説明

固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法

【課題】耐久性が高く広範囲な電流密度において高い出力電圧が得られ、乾燥や湿潤が繰り返されるような環境下で使用しても高い耐久性を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1のカーボン層塗工液層の上に、第1のガス拡散層を被せた後、前記第1のカーボン層塗工液層を乾燥して第1のカーボン層を形成する工程と、前記第1のカーボン層と、固体高分子電解質膜の一方の面に形成された前記第1の触媒層とを接するようにして加熱接合する工程と、を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲な電流密度で高い出力電圧を得られる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素を使用する燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり環境への悪影響がほとんどない発電システムとして注目されている。なかでも、近年、プロトン導電性のイオン交換膜を電解質として使用する固体高分子形燃料電池は、作動温度が低く、出力密度が高く、且つ小型化が可能なため、車載用電源などの用途に有望視されている。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、上記のように作動温度が低い(50〜120℃)ことが特徴であるが、一方では、そのために排熱が補機動力などに有効利用しがたい難点がある。これを補う意味でも固体高分子形燃料電池には、水素および酸素の利用率の高い性能、すなわち、高いエネルギー効率および高い出力密度が要求されている。
【0004】
固体高分子形燃料電池が上記要求を満たすためには、電池を構成する要素のうち特にガス拡散電極(通常は触媒を含む触媒層とカーボンペーパー、カーボンクロス等からなるガス拡散層とにより構成される)および該電極をイオン交換膜の両表面に形成した膜電極接合体が重要である。従来、ガス拡散電極の触媒層は、電極反応を促進する触媒粉末と、導電性を高め、かつ水蒸気の凝縮による多孔体の閉塞(フラッディング)を防止するための含フッ素イオン交換樹脂とを、エタノールなどのアルコール類の溶媒に溶解または分散させた粘性混合物を用いて作製している。そして、この粘性混合物をイオン交換膜の表面に直接塗布するか、または別のシート状基材に塗布して得られる層をイオン交換膜の表面に転写または接合することにより形成されている。しかしながら、このようにして得られるガス拡散電極は、フラッディング耐性、ガス拡散性、低加湿下での導電性、電極界面での密着性、および乾燥湿潤繰り返し耐性について必ずしも満足されるものではないという問題を有していた。
【0005】
これに対し、例えば、排水性を高めフラッディングを防止するために、触媒層とガス拡散層との間に、導電性繊維状炭素や疎水化繊維状炭素などで構成された中間層を設ける方法(特許文献1参照)や、撥水性の異なるカーボンを用いて触媒層とガス拡散層との間に微多孔質層を設ける方法(特許文献2参照)、低加湿下での発電特性を確保し幅広い電流密度領域での発電特性改良のために、触媒層とガス拡散層との間に保水機能を有する中間層を設ける方法(特許文献3参照)などが検討されている。しかし、これらの方法では発電特性は改善されるが、電極界面での密着性や乾燥湿潤繰り返し耐性の点で十分ではないという問題があった。
【0006】
一方、密着性改良という観点では、触媒層上にカーボン粉末とフッ素樹脂および分散
媒を含むカーボン中間層インクを塗布して、前記インク層が湿潤状態のうちに、前記インク層上にガス拡散層を配置する方法(特許文献4参照)が検討されたが、塗布する基材が触媒層または膜の上に形成された触媒層であるため、フッ素樹脂および分散媒の滲みこみ量が多く、得られる触媒層のガス拡散性が低下するという問題があったり、分散媒の滲みこみが速く乾燥しやすいため、ガス拡散層との接着性が十分に安定しないという問題があった。
【0007】
また、ガス拡散層の上にカーボンと撥水性材料からなる撥水層を設け、さらにその上にカーボンとイオン交換樹脂材料からなる親水層を設け、親水層側を触媒層と加熱プレスすることで密着性を改良する方法(特許文献5、6参照)も検討されたが、親水層を形成するために、カーボンとイオン交換樹脂材料からなるインクを撥水層上に塗布すると、触媒層と親水層との界面の接着に大きく寄与すると考えられるイオン交換樹脂材料が、後の工程で接着する界面と反対側の撥水層側に多く存在してしまい、従来よりは接着性は改良されるものの、十分ではないという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2005−190701号公報
【特許文献2】特開2006−004879号公報
【特許文献3】特開2006−244789号公報
【特許文献4】特開2003−282079号公報
【特許文献5】特開2004−221056号公報
【特許文献6】特開2004−214173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、耐久性が高く広範囲な電流密度において高い出力電圧が得られ、特に乾燥や湿潤が繰り返されるような環境下で使用しても高い耐久性を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を製造できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法は、第1の触媒層と第1のガス拡散層とを有する第1の電極と、第2の触媒層と第2のガス拡散層とを有する第2の電極と、前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜と、前記第1の触媒層と前記第1のガス拡散層との間にカーボンとイオン交換樹脂とを含む第1のカーボン層と、を備える固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、下記の工程(a)〜(c)、(p)、(q1)を有することを特徴とする。
(a)基材フィルムの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層用塗工液を塗工して第1のカーボン層塗工液層を形成する工程。
(b)工程(a)で形成された前記第1のカーボン層塗工液層の上に、前記第1のガス拡散層を被せた後、前記第1のカーボン層塗工液層を乾燥して前記第1のカーボン層を形成する工程。
(c)工程(b)で形成された前記第1のカーボン層および前記第1のガス拡散層を有する積層体から基材フィルムを剥がして、積層体(A)を得る工程。
(p)前記固体高分子電解質膜の一方の面に前記第1の触媒層を形成する工程。
(q1)工程(c)で得られた前記積層体(A)の前記第1のカーボン層と、工程(p)で前記固体高分子電解質膜の一方の面に形成された前記第1の触媒層とを接するようにして加熱接合する工程。
【0011】
前記第1のカーボン層に含まれるイオン交換樹脂が含フッ素イオン交換樹脂であり、前記第1のカーボン層の前記カーボンと前記含フッ素イオン交換樹脂が質量比で1:0.1〜1:5であることが好ましい。
【0012】
前記第1のカーボン層の厚みが1〜60μmであることが好ましい。
【0013】
前記第2の電極の前記第2の触媒層と前記第2のガス拡散層との間に、カーボンとイオン交換樹脂とを含む第2のカーボン層を有し、下記の工程(a’)〜(c’)、(p’)、(q’1)をさらに有することが好ましい。
(a’)基材フィルムの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層用塗工液を塗工して第2のカーボン層塗工液層を形成する工程。
(b’)工程(a’)で形成された前記第2のカーボン層塗工液層の上に、前記第2のガス拡散層を被せた後、前記第2のカーボン層塗工液層を乾燥して前記第2のカーボン層を形成する工程。
(c’)工程(b’)で形成された前記第2のカーボン層および前記第2のガス拡散層を有する積層体から基材フィルムを剥がして、積層体(A’)を得る工程。
(p’)前記固体高分子電解質膜の一方の面に前記第2の触媒層を形成する工程。
(q’1)工程(c’)で得られた前記積層体(A’)の前記第2のカーボン層と、工程(p’)で前記固体高分子電解質膜の一方の面に形成された前記第2の触媒層とを接するようにして加熱接合する工程。
【0014】
前記第2のカーボン層に含まれるイオン交換樹脂が含フッ素系イオン交換樹脂であり、前記第2のカーボン層の前記カーボンと前記含フッ素イオン交換樹脂が質量比で1:0.1〜1:5であることが好ましい。
【0015】
前記第2のカーボン層の厚みが1〜60μmであることが好ましい。
【0016】
また、別の本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法は、第1の触媒層と第1のガス拡散層とを有する第1の電極と、第2の触媒層と第2のガス拡散層とを有する第2の電極と、前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜と、前記第1の触媒層と前記第1のガス拡散層との間に、カーボンとイオン交換樹脂とを含む第1のカーボン層Aおよび第1のカーボン層Bと、を備える固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、下記の工程(g)〜(j)、(p)、(q4)を有することを特徴とする。
(g)基材フィルムの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層A用塗工液を塗工し、乾燥して第1のカーボン層Aを形成する工程。
(h)工程(g)で形成された前記第1カーボン層Aの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層B用塗工液を塗工して第1のカーボン層B塗工液層を形成する工程。
(i)工程(h)で形成された前記第1のカーボン層B塗工液層の上に、前記第1のガス拡散層を被せた後、該第1のカーボン層B塗工液層を乾燥して第1のカーボン層Bを形成する工程。
(j)工程(i)で形成された前記第1カーボン層Aおよび前記第1のカーボン層Bおよび前記第1のガス拡散層を有する積層体から基材フィルムを剥がして、積層体(D)を得る工程。
(p)前記固体高分子電解質膜の一方の面に前記第1の触媒層を形成する工程。
(q4)工程(j)で得られた前記積層体(D)の前記第1のカーボン層Aと、工程(p)で前記固体高分子電解質膜の一方の面に形成された前記第1の触媒層とを接するようにして加熱接合する工程。
【0017】
前記第1のカーボン層Aの厚みが0.5〜20μmであることが好ましい。
【0018】
前記第2の触媒層と前記第2のガス拡散層との間に、カーボンとイオン交換樹脂とを含む第2のカーボン層Aおよび第2のカーボン層Bを有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、下記の工程(g’)〜(j’)、(p’)、(q4’)をさらに有することが好ましい。
(g’)基材フィルムの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層A用塗工液を塗工し、乾燥して第2のカーボン層Aを形成する工程。
(h’)工程(g’)で形成された第2のカーボン層Aの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層B用塗工液を塗工して第2のカーボン層B塗工液層を形成する工程。
(i’)工程(h’)で形成された第2のカーボン層B塗工液層の上に、前記第2のガス拡散層を被せた後、該第2のカーボン層B塗工液層を乾燥して第2カーボン層Bを形成する工程。
(j’)工程(i’)で形成された前記第2のカーボン層Aおよび前記第2のカーボン層Bおよび前記第2のガス拡散層を有する積層体から基材フィルムを剥がして、積層体(D’)を得る工程。
(p’)前記固体高分子電解質膜の一方の面に前記第2の触媒層を形成する工程。
(q4’)工程(j’)で得られた前記積層体(D’)の前記第2のカーボン層Aと、工程(p’)で前記固体高分子電解質膜の一方の面に形成された前記第2の触媒層とを接するようにして加熱接合する工程。
【0019】
前記第2のカーボン層Aの厚みが0.5〜20μmであることが好ましい。
【0020】
前記第1の電極がカソードであることが好ましい。
【0021】
前記カーボンが、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法によれば、耐久性が高く広範囲な電流密度において高い出力電圧が得られ、乾燥や湿潤が繰り返されるような環境下で使用しても高い耐久性を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
【0024】
〔第1の実施形態〕
図1は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体とも記す。)の一例を示す断面図である。膜電極接合体100は、第1の触媒層12および第1のカーボン層14および第1のガス拡散層16を有する第1の電極120と、第2の触媒層22および第2のカーボン層24および第2のガス拡散層26を有する第2の電極130と、第1の電極120の第1の触媒層12と第2の電極130の第2の触媒層22との間に固体高分子電解質膜40とを備えたものである。
【0025】
第1の電極120は、アノードであってもよく、カソードであってもよいが、第1の電極120がカソードであることが好ましい。第2の電極130は、第1の電極120がアノードの場合、カソードであり、第1の電極120がカソードの場合、アノードである。
【0026】
(固体高分子電解質膜)
固体高分子電解質膜40は、イオン交換樹脂膜からなる。
