの径寸法Rbを、支持ディスク5aの径寸法Raよりも小さく設定する。
【0013】
水流発生ディスク5bの厚み寸法Tbを、支持ディスク5aの厚み寸法Taよりも大きく設定する。
【0014】
水流発生部8を、回転方向上手側の圧力発生壁8aと回転方向下手側の導入壁8bとを備える切欠で構成する。ディスク5の中心と、圧力発生壁8aと導入壁8bとの交点とを通る仮想基準線Lを想定するとき、仮想基準線Lと導入壁8bとで挟まれる角度β2を、仮想基準線Lと圧力発生壁8aとで挟まれる角β1よりも大きく設定して、導入壁8bの長さを圧力発生壁8aの長さより大きく設定する。導入壁8bに臨んで、水の導入を容易化する導入空間Sを設ける。
【0015】
導入壁8bを平坦面で形成する。
【0016】
水流発生部8を、回転方向上手側の圧力発生壁8aと回転方向下手側の導入壁8bとを備える切欠で構成する。ディスク5の中心と圧力発生壁8aの一点とを通る仮想基準線Mを想定するとき、圧力発生壁8aを、圧力発生壁8a上の前記一点を中心として、仮想基準線Mに対してディスク5の回転方向と逆の方向に傾斜させる。
【0017】
水流発生部8を、回転方向上手側の圧力発生壁8aと回転方向下手側の導入壁8bとを備えるV字状の切欠で構成して、ディスク5の周方向に等間隔に配置する。水流発生部8を構成する切欠の中心角α1を、該切欠に挟まれるディスク5の周面の中心角α2よりも小さく設定する。
【0018】
軸本体4に複数のディスク5を固定して、回転軸体2を構成する。ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7を形成する。ディスク5を軸本体4に挿通してディスク5を圧嵌姿勢に保持し、ディスク5と軸本体4を相対移動させて、軸本体4の周面に設けた複数の突起6と装填穴7とを互いに圧嵌することにより、ディスク5を軸本体4に固定する。
【0019】
切断刃3の前段体である切断刃ブランク18を、切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に塑性加工を施して形成する。切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、複数のディスク5の周面に溶接して構成する。
【0020】
軸本体4をマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成する。ディスク5をオーステナイト系のステンレス鋼材で形成する。切断刃3をマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成する。回転軸体2に切断刃ブランク18を溶接して得られる回転刃ブランク19に焼入れ処理を施し、焼入れ後のブランクに研削処理を施す。
【0021】
水流発生部8を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸Pを、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成する。水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出される。
【0022】
水流発生部8の入口8e側であって、導入壁8b側の開口周縁部に水の導入凹部50を設ける。
【0023】
導入凹部50を、水を圧力発生壁8aへ向かって流動案内する複数のガイド凹部51で構成する。
【0024】
水流発生部8を、ステンレス板材55の両面にエッチング処理を施して形成する。導入凹部50を、ステンレス板材55の片面にハーフエッチング処理を施して形成する。
【0025】
回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置されるディスク5と、他側半部に配置されるディスク5とを、各ディスク5の水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置する。回転軸体2が回転する状態において、一側半部のディスク5から送出される水流と、他側半部のディスク5から送出される水流とが、回転軸体2の中央部で衝突する。
【0026】
また本発明は、切断刃3を支持する回転軸体2が、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備え、少なくとも一部のディスク5に水流発生部8が形成してある回転刃1の製造方法に係り、以下の各工程により回転刃1を構成する。水流発生部8を備えるディスク5を含む回転軸体2を形成する工程。切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に塑性加工を施して切断刃ブランク18を形成する工程。切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、ディスク5の周面に溶接して回転刃ブランク19を形成する工程。得られた回転刃ブランク19に焼入れ処理を施す工程。焼入れ後のブランクに研削処理を施す工程。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、回転軸体2を構成する少なくとも一部のディスク5に水流発生部8を形成したので、回転刃1を水中で回転駆動させたとき、切断刃3の内部に水流を発生させることができる。この水流を切断刃3の内面や回転軸体2に衝突させることにより、これらに付着した付着物を効果的に除去できる。切断刃3の内部から水流を発生させるので、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0028】
ディスク5の周縁部に形成した切欠で水流発生部8を構成すると、例えば水流発生部8をディスク5に突設した攪拌部材などで構成する場合に比べて、水流発生部8の構造を簡素化して、回転刃1の製造コストを低減できる。
【0029】
ディスク5を貫通する貫通孔で水流発生部8を構成すると、例えば水流発生部8をディスク5に突設した攪拌部材などで構成する場合に比べて、水流発生部8の構造を簡素化して、回転刃1の製造コストを低減できる。
【0030】
切断刃3を支持する支持ディスク5aの間に水流発生ディスク5bを配置すると、水流発生ディスク5bの水流発生部8が発生させる水流を、支持ディスク5aの表面や支持ディスク5aと切断刃3との接合部に対して衝突させて、これらに付着した付着物を効果的に除去できる。
【0031】
水流発生ディスク5bを支持ディスク5aよりも小径にして、水流発生ディスク5bと切断刃3との間に隙間を設けると、水流発生ディスク5bの周縁部に付着物が溜まるのを抑制できるとともに、水流発生ディスク5bに邪魔されることなく切断対象を切断刃3の内部に導入できる。因みに、水流発生ディスク5bが支持ディスク5aと同径であると、水流発生ディスク5bの周面が切断刃3の内面に接触するので、水流発生ディスク5bの周縁部に付着物が溜まりやすくなるとともに、切断刃3の内部へ切断対象を導入する際に水流発生ディスク5bが邪魔になる。
【0032】
水流発生ディスク5bの厚み寸法を大きくすると、水流発生部8が発生させる水流を強化して、付着物の除去機能を向上できる。また、水流発生ディスク5bの回転慣性力を大きくして、高いフライホイール効果を発揮できる。つまり、水流発生ディスク5bを厚くして質量を大きくした分だけ、水流発生ディスク5bの回転慣性力を大きくして、切断刃3に作用する切断抵抗を効果的に相殺できる。したがって、回転刃1で剛毛を切断する場合など、切断刃3に大きな切断抵抗が作用する場合に、回転刃1の駆動回転数が瞬間的に低下するのをよく防止できる。
【0033】
導入壁8b側の角度β2を、圧力発生壁8a側の角β1よりも大きく設定して、導入壁8bの長さを圧力発生壁8aの長さより大きく設定すると、導入壁8bに臨む導入空間Sを介して水流発生部8内に水をスムーズに導入することができる。従って、水流発生部8が発生させる水流を強化して、洗浄効果を向上できる。
【0034】
導入壁8bを平坦面で形成すると、導入壁8bに沿う水流を直線状にして、水流発生部8に導入した水をスムーズに圧力発生壁8aへ案内することができる。したがって、水流発生部8が発生させる水流を強化して、洗浄効果を向上できる。
【0035】
ディスク5の中心と圧力発生壁8aの一点とを通る仮想基準線Mを想定するとき、圧力発生壁8aを、圧力発生壁8a上の前記一点を中心として、仮想基準線Mに対してディスク5の回転方向と逆の方向に傾斜させると、圧力発生壁8aに沿ってディスク5の外周方向へ向かう水流をスムーズに形成して、水を水流発生部8の外へ押し出すことができる。したがって、水流発生部8が発生させる水流を強化して、洗浄効果を向上できる。
【0036】
水流発生部8をV字状の切欠で構成し、水流発生部8を構成する切欠の中心角α1を、該切欠に挟まれるディスク5の周面の中心角α2よりも小さく設定すると、ディスク5における切欠の面積を小さくして、水流発生部8を形成することに伴うディスク5の質量の低下を抑制できる。したがって、ディスク5の回転慣性力を維持して、切断刃3に作用する切断抵抗を効果的に相殺できる。
【0037】
軸本体4の周面に設けた突起6と、ディスク5に形成した装填穴7とを互いに圧嵌して、ディスク5を軸本体4に固定すると、ディスク5を軸本体4に対して、より少ない手間で強固に、しかも精度よく固定できる。また、ディスク5を軸本体4に溶接する場合に比べて、1回の圧嵌作業で複数のディスク5を軸本体4に簡便に固定でき、より少ないコストで回転軸体2を構成できる。とくに、丸棒状のステンレス鋼材に旋削加工を施して回転軸体2を構成する場合に比べて、回転軸体2の製造に要するコストを大幅に削減できる。
【0038】
切断刃3の前段体である切断刃ブランク18を、シート状ブランク17に塑性加工を施して形成し、得られた切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、複数のディスク5の周面に溶接して回転刃1を構成すると、回転刃1を少ない手間で形成でき、回転刃1の製造に要するコストを削減できる。
【0039】
軸本体4をマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成し、ディスク5をオーステナイト系のステンレス鋼材で形成すると、ディスク5の軸本体4に対する圧嵌作業を容易に行うことができる。マルテンサイト系のステンレス鋼材と、オーステナイト系のステンレス鋼材とは、焼入れ前の状態においては前者鋼材の硬度が後者鋼材の硬度より小さいので、ディスク5による突起6の圧潰を容易に行えるからである。さらに、焼入れ処理を施すことにより軸本体4の表面硬度を向上して、軸本体4の構造強度を向上できる。因みにディスク5は、焼入れ処理による表面硬化作用が得られない。上記の圧嵌作業とは異なり、予め軸本体4に焼入れ処理を施したのち、ディスク5を軸本体4に圧嵌することができる。その場合には、軸本体4の硬度がディスク5の硬度より大きくなるので、軸本体4に対する圧嵌作業を容易に行うことができる。
【0040】
回転刃ブランク19に焼入れ処理を施すことにより、マルテンサイト系のステンレス鋼材で形成した軸本体4および回転刃ブランク19の表面を硬化して回転刃1の強度を向上できる。なお、オーステナイト系のステンレス鋼材で形成したディスク5は、焼入れしても表面が硬化せず、熱膨張が少ない。そのため、切断刃ブランク18をディスク5に溶接するときに、溶接面に熱負荷がかかりにくく、溶接歪が少なくてすむ。焼入れ後のブランクに研削処理を施すことにより、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げることができる。
【0041】
水流発生部8の空隙中心軸Pを、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜させると、回転刃1を水中で回転させたとき、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出される。このように、回転中心軸に対して傾斜する水流を発生させると、径方向外側へ向かう水流を発生させる場合に比べて、回転軸体2の径方向中心部の軸本体4やディスク5に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0042】
水流発生部8の入口8e側であって導入壁8bの開口周縁部に水の導入凹部50を設けると、水を導入凹部50を介して水流発生部8内へスムーズに導入することができるので、水流を強化して洗浄効果を向上できる。
【0043】
導入凹部50を、圧力発生壁8aに向かう複数のガイド凹部51で構成すると、導入凹部50に導入された水を圧力発生壁8aへ確実に案内することができるので、より強力な水流を形成することができる。
【0044】
水流発生部8をエッチングで形成し、導入凹部50をハーフエッチングで形成すると、水流発生部8と導入凹部50を共にエッチング工程において形成することができるので、ディスク5の製造に要するコストを削減できる。また、導入凹部50をハーフエッチングで形成すると、他の加工法に比べて、導入凹部50の形状および位置を正確に形成できる。
【0045】
回転軸体2の一側半部のディスク5から送出される水流と、他側半部のディスク5から送出される水流とを、回転軸体2の中央部で衝突させると、衝突した水流が回転軸体2の中央部で径方向外方へ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本発明のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。
【0046】
本発明に係る回転刃の製造方法においては、切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に塑性加工を施して切断刃ブランク18を形成するので、切断刃ブランク18を少ない手間で形成できる。切断刃3の前段体である切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、複数のディスク5の周面に溶接して回転刃ブランク19を形成すると、切断刃ブランクをディスクの周面に接着固定する場合に比べて、回転刃ブランク19の構造強度を向上できる。回転刃ブランク19に焼入れ処理と研削処理を施すと、外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げることができ、さらに表面が硬化されて強度が向上された回転刃1を、ばらつきのない状態で安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図2】実施例1に係る回転刃の分解斜視図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図である。
【図4】実施例1に係る圧入用の突起の形成例を示す説明図である。
【図5】実施例1に係るディスクの軸本体に対する圧嵌形態を示す断面図である。
