説明

回転式計重装置

【課題】 充分に安定した零点信号を頻繁に得る。
【解決手段】 複数台の計量器2−1乃至2−nを回転中心の回りに回転可能に設け、計量器2−1乃至2−nが所定の方向に回転することによって描く回転軌跡上に、計量器2−1乃至2−nに順次物品を搬入する搬入位置Aと、計量器2−1乃至2−nから順次物品を搬出する搬出位置Bとを前記所定方向に間隔をおいて設けてある。各計量器2−1乃至2−nが搬出位置Bから搬入位置Aまで複数回にわたって回転するごとに得た各計量器2−1乃至2−nが得た出力の偏差に基づいて零点重量信号を補正し、その補正は、偏差量を縮小して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重検出手段が回転しながら、載荷された物品を計重する回転式計重装置に関し、特に、零点調整に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式計重装置における零点調整技術としては、例えば特許文献1、2に開示されているようなものがある。
【0003】
特許文献1の技術は、複数台の荷重検出手段を回転中心の回りに回転可能に設け、各荷重検出手段が回転することによって描く回転軌跡上に各荷重検出手段に物品を順次搬入する搬入位置と、各荷重検出手段から物品を順次排出する搬出位置とを設け、物品が載荷されずに搬出位置から搬入位置まで荷重検出手段が通過するときの荷重検出手段の出力を零点信号として使用するものである。
【0004】
特許文献2の技術は、回転体の円周方向に沿って荷重検出手段を設け、これら荷重検出手段全てに物品が載荷されていない状態のときの荷重検出手段の出力を零点信号として使用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2756849号
【特許文献2】特開2004−189248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、各荷重検出手段が高速で回転する場合、搬出位置から搬入位置までを荷重検出手段が通過する時間が短いので、荷重検出手段の出力が充分に安定せず、零点信号がばらつく可能性がある。また、特許文献2の技術では、安定な零点信号を得ることは可能である。しかし、全荷重検出手段に物品が載荷されていない状態としては、例えば特許文献2の技術を用いた装置による物品の生産の開始前程度しかない。荷重検出手段は、周囲温度や湿度の変化を受けて零点信号がドリフトする。また、荷重検出手段に載荷される物品が濡れていたりすると、物品が載荷されるごとに水分が荷重検出手段に滞留し、やはり零点信号がドリフトする。従って、生産開始前に一度だけ零点信号を取得しただけで、その零点信号をそのまま使用し続けると、正確な重量測定を行うことができなくなる。生産の途中で全荷重検出手段を物品不載荷の状態にしようとすると、強制的に生産を中止しなければならず、生産能率が低下する。
【0007】
本発明は、充分に安定した零点信号を頻繁に得られる回転式計重装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の回転式計重装置は、複数台の荷重検出手段を回転中心の回りに回転可能に設け、前記各荷重検出手段が所定の方向に回転することによって描く回転軌跡上に、前記各荷重検出手段に順次物品を搬入する搬入位置と、前記各荷重検出手段から順次前記物品を搬出する搬出位置とを前記所定方向に間隔をおいて設けてある。更に、前記各荷重検出手段が無負荷であるか否かを無負荷状態判定手段が判定する。回転中に前記無負荷状態判定手段によって無負荷であると判定された前記荷重検出手段に対して零点調整手段が零点調整を行う。前記零点調整手段は、前記無負荷状態判定手段によって無負荷と判定された前記荷重検出手段である無負荷荷重検出手段が前記搬入位置から前記搬出位置まで回転する間に前記無負荷荷重検出手段が発生する出力信号の少なくとも一部を零点重量信号とする。前記荷重検出手段が前記搬出位置から前記搬入位置まで無負荷で複数回にわたって回転するときに、異なる回に前記荷重検出手段から得られる荷重検出手段の出力の偏差に基づいて、対応する前記零点重量信号を零点重量信号補正手段が。補正する。この零点重量信号補正手段は、前記偏差を縮小して前記零点重量信号を補正する。
【0009】
