説明

固定式波力発電システム

【課題】波力エネルギー導入部を岸に持ち込んで設置することで低コストで構築することが可能な波力発電システムを提案する。
【解決手段】水際に設置されかつ波の運動を空気圧の増減に置換するように形成した波力エネルギー導入部4と、水際から離れた陸地に設置され、空気運動を電力に変換可能な発電設備60と、上記波力エネルギー導入部4を上記発電設備60へ連通する通気ライン40とを具備し、上記波力エネルギー導入部4は、岸に固定した固定部から水上側へ下面開口のケーシング20を突出し、このケーシング20の下端で岸に接する水面の一部を仕切るように形成してなり、上記通気ライン40は、途中に水際から離れた陸地に設置されたバッファータンク44を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定式波力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
波力発電システムのうち発電装置を沖合又は沿岸に固定するものが知られている。固定式の波力発電システムは、海底に捨石マウンドを設け、その上に防波堤を設置し、この防波堤の前面に下面開口の空気室を設け、空気室内における波の上下動によって空気を圧縮・膨張させて空気流を発生し、これを、空気室の上に設置した発電室(タービン及び発電機を備える室)に送って発電するように構成したものが知られている(特許文献1)。
【0003】
またこの構成において上記空気室と発電室との間に海水減勢室を設けて、簡易な構成により海水の異常上昇に対応できるようにすることも提案されている(特許文献2)。空気室と海水減勢室とは、垂直な連結管を有する隔壁(床壁)で仕切られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−134882
【特許文献2】特開平10−246171
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海底が隆起して陸上へ至る水際(上述の捨石マウンド上の防波堤を含む)では、海水が海底を遡上するために水際に設置された構造物に対して、その遡上方向に波浪の力が加わる。高潮や暴風雨のときには波力が増大して構造物を不安定にするという問題がある。
【0006】
これに対して、特許文献1〜2のシステムの構成では、構造体として波力に対する安定性を確保するために自重を大きくしており、構造体の材料費がかかる。また海上に施工することになるため、施工費が高くなる。
【0007】
また特許文献2のシステムの海水減勢室は、床面積よりも断面積の小さい連通管を空気の流路に介在させることで波浪時に海水がタービンに直接かからないようにする役割を有する。連通管で海水の勢いを弱めるので海水減勢室の高さをそれほど必要とせずに海水の異常上昇を抑制できるとされている(段落0024)。
【0008】
しかし空気室と機械室との間に予備的な空間(バッファー部)を設ける意味としては、海水の減勢の他に空気の圧力変動を緩和してタービンの回転を安定化させることがある。そのために空間の容積を大きくしようとすると、構造体の背が高くなり、コスト高となる。
【0009】
本発明の第1の目的は、波力エネルギー導入部を岸に持ち込んで設置することで低コストで構築することが可能な波力発電システムを提案することである。
【0010】
本発明の第2の目的は、より低くかつ簡易な構造で空気圧の変動を緩和する機能を有する波力発電システムを提案することである。
【0011】
本発明の第3の目的は、海底を遡上して構造物を不安定とする波浪(本明細書において遡上波という)の波力に対して安定性を発揮する波力発電システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の手段は、水際に設置されかつ波の運動を空気圧の増減に置換するように形成した波力エネルギー導入部と、
水際から離れた陸地に設置され、空気運動を電力に変換可能な発電設備と、
上記波力エネルギー導入部を上記発電設備へ連通する通気ラインとを具備し、
上記波力エネルギー導入部は、岸に固定した固定部から水上側へ下面開口のケーシングを突出し、このケーシングの下端で岸に接する水面の一部を仕切るように形成してなり、
