説明

土壌伝染性ウイルス病害の防除方法

【課題】土壌伝染性ウイルス病害を防除するための植物苗の効率的な育苗方法を提供する。
【解決手段】土壌伝染性ウイルス病害を防除するための植物苗の育苗方法であって、側壁面部に一または複数のスリットを有する育苗ポットを使用して該植物苗を育苗し、かつ該植物苗の根が該ポット内にて巻く前に該ポットごと圃場に定植することを含む、上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌伝染性ウイルス病害を防除するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)をはじめとする、土壌伝染性ウイルスによる病害の防除には、土壌くん蒸剤の一種である臭化メチルが広く使用されていた。しかし、臭化メチルはオゾン層を破壊する物質として指定され、2012年末日をもって日本では全廃されることが決定された。そのため、土壌伝染性ウイルスによる病害を防除するための新たな手法の確立が急務となっている。
【0003】
PMMoVをはじめとする、一部の土壌伝染性ウイルスの主な感染経路は、定植時に生じる根の傷口であると考えられている(非特許文献1)。そこで、植物苗の定植時に根をちり紙で包んで植えることによって、土壌伝染性ウイルスの感染を回避し、土壌伝染性ウイルスによる病害を防除する方法が開発されている。しかし、定植時に植物苗の根鉢をちり紙で覆う作業は労働力を増加させ、生産者の大きな負担となるために実用的ではない。また、本願発明者らはピートモス成型ポットで育苗した苗をそのポットごと定植することによって、土壌伝染性ウイルスによる病害の発生を低減できることを報告した(非特許文献2)。しかし、ピートモス成型ポットは播種・育苗期から定植までの長期間にわたって使用できるほどの強度を有さず、一貫して利用できるものではないために実用的ではない。
【0004】
したがって、当該分野において依然として、土壌伝染性ウイルスによる病害を防除するための新たな手法の確立が切望されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大木健広、津田新哉、本田要八郎.2003.トウガラシマイルドモットルウイルスの土壌伝染要因の解析.日植病報.69:334
【非特許文献2】大木健広、津田新哉、本田要八郎.2003.ピートモス成型ポット移植によるトウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)の土壌伝染抑制.関東病虫研報.50:29−32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、土壌伝染性ウイルス病害を防除するための新たな方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、側壁面部に一または複数のスリットを有する育苗ポットを使用して植物苗を育苗し、かつ該植物苗の根が該ポット内にて巻く前に該ポットごと圃場に定植することによって、土壌伝染性ウイルス病害の発生を顕著に低減できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は以下を包含する。
[1] 土壌伝染性ウイルス病害を防除するための植物苗の育苗方法であって、側壁面部に一または複数のスリットを有する育苗ポットを使用して該植物苗を育苗し、かつ該植物苗の根が該ポット内にて巻く前に該ポットごと圃場に定植することを含む、上記方法。
[2] 育苗ポットが生分解性材料からなる、[1]の方法。
[3] 土壌伝染性ウイルス病害が、タバコモザイクウイルス(TMV)、トウガラシマイルドモットルウイルス (PMMoV)、トマトモザイクウイルス (ToMV)およびキュウリ緑斑モザイクウイルス(Kyuri green mottle mosaic virus:KGMMV)からなる群から選択されるウイルスによる病害である、[1]または[2]の方法。
[4] 土壌伝染性ウイルス病害がトウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)によって引き起こされる病害である、[3]の方法。
[5] 植物が、ナス科、ウリ科、マメ科、アブラナ科、ラン科からなる群から選択される、[1]または[2]の方法。
[6] 植物が、タバコ、トウガラシ、ピーマン、トマト、キュウリ、メロン、スイカ、ラン、カブまたはワサビである、[5]の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、土壌伝染性ウイルス病害の発病を効率的かつ顕著に防除することができる。また、本発明によれば、土壌伝染性ウイルスに汚染された土壌であっても、土壌伝染性ウイルス病害の発病を防除し、植物を栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1にて作製したスリットを備える生分解性ポットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は土壌伝染性ウイルス病害を防除するための植物苗の育苗方法に関する。
【0012】