荷重検出手段に容器が積載されていない場合、荷重検出手段の出力によって零点重量値の記憶を更新すればよい。しかし、充填容器があると、これはできない。ところで、荷重検出手段は、搬出位置から搬入位置まで回転する間には無負荷である。この間には必ず充填ずみ容器は排出されている。この場合の荷重検出手段の信号を用いて、記憶されている零点信号の補正を行うことが考えられる。しかし、搬出位置から搬入位置までの区間は短いので、搬出位置から搬入位置まで1度回転する間の荷重検出手段の出力には、容器搬出による振動信号成分が含まれている。そこで、搬出位置から搬入位置までの回転が複数回にわたって行われたとき、この複数回において得た荷重検出手段の出力の偏差を求める。充填ずみ容器搬出による振動ノイズの量は同じであるので、この偏差は振動信号成分が相殺されて、温度変化や水滴付着による荷重検出手段の出力のドリフトのみを含んでいる。従って、この偏差に基づいて零点信号を補正し、ドリフトの影響を除去する。
【0010】
搬出位置から搬入位置までの間に荷重検出手段の出力に含まれる振動信号成分は値のばらつく可能性があり、この間を荷重検出手段が複数回にわたって通過するごとに得た荷重検出手段の出力の偏差にも、ばらつきが生じている可能性がある。そこで、この偏差を縮小した値によって零点信号を補正することによって過度に零点信号が補正されることを防止している。
【0011】
例えば、上記のようにして求めた偏差を予め定めた値と比較し、この値よりも偏差が小さい場合には、この偏差によって零点信号を補正し、偏差が上記予め定めた値よりも大きい場合には、上記予め定めた値によって零点信号を補正したり、求めた偏差に予め定めた1よりも小さい係数を乗算し、その乗算値によって零点信号を補正したりすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、頻繁に零点信号の調整を行うことができ、ドリフトの影響を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1実施形態の回転式計重装置の概略平面図である。
【図2】図1の回転式計重装置における計量器の回転状態の説明図である。
【図3】図1の回転式計重装置のブロック図である。
【図4】図1の回転式計重装置における零点調整のフローチャートである。
【図5】図1の回転式計重装置における零点補正のフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態の回転式計重装置における計量器の回転状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の1実施形態の回転式計重装置は、例えば重量式充填装置に実施されたもので、図1に示すように複数の計量装置2−1乃至2−nを有している。これら計量装置2−1乃至2−nは、物品が負荷される載台4−1乃至4−nを有し、さらに、これら載台4−1乃至4−nに負荷された物品を計重する荷重検出手段、例えばロードセル6−1乃至6−nを有している。これら計量装置2−1乃至2−nは、或る回転中心の回りに描くことができる円周上に所定角度ごとに配置され、上記回転中心の回りに回転するように配置されている。例えば図示しない円板状の回転体の円周に沿って配置されている。この回転体は、図示しない駆動手段、例えばモータによって、例えば等速度で駆動される。
【0015】
上記円周上の1箇所には、各載台4−1乃至4−nがその位置に到達するごとに容器8を搬入する搬入位置Aがある。この搬入位置には、搬入装置、例えばスターホイール10が配置されている。また、上記搬入位置から上記円周に沿って計量装置2−1乃至2−nの回転方向と反対方向に所定角度だけ離れた位置に搬出位置Bがある。この搬出位置Bには、搬出装置例えばスターホイール12が配置されている。
【0016】
搬入位置Aから載台4−1乃至4−nのいずれかに載荷された容器8は、図1に矢印で示す所定方向に回転しながら、容器8に物品が図示しない充填装置によって充填が行われ、その充填重量が予め定めた重量となると充填が終了し、搬出位置Bから搬出される。搬出位置Bから搬入位置まで各載台4−1乃至4−nが回転する間には、各載台4−1乃至4−nは無負荷の状態である。
【0017】
具体的には、図2に示すように搬入位置Aからの区間d1は、容器8が載台4−1乃至4−8に乗り込んだ際にロードセル6−1乃至6−nの計量信号の過渡応答が収束するのを待つ時間t1の間、容器8が移動する区間である。区間d2は容器8の重量を求めるための容器重量計測時間t2の間、容器8が移動する区間である。d3は容器8に物品を充填しつつその重量を計測し、その重量が所定重量になったときに充填を終了する充填・重量計測時間t3の間に容器8が移動する区間である。d4は充填終了時に発生する各ロードセル6−1乃至6−nの計量信号の過渡応答が収束するのを待つ時間t4の間に容器8が移動する距離である。d5は充填済みの容器8の重量を計測する充填済み重量計測時間t5の間に容器8が移動する区間である。d6は充填済み容器が載台4−1乃至4−nから搬出されたときに各ロードセル6−1乃至6−nの計量信号に発生した過渡応答が収束するのを待つ時間t6の間に、容器8が移動する区間である。d7は無負荷時間t7の間に容器8が移動する区間である。