固体高分子電解質膜40のイオン交換樹脂としては、耐久性の観点から含フッ素イオン交換樹脂を用いるのが好ましいが、非含フッ素イオン交換樹脂を用いることもできる。
【0027】
非含フッ素イオン交換樹脂としては、スルホン酸基を有し、かつフッ素原子を含まないポリマーが挙げられる。該ポリマーとしては、たとえば、芳香環を有し、該芳香環にスルホン酸基が導入された構造を有するポリマーであって、イオン交換容量が0.8〜3.0ミリ当量/g乾燥樹脂であるポリマーが挙げられる。具体的には、スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリベンゾオキサゾール、スルホン化ポリベンゾチアゾール、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリフェニレンスルホキシド、スルホン化ポリフェニレンサルファイド、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトンケトン、スルホン化ポリイミド等が挙げられる。
【0028】
非フッ素イオン交換樹脂のイオン交換容量は、導電性およびガス拡散性の点から、1.6〜3.5ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、1.8〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。
【0029】
含フッ素イオン交換樹脂としては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボンポリマー(以下、スルホン酸型パーフルオロカーボンポリマーと記す。)が挙げられる。
【0030】
スルホン酸型パーフルオロカーボンポリマーとしては、ポリマー(A)またはポリマー(B)が好ましく、ポリマー(B)が特に好ましい。
【0031】
ポリマー(A):
ポリマー(A)は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)に基づく単位と、単位(1)とを有する共重合体である。
【0032】
【化1】

【0033】
ただし、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
【0034】
ポリマー(A)は、TFEおよび化合物(2)の混合物を重合して−SOF基を有する前駆体ポリマーを得た後、前駆体ポリマー中の−SOF基をスルホン酸基に変換することにより得られる。−SOF基のスルホン酸基への変換は、加水分解および酸型化処理により行われる。
CF=CF(OCFCFX)−O−(CF−SOF ・・・(2)。
ただし、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
化合物(2)としては、化合物(21)〜(23)が好ましい。
CF=CFO(CFn1SOF ・・・(21)、
CF=CFOCFCF(CF)O(CFn2SOF ・・・(22)、
CF=CF(OCFCF(CF))m3O(CFn3SOF ・・・(23)。
ただし、n1、n2、n3は、1〜8の整数であり、m3は、1〜3の整数である。
【0035】
ポリマー(B):
ポリマー(B)は、TFEに基づく単位と、単位(3)とを有する共重合体である。
【0036】
【化2】

【0037】
ただし、Qは、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Qは、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基である。
単結合は、CYの炭素原子と、SOHのイオウ原子とが直接結合していることを意味する。
有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
、Qのパーフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、パーフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
パーフルオロアルキレン基の炭素数は1〜6が好ましく、直鎖状であってもよく、分岐状であってもいい。
【0038】
単位(3)としては、単位(4)が好ましく、単位(41)または単位(42)がより好ましい。
【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
ただし、RF11は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、RF12は、炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基である。
ポリマー(B)は、さらに、他のモノマーに基づく繰り返し単位(以下、他の単位と記す。)を有していてもよい。
【0043】
他の単位としては、機械的強度および化学的な耐久性の点から、パーフルオロモノマーに基づく繰り返し単位が好ましく、前述の官能基を有する単位(1)、単位(5)が好ましい。単位(5)としては、単位(51)または単位(52)がより好ましい。ただし、tは、0〜5の整数であり、qは、1〜12の整数である。
【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
ポリマー(B)のEWは、400〜900g乾燥樹脂/当量(以下、g/当量と記す。)が好ましく、500〜800g/当量がより好ましい。
ポリマー(B)の質量平均分子量は、1×10〜1×10が好ましく、5×10〜5×10がより好ましい。
【0048】
ポリマー(B)の質量平均分子量は、TQ値を測定することにより評価できる。TQ値(単位:℃)は、ポリマーの分子量の指標であり、長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件でポリマーの溶融押出しを行った際の押出し量が100mm/秒となる温度である。たとえば、TQ値が200〜300℃であるポリマーは、ポリマーを構成する繰り返し単位の組成で異なるが、質量平均分子量が1×10〜1×10に相当する。
【0049】
含フッ素イオン交換樹脂のイオン交換容量は、導電性およびガス拡散性の点から、1.1〜1.8ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、1.25〜1.65ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。
【0050】
固体高分子電解質膜40は、過酸化物の生成を抑制する抑制剤を含むことが好ましい。固体高分子形燃料電池を長時間運転した場合、過酸化物の生成により、固体高分子電解質膜40が劣化し、固体高分子形燃料電池の出力電圧が低下する。該抑制剤は、後述の電解質膜用塗工液に含ませておくことが好ましい。
【0051】
固体高分子電解質膜40の厚さは、50μm以下が好ましく、3〜40μmがより好ましく、5〜30μmが特に好ましい。固体高分子電解質膜40の厚さが50μm以下であれば、固体高分子電解質膜40が乾燥した状態になりにくく、固体高分子形燃料電池の発電特性の低下が抑えられる。固体高分子電解質膜40の厚さが3μm以上であれば、短絡が起きにくい。
【0052】
固体高分子電解質膜40の製造方法としては、イオン交換樹脂がポリマー(A)または(B)の場合、下記の方法(x)または方法(y)が挙げられ、厚さの精度および生産性の点から、方法(y)が好ましい。
(x)−SOF基を有する前駆体ポリマーを膜状に成形した後、−SOF基をスルホン酸基に変換する方法。
(y)ポリマー(A)または(B)を膜状に成形する方法。
【0053】
方法(x):
−SOF基を有する前駆体ポリマーを膜状に成形する方法としては、押出成形法、加圧プレス成形法、延伸法等が挙げられる。
−SOF基のスルホン酸基への変換は、加水分解および酸型化処理により行われる。
【0054】
方法(y):
ポリマー(A)または(B)を膜状に成形する方法としては、ポリマー(A)または(B)を含む電解質膜用塗工液を基材フィルムの上に塗工、乾燥する方法(キャスト法)が挙げられる。
【0055】
電解質膜用塗工液は、アルコールおよび水を含む分散媒に、ポリマー(A)または(B)を分散させた分散液である。
乾燥温度は、70〜170℃が好ましい。
乾燥後または乾燥と同時に、高分子電解質膜40は熱処理(アニール処理)される。
熱処理温度は、100〜250℃が好ましく、130〜220℃が好ましく、ポリマー(A)または(B)のガラス転移温度(Tg)超、(Tg+100)℃以下が特に好ましい。
【0056】
熱処理時間は、5分〜3時間が好ましく、10分〜1時間がより好ましい。熱処理時間が5分以上であれば、高分子電解質膜40の強度が充分となる。熱処理時間が3時間以下であれば、生産性が良好となる。
【0057】
(カーボン層)
第1のカーボン層14および第2のカーボン層24(以下、まとめてカーボン層とも記す)は、第1の触媒層12と第1のガス拡散層16との間、第2の触媒層22と第2の触媒層26との間に存在し、カーボンおよびイオン交換樹脂を含む。
カーボン層は、カソード側およびアノード側のどちらか一方に存在してもよいが、カソード側にある方が好ましく、両側にあるとより好ましい。
【0058】
カーボン層を構成するカーボンとしては、カーボンブラックなどのカーボン粉末もあげられるが、繊維状の形状を有するカーボンファイバーが好ましく、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。カーボンナノファイバーの繊維径が小さすぎると、製造上コストが高くなりやすく、分散の際に繊維構造が破壊されやすくなるもおそれがある。繊維径が大きすぎるとカーボン層を塗工で作製して最適な空隙構造をつくることが困難である。繊維長が長すぎるとカーボン層を作製するためのカーボン層用塗工液において、分散性が悪くなる。繊維径としては、特に10〜200nmが好ましく、繊維長としては5〜30μmが好ましい。
【0059】
このようなカーボンナノファイバーとしては、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ(シングルウォール、ダブルウォール、マルチウォール、カップ積層型など)等が挙げられるが、なかでも、微細でかつ電子伝導性を有するカーボンナノファイバーが好ましく用いられる。カーボンナノファイバーは、カーボン層と触媒層との界面において、触媒層を構成する触媒金属や、触媒金属を担持した電子伝導性物質であるカーボン担体に絡まることにより、この電子伝導性物質の点接触による導電パスに加えて新たな導電パスが発現するため、触媒層の電子伝導性が向上する。
【0060】
イオン交換樹脂としては、カーボン層のバインダーおよび触媒層との接着性が確保できれば特に限定されず、前述した固体高分子電解質膜で用いることができるイオン交換樹脂を用いることができる。耐久性の観点や、前述したカーボンナノファイバーをよく分散させるという観点から、前述した含フッ素イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
前記カーボン層を構成するイオン交換樹脂(F)とカーボン(C)の重量比F/Cは、0.1〜2.0が好ましい。F/Cの値が0.1より小さいと得られるカーボン層が割れやすく、触媒層との密着性も低くなり好ましくない。2.0より大きいと触媒層との密着性は良いが、カーボン層が緻密な構造となり、ガスの拡散抵抗が大きくなりすぎるので好ましくない。0.2〜1.0であるとカーボン層が割れにくく、またガスの拡散性も良好で、かつ触媒層との密着性も良好であるので好ましい。
【0062】
カーボン層の厚みは1〜60μmであることが好ましい。厚みが1μmより薄いと、後で行う触媒層との加熱プレスの際に密着性が十分に確保できないので好ましくない。60μmより厚いと、塗布するインク液量が多くなり、塗布ムラが発生しやすくなり密着性が安定的に得られなくなったり、ガス拡散性の改良効果が小さくなるので好ましくない。カーボン層の厚みが2〜40μmであると、ガス拡散性の改良効果と密着性の確保が可能であり、かつ密着性が安定的に得られるので特に好ましい。
【0063】
(触媒層)
第1の触媒層12および第2の触媒層22(以下、まとめて触媒層とも記す)は、電極触媒およびイオン交換樹脂を含む。
電極触媒は、貴金属を含むことが好ましい。貴金属としては、白金または白金合金が好ましい。
電極触媒としては、カーボン担体に、白金または白金合金が担持された担持触媒が好ましい。
【0064】
カーボン担体としては、活性炭、カーボンブラック等が挙げられる。
カーボン担体の比表面積は、100m/g以上が好ましい。カーボン担体の比表面積は、BET比表面積装置によりカーボン表面への窒素吸着により測定する。
白金合金としては、白金を除く白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム。)、金、銀、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、およびスズからなる群から選ばれる1種以上の金属と白金との合金が好ましい。該白金合金には、白金と合金化される金属と、白金との金属間化合物が含まれていてもよい。
アノード用の白金合金としては、一酸化炭素を含む燃料ガスがアノードに供給される場合には、電極触媒の活性安定性の点から、白金とルテニウムとを含む合金が好ましい。
白金または白金合金の担持量は、電極触媒(100質量%)のうち、10〜80質量%が好ましい。
【0065】
イオン交換樹脂としては、前述した固体高分子電解質膜で用いることができるイオン交換樹脂を用いることができる。耐久性の観点から、前述した含フッ素イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0066】