本発明により防除されるウイルス性の植物病害としては、病原がトバモウイルス(Tobamovirus)属に属するウイルスによる植物病害が含まれ、例えば、タバコモザイクウイルス(TMV)、トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)、トマトモザイクウイルス (ToMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス(Kyuri green mottle mosaic virus:KGMMV)、オドントグロッサムリングスポットウイルス(ORSV)による植物病害が挙げられるが、これらには限定されない。より具体的には、タバコモザイクウイルスによるタバコモザイク病、トウガラシマイルドモットルウイルス、トマトモザイクウイルスもしくはタバコモザイクウイルスによるピーマンモザイク病、キュウリ緑斑モザイクウイルスによるキュウリ緑斑モザイク病、またはオドントグロッサムリングスポットウイルスによるウイルス病が挙げられるがこれらには限定されない。
【0013】
タバコモザイクウイルス(TMV)、トウガラシマイルドモットルウイルス (PMMoV)、トマトモザイクウイルス (ToMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス(Kyuri green mottle mosaic virus:KGMMV)、オドントグロッサムリングスポットウイルス(ORSV)による土壌伝染はいずれも、植物苗を圃場に定植する際に発生する根表面にできる傷口から侵入・感染する、いわゆる物理的な接触感染であることが知られている。
【0014】
本発明の育苗方法によれば、定植時に根を傷めることがなく、上記土壌伝染性ウイルスが侵入・感染するための根表面の傷口が生じないまたは当該傷口の発生を低減することができる。これによって、上記土壌伝染性ウイルスが侵入・感染することを防ぎ、土壌伝染性ウイルス病害を防除することができる。
【0015】
本発明方法を適用可能な植物としては、ナス科、ウリ科、マメ科、アブラナ科およびラン科等の植物をはじめとする、野菜、果実、園芸作物など様々な植物が含まれる。具体的には、例えば、タバコ、トウガラシ、ピーマン、トマト、キュウリ、メロン、スイカ、ランなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明において「苗」とは、圃場に定植するまでの幼植物体を意味する。
本発明の育苗方法は、側壁面部に一または複数のスリットを有する育苗ポットを使用して該植物苗を育苗し、かつ該植物苗の根が該ポット内にて巻く前に圃場に定植することを含む。
【0017】
本発明における「育苗ポット」は、底部と底部の周縁から上方に延びる側壁面部を備える有底上端開口の形状を有し、少なくとも側壁面部に一または複数のスリットを備える。
【0018】
本発明において「スリット」とは、側壁面部を貫通する切り込みであって、長手方向両端部が自然の状態で閉じているスリットを意味する。「自然の状態で閉じている」とは、育苗ポットの内部に培土を満たした状態において、閉じていることを意味する。この閉じたスリットによって、培土をポット内に保持すること、およびポット側壁面部からの入射光を遮断することが可能である。さらに、当該閉じているスリットは、植物苗の根が当該閉じたスリットを押し広げて外部に伸長することを可能とし、植物苗を育苗ポットに植えたままの状態で、ポットごと圃場に定植したとしても、植物体の根は当該閉じたスリットを押し広げて、育苗ポット外側の圃場に容易に到達することができ、植物苗の成長を妨げることなく栽培することを可能とする。
【0019】
スリットの大きさや数は、スリットが上記機能を保持し得る限り、育苗ポットの大きさや植物苗の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、育苗ポットが直径7.5〜15cm、深さ6.4〜14cmである場合、1cm〜10cm程度の長さのスリットを、8〜24本程度備えることができるが、特にこれらに限定はされない。
【0020】
スリットの形状は、スリットが上記機能を保持し得る限り、直線であっても湾曲していても良く、また、スリットは育苗ポットの側壁面部において、底部に対して垂直に、平行に、もしくは斜めに、またはそれらを組み合わせて入れることができる。
【0021】
スリットの位置は、スリットが上記機能を保持し得る限り、側壁面部のいずれの部分にあっても良く、特に限定されることはないが、好ましくは側壁面部の底部に近い部分に配置される。また、必要に応じて、スリットを底部に配置しても良い。ただし、スリットの一端または両端は、育苗ポットの上方開口縁に達するものではない。
【0022】
育苗ポットは、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル等の合成樹脂から構成されていても良いが、好ましくは、生分解性材料より構成される。本発明において「生分解性材料」としては、土壌中の微生物によって分解されるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸などの生分解性プラスチックなどが挙げられる。
【0023】
また育苗ポットは、スリットとは別に、通水用の開口部を一または複数個備えていても良い。開口部の大きさや形状、個数は特に限定されず、育苗ポットの大きさや植物苗の種類、育苗用培土の種類などに応じて、適宜選択することができる。
【0024】
