説明

回転方向検出装置および回転方向検出方法

【課題】 自己発電によって、発電部が有する回転子の回転方向を正確に検出することができる回転方向検出装置および回転方向検出方法を提供すること。
【解決手段】 回転方向検出装置1は、固定子および回転子を有し、固定子に対して回転子が回転することにより交流電圧を発生する発電部2と、回転子を固定子に対して第1方向またはそれと逆の第2方向に回転させる回転手段3と、発電部2から発生した電圧により駆動し、回転子の回転方向を検出する検出部7とを有している。検出部7は、その駆動を開始した時刻から所定時間が経過した時刻における発電部2から発生する電力の電圧値を検知し、検知した電圧値の大きさに基づいて、固定子に対する回転子の回転方向を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転方向検出装置および回転方向検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境発電の分野に用いられる発電機としては、例えば、固定子(ステータ)と、回転子(ロータ)とを有し、外力によって、回転子を固定子に対して回転させ、それにより発電を行うモータ型の発電機が用いられる場合がある。このような発電機を用いる場合、固定子に対する回転子の回転方向を検出できることが望まれる。
【0003】
特許文献1には、モータの回転方向を検出するモータ回転方向検出装置が開示されている。特許文献1に記載の装置は、モータの筐体に角速度センサと磁気センサとを取り付け、これら2つのセンサの検出結果に基づいてモータ(回転子)の回転方向を検出するように構成されている。
【0004】
このような装置では、例えば、モータを発電部として用い、回転子を外力によって回転させ、それにより発生した電力を用いて回転子の回転方向を検知することも可能である。しかしながら、そのような構成とした場合、次のような問題が生じる。
【0005】
すなわち、特許文献1の装置が有する各種センサは、電力が供給されてからスタンバイ状態(物理量を検出できる状態)となるまでの時間(起動時間)が長いため、モータが回転した直後の回転方向を検出することができない。特に、環境発電の分野では、回転子が回転するのは、ごくわずかな時間(例えば、数10msec)であるため、上記のようなセンサを用いる場合には、回転方向を検出できる状態となったときには、既に、回転子の回転が止まっており、回転子の回転方向を検出することができないことも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−251755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自己発電によって、発電部が有する回転子の回転方向を正確に検出することができる回転方向検出装置および回転方向検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。
(1) 固定子および該固定子に対して回転可能な回転子を有し、前記固定子に対して前記回転子が回転することにより交流電圧を発生する発電部と、
前記回転子を前記固定子に対して第1方向または前記第1方向と逆の第2方向に回転させる回転手段と、
前記発電部から発生した電圧により駆動し、前記回転子の前記固定子に対する回転方向を検出する検出部とを有し、
前記検出部は、その駆動を開始した時刻から所定時間が経過した時刻における前記発電部から発生する電力の電圧値を検知し、検知した電圧値の大きさに基づいて、前記固定子に対する前記回転子の回転方向を検出することを特徴とする回転方向検出装置。
【0009】
(2) 前記回転子が前記固定子に対して前記第1方向へ回転することにより前記発電部から発生する第1電圧と、前記回転子が前記固定子に対して前記第2方向へ回転することにより前記発電部から発生する第2電圧とで、前記回転子が前記固定子に対して回転を開始した時刻を基準とするピークの発生タイミングが異なるように構成されている上記(1)に記載の回転方向検出装置。
【0010】
(3) 前記検出部は、前記第1電圧および前記第2電圧のうちの一方からはピークが発生し、他方からはピークが発生していない時刻において、前記電圧値を検知する上記(1)または(2)に記載の回転方向検出装置。
【0011】
(4) 前記検出部は、検知した前記電圧の大きさが所定の閾値に対して大きいか小さいかに基づいて前記固定子に対する前記回転子の回転方向を検出する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【0012】
(5) 前記回転手段は、毎回、同じ回転角および回転速度で前記回転子を前記固定子に対して前記第1方向または第2方向へ回転させる上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【0013】
