説明

土壌消毒機

【課題】歩行型管理機に装着して薬液を土壌中に注入する土壌消毒機では、従来より管理機の取付フレーム上に土壌消毒機の構成部材を配置するが、重い薬液タンクについては、管理機の上部近傍に配置されるため作業者への負担が大きく、走行輪の車軸から離間しているため薬液消費に伴う機体の前後重量バランスの変動も大きかった。
【解決手段】管理機2の前後一端部に、薬液タンク30を含む複数の構成部材を取り付ける取付フレーム67を固設し、該取付フレーム67に管理機2を挟んで左右にアーム69・70を設け、該アーム69・70は、走行輪3L・3Rの上端部を通る水平面77の近傍で、走行輪3L・3Rの回転面79L・79R上又はそれより左右外側に配置し、該アーム69・70の少なくとも一方に前記薬液タンク30を載置し、該薬液タンク30は平面視で走行輪3L・3Rの前後幅78内に重心30cが収まるよう配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の走行輪を備える歩行型の管理機に装着して薬液タンクからの薬液を土壌中に注入する土壌消毒機に関し、特に、走行性能、メンテナンス作業性の向上に有効な、土壌消毒機における構成部材の配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歩行型の管理機に装着して薬液注入爪により薬液を土壌中に注入する土壌消毒機には、管理機に固設した取付フレーム上に、土壌消毒機の各構成部材、特に薬液供給に必要な薬液タンク等のような重い構成部材を配置することにより、駆動部である管理機に重量を集中させて重量バランスを適正にする技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
該技術においては、取付フレームの左右一側に薬液ポンプとスイッチボックスを配置し、左右他側にはバッテリを配置することにより、左右の重量バランスが適正化され、加えて、走行輪の上方近くに薬液タンクを配置することにより、作業中の薬液消費に伴う薬液タンクの重量変化から作業者が受ける影響を、軽減して作業操作性が悪化しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−23268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記技術においては、薬液の入った重い薬液タンクが管理機の上部近傍あるいは畝成形器の上方に配置されているため、タンク交換作業等のメンテナンス作業における重い薬液タンクの上げ下ろし等のハンドリングは、作業者にとって大きな負担となっている、という問題があった。
更に、管理機から後方にはロータリ耕耘装置支持用のビームが突設され、該ビームの後端部に立設したパイプの上端に前記薬液タンクが配置されているため、該薬液タンクは走行輪よりも高位置にあるが、薬液タンクの重心は走行輪よりも後方位置にあって、走行輪の車軸から薬液タンクの重心までの距離(以下、「腕の長さ」とする。)が長くなる。ここで、重い薬液タンクにより、走行輪の車軸を回転中心として前後方向に大きな回転モーメント(以下、単に「モーメント」とする。)が常に発生しているが、前記技術では、前述のように腕の長さが長いことから、作業中に薬液が消費して薬液タンクの重量が少しでも変化すると、前記モーメントもかなり変化する。このため、作業中における管理機の前後重量バランスを必ずしも十分に良好には保てず、特に、薬液タンクの重量変化が大きい場合には、ロータリ耕耘装置がビームを介して上下動されて耕耘深さが変動する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、左右の走行輪を備える歩行型の管理機に装着して薬液タンクからの薬液を土壌中に注入する土壌消毒機において、前記管理機の前後一端部に、前記薬液タンクを含む複数の構成部材を取り付けるための取付フレームを固設し、該取付フレームには、前記管理機を挟んで左右に支持アーム部を設け、該支持アーム部は、前記走行輪の上端部を通る水平面の近傍で、走行輪の回転面上、または該回転面よりも左右外側に配置し、該支持アーム部の少なくとも一方に前記薬液タンクを載置すると共に、該薬液タンクは、平面視で走行輪の前後幅内に重心が収まるように配置したものである。
