説明

固形粉末化粧料表面における文字や模様の形成方法

【課題】化粧料の品質に影響を与えずに、文字や模様を固形粉末化粧料表面にしっかりと固着させる方法を提供する。
【解決手段】(a)固形粉末化粧料表面に粉末原料を所望の文字及び/又は模様の輪郭に付着させる工程、及び(b)当該固形粉末化粧料の上部から、揮発性溶剤に分散又は溶解したビニル系高分子化合物及びアクリル系高分子化合物から選択される1種又は2種以上の皮膜形成性高分子を噴霧し、乾燥させることにより粉末原料を固着させる工程を含む、固形粉末化粧料表面のおける文字及び/又は模様の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形粉末化粧料表面に文字や模様を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アイシャドウやチークカラーなどの固形粉末化粧料においては、容器の装飾だけではなく、化粧料表面にもブランドロゴの文字や模様を施すことにより商品の価値を高めることが試みられている。
【0003】
固形粉末化粧料表面にブランドロゴの文字や模様を施す方法として、模様データに応じてレーザー光のオンオフを行い、化粧料表面に模様を形成する方法(特許文献1)、所望の文字や模様等の輪郭のかたちに繰りぬかれたプレートを固形粉末化粧料の表面に載置した後、上部から有機溶剤に分散した粉体分散液を噴霧し乾燥させることによって化粧料表面に文字や模様を形成させる方法(特許文献2)、文字や模様が繰りぬかれた静電スクリーンを固形化粧料上部に設置し、静電スクリーン上に配置された粉末原料に静電気を帯びさせた後、化粧料表面に静電気的に吸着させる方法(特許文献3)などが提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−10494号公報
【特許文献2】特開平1−146812号公報
【特許文献3】特開2005−144935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のいずれの方法でも文字や模様を固形化粧料表面に施すことができるが、レーザー光の照射による文字、模様の形成においては、基本的にレーザーによる焦げにより文字や模様が形成されることから文字や模様の色は褐色から黒に限られ、また焦げた部分を化粧料表面につくるということから、品質面でも不安のある方法であった。所望の文字や模様等の輪郭のかたちに繰りぬかれたプレートを固形化粧料の表面に載置した後、上部から有機溶剤に分散した粉体分散液を噴霧し乾燥させることによって固形化粧料表面に文字や模様を形成させる方法においては、形成された文字や模様は、固形化粧料表面に粉末がのっているだけの状態であるため、少しの衝撃や表面を物理的に擦ることによって簡単にはがれてしまうものであった。また、静電スクリーンを利用する方法においても、静電気的な粉末の固着力は弱く、少しの衝撃や物理的な擦れによって簡単に剥離してしまうものであった。かように、品質面に問題のない方法で、文字や模様を固形化粧料上にしっかりと固着させる方法は存在しなかった。
従って本発明の課題は、化粧料の品質に影響を与えずに、文字や模様を固形粉末化粧料表面にしっかりと固着させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、前記課題を解決すべく検討し、固形粉末化粧料表面に粉末により所望の文字や模様の輪郭に付着させた後、当該表面に皮膜形成性高分子含有液を噴霧して乾燥したところ、皮膜形成性高分子としてビニル系高分子化合物又はアクリル系高分子化合物を採用した場合に簡便な操作により、とれ具合などの使用感を良好に保ったまま物理的衝撃や擦れによっても剥離せず、文字や模様が維持されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(a)固形粉末化粧料表面に粉末原料を所望の文字及び/又は模様の輪郭に付着させる工程、及び(b)当該固形粉末化粧料の上部から、揮発性溶剤に分散又は溶解させたビニル系高分子及びアクリル系高分子から選択される1種又は2種以上の皮膜形成性高分子を噴霧し、乾燥させることにより粉末原料を固着させる工程を含む、固形粉末化粧料表面における文字及び/又は模様の形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明形成方法によれば、固形粉末化粧料の品質や使用感を損なうことなく、剥離し難い強度で文字や模様を固形粉末化粧料表面に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明においては、まず(a)固形粉末化粧料表面に粉末原料を所望の文字及び/又は模様の輪郭に付着させる。尚、本明細書中で輪郭とは文字や模様の外形を形づくっている線だけでなく、その内側の部分も含むものとする。
本発明における文字や模様を形成する対象である固形粉末化粧料としては、パウダーファンデーション、プレストパウダー、フェイスパウダー、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ、アイライナー、コンシーラー等を挙げることができる。また、本発明の固形粉末化粧料の形態は、ケーキ状、ドーム状、球状等に成型することができる。
【0010】
これらの固形粉末化粧料は、含有成分的に何ら限定されることはなく、成型方法としても例えば加圧成型法(プレス成型法、超音波成型法)、湿式成型法(スラリー法、バック充填法)等を挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0011】