【0018】
図3に示すように、各ロードセル6−1乃至6−nの計量信号は、それぞれフィルタ手段、例えばローパスフィルタ14−1乃至14−nに供給され、増幅手段、例えば増幅器16−1乃至16−nを介してA/D変換手段、例えばA/D変換器18−1乃至18−nに供給されている。これらA/D変換器18−1乃至18−nのデジタル計量信号は、I/O回路20を介して演算回路、例えばCPU22に供給される。なお、上述した容器重量計測時間、充填・重量計測時間、充填済み重量計測時間それぞれにおいて、所定回数にわたってデジタル計量信号が得られるようにA/D変換器18−1乃至18−nは、所定サンプリング期間ごとにデジタル変換を継続して行っている。
【0019】
CPU22は、ROM24に記憶されたプログラムに従ってRAM24をワーキングエリアとして使用しながら、各デジタル計量信号に基づいて各容器8の重量測定、各容器8への所定重量の物品の充填の開始及び終了の制御、充填完了後の容器の重量測定、零点調整を行う。
【0020】
このような制御には、各計量器2−1乃至2−nの回転位置を知る必要があるので、所定の計量器、例えば計量器2−1が所定位置、例えば搬入位置Aに到達するごとに初期パルス信号を発生し、かつ各計量器2−1乃至2−nが所定の位置、例えば搬入位置Aに到達するごとに所定角度回転パルス信号を発生するパルス発生器28が設けられている。これら初期パルス信号と所定角度回転パルス信号とは、I/O回路20を介してCPU22に供給され、CPU22は、プログラムによってカウンタを構成し、このカウンタは初期パルス信号が供給されるごとにリセットされながら、所定角度回転パルス信号をカウントする。このカウンタのカウント値を利用することによって各計量装置2−1乃至2−nの位置を取得する。
【0021】
なお、以下の説明では、説明が錯綜することを避けるために、1台の計量器に注目して、CPU22が行う零点計測及び零点補正処理を説明するが、他の計量器に対しても同一の処理をCPU22が行う。
【0022】
零点の調整時点または生産運転の開始前の各計量器2−1乃至2−nが停止している状態において、調整対象とする計量器、例えば計量器2−1の載台4−1を無負荷にして、作業者が図示していない零点調整用の零点記憶キーを操作して、そのときのロードセル6−1の計量信号をデジタル化したデジタル計量信号を零点重量値WziとしてRAM26に記憶させる。或いは各計量器2−1乃至2−nが無負荷である状態において各計量器2−1乃至2−nを所定回数回転させ、各ロードセル6−1乃至6−nの計量信号をデジタル化したデジタル計量信号の平均値をそれぞれ求め、これら平均値を各計量器2−1乃至2−nの零点重量値とする。
【0023】
各計量器2ー1乃至2−nを回転させて、生産運転している状態において、注目している計量器、例えば計量器2−1が容器重量計測時間t2にある場合、そのときに計量器2−1に容器8が載荷されていると、計量器2−1から得られたデジタル計量信号Wx(これは、容器重量計測時間t2において複数回にわたってA/D変換器18−1から得られたデジタル計量信号をフィルタリング処理等を行って求めたものである)は、容器8の重量と零点重量値Wz(初期状態では上述したWzi)とを合わせた値である。従って、WxからWzを減算することによって容器8の重量Wnを求めることができる。
【0024】
従って、容器重量計測時間t2において求められたWnを使用して、計量器2−1が無負荷であるか否かを判定することができる。例えば、容器8の重量は予め判明しているので、その重量よりも小さく予め定めた無負荷判定基準値WtとWnとを比較し、Wnが無負荷判定基準値Wtよりも小さいと、載台4−1上には容器8は存在せず、無負荷であると判定する。Wnが無負荷判定基準値以上の時には容器8が載台4−1上に載荷されていると判定する。このようにして無負荷判定手段が実現されている。
【0025】
計量器2−1が無負荷であると判定されると、搬入位置Aから容器8は搬入されていないと判断できるので、時間t2からt7までの間、所定サンプリング時間が経過するごとにデジタル計量信号をRAM26に記憶させ、これらデジタル計量信号に基づいて新たな零点重量信号、例えば零点重量値Wzを決定する。例えばこれら各デジタル計量信号の平均値を新たな零点重量値Wzとする。これら時間t2からt7までの期間は、各計量器2−1乃至2−nが必ず無負荷となる時間t7の期間よりも充分に長いので、これら期間に得られた各デジタル計量信号の平均値を取ると、たとえ周期の長い振動が含まれていても、これら振動の影響を除去することができ、安定で正確な零点重量値Wzを確定できる。なお、単なる平均ではなく、デジタルフィルタリングによってこれら振動成分を除去することもできる。