請求項2においては、前記管理機の前後他端部と、前記薬液タンクの載置側の支持アーム部との間に、該支持アーム部を前記管理機によって支持する連結部材を介設するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1において、走行輪の上端部を通る水平面の近傍に配置した支持アーム部に、重い薬液タンクを含む複数の構成部材を取り付けて、該構成部材を適正な高さに配置することができ、配置高さが高すぎて薬液タンク等の重い構成部材の交換作業等のメンテナンス作業が困難となったり、逆に、配置高さが低すぎて土壌の凸部に構成部材が干渉したりするのを、確実に防止し、メンテナンス作業における作業者の負担軽減、及び作業効率や走行性能の向上を図ることができる。更に、薬液タンクは平面視で走行輪の前後幅内に重心が収まるように配置して、走行輪から薬液タンクまでの腕の長さを短くすることができ、たとえ作業中の薬液消費による薬液タンクの重量変化が大きくても、車軸を中心とした前後方向のモーメント変化は小さくなり、作業中の管理機の前後重量バランスが良好に保てると共に、ロータリ耕耘装置による耕耘深さの変動も小さくすることができる。加えて、支持アーム部は、走行輪の回転面上、または該回転面よりも左右外側に配置して、左右の支持アーム部の間隔を広く設けることができ、構成部材の重量によって管理機が左右両側で下方に強く押し付けられ、作業中の管理機の左右重量バランスも良好に保つことができる。
請求項2において、管理機への取付フレームの取り付け剛性を高めることができ、土壌の凹凸が大きい場合、または圃場内や圃場間を移動のために高速で走行する場合でも、走行中に取付フレームが大きく揺動するのを確実に防止し、走行性能の更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】管理機に本発明に係わる土壌消毒機を装着して成る消毒装置の全体構成を示す、消毒装置の左後方斜視図である。
【図2】薬液供給部を装着した管理機の側面図である。
【図3】薬液注入構成を示す模式図である。
【図4】薬液供給部を装着した管理機の正面図である。
【図5】同じく平面図である。
【図6】ポンプユニットの斜視図である。
【図7】同じく側面一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明に係わる土壌消毒機1を歩行型の管理機2に装着して成る消毒装置49の全体構成について、図1乃至図3により説明する。なお、図1の矢印Fで示す方向を消毒装置49の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前進方向を基準とするものである。
【0009】
初めに、前記管理機2の概略構成について説明する。
該管理機2は、走行部を構成する左右一対の走行輪3L・3Rに支持された機体4と、該機体4の後端下部に作業部として備えられるロータリ耕耘機構5とにより構成される。
【0010】
前記機体4の上面後部には、通常、操向ハンドル6は後斜め上方に延設されているが、前記土壌消毒機1を装着する際は、この操向ハンドル6は位置7から位置8まで旋回させて前方に振り替える。消毒作業は、この操向ハンドル6を作業者が把持して矢印Fの方向に軽く牽引するようにして行われる。そして、前記機体4には、動力源としてのエンジン9と、該エンジン9からの動力を変速して前記走行輪3L・3Rやロータリ耕耘機構5に伝達するための図示せぬ変速機構を有するミッションケース10とが搭載されている。
【0011】
このうちのロータリ耕耘機構5においては、ミッションケース10から後斜め下方にPTO伝達ケース11が延出され、該PTO伝達ケース11の後端から更に後斜め下方には耕耘ケース12が延出されている。そして、該耕耘ケース12の下端部には、耕耘爪軸13が左右外側に突出した状態で回動可能に軸支され、該耕耘爪軸13に、複数の耕耘爪14・14・・・が装着されている。
【0012】
一方、ミッションケース10から前斜め下方には走行伝動ケース15が延出され、該走行伝動ケース15の下端部には、車軸16が左右外側に突出した状態で回動可能に軸支され、該車軸16に前記走行輪3L・3Rが装着されている。
【0013】
このような構成において、前記エンジン9からの動力は、ミッションケース10内の変速機構で変速された後、この変速動力が、前記走行伝動ケース15から車軸16に伝達されて、前記走行輪3L・3Rが走行駆動されると共に、この変速動力は、耕耘ケース12内の図示せぬPTO伝動機構を介して分岐されて前記耕耘爪軸13にも伝達され、該耕耘爪軸13の回りを前記耕耘爪14・14・・・が正逆回転して耕耘作業が行われる。