プレス成型法は、粉体成分と油性成分との混合物を中皿に充填して加圧成型することにより固形粉末化粧料を成型する方法である。また、超音波成型法は、液状油と固体油とを加熱混合し、さらに粉体を加えた混合物を中皿に充填し、超音波を照射して振動を付与し加圧成型することにより固形粉末化粧料を成型する方法である。超音波成型法については、特開2009−161450号公報や特開2009−161451号公報の記載を参照することができる。
【0012】
スラリー成型方法は、粉体成分と油性成分を混合分散した後に水やアルコール、揮発性炭化水素油等を加えて流動性を有するスラリーとし、このスラリーを中皿に充填し、溶媒を乾燥等により除去することにより固形粉末化粧料を成型する方法である。
【0013】
バック充填法は、溶剤に化粧料を溶解したスラリー状の化粧料流体を化粧料収容部又は中皿の底面に設けられた充填孔から充填した後に溶剤を除去することにより固形粉末化粧料を成型する方法である。溶剤としては、揮発性炭化水素、揮発性シリコーン油、アルコール、水等が挙げられるが、軽質イソパラフィンやイソドデカン等の揮発性炭化水素を用いるのが、立体的に成型された固形粉末化粧料に十分な落下強度を付与できるため好ましい。バック充填法については、特開昭56−127305号公報、特開平5−211916号公報、実開昭61−124205号公報、実開平1−92911号公報等の記載を参照することができる。
【0014】
本発明における、固形粉末化粧料の表面に固着し文字や模様を形成する粉末原料としては、化粧品に通常用いられるあらゆる粉末原料を用いることができる。例えば、赤色104号、赤色202号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、青色1号、黒色401号等の有機色素顔料;黄色4号Alレーキ、青色1号Alレーキ等のレーキ有機色素顔料;黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青、マンガンバイオレット等の無機有色顔料を用いることができる。また、白色の文字や模様を付与する場合には、酸化亜鉛、酸化チタン等の白色顔料;タルク、マイカ、セリサイト、カオリン等の体質顔料;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体;ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリメタクル酸メチルパウダー、12ナイロン(登録商標)パウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、シリコーンパウダー、シリコーンゴムパウダー、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、セルロースパウダー、ポリフッ化エチレン等の樹脂パウダー;ラウロイルリジン等のアシル化リジン粉体;高級脂肪酸金属塩である金属石鹸粉体等も用いられる。これら顔料の大きさ、形状等は特に限定されないし、1種のみを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの粉体は適宜表面処理されていてもよい。
【0015】
さらに、特に明確な視覚的効果のある文字や模様を付与するためには、マイカ、合成マイカ、シリカフレーク、ガラスフレーク等を母剤とするパール顔料が好適に利用され得る。マイカを母剤とするパール顔料の市販品の例としては、Timiron Super Gold、Timiron Splendid Red(以上、メルク社製)、Flamenco Sparkle Blue、Flamenco Green(以上、BASF社製)等を挙げることができる。合成マイカを母剤とするパール顔料としてはプロミネンスSF(日本光研工業社製)、Helios R100S(トピー工業社製)、シリカフレークを母剤にしたパール顔料としては、Xirona Magic Mauve(メルク社製)、ガラスフレークを母剤とするパール顔料の市販品の例としては、マイクログラスメタシャインMC1080RS、マイクログラスメタシャインMC1020TY、マイクログラスメタシャインMC5150PS(以上、日本板硝子社製)、Ronastar Noble Sparks(メルク社製)等を挙げることができ、これらの1種のみ、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
これらの粉末原料の付着方法としては特に限定されないが、所望の文字や模様の輪郭にくりぬいたプレートを固形粉末化粧料の表面に固定し、上部から揮発性溶剤に分散した粉体分散液を噴霧し乾燥させる方法や、静電スクリーン印刷機(ベルク工業社製)を用いて、粉末原料を静電気的に固形粉末化粧料の表面に付着させる方法等がある。この際、別の文字や模様が打ち抜かれたプレートや、静電スクリーンを準備することで複数の異なる粉末原料を付着させ、色彩的に複雑な文字や模様とすることもできる。
【0017】
次に、(b)当該固形粉末化粧料の上部から、揮発性溶剤に分散又は溶解させたビニル系高分子及びアクリル系高分子から選択される1種又は2種以上の皮膜形成性高分子を噴霧し、乾燥する。
【0018】
本発明に用いられる揮発性溶剤とは、皮膜形成性高分子を分散又は溶解するためのものである。分散液又は溶解液を固形粉末化粧料に噴霧することで、皮膜形成性高分子を固形粉末化粧料に付着させる。揮発性溶剤としては、化粧品に通常用いられるあらゆる原料を用いることができるが、例えば水、アルコール、揮発性シリコーン、低沸点炭化水素等が挙げられる。アルコールとして、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが挙げられ、揮発性シリコーンとして、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ポリシロキサンが挙げられる。市販品としては、KF−995、KF−994(信越化学社製)、SH244、SH245、DC345、DC246(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)が挙げられる。低沸点炭化水素として、ノルマルパラフィン、イソパラフィンが挙げられ、市販品としては、IPソルベント1620、IPソルベント2028(出光石油化学社製)が挙げられる。これらの1種のみ、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
