説明

園芸用支柱

【課題】 培養土内の気圧を大気圧に近づけるための園芸用支柱において、栽培効果を高めることを課題とする。
【解決手段】 中空のパイプから形成される支柱本体と、支柱の側面に複数形成される外面と内面を連通させる孔であって、外面から内面に向って孔の断面の面積が小さくなっていく孔である通気孔とを有する園芸用支柱を培養土に差し込むことで培養土内部を大気に近づけることができ、さらに、外面から内面に向って断面積が一定の通気孔を設ける場合に比して栽培効率を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は園芸において使用する支柱に関し、特に土の内部の気圧を調整する支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸においては、長期にわたって栽培をするために表土が硬くなってしまい、これにより栽培効率が下がることがある。図6を用いてこのことを説明する。図6は園芸に用いられるプランターの断面を示したものである。プランターの内部は底に小石S等を敷かれ、その上に培養土Cが載せられている。このような状態で、長期にわたり栽培を続けると表面の培養土Caが硬くなり通気性が悪くなる。この結果、内部の培養土Cb内において上方からの大気圧がほとんどかからなくなり、プランターの底に水Wが溜まると、底からの大気圧Pによりこの水Wが排出しにくくなってしまう。そして、水Wが長期間排出されないと水Wの重さにより内部の培養度Cb内の圧力がさらに減圧されてしまう。このような状態になると、植物の根の周囲の気圧が低くなる結果、十分に水分や養分を吸収することが困難になり、植物が適切に育成できないという結果となっていた。
これを解決するには、培養土内部の気圧を大気圧に近づければよい。これには、内部の培養土と大気とを連通させれば足り、例えば、下記特許文献1に示されている中空のパイプに孔を空けた支柱を培養土に差し込めば培養土内部の気圧を大気圧に近づけることができると考えられる。
【特許文献1】特開平9−28202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本願発明者は、支柱に孔を開けて実験してみたところ良好な結果が得られたが、その過程において、支柱にドリルにより孔を空けた場合と、釘により孔を空けた場合とでは明確に結果が異なることを見出した。この理由は定かではないが、ドリルで開けた孔は内径が一定であり、支柱を地面に突き刺す際に土が詰まりやすい一方、釘により空けた孔は内径が外面から内面に向って小さくなるため地面に突き刺す際に土が詰まりにくいことが一因であると推測できる。
本発明は、このような経験に基づき、培養土内の気圧を大気圧に近づけるための園芸用支柱において、栽培効果を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、中空のパイプから形成される支柱本体と、支柱の側面に複数形成される外面と内面を連通させる孔であって、外面から内面に向って孔の断面の面積が小さくなっていく孔である通気孔とを有する園芸用支柱である。
請求項2に記載の発明は、前記園芸用支柱において、前記通気孔は円形であり外面から内面に向って孔の内径が小さくなっていくものである。
請求項3に記載の発明は、前記園芸用支柱において、前記通気孔は上端近傍に少なくとも一つ設けられるとともに、下端側に一以上設けられるものである。
請求項4に記載の発明は、前記園芸用支柱において、前記支柱本体の下端が先鋭になっているものである。
請求項5に記載の発明は、前記園芸用支柱において、前記支柱本体の下端側にスクリューが形成されているものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明は、培養土に差し込むことで培養土内部を大気に近づけることができ、さらに、外面から内面に向って断面積が一定の通気孔を設ける場合に比して栽培効率を高くすることができる。
請求項2に記載の発明は、通気孔を円形としたので角張った形状のものに比べて土などが付着しにくく孔が詰まりにくいので、通気孔率を高くすることができる。
請求項3に記載の発明は、通気孔を上端近傍に設けることで支柱本体を深く差し込んでも上端が大気中にあれば通気が可能となり、また、下端側に一以上設けられることで、この部分が培養土内部に位置する程度に浅く差し込んでもよいので支柱の差し込む深さの幅を大きくすることができる。
請求項4に記載の発明は、前記支柱本体の下端が先鋭になっているので、培養土中に差し込む際に抵抗が少なく、差し込み易くすることができる。
請求項5に記載の発明は、前記支柱本体の下端側にスクリューが形成されていることで、培養土が硬くても支柱本体をスクリューが進む方向に回転させることで支柱本体を培養土内に差し込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に本実施形態に係る園芸用支柱Xの正面図を示し、図2に園芸用支柱Xの下端近傍を示し、図3に図2のA−A断面図を示す。園芸用支柱Xは長尺のパイプからなる支柱本体1、支柱本体の外面から内面を連通させる複数の通気孔2a、2b、支柱本体1の下端にかぶせられる先端の尖がった合成樹脂性のキャップ3、支柱本体1の上端にかぶせられるキャップ3と同じ形状を有する蓋4、支柱本体1の下端に設けられるコイル5とから構成される。
支柱本体1は直径11mm、長さ1mの鋼管であり外周に合成樹脂性のコーティングが施されている。
