説明

固形分分離装置

【課題】多量の空気を巻き込んだ懸濁液であっても、懸濁液から固形分を効率よく分離して排出することが可能な、固形分分離装置を提供する。
【解決手段】
懸濁液を一時的に貯留するタンクと、前記タンクに接続して前記タンクから流し込まれた懸濁液に含まれる固形分を沈殿させるホッパーと、前記ホッパーの下部に設けられて沈殿した固形分を外部に排出する固形分搬送手段とを備え、前記タンクには外部から懸濁液を流し込む流入口が設けられ、前記ホッパーには懸濁液から固形分を分離した残部の上澄み液を外部に流し出す排出口が設けられ、前記タンクと前記ホッパーとの間には前記タンク内の懸濁液と前記ホッパー内の懸濁液とを仕切る堰が設けられ、前記タンク内の懸濁液が前記堰を乗り越えて前記ホッパー内に流し込まれる固形分分離装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂等の固形分を含んだ懸濁液をホッパーに流し込んで固形分を沈殿させ、沈殿した固形分を、スクリューコンベア等の搬送手段を用いて外部に排出する固形分分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
懸濁液に含まれる固形分を取り除く方法の一つに、ピットと呼ばれる槽を用いて、時間をかけて懸濁液から固形分を沈殿させて除去する方法がある。この方法では、懸濁液よりはるかに大きい容量のピットを用いたり、ピットに少量の懸濁液を数回に分けて流し込むことで、ピット内の懸濁液の流れをできるだけ無くして、固形分を早く沈殿させている。
【0003】
ピットから固形分を取り出すには、まず、ピットの上部に分離している上澄み液を、ポンプ等を用いて外部に排出して、ピットの下部に沈殿している固形分を露出させ、その後、露出した固形分を、人力やパワーショベル、あるいは、水処理設備等で用いられているような、沈砂掻揚げ機とスクリューコンベアの組み合わせ装置を用いて外部に取り出す。
【0004】
しかしながら、ピットから人力やパワーショベルで固形分を取り出す作業は、湿度が高くなったり、液分から臭気がしたり、反応性液分が健康に悪影響を及ぼしたり等、必ずしも好ましい労働環境でない場合が多く、無人で固形分を取り出せるほうが好まれる場合が多い。また、水処理設備等で用いられている、沈砂掻揚げ機とスクリューコンベアを組み合わせた装置は、機械構成が複雑な上に装置が巨大であり、同じような機能の装置を工場のラインに設置するには、限られたスペースに設置しやすい、コンパクトな構成の装置であることが必要になる。
【0005】
懸濁液に含まれている固形分を取り除くためのコンパクトな装置としては、例えば、特許文献1に、スクリューコンベアが付いたホッパーが開示されている。
【0006】
特許文献1には、砂含有水から砂を効率的に分離する砂分離装置が開示されている。この装置は、底部に砂掻き揚げ装置(スクリューコンベア)が設けられいて、かつ、接戦方向に砂含有成分水を供給し、上部外周より越流して排水するようにした砂分離槽(ホッパー)と、該砂分離槽の水面位置に旋回流を阻止するように設けた越流水トラフと、砂分離槽内の上部に旋回流が越流部に影響を与えないようにして配置したロート状の気泡浮上阻止板と、砂分離槽の外周壁の気泡浮上阻止板の配設位置に設けて空気を大気中へ放出するようにした空気抜管とを備えている。
【0007】
そしてこの装置は、気泡浮上阻止板が、砂分離槽内の上部の旋回流が越流部に影響を与えないように配置されていて、かつ、砂含有水を供給することによって砂分離槽内に生じる気泡が、水面位置に浮上しないようにしているので、供給された砂含有水が旋回水流として滞留する時間を長くすることができるとともに、水面位置では、越流水トラフによって水面位置の旋回流速を小さくすることができるので、巻き上げられた砂の粒子が越流するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−025610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されている装置で、例えば、軟化した樹脂のように、粘性のある固形分を含む懸濁液を処理しようとする場合、ポンプを用いるとポンプ内部に固形分が固着してしまう恐れがあるので、圧縮空気を用いて装置に懸濁液を流し込むのが良いと考えられる。