さらに、特に短時間で揮発しやすいものとして、低沸点である水、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好適に利用される。これらの1種のみ、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
本発明における、皮膜形成性高分子は、上記の溶剤に分散又は溶解でき、その分散液又は溶解液を噴霧することで、固形粉末化粧料表面をコーティングする成分である。本発明においては、種々の皮膜形成性高分子の中でも、形成された皮膜の耐衝撃性、耐摩擦性、化粧料の品質の維持、使用感等の点から、ビニル系高分子及びアクリル系高分子が好ましいことを見出した。
【0021】
ビニル系高分子としては、酢酸ビニル、ビニルピロリドン又はスチレンを含む重合体又は共重合体、及びポリビニルアルコール等が挙げられる。より具体的には、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン・スチレン共重合体、(ビニルピロリドン/酢酸ビニル)共重合体、ビニルピロリドン・酢酸ビニル・プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・クロトン酸・tert−ブチル安息香酸ビニル共重合体等が挙げられる。
アクリル系高分子としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルキルアミドの重合体又はこれらを含む共重合体が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、(メタ)アクリル酸・スチレン共重合体、アクリル酸アルキルアミド・アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。
【0022】
より具体的には、これらの高分子のうち、油溶性樹脂、ポリマーエマルション、アルコール可溶性樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。ポリマーエマルションとしては、(メタ)アクリル酸アルキル重合体エマルション、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体エマルション、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体エマルション、(メタ)アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、酢酸ビニル含有共重合体エマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション等の前記皮膜形成性ポリマーを水性溶媒に分散させたものを挙げられる。また、アルコール可溶性樹脂としては、アクリル酸アルキルアミド・アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができ、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(ビニルピロリドン/酢酸ビニル)コポリマー等を挙げられる。これらの1種のみ、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
なかでも、水溶性又はアルコール溶解性のビニル系高分子又はアクリル系高分子が好適に利用され得る。市販品としては、PVP(K−15)、PVP(K−30)、PVP(K-90)、PVP(K−120)、PVP/VA(S−630)、ANTARA 430(以上、ISP社製)、ヨドゾール GH800F、ヨドゾール GH810F、ヨドゾール GH15F(以上、アクゾノーベル社製)、ビニブラン1080、ビニブラン1128C,ビニブラン1080M,ビニブラン1080T、ビニブランGV−5651、ビニブラン1108S/W(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。これらの1種のみ、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
上記のビニル系高分子又はアクリル系高分子を揮発性溶剤に分散又は溶解した分散液又は溶解液を噴霧し乾燥させて得た皮膜は、つやのある透明性が高い。
【0025】
前記の皮膜形成性高分子と揮発性溶剤は、スターラー等、通常化粧料を混合する装置で任意の割合で均一混合されるが、固形粉末化粧料の品質を損なわないためには、皮膜形成性高分子に対する揮発性溶剤の含有質量比は100:0.1〜100:20が好ましい。さらに好ましくは、100:1〜100:10である。皮膜形成性高分子の含有量が多すぎると、コーティング後に、皮膜形成性高分子が固形粉末化粧料表面で硬化し、化粧料使用時に、固形粉末化粧料のとれが悪くなり、使用できなくなる。逆に、皮膜形成性高分子の含有量が少なすぎると、固形粉末化粧料表面に付着させた文字や模様の固着が不十分であり、衝撃や摩擦によって剥がれることがある。
【0026】
