回転刃
【課題】水中で回転駆動させる水洗い洗浄を行ったとき、付着物を効果的に除去できる回転刃を提供する。
【解決手段】断面が円弧状に折り曲げられた切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている回転刃であって、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを含む。ディスク5の周面に切断刃3が固定されており、少なくとも一部のディスク5に水流発生部8が形成されており、水流発生部8を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸が、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されている。切断刃3の内部で水流を発生させるので、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【解決手段】断面が円弧状に折り曲げられた切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている回転刃であって、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを含む。ディスク5の周面に切断刃3が固定されており、少なくとも一部のディスク5に水流発生部8が形成されており、水流発生部8を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸が、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されている。切断刃3の内部で水流を発生させるので、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー式の電気かみそりの内刃などに適用される回転刃に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内刃(回転刃)の構造に関して、スピンドルとスピンドルに固定される左右一対のディスクと、ディスクで径方向へ移動可能に支持される2個の切断刃と、切断刃を外刃へ向かって押し付け付勢するばねとで構成した内刃が公知である(特許文献1)。
【0003】
また、エッチング法あるいは電鋳法でシート状の内刃体を形成し、丸棒状の内刃支持軸の周面に内刃体を巻き付けて接着固定することが公知である(特許文献2)。内刃体の表面には、内刃支持軸の回転中心に対して斜めに傾くリブ状の刃部が一定間隔おきに形成してあり、隣接する刃部の間の薄肉部に小穴が一定間隔おきに形成してある。得られた内刃は、研削加工を施して刃部の先端に切刃を形成する。
【0004】
また、継ぎ目の無い円筒状の内刃体の製造方法が公知である(特許文献3)。シート状の電鋳母型に電気絶縁膜を形成して一次電着を行い、一次電着層を形成した電鋳母型を円筒状のホルダの内面に沿わせて嵌挿し、二次電着を行う。二次電着層を一次電着層から剥離して、電気絶縁膜に相当する模様の透孔部を備える円筒状の内刃体を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−152495号公報(第2頁左下欄3〜15行、第3図)
【特許文献2】実用新案登録第2502183号公報(第3頁左欄第28〜41行、第1図)
【特許文献3】特開昭59−28586号公報(第2頁左上欄15行〜左下欄7行、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転刃に付着した付着物を除去するには、回転刃を水中で回転駆動させる水洗い洗浄が効果的であり、さらに、回転刃で水を攪拌することにより、回転刃の周囲に水流を発生させると、より効果的に付着物を除去できる。しかし、特許文献1ないし特許文献3の回転刃によれば、切断刃で水を攪拌することはできるが、切断刃を支持する回転軸体で水を攪拌することはできない。つまり、上記各回転刃は水の攪拌能力に乏しく、強い水流を発生させることができず、したがって、回転刃に付着した付着物を除去しきれない。
【0007】
本発明の目的は、水中で回転駆動させる水洗い洗浄を行ったとき、付着物を効果的に除去できる回転刃を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている回転刃であって、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを含んでいる。ディスク5の周面に切断刃3が固定されており、少なくとも一部のディスク5に水流発生部8が形成している。水流発生部8を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸Pが、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されている。
【0009】
水流発生部8の入口8e側であって、導入壁8b側の開口周縁部に水の導入凹部50が設けられている。
【0010】
導入凹部50が、水を圧力発生壁8aへ向かって流動案内する複数のガイド凹部51で構成されている。
【0011】
水流発生部8が、ステンレス板材55の両面にエッチング処理を施して形成されており、導入凹部50が、ステンレス板材55の片面にハーフエッチング処理を施して形成されている。
【0012】
回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置されるディスク5と、他側半部に配置されるディスク5とが、各ディスク5の水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置されており、回転軸体2が回転する状態において、一側半部のディスク5から送出される水流と、他側半部のディスク5から送出される水流とが、回転軸体2の中央部で衝突する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、回転軸体2を構成する少なくとも一部のディスク5に水流発生部8を形成したので、回転刃1を水中で回転駆動させたとき、切断刃3の内部に水流を発生させることができる。この水流を切断刃3の内面や回転軸体2に衝突させることにより、これらに付着した付着物を効果的に除去できる。切断刃3の内部で水流を発生させるので、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0014】
水流発生部8の空隙中心軸Pを、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜させると、回転刃1を水中で回転させたとき、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出される。このように、回転中心軸に対して傾斜する水流を発生させると、径方向外側へ向かう水流を発生させる場合に比べて、回転軸体2の径方向中心部の軸本体4やディスク5に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0015】
水流発生部8の入口8e側であって導入壁8bの開口周縁部に水の導入凹部50を設けると、水を導入凹部50を介して水流発生部8内へスムーズに導入することができるので、水流を強化して洗浄効果を向上できる。
【0016】
導入凹部50を、圧力発生壁8aに向かう複数のガイド凹部51で構成すると、導入凹部50に導入された水を圧力発生壁8aへ確実に案内することができるので、より強力な水流を形成することができる。
【0017】
水流発生部8をエッチングで形成し、導入凹部50をハーフエッチングで形成すると、水流発生部8と導入凹部50を共にエッチング工程において形成することができるので、ディスク5の製造に要するコストを削減できる。また、導入凹部50をハーフエッチングで形成すると、他の加工法に比べて、導入凹部50の形状および位置を正確に形成できる。
【0018】
回転軸体2の一側半部のディスク5から送出される水流と、他側半部のディスク5から送出される水流とを、回転軸体2の中央部で衝突させると、衝突した水流が回転軸体2の中央部で径方向外方へ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本発明のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図2】実施例1に係る回転刃の分解斜視図である。
【図3】図1におけるE−E線断面図である。
【図4】図1におけるF−F線断面図である。
【図5】図4におけるG−G線断面図である。
【図6】エッチング工程におけるディスクブランクの平面図である。
【図7】エッチング工程で形成したディスクの断面図である。
【図8】エッチング工程におけるシート状ブランクの平面図である。
【図9】切断刃ブランクの加工例を示す平面図、および正面図である。
【図10】エッチング工程で形成した小刃の断面図である。
【図11】実施例1に係る圧入用の突起の形成例を示す説明図である。
【図12】実施例1に係るディスクの軸本体に対する圧嵌形態を示す断面図である。
【図13】実施例1に係るディスクと軸本体の圧嵌構造を示す一部破断正面図である。
【図14】図13におけるB−B線断面図である。
【図15】実施例2に係る回転刃の構造を示す断面図である。
【図16】実施例3に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図17】切断刃ブランクの別の実施例を示す回転刃の分解側面図である。
【図18】切断刃ブランクの別の形成法を示す説明図である。
【図19】実施例1に係る回転刃を適用した電気かみそりの正面図である。
【図20】図19におけるI−I線断面図である。
【図21】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図22】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図23】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図24】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例1) 図1ないし図7は、本発明に係る回転刃の実施例1を示す。図1および図2において回転刃1は、回転軸体2と、回転軸体2に固定される円筒状の切断刃3とで構成する。回転軸体2は、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される4個の支持ディスク(ディスク)5とで構成してある。
【0021】