【図6】実施例1に係るディスクと軸本体の圧嵌構造を示す一部破断正面図である。
【図7】図6におけるB−B線断面図である。
【図8】エッチング工程におけるシート状ブランクの平面図である。
【図9】切断刃ブランクの加工例を示す平面図、および正面図である。
【図10】エッチング工程で形成した小刃の断面図である。
【図11】実施例2に係る回転刃の分解斜視図である。
【図12】実施例2に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図13】図12におけるC−C線断面図である。
【図14】実施例3に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図15】図14におけるD−D線断面図である。
【図16】実施例4に係る回転刃の構造を示す断面図である。
【図17】水流発生ディスクの別の実施例を示す図である。
【図18】水流発生ディスクの別の実施例を示す図である。
【図19】実施例5に係る回転刃の分解斜視図である。
【図20】実施例5に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図21】図20におけるE−E線断面図である。
【図22】図20におけるF−F線断面図である。
【図23】図22におけるG−G線断面図である。
【図24】エッチング工程におけるディスクブランクの平面図である。
【図25】エッチング工程で形成したディスクの断面図である。
【図26】実施例6に係る回転刃の分解斜視図である。
【図27】実施例6に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図28】図27におけるH−H線断面図である。
【図29】水流発生ディスクの別の実施例を示す図である。
【図30】圧入用の突起の別の実施例を示す斜視図である。
【図31】圧入用の突起の別の形成法を示す説明図である。
【図32】圧入用の突起のさらに別の形成法を示す説明図である。
【図33】切断刃ブランクの別の実施例を示す回転刃の分解側面図である。
【図34】切断刃ブランクの別の形成法を示す説明図である。
【図35】実施例1に係る回転刃を適用した電気かみそりの正面図である。
【図36】図35におけるI−I線断面図である。
【図37】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図38】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図39】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図40】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(実施例1) 図1ないし図10は、本発明に係る回転刃の実施例1を示す。図1および図2において回転刃1は、回転軸体2と、回転軸体2に固定される円筒状の切断刃3とで構成する。回転軸体2は、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される5個の支持ディスク5aおよび4個の水流発生ディスク5bとで構成してあり、回転軸方向に沿って支持ディスク5aと水流発生ディスク5bとが交互に配置してある。
【0049】
軸本体4は、丸軸状のマルテンサイト系のステンレス鋼材である。支持ディスク5aは、オーステナイト系のステンレス鋼材からなる板材に打抜き加工を施して円盤状に形成してあり、その中央には軸本体4に挿通される装填穴7が形成してある。図3に示すように支持ディスク5aの周面は、切断刃3を受ける刃受面9とされており、この刃受面9に切断刃3が溶接される。
【0050】
水流発生ディスク5bも、オーステナイト系のステンレス板材に打抜き加工を施して円盤状に形成してあり、支持ディスク5aと同様の装填穴7と、V字状の切欠からなる水流発生部8とを備える。水流発生部8は、各水流発生ディスク5bの周面の3個所に、水流発生ディスク5bの周方向に等間隔に形成してある。各水流発生部8は、回転方向(図3の矢印方向)上手側の圧力発生壁8aと、回転方向下手側の導入壁8bとを備え、両壁8a・8bは共に平坦面で形成してある。
【0051】
水流発生ディスク5bの中心と圧力発生壁8aの径方向外端とを通る仮想基準線Mを想定するとき、圧力発生壁8aは、圧力発生壁8aの径方向外端を中心として、仮想基準線Mに対して、図3において時計回りにθだけ傾斜している。圧力発生壁8aが傾斜する方向は、水流発生ディスク5bの回転方向(図3において反時計回り)と逆の方向である。水流発生部8を構成する切欠の中心角α1は、該切欠に挟まれる円弧面の中心角α2よりも小さく設定してある。水流発生ディスク5bの径寸法Rbは、支持ディスク5aの径寸法Raよりも小さく設定してある。図1に示すように、水流発生ディスク5bの厚み寸法Tbは、支持ディスク5aの厚み寸法Taよりも大きく設定してある。
【0052】
切断刃3は、マルテンサイト系のステンレス板材16にエッチング加工を施し、さらにロール加工(塑性加工)を施して円筒状に形成するが、加工の詳細については後述する。図8に示すようにエッチング加工を施したシート状ブランク17には、第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群と、両小刃11・12で囲まれる菱形の刃穴13の一群と、これらの周囲を囲む周枠とが形成してある。第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群とは、それぞれ回転軸体2の中心軸に対して互いに逆向きに傾斜する状態で形成してあり、これにより展開状態のシート状ブランク17の全体はエキスパンドメタル状の外観を呈している。
【0053】
次に回転刃1の製造方法の詳細を説明する。回転刃1の製造工程は、回転軸体2を形成する工程と、切断刃ブランク18を形成して回転軸体2に固定する工程に大別される。回転軸体2を形成する工程は、旋削加工が施された軸本体4に焼き入れ処理を施す前段熱処理工程と、支持ディスク5aを作製する工程と、水流発生ディスク5bを作製する工程と、各ディスク5a・5bを軸本体4に挿通して仮組みする工程と、各ディスク5a・5bを仮組みした状態のままで、軸本体4の周面に圧入用の突起6を形成する工程と、各ディスク5a・5bと軸本体4を相対移動させて突起6を装填穴7に対して圧嵌する工程とからなる。
【0054】
(支持ディスク5aを作製する工程)
まず、オーステナイト系のステンレス板材に打抜き加工を施して、丸板状のディスクブランクを形成する。次いで、ディスクブランクに打抜き加工を施して装填穴7を形成し、支持ディスク5aを得る。
【0055】
支持ディスク5aは、以下の方法で作製することもできる。まず、ステンレス製の丸棒に切削加工を施して、所定の直径値の旋削ブランクを形成する。次いで、得られた旋削ブランクの中央に旋削加工あるいはドリル加工を施して装填穴7を形成し、最後に、得られた長尺のブランクを突っ切りバイトで所定の幅に切断して、支持ディスク5aを得る。あるいは、支持ディスク5aは、ステンレス板材にエッチングを施して作製することもできる。
【0056】
(水流発生ディスク5bを作製する工程)
まず、オーステナイト系のステンレス板材に打抜き加工を施して、周縁に水流発生部8を備える丸板状のディスクブランクを形成する。次いで、ディスクブランクに打抜き加工を施して装填穴7を形成し、水流発生ディスク5bを得る。なお、軸本体4に焼き入れ処理を施す前段熱処理工程と、支持ディスク5aを作製する工程と、水流発生ディスク5bを作製する工程とは、任意の順序で行うことができる。
【0057】
水流発生ディスク5bは、以下の方法で作製することもできる。まず、先述の支持ディスク5aの別作製方法と同様に、所定の直径値の旋削ブランクの中央に装填穴7を形成する。装填穴7の形成に前後して、旋削ブランクの周面にブローチ加工を施して水流発生部8を形成する。最後に、得られた長尺のブランクを突っ切りバイトで所定の幅に切断して、水流発生ディスク5bを得る。なお、水流発生部8を形成するブローチ加工は、突っ切りバイトで所定の幅に切断した丸板に対して行うようにしてもよい。また、水流発生ディスク5bは、ステンレス板材にエッチングを施して作製することもできる。
【0058】
(圧入用の突起6を形成する工程)
図4に示すように、圧入用の突起6を形成する工程では、定置されたステーキング加工用の固定型20と、固定型20に向かって下降し、あるいは上昇するステーキング加工用の可動型21とで、軸本体4の周面に中心軸方向に長いリブ状の突起6を形成する。図4(b)に示すように、固定型20および可動型21の対向面の前後には、それぞれ鋭角の切刃22・23が形成してある。図4(a)に示すように、ディスク5a・5bが仮組みされた軸本体4を、固定型20の前後の切刃22に載置して、各ディスク5a・5bを隣接する切刃22の間に位置させて、固定型20の側端に設けた位置決め枠24で軸本体4を位置決めする。この状態で、可動型21の切刃23を軸本体4の周面に食い込ませることにより、図4(c)に示すように、軸本体4の周方向の4個所にV字状に突出するリブ状の突起6を形成できる。突起6は、各ディスク5a・5bの固定位置ごとに、軸本体4の中心軸方向に沿って一定間隔おきに断続的に形成する。各ディスク5a・5bの固定位置における個々の突起6の位相位置は一定位置に揃えてある。突起6を形成するのと同時に、切刃22・23の食込み跡25が形成される。突起6の中心軸方向の長さは、支持ディスク5aの厚み寸法Taの2.5倍(水流発生ディスク5bの厚み寸法Tbの1.5倍)とした。
【0059】
(圧入用の突起6を圧嵌する工程)
この工程では、図5に示すように、軸本体4に仮組みした状態の各ディスク5a・5bを治具26の支持壁27で支持する。この状態で、軸本体4の下端面が治具26の下端のストッパー28に外接するまで、軸本体4を中心軸に沿って下向きに押し込むことにより、突起6と装填穴7を互いに圧嵌する。
【0060】
図6および図7に示すように、突起6と装填穴7を圧嵌することにより、装填穴7が通過した部分の突起6の殆どが装填穴7によって削り取られ、あるいは逆に装填穴7の一部が、残った突起6の基部側の圧潰面30で削り取られて、両者7・30が互いに密着する。また、突起6の塑性変形部31が装填穴7の周縁壁を受け止めて、それ以上ディスク5a・5bが中心軸方向へ移動するのを規制できる。
【0061】
上記のように、各ディスク5a・5bを軸本体4に挿通して仮組みする工程と、各ディスク5a・5bを仮組みした状態のままで、軸本体4の周面に圧入用の突起6を形成する工程と、各ディスク5a・5bと軸本体4を相対移動させて突起6を装填穴7に対して圧嵌する工程とを経て、回転軸体2を形成すると、ディスク5a・5bを軸本体4に対して、より少ない手間で強固に、しかも精度よく固定できる。また、ディスク5a・5bを軸本体4に溶接する場合に比べて、1回の圧嵌作業で複数のディスク5を軸本体4に簡便に固定でき、より少ないコストで回転軸体2を構成できる。さらに、丸棒状のステンレス鋼材に旋削加工を施して回転軸体2を形成する方法(後述)に比べて、回転軸体2の製造に要するコストを大幅に削減できる。
【0062】
切断刃ブランク18を形成する工程は、図8に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、シート状ブランク17を形成する工程と、図9に示すようにシート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して円筒状の切断刃ブランク18を形成する工程とからなる。こののち、切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接する工程を経て回転刃ブランク19を構成し、回転刃ブランク19に焼き入れ工程と研削工程を経て回転刃1を完成する。シート状ブランク17は、ステンレス板材に打抜き加工を施して形成してあってもよい。
【0063】
(シート状ブランク17を形成する工程)
この工程では、図8に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、切断刃3のシート状ブランク17を形成する。具体的には、厚みが0.3mmのステンレス板材16の表裏両面にエッチング処理を施して、第1小刃11や第2小刃12などを形成する。エッチング工程においては、図10に示すようにステンレス板材16の表裏両面にレジスト膜33を形成したのち露光し、露光部を除去して、非露光部に囲まれる板材表面をエッチング液で蝕刻する。このとき、多数個のシート状ブランク17を同時に形成して、その辺部に設けられた橋絡部34(図8参照)を切断して、ステンレス板材16から分離する。
【0064】
エッチング処理を施すことにより、図8に示す断面形状の第1小刃11および第2小刃12が形成される。図10に示すように第1小刃11および第2小刃12は、外面の切断面35と、内面のベース面36と、これら両者35・36の端縁間に形成される第1抉り面37、および第2抉り面38とで、5個の隅部を備えた異形断面状に形成される。第1抉り面37は、切断面35とベース面36との端縁間を抉る1個の内凹み面で形成してあり、切断面35と第1抉り面37とによって、矢印で示す切断面35の回転方向下手側に切刃39が形成される。また、切断面35と第2抉り面38とによって切断面35の回転方向上手側に逃縁40が形成される。第2抉り面38は二つの凹曲面でく字状に形成してある。
【0065】
(切断刃ブランク18を形成する工程)
この工程では、図9(a)・(b)に示すように、シート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して、円筒状の切断刃ブランク18を形成する。ロール加工は、下側に配置した2個のベースローラー42と、両ベースローラー42の間の上方に配置される加圧ローラー43とで行う。両ローラー42・43の間にシート状ブランク17を通すことにより、円筒状の切断刃ブランク18を形成する。切断刃ブランク18は不完全円状に曲げられている。
【0066】
(切断刃ブランク18を溶接する工程)
この工程では、回転軸体2の支持ディスク5aの周面に切断刃ブランク18を溶接する。詳しくは、円筒状の切断刃ブランク18を回転軸体2に外嵌し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持して支持ディスク5aの刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機で支持ディスク5aに溶接することにより、図1に示すような円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。
【0067】
(熱処理工程)