皮膜形成性高分子と揮発性溶剤を混合する場合には、目的とする成分の他に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば油剤、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、殺菌剤、消炎剤、皮膚賦活剤等を適宜含有することができる。
【0027】
次に、揮発性溶剤に均一に分散又は溶解した皮膜形成性高分子を、固形粉末化粧料表面に、上部から噴霧する。噴霧する方法としては特に限定されず、上部から全体に噴霧して全体をコーティングしてもよいし、所望の文字や模様の輪郭にくりぬいたプレートを固形粉末化粧料の表面に固定し、噴霧して部分的にコーティングしてもよい。また、塗布等によって行ってもよい。
【0028】
さらに、特に色彩的に複雑な文字や模様を装飾するためには、皮膜形成性高分子と揮発性溶剤の分散液又は溶解液に、粉末原料を分散させた粉末分散液を噴霧してコーティングすることもできる。粉末原料は、化粧品に通常用いられるあらゆる粉末原料を用いることができる。
【0029】
次に、皮膜形成性高分子が噴霧された固形粉末化粧料を乾燥させる。乾燥させる方法は、特に限定されない。例えば、風乾や自然乾燥、加熱乾燥、あるいは減圧乾燥等の手段を適宜利用することができる。乾燥は、皮膜性高分子を分散又は溶解される揮発性溶剤の性質に応じて行うが、揮発速度が速い溶媒を利用するのが好ましい。
【0030】
水、エチルアルコール、イソプロピルアルコールは、100℃以下の沸点を持ち、揮発速度が速いことから、皮膜形成性高分子を分散又は溶解する揮発性溶剤として好適に利用され得る。
【0031】
乾燥後には、固形粉末化粧料表面を皮膜形成性高分子によりコーティングすることで、固形粉末化粧料表面に付着した文字や模様をかたどった粉末原料が固着され、耐久性に優れた文字や模様が固形粉末化粧料表面に形成することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。尚、表中の数値は含有量(質量%)を示す。実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0033】
(製造方法)
表1に示す組成で調製した固形粉末アイシャドウ表面に、表2の組成の粉末混合物を用いて、静電印刷機(ベルク工業社製)を用い7mm×14mmの範囲に幅1mmのアルファベット3文字(ABC)を印刷し、印刷後に、実施例1〜9、比較例1〜3の組成の皮膜形成性高分子分散液又は溶解液を、上部から皮噴霧し、乾燥した。
【0034】
(1)耐摩耗性
文字の形成された固形粉末アイシャドウ表面にPET製のシートを一度押し当て、文字がシートに転写されて欠ける具合を下記評価基準により評価した。
◎:まったく転写されない
○:若干転写されるが文字の判読には問題ない
△:文字の一部がPETシートに転写されてしまい、判読が困難である
×:文字の大部分がPETシートに転写され、文字が固形粉末化粧料上に残らない
【0035】
(2)耐衝撃性
文字の形成された固形粉末アイシャドウを50cmの高さから、厚み15mmの合板上に10回落下させた後の文字の欠け具合を下記評価基準により評価した。
◎:欠け、剥がれとも全くなし
○:文字が若干欠けるが、判読には問題ない
△:文字の一部が欠ける、判読が困難である
×:文字の大部分が欠け、固形粉末化粧料上に残らない
【0036】
(3)使用感
文字の形成された固形粉末アイシャドウ表面をチップでこすり、とれ具合を下記評価基準により評価した。
◎:とれ、十分に使用できる
○:ややとれにくいが、使用できる
△:とれにくく、使用に困難である
×:とれなく、使用できない
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
表3から明らかなように、実施例1〜9の分散液又は溶解液を噴霧した場合、使用感も良好であり、かつ衝撃や擦れによる文字の剥がれもないかたちで、固形粉末化粧料表面に装飾を施すことができる。一方、ビニル系高分子及びアクリル系高分子以外の高分子を用いた場合には、耐磨耗性、耐衝撃性、又は使用感が悪かった。
【0041】
以下の成分組成において固形粉末化粧料を調製し、その表面に実施例3と同様の方法で模様を形成したところ、使用感も良好であり、かつ衝撃や擦れによる文字の剥がれもないかたちで、固形粉末化粧料表面に装飾を施すことができる。
【0042】
実施例10:チークカラー
【0043】
【表4】

【0044】
実施例11:フェースカラー
【0045】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)固形粉末化粧料表面に粉末原料を所望の文字及び/又は模様の輪郭に付着させる工程、及び(b)当該固形粉末化粧料の上部から、揮発性溶剤に分散又は溶解したビニル系高分子化合物及びアクリル系高分子化合物から選択される1種又は2種以上の皮膜形成性高分子を噴霧し、乾燥させることにより粉末原料を固着させる工程を含む、固形粉末化粧料表面のおける文字及び/又は模様の形成方法。
【請求項2】
揮発性溶剤が、水、アルコール又はその混合物である請求項1記載の固形粉末化粧料表面における文字及び/又は模様の形成方法。
【請求項3】
揮発性溶剤に対する皮膜形成性高分子の配合質量比が、100:0.1〜100:20である請求項1又は2記載の固形粉末化粧料表面における文字及び/又は模様の形成方法。

【公開番号】特開2012−116801(P2012−116801A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269314(P2010−269314)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】