(6) 前記回転手段は、前記回転子を前記固定子に対して前記第1方向に回転させる場合と前記第2方向に回転させる場合とで、前記回転子の回転速度が等しくなるよう構成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【0014】
(7) 前記回転手段は、前記回転子を前記固定子に対して前記第1方向に回転させる場合と前記第2方向に回転させる場合とで、前記回転子の回転角が等しくなるよう構成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【0015】
(8) 前記回転手段は、第1状態と第2状態とに切り替え可能なスイッチを有し、前記スイッチを前記第1状態から第2状態に切り替えると前記回転子が前記固定子に対して前記第1方向に回転し、前記第2状態から前記第1状態に切り替えると前記回転子が前記固定子に対して前記第2方向に回転するよう構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【0016】
(9) 固定子および該固定子に対して第1方向または前記第1方向と逆の第2方向に回転可能な回転子を有し、前記固定子に対して前記回転子が回転することにより交流電圧を発生する発電部の、前記固定子に対する前記回転子の回転方向を検出部によって検出する回転方向検出方法であって、
前記検出部は、前記発電部から発生する電圧によって駆動し、その駆動を開始した時刻から所定時間が経過した時刻における前記発電部から発生する電力の電圧値を検知し、検知した電圧値の大きさに基づいて、前記固定子に対する前記回転子の回転方向を検出することを特徴とする回転方向検出方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる回転方向検出装置および回転方向検出方法によれば、発電部から発生した電力によって速やかに検出部が作動するため、回転子の回転方向を精度よく検出することができる。また、外部電源を必要としないため、環境に優しい装置(方法)となる。
【0018】
また、回転方向を所定時刻に発電部により発電される電圧の大きさに基づいて検出するため、精度よく、回転子の回転方向を検出することができる。特に、第1電圧と第2電圧で、回転子が固定子に対して回転を開始した時刻を基準とするパルスの発生タイミングを異ならせているため、所定時刻における第1電圧と第2電圧との電圧差を大きくすることができ、検知精度を高くすることができる。
【0019】
また、回転手段が、毎回同じ回転角および回転速度で回転子を固定子に対して第1方向へ回転させ、毎回同じ回転角および回転速度で回転子を固定子に対して第2方向へ回転させるように構成されていれば、第1電圧および第2電圧の波形を毎回ほぼ同じ波形とすることができ、検出の信頼性が向上する。
【0020】
また、スイッチの操作に対応して、回転子が回転することにより、回転方向検出装置を各種スイッチとして利用することができ、その利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の回転方向検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す回転手段の具体的な構成を示す平面図である。
【図3】図1に示す発電部から発生する電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の回転方向検出装置および回転方向検出方法の好適な実施形態を説明する。なお、以下では、本発明の回転方向検出装置を用いて送信器を構成した場合について説明する。
【0023】
図1は、本発明の回転方向検出装置の構成を示すブロック図、図2は、図1に示す回転手段の具体的な構成を示す平面図、図3は、図1に示す発電部から発生する電圧を示す図である。
【0024】
図1に示す送信器(回転方向検出装置)1は、外部機器に対して所定の信号を無線送信するエネルギー自給式の装置である。この送信器1は、主に、発電部2と、回転手段3と、整流部(整流回路)4と、蓄電部5と、変圧部6と、検出部(メイン回路)7と、放電部8と、RFコントローラ9と、アンテナ10とを有している。
【0025】
以下、これらについて順次、詳細に説明する。
−発電部−
図2に示すように、発電部2は、筐体100に収容されている。発電部2は、自己発電により交流電力(交流電圧)を発生させることが可能であり、例えば、外から力(物理的な力、磁力等)が付与された際に前記電力を発生することができる。したがって、この発電部2は、連続してではなく、一過性(一時的)に電力を発生させる。かかる発電部2を用いることにより、送信器1の小型化を図ることができるとともに、環境に優しい発電(環境発電)が可能となる。
【0026】
発電部2は、図示しない固定子(ステータ)と、固定子に対して回転可能な図示しない回転子(ロータ)とを有しており、外力によって、前記回転子を前記固定子に対して回転させることにより発電する。このような発電部2としては、例えば、ステッピングモータ、DCモータ等の各種モータを用いることができる。