【0014】
更に、前記耕耘ケース12の上部前端は、前記機体4の後部に設けたリヤヒッチ17にピン20・20によって連結される一方、耕耘ケース12の上部から、後方に向かってリヤフレーム18が延出され、該リヤフレーム18の後部台18a上には、上部のハンドル21aを回動することによってネジロッド21bが伸縮する調整機構21が、固定リング25によって固設されている。
【0015】
該調整機構21においては、前記ネジロッド21bの下端は、回動フレーム22の途中より立設するステー23に連結され、該回動フレーム22の前端は、前記耕耘爪14・14・・・を覆う耕耘カバー19の上面に横設し固定されている支持パイプ24に連結されている。そして、該耕耘カバー19は、前記耕耘爪軸13を中心に前後回動可能に枢支されると共に、耕耘カバー19の後部には、リヤカバー26が設けられており、前記ハンドル21aを回動してネジロッド21bを伸縮すると、前記耕耘カバー19とリヤカバー26とが前後に回動され、その位置を耕耘深さに合わせて手動で調整できるようにしている。
【0016】
なお、前記支持パイプ24には、左右の固定フレーム48L・48Rの上端が固設され、該固定フレーム48L・48Rの下部には、それぞれ、ゲージ輪47L・47Rが高さ調整可能に連結されており、該ゲージ輪47L・47Rの高さを設定することにより、耕耘深さを所定の深さに設定できるようにしている。
【0017】
更に、前記リヤカバー26の後方には、側面視L字状の畝上面形成板27が配置され、該畝上面形成板27は、前記回動フレーム22の後部に高さ調整可能に設けた形成板支持ステー29の背面に固設されると共に、該畝上面形成板27の左右端には、それぞれ、左右の畝側面形成板28L・28Rが外側から覆うように配置されており、耕耘された土壌が、前記畝形成板27・28L・28Rによって囲まれた空間に流れ込むと、所定の大きさ・形状の畝が形成されるようにしている。
【0018】
また、このような構成から成る管理機2に装着する土壌消毒機1の概略構成について説明する。該土壌消毒機1は、薬液を適正な量とタイミングで供給する薬液供給部31と、供給されてきた薬液を土壌中に注入した後にマルチ作業を行う作業部32とにより構成される。
【0019】
前記薬液供給部31は、薬液を貯留する薬液タンク30、該薬液タンク30からの薬液を吸引し圧力をかけて吐出するポンプユニット35、該ポンプユニット35のモータ36を駆動するための電力を供給するバッテリ37、及び該バッテリ37からの電流を制御して前記ポンプユニット35を適正に駆動・停止するコントローラ71等から構成されており、これらの構成部材は、後で詳述する配置構成によって所定の位置に配置されている。
【0020】
前記作業部32においては、支持パイプ24上で形成板支持ステー29を挟んで左右に、注入爪支持ステー41L・41Rの先端が固設され、該注入爪支持ステー41L・41Rの後端に薬液注入爪33・34が昇降可能に取り付けられ、該薬液注入爪33・34は、前記リヤカバー26と畝上面形成板27との間から土壌内に向かって、後斜め下方に延設されている。そして、薬液注入爪33・34の背面には、注入ホース45・45の先端部が固定され、該注入ホース45・45の基端部は薬液流確認計42・42の上端に接続されている。該薬液流確認計42・42の下端は、それぞれ、吐出ホース44・44を介して前記ポンプユニット35に接続され、該ポンプユニット35は、それぞれ吸入ホース43を介して前記薬液タンク30に接続されている。
【0021】
このような構成において、薬液タンク30からの薬液が、ポンプユニット35による吸引作用によって、吸入ホース43・43、ポンプユニット35、吐出ホース44・44、薬液流確認計42・42、及び注入ホース45・45を介して、前記薬液注入爪33・34まで圧送された後、注入ホース45・45の先端から土壌内に注入される。
【0022】