非フッ素イオン交換樹脂のイオン交換容量は、導電性およびガス拡散性の点から、1.6〜3.5ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、1.8〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。
【0067】
イオン交換樹脂の質量(F’)と電極触媒中のカーボンの質量(C’)との質量比(F’/C’)は、電極の導電性および撥水性の点から、0.2〜2.5が好ましく、0.6〜2.0がより好ましい。F’/C’が0.2以上であれば、触媒層が割れにくい。F’/C’が2.5以下であれば、触媒層12が緻密な構造とならず、ガス拡散性が良好となる。
触媒層は、単層であってもよく、複数層であってもよい。複数層の場合、各層のF’/C’は、高分子電解質膜40に近くなるにつれて、しだいに大きくすることが好ましい。
【0068】
触媒層の単位面積あたりの貴金属の量は、0.01〜0.5mg/cmが好ましく、0.02〜0.4mg/cmがより好ましく、0.05〜0.3mg/cmが特に好ましい。0.1mg/cmより少ない量の触媒層を塗工形成する際には、塗工液量が少なくなり得られる触媒層の均一性が悪くなるおそれがあるが、該場合には電極触媒として白金または白金合金が低担持率で担持された担持触媒を用いることにより、塗工液量が増大するので均一な触媒層が得ることができる。
【0069】
触媒層の厚さは、触媒層のガス拡散性を良好にし、かつ固体高分子形燃料電池の発電特性を向上させる点から、20μm以下が好ましく、1〜15μmがより好ましい。また、触媒層の厚さは、均一であることが好ましい。
【0070】
(ガス拡散層)
第1のガス拡散層16および第2のガス拡散層26(以下、まとめてガス拡散層とも記す)は、ガス拡散性基材を有する。
ガス拡散性基材は、導電性を有する多孔質基材である。ガス拡散性基材としては、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等が挙げられる。
ガス拡散性基材はそのまま用いることもできるが、必要に応じて撥水処理を行ってもよい。撥水処理は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す。)とカーボンブラックとの混合物等によって撥水処理されていることが好ましい。撥水処理することにより、カソード側の触媒層で発生する水等によるガス拡散性基材の細孔の閉塞が抑えられるため、ガス拡散性の低下が抑制される。また、撥水処理の際にカーボンブラックを用いることにより、膜電極接合体100の導電性が良好となる。
ガス拡散層の厚さは、100〜400μmが好ましく、140〜350μmがより好ましい。
【0071】
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体100の製造方法としては、例えば下記の方法(I)または方法(II)が挙げられる。
【0072】
(方法(I))
方法(I)は、下記の工程(a)〜(c)、(a’)〜(c’)、(p)((p−1)〜(p−3))、(p’)((p’−1)〜(p’−3))、(q1)、(q’1)を有する方法である。
(a)図2(1)に示すように、基材フィルム50の上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層用塗工液を塗工して第1のカーボン層塗工液層18を形成する工程。
(b)図2(1)、(2)に示すように、工程(a)で形成された第1のカーボン層塗工液層18の上に、第1のガス拡散層16を被せた後、第1のカーボン層塗工液層18を乾燥して第1のカーボン層14を形成する工程。
(c)図2(3)に示すように、工程(b)で形成された第1のカーボン層14および第1のガス拡散層16を有する積層体から基材フィルム50を剥がして、積層体(A)160を得る工程。
(a’)図2(1)に示すように、基材フィルム50の上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層用塗工液を塗工して第2のカーボン層塗工液層28を形成する工程。
(b’)図2(1)、(2)に示すように、工程(a’)で形成された第2のカーボン層塗工液層28の上に、第2のガス拡散層26を被せた後、第2のカーボン層塗工液層28を乾燥して第2のカーボン層24を形成する工程。
(c’)図2(3)に示すように、工程(b’)で形成された第2のカーボン層24および第2のガス拡散層を有する積層体から基材フィルム50を剥がして、積層体(A’)260を得る工程。
(p−1)図3(1)に示すように、基材フィルム50の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層用塗工液を塗工し、乾燥して基材フィルム50上に第1の触媒層12を形成する工程。
(p−2)図3(2)に示すように、固体高分子電解質膜40の一方の面に基材フィルム50の上に形成された触媒層12を接するように配置して、加熱接合を行う工程。
(p−3)図3(3)に示すように、固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12から、基材フィルム50を剥離する工程。
(p’−1)図3(1)に示すように、基材フィルム50の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層用塗工液を塗工し、乾燥して基材フィルム50上に第2の触媒層22を形成する工程。
(p’−2)図3(2)に示すように、固体高分子電解質膜40の一方の面に基材フィルム50の上に形成された触媒層22を接するように配置して、加熱接合を行う工程。
(p’−3)図3(3)に示すように、固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第2の触媒層22から、基材フィルム50を剥離する工程。
(q1)図4に示すように、工程(c)で得られた積層体(A)160の第1のカーボン層14と、工程(p−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12とを接するように配置して加熱接合する工程。
(q’1)図4に示すように、工程(c’)で得られた積層体(A’)260の第2のカーボン層24と、工程(p’−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第2の触媒層22とを接するように配置して加熱接合する工程。
【0073】
工程(a):
基材フィルム50としては、樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムの材料としては、下記の樹脂が挙げられ、耐熱性、化学的安定性、離型性の点から、基材表面が含フッ素樹脂であることが好ましい。
非フッ素系樹脂:ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等。
含フッ素樹脂:PTFE、エチレン−TFE共重合体(以下、ETFEと記す。)、エチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、TFE−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリフッ化ビニリデン等。
非フッ素系樹脂フィルムの表面に含フッ素樹脂を積層した積層フィルムは、耐熱性、化学的安定性、離型性に加えて機械的強度も高く、好ましい。
【0074】
カーボン層用塗工液は、カーボンを溶媒に分散させ、イオン交換樹脂を溶媒に溶解または分散させることにより調製される。
【0075】
イオン交換樹脂が含フッ素イオン交換樹脂の場合、溶媒としては、アルコール類または含フッ素溶媒が好ましい。
アルコール類としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。含フッ素イオン交換樹脂の溶解性を上げるために、アルコール類と水との混合溶媒を用いてもよい。
含フッ素溶媒としては、下記のものが挙げられる。
ヒドロフルオロカーボン:2H−パーフルオロプロパン、1H,4H−パーフルオロブタン、2H,3H−パーフルオロペンタン、3H,4H−パーフルオロ(2−メチルペンタン)、2H,5H−パーフルオロヘキサン、3H−パーフルオロ(2−メチルペンタン)等。
フルオロカーボン:パーフルオロ(1,2−ジメチルシクロブタン)、パーフルオロオクタン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロヘキサン等。
ヒドロクロロフルオロカーボン:1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等。
フルオロエーテル:1H,4H,4H−パーフルオロ(3−オキサペンタン)、3−メトキシ−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン等。
含フッ素アルコール:2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等。
【0076】
イオン交換樹脂が非フッ素系イオン交換樹脂の場合、溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等が挙げられる。
【0077】
前記基材上に塗工するカーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層用塗工液の固形分濃度は、2〜25質量%である。2質量%より小さいと溶媒中に溶解したイオン交換樹脂がガス拡散層に浸入しやすくなり好ましくない。また、25質量%より大きいと塗工したカーボン層の厚さが不均一になりやすいので好ましくない。3〜20質量%であると、ガス拡散層への浸入量の制御が行いやすく均一なカーボン層が形成でき、かつカーボン層用塗工液の安定性も向上するのでさらに好ましい。
【0078】
また、前記カーボン層用塗工液の粘度は、ずり速度が1(1/S)のとき、20〜10000mPa・sが好ましい。20mPa・sより小さいと、塗工した液がガス拡散層に浸入しやすくなり好ましくない。10000mPa・sより大きいと、塗工したカーボン層の厚さが不均一になりやすいので好ましくない。1000〜5000mPa・sであると、ガス拡散層への浸入が少なく均一なカーボン層が形成でき、かつカーボン層用塗工液の安定性も向上するのでさらに好ましい。
【0079】
塗工法としては、バッチ式塗工法または連続式塗工法が挙げられる。
バッチ式塗工法としては、バーコータ法、スピンコータ法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
連続式塗工法としては、後計量法または前計量法が挙げられる。後計量法は、過剰のカーボン層用塗工液を塗工し、後から所定の厚さとなるようにカーボン層用塗工液を除去する方法である。前計量法は、所定の厚さを得るのに必要な量のカーボン層用塗工液を塗工する方法である。
後計量法としては、エアドクタコータ法、ブレードコータ法、ロッドコータ法、ナイフコータ法、スクイズコータ法、含浸コータ法、コンマコータ法等が挙げられる。
前計量法としては、ダイコータ法、リバースロールコータ法、トランスファロールコータ法、グラビアコータ法、キスロールコータ法、キャストコータ法、スプレイコータ法、カーテンコータ法、カレンダコータ法、押出コータ法等が挙げられる。
塗工法としては、均一な厚さのカーボン層塗工液層を形成できる点から、スクリーン印刷法またはダイコータ法が好ましく、生産効率の点から、ダイコータ法がより好ましい。
【0080】
工程(b):
第1のカーボン層塗工液層18は、カーボン層用塗工液を塗工して形成され、かつカーボン層用塗工液に含まれていた溶媒の全部または一部が残っている塗膜である。第1のカーボン層塗工液層18に残存する溶媒は、カーボン層用塗工液に含まれる溶媒(100質量%)に対し、20質量%以上が好ましい。
【0081】
第1のカーボン層塗工液層18の上に第1のガス拡散層16を被せるのは、基材フィルム50の上にカーボン層用塗工液を塗工した直後でもよく、第1のカーボン層塗工液層18に含まれる溶媒の一部を蒸発させた後であってもよい。通常は、溶媒として水やアルコールを用いるため、第1のカーボン層塗工液層18の上にガス拡散層16を被せるのは、基材フィルム50の上にカーボン層用塗工液を塗工してから5分以内が好ましい。
【0082】
第1のカーボン層塗工液層18に含まれる溶媒の一部は、室温で蒸発させてもよく、加熱して蒸発させてもよい。第1のカーボン層塗工液層18の上に第1のガス拡散層16を被せる前に、第1のカーボン層塗工液層18に含まれる溶媒の一部を蒸発させる際の加熱温度は、100℃以下が好ましい。
【0083】
第1のカーボン層塗工液層18の上に第1のガス拡散層16を被せた後、第1のカーボン層塗工液層18を乾燥する際の乾燥温度は、50〜150℃が好ましい。乾燥温度が50℃以上であれば、乾燥に時間がかからず、また、第1のカーボン層14のイオン交換樹脂が充分に熱処理され、安定化する。乾燥温度が150℃以下であれば、溶媒の急激な蒸発で第1のカーボン層14が不均一になることもなく、また基材フィルムの熱変形も大きくなく安定的に均一なカーボン層が形成される。最初に、50〜80℃の温度で溶媒の大部分を徐々に除去し、さらに120〜150℃の温度で乾燥および熱処理すると得られる第1のカーボン層14が均一で安定したものとなるので好ましい。
【0084】
第1のカーボン層塗工液層18の乾燥を連続乾燥炉にて行う場合、乾燥温度は徐々に上昇させることが好ましく、乾燥時間が短い点、第1のカーボン層14のイオン交換樹脂が充分に熱処理されて安定的な構造となる点、固体高分子形燃料電池の発電特性が良好となる点から、乾燥炉入口温度は50〜80℃とし、乾燥炉出口温度は120〜150℃とすることがより好ましい。
【0085】
