説明

回転/及び又は上下動/及び又は傾動操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造

【課題】操作軸の長さに拘らず良好な防水機能が得られ、しかも、つまみで覆われるようにコンパクトに形成できる防水パッキング構造を提供する。
【解決手段】回転操作部品2の操作軸2aがパネル1の穴1aから突出するようにパネル1に取り付けられる前記操作部品2の前記操作軸2aの回りに前記パネル1の表面から突出する円筒面を有する部材5を設け、前記円筒面と当接する略円筒面形状の円筒形状部と前記円筒形状部と連なる頂部とで形成され、前記頂部に設けた穴4aの縁面が前記操作軸2aに圧接するパッキング4を前記円筒面に被せ、前記円筒形状部にリング形状部材6を嵌めて前記パッキングの円筒形状部を前記部材5の円筒面に圧接した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子機器に係わり、特に、その回転/及び又は上下動/及び又は傾動操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平2003−4144号公報に開示された従来のシャフトの防水パッキングの例を図9〜図12に示す。図9は従来の回転操作部品の操作軸回りの防水パッキングの例を示す斜視図、図10は同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキングを切り欠いて示す斜視図、図11は同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキングを示す分解斜視図、図12は同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキングを示す断面図である。
【0003】
図11において、ロータリ部品102のシャフト105は軸受103に回転自在に支持されている。軸受103の周囲にはおねじが形成されており、ロータリ部品102のシャフト105を操作パネル101の穴に挿通させた状態で軸受103のおねじにナット104を螺合させてロータリ部品102を操作パネル101に固定する。
【0004】
パッキング107の円筒部上部には図11に示すように4個のボス107aが設けられており、このボス107aは図10に示すように、つまみ106の凹部に嵌合されてパッキング107がつまみ106に取り付けられる。パッキング107の下部にはスカート状のヘラ107bが形成されている。
【0005】
このようにパッキング107が取り付けられたつまみ106をシャフト105に嵌合させる。なお、つまみ106の嵌合穴およびシャフト105の上端はD形状となっており、つまみ106とシャフト105は一体となって回転する。
【0006】
このように組み付けられたパッキング107は図12の断面図に示すように、円筒部下部とつまみ106との圧接面で第1シール部cを形成し、ヘラ107bの周囲と操作パネル101の上面との圧接面で第2シール部dを形成する。なお、図12に示すように、つまみ106とパッキング107の外径は略同一の外径Dとなっている。
【0007】
上記した従来の防水パッキングはシャフトの長さおよび防水パッキングとシャフトの嵌合状態が適切であると、図13(b)に示すようにパッキングのヘラと操作パネルの圧接状態が正常となり良好な防水機能が得られる。
【0008】
シャフトの長さが短いときの状態を図13(a)に示す。この場合はつまみの高さが2点鎖線で比較するように低くなり、つまみの下端が図の円内に示すようにパッキングのヘラを押さえる状態となる。この場合はシャフトを回転させるトルクが大きくなる。
【0009】
また、シャフトの長さが長いときの状態を図13(c)に示す。この場合はつまみの高さが2点鎖線で比較するように高くなり、図の円内に示すようにパッキングのヘラが操作パネルから離れ防水機能が得られない。
【0010】
さらに、つまみの嵌合状態での上下位置に追従させるようにヘラの外径を大きくして撓み量を大きくする必要があり、図9に示すように防水パッキング7が外部から見えて見栄えが悪い。そして、防水パッキング7と操作パネル101との圧接部が外部に露出しているので異物の挟み込みが発生する恐れがある。また、防水パッキングのヘラが操作パネルと面接触した状態で回転するため、異音が発生することがあった。
【特許文献1】特開平2003−4144号公報、段落0012〜段落0015、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、操作軸の長さに拘らず良好な防水機能が得られ、しかも、つまみで覆われるようにコンパクトに形成できる防水パッキング構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の防水パッキング構造は、穴が形成されたパネルと、操作軸が前記穴から突出するように前記パネルに取付けられた、回転・上下動・傾動のいずれかを行う操作部品と、前記操作軸の回りに配置された前記パネルから突出する円筒面を有する円筒部材と、前記操作軸が密接して挿通する穴を上部に有し、前記円筒面に当接し、前記円筒部材を覆う防水パッキングと、前記円筒面と当接する前記防水パッキングの外周部に嵌めて、前記円筒面に前記防水パッキングを圧接するリング形状部材と、からなるものである。
【0013】
また、前記防水パッキング構造において、前記防水パッキングの前記操作軸方向の断面形状における前記操作軸が密接して挿通する穴の縁面形状を半円形としたものである。
【0014】
また、前記各防水パッキング構造において、前記各防水パッキング構造において、前記パネルの表面に円形溝が形成され、前記防水パッキングの下端が前記円形溝に嵌め込まれる、ものである。
【0015】
また、前記各防水パッキング構造において、前記円形溝の底および前記防水パッキングの下端を互いに密接する歯形形状としたものである。
【0016】
また、前記各防水パッキング構造において、前記円筒部材を、前記操作部品の前記操作軸の軸受周囲に形成されたおねじと螺合し、前記操作部品をパネルに締着するナットとしたものである。
【0017】