前記形成板支持ステー29の上部から後方に、中央フレーム50が延設され、該中央フレーム50の途中部からは、ロール支持ステー51が垂設され、該ロール支持ステー51の下部には、側面視前後逆L字状の軸支アーム52が支持されている。そして、該軸支アーム52の前端は、横設されたローラ軸54の左右略中央部に連結され、該連結部を挟んで左右には、それぞれ、左右の鎮圧ローラ53L・53Rがローラ軸54上を前後回動可能に軸支されている。なお、該ローラ軸54の左右両端からは、それぞれ、釣り針状の左右のガイドアーム65・65が外側に突設されており、後述するマルチフィルム56が繰り出される際に、該マルチフィルム56の左右両端をこのガイドアーム65・65によって押さえ付けることにより、マルチフィルム56を弛緩させることなく張設した状態で引き出せるようにしている。
【0023】
該鎮圧ローラ53L・53Rの前斜め上方には、両端を左右のフィルムホルダ57L・57Rによって回動可能に支持されたフィルムパイプ55が横架されている。該フィルムパイプ55には、薬液が注入された後に畝に形成された土壌を被覆するためのマルチフィルム56が巻回されている。そして、前記フィルムホルダ57L・57Rは、前記支持パイプ24に前端が固設されたフィルムフレーム58L・58Rの後端に連結されている。
【0024】
一方、前記鎮圧ローラ53L・53Rの左右外側線上には、それぞれ、フィルム踏圧輪59L・59Rが配置され、該フィルム踏圧輪59L・59Rの外側には、左右の覆土ディスク60L・60Rが配置されている。そして、このうちの左側のフィルム踏圧輪59Lと覆土ディスク60Lは、前記支持パイプ24の左端から後方に延設された左側の踏圧覆土フレーム62Lの後部に支持され、同様に、右側のフィルム踏圧輪59Rと覆土ディスク60Rは、前記支持パイプ24の右端から後方に延設された右側の踏圧覆土フレーム62Rの後部に支持されている。
【0025】
該踏圧覆土フレーム62L・62Rの途中部は、前端を耕耘カバー19の上面に固定したバネロッド63L・63Rの後端に、それぞれ、付勢バネ61L・61Rを介して連結され、該付勢バネ61L・61Rにより、前記踏圧覆土フレーム62L・62Rは、下方に押圧された状態で上下揺動可能に支持されている。なお、前記フィルム踏圧輪59L・59Rは、いずれも、スポークの部分が小さくて開口部59La・59Raが大部分を占める開口タイプであって、該開口部59La・59Raを介して、覆土ディスク60L・60Rからの土壌を、マルチフィルム56の左右端部よりも内側に導いて、広範囲に覆土できるようにしている。
【0026】
このような構成において、前記フィルムパイプ55に巻回されているマルチフィルム56は、その左右端部が、前記覆土ディスク60L・60Rで掻き上げられた土壌により押さえられると、管理機2が前進するにつれてマルチフィルム56は土壌面に引き出される。そして、この引き出されたマルチフィルム56の全幅が、前記鎮圧ローラ53L・53Rにより畝上面に押圧された後、該マルチフィルム56の左右端部が、フィルム踏圧輪59L・59Rにより押さえ付けられながら、覆土ディスク60L・60Rにより覆土されていき、前述のようにして土壌内に注入した薬液が揮発しないように、前記マルチフィルム56によって土壌表面を被覆できるようにしている。
【0027】
次に、前記薬液供給部31の配置構成について、図1、図4、図5により説明する。
前記管理機2の前端には、ネジ72・72によってフロントヒッチ66が締結固定され、該フロントヒッチ66において立設された支持プレート66aの背面に、左右方向に延設されるメインバー68の略中央部が固設されている。該メインバー68の左端下面には、連結具73を介して、後方に延設する左アーム69の前端が連結されると共に、メインバー68の右端上面にも、連結具73を介して、後方に延設する右アーム70の前端が連結されており、これらメインバー68と左右のアーム69・70とから、前記薬液タンク30等の構成部材を取り付けるための取付フレーム67が構成される。
【0028】
ここで、前記連結具73は、アーム69・70の前端でメインバー68側に開く側面視コ字状に形成して固設した固定部材74と、該固定部材74の前後の外側面沿いに垂設するボルト74a・74aに挿通可能な図示せぬ孔を開口した当て板75と、該孔を挿通して突出した前記ボルト74a・74aの先部に螺嵌することにより前記当て板75を固定部材74に締結固定するボルト76・76とにより構成されており、該ボルト76・76の着脱により、左右のアーム69・70をメインバー68から容易に取り外せるようにしている。
【0029】
