説明

固液二相流体の濃度計測方法

【課題】簡単な装置構成で以って貯蔵中の固液二相流体の固体濃度を正確に把握することができる固液二相流体の濃度計測方法を提供する。
【解決手段】貯蔵タンク11内に充填された固液二相流体の固体濃度を計測する方法において、前記貯蔵タンク11内に充填された固液二相流体の体積及び質量を求め、これに基づき固体充填率を算出する構成とし、好適には前記貯蔵タンク11内に液面計15を設け、該液面計15により前記貯蔵タンク11内における前記固液二相流体の液位を検出し、該液位から前記貯蔵タンク11の容量に基づき前記固液二相流体の体積を求め、さらに前記貯蔵タンク11上方の常温部に位置するタンク内壁面に歪ゲージ18を貼付し、該歪ゲージ18により検出される歪量から前記貯蔵タンク11へ掛かる加重を算出し、該加重から前記固液二相流体の質量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体と液体が均一に混合した固液二相流体の濃度計測方法に関し、特に貯蔵タンクに充填された状態において固液二相流体の固体濃度を計測する固液二相流体の濃度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固体と液体が均一に混合した固液二相流体は各種分野にて広く用いられている。固液二相流体が用いられる代表的なシステムとしては、例えば、ダイナミックアイス方式を用いた氷蓄熱システム、スラッシュ窒素を利用した超電導機器等の冷却システム、又はスラッシュ水素を利用した水素燃料貯蔵・移送システムなどが挙げられる。
【0003】
ダイナミックアイス方式を用いた氷蓄熱システムは、工業プラントやビル等における電力需要の大きい地域において、電力需要の昼夜間格差を平準化するために、夜間の余剰電力を用いて氷蓄熱手段により水溶液を凍結させておき、昼間に氷晶を含む流動性のある固液二相流体として冷熱需要地まで輸送し、冷熱負荷吸収後の温められた水を還流するものである。
このダイナミックアイス方式では、従来は貯蔵中の固液二相流体の固体濃度、即ち氷充填率(以下、IPF:Ice Packing Factor)が正確に把握できなかったため、製氷量は必要な熱負荷に対して最適なものとはなり得なかった。従って、深夜電力で貯氷する氷の量、即ち貯氷IPFは一定であり、電力ピークカットにのみその冷熱を用いることとし、氷が無くなると冷凍機を運転しているのが実状であった。
【0004】
一方、スラッシュ窒素は、微粒化された固体窒素と液体窒素の混合物のスラリーであり、その流動性の高さから超電導機器等の冷却に適している。例えば、超電導送電ケーブルを冷却する場合、冷却ステーション間隔が数kmにも及ぶことがあるが、数km先のケーブル出口においても固体分が残っていれば窒素温度はその融解温度である63Kに保たれ、その結果超電導ケーブルはその能力、即ち63Kにおける臨界電流値に基づく送電量を維持できる。しかし、スラッシュ窒素の貯蔵時の固体充填率を正確に把握することができなかったため、超電導ケーブルへの搬送量、深夜電力による蓄熱量、緊急時対応の余裕量を正確に見積もることが出来ないという問題を有していた。
【0005】
また、超電導限流器等の静止機器を冷却する場合、静止機器は機器内にスラッシュ窒素を生成、貯蔵しておくことになる。この場合においても、固体分の存在がその機器の能力維持に欠かせないものである。従って貯蔵時の固体充填率を正確に把握することが求められていた。
このように固液二相流体を利用した各種設備では、一般に生成装置により生成された後に貯蔵設備に備えられ、利用施設における熱負荷に応じて貯蔵設備から取り出して熱発生場所に搬送されるようになっている。固液二相流体を冷媒として用いるメリットは、蓄熱が可能な点にあり、熱負荷変動に関わりなく深夜電力等の安い動力を用いることが可能である。従って、その効率的な運用を図るには貯蔵場所に蓄えられた冷熱量(これは固体充填率と等価)を正確に把握する必要があった。
【0006】
しかし、固液二相流体の濃度計測に関しては実用的な計測方法は確立されていないのが現状であり、管内搬送流に関しては質量流量計と体積流量計の組み合わせが可能であるが、高価であることから実用化が困難であった。
管内搬送流の濃度を測定する方法は、特許文献1(特開平6−94269号公報)に開示されている。これは、氷スラリーを輸送する氷スラリー配管に、温度計と蓄熱剤の濃度計と密度計とを配設し、氷スラリーの温度、濃度及び密度に応じた信号を演算装置に導入し、この演算装置で氷濃度を演算するものである。