育苗ポットにおける植物苗の育苗は、従来公知の手法によって行うことが可能である。すなわち、育苗ポットに育苗用培土を詰め、当該培土に植物の種子を播種または発芽種子を鉢上げして行う。培土は、赤玉土、鹿沼土、日向土、山砂、川砂、桐生砂、田土、軽石、発泡スチロール、発泡ポリエチレン、パーライト、バーミキュライト、ロックウール、ゼオライト、木材チップ、竹チップ、発泡ガラス、ピートモス、腐葉土、パーク堆肥、モミガラ、薫炭、炭粉、フスマ、湿潤剤などの育苗用培土の基材として公知のものを適宜選択し混合して利用することができる。育苗用培土には必要に応じて、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥などの肥料などを適宜加えることができる。
【0025】
育苗ポットにおける植物苗は、当該植物苗の根が育苗ポット内にて巻く前に、当該ポットごと圃場に定植する。ここで、「植物苗の根が育苗ポット内にて巻く」とは、植物苗の成長に従って伸長した根が育苗ポットの底部および側壁面部の内壁に到達・接触して湾曲または折れ曲がることを意味する。従って、「植物苗の根が育苗ポット内にて巻く前」とは、植物苗の根が育苗ポットの底部および側壁面部の内壁に到達・接触する前を意味する。植物苗の根が育苗ポット内にて巻いてしまうと、植物苗を当該育苗ポットに植えたままの状態で圃場へ定植した場合、上記スリットより根がポット外へスムースに伸長することが妨げられ、根の活着および苗の初期生育が遅れるために、植物の生育および収量を低下させ得る。
【0026】
「植物苗の根が育苗ポット内にて巻く」時期は、植物の種類、生育条件、育苗ポットの大きさ等の要因によって変化するが、当業者であれば当該時期は、播種後の日数や鉢上げ後の日数等に基づいて、容易に判断することができる。例えば、下記実施例に詳述されるとおり、ピーマン苗を直径12cm×深さ10cmの育苗ポットにて育苗した場合、「植物苗の根が育苗ポット内にて巻く前」とは遅くとも播種後35日以前であることが好ましい。
【0027】
また、本発明において「定植」とは、上記育苗ポットに生育した植物苗を当該育苗ポットに植えたままの状態で、圃場に移して、植えることを意味する。上記育苗ポットは、育苗から定植まで一貫して利用することができるために、上記「背景技術」の欄に記載した先行技術と比べて生産者の負担が少なく、効率的に植物を栽培することができる。なお、本明細書において、植物苗の根が育苗ポット内にて巻く前に圃場に定植することを「早期定植」と呼ぶ場合がある。
【0028】
育苗ポットに生育した植物苗を、当該植物苗の根が育苗ポット内にて巻く前に、当該育苗ポットに植えたままの状態で圃場に定植することによって、ウイルス病発生圃場に定植しても、汚染土壌と植物苗が直接接触することを回避することができ、また、定植時に根を傷めることがないために、ウイルス感染を回避することができる。また定植後、苗の根はスリットより育苗ポット外部へと伸長し圃場に達することができるために、定植後の植物苗の成長を妨げることなく栽培することができる。なお、定植後の植物苗の栽培は、従来公知の方法に従って行うことができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)スリットを備える生分解性ポットの作製
生分解性ポット(直径12cm×深さ10cm,(株)東海化成)の側壁面部に、ポット中央部より底部よりに、底部に対して垂直に長さ20mmのスリットを、12mm間隔で24本入れ、スリットを備える生分解性ポットを作製した(図1)。各スリットは、その底部側の端が、底部より7mmの位置にくるように配置した。当該ポットは、スリットとは別に、通水用の開口部(底穴(直径15mm)1つおよび角穴(直径10mm)4つ)を備えていた。
【0031】
(実施例2)スリットを備える生分解性ポットを利用した早期定植によるピーマン苗の生育・収量調査
ピーマン「TM鈴波」の種子を播種し(平成21年7月31日)、播種から7日後(平成21年8月7日)に、従来公知の育苗用培土を詰めた上記実施例1にて作製したスリットを備える生分解性ポットに鉢上げした。その後、通常の育苗方法に準じて育苗した。
【0032】
一般的に、ピーマン苗は播種後40日間、ポットにて育苗した後に圃場に定植されている。本実施例においては、通常よりも早期に圃場への定植を行った。すなわち、スリットを備える生分解性ポットを用いて播種後31日間育苗した後、当該ポットに植えたままの状態で、ポットごと若苗を平成21年8月31日に圃場に定植した(表1および2中、「スリットを備える生分解性ポット・早期定植」と記載)。上記ポットにおいて、播種後31日間育苗した苗の根は当該ポット内において巻いていなかった。
【0033】
一方、対照として、上記スリットを備える生分解性ポットを用いて播種後40日間育苗した後に、当該ポットから苗を取り出して圃場へ定植したもの(表2中、「スリットを備える生分解性ポット・慣行定植」と記載)、上記スリットを備える生分解性ポットに代えて、ポリエチレン製のポット(直径12cm,深さ10cmで直径18mmの底穴1つを備える)を用いて播種後40日間育苗した後に、当該ポットから苗を取り出して圃場へ定植したもの(表1および2中、「慣行育苗・慣行定植」と記載)を用いた。上記各ポットにおいて、播種後40日間育苗した苗の根は当該ポット内において一部巻いているものが観察された。
【0034】
定植後の栽培方法は、主枝4本U字誘引、栽植密度は畦幅2.0m、株間50cm(100株/a)とした。収穫調査は平成21年10月2日〜5月末まで行った。
【0035】
定植後初期(播種後63日目)の各ピーマン苗の生育結果を、以下の表1に示す。
【表1】

【0036】
表1の結果より明らかなとおり、スリットを備える生分解性ポットにて育苗した後、通常よりも早期に圃場に定植した苗においては、慣行育苗・慣行定植した苗と比べて、同等またはそれ以上の生育が観察された。