第1のカーボン層塗工液層18の上に第1のガス拡散層16を被せた後、第1のカーボン層塗工液層18を乾燥する際の乾燥時間は、3〜30分が好ましく、5〜15分がより好ましい。乾燥時間が3分以上であれば、充分に乾燥が行われ、溶媒がほとんど残存しない。乾燥時間が30分以下であれば、生産性が向上し、また、乾燥温度が130℃より高い高温条件であっても、基材フィルムの熱変形も大きくなく安定的に均一な第1のカーボン層14が形成される。乾燥時間が5〜15分であれば、固体高分子形燃料電池の発電特性も充分に発揮される。
【0086】
工程(c):
工程(c)は、工程(q1)の直前で行えばよく、第1のカーボン層14および第1のガス拡散層16を有する積層体(A)160は、工程(q1)の直前まで基材フィルム50で保護した状態で保管しておいてもよい。
工程(a’)〜(c’):
工程(a’)〜(c’)は、工程(a)〜(c)と同様に行えばよい。
工程(p−1):
基材フィルム50としては、工程(a)で用いた基材フィルムと同じ材質の基板フィルが使用できる。
触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層用塗工液の溶媒としては、工程(a)で述べたカーボン層用塗工液で使用することのできる溶媒を使用できる。
塗工の方法としては、工程(a)で用いた方法が使用できる。
【0087】
触媒層用塗工液の固形分濃度は、5〜25質量%が好ましく、6〜12質量%がより好ましい。触媒層用塗工液の固形分濃度が5質量%未満であれば、液粘度が低くなり塗工ムラが発生しやすい。また固形分濃度が25質量%より高いと、液粘度が高くなりすぎ、レベリングしにくくなるので均一な厚さの触媒層が形成できず好ましくない。また触媒層用塗工液の固形分濃度が6〜12質量%であれば、触媒層用塗工液の安定性も向上するのでさらに好ましい。
【0088】
触媒層用塗工液の粘度は、ずり速度が1(1/S)のとき、200〜8000mPa・sが好ましく、1000〜4000mPa・sがより好ましい。触媒層用塗工液の粘度が200mPa・s以上であれば、触媒層用塗工液の塗工ムラが少なくなり、8000mPa・s以下であれば、均一な厚さの触媒層12を形成できる。触媒層用塗工液の粘度が1000〜4000mPa・sであれば、触媒層用塗工液の安定性が向上する。
【0089】
触媒層用塗工液中のF/Cは、0.2〜2.5が好ましく、0.6〜2.0がより好ましい。F/Cが0.2以上であれば、触媒層12が割れにくい。F/Cが2.5以下であれば、触媒層12が緻密な構造とならず、ガス拡散性が良好となる。F/Cが0.6〜2.0であれば、触媒層12がより割れにくく、かつガス拡散性もより良好となる。
【0090】
触媒層を乾燥する際の乾燥温度は、50〜150℃が好ましい。乾燥温度が50℃以上であれば、乾燥に時間がかからず、また、触媒層12のイオン交換樹脂が充分に熱処理され、安定化する。乾燥温度が150℃以下であれば、触媒層12が劣化しにくく、また、触媒層12が燃焼することもない。
【0091】
触媒層の乾燥を連続乾燥炉にて行う場合、乾燥温度は徐々に上昇させることが好ましく、乾燥時間が短い点、触媒層12のイオン交換樹脂が充分に熱処理されて安定的な構造となる点、固体高分子形燃料電池の発電特性が良好となる点から、乾燥炉入口温度は50〜80℃とし、乾燥炉出口温度は120〜150℃とすることがより好ましい。
【0092】
触媒層を乾燥する際の乾燥時間は、3〜30分が好ましく、5〜15分がより好ましい。乾燥時間が3分以上であれば、充分に乾燥が行われ、溶媒がほとんど残存しない。乾燥時間が30分以下であれば、生産性が向上し、また、乾燥温度が130℃より高い高温条件であっても、触媒層12の劣化が進行しにくい。乾燥時間が5〜15分であれば、固体高分子形燃料電池の発電特性も充分に発揮される。
【0093】
工程(p−2):
基材フィルム50上に形成した第1の触媒層12と高分子電解質膜40の加熱接合の際には、固体高分子電解質膜40の一方の面に第1の触媒層12、もう一方の面に第2の触媒層22を配置し、同時に加熱接合(工程(p−2)と工程(p’−2)を同時に行う)してもよく、それぞれを別々に加熱接合してもよい。生産効率の観点から、工程(p−2)と工程(p’−2)を同時に行うのが好ましい。
【0094】
接合方法としては、熱プレス法、熱ロールプレス、超音波融着等が挙げられ、面内の均一性の点から、熱プレス法が好ましい。
プレス温度(プレス機内のプレス板の温度)は、120〜160℃が好ましく、130〜150℃がより好ましい。プレス温度が120℃以上であれば、接合が充分に行われ、接触不良による抵抗の上昇が抑えられる。プレス温度が160℃以下であれば、触媒層12が劣化しにくく、また、高分子電解質膜40が変形しにくい。プレス温度が130〜150℃であれば、固体高分子形燃料電池の発電特性、耐久性が良好となる。
【0095】
プレス圧力は、0.5〜5MPaが好ましく、1〜4MPaがより好ましい。プレス圧力が0.5MPa以上であれば、接合が充分に行われ、接触不良による抵抗の上昇が抑えられる。プレス圧力が5MPa以下であれば、触媒層が劣化しにくく、また、高分子電解質膜40が変形しにくい。プレス圧力が1〜4MPaであれば、固体高分子形燃料電池の発電特性、耐久性が良好となる。
【0096】
プレス時間は、0.5〜10分が好ましく、1〜5分がより好ましい。プレス時間が0.5分以上であれば、接合が充分に行われ、接触不良による抵抗の上昇が抑えられる。プレス時間が10分以下であれば、触媒層が劣化しにくく、また、高分子電解質膜40が変形しにくい。プレス時間が1〜5分であれば、固体高分子形燃料電池の発電特性、耐久性が良好となる。
【0097】
工程(p−3):
基材フィルム50の剥離は、後述する工程(q1)の直前までに行っていればよく、直前まで基材フィルム50で保護した状態で保管しておいてもよい。
工程(p’−1)〜(p’−3):
工程(p’−1’)〜(p’−3)は、工程(p−1)〜(p−3)と同様に行えばよい。
工程(q1)、(q’1):
積層体(A)160の第1のカーボン層14と固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12との加熱接合の際には、積層体(A)160の第1のカーボン層14と固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12とが接するように配置し、さらに、積層体(A’)260の第2のカーボン層24と固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第2の触媒層22とが接するように配置して同時に加熱接合(工程(q1)と工程(q’1)を同時に行う)してもよく、また、それぞれを別々に加熱接合してもよい。生産効率の観点から、工程(q1)と工程(q’1)を同時に行うのが好ましい。
加熱接合の方法および接合条件については、工程(p−2)で述べた方法および条件で行うことができる。
【0098】
(方法(II))
方法(II)は、下記の工程(a)〜(e)、(p)((p−1)〜(p−3))、(q2)、(q’2)を有する方法である。
方法(I)で述べた工程(a)〜(c)。
(d)図5(1)に示すように、第2のガス拡散層26の上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層用塗工液を塗工、乾燥し、第2のカーボン層24を形成する工程。
(e)図5(2)に示すように、第2のカーボン層24の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層用塗工液を塗工し、乾燥して第2の触媒層22を形成して、第2のガス拡散層26および第2のカーボン層24および第2の触媒層22を有する積層体(B)360を得る工程。
(p−1)図6(1)に示すように、基材フィルム50の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層用塗工液を塗工し、乾燥して基材フィルム50上に触媒層12を形成する工程。
(p−2)図6(2)に示すように、固体高分子電解質膜40の一方の面に基材フィルム50の上に形成された触媒層22を接するように配置し、固体高分子電解質膜40のもう一方の面に基材フィルム50の上に形成された触媒層12を接するように配置して、加熱接合を行う工程。
(p−3)図6(3)に示すように、固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12から、基材フィルム50を剥離する工程。
(q2)図7に示すように、工程(c)で得られた積層体(A)160の第1のカーボン層14と、工程(p−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12とを接するように配置して加熱接合する工程。
(q’2)図7に示すように、工程(e)で得られた積層体(B)360の第2の触媒層22と、固体高分子電解質膜40の第1の触媒層12が形成されていない方の面とを接するように配置して加熱接合する工程。
【0099】
工程(d):
カーボン層用塗工液の材料、組成、調製方法等は、方法(I)の工程(a)と同様である。
第2のカーボン層24の乾燥条件は方法(I)の工程(b)と同様である。
工程(e):
触媒層用塗工液の材料、組成、調製方法、触媒層用塗工液の塗工法、塗工条件、乾燥条件等は、方法(I)の工程(p−1)と同様である。
工程(p−1)〜(p−3):
工程(p−1)〜(p−3)は、方法(I)の工程(p−1)〜(p−3)と同様に行えばよい。
工程(q2)、(q’2):
工程(q2)と工程(q’2)は同時に行うこともできるし、別々に行うこともできる。生産効率の観点から、工程(q2)と工程(q’2)を同時に行うのが好ましい。
加熱接合の方法および接合条件については、方法(I)の工程(p−2)で述べた方法および条件で行うことができる。
【0100】
〔第2の実施形態〕
図8は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の他の例を示す断面図である。固体高分子形膜電極接合体200は、第1の触媒層12および第1のカーボン層14および第1のガス拡散層16を有する第1の電極120と、第2の触媒層22および第2のガス拡散26を有する第2の電極230と、第1の電極120の第1の触媒層12と第2の電極230の第2の触媒層22との間に固体高分子電解質膜40とを備えたものである。
本実施形態においては、第1の実施形態と同じ構成については図1と同じ符号を付して説明を省略する。
第1の電極120は、アノードであってもよく、カソードであってもよいが、第1の電極120がカソードであることが好ましい。第2の電極230は、第1の電極120がアノードの場合、カソードであり、第1の電極120がカソードの場合、アノードである。
【0101】
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体200の製造方法としては、例えば下記の方法(III)または方法(IV)が挙げられる。
【0102】
(方法(III))
方法(III)は、下記の工程(a)〜(c)、(p)((p−1)〜(p−3))、(p’)((p’−1)〜(p’−3))、(q3)、(q’3)を有する方法である。
方法(I)で述べた工程(a)〜(c)。
方法(I)で述べた工程(p−1)〜(p−3)、(p’−1)〜(p’−3)。
(q3)図9に示すように、工程(c)で得られた積層体(A)160の第1のカーボン層14と、工程(p−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12とを接するように配置して加熱接合する工程。
(q’3)図9に示すように、第2のガス拡散層26と、工程(p’−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第2の触媒層22とを接するように配置して加熱接合する工程。
【0103】
工程(q3)、(q’3):
工程(q3)と工程(q’3)は同時に行うこともできるし、別々に行うこともできる。生産効率の観点から、工程(q3)と工程(q’3)を同時に行うのが好ましい。
【0104】
加熱接合の方法および接合条件については、方法(I)の工程(p−2)で述べた方法および条件で行うことができる。
【0105】
(方法(IV))
方法(IV)は、下記の工程(a)〜(c)、(f)、(p)((p−1)〜(p−3))、(q4)を有する方法である。
方法(I)で述べた工程(a)〜(c)。
(f)第2のガス拡散層26の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層用塗工液を塗工し、乾燥して第2の触媒層22を形成して、第2のガス拡散層および第2の触媒層を有する積層体(C)460を得る工程。
方法(II)で述べた工程(p−1)〜(p−3)
(q4)図10に示すように、工程(c)で得られた積層体(A)160の第1のカーボン層14と、工程(p−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12とを接するように配置して加熱接合する工程。
(q’4)図10に示すように、工程(f)で得られた積層体(C)460の第2の触媒層22と、固体高分子電解質膜40の第1の触媒層12が形成されていない方の面とを接するように配置して加熱接合する工程。
【0106】
工程(f):
触媒層用塗工液の材料、組成、調製方法、触媒層用塗工液の塗工法、塗工条件、乾燥条件等は、方法(I)の工程(p−1)と同様である。
【0107】
工程(q4)、(q’4):
工程(q4)と工程(q’4)は同時に行うこともできるし、別々に行うこともできる。生産効率の観点から、工程(q4)と工程(q’4)を同時に行うのが好ましい。
【0108】
加熱接合の方法および接合条件については、方法(I)の工程(p−2)で述べた方法および条件で行うことができる。
【0109】
