説明

固定金具の破損の可能性の判定装置、固定金具の取付計画の作成装置、固定金具の破損の可能性の判定方法、固定金具の取付計画の作成方法

【課題】機器の転倒防止のための固定金具の破損の可能性を判定できる装置を提供する。
【解決手段】装置100は、想定される地震に関する地震情報の入力を受け付ける地震情報入力部10と、機器の寸法及び重量に関する機器情報の入力を受け付ける機器情報入力部20と、固定金具の寸法、強度、取付個数及び取付位置を含む固定金具情報の入力を受け付ける固定金具情報入力部30と、地震情報入力部10が入力を受け付けた地震情報、機器情報入力部20が入力を受け付けた機器情報、及び固定金具情報入力部30が入力を受け付けた固定金具情報に基づき、固定金具の破損する可能性の有無を判定する耐震性判定部40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時に転倒を防止するために、対象物と躯体との一部を結ぶように取り付けられる固定金具の破損の可能性を判定する装置及び方法、固定金具の取付計画の作成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの大型の機器が室内に設けられるような建物では、建物内に設置された機器が地震により転倒してしまうのを防止するため、機器の下部を取付金具により床に固定することにより補強している。このように固定金具により機器の下部を床に固定する方法では、機器に生じる水平力により固定金具に大きな力が作用するため、固定金具の強度や個数を適切に計画する必要がある。
【0003】
なお、このような機器の補強に関する技術として、例えば、特許文献1には建物の設備部材の耐震ランクの決定方法が記載されているが、具体的な設備部材の固定方法を計画する方法については記載されていない。
【特許文献1】特開2004―126760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、このような固定金具の強度、個数、及び寸法に関する固定金具の取付計画を作成する方法は確立されておらず、人が経験に基き決定してきた。このため、固定金具の強度や数が不十分な場合が起こりうるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、機器の転倒防止のための固定金具の破損の可能性を判定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の固定金具の破損の可能性の判定装置は、地震時に転倒するのを防止するために、対象物を固定するべく取り付けられる固定金具の破損の可能性を判定する装置であって、 想定される地震規模を示す地震情報の入力を受け付ける地震情報入力部と、対象物の寸法及び重量に関する対象物情報の入力を受け付ける対象物情報入力部と、固定金具の寸法、強度、取付個数及び取付位置を含む固定金具情報の入力を受け付ける固定金具情報入力部と、前記地震情報入力部が入力を受け付けた地震情報、前記対象物情報入力部が入力を受け付けた前記対象物情報、及び前記固定金具情報入力部が入力を受け付けた固定金具情報に基づき、前記固定金具の破損する可能性の有無を判定する耐震性判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の装置において、前記固定金具は、ボルトにより前記対象物に取り付けられており、前記固定金具情報は、前記ボルトの寸法、強度、取付個数及び取付位置に関する情報を含み、前記耐震性判定部は、前記固定金具の破損する可能性の有無を判定するとともに、前記ボルトが破損する可能性の有無を判定してもよい。
【0008】
また、前記耐震性判定部は、地震情報と、機器情報とに基き、前記固定金具を取り付けない状態での、前記装置の転倒の可能性の有無を判定してもよい。
【0009】
また、本発明の固定金具の取付計画の作成装置は、地震時に転倒するのを防止するために、対象物を固定するべく取り付けられる固定金具の寸法、強度、及び取付個数からなる複数の固定金具条件のうち何れか一つの固定金具条件を算出する固定金具の取付計画を作成する装置であって、想定される地震の規模を示す地震情報の入力を受け付ける地震情報入力部と、対象物の寸法及び重量に関する対象物情報の入力を受け付ける対象物情報入力部と、前記複数の固定金具条件のうち前記一つの固定金具条件を除く固定金具情報の入力を受け付ける固定金具情報入力部と、前記地震情報入力部が入力を受け付けた地震情報、前記対象物情報入力部が入力を受け付けた前記対象物情報、及び前記固定金具情報入力部が入力を受け付けた固定金具情報に基づき、前記一つの固定金具条件を求める耐震性判定部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の固定金具の取付計画の作成装置において、前記固定金具は、ボルトにより前記対象物に取り付けられており、前記固定金具情報は、前記ボルトの寸法、強度、取付個数及び取付位置からなる複数のボルト固定条件のうち何れか一つのボルト固定条件を除く情報を含み、前記耐震性判定部は、前記固定金具の破損する可能性の有無を判定するとともに、前記一つのボルト固定条件を求めてもよい。
