説明

回転工具

【課題】冷却風の流通経路を隔離することができる回転工具を提供する。
【解決手段】筒状の出力部12と、この出力部12の下部に前記出力部12と略直交する方向に延びるグリップ部13と、を備えた回転工具10において、前記出力部12には、モータ15と、前記モータ15と同軸上に配置された冷却ファン17と、を収容し、前記グリップ部13には、前記モータ15を作動させるためのトリガスイッチ30を収容し、前記トリガスイッチ30の外壁面31aと前記グリップ部13のハウジング内壁面11aとの間に弾性部材33を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インパクトドライバなどの回転工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インパクトドライバなどの回転工具には冷却ファンが設けられている。この冷却ファンは、モータや制御基板を冷却するための冷却風を生成するものであり、ハウジングに設けられた吸気孔から外部の冷たい空気を吸い込み、この冷たい空気でモータや制御基板を冷却したのち、冷却に使用した空気をハウジングに設けられた排気孔より排気する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−142801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の回転工具では、モータや冷却ファンが配置された筒状の出力部がハウジング下部と連通しているため、冷却ファンが作動したときに吸気孔以外の場所から空気が吸い込まれるという問題があった。例えば、トリガスイッチとハウジングとの間にできた隙間などから空気が吸い込まれることがあった。
【0005】
このように吸気孔以外の場所から空気が吸い込まれると、冷却効率が低下したり、冷却風の流通経路外に粉塵が蓄積するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、ハウジングの内部において冷却風の流通経路を隔離することができる回転工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0008】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の回転工具は、筒状の出力部と、この出力部の下部に前記出力部と略直交する方向に延びるグリップ部と、を備えた回転工具であって、前記出力部には、モータと、前記モータと同軸上に配置された冷却ファンと、が収容され、前記グリップ部には、前記モータを作動させるためのトリガスイッチが収容され、前記トリガスイッチの外壁面と前記グリップ部のハウジング内壁面との間に弾性部材を設けたことを特徴とする。
【0010】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0011】
すなわち、前記弾性体はスポンジ部材であることを特徴とする。
【0012】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、前記スポンジ部材は前記トリガスイッチの外周部に固定されていることを特徴とする。
【0014】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項3記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0015】
すなわち、前記スポンジ部材によってハウジング内部の電線を前記スイッチ本体に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、トリガスイッチの外壁面とグリップ部のハウジング内壁面との間に弾性部材を設けたので、この弾性部材によってハウジングの内部に出力部とグリップ部との間に隔壁が形成されている。このように隔壁が形成されていることによって、出力部側の冷却ファンが回転したときにグリップ部側から空気が吸い込まれず、吸気孔から正しく空気が吸い込まれるため、冷却効率が低下するという問題がなく、また、冷却風の流通経路外に粉塵が蓄積するという問題もない。
【0017】
また、弾性部材がクッションとなってトリガスイッチを衝撃から守ることができるため、トリガスイッチの耐久性を向上させることができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記弾性体がスポンジ部材であるため、変形し易く、ハウジング内部の形状が複雑な場合でも容易に変形し、トリガスイッチの外壁とグリップ部のハウジング内壁との間の間隙を有効に埋めることができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、前記スポンジ部材は前記トリガスイッチの外周部に固定されているため、スポンジ部材を固定したトリガスイッチをハウジング内部に取り付けるだけで冷却風の流通経路を隔離することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は上記の通りであり、前記スポンジ部材によってハウジング内部の電線を前記スイッチ本体に固定したため、電線をスポンジ部材でまとめることができ、組み付け性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】回転工具の側面図である。