以上説明した第1の実施形態での固体高分子形膜電極接合体100の製造方法、第2の実施形態での固体高分子形膜電極接合体200の製造方法によれば、少なくとも一方の電極が、基材フィルムの上にカーボン層用塗工液を塗工してカーボン層塗工液層を形成した後、カーボン層塗工液層を完全に乾燥させることなく、カーボン層塗工液層が溶媒を含んだ状態にて、カーボン層塗工液層の上にガス拡散層を被せ、該状態にてカーボン層塗工液層を乾燥してカーボン層を形成しているため、カーボン層塗工液層の一部がガス拡散層に浸入し、得られるカーボン層とガス拡散層との密着性が向上するとともに、該カーボン層の表面側にイオン交換樹脂が多く存在するようになる。そのため、カーボン層と高分子電解質膜の上に形成された触媒層とを加熱接合すると、カーボン層と触媒層との界面の接着力が高くなり、該界面における抵抗が低くなり、固体高分子形燃料電池の発電特性が良好となる。また、乾燥と湿潤を繰り返すような環境下で使用した場合であっても、カーボン層と触媒層の界面の接着力が高いため剥離が起こりにくくなり、固体高分子形燃料電池の出力電圧の低下を抑えることができる。よって、乾燥湿潤繰り返し耐性に優れる。
【0110】
〔第3の実施形態〕
図11は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の他の例を示す断面図である。膜電極接合体300は、第1の触媒層12および第1のカーボン層A14−1および第1のカーボン層B14−2および第1のガス拡散層16を有する第1の電極320と、第2の触媒層22および第2のカーボン層A24−1および第2のカーボン層B24−2および第2のガス拡散層26を有する第2の電極330と、第1の電極320の第1の触媒層12と第2の電極330の第2の触媒層22との間に固体高分子電解質膜40とを備えたものである。
本実施形態においては、前述した実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
第1の電極320は、アノードであってもよく、カソードであってもよいが、第1の電極320がカソードであることが好ましい。第2の電極330は、第1の電極320がアノードの場合、カソードであり、第1の電極320がカソードの場合、アノードである。
【0111】
(カーボン層Aおよびカーボン層B)
第1のカーボン層A14−1および第1のカーボン層B14−2(以下、まとめてカーボン層A、カーボン層Bとも記す)は、第1の触媒層12と第1のガス拡散層16との間に存在し、カーボンおよびイオン交換樹脂を含む。
第2のカーボン層A24−1および第2のカーボン層B24−2(以下、まとめてカーボン層A、カーボン層Bとも記す)は、第2の触媒層22と第2のガス拡散層26との間に存在し、カーボンおよびイオン交換樹脂を含む。
カーボン層Aおよびカーボン層Bの材料や組成などは第1の実施形態で述べたカーボン層と同様である。
カーボン層Aの厚みは0.5〜20μmが好ましく、厚みが1〜10μmであると、イオン交換脂成分が多い層が確実に形成されるため、ガス拡散性の改良効果と密着性の確保が可能であり、特に好ましい。
【0112】
カーボン層Bの厚みは1〜40μmが好ましく、厚みが3〜30μmであると、塗工ムラが発生せず均一な層が得られるので特に好ましい。
【0113】
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体300の製造方法としては、例えば下記の方法(V)または方法(VI)が挙げられる。
【0114】
(方法(V))
方法(V)は、下記の工程(g)〜(j)、(g’)〜(j’)、(p)((p−1)〜(p−3))、(p’)((p’−1)〜(p’−3))、(q5)、(q’5)を有する方法である。
(g)図12(1)に示すように、基材フィルム50の上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層A用塗工液を塗工して乾燥し第1のカーボン層A14−1を形成する工程。
(h)図12(2)に示すように、工程(g)で形成された第1のカーボン層A14−1の上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層B用塗工液を塗工して第1のカーボン層B塗工液層38を形成する工程。
(i)図12(2)、(3)に示すように、工程(h)で形成された第1のカーボン層B塗工液層38の上に、第1のガス拡散層16を被せた後、カーボン層B塗工液層38を乾燥して第1のカーボン層B14−2を形成する工程。
(j)図12(4)に示すように、工程(i)で形成された第1のカーボン層A14−1および第1のカーボン層B14−2および第1のガス拡散層16を有する積層体から基材フィルム50を剥がして、積層体(D)560を得る工程。
(g’)図12(1)に示すように、基材フィルム50の上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層A用塗工液を塗工して乾燥し第2のカーボン層A24−1を形成する工程。
(h’)図12(2)に示すように、工程(g’)で形成された第2のカーボン層A24−1の上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層B用塗工液を塗工して第2のカーボン層B塗工液層48を形成する工程。
(i’)図12(2)、(3)に示すように、工程(h’)で形成された第2のカーボン層B塗工液層48の上に、第2のガス拡散層26を被せた後、カーボン層B塗工液層48を乾燥して第2のカーボン層B24−2を形成する工程。
(j’)図12(4)に示すように、工程(i’)で形成された第2のカーボン層A24−1および第2のカーボン層B24−2および第2のガス拡散層26を有する積層体から基材フィルム50を剥がして、積層体(D’)660を得る工程。
方法(I)で述べた工程(p−1)〜(p−3)、(p’−1)(p’−3)。
(q5)図13に示すように、工程(j)で得られた積層体(D)560の第1のカーボン層A14−1と、工程(p−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12とを接するように配置して加熱接合する工程。
(q’5)図13に示すように、工程(j’)で得られた積層体(D’)660の第2のカーボン層A24−1と、工程(p’−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第2の触媒層22とを接するように配置して加熱接合する工程。
【0115】
工程(g):
第1のカーボン層A用塗工液の材料、組成、調製方法等は、方法(I)の工程(a)と同様である。第1のカーボン層A塗工液層の乾燥条件は方法(I)の工程(b)と同様である。
工程(h):
第1のカーボン層B用塗工液の材料、組成、調製方法等は、方法(I)の工程(a)と同様である。
工程(i):
カーボン層B塗工液層38の乾燥条件は方法(I)の工程(b)と同様である。
工程(j):
工程(j)は、工程(q5)の直前で行えばよく、積層体(D)560は、工程(q5)の直前まで基材フィルム50で保護した状態で保管しておいてもよい。
工程(h’)〜(j’):
工程(h’)〜(j’)は、工程(h)〜(j)と同様に行えばよい。
工程(q5)、(q’5):
工程(q5)と工程(q’5)は同時に行うこともできるし、別々に行うこともできる。生産効率の観点から、工程(q5)と工程(q’5)を同時に行うのが好ましい。
加熱接合の方法および接合条件については、方法(I)の工程(p−2)で述べた方法および条件で行うことができる。
【0116】
(方法(VI))
方法(VI)は、下記の工程(g)〜(j)、(k)〜(m)、(p)((p−1)〜(p−3))、(q6)、(q’6)を有する方法である。
方法(V)で述べた工程(g)〜(j)。
(k)図14(1)に示すように、第2のガス拡散層26の上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含む第2のカーボン層用B塗工液を塗工、乾燥し、第2のカーボン層B24−2を形成する工程。
(l)図14(2)に示すように、第2のカーボン層B24−2の上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含む第2のカーボン層用B塗工液を塗工、乾燥し、第2のカーボン層A24−1を形成する工程。
(m)図14(3)に示すように、第2のカーボン層A24−1の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層用塗工液を塗工し、乾燥して第2の触媒層22を形成して、第2の触媒層22および第2のカーボン層A24−1および第2のカーボン層B24−2および第2のガス拡散層26を有する積層体(E)760を得る工程。
方法(II)で述べた工程(p−1)〜(p−3)。
(q6)図15に示すように、工程(j)で得られた積層体(D)560の第1のカーボン層A14−1と、固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12とを接するように配置して加熱接合する工程。
(q’6)図15に示すように、工程(m)で得られた積層体(E)760の第2の触媒層22と、固体高分子電解質膜40の第1の触媒層12が形成されていない方の面とを接するように配置して加熱接合する工程。
【0117】
工程(k):
第2のカーボン層B塗工液の材料、組成、調製方法等は、方法(I)の工程(a)と同様である。乾燥条件は方法(I)における工程(b)と同様である。
工程(l):
第2のカーボン層A塗工液の材料、組成、調製方法等は、方法(I)の工程(a)と同様である。乾燥条件は方法(I)における工程(b)と同様である。
工程(m):
触媒層用塗工液の材料、組成、調製方法、触媒層用塗工液の塗工法、塗工条件、乾燥条件等は、方法(I)の工程(p−1)と同様である。
工程(q6):
工程(q6)、(q’6):
工程(q6)と工程(q’6)は同時に行うこともできるし、別々に行うこともできる。生産効率の観点から、工程(q6)と工程(q’6)を同時に行うのが好ましい。
加熱接合の方法および接合条件については、方法(I)の工程(p−2)で述べた方法および条件で行うことができる。
なお、第2のガス拡散層36上に塗工して形成する第2のカーボン層Aおよび第2のカーボン層Bは必ずしも2層以上である必要はなく、どちらか1層としてもよい。
【0118】
〔第4の実施形態〕
図16は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の他の例を示す断面図である。膜電極接合体400は、第1の触媒層12および第1のカーボン層A14−1および第1のカーボン層B14−2および第1のガス拡散層16を有する第1の電極320と、第2の触媒層22および第2のガス拡散層26を有する第2の電極230と、第1の電極320の第1の触媒層12と第2の電極230の第2の触媒層22との間に固体高分子電解質膜40とを備えたものである。
第1の電極320は、アノードであってもよく、カソードであってもよいが、第1の電極320がカソードであることが好ましい。第2の電極230は、第1の電極320がアノードの場合、カソードであり、第1の電極320がカソードの場合、アノードである。
本実施形態において、前述した実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0119】
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体400の製造方法としては、例えば下記の方法(VII)または方法(VIII)が挙げられる。
【0120】
(方法(VII))
方法(VII)は、下記の工程(g)〜(j)、(p)((p−1)〜(p−3))、(p’)((p’−1)〜(p’−3))、(q7)、(q’7)を有する方法である。
方法(V)で述べた工程(g)〜(j)。
方法(I)で述べた工程(p−1)〜(p−3)、(p’−1)〜(p’−3)。
(q7)図17に示すように、工程(j)で得られた積層体(D)560の第1のカーボン層A14−1と、工程(p−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12とを接するように配置して加熱接合する工程。
(q’7)図17に示すように、第2のガス拡散層26と、工程(p’−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第2の触媒層22とを接するように配置して加熱接合する工程。
工程(q7)、(q’7):
工程(q7)と工程(q’7)は同時に行うこともできるし、別々に行うこともできる。生産効率の観点から、工程(q7)と工程(q’7)を同時に行うのが好ましい。
加熱接合の方法および接合条件については、方法(I)の工程(p−2)で述べた方法および条件で行うことができる。
【0121】
(方法(VIII))
方法(VIII)は、下記の工程(g)〜(j)、(f)、(p)((p−1)〜(p−3))、(q8)を有する方法である。
方法(V)で述べた工程(g)〜(j)。
方法(IV)で述べた工程(f)。
方法(II)で述べた工程(p−1)〜(p−3)。
(q8)図18に示すように、工程(j)で得られた積層体(D)560の第1のカーボン層A14−1と、工程(p−3)で固体高分子電解質膜40の一方の面に形成された第1の触媒層12とを接するように配置して加熱接合する工程。
(q’8)図18に示すように、工程(f)で得られた積層体(C)460の第2の触媒層22と、固体高分子電解質膜40の第1の触媒層12が形成されていない方の面とを接するように配置して加熱接合する工程。
工程(q8)、(q’8):
工程(q8)と工程(q’8)は同時に行うこともできるし、別々に行うこともできる。生産効率の観点から、工程(q8)と工程(q’8)を同時に行うのが好ましい。