また、特許文献2(特開平7−98290号公報)には、投入した液の重量と温度を測定できる混合容器に加熱したブラインを投入し、このブラインに氷スラリーを混合・撹拌してその後の液の重量と温度の変化から、氷スラリー中の氷濃度を測定する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−94269号公報
【特許文献2】特開平7−98290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に記載される方法は、搬送中の固液二相流体の濃度計測に限られており、本発明が目的とする貯蔵中の固液二相流体の濃度を測定するものではなく、固液二相流体を冷媒として使用する場合に、正確な冷熱量を把握することができなかった。
従って、本発明は上記従来の技術の問題点に鑑み、簡単な装置構成で以って貯蔵中の固液二相流体の固体濃度を正確に把握することができる固液二相流体の濃度計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
貯蔵タンク内に充填された固液二相流体の固体濃度を計測する方法において、
前記貯蔵タンク内に充填された固液二相流体の体積及び質量を求め、これに基づき固体充填率を算出することを特徴とする。
【0010】
貯蔵中の固液二相流体の固体濃度(貯氷IPF)を把握するには、固液二相流体の体積と質量を計測できればよい。そして、該計測した体積と質量とから固液二相流体の密度を求め、下記式(1)により固体充填率φを算出する。
φ(%)=(ρ−ρ)×ρ/〔(ρ−ρ)×ρ〕×100 …(1)
ここで、ρは固液二相流体の密度、ρは固体成分密度、ρは液体成分密度である。このとき、固液成分密度及び液体成分密度は予め判明しているものである。
本発明によれば、貯蔵タンク内に充填された状態の固液二相流体の固体濃度、即ち貯蔵時の固体充填率を簡単に且つ正確に把握することができ、固液二相流体を冷媒として用いる際に効率的な運用計画を立てることが可能となる。尚、本発明において、前記固液二相流体は、スラッシュ窒素であることが好適である。
【0011】
また、前記固液二相流体の体積の測定に関しては、前記貯蔵タンク内に液面計を設け、該液面計により前記貯蔵タンク内における前記固液二相流体の液位を検出し、該液位から前記貯蔵タンクの容量に基づき前記固液二相流体の体積を求めることが好適である。このように、液面計を利用することにより装置の小型化が可能で、且つ高精度で固液二相流体の体積を求めることが可能となる。
【0012】
また、前記固液二相流体の質量の測定に関しては、前記貯蔵タンク上方の常温部に位置するタンク内壁面に歪ゲージを貼付し、該歪ゲージにより検出される歪量から前記貯蔵タンクへ掛かる加重を算出し、該加重から前記固液二相流体の質量を求めることが好適である。このように、歪ゲージを用いることにより小型の装置で以って正確な固液二相流体の質量を求めることが可能となる。
さらに、前記貯蔵タンクの上部に、フレキシブル部と該フレキシブル部の変位量を検出する変位計とを設け、該変位計により検出した変位量から前記貯蔵タンクへ掛かる加重を算出し、該加重から前記固液二相流体の質量を求めるようにしても良い。このような構成とすることにより、僅かな質量変化を検出することができ、正確な固液二相流体の質量を求めることが可能となる。
【0013】
さらにまた、前記貯蔵タンク内に液面計を設けるとともに、該貯蔵タンク底部の固液二相流体内と該貯蔵タンク上方の気中に夫々圧電素子を設け、これらの圧電素子により検出された圧力から算出される差圧と、前記液面計により検出された前記固液二相流体の液位とから該固液二相流体の密度を求め、該密度より質量を求めるようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、前記液面計にて検出された固液二相流体の液位と、前記圧電素子から得られた差圧とから前記固液二相流体の密度が求められ、ここから該固液二相流体の質量を求めるようにした。これは、例えば貯蔵タンク底部からキャピラリチューブをタンク外まで延設し、差圧を計測する周知の方法を本発明に適用しようとすると、極低温の固液二相流体においてはサーマルオッシレーションという振動が発生する惧れがあり、また配管が詰まるという問題が発生するが、本発明の構成によれば、振動の発生を防ぎ、精度の良い測定ができるとともに、配管の詰まり等の不具合を防止することが可能となる。
また、前記貯蔵タンク内に、モータの動力をシャフトに伝達して該シャフトの先端に連結された撹拌翼を回転させて固液二相流体を撹拌する撹拌手段を設け、
