説明

土詰装置及びその利用

【課題】苗栽培用セルトレイに土量を均一に詰めることができる土詰装置および苗栽培用セルトレイの製造方法を提供する。
【解決手段】複数個の凹部102を有するセルトレイ101の上に、第一の主表面に突出した複数個の筒状凸部205を有する土量調整用トレイ201を置くことにより、前記筒状凸部205が前記凹部102内に挿入し、前記土量調整用トレイ201の第二の主表面から前記筒状凸部205を通して、前記凹部102内に土を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルトレイと土量調整用トレイを含む土詰装置に関する。さらに本発明は、該土詰装置を利用した、苗栽培用セルトレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国、県、民間などの研究所や試験場における植物の研究には、健全で均質な苗を栽培することが重要課題である。このような苗を栽培するためには、複数個の凹部(セルともいう)を有するセルトレイに植物の種子と土を入れた苗栽培用セルトレイを用いる。この苗栽培用セルトレイは、一般的に、セルトレイの各セルに一定量の土(床土ともいう)を入れ、次いで床土の上に植物の種子を置き、次いでセルにさらに土を加えて種子を土で覆う(覆土ともいう)ことにより作製される。
【0003】
苗栽培用セルトレイの作製において、従来の床土をセルトレイに入れる方法は、セルトレイの各セルに乾燥粒状培土などの床土を口切り一杯に入れ、次いでセルトレイを45度程度に傾斜してブラシでセルに含まれる土の3割程度を掻き落とすという方法であった。
【0004】
しかし、上記方法は、熟練者であっても一つの苗栽培用セルトレイを作製するのに3〜5分を要する作業効率の悪い方法であった。しかも、上記方法は、熟練者であっても苗栽培用セルトレイ全体の床土の量を均一にすることは困難であり、作業中に床土が周辺に散らばり屋内での作業が困難な方法であった。
【0005】
上記方法において、セルトレイ全体の床土の量を均一にする方法としては、計量カップ等の計量器具を利用する方法がある。しかし、作業効率が悪いことには変わりなく、1度の操作で複数個のセルに床土を入れることは困難であった。さらにセルの底に穴が開いている場合は、作業中にセルの底から床土が漏れることから、屋内での作業が困難であり、土量の均一性さえも保ちにくい方法であった。
【0006】
これらの土量の不均一性、作業の低効率、及び室内での作業困難性という問題を解消し得るものとして、全自動播種機が市販されている(非特許文献1)。この全自動播種機によって、苗栽培用セルトレイは、セルに入れる床土(粒状培土)に水分を含ませて軟らかくした後に圧縮し、次いで種子を圧縮した床土の上に播種して覆土することにより作製される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】全自動播種機(LSPE−40)、 [online]、みのる産業株式会社、[平成21年3月6日検索]、インターネット<URL:http://www.agri-style.com/products/seihin/hashuki/lspe_40/lspe_40.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
全自動播種機を用いる方法によれば、上記手順を経ることにより、土量を均一にして、屋内で効率よく、苗栽培用セルトレイを作製することができる。しかし、この方法では、粒状培土は潰れてしまい、数日間の保存でひび割れが入り堅くなることや、何よりも機器自体が高価であるという新たな問題が生じる。したがって、全自動播種機を用いる方法は、研究所などで実施する試験用の播種や育苗のための苗栽培用セルトレイを作製する方法としては適していない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、効率よく苗栽培用セルトレイを作製するために、全自動藩種機と同程度に土量を均一にして屋内で効率よくセルトレイに床土を詰めることができ、かつ全自動藩種機を用いることにより生じる上記問題を解消した土詰装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、該土詰装置を利用した、苗栽培用セルトレイを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、複数個の凹部を有するセルトレイ及び第一の主表面に突出した複数個の筒状凸部を有する土量調整用トレイを含む土詰装置を開発した。本土詰装置において、発明者らは、前記筒状凸部の内容積は前記凹部の内容積より小さく、前記筒状凸部の少なくとも凹部に挿入される部分の短軸及び長軸はそれぞれ前記凹部の短軸及び長軸より小さく、かつ前記筒状凸部の少なくとも凹部に挿入される部分の高さは前記凹部と同程度の高さであるように設計した。その結果、本土詰装置を用いれば、全自動藩種機と同程度に土量を均一にして屋内で効率よくセルトレイに床土を詰めることができた。本発明は、これらの知見に基づいて完成された発明である。