上記通気ラインは、途中に水際から離れた陸地に設置されたバッファータンクを含む。
【0013】
本手段では、図1の如く水際に波力エネルギー導入部4を、水際から離れた陸地にバッファータンク44及び発電設備60をそれぞれ設置している。特許文献1のように空気室・海水減勢室・タービン室を垂直方向に構築する場合に比べて、低く安定した構造となりかつ廉価に製造できる。また通気ライン40の途中にバッファータンク44を設けたので図10に示す如く水面の上下動で生じた空気の不規則な圧力変動を平滑化することができる。
【0014】
「水際」とは海岸の他に湖沼の水岸を含む。「バッファータンク」は、海水の異常上昇時の水溜めとしての役割、及び、ケーシング20の内部とともに空気圧を安定化させる空気室としての役割を有する。換言すれば、空気室の容積をバッファータンクの容積分だけ増加させ、それに相応して内圧の変動幅を調整し微細な圧力変動も低減することができる。
【0015】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記のバッファータンクの容積を一定とし、
上記ケーシングは、陸上側から水上側へ亘って配置され、ケーシングの陸上側の一半部の下端と陸地との間に上記固定部を施した。
【0016】
本手段では、図3の如くケーシング20を陸上側から水上側に亘って設けている。ケーシング20の内容積を大とすることができ、空気圧の安定化及び海水の陸上側への進入防止に寄与する。固定部はケーシング20の陸上側の周壁部26aの下端に沿って長く連続した基礎とするとよい。平面的にベタ基礎を構築する方式に比べてシンプルな構造でありながら、陸地側へケーシング20を長くすることで遡上波の波力に対して強固な支持力が得られる。
【0017】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ上記バッファータンクは、その内容積を一定とし、かつバッファータンクの一部にドレイン口を有する。
【0018】
バッファータンク44の態様として、内容積可変型(周壁内面に頂壁を兼ねた可動蓋を内圧の増減に応じて昇降可能としたもの)と定容型のものとが考えられる。前者は後者に比べて、空気圧を安定させ易いが、コスト高となりかつ構造物の背が高くなる。そこで本手段ではケーシング20を定容型とするとともに前述の如くケーシング20を陸上側から水上側に亘らせ、その陸上側の一半部20a及びバッファータンクの作用で空気圧を安定させている。またバッファータンク44の周壁下部にはドレイン口46を設けている(図9参照)。
【0019】
第4の手段は、第2の手段又は第3の手段を有し、かつ上記ケーシングの水上側の他半部の下端を、ケーシングの陸上側の一半部の下面より低く形成し、かつケーシング全体を一部材として搬送可能に形成した。
【0020】
本手段は、図3に示すようにケーシング20の水上側の一半部20aの下端に比べて水上側の他半部20bの下端を低くすることを提案している。これに図8に示すようにケーシング20を一部材として水際に設置することが容易となる。
【0021】
第5の手段は、第2の手段又は第4の手段を有し、かつ上記ケーシングの周壁のうち水上側に臨む正面壁部を、正面方向下側から背面方向上側へ傾斜する傾斜壁部とした。
【0022】
本手段ではケーシング20の正面壁部29を図6に示す傾斜壁部としている。これにより遡上波の波力を傾斜壁部に沿って斜めに逃がすのでケーシング20の破壊を回避できる。
【0023】
第6の手段は、第2の手段から第5の手段のいずれかを有し、かつ上記ケーシングの陸上側の一半部と固定部との一方からロック付きの軸を突出し、その他方にロック受部を形成して、これらロック及びロック受部とで、ケーシングを固定部に対して固定させた。
【0024】
本手段は、ケーシング20の陸上側の一半部20aと固定部6とを固定する手段として、図14〜図20に示すロック(34A,34B)付きの軸とロック受部19とを提案している。図示例では、ケーシング20の陸上側の一半部20aからロック付きの軸を突出し、固定部6にロック受部19を設けているが、その逆としてもよい。