加熱接合の方法および接合条件については、方法(I)の工程(p−2)で述べた方法および条件で行うことができる。
【0122】
第1の実施形態、第2の実施形態で説明した固体高分子形膜電極接合体の製造方法では、基材上にカーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層用塗工液を塗工した後、ガス拡散層をその上に被せ接着乾燥して、基材側界面にイオン交換樹脂成分が多い層を作製するが、ガス拡散層表面の空隙率が高く、カーボン層用塗工液を非常に吸収しやすい性質を持つ場合には、前記の基材側界面にイオン交換樹脂成分が多い層が十分に形成できない場合もある。
【0123】
以上説明した、第3の実施形態で説明した固体高分子形膜電極接合体300の製造方法、第4の実施形態で説明した固体高分子形膜電極接合体400の製造方法によれば、少なくとも一方の電極のカーボン層を2層以上とすることで、基材フィルム上にまずカーボン層A用塗工液を塗布乾燥して基材フィルム側界面にイオン交換樹脂成分が多いカーボン層Aを形成し、次いでカーボン層B用塗工液を塗布し、ガス拡散層をその上に被せ接着乾燥することで、ガス拡散性と密着性に優れるカーボン層を得ることができる。
【0124】
すなわち、基材フィルム50の上にカーボン層Aを形成させた後、カーボン層B用塗工液を塗工してカーボン層B塗工液層を形成した後、カーボン層B塗工液層を完全に乾燥させることなく溶媒を含んだ状態にて、カーボン層B塗工液層の上にガス拡散層16を被せ、該状態にてカーボン層B塗工液層を乾燥して形成しているため、カーボン層B塗工液層の一部がガス拡散層に浸入し、得られるカーボン層Bとガス拡散層との密着性が向上するとともに、カーボン層Aの表面側にイオン交換樹脂が多く存在するようになる。そのため、カーボン層Aと高分子電解質膜の上に形成された触媒層とを加熱接合すると、カーボン層Aと触媒層との界面の接着力が高くなり、該界面における抵抗が低くなり、固体高分子形燃料電池の発電特性が良好となる。また、乾燥と湿潤を繰り返すような環境下で使用した場合であっても、カーボン層と触媒層の界面の接着力が高いため剥離が起こりにくくなり、固体高分子形燃料電池の出力電圧の低下を抑えることができる。よって、乾燥湿潤繰り返し耐性に優れる。
【0125】
〔固体高分子形燃料電池〕
本発明の製造方法で得られた膜電極接合体の両面に、ガスの流路となる溝が形成されたセパレータを配置することにより、固体高分子形燃料電池が得られる。
セパレータとしては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂を混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより、発電が行われる。また、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも、本発明の製造方法で得られた膜電極接合体を適用できる。
【実施例】
【0126】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
【0127】
例1〜10は実施例であり、例11、12は比較例である。
(共重合体ポリマー(A))
TFEに基づく単位と、下式(11)で表される繰り返し単位とからなるポリマー(A)(イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)を用意した。
【0128】
【化9】

【0129】
(共重合体ポリマー(B))
TFEに基づく単位と、下式(42)および下式(11)で表される繰り返し単位とからなる共重合体(B)(イオン交換容量1.51ミリ当量/g乾燥樹脂)を用意した。
【0130】
【化10】


【0131】
(高分子電解質膜)
ポリマー(A)の280gとエタノール432gと水288gとを2Lオートクレーブに仕込み、密閉し、ダブルヘリカル翼にて105℃で6時間混合撹拌して、固形分濃度28質量%、溶媒組成がエタノール/水=60/40(質量比)の均一な液(以下、溶液(D)という)を得た。300mlガラス製丸底フラスコに、溶液(D)を100gと、炭酸セリウム水和物(Ce(CO・8HO)0.47gとを仕込み、PTFE製半月板翼にて、室温で8時間撹拌した。撹拌開始よりCO発生による気泡が発生したが、最終的には固形分濃度28.1質量%の均一で透明な電解質膜用塗工液を調製した。
【0132】
ETFEフィルム(基材フィルム)の上にこの電解質膜用塗工液を、平均孔径3μmのポリプロピレン製フィルターでろ過後に乾燥膜厚が25μmとなるようにダイコータを用いて塗工し、90℃の乾燥器内で10分間乾燥し、さらに150℃で30分アニール処理して、高分子電解質膜(E25)を得た。
【0133】
ポリマー(B)の250gとエタノール375gと水375gとを2Lオートクレーブに仕込み、密閉し、ダブルヘリカル翼にて120℃で12時間混合撹拌してポリマーを溶解させた。次いで、このオートクレーブに加圧下で水を121g添加し、120℃で1時間攪拌した。温度を55℃に冷却後、溶液を攪拌しながらオートクレーブ内の気相部に窒素ガスを3時間流通させ、溶解時に生成したジエチルエーテルを系外に除去し、室温まで冷却して、固形分濃度22.8質量%、溶媒組成がエタノール/水=40/60(質量比)の均一な液(以下、溶液(G)という)を得た。300mlガラス製丸底フラスコに、溶液(G)を100gと、炭酸セリウム水和物(Ce(CO・8HO)0.35gとを仕込み、PTFE製半月板翼にて、室温で16時間撹拌し、さらに温度45℃にて16時間撹拌して溶解させた。撹拌開始よりCO発生による気泡が発生したが、最終的には固形分濃度22.9質量%の均一で透明な電解質膜用塗工液を調製した。
【0134】
ETFEフィルム(基材フィルム)の上にこの電解質膜用塗工液を、平均孔径3μmのポリプロピレン製フィルターでろ過後に乾燥膜厚が20μm、25μmおよび30μmとなるようにダイコータを用いて塗工し、90℃の乾燥器内で10分間乾燥し、さらに180℃で30分アニール処理して、高分子電解質膜(H20)、(H25)および(H30)を得た。
【0135】
(ガス拡散層)
ガス拡散層を構成するガス拡散性基材として、カーボンブラック粒子とポリテトラフルオロエチレンとを含む分散液により表面が撥水処理されたカーボンペーパー(NOK社製、商品名:H2315T10AC1)(以下、カーボンペーパー(J)と記す。)を用意した。また、このカーボンペーパー上に、カーボンファイバー(東レ社製、MLD30、繊維径:7μm、繊維長:30μm)とポリマー(A)の混合物層を10μm積層したカーボンペーパー(J’)も用意した。
【0136】
(基材フィルム上塗工用アノード触媒層用塗工液)
熱処理したカーボン担体(比表面積200m/g)に白金が担持された触媒(白金担持量:20質量%。)の20.3gを、蒸留水の168.2gに添加し、超音波印加装置を用いて粉砕し、さらにエタノールの268.8gを添加し、よく撹拌して電極触媒分散液を調製した。
該電極触媒分散液に、高分子電解質膜作製の際に調製した溶液(G)42.7gを添加しよく撹拌して触媒層用塗工液(KA)を調製した。得られたアノード触媒層用塗工液の固形分濃度は6質量%、溶媒組成比は、エタノール/水=60/40(質量比)である。 (基材フィルム上塗工用カソード触媒層用塗工液)
カーボン担体(比表面積800m/g)に白金/コバルト合金が担持された触媒(金属担持量:62質量%。)の34.3gを、蒸留水の193.2gに添加し、超音波印加装置を用いて粉砕し、さらにエタノールの203.8gを添加し、よく撹拌して電極触媒分散液を調製した。
該電極触媒分散液に、高分子電解質膜作製の際に調製した溶液(G)68.7gを添加し、よく撹拌して触媒層用塗工液(KC)を調製した。得られたカソード触媒層用塗工液の固形分濃度は10質量%、溶媒組成比は、エタノール/水=50/50(質量比)である。
【0137】
(カーボン層用塗工液)
気相成長炭素繊維(商品名:VGCF−H、昭和電工社製、繊維径約150nm、繊維長10〜20μm)35.3gにエタノール181.9g、蒸留水194.6gを添加し、よく撹拌した。これに高分子電解質膜作製の際に調製した溶液(D)88.2gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを使用して混合、粉砕させ、これをカーボン層用塗工液(M1)とした。
また、同様に気相成長炭素繊維(商品名:VGCF−H、昭和電工社製、繊維径約150nm、繊維長10〜20μm)35.3gにエタノール186.5g、蒸留水169.8gを添加し、よく撹拌した。これに高分子電解質膜作製の際に調製した溶液(G)108.4gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを使用して混合、粉砕させ、これをカーボン層用塗工液(M2)とした。
【0138】
〔例1〕
工程(a−1)、(a’−1):
ポリエチレンテレフタレートフィルムの両側にETFEフィルムを積層したフィルムを基材フィルムとし、その上にカーボン層用塗工液(M1)を、カーボンおよびイオン交換樹の総重量が0.8mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、カーボン層塗工液層を形成した。
【0139】
工程(b−1)(b’−1):
カーボン層塗工液層を形成した直後に、カーボン層塗工液層の上にカーボンペーパー(J)を被せ、カーボン層塗工液層を80℃の乾燥器内で5分間乾燥し、さらに120℃の乾燥器内で5分間乾燥し、厚さ9μmのカーボン層を形成した。
【0140】
工程(c−1)、(c’−1):
工程(b−1)(b’−1)で得られた積層体から基材フィルムを剥がし、カーボンペーパー上にカーボン層が形成された積層体(A−1)、(A’−1)を得た。
【0141】
工程(p−1−1)〜(p−3−1)、(p’−1−1)〜(p’−3−1):
ポリエチレンテレフタレートフィルムの両側にETFEフィルムを積層したフィルムを基材フィルムとし、その上にアノード触媒層用塗工液(KA)を、白金量が0.1mg/cmとなるように、ダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、触媒層が基材フィルム上に形成されたアノード触媒層付き基材フィルム(PA1)を得た。同様に、基材フィルム上にカソード触媒層用塗工液(KC)を、白金量が0.5mg/cmとなるように、ダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、触媒層が基材フィルム上に形成されたカソード触媒層付き基材フィルム(PC1)を得た。次に、高分子電解質膜(H20)の両側に、前記の触媒層付き基材フィルム(PA1)および(PC1)を、触媒層側が電解質膜と接するように配置し、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスし、冷却後に基材フィルムを剥がして、高分子電解質膜の一方の側にアノード触媒層、もう一方の側にカソード触媒層が積層されたアノード・カソード触媒層積層膜(Q−1)を形成した。
【0142】
工程(q1−1)、工程(q’1−1):
さらに次に、積層体(A−1)のカーボン層がアノード・カソード触媒層積層膜(Q1)のカソード触媒層と接するように配置し、積層体(A’−1)のカーボン層がアノード・カソード触媒層積層膜(Q−1)のアノード触媒層と接するように配置し、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスして、電極面積が25cmである膜電極接合体(1)を得た。
【0143】
(発電特性の評価)
膜電極接合体(1)を、発電用セルに組み込み、常圧下、水素(利用率70%)/空気(利用率50%)を供給し、セル温度80℃にて、電流密度0.2A/cmまたは1.2A/cmにおける運転初期のセル電圧を測定した。ただし、アノード側には露点80℃の水素を供給し、カソード側には露点80℃の空気を供給した。
また、同様に75kPaの加圧下、アノード側に乾燥水素(利用率70%)、カソード側に乾燥空気(利用率50%)を供給し、セル温度80℃にて、電流密度0.2A/cmまたは1.2A/cmにおける運転初期のセル電圧を測定した。セル電圧を表1に示す。
【0144】
(乾燥湿潤繰り返し耐性の評価)
膜電極接合体1を発電用セルに組込み、常圧にて、両極に窒素を1L/分の速度で流した。2分毎に乾燥空気と150%加湿空気とが交互に流れるようにし、定期的に差圧を20kPaかけた状態にて、窒素透過量を測定した。20000回経過後の窒素透過量を表1に示す。
【0145】
〔例2〕
工程(a−2)〜工程(c−2):
例1の工程(a−1)〜工程(c−1)と同様にして、カーボンペーパー上にカーボン層が形成された積層体(A−1)を得た。
【0146】
工程(p−1−2)〜(p−3−2):
ポリエチレンテレフタレートフィルムの両側にETFEフィルムを積層したフィルムを基材フィルムとし、その上にカソード触媒層用塗工液(KC)を、白金量が0.35mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、カソード触媒層が基材フィルム上に形成されたカソード触媒層付き基材フィルム(PC2)を得た。
次に、高分子電解質膜(H25)の片側にカソード触媒層付き基材フィルム(PC2)のカソード触媒層が接するように配置し、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスし、冷却後に基材フィルムを剥がして、高分子電解質膜の片側にカソード触媒層が積層されたカソード触媒層積層膜(Q’−1)を形成した。
【0147】
工程(d−2):
また、カーボンペーパー(J)の上に、カーボン層用塗工液(M1)を、カーボンおよびイオン交換樹脂の総重量が0.8mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、カーボンペーパー上に厚さ9μmのカーボン層を形成した。