【0011】
また、前記耐震性判定部は、地震情報入力部と、機器情報入力部とに基き、前記固定金具を取り付けない状態で、前記装置の転倒の可能性の有無を判定してもよい。
【0012】
また、本発明の固定金具の破損の可能性の判定方法は、地震時に転倒するのを防止するために、対象物を固定するべく取り付けられる固定金具の取付計画を判定する方法であって、想定される地震の規模に関する地震情報と、対象物の寸法及び重量に関する対象物情報と、固定金具の寸法、強度、取付個数及び取付位置を含む固定金具情報と、に基づき、前記固定金具の破損する可能性の有無を判定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の固定金具の取付計画の作成方法は、地震時に転倒するのを防止するために、対象物を固定するべく取り付けられる固定金具の寸法、強度、及び取付個数からなる複数の固定金具条件のうち何れか一つの固定金具条件を算出する固定金具の取付計画を作成する方法であって、想定される地震の規模に関する地震情報と、対象物の寸法及び重量に関する対象物情報と、前記複数の固定金具条件のうち前記一つの固定金具条件を除く固定金具情報と、に基づき、前記一つの固定金具条件を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地震情報、機器情報、及び固定金具情報に基づき、固定金具の破損の可能性の判定を行うことができるため、確実に機器が転倒しないように固定金具を取り付ける計画を作成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の固定金具判定装置の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の固定金具判定装置による計画の対象となる機器1及びこの機器1の固定状況を示す斜視図である。以下の説明では、同図に示すように、幅L、奥行きW、高さHの機器の各側面の下端と床との間に、図2に示すような、L型の固定金具2をボルト3により取り付けて機器1の耐震補強を行う場合に、固定金具2を取り付ける必要性、固定金具2の破損の可能性、及びボルト3の破損の可能性を判定する場合を例として説明する。
【0016】
図3は、本実施形態の固定金具判定装置100の構成を示す図である。固定金具判定装置100は、例えば、コンピュータからなり、同図に示すように、地震情報入力部10と、機器情報入力部20と、固定金具情報入力部30と、耐震性判定部40と、出力部50と、を備える。
【0017】
地震情報入力部10は、計画担当者による機器1の耐震計画を判定する際に、機器1に作用すると想定する地震規模に関する地震情報の入力を受け付ける。本実施形態では、地震情報として設計水平加速度aH及び設計鉛直加速度aVを含む情報を用いる。この地震情報は、例えば、顧客の要求する耐震性能や、機器1が設置される床スラブの状況に基いて決定すればよい。すなわち、例えば顧客から高い耐震性能を求められている場合には、通常に比べて大きな設計水平加速度aH及び設計鉛直加速度aVを入力すると良く、また、例えば機器1の設置される床スラブが上げ床である場合には、地震動が増幅される可能性があるので、増幅率を考慮して設計水平加速度aH及び設計鉛直加速度aVを入力するとよい。地震情報入力部10が入力を受け付けた地震情報は、耐震性判定部40に供給される。
【0018】
機器情報入力部20は、機器の重量w、高さH、幅L、奥行きW、及び重心位置に関する情報を含む機器情報の入力を受け付ける。機器情報入力部20が入力を受け付けた機器情報は耐震性判定部40に供給される。
【0019】
固定金具情報入力部30は、固定金具2の許容曲げ応力度(短期)fb、固定する際に用いられるボルト3の許容引張応力度(短期)ft、ボルト3の許容せん断応力度(短期)fs、固定金具2の幅c、固定金具2の高さa、固定金具2の設計厚d、機器1の一側面あたりの固定金具2の取付個数N、固定金具2の1個あたりのボルト3の本数m、固定金具2のボルト孔2Aの径φ0、ボルト3の径φを含む固定金具情報の入力を受け付ける。固定金具情報入力部30が入力を受け付けた固定金具情報は、耐震性判定部40に供給される。