しかし、圧縮空気を用いると、懸濁液に多量の空気が巻き込まれるのを避けることができない。特許文献1に開示された装置で多量の空気を巻き込んだ懸濁液を処理しようとすると、この装置は気泡浮上阻止板によって気泡が浮上しにくい構造なので、懸濁液は空気が泡立って常に撹拌された状態になり、固形分が沈殿しにくい状態になってしまう。したがって、特許文献1に開示されている装置では、多量の空気を巻き込んだ懸濁液から、効率よく固形分を沈殿させるは困難である。
【0010】
また、特許文献1に開示されている装置は、砂分離槽内に旋回流を発生させるために、円筒状の砂分離槽を用いている。しかし、工場内において装置を設置するスペースは、一般的に角平面である場合が多く、特許文献1に開示されているような、円筒状の砂分離槽を備えている装置を設置するためには、無駄なスペースを見込んだ広い設置スペースを用意する必要がある。そこで、装置の設置スペースを小さくしようと砂分離槽を小径にすると、処理量を維持するために槽の高さを高くしなくてはならず、その結果、砂掻き揚げ装置が長くなって、逆に広い設置スペースが必要になってしまう。以上の理由から、特許文献1に開示されている装置では、限られたスペースを有効に活用する形で装置を設置することが困難である。
【0011】
本発明は、上記問題を解決できる固形分分離装置を提供するものであり、多量の空気を巻き込んだ懸濁液であっても、懸濁液から固形分を効率よく沈殿させることが可能で、限られた設置スペースを有効に活用する形で設置できるコンパクトな装置構成にすることも可能な、固形分分離装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の固形分分離装置は、懸濁液を一時的に貯留するタンクと、前記タンクに接続して前記タンクから流し込まれた懸濁液に含まれる固形分を沈殿させるホッパーと、前記ホッパーの下部に設けられて沈殿した固形分を外部に排出する固形分搬送手段とを備え、前記タンクには外部から懸濁液を流し込む流入口が設けられ、前記ホッパーには懸濁液から固形分を分離した残部の上澄み液を外部に流し出す排出口が設けられ、前記タンクと前記ホッパーとの間には前記タンク内の懸濁液と前記ホッパー内の懸濁液とを仕切る堰が設けられ、前記タンク内の懸濁液が前記堰を乗り越えて前記ホッパー内に流し込まれる装置であることを特徴としている。
【0013】
本発明の固形分分離装置は、懸濁液がタンクからホッパーに流れ込む際、タンクとホッパーとの間に設けられた堰を乗り越えるようにして、懸濁液が流れ込むところに特徴がある。これにより、装置に投入された懸濁液に多量の空気が巻き込まれていて、最初に流し込まれたタンク内で激しく発泡して撹拌された状態になっても、堰を乗り越えるようにしてホッパーに流れ込んだ懸濁液は流れの勢いが弱められるので、ホッパー内では固形分が効率よく沈殿するようになる。
【0014】
そして、本発明の固形分分離装置では、堰を乗り越えてホッパーに流れ込んだ懸濁液がそのまま排出口に流れていかないよう、堰と排出口との間に障害物が設けられるのが好ましい。障害物としては、例えば、堰の開口部分と排水口との間に、ホッパーの上方から一枚板を挿入するような仕切り板等を用いることができるが、必ずしもこれに拘るものではなく、堰から排出口にそのまま向かう懸濁液の流れが阻止できる障害物であれば、複数の板を組み合わせた障害物を設けたり、メッシュ状の障害物を設けたりしてもよいものである。かかる障害物を設けることで、ホッパーに流れ込んだ懸濁液がそのまま排出口に流れ外部に出ていってしまうのを防げるのととともに、ホッパーに流れ込んだ懸濁液が障害物を避けて迂回して流れ、その間に固形分の沈殿が促進されることで、懸濁液から固形分がより効率的に沈殿するようになる。
【0015】