下端側の通気孔2aは支柱本体1の長手方向に下端から3cm間隔で並ぶように10個配列している。そして、対向する側にも同様に設けられることで下端側には合計20個の通気孔が形成される。上端近傍の通気孔2bは上端から3cmの位置に一つ形成されている。各通気孔2a、2bは外部からパンチングにより打ちぬかれることで形成され、内面部分の開口の直径が約3mmであり、図3に示すように外面に向って直径が大きくなるように形成されている。なお、ここに挙げている支柱本体の大きさや穴の大きさ、間隔等は例示であり、状況に応じて種々の大きさのものを使用することができる。
コイル5は弾性のあるバネ鋼の線材をコイル状に形成したものであり、支柱本体1の下端の通気孔2aに両端部が係合することで固定されている。このコイル5により支柱本体1の下端にスクリューが形成される。コイル5を弾性のある部材で形成し、これを通気孔2aに係合させるようにすることで、コイル5は不要な場合は取り外すことができる。
【0007】
次に、以上のような構成を有する園芸用支柱Xの使用方法について説明する。図4に園芸用支柱Xの使用例を示す。これはポリエチレン製の栽培袋Bを使用して栽培をしている状態を示している。栽培袋Bは20リットルの大きさで下部に排水口Baが複数形成されている。この栽培袋Bに培養土Cを入れ園芸用支柱Xを突き刺す。なお、図では園芸用支柱Xからコイル5を取り去った状態を示しているが、必要に応じてコイル5を装着してもよい。また、突き刺す本数は原則として2本以上が望ましい。そして、この状態で栽培を実施する。表面の培養土Caが硬化しても、園芸用支柱Xにより内部の培養土Cbは大気と連通するので、気圧を高い状態に維持することができ、植物の成長を促進することができる。さらに、通気孔12aを外面から内面に向って面積が小さくなるように形成することで、成長促進効果がより高まる。また、水はけが良好になるので、底に小石や荒土や腐葉土等を設ける必要がなくなる。なお、栽培袋として市販の袋入り培養土に用いられる袋をそのまま栽培袋として使用してもよく、この場合は、培養土を移し変える作業が不要になるので栽培作業の手間を軽減することができる。
【0008】
実際に、本願発明者が長期間大根をこの方法で栽培した結果、園芸用支柱を使用しない場合は、10cm位で根の生育がとまり、園芸用支柱Xの通気孔12aをドリルで形成し、外面から内面に至る面積が変わらない孔にした場合は、平均で20cm位で大根の生育が止まり、本実施形態にかかる園芸用支柱Xを用いる場合は40cm以上に大根が生育している。このことからも、通気孔10aを外面から内面に向って面積が小さくなるように形成することによる有意な効果があることが認められる。そして、病気、害虫にも強くなり、味も良好になり、雑草も生えにくいことが経験的に認められた。
また、上記のように園芸支柱Xを用いた袋栽培では連作障害の出やすいナスやトマトの栽培においても数年培養土を変えなくても連作障害が発生しなかった。
【0009】
なお、本園芸用支柱はどのような植物に対しても効果があり、栽培方法も上記のような袋栽培に限らず、図5に示すように畝Uでの栽培に使用したり、鉢での栽培に使用したりすることができる。特に畝での栽培では雨の多いときに有効である。また、畝の表面が硬い場合は、コイル5を支柱本体1の先端に装着して支柱をコイルが進む方向に回転させることで容易に支柱先端を地面に埋めることができる。
また、ナスやトマトなどの支柱が必要な植物に適用する場合は、新たな支柱を用意する必要がなく、本園芸用支柱が植物を支持する支柱としての機能も果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る園芸用支柱の正面図である。
【図2】実施形態に係る園芸用支柱の先端近傍の拡大図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】実施形態に係る園芸用支柱の使用状態を示す一部破断正面図である。
【図5】実施形態に係る園芸用支柱の他の使用状態を示す断面図である。
【図6】プランター内部の状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0011】
X 園芸用支柱
1 支柱本体
2a、2b 通気孔
3 キャップ
5 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のパイプから形成される支柱本体と、
前記支柱本体の側面に複数形成される外面と内面を連通させる孔であって、外面から内面に向って孔の断面の面積が小さくなっていく孔である通気孔と
を有する園芸用支柱。
【請求項2】
前記通気孔は円形であり外面から内面に向って孔の内径が小さくなっていくものである請求項1に記載の園芸用支柱。
【請求項3】
前記通気孔は上端近傍に少なくとも一つ設けられるとともに、下端側に一以上設けられるものである請求項1又は2に記載の園芸用支柱。
【請求項4】
前記支柱本体の下端が先鋭である請求項1から3のいずれか1項に記載の園芸用支柱。
【請求項5】
前記支柱本体の下端側にスクリューが形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の園芸用支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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