【0011】
したがって、本発明によれば、土詰装置であって、
複数個の凹部を有するセルトレイ、及び第一の主表面に突出した複数個の筒状凸部を有する土量調整用トレイを含み、
前記筒状凸部の内容積は前記凹部の内容積より小さく、前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の短辺及び長辺はそれぞれ前記凹部の短辺及び長辺より小さく、かつ前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の高さは前記凹部の深さと同程度である、土詰装置が提供される。
【0012】
好ましくは、下端部が前記土量調整用トレイの第二の主表面に接した状態で前記土量調整用トレイの第二の主表面上に置かれ得る土供給用中空トレイをさらに含む。
【0013】
好ましくは、前記筒状凸部の内容積は、前記凹部の内容積に対して0.5〜0.9(筒状凸部の内容積/凹部の内容積)である。
【0014】
好ましくは、前記凹部の形状が角筒であり、かつ前記筒状凸部の形状が円筒である。
【0015】
本発明の別の側面によれば、複数個の凹部を有するセルトレイの上に、第一の主表面に突出した複数個の筒状凸部を有する土量調整用トレイを、前記筒状凸部が前記凹部内に挿入するように置くこと、ただし、前記筒状凸部の内容積は前記凹部の内容積より小さく、前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の短辺及び長辺はそれぞれ前記凹部の短辺及び長辺より小さく、かつ前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の高さは前記凹部の深さと同程度である;
前記土量調整用トレイの第二の主表面から前記筒状凸部を通して、前記凹部内に土を供給すること;
前記セルトレイの上から、前記土量調整用トレイを除くこと;
前記凹部内に供給された土の上に、植物の種子を置くこと;及び
前記凹部内に置かれた植物の種子の上に土を供給すること
を含む、苗栽培用セルトレイの製造方法が提供される。
【0016】
本発明の別の側面によれば、複数個の凹部を有するセルトレイの上に、第一の主表面に突出した複数個の筒状凸部を有する土量調整用トレイを、前記筒状凸部が前記凹部内に挿入するように置くこと、ただし、前記筒状凸部の内容積は前記凹部の内容積より小さく、前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の短辺及び長辺はそれぞれ前記凹部の短辺及び長辺より小さく、かつ前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の高さは前記凹部の深さと同程度である;
前記土量調整用トレイの第二の主表面の上に、土供給用中空トレイを置くこと、ただし、前記土供給用中空トレイの下端部は前記土量調整用トレイの第二の主表面に接する;
前記土供給用中空トレイの上端部から土を供給することにより、前記土量調整用トレイの筒状凸部を通して、前記凹部内に土を供給すること;
前記セルトレイの上から、前記土量調整用トレイ及び前記土供給用中空トレイを除くこと;
前記凹部内に供給された土の上に、植物の種子を置くこと;及び
前記凹部内に置かれた植物の種子の上に土を供給すること
を含む、苗栽培用セルトレイの製造方法が提供される。
【0017】
好ましくは、前記筒状凸部の内容積は、前記凹部の内容積に対して0.5〜0.9(筒状凸部の内容積/凹部の内容積)である。
【0018】
好ましくは、前記凹部の形状が角筒であり、かつ前記筒状凸部の形状が円筒である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の土詰装置によれば、全自動藩種機と同程度に、土量を均一にして、屋内で効率よく、セルトレイに床土を詰めることができる。例えば、本発明の土詰装置を用いれば、約10〜15秒という短時間で、セルトレイ全体に均一に床土(例えば、乾燥粒状培土)を入れることができる。本発明によれば、セルごとの密度が異ならないように凹部に土を入れることができ、その結果、床土を詰めてから数日間保存しても、床土の密度を均一に維持することができる。本発明の土詰装置は、床土の供給を自然落下により実施することができることから、全自動藩種機を使用した場合に生じる圧縮による床土が潰れてしまうことや数日間の保存でひび割れが入り堅くなることといった問題を回避することができる。
【0020】
本発明によって、床土の量がセルトレイの凹部内に均一に入ることにより、播種した種子を均一に生育させることが可能となる。その結果として、苗の管理が容易になることも期待できる。すなわち、本発明によれば、イネなどの苗の発芽から幼苗までの時期において、苗の成育能力を均質かつ高度に維持し得る、栽培環境を確保することが可能となる。
【0021】
本発明の土詰装置は、床土に圧力をかけずに床土を充填することができることから、床土(例えば、乾燥粒状培土)を潰さず保水性及び通気性を十分に保ち、かつ水切れも良いので、苗の根の張りが良くなり、床土の量を少なくすることが期待できる。