【0025】
第7の手段は、第2の手段から第6の手段の何れかを有し、かつ上記通気ラインに波の上下動によるケーシング内の圧力変動によって一方向の空気流をつくりだす弁機構を設けた。
【0026】
本手段では、図21に示す通気ライン40に弁機構70を設け、発電設備60に一方向の空気流を供給している。これにより、タービンとして軸流タービンやラジアルタービンを用いることができる。
【発明の効果】
【0027】
第1の手段に係る発明によれば、バッファータンク44及び発電設備60から離して水際に波力エネルギー導入部4を設けたから、施工費が安く、また通気ライン40にバッファータンク44を設けたから圧力変動を安定化できる。
第2、第3の手段に係る発明によれば、ケーシング20を陸上側から水上側へ亘って設けたから、構造物の背を低くすることができ、安定した構造とすることができ、またバッファータンク44を定容型とした態様でも空気圧の安定化機能を十分発揮できる。
第4の手段に係る発明によれば、上記ケーシング20を一部材として搬送可能としたから、施工コストを低減できる。
第5の手段によれば、ケーシング20の正面壁部29を、正面方向下側から背面方向上側へ傾斜する傾斜壁部としたから、波浪力の影響を小さくなり、さらに安定した構造となる。
第6の手段に係る発明によれば、ロック34A, 34B付きの軸及びロック受部19を用いてケーシング20を固定部6に固定させたから、固定作業が容易である。
第7の手段に係る発明によれば、通気ライン40に弁機構70を用いたから、一方向への空気の流れで発電するタイプのタービンを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る固定式波力発電システムの概観図である。
【図2】図1のシステムの海上側からみた斜視図である。
【図3】図1のシステムのエネルギー導入部の縦断面図である。
【図4】図1のシステムのエネルギー導入部の平面図である。
【図5】図1のシステムのエネルギー導入部を水上側から見た正面図である。
【図6】図1のシステムのエネルギー導入部の変形例の側面図である。
【図7】図1のシステムのエネルギー導入部の基礎の平面図である。
【図8】図1のシステムのケーシングを基礎に設置する作業の説明図である。
【図9】図1のシステムのバッファータンクの縦断面図である。
【図10】図9のバッファータンクの作用説明図である。
【図11】図1のシステムの発電設備の斜視図である。
【図12】図1のシステムの第1実施例である。
【図13】図1のシステムの第2実施例である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る固定式波力発電システムの要部の断面図である。
【図15】図14の要部のA−A方向の横断面図である。
【図16】図14の要部の作用説明図である。
【図17】図14の要部の変形例の断面図である。
【図18】図17の要部のB−B方向の横断面図である。
【図19】図17の要部の作用説明図である。
【図20】図14の要部のさらに他の変形例の断面図である。
【図21】本発明の第3実施形態に係る固定式波力発電システムの概観図である。
【図22】図21のシステムの要部の平面図である。
【図23】図22のシステムの作用説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1から図13は、本発明の第1の実施形態に係る固定式波力発電システムである。この固定式波力発電システムは、動力供給設備2と発電設備60とで構成されている。
【0030】
動力供給設備2は、波力エネルギー導入部4と通気ライン40とを含む。
【0031】
波力エネルギー導入部4は、図示例では、固定部6とケーシング20とを具備している。
【0032】
上記固定部6は、海岸などの水際の地盤に打ち込まれた複数の第1アンカー8と、これら第1アンカー8で固定され地面に設置された基礎10とで構成されている。設置対象は岩盤などの固い地盤が好適である。
【0033】