熱処理工程においては、回転刃ブランク19を約1000℃にまで加熱し、その状態を所定時間維持したのち、水および加熱された油で順に冷却して焼き入れを行う。これにより、切断刃3および軸本体4の金属組織をマルテンサイト化してその表面硬度を増強できる。回転刃ブランク19を加熱する過程では、レーザー溶接時に溶接部の周辺部で生じた熱による内部歪みを除去できる。必要に応じて焼き戻しを行う。
【0068】
(研削工程)
研削工程では、回転刃ブランク19の周面に粗研削加工と仕上げ研削加工とを順に施して、切断刃3の周面の真円度を向上し、さらに切刃39をシャープに仕上げる。粗研削加工では、溶接部の膨出表面を除去し、同時に切断刃3の周面を研削する。また、仕上げ研削加工では、切断刃3の周面の表面粗さが小さくなるように仕上げ研削を行って、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げる。粗研削加工では、腐食しやすい溶接部の膨出表面を除去するので、溶接部の腐食や割れなどを一掃して切断刃3の耐久性を向上できる。なお、回転刃1の真円度に対する要求仕様が低い場合には、研削工程は省略することができる。
【0069】
本実施例に係る回転刃1を水中で回転させると、各水流発生ディスク5bの水流発生部8で水を攪拌して、切断刃3の内部に水流を発生させることができる。具体的には、圧力発生壁8aによって水流発生部8内の水が押し出されることにより、回転刃1と同じ向きに回転する水流や、切断刃3の内面に沿う回転軸方向の水流などが発生する。この水流によって、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物が効果的に洗い落とされる。切断刃3の内部から水流を発生させるので、円筒籠状の回転刃1において除去し難い切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0070】
(実施例2) 図11ないし図13は、回転軸体2の構造が異なる実施例2を示す。そこでは、軸本体4に圧嵌固定される5個のディスク5のそれぞれに、水流発生部8および刃受面9が形成してある。具体的には、ディスク5の周面の3個所に、V字状の切欠からなる水流発生部8を等間隔に形成し、水流発生部8・8に挟まれる周面を刃受面9としている。つまり、本実施例におけるディスク5は、先の実施例1における支持ディスク5aと水流発生ディスク5bの役割を兼ねている。ディスク5は、先の実施例1の水流発生ディスク5bと同様の方法で作製することができる。
【0071】
図13に示すように水流発生部8は、隣接するディスク5に形成された水流発生部8に対して、周方向に位相をずらしてある。ディスク5の径寸法および厚み寸法は、実施例1における支持ディスク5aと同じに設定してある。他は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同様に扱う。なお、この実施例2の変更例として、隣接するディスク5・5の間に、ディスク5よりも小径で水流発生部8をもつ水流発生ディスク5bを配置することができる。
【0072】
(実施例3) 図14および図15は、回転軸体2の構造が異なる実施例3を示す。ここでの回転軸体2は、軸本体4と支持ディスク5aおよび水流発生ディスク5bとを一体に備えたステンレス製(金属製)の旋削品からなる。ただし、水流発生ディスク5bの水流発生部8は、ブローチ加工によって形成してある。隣接する支持ディスク5aと水流発生ディスク5bの間における軸本体4の周面には、回転中心側へ凹む凹曲面46が形成してある。
【0073】
(実施例4) 図16は、水流発生ディスク5bの構造が異なる実施例4を示す。そこでは、導入壁8bに臨んで、水流発生部8への水の導入を容易化する導入空間Sを設けている。具体的には、水流発生ディスク5bの中心と、圧力発生壁8aと導入壁8bとの交点とを通る仮想基準線Lを想定するとき、仮想基準線Lと導入壁8bとで挟まれる角度β2を、仮想基準線Lと圧力発生壁8aとで挟まれる角β1よりも大きく設定して、導入壁8bの長さを圧力発生壁8aの長さより大きく設定している。なお、先の実施例1ではβ1=β2であり、圧力発生壁8aと導入壁8bの長さは等しい。また、本実施例では、圧力発生壁8aの径方向外端を、仮想基準線Lより回転方向上手側の領域に位置させる。この点は先の実施例1と同様である。
【0074】
本実施例のように、導入壁8bに臨む水の導入空間Sを設けると、水流発生部8内に水をスムーズに導入することができる。また、圧力発生壁8aの径方向外端を仮想基準線Lの回転方向上手側の領域に位置させると、圧力発生壁8aに沿ってディスク5の外周方向へ向かう水流をスムーズに形成して、水を水流発生部8の外へ押し出すことができる。したがって、本実施例によれば、水流発生部8が発生させる水流を強化して、洗浄効果を向上できる。
【0075】
図17および図18は、水流発生ディスク5bの別の実施例を示す。図17においては、水流発生ディスク5bの周面の4個所に水流発生部8が形成してある。図18においては、先の実施例4よりも圧力発生壁8aがさらに短く、また、導入壁8bがさらに長く形成してある。なお、図16ないし図18に示した水流発生ディスク5bの水流発生部8の形状や配置は、実施例2に示した水流発生部8および刃受面9を備えるディスク5に適用することができる。
【0076】
(実施例5) 図19ないし図25は、回転軸体2の構造が異なる実施例5を示す。そこでは、軸本体4に圧嵌固定される4個のディスク5のそれぞれに、水流発生部8および刃受面9が形成してある。ここでの水流発生部8は、ディスク5を貫通する貫通孔で構成されて、各ディスク5に3個ずつ、ディスク5の周方向に等間隔に配置される。図23に示すように、水流発生部8を構成する貫通孔の空隙中心軸Pは、ディスク5の回転中心軸(厚み方向線)に対して傾斜しており、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出される点が、上記各実施例と大きく異なる。
【0077】
具体的には、各水流発生部8の回転方向上手側の圧力発生壁8aと、回転方向下手側の導入壁8bとが、回転軸体2の回転軸に対して傾斜している。また、水流発生部8の入口8e側であって、導入壁8b側の開口周縁部には、水の導入凹部50が設けてある。導入凹部50は、水を圧力発生壁8aへ向かって流動案内する3個のガイド凹部51で構成してある。水流発生部8の入口8eから出口8fにかけて、導入凹部50および導入壁8bは、入口8eあるいは出口8fの開口面に対して、圧力発生壁8aよりも緩やかに傾斜している。
【0078】
本実施例のディスク5を水中で図21および図22の矢印方向に回転させると、水流発生部8内の水が圧力発生壁8aに沿って図21の正面側(図22の背面側)へ押し出されるとともに、図21の背面側(図22の正面側)の水が導入凹部50を介して水流発生部8内へ流れ込み、これにて、図21の背面側(図22の正面側)から水流発生部8を通って図21の正面側(図22の背面側)へ向かう、空隙中心軸Pに沿う斜めの水流が発生する。
【0079】
回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置される2個のディスク5と、他側半部に配置される2個のディスク5とは、水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置してある。したがって、回転刃1を水中で回転させると、図20に示すように、軸方向中央部へ向かう二方向の水流が軸方向中央部で衝突し、回転刃1の径方向外方などへ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本実施例のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。
【0080】
本実施例のディスク5は、ステンレス板材55にエッチング加工を施して形成する。まず、図24および図25(a)に示すように、ステンレス板材55の表裏両面にレジスト膜56・57を形成する。各レジスト膜56・57には、ステンレス板材55のエッチング処理すべき領域に対応する開口が設けられている。レジスト膜56・57は、例えばステンレス板材55の表裏面に感光性樹脂層を形成したのち露光し、露光部を除去することにより形成される。
【0081】
水流発生部8に対応する表裏のレジスト膜56・57の開口58・59は、水流発生部8の回転方向に位置をずらして配置してある。したがって、開口58・59に対してエッチング処理を施すと、図25(b)に示すように、ステンレス板材55の表面から裏面へ向かって水流発生部8の回転方向に傾斜する圧力発生壁8a、導入壁8bおよび導入凹部50を形成することができる。ただし、表側のレジスト膜56の開口58の回転方向下手側、すなわち導入凹部50に対応する個所に対しては、ハーフエッチング処理を行い、エッチング液による蝕刻部分がステンレス板材55を貫通しないようにする。これにより、開口58に対して緩やかに傾斜する導入凹部50を形成することができる。以上のエッチング加工においては、図24に示すように多数個のディスクブランク60を同時に形成して、その周縁2個所に設けられた橋絡部61を切断して、ステンレス板材55から分離する。
【0082】
以上のように構成した回転刃1は、次の形態で実施できる。
断面が円弧状に折り曲げられた切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている円筒籠状の回転刃であって、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備える。ディスク5の周面に切断刃3を固定する。少なくとも一部のディスク5に、回転軸体2の回転軸方向の水流を発生させる水流発生部8を形成する。軸本体4の一側に配置されたディスク5の水流発生部8が発生させる水流と、軸本体4の他側に配置されたディスク5の水流発生部8が発生させる水流とを、切断刃3の内部で衝突させる。
【0083】
以上のように、軸本体4の一側からの水流と、軸本体4の他側からの水流とを、切断刃3の内部で衝突させると、水流を拡散させて、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0084】
本実施例の変更例として、例えば導入凹部50を省略して圧力発生壁8aのみを回転軸に対して傾斜させることができる。少なくとも圧力発生壁8aを傾斜させると、圧力発生壁8aに沿って水流発生部8を通過する水流を発生させることができる。また本実施例では、水流発生部8を貫通孔で構成したが、先の実施例のように水流発生部8を切欠で構成する場合にも、圧力発生壁8aを傾斜させることにより、同様の水流を発生させることができる。
【0085】
(実施例6) 図26ないし図28は、支持ディスク5aおよび水流発生ディスク5bの構造が異なる実施例6を示す。そこでは、水流発生ディスク5bの一部を厚み方向へ切り起こして、水流発生部8としての切り起こし片65が形成してある。切り起こし片65は、各水流発生ディスク5bの周縁部に4個ずつ、水流発生ディスク5bの周方向に等間隔に配置してある。
【0086】
回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置される2個の水流発生ディスク5bと、他側半部に配置される2個の水流発生ディスク5bとでは、切り起こし片65の切り起こし方向が異なっており、各切り起こし片65は、軸方向中央部へ向かって切り起こしてある。切り起こし片65は、水流発生ディスク5bの回転方向(図28の矢印方向)下手側で水流発生ディスク5bと繋がっている。支持ディスク5aには、水流を通過させるための通口66が設けてある。通口66は、各支持ディスク5aに4個ずつ、支持ディスク5aの周方向に等間隔に配置されて、切り起こし片65と水流発生ディスク5bの接続部を通る中心軸方向の直線上に位置している。
【0087】
本実施例の回転刃1を水中で回転させると、各切り起こし片65の圧力発生壁65aによって水が攪拌されて、軸本体4の一端側から軸方向中央部へ向かう水流と、軸本体4の他端側から軸方向中央部へ向かう水流とが発生して、両水流が軸方向中央部で衝突し、回転刃1の径方向外方などへ拡散する。したがって、本実施例によれば、先の実施例5と同様の作用効果を奏する。
【0088】
図29は、水流発生ディスク5bの別の実施例を示しており、ここでは水流発生ディスク5bを、装填穴7を有する円筒状のボス68と、ボス68の外周面に等間隔に突設された水流発生部8としての4枚の攪拌ブレード69とを備える軸流ファン状に形成した。各攪拌ブレード69で水を攪拌することにより、回転軸体2の回転軸方向の水流を発生させることができる。
【0089】
図30は、圧入用の突起6の構造を変更した別の実施例を示しており、ここでは突起6を、中心軸方向に分離形成した5個の突起要素6aで構成した。
【0090】
図31および図32は、圧入用の突起6の形成法を変更した別の実施例を示す。図31においては、可動型21に設けた直角の切刃23を軸本体4の周面に食い込ませて、突起6を食込み跡25の両側に形成するようにした。図32においては、可動型21に設けた楔状の一対の切刃23を、軸本体4の周面に同時に食い込ませて、突起6を一対の食込み跡25の外側方と、一対の食込み跡25の間の3個所に形成するようにした。
【0091】
図33は、切断刃ブランク18の構成を変更した別の実施例を示す。そこでは、3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接して回転刃ブランク19を構成する。切断刃ブランク18は、ステンレス板材16にエッチング加工を施してシート状ブランク17を形成し、このシート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して、断面が部分円弧状となるように形成してある。3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持して支持ディスク5aの刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機で支持ディスク5aに溶接することにより、円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。
【0092】
図34は、切断刃ブランク18の形成法を変更した別の実施例を示す。そこでは、図34(a)に示すステンレス板材に打抜き加工を施して、図34(b)に示す一群の刃穴91を備えた1次ブランク92を形成する。次に、1次ブランク92に塑性加工を施して、断面がY字状の小刃93の一群を備えた2次ブランク94を形成する。小刃93の外面には鋭角の切刃95と逃縁96とが形成される。得られた2次ブランク94にロール加工(塑性加工)を施して、円筒状の切断刃ブランク18、あるいは図33で説明した部分円弧状の切断刃ブランク18を形成する。以後は、切断刃ブランク18を回転軸体2に外接して、先に説明したのと同様にして溶接する。
【0093】