そして、前記管理機2を挟んで左右に配置される前記アーム69・70のうち、左アーム69の前部上面には、連結具73を介してバッテリ載置台80が固定され、該バッテリ載置台80上に前記バッテリ37が載置されている。更に、左アーム69の後部上面には、連結具73を介して、上端が後斜め下方に傾斜した傾斜部材82が固定され、該傾斜部材82上に、薬液タンク載置台81が固定されており、該薬液タンク載置台81上に、前記薬液タンク30が載置されると共に、薬液タンク載置台81の底板81aからは、正面視L字状の支持ステー83が外方に突設され、該支持ステー83上に、洗浄水等を入れたボトル84が載置されている。
【0030】
ここで、前記薬液タンク30は、薬液タンク載置台81の上端から前方に張り出すように設けたベルト86によって拘束され、同様に、ボトル84も、支持ステー83の上端から外方に張り出すように設けたリング状部材85によって拘束されており、作業走行中に、前記薬液タンク30・ボトル84が振動や衝撃で倒れたり飛び出したりしないようにしている。
【0031】
前記右アーム70については、前記左アーム69よりも前後長が短く形成されると共に、該右アーム70の前部上面には、連結具73を介してコントローラ載置台87が固定され、該コントローラ載置台87で前斜め下方に傾斜した傾斜面87a上に、前記コントローラ71が載置し固定されている。更に、右アーム70の後部上面には、連結具73を介して、ポンプユニット35のポンプケース88が固定されている。
【0032】
このようにして薬液タンク30等を取り付けたアーム69・70は、前述の如く、メインバー68の左右端から後方に延設されるが、該メインバー68は、図4に示すように、左右の走行輪3L・3Rの上端部を通る水平面77の近傍に配置されていることから、左右のアーム69・70の配置高さも水平面77の近傍に設定することができる。
【0033】
更に、該アーム69・70の左右位置については、左アーム69は、左の走行輪3Lの幅方向中心を通る鉛直平面(以下、「回転面」とする。)79Lよりも外側に配置され、右アーム70についても同様に、右の走行輪3Rの回転面79Rよりも外側に配置されている。なお、アーム69・70の左右位置は、前記回転面79L・79R上に配置してもよく、左右のアーム69・70の間隔を十分に確保できればよい。
【0034】
加えて、前述のようにして左アーム69の後部上面の薬液タンク載置台81に載置された薬液タンク30は、その重心30cが左右の走行輪3L・3Rの前後幅78内に収まるように配置されている。該前後幅78よりも外側に前記重心30cが位置すると、車軸16から薬液タンク30までの腕の長さが長くなり、重い薬液タンク30に起因したモーメントの作用が大きくなるため、作業中の薬液タンク30の重量変化に伴って管理機2の前後重量バランスも大きく変化することとなる。
【0035】
すなわち、左右の走行輪3L・3Rを備える歩行型の管理機2に装着して薬液タンク30からの薬液を土壌中に注入する土壌消毒機1において、前記管理機2の前後一端部に、前記薬液タンク30を含む複数の構成部材を取り付けるための取付フレーム67を固設し、該取付フレーム67には、前記管理機2を挟んで左右に支持アーム部であるアーム69・70を設け、該アーム69・70は、前記走行輪3L・3Rの上端部を通る水平面77の近傍で、走行輪3L・3Rの回転面79L・79R上、または該回転面79L・79Rよりも左右外側に配置し、該アーム69・70の少なくとも一方に、本実施例では左アーム69に、前記薬液タンク30を載置すると共に、該薬液タンク30は、平面視で走行輪3L・3Rの前後幅78内に重心30cが収まるように配置したので、アーム69・70を水平面77の近傍に配置して、薬液タンク30等の構成部材を適正な高さに配置することができ、配置高さが高すぎて薬液タンク30等の重い構成部材の交換作業等のメンテナンス作業が困難となったり、逆に、配置高さが低すぎて土壌の凸部に構成部材が干渉したりするのを、確実に防止し、メンテナンス作業における作業者の負担軽減、及び作業効率や走行性能の向上を図ることができる。
【0036】