上記基礎10は、ケーシング20の陸上側の一半部20aの下端の形状にほぼ対応した平面形状を有することが好ましい。そうすることで基礎10の材料費を低減するためである。図示例の基礎10の平面形状は、図7に示すようにコ字形である。もっともその構成は適宜変更することができる。基礎10は、コンクリート基礎とすることができる。
【0034】
上記基礎10には、好ましくは等間隔にケーシング20固定用の複数の取付凹部12を形成する。これら取付凹部12は、本実施形態では貫通孔として形成しているが、後述のように適宜変更することができる。
【0035】
上記ケーシング20は、頂壁24とこの頂壁24の周縁から垂下する周壁26とで構成する。このケーシング20は、陸上側から水上側に亘って配置されており、ケーシング20の陸上側の一半部20aの周壁部26aと比較して、ケーシング20の水上側の他半部20bの周壁部26bは下方に長く設けている。ケーシング20の材料は、鉄筋コンクリート、鉄板、炭素繊維などとすることができる。
【0036】
水上側の周壁部26bのうち陸上側の周壁部26aと連続する箇所にはそれぞれ段差22を設けている。この段差22と陸地部分との間には隙間を生じさせないための処置(隙間を塞ぐなど)を施すとよい。図示の段差22は傾斜面で形成しているが、海岸の形状に合わせて垂直面その他適宜形状とすることができる。
【0037】
また上記ケーシング20の頂壁24の適所(図示例では陸上側の一半部20aと水上側の他半部20bとの境界付近)には連通孔28が開口されている。
【0038】
上記ケーシング20の陸上側の一半部20aの周壁部26a下面からは、周方向に一定の間隔を存して複数の第2アンカー30を垂下させている。これら第2アンカー30は、上記取付凹部に対応させて配置されており、図示例では取付凹部である貫通孔を通して地盤中へ挿入させている。もっとも後述の如く取付凹部を盲穴タイプとすることもできる。また図示例では第2アンカー30と第1アンカー8とが互い違いに設けられている。
【0039】
上記ケーシング20は、全体として背低の構造物であり、図示例の場合、上記ケーシング20の陸上側の一半部20aだけをみても、一半部20bの奥行きに比べて周壁部26aの高さが小さい。この陸上側の一半部20aから第2アンカー30を垂下して地盤と結合しているため、ケーシング20の水上側の他半部20bに対して十分な支持力を発揮できる。
【0040】
上記ケーシング20の形態は適宜変更できるが、ケーシング20の陸上側の一半部20aを固定部6に固定させた状態でその重心が陸上側にあることが好適である。台風などの波浪力によりケーシング20が流されないようにケーシング20の陸上側の一半部20aの周壁部26aは十分な壁厚に形成するものとする。他方、水上側の他半部20bの全部又は一部の壁厚を陸上側の一半部20aの周壁部26aのそれより小さくすることができる。
【0041】
上記第2アンカーを含むケーシング20全体は、工場にて一部材として製造され、波力発電システムの設置場所に搬送するようにするとよい。設置作業としては図8に示すように揚重機でケーシング20を吊り上げ、第2アンカー30と取付凹部12とを一致させて吊りおろせばよい。
【0042】
陸上側から水上側に亘ってケーシングを設置したことの技術的意義は次の通りである。
第1に、ケーシング20は一つの構造物であり、その陸上側の一半部20aを、陸上の基礎に固定するので簡易な構造とすることができる。
第2に、ケーシング20の陸上側の一半部20aの内部は、波高の増大時に海水の待避場所として機能し、通気ライン40への海水の流入を抑止できる。
第3に、上記陸上側の一半部20aの内部は、予備のバッファータンクとして空気圧の安定化に寄与する。これについては後述する。
第4に、上記陸上側の一半部20aは、水上側の他半部20bを支えるための錘として機能し、これにより背が低くかつ安定した構造とすることができる。
【0043】
図6は、本実施形態のケーシング20の変形例を示している。この例ではケーシング20の周壁26のうち正面壁部29を、正面方向下側から背面方向上側への傾斜壁部としている。この傾斜壁部の表面を波が遡上することが可能なので、波浪から受ける力を低減できる。
【0044】