軸本体4は、丸軸状のマルテンサイト系のステンレス鋼材である。支持ディスク(ディスク)5は、オーステナイト系のステンレス鋼材からなる板材をエッチング加工にて円盤状に形成してあり、その中央には軸本体4に挿通される装填穴7が同じくエッチング加工にて形成してある。図3、図4に示すように支持ディスク(ディスク)5の周面は、切断刃3を受ける刃受面9とされており、この刃受面9に切断刃3が溶接される。
【0022】
切断刃3は、マルテンサイト系のステンレス板材16にエッチング加工を施し、さらにロール加工(塑性加工)を施して円筒状に形成するが、加工の詳細については後述する。図8に示すようにエッチング加工を施したシート状ブランク17には、第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群と、両小刃11・12で囲まれる菱形の刃穴13の一群と、これらの周囲を囲む周枠とが形成してある。第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群とは、それぞれ回転軸体2の中心軸に対して互いに逆向きに傾斜する状態で形成してあり、これにより展開状態のシート状ブランク17の全体はエキスパンドメタル状の外観を呈している。
【0023】
次に回転刃1の製造方法の詳細を説明する。回転刃1の製造工程は、回転軸体2を形成する工程と、切断刃ブランク18を形成して回転軸体2に固定する工程に大別される。回転軸体2を形成する工程は、丸軸状の軸本体4に焼き入れ処理を施す前段熱処理工程と、支持ディスク(ディスク)5を作製する工程と、支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に挿通して仮組みする工程と、支持ディスク(ディスク)5を仮組みした状態のままで、軸本体4の周面に圧入用の突起6を形成する工程と、支持ディスク(ディスク)5と軸本体4を相対移動させて突起6を装填穴7に対して圧嵌する工程とからなる。
【0024】
(支持ディスク(ディスク)5を作製する工程)
本実施例のディスク5は、ステンレス板材55にエッチング加工を施して形成する。まず、図6および図7(a)に示すように、ステンレス板材55の表裏両面にレジスト膜56・57を形成する。各レジスト膜56・57には、ステンレス板材55のエッチング処理すべき領域に対応する開口が設けられている。レジスト膜56・57は、例えばステンレス板材55の表裏面に感光性樹脂層を形成したのち露光し、露光部を除去することにより形成される。
【0025】
水流発生部8に対応する表裏のレジスト膜56・57の開口58・59は、水流発生部8の回転方向に位置をずらして配置してある。したがって、開口58・59に対してエッチング処理を施すと、図7(b)に示すように、ステンレス板材55の表面から裏面へ向かって水流発生部8の回転方向に傾斜する圧力発生壁8a、導入壁8bおよび導入凹部50を形成することができる。ただし、表側のレジスト膜56の開口58の回転方向側、すなわち導入凹部50に対応する個所に対しては、ハーフエッチング処理を行い、エッチング液による蝕刻部分がステンレス板材55を貫通しないようにする。これにより、開口58に対して緩やかに傾斜する導入凹部50を形成することができる。以上のエッチング加工においては、図6に示すように多数個のディスクブランク60を同時に形成して、その周縁2個所に設けられた橋絡部61を切断して、ステンレス板材55から分離する。
【0026】
(圧入用の突起6を形成する工程)
図11に示すように、圧入用の突起6を形成する工程では、定置されたステーキング加工用の固定型20と、固定型20に向かって下降し、あるいは上昇するステーキング加工用の可動型21とで、軸本体4の周面に中心軸方向に長いリブ状の突起6を形成する。図11(b)に示すように、固定型20および可動型21の対向面の前後には、それぞれ鋭角の切刃22・23が形成してある。図11(a)に示すように、支持ディスク(ディスク)5が仮組みされた軸本体4を、固定型20の前後の切刃22に載置して、支持ディスク(ディスク)5を隣接する切刃22の間に位置させて、固定型20の側端に設けた位置決め枠24で軸本体4を位置決めする。この状態で、可動型21の切刃23を軸本体4の周面に食い込ませることにより、図11(c)に示すように、軸本体4の周方向の4個所にV字状に突出するリブ状の突起6を形成できる。突起6は、支持ディスク(ディスク)5の固定位置ごとに、軸本体4の中心軸方向に沿って一定間隔おきに断続的に形成する。支持ディスク(ディスク)5の固定位置における個々の突起6の位相位置は一定位置に揃えてある。突起6を形成するのと同時に、切刃22・23の食込み跡25が形成される。突起6の中心軸方向の長さは、支持ディスク(ディスク)5の厚み寸法Taの2.5倍とした。
【0027】
(圧入用の突起6を圧嵌する工程)
この工程では、図12に示すように、軸本体4に仮組みした状態の支持ディスク(ディスク)5を治具26の支持壁27で支持する。この状態で、軸本体4の下端面が治具26の下端のストッパー28に外接するまで、軸本体4を中心軸に沿って下向きに押し込むことにより、突起6と装填穴7を互いに圧嵌する。
【0028】
図13および図14に示すように、突起6と装填穴7を圧嵌することにより、装填穴7が通過した部分の突起6の殆どが装填穴7によって削り取られ、あるいは逆に装填穴7の一部が、残った突起6の基部側の圧潰面30で削り取られて、両者7・30が互いに密着する。また、突起6の塑性変形部31が装填穴7の周縁壁を受け止めて、それ以上ディスク5が中心軸方向へ移動するのを規制できる。
【0029】
上記のように、支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に挿通して仮組みする工程と、支持ディスク(ディスク)5を仮組みした状態のままで、軸本体4の周面に圧入用の突起6を形成する工程と、支持ディスク(ディスク)5と軸本体4を相対移動させて突起6を装填穴7に対して圧嵌する工程とを経て、回転軸体2を形成すると、支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に対して、より少ない手間で強固に、しかも精度よく固定できる。また、支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に溶接する場合に比べて、1回の圧嵌作業で複数の支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に簡便に固定でき、より少ないコストで回転軸体2を構成できる。
【0030】
切断刃ブランク18を形成する工程は、図8に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、シート状ブランク17を形成する工程と、図9に示すようにシート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して円筒状の切断刃ブランク18を形成する工程とからなる。こののち、切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接する工程を経て回転刃ブランク19を構成し、回転刃ブランク19に焼き入れ工程と研削工程を経て回転刃1を完成する。シート状ブランク17は、ステンレス板材に打抜き加工を施して形成してあってもよい。
【0031】
(シート状ブランク17を形成する工程)
この工程では、図8に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、切断刃3のシート状ブランク17を形成する。具体的には、厚みが0.3mmのステンレス板材16の表裏両面にエッチング処理を施して、第1小刃11や第2小刃12などを形成する。エッチング工程においては、図10に示すようにステンレス板材16の表裏両面にレジスト膜33を形成したのち露光し、露光部を除去して、非露光部に囲まれる板材表面をエッチング液で蝕刻する。このとき、多数個のシート状ブランク17を同時に形成して、その辺部に設けられた橋絡部34(図8参照)を切断して、ステンレス板材16から分離する。
【0032】
エッチング処理を施すことにより、図10に示す断面形状の第1小刃11および第2小刃12が形成される。図10に示すように第1小刃11および第2小刃12は、外面の切断面35と、内面のベース面36と、これら両者35・36の端縁間に形成される第1抉り面37、および第2抉り面38とで、5個の隅部を備えた異形断面状に形成される。第1抉り面37は、切断面35とベース面36との端縁間を抉る1個の内凹み面で形成してあり、切断面35と第1抉り面37とによって、矢印で示す切断面35の回転方向側に切刃39が形成される。また、切断面35と第2抉り面38とによって切断面35の回転方向逆側に逃縁40が形成される。第2抉り面38は二つの凹曲面でく字状に形成してある。
【0033】
(切断刃ブランク18を形成する工程)
この工程では、図9(a)・(b)に示すように、シート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して、円筒状の切断刃ブランク18を形成する。ロール加工は、下側に配置した2個のベースローラー42と、両ベースローラー42の間の上方に配置される加圧ローラー43とで行う。両ローラー42・43の間にシート状ブランク17を通すことにより、断面が円弧状に折り曲げられた円筒状の切断刃ブランク18を形成する。切断刃ブランク18は不完全円状に折り曲げられている。
【0034】
(切断刃ブランク18を溶接する工程)
この工程では、回転軸体2の支持ディスク(ディスク)5の周面に切断刃ブランク18を溶接する。詳しくは、円筒状の切断刃ブランク18を回転軸体2に外嵌し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持して支持ディスク(ディスク)5の刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機で支持ディスク(ディスク)5に溶接することにより、図1に示すような円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。
【0035】
(熱処理工程)
熱処理工程においては、回転刃ブランク19を約1000℃にまで加熱し、その状態を所定時間維持したのち、水および加熱された油で順に冷却して焼き入れを行う。これにより、切断刃3および軸本体4の金属組織をマルテンサイト化してその表面硬度を増強できる。回転刃ブランク19を加熱する過程では、レーザー溶接時に溶接部の周辺部で生じた熱による内部歪みを除去できる。必要に応じて焼き戻しを行う。
【0036】
(研削工程)