【0027】
発電部2の1回の発電量は、特に限定されないが、500〜1500μJ/5〜20msec程度であるのが好ましい。
【0028】
−回転手段3−
回転手段3は、発電部2の前記回転子を前記固定子に対して回転させる機能を有している。図2に示すように、回転手段3は、筐体100に設けられたスイッチ31を有しており、このスイッチ31を操作すると、それに対応して、発電部2の回転子が固定子に対して回転する。すなわち、スイッチ31を操作することにより、発電部2から電力が発生する。
【0029】
図2に示すように、スイッチ31は、例えば、2つの押圧部311、312を有しており、押圧部311を筐体100側に押し込んだON状態(図2中実線で示す状態;第1状態)と、押圧部312を筐体100側に押し込んだOFF状態(図2中鎖線で示す状態;第2状態)とを切り替えることができる。
【0030】
そして、スイッチ31をOFF状態からON状態へ操作すると、それに伴って、発電部2の回転子が固定子に対して順方向(例えば、図2中時計まわり;第1方向)に一時的に回転する。反対に、スイッチ31をON状態からOFF状態へ操作すると、それに伴って、発電部2の回転子が固定子に対して逆方向(例えば、図2中反時計回り;第2方向)に一時的に回転する。
【0031】
このように、送信器1では、スイッチ31をON状態およびOFF状態のどちらの状態からどちらの状態へ切り替えるかによって、回転子の回転方向が異なるため、回転子の回転方向を検出することにより、スイッチ31の状態、すなわち、ON状態かOFF状態かを検出することが可能となる。
【0032】
このようなスイッチ31の操作によって回転子を固定子に対して回転させる機構としては、特に限定されないが、例えば、次のような機構とすることができる。例えば、筐体100内に設置され、回転子に直接または間接的に接続された2つのバネ部材(第1バネ部材および第2バネ部材)を用意する。第1バネ部材は、回転子を順方向に回転させるためのものであり、第2バネ部材は、回転子を逆方向に回転させるためのものである。
【0033】
そして、OFF状態からON状態へと切り替える際のスイッチ31の変位(スイッチ31の筐体100に対する姿勢の変化)を利用して第1バネ部材を伸張させ、スイッチ31がON状態となったと同時に前記伸張を解除することにより第1バネ部材を収縮させ、この収縮力を利用して回転子を固定子に対して順方向に回転させる。反対に、ON状態からOFF状態へと切り替える際のスイッチ31の変位を利用して第2バネ部材を伸張させ、スイッチ31がOFF状態となったと同時に前記伸張を解除することにより第2バネ部材を収縮させ、この収縮力を利用して回転子を固定子に対して逆方向に回転させる。
【0034】
このような機構によれば、簡単な構成で、スイッチ31を操作することにより回転子を固定子に対して回転させることができる。また、このような機構は、物理的な機構であるため、誤作動等を効果的に防止することもできる。
【0035】
また、このような構成とすることにより、スイッチ31の操作の仕方(スイッチ31の変位速度や、スイッチ31に加わる力)に影響を受けることなく、回転子の固定子に対する回転速度および回転角を毎回ほぼ一定に保つことができる。すなわち、回転手段3は、毎回、同じ回転角および回転速度で回転子を固定子に対して順方向または逆方向へ回転させることができる構成となっている。
【0036】
このような構成とすることにより、回転子が順方向へ回転したときに発電部2から発生する第1電圧を、毎回、ほぼ同じ波形(タイミング(位相)も含む)とすることができ、同様に、回転子が逆方向に回転したときに発電部2から発生する第2電圧を、毎回、ほぼ同じ波形(タイミング(位相)も含む)とすることができる。そのため、後述する方法により、回転子の回転方向をより正確に検出することができる。
【0037】
また、回転手段3は、回転子を固定子に対して順方向に回転させる場合と逆方向に回転させる場合とで、回転子の固定子に対する回転角および回転速度(平均回転速度;平均角速度)が共に等しくなるように構成されている。これにより、前記回転子が順方向に回転する場合と逆方向に回転する場合とで、発電部2の作動条件(発電条件)を等しくすることができる。そのため、後述する方法により、回転子の固定子に対する回転方向をより正確に検出することができる。
【0038】
なお、回転手段3の機構が前述したような第1バネ部材および第2バネ部材を用いる構成である場合には、例えば、第1バネ部材、第2バネ部材の構成(形状、大きさ、弾性率等の物理的特性)を互いに等しくするとともに、第1バネ部材、第2バネ部材を伸張する際の伸張率を互いに等しくすれば、簡単かつ確実に、回転子が固定子に対して順方向に回転する場合と逆方向に回転する場合とで、回転子の回転角および回転速度を共に等しくすることができる。
【0039】