【0026】
図4は、上述した処理(自動零点調整処理)をCPU22が行う際の詳細なステップをフローチャートを示したもので、この処理は、いずれかの計量器が区間d2に到達するごとに実行される。まず区間d2に位置する計量器がいずれの計量器であるかを決定する(ステップS2)。今、この計量器が計量器2−1であるとする。次に、この計量器に対応するA/D変換器からのデジタル計量信号に基づいてこの計量器における上述したWxを取得する(ステップS4)。その後、Wxからこの計量器におけるWzを減算して、Wnを算出する(ステップS6)。WnがWtよりも小さいか判断し(ステップS8)、その判断の答えがノーの場合には、容器8が計量器上に載荷されているので他の処理を行う。この判断の答えがイエスの場合には、容器8が計量器上に載荷されていないので、デジタル計量信号Wxを取得し(ステップS10)、この計量器が区間d7の終点に到達したか判断する(ステップS12)。この判断の答えがノーの場合には、判断の答えがイエスになるまでステップS10、S12を繰り返す。ステップS12の判断の答えがイエスになると、今まで取得してきた各Wxの値を用いてこの計量器用の新たなWzを決定する(ステップS14)。
【0027】
このように計量器2−1乃至2−nが回転している最中であっても、計量器2−1が無負荷で搬入位置Aから搬出位置Bに向かって回転するときには、その間に新たな零点重量値Wzが取得され、零点調整が行われる。生産中には、全計量器2−1乃至2−nが無負荷になる可能性よりも、計量器2−1乃至2−nが別々の機会に無負荷となる可能性の方がはるかに高い。従って、このような機会があるごとに、無負荷となった計量器について新たな零点重量値Wzを取得して零点調整をすることによって、ドリフトの影響を除去することができる。
【0028】
なお、上記の例では、区間d2から区間d7の間でのデジタル計量信号を用いて、零点重量値Wzを決定したが、区間d1におけるデジタル計量信号もRAM26に予め記憶させておき、無負荷と判断されたときには、区間d1におけるデジタル計量信号と区間d2乃至d7の間に得られた各デジタル計量信号とを用いて新たな零点重量値Wzを決定することもできる。
【0029】
生産過程では、なかなか無負荷状態とならない計量器が生じることがある。そこで、搬出位置Bから搬入位置Aまでは各計量器2−1乃至2−nは確実に無負荷であるので、この区間に含まれる区間d7で得たデジタル計量信号を用いて零点重量値を補正することが考えられる。
【0030】
しかし、区間d7は充填ずみ容器が搬出された直後であるので、振動信号成分が残っている。従って、区間d2から区間d7の間に求めた零点重量値と、区間d7のみで求めた零点重量値とは異なっている。また、区間d2から区間d7の間に得られるデジタル計量信号のサンプル数よりも、区間d7のみで得られたデジタル計量信号のサンプル数は格段に少ない。従って、区間d7でのデジタル計量信号のみでは、各計量装置2−1乃至2−nを回転させる回転体の振動によるノイズ信号の影響も充分に除去できない可能性がある。従って、区間d7のみのデジタル計量信号を用いて得た零点重量値で、区間d2乃至d7で求めた零点重量値を置換しても、却って零点の精度が低下する。
【0031】
この対策として、区間d7に至る前に容器に充填が行われたということを条件に、計量器が区間d7を通過する際(このときは無負荷の状態で通過する)に、デジタル計重信号を取得して無負荷区間重量値Wy1を求め、別の機会、例えばWy1を取得したときの次に、同じ計量器が区間d7を通過する際に、デジタル計重信号を取得して無負荷区間重量値Wy2を求め、Wy1とWy2との偏差を零点重量値の変化量として検出し、これによって区間d2から区間d7の間に求められたデジタル計量信号に基づく零点重量値Wzを補正している。上記偏差は、同じ計量器が異なる時期に区間d7を通過したとき、ほぼ同じ重量の被計量物が荷重検出手段から除去された直後の零点重量値の変化量を表しているので、この計量器においてこれとは別の要因にてドリフトが生じていれば、そのドリフトによる変化量を表している。従って、この計量器に搬入位置Aで容器8が搬入されることが連続して生じていても、零点のドリフトの影響を除去することができる。
【0032】