研削工程では、回転刃ブランク19の周面に粗研削加工と仕上げ研削加工とを順に施して、切断刃3の周面の真円度を向上し、さらに切刃39をシャープに仕上げる。粗研削加工では、溶接部の膨出表面を除去し、同時に切断刃3の周面を研削する。また、仕上げ研削加工では、切断刃3の周面の表面粗さが小さくなるように仕上げ研削を行って、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げる。粗研削加工では、腐食しやすい溶接部の膨出表面を除去するので、溶接部の腐食や割れなどを一掃して切断刃3の耐久性を向上できる。なお、回転刃1の真円度に対する要求仕様が低い場合には、研削工程は省略することができる。
【0037】
本実施例においては、軸本体4に圧嵌固定される4個の支持ディスク(ディスク)5のそれぞれに、水流発生部8および刃受面9を形成している。ここでの水流発生部8は、支持ディスク(ディスク)5を貫通する貫通孔で構成されて、各支持ディスク(ディスク)5に3個ずつ、支持ディスク(ディスク)5の周方向に等間隔に配置される。図5に示すように、水流発生部8を構成する貫通孔の空隙中心軸Pは、支持ディスク(ディスク)5の回転中心軸(厚み方向線)に対してねじれの位置関係となるように傾斜しており、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出され、回転軸方向に渦を巻くような水流が発生する。
【0038】
具体的には、各水流発生部8の回転方向逆側の圧力発生壁8aと、回転方向側の導入壁8bとが、回転軸体2の回転軸に対してねじれの位置関係となるように傾斜している。また、水流発生部8の入口8e側であって、導入壁8b側の開口周縁部には、水の導入凹部50が設けてある。導入凹部50は、水を圧力発生壁8aへ向かって流動案内する3個のガイド凹部51で構成してある。水流発生部8の入口8eから出口8fにかけて、導入凹部50および導入壁8bは、入口8eあるいは出口8fの開口面に対して、圧力発生壁8aよりも緩やかに傾斜している。
【0039】
本実施例の支持ディスク(ディスク)5を水中で図3および図4の矢印方向に回転させると、水流発生部8内の水が圧力発生壁8aに沿って図3の正面側(図4の背面側)へ押し出されるとともに、図3の背面側(図4の正面側)の水が導入凹部50を介して水流発生部8の貫通孔へ流れ込み、これにて、図3の背面側(図4の正面側)から水流発生部8の貫通孔を通って図3の正面側(図4の背面側)へ向かう、空隙中心軸Pに沿う斜めの水流が発生する。
【0040】
以上のように構成した回転刃1は、次の形態で実施できる。
断面円弧状に折り曲げられたシート状の切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている回転刃であって、
回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを含み、
ディスク5の周面に切断刃3が固定されており、
少なくとも一部のディスク5に水流発生部8が形成されており、
水流発生部8を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸Pが、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されていることを特徴とする。
【0041】
上記構成によれば、回転刃1を水中で回転させると、支持ディスク(ディスク)5の水流発生部8で水を攪拌して、切断刃3の内部に水流を発生させることができる。具体的には、圧力発生壁8aによって水流発生部8内の水が押し出されることにより、切断刃3の内面に沿う回転軸方向に渦を巻くような水流が発生する。この水流によって、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物が効果的に洗い落とされる。切断刃3の内部で水流を発生させるので、円筒籠状の回転刃1において除去し難い切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0042】
さらに、本実施例においては、回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置される2個の支持ディスク(ディスク)5と、他側半部に配置される2個の支持ディスク(ディスク)5とは、水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置してある。したがって、回転刃1を水中で回転させると、図1に示すように、軸方向中央部へ向かう二方向の水流が軸方向中央部で衝突し、回転刃1の径方向外方などへ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本実施例のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。
【0043】
以上のように構成した回転刃1は、次の形態で実施できる。
断面円弧状に折り曲げられたシート状の切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている円筒籠状の回転刃であって、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備える。ディスク5の周面に切断刃3を固定する。少なくとも一部のディスク5に、回転軸体2の回転軸方向の水流を発生させる水流発生部8を形成する。軸本体4の一側に配置されたディスク5の水流発生部8が発生させる水流と、軸本体4の他側に配置されたディスク5の水流発生部8が発生させる水流とを、切断刃3の内部で衝突させる。
【0044】
以上のように、軸本体4の一側からの水流と、軸本体4の他側からの水流とを、切断刃3の内部で衝突させると、水流を拡散させて、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0045】
本実施例の変更例として、例えば導入凹部50を省略して圧力発生壁8aのみを回転軸に対して傾斜させることができる。少なくとも圧力発生壁8aを傾斜させると、圧力発生壁8aに沿って水流発生部8を通過する水流を発生させることができる。
【0046】
また実施例1においては、水流発生部8を貫通孔で構成したが、図15に示すように水流発生部8を外周部が開放した切欠で構成することもできる(実施例2)。この場合にも、圧力発生壁8aを傾斜させることにより、同様の水流を発生させることができる。その他の構成は、実施例1と同様の内容なので、同じ部材には同じ符号を付して、その説明を省略している。
【0047】
(実施例3) 図16は、本発明に係る回転刃の実施例3を示しているが、そこでは、上記実施例1と異なる内容を主に説明し、上記実施例1と同じ部材には同じ符号を付して、その説明を省略した。つまり、説明を省略している内容は、上記実施例1と同様の内容である。
【0048】
図16において回転刃1は、回転軸体2と、回転軸体2に固定される円筒状の切断刃3とで構成する。回転軸体2は、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される5個の支持ディスク(ディスク)5aおよび4個の水流発生ディスク(ディスク)5bとで構成してあり、回転軸方向に沿って支持ディスク(ディスク)5aと水流発生ディスク(ディスク)5bとが交互に配置している。つまり、実施例1では、支持ディスク(ディスク)5が水流発生用ディスクを兼用したディスクであり、そのディスクのみを軸本体4に圧嵌固定した内容であったが、本実施例では、そのディスク5を便宜上、支持ディスク(ディスク)5aとし、支持ディスク(ディスク)5aと支持ディスク(ディスク)5aの間に、支持ディスク(ディスク)5aよりも径の小さい水流発生専用の水流発生ディスク(ディスク)5bを配置したものである。
【0049】
水流発生ディスク(ディスク)5bも、実施例1と同様にオーステナイト系のステンレス板材にエッチング加工を施して円盤状に形成している。また、実施例1と同様に、水流発生部8を構成する貫通孔の空隙中心軸Pは、支持ディスク(ディスク)5の回転中心軸(厚み方向線)に対してねじれの位置関係となるように傾斜しており、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出され、回転軸方向に渦を巻くような水流が発生する。
【0050】
水流発生ディスク(ディスク)5bを支持ディスク(ディスク)5aよりも小径にして、水流発生ディスク(ディスク)5bと切断刃3との間に隙間を設けると、水流発生ディスク(ディスク)5bの周縁部に付着物が溜まるのを抑制できるとともに、水流発生ディスク(ディスク)5bに邪魔されることなく切断対象を切断刃3の内部に導入できる。因みに、水流発生ディスク(ディスク)5bが支持ディスク(ディスク)5aと同径であると、水流発生ディスク(ディスク)5bの周面が切断刃3の内面に接触するので、水流発生ディスク(ディスク)5bの周縁部に付着物が溜まりやすくなるとともに、切断刃3の内部へ切断対象を導入する際に水流発生ディスク(ディスク)5bが邪魔になる。
【0051】
また、図16に示すように、水流発生ディスク(ディスク)5bの厚み寸法Tbは、支持ディスク(ディスク)5aの厚み寸法Taよりも大きく設定している。水流発生ディスク(ディスク)5bの厚み寸法を大きくすると、水流発生部8が発生させる水流を強化して、付着物の除去機能を向上できる。また、水流発生ディスク(ディスク)5bの回転慣性力を大きくして、高いフライホイール効果を発揮できる。つまり、水流発生ディスク(ディスク)5bを厚くして質量を大きくした分だけ、水流発生ディスク(ディスク)5bの回転慣性力を大きくして、切断刃3に作用する切断抵抗を効果的に相殺できる。したがって、回転刃1で剛毛を切断する場合など、切断刃3に大きな切断抵抗が作用する場合に、回転刃1の駆動回転数が瞬間的に低下するのをよく防止できる。なお、回転刃1の回転慣性力を大きくする目的であれば、水流発生ディスク(ディスク)5bに、水流発生部8を設けずに、単なる円盤状のディスク5として、支持ディスク(ディスク)5の水流発生部8のみによって水流を発生させてもよい。
【0052】