更に、薬液タンク30は平面視で走行輪3L・3Rの前後幅78内に重心30cが収まるように配置して、走行輪3L・3Rから薬液タンク30までの腕の長さを短くすることができ、たとえ作業中の薬液消費による薬液タンク30の重量変化が大きくても、車軸16を中心とした前後方向のモーメント変化は小さくなり、作業中の管理機2の前後重量バランスが良好に保てると共に、ロータリ耕耘機構5による耕耘深さの変動も小さくすることができる。加えて、アーム69・70は、走行輪3L・3Rの回転面79L・79R上、または該回転面79L・79Rよりも左右外側に配置して、左右のアーム69・70の間隔を広く設けることができ、構成部材の重量によって管理機2が左右両側で下方に強く押し付けられ、作業中の管理機2の左右重量バランスも良好に保つことができる。なお、薬液タンク30を含む複数の構成部材の配置は、本実施例の場合と逆の構成であってもよく、薬液タンク30を載置するアーム69・70の左右位置と、薬液タンク30の重心の前後位置が本発明の範囲内のものであればよく、特には限定されない。
【0037】
また、前記左アーム69の後端部上面からアーム側ステー89が立設されると共に、前記リヤヒッチ17の上面からは機体側ステー90が立設され、該機体側ステー90には、棒状のジョイント92の内端がボルト91によって締結されると共に、該ジョイント92の外端は、前記アーム側ステー89にボルト91によって締結されており、左アーム69の後端部を管理機2の後端にジョイント92を介して連結して、左アーム69の剛性を高めるようにしている。
【0038】
そして、該ジョイント92は、中空のパイプ92aと該パイプ92aに内挿されて摺動する伸縮ロッド92bとにより構成されており、該伸縮ロッド92bをパイプ92a内で摺動させた後、パイプ92aに設けた調整ボルト93を回動してパイプ92a内の伸縮ロッド92bの側面を押止し、ジョイント92の全長を管理機2と取付フレーム67の仕様に合わせて調整できるようにしている。
【0039】
すなわち、前記管理機2の前後他端部であるリヤヒッチ17と、前記薬液タンク30の載置側の支持アーム部である左アーム69との間に、該左アーム69を前記管理機2によって支持する連結部材であるジョイント92を介設するので、管理機2への取付フレーム67の取り付け剛性を高めることができ、土壌の凹凸が大きい場合、または圃場内や圃場間を移動のために高速で走行する場合でも、走行中に、メインバー68と左右のアーム69・70から成る取付フレーム67が大きく揺動するのを確実に防止し、走行性能の更なる向上を図ることができる。
【0040】
次に、前記ポンプユニット35について、図1、図5乃至図7により説明する。
該ポンプユニット35は、ポンプケース88内に2個の薬液ポンプ38・39を収容して構成され、このうちの薬液ポンプ38においては、前記ポンプケース88前部の内側に駆動装置94が設けられ、該駆動装置94は、ポンプケース88前部の上面に設けられた圧送装置95と連結連動される。
【0041】
前記圧送装置95においては、ダイヤフラム96が弁取付部材97とダイヤフラム取付部材98とによって上下から挟持して固定され、このうちの弁取付部材97からは、ダイヤフラム96に連通する吸入ポート99と吐出ポート100とが上方に突設され、該吸入ポート99と吐出ポート100とは、それぞれ前記吸入ホース43と吐出ホース44とに接続されている。一方、前記ダイヤフラム96の中央下部からは連結ピン101がポンプケース88内に垂下され、該連結ピン101には往復移動体である連結ロッド102が連結されると共に、該連結ピン101は、ポンプケース88の前側面88aより後方に突設したピン支持ステー103の縦孔103a内を摺動可能に挿通され支持されている。
【0042】
前記駆動装置94においては、このような圧送装置95の連結ロッド102の下端が、揺動クランク104の一端上部に枢支軸105を介して枢支され、留め具106によって抜け止めがなされている。この揺動クランク104には、圧送装置95側に長孔104aが開口され、モータ36側には楕円状孔104bが開口されており、このうちの前記長孔104a内には揺動支点である支点カム107が挿入され、前記楕円状孔104bには偏心カム108が挿入されている。
【0043】
前記支点カム107は、円盤状に形成されると共に、その中央には調量軸109が貫通されて、該調量軸109に回転自在に枢支されている。更に、該調量軸109は、調量レバー110の先部に締結固定された後、前記ポンプケース88の前側面88aに長穴状に穿設された側面ガイド孔88bに挿入されている。
【0044】