通気ライン40は、上記連通孔28から発電設備60へ延びる送気管42と、送気管42の途中に設けるバッファータンク44とで構成する。
【0045】
上記送気管42は、図3に示す如く一定の長さの端部43をケーシング20の内部に入れて設置する。こうすることにより波が高い時に極端な圧力上昇を緩和することができる。
【0046】
上記バッファータンク44は、図9に示すように容積一定の容器であり、水際から一定の距離を離して設置されている。バッファータンク44の下部にはドレイン口46を開口し、溜まった海水を排出できるようにしている。
【0047】
好適な実施例として、ドレイン口46は、弁を有し、水が溜ると適宜開放して放流するように構成することができる。常時開放している訳ではないので、空気流のエネルギーの伝達効率を損なうことはない。例えばバッファータンク44の内部に水位計を設置して、一定の水位になったら自動的に弁を開放し放流するようにすることができる。
【0048】
このバッファータンク44の第1の機能は、波が高い時にケーシング20から通気ライン40内に流入する海水が発電設備60に到達してタービンにかかることを防ぐことである。
【0049】
上記バッファータンク44の第2の機能は、空気流の圧力変動を緩和することである。例えば図10の左半図の図形が従来の空気室内の圧力変動を表すものとすると、空気室から流出する空気流がバッファータンク44を通過することで、同図の右半図に表すように空気圧の変化が緩やかとなり、かつ変動巾が小さくなる。これにより発電設備60での発電効率が高まる。
【0050】
さらに本発明では、ケーシング20の陸上側の一半部20aの内部が予備のバッファータンクとして機能するので、圧力変動が2段階で緩和される。
【0051】
発電設備60は、図11に示すようにタービン62と発電機64とバッテリー66とで構成している。発電設備60も海岸から離れた場所に設置するとよい。
【0052】
上記タービン62は、波の上下動により生ずる空気流を回転エネルギーに変換する。本実施形態では、空気の往復流を受けて一方向へ回転するウェルズタービンや衝動型タービンを用いているが、後述の如くその構成は変更できる。
【0053】
上記発電機64は、タービン62の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して、電線68を介して外部へ供給する。図示例では発電機64の出力側にバッテリー66を設けているが、これを省略することもできる。
【0054】
上記構成によれば、ケーシング20の水上側の周壁部26bで囲まれた海面の上下動を、空気の往動又は復動へ変換し、効率的に電気エネルギーを取り出すことができる。海岸にはケーシング20の陸上側の周壁部26aに対応した基礎10を構築すればよく、工場で生産したケーシング20を運び込み、設置すればよいので、量産によるコスト低下が図れる。
【0055】
ケーシング20のサイズは、可搬性を前提とするときにはあまり大きくできないので、本願の波力発電システムを一つのユニットとして、例えば図12及び図13に示すように海岸線に沿って複数の波力発電システムのケーシング20を並設又は散在させて設けることが好適である。これにより必要によりケーシング20を増設することも容易であり、経済的である。
【0056】
上記ケーシング20は陸上側から水上側へ亘って設置されているので、一定の内容積のものを相対的に背低の構造物として形成することができ、かつ一体物として地面に低く設置しているので、暴風雨や台風にあっても基礎10から脱落し難い。
【0057】
以下本発明の他の実施形態について説明する。これらの説明において第1実施形態と同じ事柄については解説を省略する。
【0058】
図14から図20は、本発明の第2実施形態に係る波力発電システムを示している。本実施形態は、基礎10の取付凹部12を盲穴状として、この中にケーシング20の第2アンカー30をはめ込む構成としたものである。
【0059】
上記取付凹部12は、基礎10の内部を空洞部12aとするとともに、基礎10の上壁10aの中央部に貫通孔12bを開口することで形成される。上記上壁10aの下面両端に一対の回転式の扉板16の基部を枢着させている。これら扉板16の先部には、第2アンカー挿通用の切欠18を形成し、さらに扉板16は閉方向に付勢させる。この扉板16の裏面でロック受部19を形成している。なお、図示例では扉板16の切欠18の大きさは第2アンカー30の軸棒32Aの太さよりやや大きくなっている。