本実施例においても、回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置される2個の支持ディスク(ディスク)5a、水流発生ディスク(ディスク)5bと、他側半部に配置される2個の支持ディスク(ディスク)5a、水流発生ディスク(ディスク)5bとは、水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置してある。したがって、回転刃1を水中で回転させると、軸方向中央部へ向かう二方向の水流が軸方向中央部で衝突し、回転刃1の径方向外方などへ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本実施例のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。なお、中央にある支持ディスク(ディスク)5aは、空隙中心軸Pが傾斜していない回転軸方向の貫通孔となっている。もちろんどちらかに傾斜して、中央の支持ディスク(ディスク)5aに隣接する水流発生ディスク(ディスク)5bからの水流と衝突するようにしてもよい。その場合も中央部の概念に含まれるものとする。「中央部」の定義は軸方向に均等に三分割して、その中央の区画の領域を指すものとする。さらに、水流発生ディスク(ディスク)5bを備えていれば、支持ディスク(ディスク)5aには、必ずしも水流発生部8を設ける必要はない。つまり、支持ディスク、水流発生ディスク、慣性力発生用ディスクを複合的に軸本体4に固定されていれば、それらを総称してディスク5とし、少なくともその一部(ひとつ)に水流発生部8が設けられていれば、水流発生型回転刃1として機能するため、本願発明の範疇にある。或いは、支持ディスクのみ軸本体4に固定されてディスク5となっており、その中の少なくとも一部(ひとつ)に水流発生部8が設けられているものも本願発明の範疇にある。
【0053】
図17は、切断刃ブランク18の構成を変更した別の実施例を示す。そこでは、3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接して回転刃ブランク19を構成する。切断刃ブランク18は、ステンレス板材16にエッチング加工を施してシート状ブランク17を形成し、このシート状ブランク17に塑性加工を施して、湾曲した短冊状の切断刃ブランク18が形成される。つまり、切断刃ブランク(18)の断面が、実施例1と異なり、部分円弧状となっている。3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持して支持ディスク(ディスク)5aの刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機で支持ディスク(ディスク)5aに溶接することにより、円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。つまり、ここでの切断刃3についても、断面円弧状に折り曲げられたシート状の切断刃3として成る。
【0054】
図18は、切断刃ブランク18の形成法を変更した別の実施例を示す。そこでは、図18(a)に示すステンレス板材に打抜き加工を施して、図18(b)に示す一群の刃穴91を備えた1次ブランク92を形成する。次に、1次ブランク92に塑性加工を施して、断面がY字状の小刃93の一群を備えた2次ブランク94を形成する。小刃93の外面には鋭角の切刃95と逃縁96とが形成される。得られた2次ブランク94に塑性加工を施して、円筒状の切断刃ブランク18、あるいは図17で説明した部分円弧状の切断刃ブランク18を形成する。以後は、切断刃ブランク18を回転軸体2に外接して、先に説明したのと同様にして溶接する。
【0055】
図19および図20は、上記実施例1に係る回転刃1を内刃として備えるロータリー式の電気かみそりを示す。図19において電気かみそりは、本体部71と、本体部71で支持されるヘッド部72と、本体部71に装着される外枠73と、本体部71の後面側に配置されるきわ剃りユニット(図示していない)などで構成する。外枠73は電気かみそりの装飾性を向上するために設けてあり、本体部71と協同してグリップを構成する。外枠73の一側上部には、モーター74への通電状態をオン・オフするスイッチボタン75が設けてある。本体部71の内部には、2次電池76や回路基板77が組み込んである。回路基板77には、先のスイッチボタン75で切り換えられるスイッチや表示灯78用のLED、および制御回路や電源回路を構成する電子部品などが実装してある。
【0056】
ヘッド部72には、外刃80と回転刃(内刃)1とからなるメイン刃が設けてあり、さらに回転刃1を回転駆動するモーター74と、モーター74の回転動力を回転刃1に伝動する駆動構造などが設けてある。モーター74はヘッドフレーム81の下面に固定されて、本体部71の上部内面に収容してある。駆動構造は一群のギヤトレイン82で構成してあり、モーター74の縦軸まわりの回転動力を横軸まわりの回転動力に変換して回転刃1に伝動する。回転刃1は図20において矢印で示す向き(反時計回転方向)に回転駆動される。外刃80は、エッチング法あるいは電鋳法で形成されるシート状の網刃からなり、その前後縁が外刃ホルダー83で支持されて、逆U字状に保形してある。図36は、電鋳法で形成した外刃80を示しており、符号84は外刃80の切刃である。外刃80は、回転刃(内刃)1と協同してひげを切断する。ヘッド部72は、本体部71で上下に移動可能に支持されており、両者71・72の間は防水パッキンでシールしてある。
【0057】
外刃ホルダー83は、ヘッドフレーム81に対して着脱自在に装着されて、図示していないロック構造で分離不能にロック保持してある。ヘッドフレーム81に設けた左右一対のロック解除ボタン85を同時に押し込み操作すると、ロック構造がロック解除されて、外刃ホルダー83をヘッドフレーム81から取り外して、回転刃1を露出させることができる。この状態で、回転刃1を水洗い洗浄することができる。回転刃1を洗浄水に浸漬して回転駆動させると、水流発生部8によって切断刃3の内部に水流を発生させて、切断刃3の内部に入り込んだ毛屑を効果的に洗い落とすことができる。したがって、毛屑が切断刃3の内部に残留するのを解消して、回転刃1の内部を衛生的な状態に維持できる。
【0058】
図21は、回転刃1を内刃として備える別の電気かみそりを示す。そこでは、回転刃1の周囲に、回転刃1の食い込み量を規制するガード体87を設けて、これら両者1・87をモーター動力で回転駆動するようにした。ガード体87はコイルばね状に形成してあり、コイル部を回転刃1の周面に巻き付けて、その両端が回転刃1に固定してある。このように、本発明の回転刃1は、外刃を備えていない電気かみそりにも適用できる。
【0059】
図22ないし図24は、回転刃1を備える電気かみそり以外の小型電気機器を示す。図22は、回転刃1を備える爪切りを示す。爪切りは、グリップを兼ねる本体部101の一端に円筒状のヘッド部102を設け、その内部にヘッド部102の筒軸心のまわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の筒周壁には半円状の切断窓106が開口してあり、この切断窓106を介して回転刃1がヘッド部102の外面に露出させてある。爪を切断する場合には、回転駆動している回転刃1を爪の先端に押し付けて、爪を少しずつ削り取る。
【0060】
図23は、回転刃1を備える毛玉取り器を示す。毛玉取り器は、グリップを兼ねる本体部101の一端に円筒状のヘッド部102を設け、その内部にヘッド部102の筒軸心のまわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の筒周壁には部分円弧状の切断窓106が開口してあり、この切断窓106を介して外刃80がヘッド部102の外面に露出させてある。毛玉は外刃80の刃穴から導入されて、外刃80の内面に摺接する回転刃1で切断される。この場合の外刃80および回転刃1は、爪切りの回転刃1に比べて軸心方向の長さが充分に大きくしてあり、したがって、回転刃1のニット生地に対する接触面積をより大きくして、毛玉を効果的に除去できる。
【0061】
図24は、回転刃1を備える角質除去器を示す。角質除去器は、グリップを兼ねる本体部101の一端にアーチ状のヘッド部102を設け、その内部に本体部101の機体中心軸と直交する軸まわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の周壁には切断窓106が切り欠き形成してあり、この切断窓106を介して回転刃1がヘッド部102の外面に露出させてある。角質を除去する場合には、回転駆動した状態の回転刃1を、かかとなどの角質部分に押し付けて、角質を少しずつ削り取る。
【0062】
上記の実施例以外に、回転軸体2は、軸本体4と、その両端寄りに固定した少なくとも2個の支持ディスク(ディスク)5とで構成することができる。圧入用の突起6は、軸本体4の周面にステーキング加工を施して形成する方がコストが少なくて済む点で好ましいが、その必要はなく、転造加工や切削加工で形成することができる。支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に挿通する前に、軸本体4に突起6を形成してもよく、この場合には、突起6に対応する逃げ溝を装填穴7の内面に設ける。さらに、回転軸体2は、軸本体4に支持ディスク(ディスク)5を挿通後、溶接したものであってもよい。
【0063】
支持ディスク(ディスク)5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、突起6と装填穴7を圧嵌する回転軸体2においては、軸本体4を丸軸で形成する必要はなく、例えば多角形断面状の軸や、楕円状の軸体で軸本体4を形成することができる。支持ディスク(ディスク)5は軸本体4に対して1個ずつ圧嵌固定することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 回転刃
2 回転軸体
3 切断刃
4 軸本体
5 ディスク
5a 支持ディスク
5b 水流発生ディスク
6 突起
7 装填穴
8 水流発生部
8a 圧力発生壁
8b 導入壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー式の電気かみそりの内刃などに適用される回転刃に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内刃(回転刃)の構造に関して、スピンドルとスピンドルに固定される左右一対のディスクと、ディスクで径方向へ移動可能に支持される2個の切断刃と、切断刃を外刃へ向かって押し付け付勢するばねとで構成した内刃が公知である(特許文献1)。
【0003】
また、エッチング法あるいは電鋳法でシート状の内刃体を形成し、丸棒状の内刃支持軸の周面に内刃体を巻き付けて接着固定することが公知である(特許文献2)。内刃体の表面には、内刃支持軸の回転中心に対して斜めに傾くリブ状の刃部が一定間隔おきに形成してあり、隣接する刃部の間の薄肉部に小穴が一定間隔おきに形成してある。得られた内刃は、研削加工を施して刃部の先端に切刃を形成する。
【0004】
また、継ぎ目の無い円筒状の内刃体の製造方法が公知である(特許文献3)。シート状の電鋳母型に電気絶縁膜を形成して一次電着を行い、一次電着層を形成した電鋳母型を円筒状のホルダの内面に沿わせて嵌挿し、二次電着を行う。二次電着層を一次電着層から剥離して、電気絶縁膜に相当する模様の透孔部を備える円筒状の内刃体を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−152495号公報(第2頁左下欄3〜15行、第3図)