また、本発明の固形分分離装置では、流入口がタンク内の懸濁液の液面よりも常に高い位置になるようにして設けるのが好ましい。かかる構成にすることで、多量の空気を巻き込んだ懸濁液がタンク内に流し込まれれても、懸濁液液面に達するまでにある程度空気が抜けるので、タンク内の懸濁液が異常に泡立つのを防止することができ、タンク内で安定的に撹拌された状態の懸濁液を、堰を乗り越えてホッパーに流し込むことが可能になる。
【0016】
また、本発明の固形分分離装置では、固形分搬送手段がホッパーの下部から堰とタンクを貫いて設けられるのが好ましく、その場合、ホッパーが堰から離れる方向に深さが深くなる形状とし、固形分搬送手段がホッパーの下部形状に倣って傾斜して設けらるのが好ましい。かかる構成にすることで、上方から装置を見たときに、タンクとホッパーと固形分搬送手段とを重ねて配置することができるので、よりコンパクトな装置配置にすることができる。
【0017】
そして、本発明の固形分分離装置では、タンクとホッパーはいずれも上方から見たときに矩形形状をして、互いに一辺を共有するようにして隣接して配され、堰が前記共有する一辺に設けられる構成にするのが好ましく、特に、タンクとホッパーとが、堰と隣り合う一対の横壁を共有する構成にするのがより好ましい。本発明の固形分分離装置に用いられるタンクとホッパーは、多量の空気が巻き込まれた懸濁液であっても、固形分が効率よく沈殿するといった効果を奏せば、形状や配置は問わないものであるが、上記構成にすることにより、限られた角平面スペースを有効に活用できる、コンパクトな固形分分離装置にすることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の固形分分離装置によれば、多量の空気が巻き込まれた懸濁液であっても、懸濁液から固形分を効率よく沈殿させることができる。また、本発明の固形分分離装置は、限られた設置スペースを有効に活用できるコンパクトな装置構成にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施態様の装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施態様の装置を示す縦断面図である。
【図3】本発明の一実施態様の装置の横断面図である。
【図4】本発明の一実施態様の装置の動作を説明する図である。
【図5】本発明の一実施態様の装置の他の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかる固形分分離装置について、その実施態様を図面を参照しながら説明する。
【0021】
固形分分離装置の概略構成を、図1の斜視図と図2の縦断面図に示す。固形分分離装置10(以下、装置10と略すことがある)の基本となる構成要素は、懸濁液に含まれる固形分を沈殿させるホッパー1、沈殿した固形分を装置10外部に排出する固形分搬送手段2、ホッパー1に接続して設けられたたタンク3、ホッパー1とタンク3との間に設けられた堰4である。各構成要素について、以下詳細に説明する。
【0022】
[ホッパー]
ホッパー1は、装置10の上方から見たときに矩形形状をした容器であり、その側面は、対向する2枚の横壁1aと、対向する堰4と後壁1bとによって構成されている。そして、横壁1aの一方には、ホッパー1から装置10外部に、懸濁液から分離された上澄み液が排出されるよう、排出口1cが設けられている。ホッパー1の底面は、堰4から離れる方向にホッパー1の深さが深くなるよう配された2枚の傾斜板1dと、後壁1bから堰4方向に軸を有して上方が開口した直管状のパイプ1eとで構成されていて、パイプ1e内部には固形分搬送手段2を構成する螺旋スクリュー2aがホッパー1内部に上部を露出して設けられている。2枚の傾斜板1dは、沈殿した固形分が固形分搬送手段2に集中して流れ込むよう、横壁1aからパイプ1eに向かい、谷部1fを形成するように傾斜して接続されている。また、螺旋スクリュー2aが後壁1bから堰4に向かって斜め上方に傾斜して設けられるため、ホッパー1の底面を構成する2枚の傾斜板1dとパイプ1eも、螺旋スクリュー2aの傾斜に倣って傾斜して配置されている。ホッパー1全体は、ホッパー1と接続するタンク3と、ホッパー1に付設された足1gにより支持されている。