前記モータの動力若しくは前記シャフトに貼付した歪ゲージの歪量から前記撹拌手段の撹拌力を求め、該撹拌力から固液二相流体の質量を求めるように構成しても良い。
前記モータを一定速度で回転させると前記シャフトは固液二相流体を攪拌することで反力を受けてねじれが発生する。このねじれ力は、固液二相流体の密度に比例するため、前記歪ゲージで前記シャフトにかかるねじれ力を計測することで簡単に固液二相流体の濃度を計測することが可能となる。これは、攪拌によりシャフトが受ける反力をモータの動力から検出してねじれ力を測定しても同様である。
【0014】
本発明をダイナミックアイス方式を用いた氷蓄熱システムに適用した場合、正確な貯蔵IPF計測が可能となることにより、深夜の貯氷運転のみならず、昼間の追っかけ運転時にも熱負荷に合わせた運転が可能となり、過剰能力の冷凍機選定がなくなることによるイニシャルコスト削減や、冷凍機の効率向上によるランニングコストの低減が可能となる。
また、スラッシュ窒素を用いた冷却システムに適用した場合、貯蔵時の固体充填率の計測が可能となることにより、最適量のスラッシュ窒素の生成が可能となる。
また、この冷却システムを超電導ケーブルに用いた場合には、スラッシュ窒素の超電導ケーブルへの搬送量、深夜電力等による蓄熱量、緊急時対応の余裕量を正確に見積もることができるようになる。
尚、この冷却システムを超電導限流器等の静止機器に用いる場合には、ある程度の熱負荷変動を見込んだ上で最低量のIPFを把握し、保持することが必要である。また、限流器においては、限流動作時に機器が常電導転移し急激な発熱を引き起こすため、常にその熱負荷分を見込んだ貯蔵時の固体充填率を確保しておく必要がある。このため貯蔵時の固体充填率を把握することで静止機器の安全且つ効率的な運転が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、固液二相流体の貯蔵時の固体充填率を正確に把握することにより冷凍機設計に際して過剰な冷凍能力算出を防ぐことができるようになり、イニシャルコスト削滅を可能とし、冷凍機運転中においても冷凍機の急激な運転変化を抑制し効率的な運転を実現しランニングコスト削減が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施例は、固体と液体が均一に混合した固液二相流体の固体濃度を測定する方法に関し、特に、1成分系における固相と液相の二相共存状態を有し、冷媒に用いられる流体が対象とされる。例えば、ダイナミックアイス、スラッシュ窒素、スラッシュ水素等が挙げられる。
【実施例】
【0017】
図1は本発明の実施例に係る固液二相流体の濃度計測装置の概略構成図である。本実施例では、一例としてスラッシュ窒素(SN)を濃度計測対象として説明する。
この濃度計測装置10は、タンク外層11Aとタンク内層11Bとの間に真空断熱部11Cを有する真空断熱式の貯蔵タンク11と、スラッシュ窒素生成装置から前記貯蔵タンク11にスラッシュ窒素を導入するスラッシュ窒素導入管12と、前記貯蔵タンク11から冷熱需要地へスラッシュ窒素を送り出すスラッシュ窒素送出管13と、前記スラッシュ窒素導入管12及びスラッシュ窒素送出管13に備えられたフレキシブル部24と、前記貯蔵タンク11内のスラッシュ窒素を撹拌する撹拌翼14Aと該撹拌翼14Aに連結したシャフト14Bと該シャフトを回転駆動するモータ14Cとからなる撹拌手段14と、を備えている。
【0018】
本実施例に係る濃度計測装置10は、前記貯蔵タンク11内に充填されたスラッシュ窒素中の固体濃度を計測する装置であり、少なくとも2種類の測定手段を有する。これらの測定手段は、(1)前記貯蔵タンク11内のスラッシュ窒素の体積を測定する体積測定手段、(2)前記貯蔵タンク11内のスラッシュ窒素の質量を測定する質量測定手段、である。
【0019】
[体積の測定]
前記貯蔵タンク11内に貯蔵されたスラッシュ窒素の体積は、以下の体積測定手段を少なくとも一以上用いることにより好適に測定できる。前記貯蔵タンク11内に貯蔵されたスラッシュ窒素の体積は、液面計によりスラッシュ窒素液面の液位を測定し、該液位と貯蔵タンク11の容量とから求めることができる。液面計としては、超電導式液面計15、静電容量式液面計16、フロートと静電容量計を組み合わせた複合型液面計17の何れか一を用いることが好適である。
前記超電導式液面計15は、例えば超電導線を検出素子としてその先端をスラッシュ窒素に浸漬し、超電導線の電気抵抗を測定してスラッシュ窒素に浸漬している部分の長さを計算して液面を検出する装置等を用いることができる。