図35および図36は、上記実施例1に係る回転刃1を内刃として備えるロータリー式の電気かみそりを示す。図35において電気かみそりは、本体部71と、本体部71で支持されるヘッド部72と、本体部71に装着される外枠73と、本体部71の後面側に配置されるきわ剃りユニット(図示していない)などで構成する。外枠73は電気かみそりの装飾性を向上するために設けてあり、本体部71と協同してグリップを構成する。外枠73の一側上部には、モーター74への通電状態をオン・オフするスイッチボタン75が設けてある。本体部71の内部には、2次電池76や回路基板77が組み込んである。回路基板77には、先のスイッチボタン75で切り換えられるスイッチや表示灯78用のLED、および制御回路や電源回路を構成する電子部品などが実装してある。
【0094】
ヘッド部72には、外刃80と回転刃(内刃)1とからなるメイン刃が設けてあり、さらに回転刃1を回転駆動するモーター74と、モーター74の回転動力を回転刃1に伝動する駆動構造などが設けてある。モーター74はヘッドフレーム81の下面に固定されて、本体部71の上部内面に収容してある。駆動構造は一群のギヤトレイン82で構成してあり、モーター74の縦軸まわりの回転動力を横軸まわりの回転動力に変換して回転刃1に伝動する。回転刃1は図36において矢印で示す向き(反時計回転方向)に回転駆動される。外刃80は、エッチング法あるいは電鋳法で形成されるシート状の網刃からなり、その前後縁が外刃ホルダー83で支持されて、逆U字状に保形してある。図36は、電鋳法で形成した外刃80を示しており、符号84は外刃80の切刃である。ヘッド部72は、本体部71で上下に移動可能に支持されており、両者71・72の間は防水パッキンでシールしてある。
【0095】
外刃ホルダー83は、ヘッドフレーム81に対して着脱自在に装着されて、図示していないロック構造で分離不能にロック保持してある。ヘッドフレーム81に設けた左右一対のロック解除ボタン85を同時に押し込み操作すると、ロック構造がロック解除されて、外刃ホルダー83をヘッドフレーム81から取り外して、回転刃1を露出させることができる。この状態で、回転刃1を水洗い洗浄することができる。回転刃1を洗浄水に浸漬して回転駆動させると、水流発生部8によって切断刃3の内部に水流を発生させて、切断刃3の内部に入り込んだ毛屑を効果的に洗い落とすことができる。したがって、毛屑が切断刃3の内部に残留するのを解消して、回転刃1の内部を衛生的な状態に維持できる。
【0096】
図37は、回転刃1を内刃として備える別の電気かみそりを示す。そこでは、回転刃1の周囲に、回転刃1の食い込み量を規制するガード体87を設けて、これら両者1・87をモーター動力で回転駆動するようにした。ガード体87はコイルばね状に形成してあり、コイル部を回転刃1の周面に巻き付けて、その両端が回転刃1に固定してある。このように、本発明の回転刃1は、外刃を備えていない電気かみそりにも適用できる。
【0097】
図38ないし図40は、回転刃1を備える電気かみそり以外の小型電気機器を示す。図38は、回転刃1を備える爪切りを示す。爪切りは、グリップを兼ねる本体部101の一端に円筒状のヘッド部102を設け、その内部にヘッド部102の筒軸心のまわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の筒周壁には半円状の切断窓106が開口してあり、この切断窓106を介して回転刃1がヘッド部102の外面に露出させてある。爪を切断する場合には、回転駆動している回転刃1を爪の先端に押し付けて、爪を少しずつ削り取る。
【0098】
図39は、回転刃1を備える毛玉取り器を示す。毛玉取り器は、グリップを兼ねる本体部101の一端に円筒状のヘッド部102を設け、その内部にヘッド部102の筒軸心のまわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の筒周壁には部分円弧状の切断窓106が開口してあり、この切断窓106を介して外刃80がヘッド部102の外面に露出させてある。毛玉は外刃80の刃穴から導入されて、外刃80の内面に摺接する回転刃1で切断される。この場合の外刃80および回転刃1は、爪切りの回転刃1に比べて軸心方向の長さが充分に大きくしてあり、したがって、回転刃1のニット生地に対する接触面積をより大きくして、毛玉を効果的に除去できる。
【0099】
図40は、回転刃1を備える角質除去器を示す。角質除去器は、グリップを兼ねる本体部101の一端にアーチ状のヘッド部102を設け、その内部に本体部101の機体中心軸と直交する軸まわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の周壁には切断窓106が切り欠き形成してあり、この切断窓106を介して回転刃1がヘッド部102の外面に露出させてある。角質を除去する場合には、回転駆動した状態の回転刃1を、かかとなどの角質部分に押し付けて、角質を少しずつ削り取る。
【0100】
上記の実施例以外に、回転軸体2は、軸本体4と、その両端寄りに固定した少なくとも2個のディスク5とで構成することができる。圧入用の突起6は、軸本体4の周面にステーキング加工を施して形成するのがコストが少なくて済む点で好ましいが、その必要はなく、転造加工や切削加工で形成することができる。ディスク5を軸本体4に挿通する前に、軸本体4に突起6を形成してもよく、この場合には、突起6に対応する逃げ溝を装填穴7の内面に設ける。
【0101】
ディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、突起6と装填穴7を圧嵌する回転軸体2においては、軸本体4を丸軸で形成する必要はなく、例えば多角形断面状の軸や、楕円状の軸体で軸本体4を形成することができる。ディスク5は軸本体4に対して1個ずつ圧嵌固定することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 回転刃
2 回転軸体
3 切断刃
4 軸本体
5 ディスク
5a 支持ディスク
5b 水流発生ディスク
6 突起
7 装填穴
8 水流発生部
8a 圧力発生壁
8b 導入壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー式の電気かみそりの内刃などに適用される回転刃と、その回転刃の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内刃(回転刃)の構造に関して、スピンドルとスピンドルに固定される左右一対のディスクと、ディスクで径方向へ移動可能に支持される2個の切断刃と、切断刃を外刃へ向かって押し付け付勢するばねとで構成した内刃が公知である(特許文献1)。
【0003】
また、エッチング法あるいは電鋳法でシート状の内刃体を形成し、丸棒状の内刃支持軸の周面に内刃体を巻き付けて接着固定することが公知である(特許文献2)。内刃体の表面には、内刃支持軸の回転中心に対して斜めに傾くリブ状の刃部が一定間隔おきに形成してあり、隣接する刃部の間の薄肉部に小穴が一定間隔おきに形成してある。得られた内刃は、研削加工を施して刃部の先端に切刃を形成する。
【0004】
また、継ぎ目の無い円筒状の内刃体の製造方法が公知である(特許文献3)。シート状の電鋳母型に電気絶縁膜を形成して一次電着を行い、一次電着層を形成した電鋳母型を円筒状のホルダの内面に沿わせて嵌挿し、二次電着を行う。二次電着層を一次電着層から剥離して、電気絶縁膜に相当する模様の透孔部を備える円筒状の内刃体を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−152495号公報(第2頁左下欄3〜15行、第3図)
【特許文献2】実用新案登録第2502183号公報(第3頁左欄第28〜41行、第1図)
【特許文献3】特開昭59−28586号公報(第2頁左上欄15行〜左下欄7行、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転刃に付着した付着物を除去するには、回転刃を水中で回転駆動させる水洗い洗浄が効果的であり、さらに、回転刃で水を攪拌することにより、回転刃の周囲に水流を発生させると、より効果的に付着物を除去できる。しかし、特許文献1ないし特許文献3の回転刃によれば、切断刃で水を攪拌することはできるが、切断刃を支持する回転軸体で水を攪拌することはできない。つまり、上記各回転刃は水の攪拌能力に乏しく、強い水流を発生させることができず、したがって、回転刃に付着した付着物を除去しきれない。
【0007】
本発明の目的は、水中で回転駆動させる水洗い洗浄を行ったとき、付着物を効果的に除去できる回転刃、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、断面が円弧状に折り曲げられた切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている回転刃に関する。回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備えている。ディスク5の周面に切断刃3を固定する。少なくとも一部のディスク5に水流発生部8を形成することを特徴とする。
【0009】
水流発生部8を、ディスク5の周縁部に形成した切欠で構成する。
【0010】
水流発生部8を、ディスク5を貫通する貫通孔で構成する。
【0011】
ディスク5を、切断刃3を支持する複数の支持ディスク5aと、水流発生部8が形成された複数の水流発生ディスク5bとで構成する。隣接する支持ディスク5a・5aの間に水流発生ディスク5bを配置する。
【0012】
水流発生ディスク5bの径寸法Rbを、支持ディスク5aの径寸法Raよりも小さく設定する。
【0013】
水流発生ディスク5bの厚み寸法Tbを、支持ディスク5aの厚み寸法Taよりも大きく設定する。
【0014】
水流発生部8を、回転方向上手側の圧力発生壁8aと回転方向下手側の導入壁8bとを備える切欠で構成する。ディスク5の中心と、圧力発生壁8aと導入壁8bとの交点とを通る仮想基準線Lを想定するとき、仮想基準線Lと導入壁8bとで挟まれる角度β2を、仮想基準線Lと圧力発生壁8aとで挟まれる角β1よりも大きく設定して、導入壁8bの長さを圧力発生壁8aの長さより大きく設定する。導入壁8bに臨んで、水の導入を容易化する導入空間Sを設ける。
【0015】
導入壁8bを平坦面で形成する。
【0016】
水流発生部8を、回転方向上手側の圧力発生壁8aと回転方向下手側の導入壁8bとを備える切欠で構成する。ディスク5の中心と圧力発生壁8aの一点とを通る仮想基準線Mを想定するとき、圧力発生壁8aを、圧力発生壁8a上の前記一点を中心として、仮想基準線Mに対してディスク5の回転方向と逆の方向に傾斜させる。
【0017】
水流発生部8を、回転方向上手側の圧力発生壁8aと回転方向下手側の導入壁8bとを備えるV字状の切欠で構成して、ディスク5の周方向に等間隔に配置する。水流発生部8を構成する切欠の中心角α1を、該切欠に挟まれるディスク5の周面の中心角α2よりも小さく設定する。
【0018】
軸本体4に複数のディスク5を固定して、回転軸体2を構成する。ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7を形成する。ディスク5を軸本体4に挿通してディスク5を圧嵌姿勢に保持し、ディスク5と軸本体4を相対移動させて、軸本体4の周面に設けた複数の突起6と装填穴7とを互いに圧嵌することにより、ディスク5を軸本体4に固定する。
【0019】
切断刃3の前段体である切断刃ブランク18を、切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に塑性加工を施して形成する。切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、複数のディスク5の周面に溶接して構成する。
【0020】
軸本体4をマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成する。ディスク5をオーステナイト系のステンレス鋼材で形成する。切断刃3をマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成する。回転軸体2に切断刃ブランク18を溶接して得られる回転刃ブランク19に焼入れ処理を施し、焼入れ後のブランクに研削処理を施す。
【0021】
水流発生部8を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸Pを、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成する。水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出される。
【0022】
水流発生部8の入口8e側であって、導入壁8b側の開口周縁部に水の導入凹部50を設ける。
【0023】
導入凹部50を、水を圧力発生壁8aへ向かって流動案内する複数のガイド凹部51で構成する。
【0024】
水流発生部8を、ステンレス板材55の両面にエッチング処理を施して形成する。導入凹部50を、ステンレス板材55の片面にハーフエッチング処理を施して形成する。
【0025】
回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置されるディスク5と、他側半部に配置されるディスク5とを、各ディスク5の水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置する。回転軸体2が回転する状態において、一側半部のディスク5から送出される水流と、他側半部のディスク5から送出される水流とが、回転軸体2の中央部で衝突する。
【0026】
また本発明は、切断刃3を支持する回転軸体2が、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備え、少なくとも一部のディスク5に水流発生部8が形成してある回転刃1の製造方法に係り、以下の各工程により回転刃1を構成する。水流発生部8を備えるディスク5を含む回転軸体2を形成する工程。切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に塑性加工を施して切断刃ブランク18を形成する工程。切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、ディスク5の周面に溶接して回転刃ブランク19を形成する工程。得られた回転刃ブランク19に焼入れ処理を施す工程。焼入れ後のブランクに研削処理を施す工程。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、回転軸体2を構成する少なくとも一部のディスク5に水流発生部8を形成したので、回転刃1を水中で回転駆動させたとき、切断刃3の内部に水流を発生させることができる。この水流を切断刃3の内面や回転軸体2に衝突させることにより、これらに付着した付着物を効果的に除去できる。切断刃3の内部から水流を発生させるので、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0028】