図5は、このような処理(自動零点補正)をCPU22が行う際の各ステップをフローチャートで示したもので、この処理は、いずれかの計量器が区間d7に到達するごとに実行される。まず、区間d7に到達した計量器がいずれの計量器であるか確定する(ステップS16)。そして、初期状態において0にセットされている、上記確定された計量器に対応するカウンタCの値が0であるか1であるか判断する(ステップS18)。カウンタCの値が0であるなら、確定された計量器の無負荷区間重量値Wy1は未だ取得されていないので、無負荷区間重量値Wy1を取得する(ステップS20)。そしてカウンタCの値を1つ増加させて(ステップS22)、この処理を終了する。
【0033】
次に、再び同じ計量器が区間d7に到達したとき、ステップS18において先にWy1が取得された計量器であると確定されると、ステップS18においてカウンタCの値が1であるか0であるか判断される。今回にはカウンタCの値は1であるので、この計量器の無負荷区間重量値Wy2が取得され(ステップS24)、カウンタCが0とされる(ステップS26)。
【0034】
そして、Wy2とWy1との偏差Wdが算出され、この偏差Wdで現在の零点重量値Wzが補正される(ステップS26)。例えばWzにWdが加算または減算される。
【0035】
このようにして、区間d2から区間d7まで計量器が無負荷状態で回転しない場合でも、零点のドリフトの影響を除去することができる。
【0036】
上記の例では、無負荷区間d7を通過する時間t7が短いので、Wy1やWy2には、各種ノイズによるばらつきがある可能性がある。そこで、或る計量器が無負荷区間d7を所定回数、例えばM回通過する間に得られたM個の無負荷区間重量値の平均値をWya1とし、その後M回にわたって同じ計量器が無負荷区間d7を通過する間に得られたM個の無負荷区間重量値の平均値をWya2とし、これらの偏差Wdaを求める。この偏差Wdaは平均ドリフト量を表すので、これを用いて当該計量器の零点重量値Wzを補正してもよい。
【0037】
この零点重量値Wzの補正は、当該計量器がM回回転するごとに、今回のM回で求めた平均値をWya2とし、前回のM回に求めた平均値をWya1として、零点補正を行ってもよい。
【0038】
なお、このようにM回の平均値同士の偏差を用いて零点重量値を補正しても、無負荷区間d7を計量器が通過する時間t7は短いので、回転体の回転によるノイズを充分に減衰することができない場合もある。この場合には、Wdaによって直接に零点重量値Wzを補正するのではなく、補正の最大量を予め定めた値Wdとし、Wdaの絶対値がWdよりも大きい場合には零点補正量WfをWdに制限し、Wdaの絶対値がWd以下の場合には、Wdaを零点補正量Wfとして、零点重量値Wzを零点補正量Wfで補正してもよい。例えばWz−Wf=WxまたはWz+Wf=Wzの演算を行えばよい。
【0039】
このように補正量を縮小する方法としては、この他にWdaの値に1よりも小さい係数rを乗算してWf=r*Wdaとすることも考えられる。係数rとしては、例えば得られたWdaのうちの1σがドリフト成分であると見なし、r=0.65と設定することができる。
【0040】
上記の例では、M回ずつ合計2回に分けて求めた平均値Way1、Way2に基づいてWdaを求め、Wdaまたはこれを修正した零点補正量Wfによって、零点重量値Wzを補正した。しかし、例えば3回目もM個の無負荷区間重量値を求めて無負荷区間重量Way3を求め、Wya1にWfまたはWdaを加算して、縮小された縮小無負荷区間重量Wya2’を求め、Wya3−Wya2’の演算を行って偏差量Wda’を求め、この偏差量Wda’によって、零点重量値Wzを補正してもよい。
【0041】
これらいずれも、算出された偏差の全量で零点重量値Wzを補正するのではなく、補正量を縮小しているので、過補償を可能な限り避けることができる。
【0042】
なお、M回にわたって無負荷区間重量値を求めている途中に、当該計量器に容器8が搬入されない場合が生じると、零点補正は中止し、上述したように区間d2から区間d7の間でのデジタル計量信号に基づく最新の零点重量値によって零点調整を行う。
【0043】
以上のように、この実施形態によれば、生産ラインにおいて生産中であっても、各計量器2−1乃至2−nのいずれかに生じるd2区間からd7区間までの長い区間の無負荷状態において得られる当該計量器の複数のデジタル計量信号に基づいて安定した零点重量値を求めて、零点を自動調整し、さらに長期にわたって無負荷状態にならない計量器が出現することに備えて、無負荷区間d7におけるデジタル計量信号に基づいて零点のドリフト補正を過補償とならないように行っているので、常に正確で安定した零点重量値が得られる。
【0044】