該調量レバー110は、前記揺動クランク104と平行に配設されると共に、その基部はポンプケース88に付設したレバーガイド111に枢支され、該レバーガイド111から外方に突出した調量レバー110には、下方に屈曲されてレバー操作部110aが形成されている。更に、該調量レバー110には、平坦な当接部110bが側面ガイド孔88b側の外周側面に形成されると共に、前記レバーガイド111には、固定ノブ112の螺挿部112bが前記調量レバー110に対して垂直となるように螺挿されており、該固定ノブ112の把持部112aを回転することにより、螺挿部112bの先端が前記当接部110b側に向かって進退し、調量レバー110を、レバーガイド111の内壁111aとの間に挟持して特定位置に固定したり、逆に内壁111aから離間させて揺動クランク104の長手方向に自由にスライド操作可能としている。
【0045】
前記偏心カム108の軸心部には、キー114によって駆動軸113が相対回転不能に連結されている。更に、偏心カム108は、カラー115を介して、前記揺動クランク104の楕円状孔104b内に摺動自在に支持され、該カラー115の両側面にはドーナツ状の固定部材116・116が嵌合されており、前記偏心カム108とカラー115とが、揺動クランク104から抜け出ないように固定されている。そして、偏心カム108を貫通した前記駆動軸113は、ポンプケース88より前方に突出され、該駆動軸113の一端は、ポンプケース88の前側面に固設されたモータケース117内のモータ36の図示せぬ出力軸に連結される一方、駆動軸113の他端は、後方に隣接する薬液ポンプ39を駆動可能に構成されている。
【0046】
このような構成において、前記固定ノブ112の把持部112aを持って螺挿部112bを回転操作し、該螺挿部112bの先端を前記調量レバー110側面の当接部110bから僅かに離間させた上で、レバー操作部110aを持って調量レバー110を揺動クランク104の長手方向に押し引きしてスライド操作すると、該調量レバー110の先部に固定された調量軸109が、前記側面ガイド孔88bにガイドされながら揺動クランク104の長手方向に素早く摺動し、同時に、調量軸109に支持された前記支点カム107も短時間で移動される。
【0047】
該支点カム107を所定位置に固定した後、前記コントローラ71のスイッチ71aを入切操作してモータ36を駆動させると、図示せぬ出力軸を介して駆動軸113が回転駆動されて偏心カム108が回転する。すると、該偏心カム108に摺接された揺動クランク104の一端が上下に往復動し、揺動クランク104の他端も前記支点カム107を支点として上下に往復動し、これに伴って、揺動クランク104の他端に連結ロッド102を介して連結されたダイヤフラム96も上下に往復動する。これにより、吸入ポート99と吐出ポート100内に設けた弁が開閉され、薬液の吸入動作と吐出動作が繰り返される。
【0048】
更に、調量レバー110を押し引きしてスライド操作すると、支点カム107が長孔104a内を摺動し、揺動クランク104の揺動支点の位置は変更されるのに対し、偏心カム108は、移動できないために偏心カム108側の上下往復幅は一定となっている。従って、揺動支点となる支点カム107を偏心カム108側に向かって移動させると、揺動クランク104の反対側、すなわち枢支軸105側の上下往復幅が長くなり、ダイヤフラム96内に吸入される薬液の量が増加し、薬液吐出量も増加する。逆に、支点カム107を偏心カム108から離間させると、枢支軸105側の上下往復幅が短くなり、ダイヤフラム96内に吸入される薬液の量が減少し、薬液吐出量も減少するようにしている。なお、以上は、薬液ポンプ38の作動構成であるが、隣接する薬液ポンプ39も同様であり、説明は省略する。
【0049】
また、このようにして変更可能な薬液吐出量の設定値の読み取り構成について説明する。
前記調量レバー110により移動させる支点カム107を貫通する調量軸109において、該調量軸109の左側の外周側面には平坦な取付部109aが形成され、該取付部109aに、単一の長板状の針板118が装着されている。該針板118は、前記取付部109aに固定するために垂設した装着部118aと、該装着部118aの上端位置で左斜め上方に屈曲し延出して設けた延設部118bと、該延設部118bの上端位置で上方に屈曲し立設させた指示部118cとにより構成され、該指示部118cの先端には尖った指針118dが形成されている。
【0050】