ディスク5の周縁部に形成した切欠で水流発生部8を構成すると、例えば水流発生部8をディスク5に突設した攪拌部材などで構成する場合に比べて、水流発生部8の構造を簡素化して、回転刃1の製造コストを低減できる。
【0029】
ディスク5を貫通する貫通孔で水流発生部8を構成すると、例えば水流発生部8をディスク5に突設した攪拌部材などで構成する場合に比べて、水流発生部8の構造を簡素化して、回転刃1の製造コストを低減できる。
【0030】
切断刃3を支持する支持ディスク5aの間に水流発生ディスク5bを配置すると、水流発生ディスク5bの水流発生部8が発生させる水流を、支持ディスク5aの表面や支持ディスク5aと切断刃3との接合部に対して衝突させて、これらに付着した付着物を効果的に除去できる。
【0031】
水流発生ディスク5bを支持ディスク5aよりも小径にして、水流発生ディスク5bと切断刃3との間に隙間を設けると、水流発生ディスク5bの周縁部に付着物が溜まるのを抑制できるとともに、水流発生ディスク5bに邪魔されることなく切断対象を切断刃3の内部に導入できる。因みに、水流発生ディスク5bが支持ディスク5aと同径であると、水流発生ディスク5bの周面が切断刃3の内面に接触するので、水流発生ディスク5bの周縁部に付着物が溜まりやすくなるとともに、切断刃3の内部へ切断対象を導入する際に水流発生ディスク5bが邪魔になる。
【0032】
水流発生ディスク5bの厚み寸法を大きくすると、水流発生部8が発生させる水流を強化して、付着物の除去機能を向上できる。また、水流発生ディスク5bの回転慣性力を大きくして、高いフライホイール効果を発揮できる。つまり、水流発生ディスク5bを厚くして質量を大きくした分だけ、水流発生ディスク5bの回転慣性力を大きくして、切断刃3に作用する切断抵抗を効果的に相殺できる。したがって、回転刃1で剛毛を切断する場合など、切断刃3に大きな切断抵抗が作用する場合に、回転刃1の駆動回転数が瞬間的に低下するのをよく防止できる。
【0033】
導入壁8b側の角度β2を、圧力発生壁8a側の角β1よりも大きく設定して、導入壁8bの長さを圧力発生壁8aの長さより大きく設定すると、導入壁8bに臨む導入空間Sを介して水流発生部8内に水をスムーズに導入することができる。従って、水流発生部8が発生させる水流を強化して、洗浄効果を向上できる。
【0034】
導入壁8bを平坦面で形成すると、導入壁8bに沿う水流を直線状にして、水流発生部8に導入した水をスムーズに圧力発生壁8aへ案内することができる。したがって、水流発生部8が発生させる水流を強化して、洗浄効果を向上できる。
【0035】
ディスク5の中心と圧力発生壁8aの一点とを通る仮想基準線Mを想定するとき、圧力発生壁8aを、圧力発生壁8a上の前記一点を中心として、仮想基準線Mに対してディスク5の回転方向と逆の方向に傾斜させると、圧力発生壁8aに沿ってディスク5の外周方向へ向かう水流をスムーズに形成して、水を水流発生部8の外へ押し出すことができる。したがって、水流発生部8が発生させる水流を強化して、洗浄効果を向上できる。
【0036】
水流発生部8をV字状の切欠で構成し、水流発生部8を構成する切欠の中心角α1を、該切欠に挟まれるディスク5の周面の中心角α2よりも小さく設定すると、ディスク5における切欠の面積を小さくして、水流発生部8を形成することに伴うディスク5の質量の低下を抑制できる。したがって、ディスク5の回転慣性力を維持して、切断刃3に作用する切断抵抗を効果的に相殺できる。
【0037】
軸本体4の周面に設けた突起6と、ディスク5に形成した装填穴7とを互いに圧嵌して、ディスク5を軸本体4に固定すると、ディスク5を軸本体4に対して、より少ない手間で強固に、しかも精度よく固定できる。また、ディスク5を軸本体4に溶接する場合に比べて、1回の圧嵌作業で複数のディスク5を軸本体4に簡便に固定でき、より少ないコストで回転軸体2を構成できる。とくに、丸棒状のステンレス鋼材に旋削加工を施して回転軸体2を構成する場合に比べて、回転軸体2の製造に要するコストを大幅に削減できる。
【0038】
切断刃3の前段体である切断刃ブランク18を、シート状ブランク17に塑性加工を施して形成し、得られた切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、複数のディスク5の周面に溶接して回転刃1を構成すると、回転刃1を少ない手間で形成でき、回転刃1の製造に要するコストを削減できる。
【0039】
軸本体4をマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成し、ディスク5をオーステナイト系のステンレス鋼材で形成すると、ディスク5の軸本体4に対する圧嵌作業を容易に行うことができる。マルテンサイト系のステンレス鋼材と、オーステナイト系のステンレス鋼材とは、焼入れ前の状態においては前者鋼材の硬度が後者鋼材の硬度より小さいので、ディスク5による突起6の圧潰を容易に行えるからである。さらに、焼入れ処理を施すことにより軸本体4の表面硬度を向上して、軸本体4の構造強度を向上できる。因みにディスク5は、焼入れ処理による表面硬化作用が得られない。上記の圧嵌作業とは異なり、予め軸本体4に焼入れ処理を施したのち、ディスク5を軸本体4に圧嵌することができる。その場合には、軸本体4の硬度がディスク5の硬度より大きくなるので、軸本体4に対する圧嵌作業を容易に行うことができる。
【0040】
回転刃ブランク19に焼入れ処理を施すことにより、マルテンサイト系のステンレス鋼材で形成した軸本体4および回転刃ブランク19の表面を硬化して回転刃1の強度を向上できる。なお、オーステナイト系のステンレス鋼材で形成したディスク5は、焼入れしても表面が硬化せず、熱膨張が少ない。そのため、切断刃ブランク18をディスク5に溶接するときに、溶接面に熱負荷がかかりにくく、溶接歪が少なくてすむ。焼入れ後のブランクに研削処理を施すことにより、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げることができる。
【0041】
水流発生部8の空隙中心軸Pを、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜させると、回転刃1を水中で回転させたとき、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出される。このように、回転中心軸に対して傾斜する水流を発生させると、径方向外側へ向かう水流を発生させる場合に比べて、回転軸体2の径方向中心部の軸本体4やディスク5に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0042】
水流発生部8の入口8e側であって導入壁8bの開口周縁部に水の導入凹部50を設けると、水を導入凹部50を介して水流発生部8内へスムーズに導入することができるので、水流を強化して洗浄効果を向上できる。
【0043】
導入凹部50を、圧力発生壁8aに向かう複数のガイド凹部51で構成すると、導入凹部50に導入された水を圧力発生壁8aへ確実に案内することができるので、より強力な水流を形成することができる。
【0044】
水流発生部8をエッチングで形成し、導入凹部50をハーフエッチングで形成すると、水流発生部8と導入凹部50を共にエッチング工程において形成することができるので、ディスク5の製造に要するコストを削減できる。また、導入凹部50をハーフエッチングで形成すると、他の加工法に比べて、導入凹部50の形状および位置を正確に形成できる。
【0045】
回転軸体2の一側半部のディスク5から送出される水流と、他側半部のディスク5から送出される水流とを、回転軸体2の中央部で衝突させると、衝突した水流が回転軸体2の中央部で径方向外方へ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本発明のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。
【0046】
本発明に係る回転刃の製造方法においては、切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に塑性加工を施して切断刃ブランク18を形成するので、切断刃ブランク18を少ない手間で形成できる。切断刃3の前段体である切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、複数のディスク5の周面に溶接して回転刃ブランク19を形成すると、切断刃ブランクをディスクの周面に接着固定する場合に比べて、回転刃ブランク19の構造強度を向上できる。回転刃ブランク19に焼入れ処理と研削処理を施すと、外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げることができ、さらに表面が硬化されて強度が向上された回転刃1を、ばらつきのない状態で安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図2】実施例1に係る回転刃の分解斜視図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図である。
【図4】実施例1に係る圧入用の突起の形成例を示す説明図である。
【図5】実施例1に係るディスクの軸本体に対する圧嵌形態を示す断面図である。
【図6】実施例1に係るディスクと軸本体の圧嵌構造を示す一部破断正面図である。
【図7】図6におけるB−B線断面図である。
【図8】エッチング工程におけるシート状ブランクの平面図である。
【図9】切断刃ブランクの加工例を示す平面図、および正面図である。
【図10】エッチング工程で形成した小刃の断面図である。
【図11】実施例2に係る回転刃の分解斜視図である。
【図12】実施例2に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図13】図12におけるC−C線断面図である。
【図14】実施例3に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図15】図14におけるD−D線断面図である。
【図16】実施例4に係る回転刃の構造を示す断面図である。
【図17】水流発生ディスクの別の実施例を示す図である。
【図18】水流発生ディスクの別の実施例を示す図である。
【図19】実施例5に係る回転刃の分解斜視図である。
【図20】実施例5に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図21】図20におけるE−E線断面図である。
【図22】図20におけるF−F線断面図である。
【図23】図22におけるG−G線断面図である。
【図24】エッチング工程におけるディスクブランクの平面図である。
【図25】エッチング工程で形成したディスクの断面図である。
【図26】実施例6に係る回転刃の分解斜視図である。
【図27】実施例6に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図28】図27におけるH−H線断面図である。
【図29】水流発生ディスクの別の実施例を示す図である。
【図30】圧入用の突起の別の実施例を示す斜視図である。
【図31】圧入用の突起の別の形成法を示す説明図である。
【図32】圧入用の突起のさらに別の形成法を示す説明図である。
【図33】切断刃ブランクの別の実施例を示す回転刃の分解側面図である。
【図34】切断刃ブランクの別の形成法を示す説明図である。
【図35】実施例1に係る回転刃を適用した電気かみそりの正面図である。
【図36】図35におけるI−I線断面図である。
【図37】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図38】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図39】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図40】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(実施例1) 図1ないし図10は、本発明に係る回転刃の実施例1を示す。図1および図2において回転刃1は、回転軸体2と、回転軸体2に固定される円筒状の切断刃3とで構成する。回転軸体2は、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される5個の支持ディスク5aおよび4個の水流発生ディスク5bとで構成してあり、回転軸方向に沿って支持ディスク5aと水流発生ディスク5bとが交互に配置してある。
【0049】
軸本体4は、丸軸状のマルテンサイト系のステンレス鋼材である。支持ディスク5aは、オーステナイト系のステンレス鋼材からなる板材に打抜き加工を施して円盤状に形成してあり、その中央には軸本体4に挿通される装填穴7が形成してある。図3に示すように支持ディスク5aの周面は、切断刃3を受ける刃受面9とされており、この刃受面9に切断刃3が溶接される。
【0050】
水流発生ディスク5bも、オーステナイト系のステンレス板材に打抜き加工を施して円盤状に形成してあり、支持ディスク5aと同様の装填穴7と、V字状の切欠からなる水流発生部8とを備える。水流発生部8は、各水流発生ディスク5bの周面の3個所に、水流発生ディスク5bの周方向に等間隔に形成してある。各水流発生部8は、回転方向(図3の矢印方向)上手側の圧力発生壁8aと、回転方向下手側の導入壁8bとを備え、両壁8a・8bは共に平坦面で形成してある。
【0051】
水流発生ディスク5bの中心と圧力発生壁8aの径方向外端とを通る仮想基準線Mを想定するとき、圧力発生壁8aは、圧力発生壁8aの径方向外端を中心として、仮想基準線Mに対して、図3において時計回りにθだけ傾斜している。圧力発生壁8aが傾斜する方向は、水流発生ディスク5bの回転方向(図3において反時計回り)と逆の方向である。水流発生部8を構成する切欠の中心角α1は、該切欠に挟まれる円弧面の中心角α2よりも小さく設定してある。水流発生ディスク5bの径寸法Rbは、支持ディスク5aの径寸法Raよりも小さく設定してある。図1に示すように、水流発生ディスク5bの厚み寸法Tbは、支持ディスク5aの厚み寸法Taよりも大きく設定してある。
【0052】
切断刃3は、マルテンサイト系のステンレス板材16にエッチング加工を施し、さらにロール加工(塑性加工)を施して円筒状に形成するが、加工の詳細については後述する。図8に示すようにエッチング加工を施したシート状ブランク17には、第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群と、両小刃11・12で囲まれる菱形の刃穴13の一群と、これらの周囲を囲む周枠とが形成してある。第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群とは、それぞれ回転軸体2の中心軸に対して互いに逆向きに傾斜する状態で形成してあり、これにより展開状態のシート状ブランク17の全体はエキスパンドメタル状の外観を呈している。