このように、超電導式の液面計を用いることにより、差圧導圧管、弁配管等が一切不要となり、またスラッシュ窒素内に混入した不純固形物の液面計測に与える影響が殆どないため、正確な体積の測定が可能となる。
【0020】
前記静電容量式液面計16は、例えば、外筒電極と中心電極とを所定の間隙を隔てて同軸に配置した棒状の電極を用いることができ、前記貯蔵タンク11内に充填されたスラッシュ窒素に浸漬する前記電極の長さによって前記外筒電極と中心電極との間の静電容量が変化することを利用して液面を検出する。
このように、静電容量式の液面計を用いることにより、装置の小型化が可能であり、且つ低温雰囲気下であっても高精度な測定が可能となる。
【0021】
前記フロートと静電容量計を組み合わせた複合型液面計17は、貯蔵タンク11内の液量を検出する静電容量計と、フロートを使用した副液面計とからなる。これは、静電容量計内管の内部に、前記貯蔵タンク11内に充填されたスラッシュ窒素の液面に浮上するフロートを上下動自在に設け、該フロートの垂直方向の変位を検出するように構成され、静電容量計による液面検出値と、前記フロートによる液面検出値とを比較して正確な液位を検出するようになっている。
このように、フロートと静電容量計とを組み合わせた複合型液面計15を用いることにより、高精度な液位の測定が可能となる。
【0022】
前記貯蔵タンク11に貯留されたスラッシュ窒素の液位は、上記した液面計による検出に限定されるものではなく、低温雰囲気下で正確に液位を検出できる手段であれば何れでも良い。前記貯蔵タンク11の側面に覗き窓23を設け、該覗き窓23から目視により液位を把握することもできる。このように、検出された液位と、前記貯蔵タンク11の容量とからスラッシュ窒素の体積を求める。
【0023】
[質量の測定]
前記貯蔵タンク11内に貯蔵されたスラッシュ窒素の質量は、以下の質量測定手段を少なくとも一以上用いることにより好適に測定できる。
前記貯蔵タンク11はスラッシュ窒素の充填により下方向に加重される。そこで、前記貯蔵タンク11上方の常温部に位置する内壁面に、複数の歪ゲージ18を貼付し、該歪ゲージ18により検出された歪量から加重を算出し、これに基づき貯蔵タンク11内に充填されたスラッシュ窒素の質量を求める。前記歪ゲージ18は、抵抗ブリッジ回路を利用して歪を電気的に測定する周知の装置を用いることができる。
このように、前記歪ゲージ18を用いることにより、小型の装置で以って正確なスラッシュ窒素の質量を求めることができる。
【0024】
また、前記貯蔵タンク11の上部にフレキシブル部19を設けるとともに、該フレキシブル部19の変位を検出する変位計20を設けて、スラッシュ窒素を充填した時の変位量を検出し、該変位量から加重を求めて質量を求める。このような構成とすることにより、僅かな質量変化を検出することができ、正確なスラッシュ窒素の質量を求めることが可能である。
【0025】
また、前記貯蔵タンク11底部のスラッシュ窒素内と、該貯蔵タンク11の上方の気中とに、夫々一又は複数の圧電素子21を設けるようにしても良い。これは、前記フレキシブル部19及び前記変位計20により検出されたスラッシュ窒素の液位と、前記圧電素子21から得られた差圧とからスラッシュ窒素の密度が求められ、ここから該スラッシュ窒素の質量が求められる。これにより、計測時における振動の発生を防ぎ、精度の良い測定ができるとともに、不具合の発生しない円滑な濃度計測が可能となる。
さらに、前記貯蔵タンク11の内部に設けた撹拌手段14のモータ14Cの動力、或いはシャフト14Bに取り付けた歪ゲージ22(図2参照)にて歪量から前記撹拌手段14の撹拌力を検出し、これに基づきスラッシュ窒素充填量を検出する手段を用いることもできる。
これは、前記モータ14Cを一定速度で回転させると前記シャフト14Bはスラッシュ窒素を攪拌することで反力を受け、図2の矢印方向のねじれが発生する。このねじれ力は、スラッシュ窒素の密度に比例するため、前記歪ゲージ22で前記シャフト14Bにかかるねじれ力を計測することで簡単にスラッシュ窒素の濃度を計測することが可能となる。これは、攪拌によりシャフト14Bが受ける反力をモータ14Cの動力から検出してねじれ力を測定しても同様である。
【0026】
前記貯蔵タンク11に充填されたスラッシュ窒素の質量は、上記した手段の何れか1以上を用いて求めることができる。しかし、これらの測定手段に限定されるものではなく、正確に質量を測定できる手段であれば何れでも良い。
【0027】
[濃度の算出]
前記貯蔵タンク11内に充填されたスラッシュ窒素の体積及び質量を、上記した体積測定手段及び質量測定手段の組み合わせにより求め、ここからスラッシュ窒素の密度(質量/体積)を算出し、下記式(1)によりスラッシュ窒素の貯蔵時の固体充填率φを算出することができる。