−整流部4−
整流部(整流回路)4は、発電部2に接続されている。整流部4は、発電部2により発生した交流電力を直流電力に整流する機能を有している。整流部4の構成としては、このような機能を発揮することができる限り、特に限定されず、公知の整流回路を用いることができる。
【0040】
−蓄電部5−
蓄電部5は、整流部4に接続されている。蓄電部5は、例えば、コンデンサ等で構成されており、所定の容量の電力を蓄電することができる。これにより、発電部2により発生した電力を蓄えることができ、後述するように、検出部7およびRFコントローラ9に安定的に電力を供給することができる。蓄電部5の容量としては、特に限定されないが、50〜80μF程度とすることができる。
【0041】
−変圧部6−
変圧部(DC/DCコンバータ)6は、整流部4および蓄電部5にそれぞれ接続されている。変圧部6は、整流部4から入力された直流電圧を所定の電圧値に調整する機能を有している。このような変圧部6から出力された直流電圧は、検出部7およびRFコントローラ9に供給され、これにより、検出部7およびRFコントローラ9がそれぞれ作動する。なお、変圧部6によって調整すべき電圧値は、特に限定されないが、2〜3V程度とされる。
【0042】
−検出部7−
検出部7は、例えば、マイクロコントローラ(マイコン)で構成されている。また、検出部7は、変圧部6に接続されており、発電部2で発生し、変圧部6で調整された電力によって駆動する。また、検出部7には、発電部2から発生した交番電圧が直接、アナログ入力される。そして、検出部7は、入力された交流電圧に基づいて、固定子に対する回転子の回転方向を検出する。
【0043】
以下、検出部7による回転子の回転方向の検出について説明する。
図3(a)は、回転子が固定子に対して順方向に回転することにより発電部2から発生し、検出部7に入力される電圧(第1電圧)V1、整流部4によって整流された電圧V1’を示している。また、同図(b)は、回転子が固定子に対して逆方向に回転することにより発電部2から発生し、検出部7に入力される電圧(第2電圧)V2、整流部4によって整流された電圧V2’を示している。
【0044】
なお、図3(a)、(b)に示す電圧V1、V2は、一例であり、電圧V1、V2の波形等は、これに限定されない。
【0045】
図3に示すように、回転子が固定子に対して回転を始めた時刻T0からの経過時間(t)で見ると、まず、電圧V1の1つ目のピークP1が発生し、次いで、電圧V2の1つの目のピークP2が発生し、次いで、電圧V1の2つ目のピークP3が発生し、次いで、電圧V2の2つ目のピークP4が発生している。すなわち、電圧V1のピークと電圧V2のピークとが交互に発生している。
【0046】
このように、送信器1では、電圧V1と電圧V2とで、回転子が固定子に対して回転を開始した時刻T0を基準とするピークの発生タイミングが異なるように構成されているため、発電部2から電圧が発生しているほぼ全ての時刻において、電圧V1、V2の差を大きくすることができる。そのため、後述する方法によって、より正確かつ確実に、固定子に対する回転子の回転方向を検出することができる。
【0047】
前述したように、本実施形態では、スイッチ31の操作の仕方に影響を受けることなく、回転子の固定子に対する回転速度および回転角を毎回ほぼ一定に保つことができる。そのため、スイッチ31をOFFからONに切り替えれば、毎回、図3(a)とほぼ同じ波形の電圧V1が発生し、ONからOFFに切り替えれば、毎回、図3(b)とほぼ同じ波形の電圧V2が発生する。
【0048】
検出部7は、その駆動を開始した時刻T1から所定時間が経過した時刻T2における発電部2から発生する電力の電圧値を検知し、検知した電圧値の大きさに基づいて、固定子に対する回転子の回転方向を検出する。電圧値の検出は、発電部2からアナログ信号として入力される電圧(すなわち、整流部4で整流されていない電圧)を利用して行うことができる。また、検出部7は、時刻T2を判断するために、水晶発振器などのクロック発振部を備えていてもよい。
【0049】
なお、図3に示すように、整流部4による整流後の電圧V1’、V2’はほぼ同じ波形を有している。そのため、検出部7は、回転子の回転方向によらず、時刻T1にその駆動を開始する。すなわち、回転子が回り始めてから検出部7が駆動を開始するまでの時間は、回転子の回転方向を問わずに毎回ほぼ同じである。そのため、検出部7は、回転子が回転を始めた時刻T0から所定時間が経過した時刻T2における電圧の大きさを検知し、検知した電圧の大きさに基づいて回転子の回転方向を検出するとも言える。
【0050】
時刻T2としては、電圧V1、V2の差が大きな時刻がよい。具体的には、図3に示すように、時刻T2としては、電圧V1、V2の一方にピークが発生しており、他方にピークが実質的に発生していない時刻であるのが好ましい。これにより、電圧V1、V2の差をより大きくすることができ、回転子の回転方向を正確に検出することができる。