【0060】
上記第2アンカー30は、垂直な軸棒32Aの下端に円錐形の拡径したロック部34Aを形成してなる。
【0061】
第2アンカー30が基礎10に取り付けられている扉板16の方へ上から差し込まれることにより、第2アンカー30のロック用のロック部34Aが空洞部12aに入った状態で扉板16が締る。これにより扉板16裏面のロック受部19にロック部34Aが当たることで瞬時にロックされ、引き抜き方向の動きが阻止される。
【0062】
上記第2アンカー30の軸棒32Aがロックされた後、上記空洞部12a内には、モルタルやグラウトなどを注入し、第2アンカー30を完全に固定する。従って第1実施形態に比べて固定部6に対するケーシング20の支持力が向上する。
【0063】
なお、図示例と異なり、ケーシング20の下端側に下向きの取付凹部12を有する連結部を形成するとともに、基礎10から、取付凹部12内へ抜出し不能に嵌合可能なロック部34Aを先端に有する軸棒32Aを起立させてもよい。
【0064】
図17〜図19は、本実施形態の変形例である。この例では、上記上壁10aの裏面でロック受部19を形成している。また上記第2アンカー30の軸棒32Aの下端に適数のブレード形のロック板34Bを枢着している。そして、第2アンカー30を基礎10の取付凹部12に挿入し、着底したときの振動や衝撃などでロック板34Bが開くように構成している。これにより第2アンカー30を引き抜きできなくなり、ケーシング20と基礎10とが瞬時に固定される。
【0065】
図20は、本実施形態のさらに他の変形例を示している。図20(A)では、ケーシング20の陸上側の周壁部26bの外面下端部からは鍔状のフランジ部27が外方突出させている。このフランジ部27には取付孔が形成されてあり、この取付孔内に第2アンカー30が有する軸筒32Bの上部を固定している。この軸筒32Bの下部に複数の縦長の窓35を設け、その窓35の下端に、窓孔内方に内縁を位置させた縦長ブレード状でロック板34Bを枢着している。この第2アンカー30を取付凹部12内に挿入し、そして上からボールなどの錘を落とすと、ボールに内側から押されてロック板34Bが開き、ケーシング20と基礎10とが瞬時に固定される。
【0066】
図20(B)では、上記フランジ部27の取付孔内に軸筒32Bの上部を固定するとともに、この軸筒32Bの下部に適数のロック板34Bを枢着させ、このロック板34Bの上部外面に連結したワイヤー36を軸筒32Bの下端を経由し、軸筒32Bの内部を通って軸筒32B上方へ引き出してなる。この第2アンカー30を取付凹部12内に挿入し、そしてワイヤー36を引くと、ロック板34Bが開き、ケーシング20と基礎10とが瞬時に固定される。
【0067】
図20(C)では、第2アンカー30が有する軸棒32Aの下端に適数のロック板34Bを枢着させるとともに、ロック板34Bより上の軸棒32A中間部分にスライド筒37を嵌合させている。軸棒32Aの中間部分から上部にかけてネジを形成しており、その上部にナット38を螺着させている。軸棒32Aを取付凹部12に挿入し、ケーシング20が基礎10に向けて下降するに従ってフランジ部27に固定されたスライド筒37がロック板34Bを押し広げる。ケーシング20が基礎10に設置したら、次にナット38を締め付けて固定する。これによりケーシング20と基礎10とが瞬時に固定される。
【0068】
図17〜図20に示した、いずれの固定方法においてもアンカーが固定された後に空洞部12a内にモルタルやフタウトなどを注入し完全に固定する。
【0069】
図21から図22は、本発明の第3実施形態に係る波力発電システムを示している。本実施形態は、通気ライン40の空気取入れ側の端部に弁機構70を設けたものである。
【0070】