φ(%)=(ρ−ρ)×ρ/〔(ρ−ρ)×ρ〕×100 …(1)
ここで、ρは固液二相流体の密度、ρは固体成分密度、ρは液体成分密度である。固液二相流体の密度は、上記により求めたスラッシュ窒素の密度であり、窒素の固体成分密度及び液体成分密度は予め判明しているものである。
【0028】
このように本実施例によれば、スラッシュ窒素の貯蔵IPFを正確に把握することにより冷凍機設計に際して過剰な冷凍能力算出を防ぐことができるようになり、イニシャルコスト削滅を可能とし、冷凍機運転中においても冷凍機の急激な運転変化を抑制し効率的な運転を実現しランニングコスト削減が達成できる
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、貯蔵中の固液二相流体の濃度を簡単に且つ正確に測定することができるため、ダイナミックアイス方式を用いた氷蓄熱システム、スラッシュ窒素を利用した超電導機器等の冷却システム、又はスラッシュ水素を利用した水素燃料貯蔵・移送システムなどに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に係る固液二相流体の濃度計測装置の概略構成図である。
【図2】シャフトに配設された歪みゲージの説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10 濃度計測装置
11 貯蔵タンク
11A タンク外層
11B タンク内層
11C 真空断熱部
12 スラッシュ窒素導入管
13 スラッシュ窒素送出管
14 撹拌手段
14A 撹拌翼
14B シャフト
14C モータ
15 超電導式液面計
16 静電容量式液面計
17 複合型液面計
18、22 歪量ゲージ
19、24 フレキシブル部
20 変位計
21 圧電素子
23 覗き窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵タンク内に充填された固液二相流体の固体濃度を計測する方法において、
前記貯蔵タンク内に充填された固液二相流体の体積及び質量を求め、これに基づき固体充填率を算出することを特徴とする固液二相流体の濃度計測方法。
【請求項2】
前記固液二相流体が、スラッシュ窒素であることを特徴とする請求項1記載の固液二相流体の濃度計測方法。
【請求項3】
前記貯蔵タンク内に液面計を設け、該液面計により前記貯蔵タンク内における前記固液二相流体の液位を検出し、該液位から前記貯蔵タンクの容量に基づき前記固液二相流体の体積を求めるようにしたことを特徴とする請求項1若しくは2記載の固液二相流体の濃度計測方法。
【請求項4】
前記貯蔵タンク上方の常温部に位置するタンク内壁面に歪ゲージを貼付し、該歪ゲージにより検出される歪量から前記貯蔵タンクへ掛かる加重を算出し、該加重から前記固液二相流体の質量を求めるようにしたことを特徴とする請求項1若しくは2記載の固液二相流体の濃度計測方法。
【請求項5】
前記貯蔵タンクの上部に、フレキシブル部と該フレキシブル部の変位量を検出する変位計とを設け、該変位計により検出した変位量から前記貯蔵タンクへ掛かる加重を算出し、該加重から前記固液二相流体の質量を求めるようにしたことを特徴とする請求項1若しくは2記載の固液二相流体の濃度計測方法。
【請求項6】
前記貯蔵タンク内に液面計を設けるとともに、該貯蔵タンク底部の固液二相流体内と該貯蔵タンク上方の気中に夫々圧電素子を設け、これらの圧電素子により検出された圧力から算出される差圧と、前記液面計により検出された前記固液二相流体の液位とから該固液二相流体の密度を求め、該密度より質量を求めるようにしたことを特徴とする請求項1若しくは2記載の固液二相流体の濃度計測方法。
【請求項7】
前記貯蔵タンク内に、モータの動力をシャフトに伝達して該シャフトの先端に連結された撹拌翼を回転させて固液二相流体を撹拌する撹拌手段を設け、
前記モータの動力若しくは前記シャフトに貼付した歪ゲージの歪量から前記撹拌手段の撹拌力を求め、該撹拌力から固液二相流体の質量を求めるようにしたことを特徴とする請求項1若しくは2記載の固液二相流体の濃度計測方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−8628(P2009−8628A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172578(P2007−172578)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】