【特許文献2】実用新案登録第2502183号公報(第3頁左欄第28〜41行、第1図)
【特許文献3】特開昭59−28586号公報(第2頁左上欄15行〜左下欄7行、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転刃に付着した付着物を除去するには、回転刃を水中で回転駆動させる水洗い洗浄が効果的であり、さらに、回転刃で水を攪拌することにより、回転刃の周囲に水流を発生させると、より効果的に付着物を除去できる。しかし、特許文献1ないし特許文献3の回転刃によれば、切断刃で水を攪拌することはできるが、切断刃を支持する回転軸体で水を攪拌することはできない。つまり、上記各回転刃は水の攪拌能力に乏しく、強い水流を発生させることができず、したがって、回転刃に付着した付着物を除去しきれない。
【0007】
本発明の目的は、水中で回転駆動させる水洗い洗浄を行ったとき、付着物を効果的に除去できる回転刃を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている回転刃であって、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを含んでいる。ディスク5の周面に切断刃3が固定されており、少なくとも一部のディスク5に水流発生部8が形成している。水流発生部8を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸Pが、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されている。
【0009】
水流発生部8の入口8e側であって、導入壁8b側の開口周縁部に水の導入凹部50が設けられている。
【0010】
導入凹部50が、水を圧力発生壁8aへ向かって流動案内する複数のガイド凹部51で構成されている。
【0011】
水流発生部8が、ステンレス板材55の両面にエッチング処理を施して形成されており、導入凹部50が、ステンレス板材55の片面にハーフエッチング処理を施して形成されている。
【0012】
回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置されるディスク5と、他側半部に配置されるディスク5とが、各ディスク5の水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置されており、回転軸体2が回転する状態において、一側半部のディスク5から送出される水流と、他側半部のディスク5から送出される水流とが、回転軸体2の中央部で衝突する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、回転軸体2を構成する少なくとも一部のディスク5に水流発生部8を形成したので、回転刃1を水中で回転駆動させたとき、切断刃3の内部に水流を発生させることができる。この水流を切断刃3の内面や回転軸体2に衝突させることにより、これらに付着した付着物を効果的に除去できる。切断刃3の内部で水流を発生させるので、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0014】
水流発生部8の空隙中心軸Pを、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜させると、回転刃1を水中で回転させたとき、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出される。このように、回転中心軸に対して傾斜する水流を発生させると、径方向外側へ向かう水流を発生させる場合に比べて、回転軸体2の径方向中心部の軸本体4やディスク5に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0015】
水流発生部8の入口8e側であって導入壁8bの開口周縁部に水の導入凹部50を設けると、水を導入凹部50を介して水流発生部8内へスムーズに導入することができるので、水流を強化して洗浄効果を向上できる。
【0016】
導入凹部50を、圧力発生壁8aに向かう複数のガイド凹部51で構成すると、導入凹部50に導入された水を圧力発生壁8aへ確実に案内することができるので、より強力な水流を形成することができる。
【0017】
水流発生部8をエッチングで形成し、導入凹部50をハーフエッチングで形成すると、水流発生部8と導入凹部50を共にエッチング工程において形成することができるので、ディスク5の製造に要するコストを削減できる。また、導入凹部50をハーフエッチングで形成すると、他の加工法に比べて、導入凹部50の形状および位置を正確に形成できる。
【0018】
回転軸体2の一側半部のディスク5から送出される水流と、他側半部のディスク5から送出される水流とを、回転軸体2の中央部で衝突させると、衝突した水流が回転軸体2の中央部で径方向外方へ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本発明のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図2】実施例1に係る回転刃の分解斜視図である。
【図3】図1におけるE−E線断面図である。
【図4】図1におけるF−F線断面図である。
【図5】図4におけるG−G線断面図である。
【図6】エッチング工程におけるディスクブランクの平面図である。
【図7】エッチング工程で形成したディスクの断面図である。
【図8】エッチング工程におけるシート状ブランクの平面図である。
【図9】切断刃ブランクの加工例を示す平面図、および正面図である。
【図10】エッチング工程で形成した小刃の断面図である。
【図11】実施例1に係る圧入用の突起の形成例を示す説明図である。
【図12】実施例1に係るディスクの軸本体に対する圧嵌形態を示す断面図である。
【図13】実施例1に係るディスクと軸本体の圧嵌構造を示す一部破断正面図である。
【図14】図13におけるB−B線断面図である。
【図15】実施例2に係る回転刃の構造を示す断面図である。
【図16】実施例3に係る回転刃の構造を示す正面図、および要部の断面図である。
【図17】切断刃ブランクの別の実施例を示す回転刃の分解側面図である。
【図18】切断刃ブランクの別の形成法を示す説明図である。
【図19】実施例1に係る回転刃を適用した電気かみそりの正面図である。
【図20】図19におけるI−I線断面図である。
【図21】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図22】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図23】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【図24】回転刃のさらに別の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例1) 図1ないし図7は、本発明に係る回転刃の実施例1を示す。図1および図2において回転刃1は、回転軸体2と、回転軸体2に固定される円筒状の切断刃3とで構成する。回転軸体2は、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される4個の支持ディスク(ディスク)5とで構成してある。
【0021】
軸本体4は、丸軸状のマルテンサイト系のステンレス鋼材である。支持ディスク(ディスク)5は、オーステナイト系のステンレス鋼材からなる板材をエッチング加工にて円盤状に形成してあり、その中央には軸本体4に挿通される装填穴7が同じくエッチング加工にて形成してある。図3、図4に示すように支持ディスク(ディスク)5の周面は、切断刃3を受ける刃受面9とされており、この刃受面9に切断刃3が溶接される。
【0022】
切断刃3は、マルテンサイト系のステンレス板材16にエッチング加工を施し、さらにロール加工(塑性加工)を施して円筒状に形成するが、加工の詳細については後述する。図8に示すようにエッチング加工を施したシート状ブランク17には、第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群と、両小刃11・12で囲まれる菱形の刃穴13の一群と、これらの周囲を囲む周枠とが形成してある。第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群とは、それぞれ回転軸体2の中心軸に対して互いに逆向きに傾斜する状態で形成してあり、これにより展開状態のシート状ブランク17の全体はエキスパンドメタル状の外観を呈している。
【0023】
次に回転刃1の製造方法の詳細を説明する。回転刃1の製造工程は、回転軸体2を形成する工程と、切断刃ブランク18を形成して回転軸体2に固定する工程に大別される。回転軸体2を形成する工程は、丸軸状の軸本体4に焼き入れ処理を施す前段熱処理工程と、支持ディスク(ディスク)5を作製する工程と、支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に挿通して仮組みする工程と、支持ディスク(ディスク)5を仮組みした状態のままで、軸本体4の周面に圧入用の突起6を形成する工程と、支持ディスク(ディスク)5と軸本体4を相対移動させて突起6を装填穴7に対して圧嵌する工程とからなる。
【0024】
(支持ディスク(ディスク)5を作製する工程)
本実施例のディスク5は、ステンレス板材55にエッチング加工を施して形成する。まず、図6および図7(a)に示すように、ステンレス板材55の表裏両面にレジスト膜56・57を形成する。各レジスト膜56・57には、ステンレス板材55のエッチング処理すべき領域に対応する開口が設けられている。レジスト膜56・57は、例えばステンレス板材55の表裏面に感光性樹脂層を形成したのち露光し、露光部を除去することにより形成される。
【0025】
水流発生部8に対応する表裏のレジスト膜56・57の開口58・59は、水流発生部8の回転方向に位置をずらして配置してある。したがって、開口58・59に対してエッチング処理を施すと、図7(b)に示すように、ステンレス板材55の表面から裏面へ向かって水流発生部8の回転方向に傾斜する圧力発生壁8a、導入壁8bおよび導入凹部50を形成することができる。ただし、表側のレジスト膜56の開口58の回転方向側、すなわち導入凹部50に対応する個所に対しては、ハーフエッチング処理を行い、エッチング液による蝕刻部分がステンレス板材55を貫通しないようにする。これにより、開口58に対して緩やかに傾斜する導入凹部50を形成することができる。以上のエッチング加工においては、図6に示すように多数個のディスクブランク60を同時に形成して、その周縁2個所に設けられた橋絡部61を切断して、ステンレス板材55から分離する。