【図2】回転工具の内部構造を示す側面図である。
【図3】トリガスイッチの斜視図である。
【図4】トリガスイッチの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態に係る回転工具10は、モータ15を搭載したインパクトドライバであり、図1に示すように、筒状の出力部12と、この出力部12の下部に出力部12と略直交する方向に延びるグリップ部13と、グリップ部13の下部に設けられた電池パック取付部14と、を備えている。
【0024】
出力部12には、図2に示すように、モータ15が内蔵されており、このモータ15の回転軸と同軸上に、冷却ファン17、スピンドル、打撃機構、アンビルが直列に設けられている。また、モータ15の下部には、モータ15を制御するためのモータ基板18が配置されている。このモータ基板18は、電線21等を介して後述するトリガスイッチ30や操作基板20、バッテリと接続されている。
【0025】
アンビルの先端部には出力軸16が形成されており、図示しないドライバビット(先端工具)が装着可能となっている。この出力軸16にドライバビットを取り付けた状態でモータ15を回転させると、モータ15の駆動力によりドライバビットが回転し、ネジ締めができるように形成されている。
【0026】
冷却ファン17は、出力部12の最後部に配置されており、モータ15が回転したときに同時に回転する。これにより、ハウジング11の側部に設けられた吸気孔22(図1参照)から外部の空気を吸い込み、吸い込んだ空気をハウジング11の側部に設けられた排気孔23(図1参照)から外部へと排出する。
【0027】
なお、吸気孔22はモータ基板18の側部に設けられており、排気孔23は冷却ファン17の側部に設けられている。これにより、冷却ファン17によって吸い込まれた冷却風は、モータ基板18付近からモータ15の内部を経由して外部へと排気され、モータ基板18とモータ15のコイルとを効率的に冷却するように形成されている。
【0028】
この出力部12の下部に設けられたグリップ部13は、回転工具10を把持するための部位である。このグリップ部13の出力部12との境目付近には、図1に示すように、前方にトリガスイッチ30が配置されている。
【0029】
このトリガスイッチ30は、モータ15を作動させるためのものであり、図2に示すように、スイッチの接点を収容した箱状のスイッチ本体31と、このスイッチ本体31に対して押し込み操作可能なトリガ部32と、を備えている。このトリガスイッチ30は、グリップ部13の内部に収容されているものの、トリガ部32がハウジング11の外部に突出しており、操作可能となっている。このトリガ部32を引き操作することで、モータ15が回転を始め、回転工具10が作動を開始するようになっている。このトリガ部32は、グリップ部13を握ったときにちょうど人差し指がかかる位置に配設されている。
【0030】
上記したグリップ部13の更に下部に設けられた電池パック取付部14は、図示しない電池パックを下面に着脱させる部位である。この電池パック取付部14の上面側には、図2に示すように、操作パネル19が設けられている。この操作パネル19には、回転モードを変更するためのモード設定ボタンなどが設けられている。
【0031】
この操作パネル19の裏側に位置する電池パック取付部14の内部には、操作パネル19の各ボタンやランプが接続された操作基板20が内蔵されている。
【0032】
ところで、図2に示すように、トリガスイッチ30とハウジング11との間S1や、操作パネル19とハウジング11との間S2には、わずかな隙間が存在している。また、出力部12とグリップ部13及び電池パック取付部14とはハウジング11の内部で連通しているため、従来の回転工具においては、冷却ファン17が回転したときにこれらの隙間S1、S2から空気が吸い込まれてしまうことがあり、冷却効率が低下したり、冷却風の流通経路外に粉塵が蓄積するという問題があった。
【0033】
本実施形態においては、この問題を解決するために、スイッチ本体31の外壁面31aとグリップ部13のハウジング内壁面11aとの間に弾性部材の一例であるスポンジシール33(スポンジ部材)を設けている。本実施形態においては、止水性と変形し易さを両立させるために、半連続半独立発泡のスポンジシール33を使用している。
【0034】