【0051】
なお、以下では、説明の便宜上、時刻T2を、電圧V1にピークが発生しており、電圧V2にピークが発生していない時刻とした場合について代表して説明する。
【0052】
また、時刻T2としては、特に限定されないが、検出部7の駆動が開始する時刻T1から0.1〜0.3msec経過後の時刻であるのが好ましい。一般的に、スイッチ31の操作によって発電部2から電圧が発生するのは、数10msec程度であるため、時刻T2を上記のような時刻とすることで、確実に、発電部2から発生した電圧を検知することができる。また、上記のような時刻とすることにより、ピークの最大値が充分に大きくなり、電圧V1、V2の差を充分大きくすることができる。そのため、回転子の回転方向の検知精度をより高めることができる。
【0053】
また、検出部7は、時刻T2において瞬間的に電圧の大きさを検知してもよいし、時刻T2から所定時間内の間、電圧の大きさを検知してもよい。後者の場合には、所定期間内の電圧の大きさを平均化し、その平均値に基づいて、回転子の回転方向を検出することができる。なお、前記所定時間としては、例えば、1〜2msec程度であるのが好ましい。
【0054】
検出部7には、予め閾値が設定されている。この閾値は、時刻T2における電圧V2の大きさよりも大きく、時刻T2における電圧V1の大きさよりも小さく設定されていれば特に限定されないが、これら電圧の中間値程度の大きさに設定するのが好ましい。これにより、回転子の回転方向の検出をより正確に行うことができる。
【0055】
検出部7は、時刻T2における電圧の大きさが、この閾値Vtよりも大きいか小さいかに基づいて回転子の回転方向を検出する。具体的には、検出部7は、時刻T2に入力された電圧の大きさが閾値Vtより大きければ、回転子が固定子に対して順方向に回転し、スイッチ31がOFF状態からON状態となったことを検出し、入力された電圧の大きさが閾値Vtよりも小さければ、回転子が固定子に対して逆方向に回転し、スイッチ31がON状態からOFF状態となったことを検出する。
【0056】
このように、予め設定された閾値Vtと比較することにより、より精度よく、回転子の回転方向を検出することができる。なお、閾値Vtは、例えば、検出部7の図示しない記憶部に記憶させておくことができる。また、閾値Vtは、シミュレーションや実験等によって簡単に最適な値に設定することができる。
【0057】
ここで、時刻T2における電圧V1の電圧値と電圧V2の電圧値の差は、特に限定されないが、0.5〜2.0V程度であるのが好ましい。これにより、電圧V1、V2の差が充分大きくなり、時刻T2における閾値Vtと電圧V1との差および閾値Vtと電圧V2との差をそれぞれ充分に確保することができる。そのため、より正確に、回転子の回転方向を検出することができる。
【0058】
このような検出部7は、マイクロコントローラで構成されているため、電力供給からの起動がすばやく、電力供給から上述のような検出を行うことができる状態となるまでの時間(起動時間)が極めて短く、通常、1msec以下である。ここで、図3(a)および(b)に示すような電圧V1、V2の波形が現れるのが、通常、数10msecと比較的短いため、本実施形態のように、起動時間が早い検出部7を用いることにより、確実に、検出部7に入力された電圧と閾値Vtとを比較することができ、回転子の回転方向を正確に検出することができる。すなわち、検出部7によれば、発電部2以外の外部電源からの電力供給がなくても、回転子の回転方向を精度よく検出することができる。
【0059】
−RFコントローラ9−
RFコントローラ9は、変圧部6および検出部7に接続されている。このようなRFコントローラ9は、変圧部6から供給される電力によって駆動し、例えば、検出部7の制御により、検出部7が検出した回転子の回転方向に関する信号(スイッチ31の状態に関する信号)を、所定の周波数の信号として発振する。
【0060】
−アンテナ10−
RFコントローラ9には、アンテナ10が接続されており、アンテナ10は、RFコントローラ9が発振した信号を外部機器に対して無線送信する。
【0061】
−放電部8−
放電部8は、蓄電部5および検出部7に接続されている。このような放電部8は、前述のようなアンテナ10からの信号の送信を終え、それ以上の電力供給が必要なくなった後に、蓄電部5に蓄電された電力を放電する。なお、放電部8は、必要に応じて設ければよく、例えば、発電部2から発生した電力のほぼ全部が、検出部7およびRFコントローラ9の駆動に用いられるような場合には、放電部8は、省略してもよい。
【0062】
以上、送信器1について詳細に説明した。このような送信器1によれば、外部電源等を用いなくても、回転子の回転方向を正確に検出することができる。
【0063】
以上、本発明の回転方向検出装置および回転方向検出方法について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の回転方向検出装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0064】