【0037】
次に、各ピーマン苗におけるピーマンの収量結果を以下の表2に示す。
【表2】

【0038】
表2の結果より明らかなとおり、スリットを備える生分解性ポットにて育苗した後、通常よりも早期に圃場に定植した苗(「スリットを備える生分解性ポット・早期定植」)においては、対照のピーマン苗と比べて、ピーマンの収量が同等以上であった。
【0039】
(実施例3)スリットを備える生分解性ポットを利用したモザイク病の土壌伝染防除
生分解性ポット(直径12cm×深さ10cm,(株)東海化成)の側壁面部に、側面穴を備える生分解性ポットを作製した。側面穴は、生分解性ポットの側壁面部に、30mm間隔で8列に配置されており、各列は3個の開口部(それぞれ直径5mm)を11mm間隔で底部に対して垂直方向に配置した。各列の最も底部よりの開口部は、底部より7mmの位置にその中心がくるように配置した。当該生分解性ポットは、側面穴とは別に、通水用の開口部(底穴(直径15mm)1つおよび角穴(直径10mm)4つ)を備えていた。
【0040】
PMMoV−L打破株(PMMoV−Ij株)を接種したピーマン苗(品種:京鈴)を定植、一定期間栽培後、地上部を抜き取り、地下部はすきこむことによって、モザイク病の汚染圃場を作製した。
【0041】
ピーマン(品種:京ゆたか、TM鈴波)の種子を播種し、播種から7日後に、従来公知の育苗用培土を詰めた、実施例1にて作製したスリットを備える生分解性ポットまたは上記側面穴を備える生分解性ポットに鉢上げした。その後、通常の育苗方法に準じて育苗した。播種後31日間育苗した後に、それぞれのポットに植えたままの状態で、ポットごと若苗を上記汚染圃場に定植した(表3中、「スリットを備える生分解性ポット・早期定植」「側面穴を備える生分解性ポット・早期定植」と記載)。また、播種から7日後に、ポリエチレン製のポット(直径12cm,深さ10cmで直径18mmの底穴1つを備える)に鉢上げし、播種後40日間育苗した後に、当該ポットから苗を取り出して圃場へ定植したものを対照とした(表3中、「慣行育苗・慣行定植」と記載)。
【0042】
定植から約1ヶ月後に、各苗の上位葉を採取し、DAS−ELISAによりモザイク病発病の有無を確認した。
【0043】
結果を以下の表3に示す。
【表3】

【0044】
表3の結果より明らかなとおり、スリットを備える生分解性ポットにて育苗した後、通常よりも早期に圃場に定植した苗においては、モザイク病の発病率が0%であったのに対して、側面穴を備える生分解性ポットにて育苗した後、通常よりも早期に圃場に定植した苗、および慣行育苗・慣行定植した苗においては、モザイク病の発病が認められた(それぞれ、7.5%および2.5%の発病率)。
【0045】
以上の結果より、スリットを備える生分解性ポットにて育苗した後、通常よりも早期に当該ポットごと圃場に定植することによって、土壌伝染によるモザイク病の発病を顕著に防除できることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により、土壌伝染性のウイルス病害の発病を効率的に防除することができ、土壌くん蒸剤の一種である臭化メチルを使用する従来の防除法に代わる新たな防除法として、農業分野において大いに貢献することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌伝染性ウイルス病害を防除するための植物苗の育苗方法であって、側壁面部に一または複数のスリットを有する育苗ポットを使用して該植物苗を育苗し、かつ該植物苗の根が該ポット内にて巻く前に該ポットごと圃場に定植することを含む、上記方法。
【請求項2】
育苗ポットが生分解性材料からなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
土壌伝染性ウイルス病害が、タバコモザイクウイルス(TMV)、トウガラシマイルドモットルウイルス (PMMoV)、トマトモザイクウイルス (ToMV)およびキュウリ緑斑モザイクウイルス(Kyuri green mottle mosaic virus:KGMMV)からなる群から選択されるウイルスによる病害である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
土壌伝染性ウイルス病害がトウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)によって引き起こされる病害である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
植物が、ナス科、ウリ科、マメ科、アブラナ科、ラン科からなる群から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
植物が、タバコ、トウガラシ、ピーマン、トマト、キュウリ、メロン、スイカ、ラン、カブまたはワサビである、請求項5記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−66422(P2013−66422A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207194(P2011−207194)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【出願人】(593049914)株式会社東海化成 (20)
【Fターム(参考)】