【0023】
また、ホッパー1の内部には、堰4と排出口1cとの間に障害物としての仕切り板1hが設けられている。仕切り板1hは、堰4を乗り越えてホッパー1に流れ込んだ懸濁液が、固形分を沈殿させずにそのまま排出口1cに流れ出てしまうのを防ぐとともに、仕切り板1hを迂回するようにして懸濁液を流すことで、谷部1fに向かう懸濁液の流れの勢いを急激に弱め、懸濁液から固形分を効率よく沈殿させるために設けられたものである。図2の一枚板からなる仕切り板1hは、ホッパー1が懸濁液で満たされたとき、堰4と排出口1cの間において、仕切り板1hの下端が常に懸濁液に浸るように設けられていて、堰4を乗り越えてホッパー1に流れ込んだ懸濁液がそのまま排出口1cに流れ出てしまうのを防ぐために、仕切り板1hの下端は排出口1cより低く設けられている。
【0024】
[タンク]
ホッパー1と同様に、タンク3も上方から見たときに矩形形状をした容器であり、その側面は、対向する2枚の横壁1aと、対向する堰4と前壁3aとによって構成されている。そして、横壁1aの一方には、装置10外部からタンク3内部に懸濁液を流し込めるよう、流入口3bが設けられていて、ホッパー1の底部に設けられた直管状のパイプ1eが、傾斜をそのままにして、堰4と前壁3aとを貫いて、タンク3内部を貫通している。ここで、パイプ1eは、ホッパー1内部では上部を開口して螺旋スクリュー2aの上部をホッパー1内部に露出させているが、タンク3内部ではパイプ11eは開口されずに、タンク3内の懸濁液から螺旋スクリュー2aを隔離している。タンク3の底部には底3cが設けられており、タンク3全体は、架台3dに乗せられて支持されている。
【0025】
ここで、流入口3bはタンク3内の懸濁液の液面より常に上にあるように設けられている。これにより、タンク3に懸濁液を流し込んだ勢いでタンク3内の懸濁液が安定的に撹拌されるので、タンク3内にある固形分が沈殿してしまうのを防ぐことができるとともに、多量の空気を巻き込んだ懸濁液が流し込まれれても、タンク3内の液面に達するまでにある程度空気が抜けてしまうので、タンク3内の懸濁液が異常に泡立つのを防ぐことができる。タンク3内の状態を以上のようにすることで、安定的に撹拌された懸濁液が、堰4を乗り越えてホッパー1に供給されるようになる。
【0026】
本実施態様の装置10では、ホッパー1とタンク3がいずれも上方から見て矩形形状であり、互いに一辺を共有して隣接して配され、前記共有する一辺に堰4が設けられた構成になっている。そして、ホッパー1とタンク3とが、堰4と隣り合う一対の横壁1aを共有しており、ホッパー1とタンク3の最大深さは略同一に構成されている。かかる構成により、装置10は、限られた角平面スペースに設置しても、ホッパー1とタンク3の容量を大きくとることが可能な、コンパクトな装置構成になっている。
【0027】
[堰]
堰4は、ホッパー1とタンク3との間にあって、ホッパー1内の懸濁液とタンク3内の懸濁液とを仕切っているのとともに、タンク3に流し込まれた懸濁液がホッパー1に流れ込む際、堰4を乗り越えることで流れの勢いが弱まり、ホッパー1内で固形分が効率よく沈殿することを可能にするものである。堰4の高さや形状は、タンク3に流し込まれる懸濁液の量、懸濁液の性状、懸濁液に含まれる空気の量等によって、最適な処理ができるよう適宜設定することができる。
【0028】
[固形分搬送手段]
固形分搬送手段2は、後壁1bから堰4、前壁3aを貫くパイプ1e内に設けられた、螺旋スクリュー2aと、パイプ1e上部において螺旋スクリュー2aに接続するモータ2bとによって構成される。また、図3に示すように、パイプ1eの下方の内壁には、螺旋スクリュー2a先端を内包するように、棒状ライナー2cが複数本設けられている。モータ2bを作動させると螺旋スクリュー2aが回転し、ホッパー1底部に沈殿した固形分が螺旋スクリュー2aに掻き上げられ、液面から出た固形分は、棒状ライナー2c上をさらに這い上がる過程で液分が切られて装置10外部に排出される。