上記の実施の形態では、上述したように零点調整を行う場合について説明したが、生産を開始する前に予め零点を上述したように決定した後、零点調整を行わずに、上述したように零点補正のみを行うようにすることもできる。この場合、零点のドリフトを補正することができる。
【0045】
上記の実施の形態では、容器を搬入し、その容器に物品を充填する重量式充填装置に本発明を実施したが、これに限ったものではなく、搬入位置から物品を搬入し、回転しながらその重量を測定し、その重量に基づいて物品を選別する回転式重量選別機にも本発明を実施することができる。
【0046】
この場合、図6に示すように搬入位置Aから始まる区間D1を物品が通過する間に、搬入位置Aで物品が搬入されたことによりロードセルの計量信号に生じた振動が収束する。区間D1に続く区間D2を物品が通過している間に物品の重量が計測される。これに続く区間D3(搬出位置Bから始まる区間)では物品が搬出位置Bから搬出されたときにロードセルの計量信号に生じた振動が収束する。これに続く区間D4がロードセルの計量信号がほぼ安定した上に無負荷である無負荷区間である。D1に対応する時間T1が過渡応答収束時間、D2に対応する時間が物品計測時間、D3に対応する時間T3が過渡応答収束時間、D4に対応する時間T4が無負荷時間である。そして上述した零点調整は、区間D2、D3、D4を計量器が通過している間の各デジタル計量信号に基づいて行われる。無論、予め記憶させておけば区間D1のデジタル計量信号も零点調整に使用することができる。
【0047】
上記の実施の形態では、計量器が無負荷であるか否かを判定するために、区間d2における計量値Wnと無負荷判定基準値Wtとの比較を行ったが、これに限ったものではなく、例えば搬入位置Aにセンサを設けて、このセンサが容器を検出するか否かによって無負荷か否かを判定することもできる。
【符号の説明】
【0048】
2−1乃至2−n 計量装置
4−1乃至4−n 載台
6−1乃至6−n ロードセル(荷重検出手段)
22 CPU(零点調整手段、零点補正手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の荷重検出手段を回転中心の回りに回転可能に設け、前記各荷重検出手段が所定の方向に回転することによって描く回転軌跡上に、前記各荷重検出手段に順次物品を搬入する搬入位置と、前記各荷重検出手段から順次前記物品を搬出する搬出位置とを前記所定方向に間隔をおいて設けた回転式計重装置において、
前記各荷重検出手段が無負荷であるか否かを判定する無負荷状態判定手段と、
回転中に前記無負荷状態判定手段によって無負荷であると判定された前記荷重検出手段に対して零点調整を行う零点調整手段とを、
具備し、
前記零点調整手段は、前記無負荷状態判定手段によって無負荷と判定された前記荷重検出手段である無負荷荷重検出手段が前記搬入位置から前記搬出位置まで回転する間に前記無負荷荷重検出手段が発生する出力信号の少なくとも一部を零点重量信号とし、
前記荷重検出手段が前記搬出位置から前記搬入位置まで無負荷で複数回にわたって回転するときに、異なる回に前記荷重検出手段から得られる荷重検出手段の出力の偏差に基づいて、対応する前記零点重量信号を補正する零点重量信号補正手段を有し、
前記零点重量信号補正手段は、前記偏差を縮小して前記零点重量信号を補正する回転式計重装置。
【請求項2】
複数台の荷重検出手段を回転中心の回りに回転可能に設け、前記各荷重検出手段が所定の方向に回転することによって描く回転軌跡上に、前記各荷重検出手段に順次物品を搬入する搬入位置と、前記各荷重検出手段から順次前記物品を搬出する搬出位置とを前記所定方向に間隔をおいて設けた回転式計重装置において、
前記荷重検出手段が前記搬出位置から前記搬入位置まで無負荷で複数回にわたって回転したとき、異なる回に前記荷重検出手段から得られる荷重検出手段の出力の偏差に基づいて、対応する零点重量信号を補正する零点重量信号補正手段を設け、
前記零点重量信号補正手段は、前記偏差量を縮小して前記零点重量信号を補正する回転式計重装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133485(P2011−133485A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29586(P2011−29586)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【分割の表示】特願2004−364664(P2004−364664)の分割
【原出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】