【0026】
(圧入用の突起6を形成する工程)
図11に示すように、圧入用の突起6を形成する工程では、定置されたステーキング加工用の固定型20と、固定型20に向かって下降し、あるいは上昇するステーキング加工用の可動型21とで、軸本体4の周面に中心軸方向に長いリブ状の突起6を形成する。図11(b)に示すように、固定型20および可動型21の対向面の前後には、それぞれ鋭角の切刃22・23が形成してある。図11(a)に示すように、支持ディスク(ディスク)5が仮組みされた軸本体4を、固定型20の前後の切刃22に載置して、支持ディスク(ディスク)5を隣接する切刃22の間に位置させて、固定型20の側端に設けた位置決め枠24で軸本体4を位置決めする。この状態で、可動型21の切刃23を軸本体4の周面に食い込ませることにより、図11(c)に示すように、軸本体4の周方向の4個所にV字状に突出するリブ状の突起6を形成できる。突起6は、支持ディスク(ディスク)5の固定位置ごとに、軸本体4の中心軸方向に沿って一定間隔おきに断続的に形成する。支持ディスク(ディスク)5の固定位置における個々の突起6の位相位置は一定位置に揃えてある。突起6を形成するのと同時に、切刃22・23の食込み跡25が形成される。突起6の中心軸方向の長さは、支持ディスク(ディスク)5の厚み寸法Taの2.5倍とした。
【0027】
(圧入用の突起6を圧嵌する工程)
この工程では、図12に示すように、軸本体4に仮組みした状態の支持ディスク(ディスク)5を治具26の支持壁27で支持する。この状態で、軸本体4の下端面が治具26の下端のストッパー28に外接するまで、軸本体4を中心軸に沿って下向きに押し込むことにより、突起6と装填穴7を互いに圧嵌する。
【0028】
図13および図14に示すように、突起6と装填穴7を圧嵌することにより、装填穴7が通過した部分の突起6の殆どが装填穴7によって削り取られ、あるいは逆に装填穴7の一部が、残った突起6の基部側の圧潰面30で削り取られて、両者7・30が互いに密着する。また、突起6の塑性変形部31が装填穴7の周縁壁を受け止めて、それ以上ディスク5が中心軸方向へ移動するのを規制できる。
【0029】
上記のように、支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に挿通して仮組みする工程と、支持ディスク(ディスク)5を仮組みした状態のままで、軸本体4の周面に圧入用の突起6を形成する工程と、支持ディスク(ディスク)5と軸本体4を相対移動させて突起6を装填穴7に対して圧嵌する工程とを経て、回転軸体2を形成すると、支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に対して、より少ない手間で強固に、しかも精度よく固定できる。また、支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に溶接する場合に比べて、1回の圧嵌作業で複数の支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に簡便に固定でき、より少ないコストで回転軸体2を構成できる。
【0030】
切断刃ブランク18を形成する工程は、図8に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、シート状ブランク17を形成する工程と、図9に示すようにシート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して円筒状の切断刃ブランク18を形成する工程とからなる。こののち、切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接する工程を経て回転刃ブランク19を構成し、回転刃ブランク19に焼き入れ工程と研削工程を経て回転刃1を完成する。シート状ブランク17は、ステンレス板材に打抜き加工を施して形成してあってもよい。
【0031】
(シート状ブランク17を形成する工程)
この工程では、図8に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、切断刃3のシート状ブランク17を形成する。具体的には、厚みが0.3mmのステンレス板材16の表裏両面にエッチング処理を施して、第1小刃11や第2小刃12などを形成する。エッチング工程においては、図10に示すようにステンレス板材16の表裏両面にレジスト膜33を形成したのち露光し、露光部を除去して、非露光部に囲まれる板材表面をエッチング液で蝕刻する。このとき、多数個のシート状ブランク17を同時に形成して、その辺部に設けられた橋絡部34(図8参照)を切断して、ステンレス板材16から分離する。
【0032】
エッチング処理を施すことにより、図10に示す断面形状の第1小刃11および第2小刃12が形成される。図10に示すように第1小刃11および第2小刃12は、外面の切断面35と、内面のベース面36と、これら両者35・36の端縁間に形成される第1抉り面37、および第2抉り面38とで、5個の隅部を備えた異形断面状に形成される。第1抉り面37は、切断面35とベース面36との端縁間を抉る1個の内凹み面で形成してあり、切断面35と第1抉り面37とによって、矢印で示す切断面35の回転方向側に切刃39が形成される。また、切断面35と第2抉り面38とによって切断面35の回転方向逆側に逃縁40が形成される。第2抉り面38は二つの凹曲面でく字状に形成してある。
【0033】
(切断刃ブランク18を形成する工程)
この工程では、図9(a)・(b)に示すように、シート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して、円筒状の切断刃ブランク18を形成する。ロール加工は、下側に配置した2個のベースローラー42と、両ベースローラー42の間の上方に配置される加圧ローラー43とで行う。両ローラー42・43の間にシート状ブランク17を通すことにより、断面が円弧状に折り曲げられた円筒状の切断刃ブランク18を形成する。切断刃ブランク18は不完全円状に折り曲げられている。
【0034】
(切断刃ブランク18を溶接する工程)
この工程では、回転軸体2の支持ディスク(ディスク)5の周面に切断刃ブランク18を溶接する。詳しくは、円筒状の切断刃ブランク18を回転軸体2に外嵌し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持して支持ディスク(ディスク)5の刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機で支持ディスク(ディスク)5に溶接することにより、図1に示すような円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。
【0035】
(熱処理工程)
熱処理工程においては、回転刃ブランク19を約1000℃にまで加熱し、その状態を所定時間維持したのち、水および加熱された油で順に冷却して焼き入れを行う。これにより、切断刃3および軸本体4の金属組織をマルテンサイト化してその表面硬度を増強できる。回転刃ブランク19を加熱する過程では、レーザー溶接時に溶接部の周辺部で生じた熱による内部歪みを除去できる。必要に応じて焼き戻しを行う。
【0036】
(研削工程)
研削工程では、回転刃ブランク19の周面に粗研削加工と仕上げ研削加工とを順に施して、切断刃3の周面の真円度を向上し、さらに切刃39をシャープに仕上げる。粗研削加工では、溶接部の膨出表面を除去し、同時に切断刃3の周面を研削する。また、仕上げ研削加工では、切断刃3の周面の表面粗さが小さくなるように仕上げ研削を行って、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げる。粗研削加工では、腐食しやすい溶接部の膨出表面を除去するので、溶接部の腐食や割れなどを一掃して切断刃3の耐久性を向上できる。なお、回転刃1の真円度に対する要求仕様が低い場合には、研削工程は省略することができる。
【0037】
本実施例においては、軸本体4に圧嵌固定される4個の支持ディスク(ディスク)5のそれぞれに、水流発生部8および刃受面9を形成している。ここでの水流発生部8は、支持ディスク(ディスク)5を貫通する貫通孔で構成されて、各支持ディスク(ディスク)5に3個ずつ、支持ディスク(ディスク)5の周方向に等間隔に配置される。図5に示すように、水流発生部8を構成する貫通孔の空隙中心軸Pは、支持ディスク(ディスク)5の回転中心軸(厚み方向線)に対してねじれの位置関係となるように傾斜しており、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出され、回転軸方向に渦を巻くような水流が発生する。
【0038】
具体的には、各水流発生部8の回転方向逆側の圧力発生壁8aと、回転方向側の導入壁8bとが、回転軸体2の回転軸に対してねじれの位置関係となるように傾斜している。また、水流発生部8の入口8e側であって、導入壁8b側の開口周縁部には、水の導入凹部50が設けてある。導入凹部50は、水を圧力発生壁8aへ向かって流動案内する3個のガイド凹部51で構成してある。水流発生部8の入口8eから出口8fにかけて、導入凹部50および導入壁8bは、入口8eあるいは出口8fの開口面に対して、圧力発生壁8aよりも緩やかに傾斜している。
【0039】
本実施例の支持ディスク(ディスク)5を水中で図3および図4の矢印方向に回転させると、水流発生部8内の水が圧力発生壁8aに沿って図3の正面側(図4の背面側)へ押し出されるとともに、図3の背面側(図4の正面側)の水が導入凹部50を介して水流発生部8の貫通孔へ流れ込み、これにて、図3の背面側(図4の正面側)から水流発生部8の貫通孔を通って図3の正面側(図4の背面側)へ向かう、空隙中心軸Pに沿う斜めの水流が発生する。
【0040】
以上のように構成した回転刃1は、次の形態で実施できる。
断面円弧状に折り曲げられたシート状の切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている回転刃であって、
回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを含み、
ディスク5の周面に切断刃3が固定されており、
少なくとも一部のディスク5に水流発生部8が形成されており、
水流発生部8を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸Pが、ディスク5の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されていることを特徴とする。
【0041】