【0029】
螺旋スクリュー2aは、回転中心に軸があって両端から回転を支持するする螺旋スクリューを用いてもよい。しかし、図1、2に示される無軸の螺旋スクリュー2aを用いれば、モータ2bが接続していない端部に軸受を設けずに済むので、反応性の液分を含む懸濁液の処理に好ましい固形分搬送手段2とすることができる。また、固形分搬送手段2には、螺旋スクリュー2aの代わりに、連続ベルトを用いたベルトコンベア等を用いることもできる。
【0030】
次に、固形分分離装置10の動作について説明する。
【0031】
図4は、固形分を含んだ懸濁液Lが、連続してタンク3に流し込まれたときの、装置10の動作を説明する図であり、前回の処理でタンク3内に懸濁液が残留した状態から、新たにタンク3内に懸濁液が流し込まれたときの動作を用いて説明する。なお、図4では、説明の便宜上、流入口3bをタンク3の前壁3aに、排出口11cを、後壁11bに設けているが、機能的には図1の装置1と同じである。
【0032】
初期状態では、前回の処理で流し込んだ懸濁液Lが、タンク3内に残留している[a]。
この初期状態から、固形分を含む懸濁液Lが流入口3bから流し込まれると、流し込まれた懸濁液Lがタンク3の底3cに向かって流れる勢いと、懸濁液Lが底3cから浮上して懸濁液Lに含まれた空気が発泡する勢いにより、タンク3内の懸濁液Lは激しく撹拌される。そして、既にタンク3内にあった固形分も、撹拌の勢いにより懸濁液L中に舞い上げられて混合され、懸濁液Lは撹拌されながら液面に浮上して、徐々に撹拌の勢いが弱まっていく[b]。
タンク3内で撹拌の勢いが弱まった懸濁液Lの一部は、堰4を乗り越えて、ホッパー1内に流れ込む[c]。
ホッパー1内に流れ込んだ懸濁液Lは、対向する2枚の傾斜板1dによって左右から谷部1fに向かう流れになり、仕切り板1hで流れの向きが変えられてさらに流れの勢いが弱められ、懸濁液L中の固形分は、傾斜板1d上に沈殿して傾斜板1dの傾斜を滑るようにして螺旋スクリュー2a上に堆積する。そして、懸濁液Lの上澄み液は、排出口1cから装置10外部に流し出される[d]。
パイプ1eに設けられた螺旋スクリュー2aは、パイプ1eの先端に取り付けられたモータ2bにより回転し、螺旋スクリュー2a上に堆積した固形分は、螺旋スクリュー2aに掻き上げられてパイプ1e内部を上昇し、棒状ライナー2c上を液面以上の高さにまで這い上がった固形分は、含まれる液分が切られて、最後はパイプ1eの上端部で外部に排出される[e][f]。
【0033】
図5は、固形分を含んだ懸濁液Lが、一定量で断続的にタンク3に流し込まれたときの、装置10の動作を説明する図であり、前回の処理でタンク3内に懸濁液が残留した状態から、新たにタンク3内に懸濁液が流し込まれたときの動作を用いて説明する。図4と同様に、説明の便宜上、流入口3bをタンク3の前壁3aに、排出口11cを、後壁11bに設けている。
【0034】
初期状態では、前回の処理で流し込んだ懸濁液Lが、タンク3内に残留している[a]。
この初期状態から、固形分を含む懸濁液Lが流入口3bから流し込まれると、流し込まれた懸濁液Lがタンク3の底3cに向かって流れる勢いと、懸濁液Lが底3cから浮上して懸濁液Lに含まれた空気が発泡する勢いにより、タンク3内の懸濁液Lは激しく撹拌される。そして、既にタンク3内にあった固形分も、撹拌の勢いにより懸濁液L中に舞い上げられて混合され、懸濁液Lは撹拌されながら液面に浮上して、徐々に撹拌の勢いが弱まっていく[b]。
タンク3内で撹拌の勢いが弱まった懸濁液Lの一部は、堰4を乗り越えて、ホッパー1内に流れ込む[c]。
ホッパー1内に流れ込んだ懸濁液Lは、対向する2枚の傾斜板1dによって左右から谷部1fに向かう流れになり、仕切り板1hで流れの向きが変えられてさらに流れの勢いが弱められ、懸濁液L中の固形分は、傾斜板1d上に沈殿して傾斜板1dの傾斜を滑るようにして螺旋スクリュー2a上に堆積する。そして、懸濁液Lの上澄み液は、排出口1cから装置10外部に流し出される[d]。