【0020】
耐震性判定部40は、地震情報入力部10、機器情報入力部20、及び固定金具情報入力部30から夫々供給された地震情報、機器情報、及び固定金具情報に基づき、機器1の転倒の可能性の判定、ボルト3の破損の可能性の判定、及び固定金具2に必要とされる板厚の算出を行う。
出力部50は、耐震性判定部40における判定結果を必要に応じて印刷出力又は画像出力する。
なお、上記の各機能部10〜50の機能は、コンピュータのCPUがメモリに記録されたプログラムを実行することにより実現される。
【0021】
以下、図4に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態の固定金具判定装置100が、固定金具2及びボルト3が破損する可能性があるか否かを判定する流れについて説明する。なお、後述する固定金具2及びボルト3が破損する可能性があるか否かを判定するための式(1)〜(6)は、監修 国土交通省国土技術政策総合研究所 独立行政法人建築研究所、編集 建築設備耐震設計・施工指針2005年版編集委員会、「建築設備耐震設計・施工指針 2005年版」、初版、平成17年5月31日、p.34−36に記載の検討方法に基くものである。
予め、計画担当者は、耐震補強の依頼者が求める耐震性能や、機器1の設置される床の状況等に応じて、設計水平加速度aH及び設計鉛直加速度aVを含む地震情報を決定しておく。例えば、より高い耐震性能を持たせる場合や、機器1の設置される床が上げ床である場合には、設計水平加速度aH及び設計鉛直加速度aVを大きく設定するとよい。
【0022】
また、計画担当者は、仕様書や図面に基き、耐震補強を行うべき機器1の重量w、高さH、幅L、奥行きD、及び重心位置に関する機器情報を取得しておく。なお、仕様書や図面が入手できない場合には、実物を測定することでも機器情報を取得することができる。
【0023】
また、計画担当者は、機器1を固定する床4の躯体の種別、強度、床パネルの種類や強度に関する躯体情報を調査する。そして、この躯体情報に基づき、機器1を固定する固定金具2、固定金具2の取り付け位置、取り付け個数等の取付計画を作成する。そして、この取付計画及び固定金具2の性能に基き、固定金具2の許容応力度(短期)fb、固定する際に用いられるボルト3の許容引張応力度(短期)ft、ボルト3の許容せん断応力度(短期)fs、固定金具2の幅c、固定金具2の高さa、固定金具2の設計厚d、一辺あたりの固定金具2の取付個数N、固定金具2の1個あたりのボルト3の本数m、固定金具2のボルト孔2Aの径φ0、ボルト3の径φを含む固定金具情報を作成しておく。
【0024】
まず、STEP100において、固定金具判定装置100は、地震情報入力部10により、計画担当者による地震情報の入力を受け付ける。地震情報入力部10により入力を受け付けた地震情報は、耐震性判定部40へ供給される。
【0025】
次に、STEP120において、機器情報入力部20により、計画担当者による機器情報の入力を受け付ける。機器情報入力部20により入力を受け付けた機器情報は、耐震性判定部40へ供給される。
【0026】
次に、STEP140において、固定金具情報入力部30により、計画担当者による固定金具情報の入力を受け付ける。固定金具情報入力部30により入力を受け付けた固定金具情報は、耐震性判定部40へ供給される。
【0027】
次に、STEP160において、耐震性判定部40により、機器1が転倒する可能性の有無を判定する。図5は、機器1が転倒する可能性の有無の判定方法を説明するための図である。
機器1の図中右下の端部を中心としたモーメントを考えると、危機が転倒する条件として以下の式が導かれる。
kH・w・hG<LG・(1−kV)・w
この式を整理すると、以下の式が導かれる。
LG/hG>kH/(1−kV) …(1)
なお、式中の各記号が示す値は以下の通りである。w:機器1の重量、hG:重心の高さ、LG:機器1の端部から重心までの水平距離(LG≦L/2)、aH:設計水平加速度、aV:設計鉛直加速度、kH:設計水平加速度比(=aH/9.8[m/s])、kV:設計鉛直加速度比(=aV/9.8[m/s])である。
【0028】
本実施形態では、式(1)を満たすか否かに基き、転倒する可能性の有無を判定することとした。すなわち、式(1)を満たさない場合には、固定金具2を取り付けなくても転倒の可能性が無いと判定し、式(1)を満たす場合には、固定金具2を取り付けない場合には転倒する可能性があると判定する。
【0029】
STEP160において、耐震性判定部40により、固定金具2を取り付けなくても機器1が転倒する可能性がないと判定された場合には、STEP180において、出力部により機器1が転倒する可能性が無く、耐震補強を行う必要がない旨の表示を行い、処理を終了する。