また、同各防水パッキング構造において、前記円筒面を有する部材を、前記パネルに形成されたリング状突起としたしたものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明の防水パッキング構造によれば、シャフトの長さに拘らず良好な防水機能が得られ、しかも、つまみで覆われるようにコンパクトに形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施例1である回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を示す外観斜視図である。
【図2】同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を切り欠いて示す斜視図である。
【図3】同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を示す分解斜視図である。
【図4】同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキングの部材構造を一部切り欠きまたは透視して示す分解斜視図である。
【図5】図5(a)は同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を示す断面図、図5(b)は図5(a)におけるA部拡大図である。
【図6】この発明の実施例2である回転および上下動操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を一部透視して示す断面図である。
【図7】この発明の実施例3である回転および傾動操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を一部部材を省略し透視して示す断面図である。
【図8】同操作軸回りの防水パッキング構造を示す分解斜視図である。
【図9】従来の回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造の例を示す斜視図である。
【図10】同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を切り欠いて示す斜視図である。
【図11】同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキンをグ構造を示す分解斜視図である。
【図12】同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を示す断面図である。
【図13】同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造の作用を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下この発明を実施するための形態を実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0021】
図1はこの発明の実施例1である回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を示す外観斜視図、図2は同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を切り欠いて示す斜視図、図3は同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を示す分解斜視図、図4は同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造の部材を一部切り欠きまたは透視して示す分解斜視図、図5(a)は同回転操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を示す断面図、図5(b)は図5(a)におけるA部拡大図である。
【0022】
図3において、回転操作部品2の操作軸2aはおねじ2bが形成された軸受に回転自在に支持されている。回転操作部品2の操作軸2aをパネル1の操作軸挿通穴1aに挿通させた状態でおねじ2bにナット5を螺合させて回転操作部品2をパネル1に固定する。ナット5の周囲面は滑らかな円筒面であり、ナット5の上面には工具係合溝が設けられており、ナット5はこの工具係合溝と係合する工具により締め付けられる。
【0023】
このようにパネル1に固定された回転操作部品2の操作軸2aを挿通させるようにして防水パッキング4を被せ、防水パッキング4の下端をパネル1に設けた円形溝1bに嵌入させる。なお、操作軸2aを挿通させる防水パッキング4の穴4aの縁面は半円回転面に形成されており、Oリングを挿通した軸と同様の圧接接触状態が得られる。
【0024】
図4に示すように、防水パッキング4の下端とパネル1の円形溝1bの底は互いに密接する歯形形状となっており、防水パッキング4はパネル1に対して回転しないように安定して支持されている。
【0025】
このように、ナット5に被せた防水パッキング4の下端部の円筒形状部に平板形状のリング形状部材6が嵌められる。このリング形状部材6は防水パッキング4の円筒形状部内面をナット5の円筒面に圧接する。
【0026】
このようにパネル1に固定され、操作軸2a回りに防水パッキング4が配置された回転操作部品2の操作軸2aにつまみ3が嵌合される。つまみ3の操作軸嵌合穴3aと操作軸2aの上端は図2に示すように、D形状となっており、つまみ3と操作軸2aは一体となって回転する。
【0027】
図5により、防水パッキング4のシール構造を説明する。防水パッキング4の穴4aの内径は操作軸2aの外径より小さく穴4aは操作軸2aに圧接されて第1シール部aが形成される。また、防水パッキング4の下端の円筒形状部の内面はリング形状部材6によりナット5の円筒面に静止状態で圧接されて第2シール部bが形成される。
【0028】
防水パッキング4の穴4aは操作軸2aに対して滑るため、操作軸2aの長さはシール状態や操作軸2aの回転トルクに影響を与えない。そして、第1シール部aは防水パッキング4が安定した状態で固定され、Oリングと同様の圧接状態が得られるので、良好な防水機能が得られる。そして、異音が発生することがない。