また、前述した実施形態では、回転子の回転方向に関する信号を無線で送信しているが、有線で送信してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1‥‥回転方向検出装置(送信器)
2‥‥発電部
3‥‥回転手段
31‥‥スイッチ
311、312‥‥押圧部
4‥‥整流部
5‥‥蓄電部
6‥‥変圧部
7‥‥検出部
8‥‥放電部
9‥‥RFコントローラ
10‥‥アンテナ
100‥‥筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子および該固定子に対して回転可能な回転子を有し、前記固定子に対して前記回転子が回転することにより交流電圧を発生する発電部と、
前記回転子を前記固定子に対して第1方向または前記第1方向と逆の第2方向に回転させる回転手段と、
前記発電部から発生した電圧により駆動し、前記回転子の前記固定子に対する回転方向を検出する検出部とを有し、
前記検出部は、その駆動を開始した時刻から所定時間が経過した時刻における前記発電部から発生する電力の電圧値を検知し、検知した電圧値の大きさに基づいて、前記固定子に対する前記回転子の回転方向を検出することを特徴とする回転方向検出装置。
【請求項2】
前記回転子が前記固定子に対して前記第1方向へ回転することにより前記発電部から発生する第1電圧と、前記回転子が前記固定子に対して前記第2方向へ回転することにより前記発電部から発生する第2電圧とで、前記回転子が前記固定子に対して回転を開始した時刻を基準とするピークの発生タイミングが異なるように構成されている請求項1に記載の回転方向検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記第1電圧および前記第2電圧のうちの一方からはピークが発生し、他方からはピークが発生していない時刻において、前記電圧値を検知する請求項1または2に記載の回転方向検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、検知した前記電圧の大きさが所定の閾値に対して大きいか小さいかに基づいて前記固定子に対する前記回転子の回転方向を検出する請求項1ないし3のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【請求項5】
前記回転手段は、毎回、同じ回転角および回転速度で前記回転子を前記固定子に対して前記第1方向または第2方向へ回転させる請求項1ないし4のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【請求項6】
前記回転手段は、前記回転子を前記固定子に対して前記第1方向に回転させる場合と前記第2方向に回転させる場合とで、前記回転子の回転速度が等しくなるよう構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【請求項7】
前記回転手段は、前記回転子を前記固定子に対して前記第1方向に回転させる場合と前記第2方向に回転させる場合とで、前記回転子の回転角が等しくなるよう構成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【請求項8】
前記回転手段は、第1状態と第2状態とに切り替え可能なスイッチを有し、前記スイッチを前記第1状態から第2状態に切り替えると前記回転子が前記固定子に対して前記第1方向に回転し、前記第2状態から前記第1状態に切り替えると前記回転子が前記固定子に対して前記第2方向に回転するよう構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の回転方向検出装置。
【請求項9】
固定子および該固定子に対して第1方向または前記第1方向と逆の第2方向に回転可能な回転子を有し、前記固定子に対して前記回転子が回転することにより交流電圧を発生する発電部の、前記固定子に対する前記回転子の回転方向を検出部によって検出する回転方向検出方法であって、
前記検出部は、前記発電部から発生する電圧によって駆動し、その駆動を開始した時刻から所定時間が経過した時刻における前記発電部から発生する電力の電圧値を検知し、検知した電圧値の大きさに基づいて、前記固定子に対する前記回転子の回転方向を検出することを特徴とする回転方向検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−215443(P2012−215443A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80024(P2011−80024)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】