【0030】
STEP160において、耐震性判定部40により、機器が転倒する可能性があると判定された場合には、STEP200において、ボルト3が地震により作用する力に耐え得るか、否かを判定する。
【0031】
ボルト3に作用するせん断力Q及び引き抜き力Rは以下の式で算出される。
Q=kH×w/N …(2)
R={kH×hG−(1−kV)×LG}×w/(D×Nt) …(3)
また、ボルト3の短期許容せん断力Qa、短期許容引張力Naは以下の式で算出される。
Qa=fs×Ab …(4)
Na=ft×Ab …(5)
なお、上記の式中の各記号が示す値は以下の通りである。N:ボルト3の総本数、D:機器1の幅、Nt:引張側のボルト3の本数、Ab:ボルト3の有効断面積。
【0032】
本実施形態では、上記の式(2)〜(5)により算出したQ,R、Qa、Naの間に以下の関係が成立するか否かに基き、ボルト3が地震により作用する力に耐え得るか否かを判定する。すなわち、Na>R、かつ、Qa>Qである場合には、ボルト3が地震により作用する力に耐え得る、すなわち破損する可能性がないと判定し、それ以外の場合には、ボルト3が地震により作用する力により破損する可能性があると判定する。
【0033】
STEP200において、耐震性判定部40により、ボルト3が破損する可能性があると判定された場合には、STEP220において、出力部50によりボルト3が破損する可能性が有るため、ボルト3の個数、径、又は強度を変更することを薦める旨の表示を行い、処理を終了する。
【0034】
STEP200において、耐震性判定部40により、ボルト3が破損する可能性がないと判定された場合には、STEP240において、耐震性判定部40により、固定金具2に必要な板厚dを算出する。固定金具2に必要な板厚dは以下の式により算出できる。
【数1】

なお、式中の記号が示す値は以下の通りである。c:固定金具2の幅、m:固定金具2の1ヶ所あたりのボルト3の本数、φ:固定金具2のボルト孔2Aの径、N:機器1の一辺あたりの固定金具3の個数。
【0035】
次に、STEP260において、固定金具2の設計板厚dと、上記算出した固定金具2に必要な板厚dとを比較して、固定金具2が破損する可能性の有無を判定する。すなわち、d>dの場合には、固定金具2が破損する可能性はないと判定し、d≦dの場合には、固定金具2が破損する可能性があると判定する。
【0036】
次に、STEP260において固定金具2が破損する可能性があると判定された場合には、STEP280において、出力部50により固定金具2が破損する可能性があるため、固定金具の大きさ、個数、強度、又は厚さを変更することを薦める旨の表示をして、処理を終了する。また、STEP260において固定金具2が破損する可能性がないと判定された場合には、STEP300において、出力部50により固定金具及びボルトが破損する可能性がない旨の表示をして処理を終了する。
以上の工程により、ボルト3及び固定金具2の破損の可能性の有無を判定することができる。
【0037】
以下、上記の装置100によりボルト3及び固定金具2の破損の可能性の有無の判定例を説明する。
まず、STEP100において、地震情報入力部10により、地震情報として以下の値の入力を受け付ける。
設計水平加速度aH=980[cm/sec
設計鉛直加速度aV=490[cm/sec
【0038】
次に、STEP120において、機器情報入力部20により、機器情報として以下の値の入力を受け付ける。
機器1の重量w=1200[kg]
高さH=2500[mm]
幅L=2000[mm]
重心高さhG=1250[mm]
重心までの水平距離LG=1000[mm]
【0039】
次に、STEP140において、固定金具情報入力部30により、固定金具情報として以下の値の入力を受け付ける。
固定金具2の許容曲げ応力度(短期)fb=2200[kg/cm
ボルト3の許容引張応力度(短期)ft=1800[kg/cm
ボルト3の許容せん断応力度(短期)fs=1350[kg/cm
固定金具2の幅c=12.0[cm]
固定金具2の高さa=12.0[cm]
固定金具2の設計厚d=1.2[cm]
機器1の一側面あたりの固定金具2の取付個数N=3
固定金具2個あたりのボルト3の本数m=2
固定金具2のボルト孔2Aの径φ=10[mm]
ボルト3の径φ=8[mm]
【0040】
次に、STEP160において、LG/hG=1000/1250=0.800、また、kH/(1−kV)=1.00/(1−0.50)=2.00であるので、LG/hG>kH/(1−kV)となり、固定金具2を取り付けない場合には転倒する可能性があると判定される。
【0041】