上記構成によれば、回転刃1を水中で回転させると、支持ディスク(ディスク)5の水流発生部8で水を攪拌して、切断刃3の内部に水流を発生させることができる。具体的には、圧力発生壁8aによって水流発生部8内の水が押し出されることにより、切断刃3の内面に沿う回転軸方向に渦を巻くような水流が発生する。この水流によって、切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物が効果的に洗い落とされる。切断刃3の内部で水流を発生させるので、円筒籠状の回転刃1において除去し難い切断刃3の内面や回転軸体2に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0042】
さらに、本実施例においては、回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置される2個の支持ディスク(ディスク)5と、他側半部に配置される2個の支持ディスク(ディスク)5とは、水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置してある。したがって、回転刃1を水中で回転させると、図1に示すように、軸方向中央部へ向かう二方向の水流が軸方向中央部で衝突し、回転刃1の径方向外方などへ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本実施例のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。
【0043】
以上のように構成した回転刃1は、次の形態で実施できる。
断面円弧状に折り曲げられたシート状の切断刃3と、切断刃3を支持する回転軸体2とを備えている円筒籠状の回転刃であって、回転軸体2は、軸本体4と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク5とを備える。ディスク5の周面に切断刃3を固定する。少なくとも一部のディスク5に、回転軸体2の回転軸方向の水流を発生させる水流発生部8を形成する。軸本体4の一側に配置されたディスク5の水流発生部8が発生させる水流と、軸本体4の他側に配置されたディスク5の水流発生部8が発生させる水流とを、切断刃3の内部で衝突させる。
【0044】
以上のように、軸本体4の一側からの水流と、軸本体4の他側からの水流とを、切断刃3の内部で衝突させると、水流を拡散させて、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。
【0045】
本実施例の変更例として、例えば導入凹部50を省略して圧力発生壁8aのみを回転軸に対して傾斜させることができる。少なくとも圧力発生壁8aを傾斜させると、圧力発生壁8aに沿って水流発生部8を通過する水流を発生させることができる。
【0046】
また実施例1においては、水流発生部8を貫通孔で構成したが、図15に示すように水流発生部8を外周部が開放した切欠で構成することもできる(実施例2)。この場合にも、圧力発生壁8aを傾斜させることにより、同様の水流を発生させることができる。その他の構成は、実施例1と同様の内容なので、同じ部材には同じ符号を付して、その説明を省略している。
【0047】
(実施例3) 図16は、本発明に係る回転刃の実施例3を示しているが、そこでは、上記実施例1と異なる内容を主に説明し、上記実施例1と同じ部材には同じ符号を付して、その説明を省略した。つまり、説明を省略している内容は、上記実施例1と同様の内容である。
【0048】
図16において回転刃1は、回転軸体2と、回転軸体2に固定される円筒状の切断刃3とで構成する。回転軸体2は、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される5個の支持ディスク(ディスク)5aおよび4個の水流発生ディスク(ディスク)5bとで構成してあり、回転軸方向に沿って支持ディスク(ディスク)5aと水流発生ディスク(ディスク)5bとが交互に配置している。つまり、実施例1では、支持ディスク(ディスク)5が水流発生用ディスクを兼用したディスクであり、そのディスクのみを軸本体4に圧嵌固定した内容であったが、本実施例では、そのディスク5を便宜上、支持ディスク(ディスク)5aとし、支持ディスク(ディスク)5aと支持ディスク(ディスク)5aの間に、支持ディスク(ディスク)5aよりも径の小さい水流発生専用の水流発生ディスク(ディスク)5bを配置したものである。
【0049】
水流発生ディスク(ディスク)5bも、実施例1と同様にオーステナイト系のステンレス板材にエッチング加工を施して円盤状に形成している。また、実施例1と同様に、水流発生部8を構成する貫通孔の空隙中心軸Pは、支持ディスク(ディスク)5の回転中心軸(厚み方向線)に対してねじれの位置関係となるように傾斜しており、水流発生部8で発生された水流が、空隙中心軸Pに沿って斜めに送出され、回転軸方向に渦を巻くような水流が発生する。
【0050】
水流発生ディスク(ディスク)5bを支持ディスク(ディスク)5aよりも小径にして、水流発生ディスク(ディスク)5bと切断刃3との間に隙間を設けると、水流発生ディスク(ディスク)5bの周縁部に付着物が溜まるのを抑制できるとともに、水流発生ディスク(ディスク)5bに邪魔されることなく切断対象を切断刃3の内部に導入できる。因みに、水流発生ディスク(ディスク)5bが支持ディスク(ディスク)5aと同径であると、水流発生ディスク(ディスク)5bの周面が切断刃3の内面に接触するので、水流発生ディスク(ディスク)5bの周縁部に付着物が溜まりやすくなるとともに、切断刃3の内部へ切断対象を導入する際に水流発生ディスク(ディスク)5bが邪魔になる。
【0051】
また、図16に示すように、水流発生ディスク(ディスク)5bの厚み寸法Tbは、支持ディスク(ディスク)5aの厚み寸法Taよりも大きく設定している。水流発生ディスク(ディスク)5bの厚み寸法を大きくすると、水流発生部8が発生させる水流を強化して、付着物の除去機能を向上できる。また、水流発生ディスク(ディスク)5bの回転慣性力を大きくして、高いフライホイール効果を発揮できる。つまり、水流発生ディスク(ディスク)5bを厚くして質量を大きくした分だけ、水流発生ディスク(ディスク)5bの回転慣性力を大きくして、切断刃3に作用する切断抵抗を効果的に相殺できる。したがって、回転刃1で剛毛を切断する場合など、切断刃3に大きな切断抵抗が作用する場合に、回転刃1の駆動回転数が瞬間的に低下するのをよく防止できる。なお、回転刃1の回転慣性力を大きくする目的であれば、水流発生ディスク(ディスク)5bに、水流発生部8を設けずに、単なる円盤状のディスク5として、支持ディスク(ディスク)5の水流発生部8のみによって水流を発生させてもよい。
【0052】
本実施例においても、回転軸体2の軸方向中央部を境にして一側半部に配置される2個の支持ディスク(ディスク)5a、水流発生ディスク(ディスク)5bと、他側半部に配置される2個の支持ディスク(ディスク)5a、水流発生ディスク(ディスク)5bとは、水流発生部8の空隙中心軸Pが逆向きに傾斜するように配置してある。したがって、回転刃1を水中で回転させると、軸方向中央部へ向かう二方向の水流が軸方向中央部で衝突し、回転刃1の径方向外方などへ拡散する。このように水流を拡散させることにより、回転軸体2や切断刃3の様々な個所に付着した付着物を効果的に除去できる。また、回転刃1の軸方向中央部は、最も頻繁に切断対象の切断に使われるので、切断された切断対象が付着して溜まりやすいが、本実施例のように軸方向中央部で水流を衝突・拡散させると、軸方向中央部に溜まった付着物を効果的に除去することができる。なお、中央にある支持ディスク(ディスク)5aは、空隙中心軸Pが傾斜していない回転軸方向の貫通孔となっている。もちろんどちらかに傾斜して、中央の支持ディスク(ディスク)5aに隣接する水流発生ディスク(ディスク)5bからの水流と衝突するようにしてもよい。その場合も中央部の概念に含まれるものとする。「中央部」の定義は軸方向に均等に三分割して、その中央の区画の領域を指すものとする。さらに、水流発生ディスク(ディスク)5bを備えていれば、支持ディスク(ディスク)5aには、必ずしも水流発生部8を設ける必要はない。つまり、支持ディスク、水流発生ディスク、慣性力発生用ディスクを複合的に軸本体4に固定されていれば、それらを総称してディスク5とし、少なくともその一部(ひとつ)に水流発生部8が設けられていれば、水流発生型回転刃1として機能するため、本願発明の範疇にある。或いは、支持ディスクのみ軸本体4に固定されてディスク5となっており、その中の少なくとも一部(ひとつ)に水流発生部8が設けられているものも本願発明の範疇にある。
【0053】
図17は、切断刃ブランク18の構成を変更した別の実施例を示す。そこでは、3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接して回転刃ブランク19を構成する。切断刃ブランク18は、ステンレス板材16にエッチング加工を施してシート状ブランク17を形成し、このシート状ブランク17に塑性加工を施して、湾曲した短冊状の切断刃ブランク18が形成される。つまり、切断刃ブランク(18)の断面が、実施例1と異なり、部分円弧状となっている。3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持して支持ディスク(ディスク)5aの刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機で支持ディスク(ディスク)5aに溶接することにより、円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。つまり、ここでの切断刃3についても、断面円弧状に折り曲げられたシート状の切断刃3として成る。
【0054】
図18は、切断刃ブランク18の形成法を変更した別の実施例を示す。そこでは、図18(a)に示すステンレス板材に打抜き加工を施して、図18(b)に示す一群の刃穴91を備えた1次ブランク92を形成する。次に、1次ブランク92に塑性加工を施して、断面がY字状の小刃93の一群を備えた2次ブランク94を形成する。小刃93の外面には鋭角の切刃95と逃縁96とが形成される。得られた2次ブランク94に塑性加工を施して、円筒状の切断刃ブランク18、あるいは図17で説明した部分円弧状の切断刃ブランク18を形成する。以後は、切断刃ブランク18を回転軸体2に外接して、先に説明したのと同様にして溶接する。
【0055】
図19および図20は、上記実施例1に係る回転刃1を内刃として備えるロータリー式の電気かみそりを示す。図19において電気かみそりは、本体部71と、本体部71で支持されるヘッド部72と、本体部71に装着される外枠73と、本体部71の後面側に配置されるきわ剃りユニット(図示していない)などで構成する。外枠73は電気かみそりの装飾性を向上するために設けてあり、本体部71と協同してグリップを構成する。外枠73の一側上部には、モーター74への通電状態をオン・オフするスイッチボタン75が設けてある。本体部71の内部には、2次電池76や回路基板77が組み込んである。回路基板77には、先のスイッチボタン75で切り換えられるスイッチや表示灯78用のLED、および制御回路や電源回路を構成する電子部品などが実装してある。