このスポンジシール33は、裏面に接着部が設けられており、図3及び図4に示すように、スイッチ本体31の一側部から後部を回って他側部まで途切れることなく連続して巻き付けるように、スイッチ本体31の外周部に接着固定されている。このように予めスポンジシール33が接着されているため、スポンジシール33を接着したトリガスイッチ30をハウジング11内部に取り付けるだけで冷却風の流通経路を連続して巻き付けたスポンジシール33で隔離することができる。
【0035】
このようにスポンジシール33を接着したトリガスイッチ30をハウジング11内部に装着すると、ハウジング11の内部形状に合わせてスポンジシール33が変形し、スイッチ本体31の外壁面31aとグリップ部13のハウジング内壁面11aとの間の間隙を埋めるようになっている。
【0036】
また、このスポンジシール33は、ハウジング11内部の電線21をスイッチ本体31に固定する役割も果たしている。すなわち、電線21をトリガスイッチ30の外壁面31aに押しあてた状態でスポンジシール33を巻きつけることにより、図2に示すように、電線21がスイッチ本体31に固定されている(なお、図3及び図4においては便宜上電線21を表示していない)。
【0037】
スポンジシール33で固定する電線21は、例えば、モータ基板18とトリガスイッチ30とを接続する電線、モータ基板18と操作基板20とを接続する電線、モータ基板18とバッテリとを接続する電線、などである。
【0038】
このようにスポンジシール33によってハウジング11内部の電線21をスイッチ本体31に固定することで、電線21をスポンジシール33でまとめることができ、組み付け性を向上させることができる。
【0039】
上記したように、本実施形態によれば、トリガスイッチ30の外壁面31aとグリップ部13のハウジング内壁面11aとの間に弾性部材33を設けたので、この弾性部材33によってハウジング11の内部に出力部12とグリップ部13との間に隔壁が形成されている。このように隔壁が形成されていることによって、出力部12側の冷却ファン17が回転したときにグリップ部13側から空気が吸い込まれず、吸気孔22から正しく空気が吸い込まれるため、冷却効率が低下するという問題がなく、また、冷却風の流通経路外に粉塵が蓄積するという問題もない。
【0040】
また、弾性部材33がクッションとなってトリガスイッチ30を衝撃から守ることができるため、トリガスイッチ30の耐久性を向上させることができる。
【0041】
なお、上記した実施形態においてはトリガスイッチ30にスポンジシール33を貼り付けることとしたが、ハウジング11の内壁面11aにスポンジシール33を貼り付けてもよいし、トリガスイッチ30の外壁面31aとグリップ部13のハウジング内壁面11aとの間に弾性部材33を差し込むようにしてもよい。
【0042】
また、上記した実施形態においては弾性部材としてスポンジ部材を用いたが、これに限らず、弾性部材としてシリコンゴムやゲル状充填材などを使用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 回転工具
11 ハウジング
11a 内壁面
12 出力部
13 グリップ部
14 電池パック取付部
15 モータ
16 出力軸
17 冷却ファン
18 モータ基板
19 操作パネル
20 操作基板
21 電線
22 吸気孔
23 排気孔
30 トリガスイッチ
31 スイッチ本体
31a 外壁面
32 トリガ部
33 スポンジシール(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の出力部と、この出力部の下部に前記出力部と略直交する方向に延びるグリップ部と、を備えた回転工具であって、
前記出力部には、モータと、前記モータと同軸上に配置された冷却ファンと、が収容され、
前記グリップ部には、前記モータを作動させるためのトリガスイッチが収容され、
前記トリガスイッチの外壁面と前記グリップ部のハウジング内壁面との間に弾性部材を設けたことを特徴とする、回転工具。
【請求項2】
前記弾性部材はスポンジ部材であることを特徴とする、請求項1記載の回転工具。
【請求項3】
前記スポンジ部材は前記トリガスイッチの外周部に固定されていることを特徴とする、請求項2記載の回転工具。
【請求項4】
前記スポンジ部材によってハウジング内部の電線を前記トリガスイッチに固定したことを特徴とする、請求項3記載の回転工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−94911(P2013−94911A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241147(P2011−241147)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)