次に、STEP200において、Q=1.00×1200/24=50、R={1.00×1250−(1−0.50)×1000}×1200/(2000×6)=75kg、また、ボルト3の有効断面積Ab=0.75×0.4×0.4×3.14=0.377[cm]であり、Na=1200×1.5×0.377=679[kg]、Qa=900×1.5×0.377=509[kg]であるので、Na>R、かつ、Qa>Qであるので、耐震性判定部40によりボルト3は破損する可能性がないと判定される。
【0042】
次に、STEP240において、固定金具2の必要な板厚dは、
【数2】

と算出される。
このため、STEP260において、固定金具2の設計板厚d>必要な板厚dとなるので、固定金具2の破損する可能性がないと判定される。そして、STEP280において、出力部50により固定金具2及びボルト3の破損の可能性がない旨表示され、機器1の耐震計画の安全性が確認されることとなる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、入力された地震情報、機器情報、及び固定金具情報に基づき、固定金具2を設置しない場合における転倒の可能性の有無、ボルト3の破損する可能性の有無、及び固定金具2の破損の可能性の判定を行うことができる。これにより、確実に機器1が転倒しないような固定金具2の取付計画を策定することが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態では、入力された各情報に基き、ボルト3が破損する可能性の有無を判定するものとしたが、これに限らず、例えば、固定金具情報として、ボルト3の本数を入力せず、上記の式(2)〜(5)を用いてNa>R、かつ、Qa>Qを満たすようなボルト3の本数を算出することができる。さらに、これと同様に、ボルト3の強度、ボルト3の取付位置又はボルト3の径のうち何れか一つの条件を入力せずに、この条件を求めることが可能である。
【0045】
また、本実施形態では、入力された各情報に基づき、固定金具2が破損する可能性の有無を判定するものとしたが、これに限らず、例えば、固定金具情報として、固定金具2の取付個数を入力せず、上記の式(6)を用いてd>dを満たすように固定金具2の取付個数を算出することもできる。さらに、これと同様に、固定金具の寸法(幅、厚さ、ボルト孔の径)又は強度を算出することもできる。
【0046】
また、本実施形態では、地震情報として、設計水平加速度aH及び設計鉛直加速度aVを入力するものとしたが、これに限らず、既往波や模擬地震波などを入力するものとしてもよい。この場合、STEP160における機器1の転倒の可能性の判定やSTEP200におけるボルト3の耐久性の判定を行う際には、地震応答解析を行ってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、固定金具情報入力部30により、ボルト3の径、強度等の値を入力を受け付けるものとしたが、これに限らず、予め、固定金具情報入力部30に市販されている規格化されたボルト3の径や強度等の情報を記録しておき、計画担当者は記録されたボルト3の中から使用するボルト3を選択するものとしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、L型の固定金具2により機器1を固定する場合について説明したが、これに限らず、他の形状の固定金具2により機器1を固定する場合にも本発明を適用できる。また、予め固定金具情報入力部30に複数通りの固定金具2の強度や、大きさ等の情報を記録しておき、計画担当者は記録された固定金具2の中から使用する固定金具2を選択するものとしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、機器1を建物の床に固定する場合について説明したが、これに限らず、家具などの地震時に転倒の可能性があるものであれば、本発明の適用の対象となる。また、本発明では、床に固定する場合について説明したが、これに限らず、壁や柱に固定する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態の固定金具判定装置による計画の対象となる機器及びこの機器の固定状況を示す斜視図である。
【図2】機器の耐震補強を行うために取り付けられる固定金具を示す斜視図である。
【図3】本実施形態の固定金具判定装置の構成を示す図である。
【図4】固定金具判定装置により固定金具に必要とされる厚さを計画する流れを示すフローチャートである。
【図5】機器が転倒する可能性の有無の判定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0051】