【0148】
工程(e−2):
さらに、工程(d−2)で形成したカーボン層の上にアノード触媒層用塗工液(KA)を、白金量が0.05mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、カーボンペーパーの上にカーボン層およびアノード触媒層が形成された積層体(B−1)を作製した。
【0149】
工程(q2−2)、(q’2−2):
さらに次に、積層体(A−1)のカーボン層がカソード触媒層積層膜(Q’−1)のカソード触媒層と接するように配置し、積層体(B−1)のアノード触媒層がカソード触媒層積層膜(Q’−1)の高分子電解質膜と接するように配置して、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスを行って、電極面積が25cmである膜電極接合体(2)を得た。
該膜電極接合体(2)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価した。結果を表1に示す。
【0150】
〔例3〕
例2の高分子電解質膜(H25)の代わりに、高分子電解質膜(H30)を用い、またカーボン層用塗工液(M1)の代わりに、カーボン層用塗工液(M2)を用いた以外は例2と同様にして膜電極接合体(3)を得た。
該膜電極接合体(3)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価した。結果を表1に示す。
【0151】
〔例4〕
例2の高分子電解質膜(H25)の代わりに、高分子電解質膜(H20)を用い、またカソード触媒層の白金量を0.35mg/cmから0.5mg/cmに変更した以外は例2と同様にして膜電極接合体(4)を得た。
【0152】
該膜電極接合体(4)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価した。結果を表1に示す。
【0153】
〔例5〕
工程(a−5)〜工程(c−5):
例1の工程(a−1)〜工程(c−1)と同様にして、カーボンペーパー上にカーボン層が形成された積層体(A−1)を得た。
【0154】
工程(p−1−5)〜(p−3−5)、(p’−1−5)〜(p’−3−5):
高分子電解質膜(H20)に代えて、高分子電解質(E25)を用いた以外は、例1の工程(p−1−1)〜(p−3−1)、(p’−1−1)〜(p’−3−1)と同様にして、アノード・カソード触媒層積層膜(Q−2)を形成した。
【0155】
工程(q3−5)、(q’3−5):
さらに次に、積層体(A−1)のカーボン層が、アノード・カソード触媒層積層膜(Q−2)のカソード触媒層に接するように配置し、さらに、カーボンペーパー(J)がアノード・カソード触媒層積層膜(Q−2)のアノード触媒層に接するように配置して、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスを行って、電極面積が25cmである膜電極接合体(5)を得た。
【0156】
該膜電極接合体(5)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価した。結果を表1に示す。
【0157】
〔例6〕
工程(a−6)〜工程(c−6):
例1の工程(a−1)〜工程(c−1)と同様にして、カーボンペーパー上にカーボン層が形成された積層体(A−1)を得る。
【0158】
工程(f−6):
また、カーボンペーパー(J)の上に、アノード触媒層用塗工液(KA)を、白金量が0.05mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、カーボンペーパーの上にアノード触媒層が形成された積層体(C−1)を作製する。
【0159】
工程(p−1−6)〜(p−3−6):
高分子電解質膜(H25)に代えて、高分子電解質膜(H20)を用いた以外は、例2の工程(p−1)〜(p−3)と同様にして、高分子電解質膜(H20)の片側にカソード触媒層が積層されたカソード触媒層積層膜(Q’−2)を形成する。
【0160】
工程(q4−6)、(q’4−6):
次に、積層体(A−1)のカーボン層が、カソード触媒層積層膜(Q’−2)のカソード触媒層に接するように配置し、さらに、積層体(C−1)のアノード触媒層がカソード触媒層積層膜(Q’−2)の高分子電解質膜と接するように配置して、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスして、電極面積が25cmである膜電極接合体(6)を得る。
該膜電極接合体(6)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価する。結果を表1に示す。
【0161】
〔例7〕
工程(g−7)、(g’−7):
ポリエチレンテレフタレートフィルムの両側にETFEフィルムを積層したフィルムを基材フィルムとし、その上にカーボン層用塗工液(M1)を、カーボンおよびイオン交換樹の総重量が0.4mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、厚さ5μmのカーボン層Aを形成した。
【0162】
工程(h−7)、(h’−7):
工程(g−7)、(g’−7)で得られたカーボン層Aの上に、カーボン層B用塗工液(M1)を、カーボン層Bのカーボンおよびイオン交換樹の総重量が1.6mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、カーボン層B塗工液層を形成した。
【0163】
工程(i−7)、(i’−7):
カーボン層B塗工液層を形成した直後に、カーボン層B塗工液層の上にカーボンペーパー(J’)を被せ、カーボン層B塗工液層を80℃の乾燥器内で5分間乾燥し、さらに120℃の乾燥器内で5分間乾燥し、厚さ20μmのカーボン層Bを形成した。
【0164】
工程(j−7)、(j’−7):
工程(i−7)、(i’−7)で得られた積層体から基材フィルムを剥がし、カーボンペーパー(J’)上にカーボン層Aとカーボン層Bが形成された積層体(D−1)、(D’−1)を得た。
【0165】
工程(p−1−7)〜(p−3−7)、(p’−1−7)〜(p’−3−7):
アノード触媒層の白金量が0.1mg/cmから0.05mg/cmとなるように変更した以外は、例1の工程(p−1−1)〜(p−3−1)、(p’−1−1)〜(p’−3−1)と同様にして、アノード・カソード触媒層積層膜(Q−3)を形成した。
【0166】
工程(q5)、(q’5):
さらに次に、工程(j−7)で得られた積層体(D−1)のカーボン層Aがアノード・カソード触媒層積層膜(Q−3)のカソード触媒層と接するように配置し、工程(j’−7)で得られた積層体(D’−1)のカーボン層Aがアノード・カソード触媒層積層膜(Q−3)のアノード触媒層と接するように配置し、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスして、電極面積が25cmである膜電極接合体(7)を得た。
該膜電極接合体(7)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価した。結果を表1に示す。
【0167】
〔例8〕
工程(g−8)〜工程(j−8):
例7の工程(g−7)〜工程(j−7)と同様にして、カーボンペーパー(J’)上にカーボン層Aとカーボン層Bが形成された積層体(D−1)を得る。
【0168】
工程(p−1−8)〜(p−3−8):
例6の工程(p−1−6)〜(p−3−6)と同様にして、高分子電解質膜(H20)の片側にカソード触媒層が積層されたカソード触媒層積層膜(Q’−2)を形成する。
【0169】
工程(d−8):
また、カーボンペーパー(J’)の上に、カーボン層用塗工液(M1)を、カーボンおよびイオン交換樹の総重量が0.8mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、カーボンペーパー上に厚さ9μmのカーボン層を形成する。
【0170】
工程(e−8):
さらに、工程(d−8)で形成したカーボン層の上にアノード触媒層用塗工液(KA)を、白金量が0.05mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、カーボンペーパー(J’)の上にカーボン層およびアノード触媒層が形成された積層体(B−2)を作製する。
【0171】
工程(q6−8)、(q’6−8):
さらに次に、積層体(D−1)のカーボン層Aがカソード触媒層積層膜(Q’−2)のカソード触媒層と接するように配置し、積層体(B−2)のアノード触媒層がカソード触媒層積層膜(Q’−2)の高分子電解質膜と接するように配置して、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスを行って、電極面積が25cmである膜電極接合体(8)を得る。
該膜電極接合体(8)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価する。結果を表1に示す。
【0172】
〔例9〕
工程(g−9)〜工程(j−9):
例7の工程(g−7)〜工程(j−7)と同様にして、カーボンペーパー(J’)上にカーボン層Aとカーボン層Bが形成された積層体(D−1)を得る。
【0173】
工程(p−1−9)〜(p−3−9)、(p’−1−9)〜(p’−3−9):
例7の工程(p−1−7)〜(p−3−7)、(p’−1−7)〜(p’−3−7)と同様にして、アノード・カソード触媒層積層膜(Q−3)を形成する。
【0174】
工程(q7−9)、(q’7−9):
さらに次に、積層体(D−1)のカーボン層Aが、アノード・カソード触媒層積層膜(Q−3)のカソード触媒層に接するように配置し、さらに、カーボンペーパー(J’)が、アノード・カソード触媒層積層膜(Q−3)のアノード触媒層に接するように配置して、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスを行って、電極面積が25cmである膜電極接合体(9)を得る。
該膜電極接合体(9)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価する。結果を表1に示す。
【0175】
〔例10〕
工程(g−10)〜工程(j−10):
例7の工程(g−7)〜工程(j−7)と同様にして、カーボンペーパー(J’)上にカーボン層Aとカーボン層Bが形成された積層体(D−1)を得る。
【0176】
工程(p−1−10)〜(p−3−10):
例6の工程(p−1−6)〜(p−3−6)と同様にして、高分子電解質膜(H20)の片側にカソード触媒層が積層されたカソード触媒層積層膜(Q’−2)を形成する。
【0177】
工程(f−10):
また、カーボンペーパー(J’)の上に、アノード触媒層用塗工液(KA)を、白金量が0.05mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥し、カーボンペーパー(J’)の上にアノード触媒層が形成された積層体(C−2)を作製する。
【0178】
工程(q8−10)、(q’8−10):
さらに次に、積層体(D−1)のカーボン層Aが、カソード触媒層積層膜(Q’−2)のカソード触媒層に接するように配置し、さらに、積層体(C−2)のアノード触媒層が、カソード触媒層積層膜(Q’−2)の高分子電解質膜に接するように配置して、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスを行って、電極面積が25cmである膜電極接合体(10)を得る。
該膜電極接合体(10)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価する。結果を表1に示す。
【0179】
〔例11〕
例1の工程(p−1−1)〜(p−3−1)、(p’−1−1)〜(p’−3−1)と同様にして、高分子電解質膜(H20)の両側に触媒層が形成されたアノード・カソード触媒層積層膜(Q−1)を形成した。
次に、アノード・カソード触媒層積層膜(Q−1)の両側に、カーボンペーパー(J)を配置し、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスして、電極面積が25cmである膜電極接合体(11)を得た。
該膜電極接合体(11)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価した。結果を表1に示す。
【0180】
〔例12〕
例7の工程(p−1−7)〜(p−3−7)、(p’−1−7)〜(p’−3−7)と同様にして、高分子電解質膜(H20)の両側に触媒層が積層されたアノード・カソード触媒層積層膜(Q−3)を形成した。
次に、アノード・カソード触媒層積層膜(Q−3)の両側に、カーボンペーパー(J’)を配置し、150℃で1.5MPaの圧力で2分間加熱プレスして、電極面積が25cmである膜電極接合体(12)を得た。
該膜電極接合体(12)について、発電特性および乾燥湿潤繰り返し耐性を評価した。結果を表1に示す。
【0181】
(膜/電極界面の接着強度)
例2の工程(p−1−2)〜(p−3−2)で作製したカソード触媒層積層膜(Q’−1)のカソード触媒層と、例2の工程(a−2)〜(c−2)で作製した積層体(A−1)のカーボン層とが接するように配置し、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で2分間熱プレスし、高分子電解質膜(H20)の片面のみカソード触媒層とカーボン層およびカーボンペーパーが積層された接合体(1)を作製した。
【0182】