【0053】
次に回転刃1の製造方法の詳細を説明する。回転刃1の製造工程は、回転軸体2を形成する工程と、切断刃ブランク18を形成して回転軸体2に固定する工程に大別される。回転軸体2を形成する工程は、旋削加工が施された軸本体4に焼き入れ処理を施す前段熱処理工程と、支持ディスク5aを作製する工程と、水流発生ディスク5bを作製する工程と、各ディスク5a・5bを軸本体4に挿通して仮組みする工程と、各ディスク5a・5bを仮組みした状態のままで、軸本体4の周面に圧入用の突起6を形成する工程と、各ディスク5a・5bと軸本体4を相対移動させて突起6を装填穴7に対して圧嵌する工程とからなる。
【0054】
(支持ディスク5aを作製する工程)
まず、オーステナイト系のステンレス板材に打抜き加工を施して、丸板状のディスクブランクを形成する。次いで、ディスクブランクに打抜き加工を施して装填穴7を形成し、支持ディスク5aを得る。
【0055】
支持ディスク5aは、以下の方法で作製することもできる。まず、ステンレス製の丸棒に切削加工を施して、所定の直径値の旋削ブランクを形成する。次いで、得られた旋削ブランクの中央に旋削加工あるいはドリル加工を施して装填穴7を形成し、最後に、得られた長尺のブランクを突っ切りバイトで所定の幅に切断して、支持ディスク5aを得る。あるいは、支持ディスク5aは、ステンレス板材にエッチングを施して作製することもできる。
【0056】
(水流発生ディスク5bを作製する工程)
まず、オーステナイト系のステンレス板材に打抜き加工を施して、周縁に水流発生部8を備える丸板状のディスクブランクを形成する。次いで、ディスクブランクに打抜き加工を施して装填穴7を形成し、水流発生ディスク5bを得る。なお、軸本体4に焼き入れ処理を施す前段熱処理工程と、支持ディスク5aを作製する工程と、水流発生ディスク5bを作製する工程とは、任意の順序で行うことができる。
【0057】
水流発生ディスク5bは、以下の方法で作製することもできる。まず、先述の支持ディスク5aの別作製方法と同様に、所定の直径値の旋削ブランクの中央に装填穴7を形成する。装填穴7の形成に前後して、旋削ブランクの周面にブローチ加工を施して水流発生部8を形成する。最後に、得られた長尺のブランクを突っ切りバイトで所定の幅に切断して、水流発生ディスク5bを得る。なお、水流発生部8を形成するブローチ加工は、突っ切りバイトで所定の幅に切断した丸板に対して行うようにしてもよい。また、水流発生ディスク5bは、ステンレス板材にエッチングを施して作製することもできる。
【0058】
(圧入用の突起6を形成する工程)
図4に示すように、圧入用の突起6を形成する工程では、定置されたステーキング加工用の固定型20と、固定型20に向かって下降し、あるいは上昇するステーキング加工用の可動型21とで、軸本体4の周面に中心軸方向に長いリブ状の突起6を形成する。図4(b)に示すように、固定型20および可動型21の対向面の前後には、それぞれ鋭角の切刃22・23が形成してある。図4(a)に示すように、ディスク5a・5bが仮組みされた軸本体4を、固定型20の前後の切刃22に載置して、各ディスク5a・5bを隣接する切刃22の間に位置させて、固定型20の側端に設けた位置決め枠24で軸本体4を位置決めする。この状態で、可動型21の切刃23を軸本体4の周面に食い込ませることにより、図4(c)に示すように、軸本体4の周方向の4個所にV字状に突出するリブ状の突起6を形成できる。突起6は、各ディスク5a・5bの固定位置ごとに、軸本体4の中心軸方向に沿って一定間隔おきに断続的に形成する。各ディスク5a・5bの固定位置における個々の突起6の位相位置は一定位置に揃えてある。突起6を形成するのと同時に、切刃22・23の食込み跡25が形成される。突起6の中心軸方向の長さは、支持ディスク5aの厚み寸法Taの2.5倍(水流発生ディスク5bの厚み寸法Tbの1.5倍)とした。
【0059】
(圧入用の突起6を圧嵌する工程)
この工程では、図5に示すように、軸本体4に仮組みした状態の各ディスク5a・5bを治具26の支持壁27で支持する。この状態で、軸本体4の下端面が治具26の下端のストッパー28に外接するまで、軸本体4を中心軸に沿って下向きに押し込むことにより、突起6と装填穴7を互いに圧嵌する。
【0060】
図6および図7に示すように、突起6と装填穴7を圧嵌することにより、装填穴7が通過した部分の突起6の殆どが装填穴7によって削り取られ、あるいは逆に装填穴7の一部が、残った突起6の基部側の圧潰面30で削り取られて、両者7・30が互いに密着する。また、突起6の塑性変形部31が装填穴7の周縁壁を受け止めて、それ以上ディスク5a・5bが中心軸方向へ移動するのを規制できる。
【0061】
上記のように、各ディスク5a・5bを軸本体4に挿通して仮組みする工程と、各ディスク5a・5bを仮組みした状態のままで、軸本体4の周面に圧入用の突起6を形成する工程と、各ディスク5a・5bと軸本体4を相対移動させて突起6を装填穴7に対して圧嵌する工程とを経て、回転軸体2を形成すると、ディスク5a・5bを軸本体4に対して、より少ない手間で強固に、しかも精度よく固定できる。また、ディスク5a・5bを軸本体4に溶接する場合に比べて、1回の圧嵌作業で複数のディスク5を軸本体4に簡便に固定でき、より少ないコストで回転軸体2を構成できる。さらに、丸棒状のステンレス鋼材に旋削加工を施して回転軸体2を形成する方法(後述)に比べて、回転軸体2の製造に要するコストを大幅に削減できる。
【0062】
切断刃ブランク18を形成する工程は、図8に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、シート状ブランク17を形成する工程と、図9に示すようにシート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して円筒状の切断刃ブランク18を形成する工程とからなる。こののち、切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接する工程を経て回転刃ブランク19を構成し、回転刃ブランク19に焼き入れ工程と研削工程を経て回転刃1を完成する。シート状ブランク17は、ステンレス板材に打抜き加工を施して形成してあってもよい。
【0063】
(シート状ブランク17を形成する工程)
この工程では、図8に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、切断刃3のシート状ブランク17を形成する。具体的には、厚みが0.3mmのステンレス板材16の表裏両面にエッチング処理を施して、第1小刃11や第2小刃12などを形成する。エッチング工程においては、図10に示すようにステンレス板材16の表裏両面にレジスト膜33を形成したのち露光し、露光部を除去して、非露光部に囲まれる板材表面をエッチング液で蝕刻する。このとき、多数個のシート状ブランク17を同時に形成して、その辺部に設けられた橋絡部34(図8参照)を切断して、ステンレス板材16から分離する。
【0064】
エッチング処理を施すことにより、図8に示す断面形状の第1小刃11および第2小刃12が形成される。図10に示すように第1小刃11および第2小刃12は、外面の切断面35と、内面のベース面36と、これら両者35・36の端縁間に形成される第1抉り面37、および第2抉り面38とで、5個の隅部を備えた異形断面状に形成される。第1抉り面37は、切断面35とベース面36との端縁間を抉る1個の内凹み面で形成してあり、切断面35と第1抉り面37とによって、矢印で示す切断面35の回転方向下手側に切刃39が形成される。また、切断面35と第2抉り面38とによって切断面35の回転方向上手側に逃縁40が形成される。第2抉り面38は二つの凹曲面でく字状に形成してある。
【0065】
(切断刃ブランク18を形成する工程)
この工程では、図9(a)・(b)に示すように、シート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して、円筒状の切断刃ブランク18を形成する。ロール加工は、下側に配置した2個のベースローラー42と、両ベースローラー42の間の上方に配置される加圧ローラー43とで行う。両ローラー42・43の間にシート状ブランク17を通すことにより、円筒状の切断刃ブランク18を形成する。切断刃ブランク18は不完全円状に曲げられている。
【0066】
(切断刃ブランク18を溶接する工程)
この工程では、回転軸体2の支持ディスク5aの周面に切断刃ブランク18を溶接する。詳しくは、円筒状の切断刃ブランク18を回転軸体2に外嵌し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持して支持ディスク5aの刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機で支持ディスク5aに溶接することにより、図1に示すような円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。
【0067】
(熱処理工程)
熱処理工程においては、回転刃ブランク19を約1000℃にまで加熱し、その状態を所定時間維持したのち、水および加熱された油で順に冷却して焼き入れを行う。これにより、切断刃3および軸本体4の金属組織をマルテンサイト化してその表面硬度を増強できる。回転刃ブランク19を加熱する過程では、レーザー溶接時に溶接部の周辺部で生じた熱による内部歪みを除去できる。必要に応じて焼き戻しを行う。
【0068】
(研削工程)
研削工程では、回転刃ブランク19の周面に粗研削加工と仕上げ研削加工とを順に施して、切断刃3の周面の真円度を向上し、さらに切刃39をシャープに仕上げる。粗研削加工では、溶接部の膨出表面を除去し、同時に切断刃3の周面を研削する。また、仕上げ研削加工では、切断刃3の周面の表面粗さが小さくなるように仕上げ研削を行って、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げる。粗研削加工では、腐食しやすい溶接部の膨出表面を除去するので、溶接部の腐食や割れなどを一掃して切断刃3の耐久性を向上できる。なお、回転刃1の真円度に対する要求仕様が低い場合には、研削工程は省略することができる。
【0069】
本実施例に係る回転刃1を水中で回転させると、各水流発生ディスク5bの水流発生部8で水を攪拌して、切断刃3の内部に水流を発生させることができる。具体的には、圧力発生壁8aによって水流発生部8内の水が押し出されることにより、回転刃1と同じ向きに回転する水流や、切断刃3の内面に沿う回転軸方向の水流などが発生する。この水流によって、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物が効果的に洗い落とされる。切断刃3の内部から水流を発生させるので、円筒籠状の回転刃1において除去し難い切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0070】
(実施例2) 図11ないし図13は、回転軸体2の構造が異なる実施例2を示す。そこでは、軸本体4に圧嵌固定される5個のディスク5のそれぞれに、水流発生部8および刃受面9が形成してある。具体的には、ディスク5の周面の3個所に、V字状の切欠からなる水流発生部8を等間隔に形成し、水流発生部8・8に挟まれる周面を刃受面9としている。つまり、本実施例におけるディスク5は、先の実施例1における支持ディスク5aと水流発生ディスク5bの役割を兼ねている。ディスク5は、先の実施例1の水流発生ディスク5bと同様の方法で作製することができる。
【0071】
図13に示すように水流発生部8は、隣接するディスク5に形成された水流発生部8に対して、周方向に位相をずらしてある。ディスク5の径寸法および厚み寸法は、実施例1における支持ディスク5aと同じに設定してある。他は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同様に扱う。なお、この実施例2の変更例として、隣接するディスク5・5の間に、ディスク5よりも小径で水流発生部8をもつ水流発生ディスク5bを配置することができる。
【0072】
(実施例3) 図14および図15は、回転軸体2の構造が異なる実施例3を示す。ここでの回転軸体2は、軸本体4と支持ディスク5aおよび水流発生ディスク5bとを一体に備えたステンレス製(金属製)の旋削品からなる。ただし、水流発生ディスク5bの水流発生部8は、ブローチ加工によって形成してある。隣接する支持ディスク5aと水流発生ディスク5bの間における軸本体4の周面には、回転中心側へ凹む凹曲面46が形成してある。
【0073】
(実施例4) 図16は、水流発生ディスク5bの構造が異なる実施例4を示す。そこでは、導入壁8bに臨んで、水流発生部8への水の導入を容易化する導入空間Sを設けている。具体的には、水流発生ディスク5bの中心と、圧力発生壁8aと導入壁8bとの交点とを通る仮想基準線Lを想定するとき、仮想基準線Lと導入壁8bとで挟まれる角度β2を、仮想基準線Lと圧力発生壁8aとで挟まれる角β1よりも大きく設定して、導入壁8bの長さを圧力発生壁8aの長さより大きく設定している。なお、先の実施例1ではβ1=β2であり、圧力発生壁8aと導入壁8bの長さは等しい。また、本実施例では、圧力発生壁8aの径方向外端を、仮想基準線Lより回転方向上手側の領域に位置させる。この点は先の実施例1と同様である。
【0074】
本実施例のように、導入壁8bに臨む水の導入空間Sを設けると、水流発生部8内に水をスムーズに導入することができる。また、圧力発生壁8aの径方向外端を仮想基準線Lの回転方向上手側の領域に位置させると、圧力発生壁8aに沿ってディスク5の外周方向へ向かう水流をスムーズに形成して、水を水流発生部8の外へ押し出すことができる。したがって、本実施例によれば、水流発生部8が発生させる水流を強化して、洗浄効果を向上できる。
【0075】
図17および図18は、水流発生ディスク5bの別の実施例を示す。図17においては、水流発生ディスク5bの周面の4個所に水流発生部8が形成してある。図18においては、先の実施例4よりも圧力発生壁8aがさらに短く、また、導入壁8bがさらに長く形成してある。なお、図16ないし図18に示した水流発生ディスク5bの水流発生部8の形状や配置は、実施例2に示した水流発生部8および刃受面9を備えるディスク5に適用することができる。
【0076】