パイプ1eに設けられた螺旋スクリュー2aは、パイプ1eの先端に取り付けられたモータ2bにより回転し、螺旋スクリュー2a上に堆積した固形分は、螺旋スクリュー2aに掻き上げられてパイプ1e内部を上昇し、棒状ライナー2c上を液面以上の高さにまで這い上がった固形分は、含まれる液分が切られて、最後はパイプ1eの上端部で外部に排出される[e]。
タンク3への懸濁液Lの流し込みが完了すると、タンク3からホッパー1への流れ込みも徐々に少なくなり、排出口1cから装置10外部に排出される上澄み液の排出量も少なくなる。次回、装置10への懸濁液Lの流し込みまでの間、ホッパー1内では、更に固形分の沈殿が進み、沈殿した固形分は、螺旋スクリュー2aの回転により、装置10外部に排出され、[a]の初期状態に戻る[f]。
また、タンク3への懸濁液Lの流し込みが完了すると、タンク3内の撹拌状態も徐々に収まって、固形分がタンク3の底部に沈殿するようになるが、この固形分は、次回の懸濁液Lの流し込みによる撹拌で、再びタンク3内に舞い上げられ、堰4を通ってホッパー1に流れ込むようになるので、問題にはならない。
【符号の説明】
【0035】
1:ホッパー
1a:横壁
1b:後壁
1c:排出口
1d:傾斜板
1e:パイプ
1f:谷部
1g:足
2:固形分搬送手段
2a:螺旋スクリュー
2b:モータ
2c:棒状ライナー
3:タンク
3a:前壁
3b:流入口
3c:底
3d:架台
4:堰
10:固形分分離装置
L:懸濁液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液を一時的に貯留するタンクと、前記タンクに接続して前記タンクから流し込まれた懸濁液に含まれる固形分を沈殿させるホッパーと、前記ホッパーの下部に設けられて沈殿した固形分を外部に排出する固形分搬送手段とを備え、前記タンクには外部から懸濁液を流し込む流入口が設けられ、前記ホッパーには懸濁液から固形分を分離した残部の上澄み液を外部に流し出す排出口が設けられ、前記タンクと前記ホッパーとの間には前記タンク内の懸濁液と前記ホッパー内の懸濁液とを仕切る堰が設けられ、前記タンク内の懸濁液が前記堰を乗り越えて前記ホッパー内に流し込まれることを特徴とする固形分分離装置。
【請求項2】
前記堰を乗り越えて前記ホッパーに流れ込んだ懸濁液がそのまま前記排出口に流れていかないよう、前記堰と前記排出口との間に障害物が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固形分分離装置。
【請求項3】
前記流入口が、前記タンク内の懸濁液の液面よりも常に高い位置になるよう設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固形分分離装置。
【請求項4】
前記固形分搬送手段が、前記ホッパーの下部から前記堰と前記タンクを貫いて設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の固形分分離装置。
【請求項5】
前記ホッパーが、前記堰から離れる方向に深さが深くなる形状であり、前記固形分搬送手段が前記ホッパーの下部形状に倣って傾斜して設けられていることを特徴とする請求項4に記載の固形分分離装置。
【請求項6】
前記タンクと前記ホッパーはいずれも上方から見たときに矩形形状をしており、互いに一辺を共有するようにして隣接して配され、前記堰が当該共有する一辺に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の固形分分離装置。
【請求項7】
前記タンクと前記ホッパーとが、前記堰と隣り合う一対の横壁を共有していることを特徴とする請求項6に記載の固形分分離装置。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52334(P2013−52334A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191577(P2011−191577)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)