【0056】
ヘッド部72には、外刃80と回転刃(内刃)1とからなるメイン刃が設けてあり、さらに回転刃1を回転駆動するモーター74と、モーター74の回転動力を回転刃1に伝動する駆動構造などが設けてある。モーター74はヘッドフレーム81の下面に固定されて、本体部71の上部内面に収容してある。駆動構造は一群のギヤトレイン82で構成してあり、モーター74の縦軸まわりの回転動力を横軸まわりの回転動力に変換して回転刃1に伝動する。回転刃1は図20において矢印で示す向き(反時計回転方向)に回転駆動される。外刃80は、エッチング法あるいは電鋳法で形成されるシート状の網刃からなり、その前後縁が外刃ホルダー83で支持されて、逆U字状に保形してある。図36は、電鋳法で形成した外刃80を示しており、符号84は外刃80の切刃である。外刃80は、回転刃(内刃)1と協同してひげを切断する。ヘッド部72は、本体部71で上下に移動可能に支持されており、両者71・72の間は防水パッキンでシールしてある。
【0057】
外刃ホルダー83は、ヘッドフレーム81に対して着脱自在に装着されて、図示していないロック構造で分離不能にロック保持してある。ヘッドフレーム81に設けた左右一対のロック解除ボタン85を同時に押し込み操作すると、ロック構造がロック解除されて、外刃ホルダー83をヘッドフレーム81から取り外して、回転刃1を露出させることができる。この状態で、回転刃1を水洗い洗浄することができる。回転刃1を洗浄水に浸漬して回転駆動させると、水流発生部8によって切断刃3の内部に水流を発生させて、切断刃3の内部に入り込んだ毛屑を効果的に洗い落とすことができる。したがって、毛屑が切断刃3の内部に残留するのを解消して、回転刃1の内部を衛生的な状態に維持できる。
【0058】
図21は、回転刃1を内刃として備える別の電気かみそりを示す。そこでは、回転刃1の周囲に、回転刃1の食い込み量を規制するガード体87を設けて、これら両者1・87をモーター動力で回転駆動するようにした。ガード体87はコイルばね状に形成してあり、コイル部を回転刃1の周面に巻き付けて、その両端が回転刃1に固定してある。このように、本発明の回転刃1は、外刃を備えていない電気かみそりにも適用できる。
【0059】
図22ないし図24は、回転刃1を備える電気かみそり以外の小型電気機器を示す。図22は、回転刃1を備える爪切りを示す。爪切りは、グリップを兼ねる本体部101の一端に円筒状のヘッド部102を設け、その内部にヘッド部102の筒軸心のまわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の筒周壁には半円状の切断窓106が開口してあり、この切断窓106を介して回転刃1がヘッド部102の外面に露出させてある。爪を切断する場合には、回転駆動している回転刃1を爪の先端に押し付けて、爪を少しずつ削り取る。
【0060】
図23は、回転刃1を備える毛玉取り器を示す。毛玉取り器は、グリップを兼ねる本体部101の一端に円筒状のヘッド部102を設け、その内部にヘッド部102の筒軸心のまわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の筒周壁には部分円弧状の切断窓106が開口してあり、この切断窓106を介して外刃80がヘッド部102の外面に露出させてある。毛玉は外刃80の刃穴から導入されて、外刃80の内面に摺接する回転刃1で切断される。この場合の外刃80および回転刃1は、爪切りの回転刃1に比べて軸心方向の長さが充分に大きくしてあり、したがって、回転刃1のニット生地に対する接触面積をより大きくして、毛玉を効果的に除去できる。
【0061】
図24は、回転刃1を備える角質除去器を示す。角質除去器は、グリップを兼ねる本体部101の一端にアーチ状のヘッド部102を設け、その内部に本体部101の機体中心軸と直交する軸まわりに回転する回転刃1を配置して、本体部101に収容したモーター103で回転刃1を回転駆動するようにした。符号104は2次電池、符号105はモーター103を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部102の周壁には切断窓106が切り欠き形成してあり、この切断窓106を介して回転刃1がヘッド部102の外面に露出させてある。角質を除去する場合には、回転駆動した状態の回転刃1を、かかとなどの角質部分に押し付けて、角質を少しずつ削り取る。
【0062】
上記の実施例以外に、回転軸体2は、軸本体4と、その両端寄りに固定した少なくとも2個の支持ディスク(ディスク)5とで構成することができる。圧入用の突起6は、軸本体4の周面にステーキング加工を施して形成する方がコストが少なくて済む点で好ましいが、その必要はなく、転造加工や切削加工で形成することができる。支持ディスク(ディスク)5を軸本体4に挿通する前に、軸本体4に突起6を形成してもよく、この場合には、突起6に対応する逃げ溝を装填穴7の内面に設ける。さらに、回転軸体2は、軸本体4に支持ディスク(ディスク)5を挿通後、溶接したものであってもよい。
【0063】
支持ディスク(ディスク)5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、突起6と装填穴7を圧嵌する回転軸体2においては、軸本体4を丸軸で形成する必要はなく、例えば多角形断面状の軸や、楕円状の軸体で軸本体4を形成することができる。支持ディスク(ディスク)5は軸本体4に対して1個ずつ圧嵌固定することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 回転刃
2 回転軸体
3 切断刃
4 軸本体
5 ディスク
5a 支持ディスク
5b 水流発生ディスク
6 突起
7 装填穴
8 水流発生部
8a 圧力発生壁
8b 導入壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断刃(3)と、切断刃(3)を支持する回転軸体(2)とを備えている回転刃であって、
回転軸体(2)は、軸本体(4)と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク(5)とを含み、
ディスク(5)の周面に切断刃(3)が固定されており、
少なくとも一部のディスク(5)に水流発生部(8)が形成されており、
水流発生部(8)を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸(P)が、ディスク(5)の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されていることを特徴とする回転刃。
【請求項2】
水流発生部(8)の入口(8e)側であって、導入壁(8b)側の開口周縁部に水の導入凹部(50)が設けられている請求項2に記載の回転刃。
【請求項3】
導入凹部(50)が、水を圧力発生壁(8a)へ向かって流動案内する複数のガイド凹部(51)で構成されている請求項2に記載の回転刃。
【請求項4】
水流発生部(8)が、ステンレス板材(55)の両面にエッチング処理を施して形成されており、
導入凹部(50)が、ステンレス板材(55)の片面にハーフエッチング処理を施して形成されている請求項2または3に記載の回転刃。
【請求項5】
回転軸体(2)の軸方向中央部を境にして一側半部に配置されるディスク(5)と、他側半部に配置されるディスク(5)とが、各ディスク(5)の水流発生部(8)の空隙中心軸(P)が逆向きに傾斜するように配置されており、
回転軸体(2)が回転する状態において、一側半部のディスク(5)から送出される水流と、他側半部のディスク(5)から送出される水流とが、回転軸体(2)の中央部で衝突する請求項1から4のいずれかひとつに記載の回転刃。
【請求項1】
切断刃(3)と、切断刃(3)を支持する回転軸体(2)とを備えている回転刃であって、
回転軸体(2)は、軸本体(4)と、回転軸方向に並ぶ複数のディスク(5)とを含み、
ディスク(5)の周面に切断刃(3)が固定されており、
少なくとも一部のディスク(5)に水流発生部(8)が形成されており、
水流発生部(8)を構成する切欠ないし貫通孔の空隙中心軸(P)が、ディスク(5)の回転中心軸に対して傾斜する状態で形成されていることを特徴とする回転刃。
【請求項2】
水流発生部(8)の入口(8e)側であって、導入壁(8b)側の開口周縁部に水の導入凹部(50)が設けられている請求項2に記載の回転刃。
【請求項3】
導入凹部(50)が、水を圧力発生壁(8a)へ向かって流動案内する複数のガイド凹部(51)で構成されている請求項2に記載の回転刃。
【請求項4】
水流発生部(8)が、ステンレス板材(55)の両面にエッチング処理を施して形成されており、
導入凹部(50)が、ステンレス板材(55)の片面にハーフエッチング処理を施して形成されている請求項2または3に記載の回転刃。
【請求項5】
回転軸体(2)の軸方向中央部を境にして一側半部に配置されるディスク(5)と、他側半部に配置されるディスク(5)とが、各ディスク(5)の水流発生部(8)の空隙中心軸(P)が逆向きに傾斜するように配置されており、
回転軸体(2)が回転する状態において、一側半部のディスク(5)から送出される水流と、他側半部のディスク(5)から送出される水流とが、回転軸体(2)の中央部で衝突する請求項1から4のいずれかひとつに記載の回転刃。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
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【図10】
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【図13】
【図14】
【図15】
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【図21】
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【図24】
【公開番号】特開2013−17575(P2013−17575A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151699(P2011−151699)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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