そして、この指示部118cは、前記ポンプケース88の上面88cに左右方向に長穴状に穿設された上面ガイド孔88dに対して下方より挿入され、先端に設けた前記指針118dがポンプケース88から突出して配置される一方、前記上面ガイド孔88dの長手方向には、指針118dの位置を読み取るための目盛板119が配設されている。該目盛板119と上面ガイド孔88dのいずれも、前記調量レバー110とは平行に配設されている。
【0051】
このような構成において、該調量レバー110を押し引き操作すると、前述のようにして、揺動中心の支点カム107が移動し、ダイヤフラム96の上下往復幅が変動して薬液吐出量も増減すると同時に、該支点カム107の移動に連動して針板118の指示部118cも移動し、該指示部118cの指針118dは、ポンプケース88の上面にあって上方から視認しやすい位置に配設された前記目盛板119の横を、前記薬液吐出量に相当する目盛り位置まで移動する。
【0052】
すなわち、前記薬液ポンプ38・39には、薬液吐出量を設定する調量レバー110、該調量レバー110に連動して移動する指示部118c、及び前記ポンプケース88の上面88cに設けられて前記指示部118cの指針118dの位置を読み取る目盛板119を備えるので、作業者は、指針118dの目盛り位置を上方から容易に確認することができ、ポンプケース88の側面に指針や目盛板を設ける場合とは異なり、わざわざ側方に回って薬液吐出量の設定値を確認する必要がなく、薬液吐出量の確認作業を迅速かつ精度良く行うことができる。
【0053】
また、このように薬液吐出量の設定値の読み取りが容易な薬液ポンプ38・39は、前述の如く、ポンプケース88内に収納され、ポンプユニット35として、管理機2の右側に設けた右アーム70の後部上面に配置されているが、該右アーム70は、土壌消毒機1の左右方向内側ではなく右外側に配置されているため、薬液吐出量の設定値を変更したり薬液ポンプ38・39のメンテナンス等を行うのに、作業者が土壌消毒機1の上方から身を乗り出すようにして前記ポンプユニット35にアクセスする必要がない。
【0054】
すなわち、薬液ポンプ38・39は、土壌消毒機1の少なくとも左右一側、本実施例では右側の外縁部に前後方向に並設したので、作業者は、薬液ポンプ38・39に側方から容易にアクセスして、薬液吐出量の設定値の変更や薬液ポンプ38・39のメンテナンス等を行うことができ、薬液吐出量の変更作業やメンテナンス作業を行う際の作業負担を更に軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、左右の走行輪を備える歩行型の管理機に装着して薬液タンクからの薬液を土壌中に注入する全ての土壌消毒機に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 土壌消毒機
2 管理機
3L・3R 走行輪
17 リヤヒッチ(前後他端部)
30 薬液タンク
30c 重心
67 取付フレーム
69・70 左右アーム(支持アーム部)
77 水平面
78 前後幅
79L・79R 回転面
92 ジョイント(連結部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の走行輪を備える歩行型の管理機に装着して薬液タンクからの薬液を土壌中に注入する土壌消毒機において、前記管理機の前後一端部に、前記薬液タンクを含む複数の構成部材を取り付けるための取付フレームを固設し、該取付フレームには、前記管理機を挟んで左右に支持アーム部を設け、該支持アーム部は、前記走行輪の上端部を通る水平面の近傍で、走行輪の回転面上、または該回転面よりも左右外側に配置し、該支持アーム部の少なくとも一方に前記薬液タンクを載置すると共に、該薬液タンクは、平面視で走行輪の前後幅内に重心が収まるように配置したことを特徴とする土壌消毒機。
【請求項2】
前記管理機の前後他端部と、前記薬液タンクの載置側の支持アーム部との間に、該支持アーム部を前記管理機によって支持する連結部材を介設することを特徴とする請求項1に記載の土壌消毒機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−36183(P2011−36183A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186909(P2009−186909)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】