上記弁機構70は、エア室72を有し、このエア室72に設けた出口に排気弁74を、エア室72に設けた入口に吸込み弁76をそれぞれ設けている。図示の排気弁74は、エア室72の上部に配置した第1筺体の底に設けた弁孔とこの弁孔の上に載置した玉弁とで形成している。また図示の吸込み弁76は、エア室72の側面から連通管を介して第2筺体を吊り下げ、この第2筺体の底に設けた弁孔と、この弁孔の上に載置した玉弁とで構成している。玉弁は樹脂などで形成するとよい。
【0071】
図23は、この弁機構70の原理図を示している。同図ではケーシングの作図を省略してエア室を、海水が入る空気室としている。海面が下降したときには、同図(A)の如く吸込み弁76からエア室72に空気が流入し、海面が上昇したときには、同図(B)の如く吸込み弁76が閉じて、排気弁74から空気が排出される。
【0072】
この弁機構70を設けることで、軸流タービンやラジアルタービンなど一方向の流れにのみ対応するタイプのタービンを採用できる。なお弁機構70の構造は、開閉手段としてスプリングなどの弾性材料を用いるものでないので、疲労による劣化を生じにくく、長年の使用によく耐える。
【符号の説明】
【0073】
2…動力供給設備 4…波力エネルギー導入部 6…固定部
8…第1アンカー 10…基礎 10a…上壁
12…取付凹部 12a…空洞部 12b…貫通孔
16…扉板 18…切欠 19…ロック受部
20…ケーシング 20a…陸上側一半部 20b…水上側他半部 22…段差 24…頂壁
26…周壁 26a…陸上側の周壁部 26b…水上側の周壁部 27…フランジ部
28…連通孔 29…正面壁部
30…第2アンカー 32A…軸棒 32B…軸筒 34A…ロック部
34B…ロック板 35…窓 36…ワイヤー 37…スライド筒 38…ナット
40…通気ライン 42…送気管 43…端部 44…バッファータンク 46…ドレイン口
60…発電設備 62…タービン 64…発電機 66…バッテリー 68…電線
70…弁機構 72…エア室 74…排気弁 76…吸込み弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水際に設置されかつ波の運動を空気圧の増減に置換するように形成した波力エネルギー導入部と、
水際から離れた陸地に設置され、空気運動を電力に変換可能な発電設備と、
上記波力エネルギー導入部を上記発電設備へ連通する通気ラインとを具備し、
上記波力エネルギー導入部は、岸に固定した固定部から水上側へ下面開口のケーシングを突出し、このケーシングの下端で岸に接する水面の一部を仕切るように形成してなり、
上記通気ラインは、途中に水際から離れた陸地に設置されたバッファータンクを含むことを特徴とする、波力発電システム。
【請求項2】
上記ケーシングは、陸上側から水上側へ亘って配置され、ケーシングの陸上側の一半部の下端と陸地との間に上記固定部を施したことを特徴とする、請求項1記載の波力発電システム。
【請求項3】
上記バッファータンクは、その内容積を一定とし、かつバッファータンクの一部にドレイン口を有することを特徴とする、請求項2に記載の波力発電システム。
【請求項4】
上記ケーシングの水上側の他半部の下端を、ケーシングの陸上側の一半部の下面より低く形成し、かつケーシング全体を一部材として搬送可能に形成したことを特徴とする、請求項2または請求項3記載の波力発電システム。
【請求項5】
上記ケーシングの周壁のうち水上側に臨む正面壁部を、正面方向下側から背面方向上側へ傾斜する傾斜壁部としたことを特徴とする請求項2から請求項4記載のいずれかに記載の波力発電システム。
【請求項6】
上記ケーシングの陸上側の一半部と固定部との一方からロック付きの軸を突出し、その他方にロック受部を形成して、これらロック及びロック受部とで、ケーシングを固定部に対して固定させたことを特徴とする、請求項2から請求項5のいずれかに記載の波力発電システム。
【請求項7】
上記通気ラインに波の上下動によるケーシングの圧力変動によって一方向の空気流をつくりだす弁機構を設けたことを特徴とする、請求項2から請求項6の何れかに記載の波力発電システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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