例8の工程(p−1−8)〜(p−3−8)で作製したカソード触媒層積層膜(Q’−2)のカソード触媒層と、例7の工程(g−7)〜(j−7)で作製した積層体(D−1)のカーボン層Aとが接するように配置し、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で2分間熱プレスし、高分子電解質膜(H20)の片面のみカソード触媒層とカーボン層A、カーボン層Bおよびカーボンペーパーが積層された接合体(2)を作製した。
【0183】
例2の工程(p−1−2)〜(p−3−2)で作製したカソード触媒層積層膜(Q’−1)のカソード触媒層と、カーボンペーパー(J)が接するように配置し、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で2分間熱プレスし、高分子電解質膜(H20)の片面のみカソード触媒層およびカーボンペーパーが積層された接合体(3)を作製した。
【0184】
例8の工程(p−1−8)〜(p−3−8)で作製したカソード触媒層積層膜(Q’−2)のカソード触媒層と、カーボンペーパー(J’)が接するように配置し、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で2分間熱プレスし、高分子電解質膜(H20)の片面のみカソード触媒層およびカーボンペーパーが積層された接合体(4)を作製した。
【0185】
作製した接合体(1)〜(4)のガス拡散層側を固定し、高分子電解質膜の端部を引っ張り試験機のチャックに挟み、90度剥離強度を下記条件にて測定した。接合体(1)のの測定値を、膜電極接合体(1)〜(6)の90度剥離強度とし、接合体(2)の測定値を、膜電極接合体(7)〜(10)の90度剥離強度とし、接合体(3)の測定値を、膜電極接合体(11)の90度剥離強度とし、接合体(4)の測定値を、膜電極接合体(12)の90度剥離強度とした。結果を表1に示す。
【0186】
サンプル幅:25mm、
剥離速度:20mm/分、
温度:25℃。
【0187】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の製造方法で得られた膜電極接合体は、耐久性が高く広範囲な電流密度において高い出力電圧が得られ、特に乾燥や湿潤が繰り返されるような環境下で使用しても高い耐久性を有することから、自動車等の移動体用電源、分散発電システム、家庭用コージェネレーションシステム等として用いられる固体高分子形燃料電池にきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図3】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図4】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図5】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図7】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図8】固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の一例を示す断面図である。
【図9】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図10】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図11】固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の一例を示す断面図である。
【図12】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図13】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図14】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図15】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図16】固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の一例を示す断面図である。
【図17】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図18】本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0190】
100、200、300、400 膜電極接合体
12 第1の触媒層
14 第1のカーボン層
14−1 第1のカーボン層A
14−2 第1のカーボン層B
16 第1のガス拡散層
18 第1のカーボン層塗工液層
120、320 第1の電極
22 第2の触媒層
24 第2のカーボン層
24−1 第2のカーボン層A
24−2 第2のカーボン層B
26 第2のガス拡散層
28 第2のカーボン層塗工液層
130、230、330 第2の電極
160 積層体(A)
260 積層体(A’)
360 積層体(B)
460 積層体(C)
560 積層体(D)
660 積層体(D’)
760 積層体(E)
40 固体高分子電解質膜
50 基材フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の触媒層と第1のガス拡散層とを有する第1の電極と、
第2の触媒層と第2のガス拡散層とを有する第2の電極と、
前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜と、
前記第1の触媒層と前記第1のガス拡散層との間にカーボンとイオン交換樹脂とを含む第1のカーボン層と、
を備える固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
下記の工程(a)〜(c)、(p)、(q1)を有する、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
(a)基材フィルムの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層用塗工液を塗工して第1のカーボン層塗工液層を形成する工程。
(b)工程(a)で形成された前記第1のカーボン層塗工液層の上に、前記第1のガス拡散層を被せた後、前記第1のカーボン層塗工液層を乾燥して前記第1のカーボン層を形成する工程。
(c)工程(b)で形成された前記第1のカーボン層および前記第1のガス拡散層を有する積層体から基材フィルムを剥がして、積層体(A)を得る工程。
(p)前記固体高分子電解質膜の一方の面に前記第1の触媒層を形成する工程。
(q1)工程(c)で得られた前記積層体(A)の前記第1のカーボン層と、工程(p)で前記固体高分子電解質膜の一方の面に形成された前記第1の触媒層とを接するようにして加熱接合する工程。
【請求項2】
前記第1のカーボン層に含まれるイオン交換樹脂が含フッ素イオン交換樹脂であり、前記第1のカーボン層の前記カーボンと前記含フッ素イオン交換樹脂が質量比で1:0.1〜1:5である請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1のカーボン層の厚みが1〜60μmである請求項1または2に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項4】
前記第2の電極の前記第2の触媒層と前記第2のガス拡散層との間に、カーボンとイオン交換樹脂とを含む第2のカーボン層を有し、
下記の工程(a’)〜(c’)、(p’)、(q’1)をさらに有する、請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
(a’)基材フィルムの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層用塗工液を塗工して第2のカーボン層塗工液層を形成する工程。
(b’)工程(a’)で形成された前記第2のカーボン層塗工液層の上に、前記第2のガス拡散層を被せた後、前記第2のカーボン層塗工液層を乾燥して前記第2のカーボン層を形成する工程。
(c’)工程(b’)で形成された前記第2のカーボン層および前記第2のガス拡散層を有する積層体から基材フィルムを剥がして、積層体(A’)を得る工程。
(p’)前記固体高分子電解質膜の一方の面に前記第2の触媒層を形成する工程。
(q’1)工程(c’)で得られた前記積層体(A’)の前記第2のカーボン層と、工程(p’)で前記固体高分子電解質膜の一方の面に形成された前記第2の触媒層とを接するようにして加熱接合する工程。
【請求項5】
前記第2のカーボン層に含まれるイオン交換樹脂が含フッ素系イオン交換樹脂であり、前記第2のカーボン層の前記カーボンと前記含フッ素イオン交換樹脂が質量比で1:0.1〜1:5であることを特徴とする請求項4に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項6】
前記第2のカーボン層の厚みが1〜60μmである請求項4または5に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項7】
第1の触媒層と第1のガス拡散層とを有する第1の電極と、
第2の触媒層と第2のガス拡散層とを有する第2の電極と、
前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜と、
前記第1の触媒層と前記第1のガス拡散層との間に、カーボンとイオン交換樹脂とを含む第1のカーボン層Aおよび第1のカーボン層Bと、
を備える固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
下記の工程(g)〜(j)、(p)、(q4)を有する、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
(g)基材フィルムの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層A用塗工液を塗工し、乾燥して第1のカーボン層Aを形成する工程。
(h)工程(g)で形成された前記第1カーボン層Aの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層B用塗工液を塗工して第1のカーボン層B塗工液層を形成する工程。
(i)工程(h)で形成された前記第1のカーボン層B塗工液層の上に、前記第1のガス拡散層を被せた後、該第1のカーボン層B塗工液層を乾燥して第1のカーボン層Bを形成する工程。
(j)工程(i)で形成された前記第1カーボン層Aおよび前記第1のカーボン層Bおよび前記第1のガス拡散層を有する積層体から基材フィルムを剥がして、積層体(D)を得る工程。
(p)前記固体高分子電解質膜の一方の面に前記第1の触媒層を形成する工程。
(q4)工程(j)で得られた前記積層体(D)の前記第1のカーボン層Aと、工程(p)で前記固体高分子電解質膜の一方の面に形成された前記第1の触媒層とを接するようにして加熱接合する工程。
【請求項8】
前記第1のカーボン層Aの厚みが0.5〜20μmである請求項7に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項9】
前記第2の触媒層と前記第2のガス拡散層との間に、カーボンとイオン交換樹脂とを含む第2のカーボン層Aおよび第2のカーボン層Bを有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
下記の工程(g’)〜(j’)、(p’)、(q4’)をさらに有する、請求項7または8に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
(g’)基材フィルムの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層A用塗工液を塗工し、乾燥して第2のカーボン層Aを形成する工程。
(h’)工程(g’)で形成された第2のカーボン層Aの上に、カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカーボン層B用塗工液を塗工して第2のカーボン層B塗工液層を形成する工程。
(i’)工程(h’)で形成された第2のカーボン層B塗工液層の上に、前記第2のガス拡散層を被せた後、該第2のカーボン層B塗工液層を乾燥して第2カーボン層Bを形成する工程。
(j’)工程(i’)で形成された前記第2のカーボン層Aおよび前記第2のカーボン層Bおよび前記第2のガス拡散層を有する積層体から基材フィルムを剥がして、積層体(D’)を得る工程。
(p’)前記固体高分子電解質膜の一方の面に前記第2の触媒層を形成する工程。
(q4’)工程(j’)で得られた前記積層体(D’)の前記第2のカーボン層Aと、工程(p’)で前記固体高分子電解質膜の一方の面に形成された前記第2の触媒層とを接するようにして加熱接合する工程。
【請求項10】
前記第2のカーボン層Aの厚みが0.5〜20μmである請求項9に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項11】
前記第1の電極がカソードであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項12】
前記カーボンが、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーである請求項1〜11のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−108646(P2010−108646A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277240(P2008−277240)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】