(実施例5) 図19ないし図25は、回転軸体2の構造が異なる実施例5を示す。そこでは、軸本体4に圧嵌固定される4個のディスク5のそれぞれに、水流発生部8および刃受面9が形成してある。ここでの水流発生部8は、ディスク5を貫通する貫通孔で構成されて、各ディスク5に3個ずつ、ディスク5の周方向に等間隔に配置される。図23に示すように、水流発生部8を構成する貫通孔の空隙中心軸Pは、ディスク5の回転中心軸(厚み方向線)に対して傾斜しており、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出される点が、上記各実施例と大きく異なる。
【0077】
具体的には、各水流発生部8の回転方向上手側の圧力発生壁8aと、回転方向下手側の導入壁8bとが、回転軸体2の回転軸に対して傾斜している。また、水流発生部8の入口8e側であって、導入壁8b側の開口周縁部には、水の導入凹部50が設けてある。導入凹部50は、水を圧力発生壁8aへ向かって流動案内する3個のガイド凹部51で構成してある。水流発生部8の入口8eから出口8fにかけて、導入凹部50および導入壁8bは、入口8eあるいは出口8fの開口面に対して、圧力発生壁8aよりも緩やかに傾斜している。
【0078】
本実施例のディスク5を水中で図21および図22の矢印方向に回転させると、水流発生部8内の水が圧力発生壁8aに沿って図21の正面側(図22の背面側)へ押し出されるとともに、図21の背面側(図22の正面側)の水が導入凹部50を介して水流発生部8内へ流れ込み、これにて、図21の背面側(図22の正面側)から水流発生部8を通って図21の正面側(図22の背面側)へ向かう、空隙中心軸Pに沿う斜めの水流が発生する。
【0079】
回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置される2個のディスク5と、他側半部に配置される2個のディスク5とは、水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置してある。したがって、回転刃1を水中で回転させると、図20に示すように、軸方向中央部へ向かう二方向の水流が軸方向中央部で衝突し、回転刃1の径方向外方などへ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本実施例のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。
【0080】
本実施例のディスク5は、ステンレス板材55にエッチング加工を施して形成する。まず、図24および図25(a)に示すように、ステンレス板材55の表裏両面にレジスト膜56・57を形成する。各レジスト膜56・57には、ステンレス板材55のエッチング処理すべき領域に対応する開口が設けられている。レジスト膜56・57は、例えばステンレス板材55の表裏面に感光性樹脂層を形成したのち露光し、露光部を除去することにより形成される。
【0081】
水流発生部8に対応する表裏のレジスト膜56・57の開口58・59は、水流発生部8の回転方向に位置をずらして配置してある。したがって、開口58・59に対してエッチング処理を施すと、図25(b)に示すように、ステンレス板材55の表面から裏面へ向かって水流発生部8の回転方向に傾斜する圧力発生壁8a、導入壁8bおよび導入凹部50を形成することができる。ただし、表側のレジスト膜56の開口58の回転方向下手側、すなわち導入凹部50に対応する個所に対しては、ハーフエッチング処理を行い、エッチング液による蝕刻部分がステンレス板材55を貫通しないようにする。これにより、開口58に対して緩やかに傾斜する導入凹部50を形成することができる。以上のエッチング加工においては、図24に示すように多数個のディスクブランク60を同時に形成して、その周縁2個所に設けられた橋絡部61を切断して、ステンレス板材55から分離する。
【0082】
以上のように構成した回転刃1は、次の形態で実施できる。
断面が円弧状に折り曲げられた切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている円筒籠状の回転刃であって、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備える。ディスク5の周面に切断刃3を固定する。少なくとも一部のディスク5に、回転軸体2の回転軸方向の水流を発生させる水流発生部8を形成する。軸本体4の一側に配置されたディスク5の水流発生部8が発生させる水流と、軸本体4の他側に配置されたディスク5の水流発生部8が発生させる水流とを、切断刃3の内部で衝突させる。
【0083】
以上のように、軸本体4の一側からの水流と、軸本体4の他側からの水流とを、切断刃3の内部で衝突させると、水流を拡散させて、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0084】
本実施例の変更例として、例えば導入凹部50を省略して圧力発生壁8aのみを回転軸に対して傾斜させることができる。少なくとも圧力発生壁8aを傾斜させると、圧力発生壁8aに沿って水流発生部8を通過する水流を発生させることができる。また本実施例では、水流発生部8を貫通孔で構成したが、先の実施例のように水流発生部8を切欠で構成する場合にも、圧力発生壁8aを傾斜させることにより、同様の水流を発生させることができる。
【0085】
(実施例6) 図26ないし図28は、支持ディスク5aおよび水流発生ディスク5bの構造が異なる実施例6を示す。そこでは、水流発生ディスク5bの一部を厚み方向へ切り起こして、水流発生部8としての切り起こし片65が形成してある。切り起こし片65は、各水流発生ディスク5bの周縁部に4個ずつ、水流発生ディスク5bの周方向に等間隔に配置してある。
【0086】
回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置される2個の水流発生ディスク5bと、他側半部に配置される2個の水流発生ディスク5bとでは、切り起こし片65の切り起こし方向が異なっており、各切り起こし片65は、軸方向中央部へ向かって切り起こしてある。切り起こし片65は、水流発生ディスク5bの回転方向(図28の矢印方向)下手側で水流発生ディスク5bと繋がっている。支持ディスク5aには、水流を通過させるための通口66が設けてある。通口66は、各支持ディスク5aに4個ずつ、支持ディスク5aの周方向に等間隔に配置されて、切り起こし片65と水流発生ディスク5bの接続部を通る中心軸方向の直線上に位置している。
【0087】
本実施例の回転刃1を水中で回転させると、各切り起こし片65の圧力発生壁65aによって水が攪拌されて、軸本体4の一端側から軸方向中央部へ向かう水流と、軸本体4の他端側から軸方向中央部へ向かう水流とが発生して、両水流が軸方向中央部で衝突し、回転刃1の径方向外方などへ拡散する。したがって、本実施例によれば、先の実施例5と同様の作用効果を奏する。
【0088】
図29は、水流発生ディスク5bの別の実施例を示しており、ここでは水流発生ディスク5bを、装填穴7を有する円筒状のボス68と、ボス68の外周面に等間隔に突設された水流発生部8としての4枚の攪拌ブレード69とを備える軸流ファン状に形成した。各攪拌ブレード69で水を攪拌することにより、回転軸体2の回転軸方向の水流を発生させることができる。
【0089】
図30は、圧入用の突起6の構造を変更した別の実施例を示しており、ここでは突起6を、中心軸方向に分離形成した5個の突起要素6aで構成した。
【0090】
図31および図32は、圧入用の突起6の形成法を変更した別の実施例を示す。図31においては、可動型21に設けた直角の切刃23を軸本体4の周面に食い込ませて、突起6を食込み跡25の両側に形成するようにした。図32においては、可動型21に設けた楔状の一対の切刃23を、軸本体4の周面に同時に食い込ませて、突起6を一対の食込み跡25の外側方と、一対の食込み跡25の間の3個所に形成するようにした。
【0091】
図33は、切断刃ブランク18の構成を変更した別の実施例を示す。そこでは、3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接して回転刃ブランク19を構成する。切断刃ブランク18は、ステンレス板材16にエッチング加工を施してシート状ブランク17を形成し、このシート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して、断面が部分円弧状となるように形成してある。3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持して支持ディスク5aの刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機で支持ディスク5aに溶接することにより、円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。
【0092】
図34は、切断刃ブランク18の形成法を変更した別の実施例を示す。そこでは、図34(a)に示すステンレス板材に打抜き加工を施して、図34(b)に示す一群の刃穴91を備えた1次ブランク92を形成する。次に、1次ブランク92に塑性加工を施して、断面がY字状の小刃93の一群を備えた2次ブランク94を形成する。小刃93の外面には鋭角の切刃95と逃縁96とが形成される。得られた2次ブランク94にロール加工(塑性加工)を施して、円筒状の切断刃ブランク18、あるいは図33で説明した部分円弧状の切断刃ブランク18を形成する。以後は、切断刃ブランク18を回転軸体2に外接して、先に説明したのと同様にして溶接する。
【0093】
図35および図36は、上記実施例1に係る回転刃1を内刃として備えるロータリー式の電気かみそりを示す。図35において電気かみそりは、本体部71と、本体部71で支持されるヘッド部72と、本体部71に装着される外枠73と、本体部71の後面側に配置されるきわ剃りユニット(図示していない)などで構成する。外枠73は電気かみそりの装飾性を向上するために設けてあり、本体部71と協同してグリップを構成する。外枠73の一側上部には、モーター74への通電状態をオン・オフするスイッチボタン75が設けてある。本体部71の内部には、2次電池76や回路基板77が組み込んである。回路基板77には、先のスイッチボタン75で切り換えられるスイッチや表示灯78用のLED、および制御回路や電源回路を構成する電子部品などが実装してある。
【0094】
ヘッド部72には、外刃80と回転刃(内刃)1とからなるメイン刃が設けてあり、さらに回転刃1を回転駆動するモーター74と、モーター74の回転動力を回転刃1に伝動する駆動構造などが設けてある。モーター74はヘッドフレーム81の下面に固定されて、本体部71の上部内面に収容してある。駆動構造は一群のギヤトレイン82で構成してあり、モーター74の縦軸まわりの回転動力を横軸まわりの回転動力に変換して回転刃1に伝動する。回転刃1は図36において矢印で示す向き(反時計回転方向)に回転駆動される。外刃80は、エッチング法あるいは電鋳法で形成されるシート状の網刃からなり、その前後縁が外刃ホルダー83で支持されて、逆U字状に保形してある。図36は、電鋳法で形成した外刃80を示しており、符号84は外刃80の切刃である。ヘッド部72は、本体部71で上下に移動可能に支持されており、両者71・72の間は防水パッキンでシールしてある。
【0095】
外刃ホルダー83は、ヘッドフレーム81に対して着脱自在に装着されて、図示していないロック構造で分離不能にロック保持してある。ヘッドフレーム81に設けた左右一対のロック解除ボタン85を同時に押し込み操作すると、ロック構造がロック解除されて、外刃ホルダー83をヘッドフレーム81から取り外して、回転刃1を露出させることができる。この状態で、回転刃1を水洗い洗浄することができる。回転刃1を洗浄水に浸漬して回転駆動させると、水流発生部8によって切断刃3の内部に水流を発生させて、切断刃3の内部に入り込んだ毛屑を効果的に洗い落とすことができる。したがって、毛屑が切断刃3の内部に残留するのを解消して、回転刃1の内部を衛生的な状態に維持できる。
【0096】
図37は、回転刃1を内刃として備える別の電気かみそりを示す。そこでは、回転刃1の周囲に、回転刃1の食い込み量を規制するガード体87を設けて、これら両者1・87をモーター動力で回転駆動するようにした。ガード体87はコイルばね状に形成してあり、コイル部を回転刃1の周面に巻き付けて、その両端が回転刃1に固定してある。このように、本発明の回転刃1は、外刃を備えていない電気かみそりにも適用できる。
【0097】
図38ないし図40は、回転刃1を備える電気かみそり以外の小型電気機器を示す。図38は、回転刃1を備える爪切りを示す。爪切りは、グリップを兼ねる本体部101の一端に円筒状のヘッド部102を設け、その内部にヘッド部102の筒軸心のまわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の筒周壁には半円状の切断窓106が開口してあり、この切断窓106を介して回転刃1がヘッド部102の外面に露出させてある。爪を切断する場合には、回転駆動している回転刃1を爪の先端に押し付けて、爪を少しずつ削り取る。
【0098】
図39は、回転刃1を備える毛玉取り器を示す。毛玉取り器は、グリップを兼ねる本体部101の一端に円筒状のヘッド部102を設け、その内部にヘッド部102の筒軸心のまわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の筒周壁には部分円弧状の切断窓106が開口してあり、この切断窓106を介して外刃80がヘッド部102の外面に露出させてある。毛玉は外刃80の刃穴から導入されて、外刃80の内面に摺接する回転刃1で切断される。この場合の外刃80および回転刃1は、爪切りの回転刃1に比べて軸心方向の長さが充分に大きくしてあり、したがって、回転刃1のニット生地に対する接触面積をより大きくして、毛玉を効果的に除去できる。
【0099】
図40は、回転刃1を備える角質除去器を示す。角質除去器は、グリップを兼ねる本体部101の一端にアーチ状のヘッド部102を設け、その内部に本体部101の機体中心軸と直交する軸まわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の周壁には切断窓106が切り欠き形成してあり、この切断窓106を介して回転刃1がヘッド部102の外面に露出させてある。角質を除去する場合には、回転駆動した状態の回転刃1を、かかとなどの角質部分に押し付けて、角質を少しずつ削り取る。
【0100】
上記の実施例以外に、回転軸体2は、軸本体4と、その両端寄りに固定した少なくとも2個のディスク5とで構成することができる。圧入用の突起6は、軸本体4の周面にステーキング加工を施して形成するのがコストが少なくて済む点で好ましいが、その必要はなく、転造加工や切削加工で形成することができる。ディスク5を軸本体4に挿通する前に、軸本体4に突起6を形成してもよく、この場合には、突起6に対応する逃げ溝を装填穴7の内面に設ける。
【0101】
ディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、突起6と装填穴7を圧嵌する回転軸体2においては、軸本体4を丸軸で形成する必要はなく、例えば多角形断面状の軸や、楕円状の軸体で軸本体4を形成することができる。ディスク5は軸本体4に対して1個ずつ圧嵌固定することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 回転刃
2 回転軸体
3 切断刃
4 軸本体
5 ディスク
5a 支持ディスク
5b 水流発生ディスク
6 突起
7 装填穴
8 水流発生部
8a 圧力発生壁
8b 導入壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が円弧状に折り曲げられた切断刃(3)と、切断刃(3)を支持する回転軸体(2)とを備えている回転刃であって、
回転軸体(2)は、軸本体(4)と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク(5)とを備えており、
ディスク(5)の周面に切断刃(3)が固定されており、
少なくとも一部のディスク(5)に水流発生部(8)が形成してあることを特徴とする回転刃。
【請求項2】
水流発生部(8)が、ディスク(5)の周縁部に形成した切欠で構成してある請求項1に記載の回転刃。
【請求項3】
水流発生部(8)が、ディスク(5)を貫通する貫通孔で構成してある請求項1に記載の回転刃。
【請求項4】
ディスク(5)が、切断刃(3)を支持する複数の支持ディスク(5a)と、水流発生部(8)が形成された複数の水流発生ディスク(5b)とで構成されており、
隣接する支持ディスク(5a・5a)の間に水流発生ディスク(5b)が配置してある請求項1から3のいずれかに記載の回転刃。
【請求項5】
水流発生ディスク(5b)の径寸法(Rb)が、支持ディスク(5a)の径寸法(Ra)よりも小さく設定してある請求項4に記載の回転刃。
【請求項6】
水流発生ディスク(5b)の厚み寸法(Tb)が、支持ディスク(5a)の厚み寸法(Ta)よりも大きく設定してある請求項4または5に記載の回転刃。
【請求項7】
水流発生部(8)が、回転方向上手側の圧力発生壁(8a)と回転方向下手側の導入壁(8b)とを備える切欠で構成されており、
ディスク(5)の中心と、圧力発生壁(8a)と導入壁(8b)との交点とを通る仮想基準線(L)を想定するとき、
仮想基準線(L)と導入壁(8b)とで挟まれる角度(β2)が、仮想基準線(L)と圧力発生壁(8a)とで挟まれる角(β1)よりも大きく設定されて、導入壁(8b)の長さが圧力発生壁(8a)の長さより大きく設定されており、
導入壁(8b)に臨んで、水の導入を容易化する導入空間(S)が設けてある請求項2、4、5、6のいずれかに記載の回転刃。
【請求項8】
導入壁(8b)が平坦面で形成してある請求項7に記載の回転刃。
【請求項9】
水流発生部(8)が、回転方向上手側の圧力発生壁(8a)と回転方向下手側の導入壁(8b)とを備える切欠で構成されており、
ディスク(5)の中心と圧力発生壁(8a)上の一点とを通る仮想基準線(M)を想定するとき、
圧力発生壁(8a)が、圧力発生壁(8a)上の前記一点を中心として、仮想基準線(M)に対してディスク(5)の回転方向と逆の方向に傾斜させてある請求項2、4、5、6のいずれかに記載の回転刃。
【請求項10】
水流発生部(8)が、回転方向上手側の圧力発生壁(8a)と回転方向下手側の導入壁(8b)とを備えるV字状の切欠で構成されて、ディスク(5)の周方向に等間隔に配置されており、
水流発生部(8)を構成する切欠の中心角(α1)が、該切欠に挟まれるディスク(5)の周面の中心角(α2)よりも小さく設定してある請求項2、4、5、6のいずれかに記載の回転刃。
【請求項11】
軸本体(4)に複数のディスク(5)を固定して、回転軸体(2)が構成されており、
ディスク(5)の中央に、軸本体(4)に挿通される装填穴(7)が形成されており、
ディスク(5)を軸本体(4)に挿通してディスク(5)を圧嵌姿勢に保持し、ディスク(5)と軸本体(4)を相対移動させて、軸本体(4)の周面に設けた複数の突起(6)と装填穴(7)とを互いに圧嵌することにより、ディスク(5)が軸本体(4)に固定してある請求項1から10のいずれかに記載の回転刃。
【請求項12】
切断刃(3)の前段体である切断刃ブランク(18)が、切刃(39)を備えた金属製のシート状ブランク(17)に塑性加工を施して形成されており、
切断刃ブランク(18)を回転軸体(2)に外接し、複数のディスク(5)の周面に溶接して構成してある請求項11に記載の回転刃。
【請求項13】
軸本体(4)がマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成されており、
ディスク(5)がオーステナイト系のステンレス鋼材で形成されており、
切断刃(3)がマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成されており、
回転軸体(2)に切断刃ブランク(18)を溶接して得られる回転刃ブランク(19)に焼入れ処理を施し、焼入れ後のブランクに研削処理を施して構成してある請求項11または12に記載の回転刃。
【請求項14】
水流発生部(8)を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸(P)が、ディスク(5)の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されており、
水流発生部(8)で発生された水流が、空隙中心軸(P)に沿って斜めに送出される請求項2から6のいずれかに記載の回転刃。
【請求項15】
水流発生部(8)の入口(8e)側であって、導入壁(8b)側の開口周縁部に水の導入凹部(50)が設けてある請求項14に記載の回転刃。
【請求項16】
導入凹部(50)が、水を圧力発生壁(8a)へ向かって流動案内する複数のガイド凹部(51)で構成してある請求項15に記載の回転刃。
【請求項17】
水流発生部(8)が、ステンレス板材(55)の両面にエッチング処理を施して形成されており、
導入凹部(50)が、ステンレス板材(55)の片面にハーフエッチング処理を施して形成されている請求項15または16に記載の回転刃。
【請求項18】
回転軸体(2)の軸方向中央部を境にして一側半部に配置されるディスク(5)と、他側半部に配置されるディスク(5)とが、各ディスク(5)の水流発生部(8)の空隙中心軸(P)が逆向きに傾斜するように配置されており、
回転軸体(2)が回転する状態において、一側半部のディスク(5)から送出される水流と、他側半部のディスク(5)から送出される水流とが、回転軸体(2)の中央部で衝突する請求項14から17のいずれかに記載の回転刃。
【請求項19】
切断刃(3)を支持する回転軸体(2)が、軸本体(4)と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク(5)とを備え、少なくとも一部のディスク(5)に水流発生部(8)が形成してある回転刃の製造方法であって、
水流発生部(8)を備えるディスク(5)を含む回転軸体(2)を形成する工程と、
切刃(39)を備えた金属製のシート状ブランク(17)に塑性加工を施して切断刃ブランク(18)を形成する工程と、
切断刃ブランク(18)を回転軸体(2)に外接し、ディスク(5)の周面に溶接して回転刃ブランク(19)を形成する工程と、
得られた回転刃ブランク(19)に焼入れ処理を施す工程と、
焼入れ後のブランクに研削処理を施す工程とからなる回転刃の製造方法。
【請求項1】
断面が円弧状に折り曲げられた切断刃(3)と、切断刃(3)を支持する回転軸体(2)とを備えている回転刃であって、
回転軸体(2)は、軸本体(4)と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク(5)とを備えており、
ディスク(5)の周面に切断刃(3)が固定されており、
少なくとも一部のディスク(5)に水流発生部(8)が形成してあることを特徴とする回転刃。
【請求項2】
水流発生部(8)が、ディスク(5)の周縁部に形成した切欠で構成してある請求項1に記載の回転刃。
【請求項3】
水流発生部(8)が、ディスク(5)を貫通する貫通孔で構成してある請求項1に記載の回転刃。
【請求項4】
ディスク(5)が、切断刃(3)を支持する複数の支持ディスク(5a)と、水流発生部(8)が形成された複数の水流発生ディスク(5b)とで構成されており、
隣接する支持ディスク(5a・5a)の間に水流発生ディスク(5b)が配置してある請求項1から3のいずれかに記載の回転刃。
【請求項5】
水流発生ディスク(5b)の径寸法(Rb)が、支持ディスク(5a)の径寸法(Ra)よりも小さく設定してある請求項4に記載の回転刃。
【請求項6】
水流発生ディスク(5b)の厚み寸法(Tb)が、支持ディスク(5a)の厚み寸法(Ta)よりも大きく設定してある請求項4または5に記載の回転刃。
【請求項7】
水流発生部(8)が、回転方向上手側の圧力発生壁(8a)と回転方向下手側の導入壁(8b)とを備える切欠で構成されており、
ディスク(5)の中心と、圧力発生壁(8a)と導入壁(8b)との交点とを通る仮想基準線(L)を想定するとき、
仮想基準線(L)と導入壁(8b)とで挟まれる角度(β2)が、仮想基準線(L)と圧力発生壁(8a)とで挟まれる角(β1)よりも大きく設定されて、導入壁(8b)の長さが圧力発生壁(8a)の長さより大きく設定されており、
導入壁(8b)に臨んで、水の導入を容易化する導入空間(S)が設けてある請求項2、4、5、6のいずれかに記載の回転刃。
【請求項8】
導入壁(8b)が平坦面で形成してある請求項7に記載の回転刃。
【請求項9】
水流発生部(8)が、回転方向上手側の圧力発生壁(8a)と回転方向下手側の導入壁(8b)とを備える切欠で構成されており、
ディスク(5)の中心と圧力発生壁(8a)上の一点とを通る仮想基準線(M)を想定するとき、
圧力発生壁(8a)が、圧力発生壁(8a)上の前記一点を中心として、仮想基準線(M)に対してディスク(5)の回転方向と逆の方向に傾斜させてある請求項2、4、5、6のいずれかに記載の回転刃。
【請求項10】
水流発生部(8)が、回転方向上手側の圧力発生壁(8a)と回転方向下手側の導入壁(8b)とを備えるV字状の切欠で構成されて、ディスク(5)の周方向に等間隔に配置されており、
水流発生部(8)を構成する切欠の中心角(α1)が、該切欠に挟まれるディスク(5)の周面の中心角(α2)よりも小さく設定してある請求項2、4、5、6のいずれかに記載の回転刃。
【請求項11】
軸本体(4)に複数のディスク(5)を固定して、回転軸体(2)が構成されており、
ディスク(5)の中央に、軸本体(4)に挿通される装填穴(7)が形成されており、
ディスク(5)を軸本体(4)に挿通してディスク(5)を圧嵌姿勢に保持し、ディスク(5)と軸本体(4)を相対移動させて、軸本体(4)の周面に設けた複数の突起(6)と装填穴(7)とを互いに圧嵌することにより、ディスク(5)が軸本体(4)に固定してある請求項1から10のいずれかに記載の回転刃。
【請求項12】
切断刃(3)の前段体である切断刃ブランク(18)が、切刃(39)を備えた金属製のシート状ブランク(17)に塑性加工を施して形成されており、
切断刃ブランク(18)を回転軸体(2)に外接し、複数のディスク(5)の周面に溶接して構成してある請求項11に記載の回転刃。
【請求項13】
軸本体(4)がマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成されており、
ディスク(5)がオーステナイト系のステンレス鋼材で形成されており、
切断刃(3)がマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成されており、
回転軸体(2)に切断刃ブランク(18)を溶接して得られる回転刃ブランク(19)に焼入れ処理を施し、焼入れ後のブランクに研削処理を施して構成してある請求項11または12に記載の回転刃。
【請求項14】
水流発生部(8)を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸(P)が、ディスク(5)の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されており、
水流発生部(8)で発生された水流が、空隙中心軸(P)に沿って斜めに送出される請求項2から6のいずれかに記載の回転刃。
【請求項15】
水流発生部(8)の入口(8e)側であって、導入壁(8b)側の開口周縁部に水の導入凹部(50)が設けてある請求項14に記載の回転刃。
【請求項16】
導入凹部(50)が、水を圧力発生壁(8a)へ向かって流動案内する複数のガイド凹部(51)で構成してある請求項15に記載の回転刃。
【請求項17】
水流発生部(8)が、ステンレス板材(55)の両面にエッチング処理を施して形成されており、
導入凹部(50)が、ステンレス板材(55)の片面にハーフエッチング処理を施して形成されている請求項15または16に記載の回転刃。
【請求項18】
回転軸体(2)の軸方向中央部を境にして一側半部に配置されるディスク(5)と、他側半部に配置されるディスク(5)とが、各ディスク(5)の水流発生部(8)の空隙中心軸(P)が逆向きに傾斜するように配置されており、
回転軸体(2)が回転する状態において、一側半部のディスク(5)から送出される水流と、他側半部のディスク(5)から送出される水流とが、回転軸体(2)の中央部で衝突する請求項14から17のいずれかに記載の回転刃。
【請求項19】
切断刃(3)を支持する回転軸体(2)が、軸本体(4)と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク(5)とを備え、少なくとも一部のディスク(5)に水流発生部(8)が形成してある回転刃の製造方法であって、
水流発生部(8)を備えるディスク(5)を含む回転軸体(2)を形成する工程と、
切刃(39)を備えた金属製のシート状ブランク(17)に塑性加工を施して切断刃ブランク(18)を形成する工程と、
切断刃ブランク(18)を回転軸体(2)に外接し、ディスク(5)の周面に溶接して回転刃ブランク(19)を形成する工程と、
得られた回転刃ブランク(19)に焼入れ処理を施す工程と、
焼入れ後のブランクに研削処理を施す工程とからなる回転刃の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公開番号】特開2012−245067(P2012−245067A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117417(P2011−117417)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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