【0029】
また、第2シール部bは静止圧接状態となっているので、良好な防水機能が得られ、また、防水パッキングを弾性変形させる部分を大きくする必要がないので防水パッキングをコンパクトに構成することができる。そして、パネル1の外部に水が衝突しても、第1シール部aと第2シール部bで防水されてパネル1の操作軸挿通穴1aからパネル1内に水が侵入することが完全に防止される。
【0030】
上記のようにコンパクトに形成された防水パッキング4はつまみ3に完全に覆われて、図に示すように外部から見えず、見栄えが良くなる。また、防水パッキング4とパネル1の間に異物が挟み込もれる恐れがない。
【実施例2】
【0031】
図6はこの発明の実施例2である回転および上下動操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を一部透視して示す断面図である。この例では実施例1と同様のパネル1にスイッチ付きボリュームのような回転および上下動操作部品7が取り付けられる。
【0032】
上下動操作部品7のおねじ7bと螺合する実施例1と同様のナット5により上下動操作部品7はパネル1に締着され、上下動操作部品7の操作軸7aには実施例1と同様のつまみが嵌着される。そして、実施例1と同様の防水パッキング4により操作軸7a回りの防水機能を第1シール部aおよび第2シール部bで得ている。
【0033】
操作軸7aは図6に矢印で示すように、回転操作および上下動操作がされるが、操作軸7aには防水パッキング4がOリングと同様に滑らかに圧接されているので防水パッキング4の変形および滑りによりスムーズな上下動操作が可能である。
【実施例3】
【0034】
図7はこの発明の実施例3である回転および傾動操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造を一部部材を省略し透視して示す断面図、図8は同操作軸回りの防水パッキング構造を示す分解斜視図である。
【0035】
この例では図8に示すように回転および傾動操作部品12はシャーシ9にねじ11、11で締着されるホルダ10によりシャーシ9の側面に固定される。このように固定された傾動操作部品12の操作軸12aは図7に示すように、パネル8の操作軸挿通穴8aを挿通する。操作軸挿通穴8aの周囲に形成された円筒形のリブ8bはパネル8の面より突出している。リブ8bの周囲には円形溝8cが形成されている。
【0036】
操作軸挿通穴8aは操作軸12aに対して隙間が生じる程度に大きく、操作軸12aは図7に示すように傾動可能である。実施例1と同様の防水パッキング4はその下端が円形溝8cに嵌合するようにリブ8bに被せられリング形状部材6によりリブ8bの周囲に圧接されている。
【0037】
防水パッキング4の穴4aは操作軸12aに圧接し第1シール部aを構成し、リブ8bに圧接する防水パッキング4の円筒面は第2シール部bを構成する。防水パッキング4は図7に示すように、倒れる方向に弾性変形して操作軸12a傾動動作を可能とする。このように、傾動動作を行う操作部品にこの発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明の操作部品の操作軸回りの防水パッキング構造は、操作軸の長さに拘らず良好な防水機能が得られ、しかも、つまみで覆われるようにコンパクトに形成できるので、船舶等に搭載される電子機器に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 パネル、1a 操作軸挿通穴、1b 円形溝
2 回転操作部品、2a 操作軸、2b おねじ
3 つまみ、3a 操作軸嵌合穴
4 防水パッキング、4a 穴
5 ナット
6 リング形状部材
7 回転および上下動操作部品、7a 操作軸、7b おねじ
8 パネル、8a 操作軸挿通穴、8b リブ、8c 円形溝
9 シャーシ
10 ホルダ
11 ねじ
12 回転および傾動操作部品、12a 操作軸
a 第1シール部、b 第2シール部
101 操作パネル
102 ロータリ部品
103 軸受
104 ナット
105 シャフト
106 つまみ
107 パッキング、107a ボス、107b ヘラ
c 第1シール部、d 第2シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴が形成されたパネルと、
操作軸が前記穴から突出するように前記パネルに取付けられた、回転・上下動・傾動のいずれかを行う操作部品と、
前記操作軸の回りに配置された前記パネルから突出する円筒面を有する円筒部材と、
前記操作軸が密接して挿通する穴を上部に有し、前記円筒面に当接し、前記円筒部材を覆う防水パッキングと、
前記円筒面と当接する前記防水パッキングの外周部に嵌めて、前記円筒面に前記防水パッキングを圧接するリング形状部材と、
からなる防水パッキング構造。
【請求項2】
前記防水パッキングの前記操作軸方向の断面形状における前記操作軸が密接して挿通する穴の縁面形状が、半円形である、
請求項1に記載された防水パッキング構造。
【請求項3】
前記パネルの表面に円形溝が形成され、
前記防水パッキングの下端が前記円形溝に嵌め込まれる、
請求項1または2に記載された防水パッキング構造。
【請求項4】
前記円形溝の底および前記防水パッキングの下端が互いに密接する歯形形状である、
請求項1から3のいずれかに記載された防水パッキング構造。
【請求項5】
前記円筒部材が、前記操作部品の前記操作軸の軸受周囲に形成されたおねじと螺合し、前記操作部品をパネルに締着するナットである、
請求項1から4のいずれかに記載された防水パッキング構造。
【請求項6】
前記円筒面を有する部材が、前記パネルに形成されたリング状突起である、
請求項1から4のいずれかに記載された防水パッキング構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−287366(P2010−287366A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138896(P2009−138896)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】