1 機器
2 固定金具
2A ボルト孔
3 ボルト
10 地震情報入力部
20 機器情報入力部
30 固定金具情報入力部
40 耐震性判定部
50 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震時に転倒するのを防止するために、対象物を固定するべく取り付けられる固定金具の破損の可能性を判定する装置であって、
想定される地震規模を示す地震情報の入力を受け付ける地震情報入力部と、
対象物の寸法及び重量に関する対象物情報の入力を受け付ける対象物情報入力部と、
固定金具の寸法、強度、取付個数及び取付位置を含む固定金具情報の入力を受け付ける固定金具情報入力部と、
前記地震情報入力部が入力を受け付けた地震情報、前記対象物情報入力部が入力を受け付けた前記対象物情報、及び前記固定金具情報入力部が入力を受け付けた固定金具情報に基づき、前記固定金具の破損する可能性の有無を判定する耐震性判定部と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置であって、
前記固定金具は、ボルトにより前記対象物に取り付けられており、
前記固定金具情報は、前記ボルトの寸法、強度、取付個数及び取付位置に関する情報を含み、
前記耐震性判定部は、前記固定金具の破損する可能性の有無を判定するとともに、前記ボルトが破損する可能性の有無を判定することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置であって、
前記耐震性判定部は、地震情報と、機器情報とに基き、前記固定金具を取り付けない状態での、前記装置の転倒の可能性の有無を判定することを特徴とする装置。
【請求項4】
地震時に転倒するのを防止するために、対象物を固定するべく取り付けられる固定金具の寸法、強度、及び取付個数からなる複数の固定金具条件のうち何れか一つの固定金具条件を算出する固定金具の取付計画を作成する装置であって、
想定される地震の規模を示す地震情報の入力を受け付ける地震情報入力部と、
対象物の寸法及び重量に関する対象物情報の入力を受け付ける対象物情報入力部と、
前記複数の固定金具条件のうち前記一つの固定金具条件を除く固定金具情報の入力を受け付ける固定金具情報入力部と、
前記地震情報入力部が入力を受け付けた地震情報、前記対象物情報入力部が入力を受け付けた前記対象物情報、及び前記固定金具情報入力部が入力を受け付けた固定金具情報に基づき、前記一つの固定金具条件を求める耐震性判定部と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置であって、
前記固定金具は、ボルトにより前記対象物に取り付けられており、
前記固定金具情報は、前記ボルトの寸法、強度、取付個数及び取付位置からなる複数のボルト固定条件のうち何れか一つのボルト固定条件を除く情報を含み、
前記耐震性判定部は、前記固定金具の破損する可能性の有無を判定するとともに、前記一つのボルト固定条件を求めることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の装置であって、
前記耐震性判定部は、地震情報入力部と、機器情報入力部とに基き、前記固定金具を取り付けない状態で、前記装置の転倒の可能性の有無を判定することを特徴とする装置。
【請求項7】
地震時に転倒するのを防止するために、対象物を固定するべく取り付けられる固定金具の取付計画を判定する方法であって、
想定される地震の規模に関する地震情報と、
対象物の寸法及び重量に関する対象物情報と、
固定金具の寸法、強度、取付個数及び取付位置を含む固定金具情報と、に基づき、前記固定金具の破損する可能性の有無を判定することを特徴とする方法。
【請求項8】
地震時に転倒するのを防止するために、対象物を固定するべく取り付けられる固定金具の寸法、強度、及び取付個数からなる複数の固定金具条件のうち何れか一つの固定金具条件を算出する固定金具の取付計画を作成する方法であって、
想定される地震の規模に関する地震情報と、
対象物の寸法及び重量に関する対象物情報と、
前記複数の固定金具条件のうち前記一つの固定金具条件を除く固定金具情報と、に基づき、前記一つの固定金具条件を求めることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−268509(P2009−268509A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119014(P2008−119014)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)