【0022】
本発明の土詰装置は、作業者の熟練性を問わず、セルトレイの各凹部内に同じ量の床土を詰めることができ、さらにいずれのセルトレイにおいても、各凹部内の床土の量及び密度を均一にすることができる。本発明の土詰装置を用いれば、セルトレイの凹部内に10〜15秒前後で規定量の土(乾燥粒状培土)を均一に入れることができる。しかも、各凹部内に、精密かつ密度を同じくして、土を入れることができる。
【0023】
本発明の土詰装置は、色々なタイプ、サイズのセルトレイ(ポット育苗箱)にも、軽微な改良によって対応が可能である。さらに、本発明の土詰装置は、機械的な部品を要しないことから、全自動播種機に比べて安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】固定台に固定させた本発明の土詰装置に供するセルトレイの一態様を示した図である。
【図2】本発明の土詰装置に供する土量調整用トレイの一態様を示した図である。
【図3】本発明の土詰装置の一態様であり、図1のセルトレイの上に土量調整用トレイを設置したものを示した図である。
【図4】セルトレイの角筒状凹部内に円筒状凸部を挿入した土量調整用トレイの断面図である。
【図5】セルトレイの角筒状凹部内に漏斗筒状凸部を挿入した土量調整用トレイの断面図である。
【図6】本発明の土詰装置の一態様であり、図3の土量調整用トレイの上に土供給用中空トレイを設置したものを示した図である。
【図7】本発明の土詰装置の一態様であり、セルトレイの角筒状凹部内に円筒状凸部を挿入した土量調整用トレイの上に下端部をブラシで加工した土供給用中空トレイを置いたものの断面図である。
【図8】本発明の土詰装置を利用して作製した、床土及び種子を含むセルトレイの一態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明について、詳細に説明する。
本発明の土詰装置は、複数個の凹部を有するセルトレイ、及び第一の主表面に突出した複数個の筒状凸部を有する土量調整用トレイを含む。ただし、前記筒状凸部の内容積は前記凹部の内容積より小さく、前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の短辺及び長辺はそれぞれ前記凹部の短辺及び長辺より小さく、かつ前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の高さは前記凹部の深さと同程度である。以下に、本発明について、本発明の具体的態様を示した図を参照して説明する。
【0026】
(1)セルトレイ
図1は、固定台103の上に固定された、本発明の土詰装置に供されるセルトレイの具体的な一態様であるセルトレイ101の斜視図を示す。セルトレイ101は、縦17個×横34個の合計578個の有底の凹部102が碁盤目状に連結してなる、縦30cm×横60cm×高さ2.8cmのトレイ状構成物である。セルトレイのその他の態様としては、例えば、10〜2000個程度の凹部(セルともいう)を碁盤目状に有するセルトレイを挙げることができる。ただし、セルトレイは、複数個の凹部を有するトレイである限り、特に制限されるものではない。
【0027】
セルトレイ101において、凹部102は、寸法を縦1.5cm×横1.5cm×深さ2.5cmとし、床土を入れて植物の種子を加えて苗を育てるために十分な内容積を持つ。凹部102は、苗を栽培するための一定の内容積を持つ仕切られた有底の凹状部位であり、ここに床土、植物の種子、及び覆土を順に供給することにより、苗栽培用セルとして利用できる。凹部102は、底面の一部が開口していてもよく、開口していなくてもよい。凹部102の材質、凹部102やセルトレイ101全体の大きさ、凹部102の数や形状などは、栽培すべき苗の種類や数、栽培条件などに応じて適宜設定され得る。
【0028】
セルトレイ101は、図1に示すように、固定台103に固定することができる。固定台103には、縦60cm×横105.5cm×厚さ0.9cmのコンクリートパネル台113上に、セルトレイ101を中央に配置できるように、セルトレイ案内板104が8カ所に設置されている。さらに固定台103には、セルトレイの持ち上がりを防ぐために左右にフック105がある。本発明の土詰装置を固定するための固定台としては、固定台103の態様以外にも種々のものを用いることができる。
【0029】
(2)土量調整用トレイ
図2は、本発明の土詰装置に供する土量調整用トレイの具体的な一態様である土量調整用トレイ201を裏面(第一の主表面202)から見た斜視図である。土量調整用トレイ201は、第一の主表面202を下方向にして、図2の筒状凸部205を図1の凹部102内に挿入することにより、図1のセルトレイ101の上に置かれ得る。このようにしてセルトレイ101の上に土量調整用トレイ201が置かれた態様を図3に示す。図3に示すとおり、土量調整用トレイ201がセルトレイの上に置かれた態様では、土量調整用トレイ201の第二の主表面207が上面となる。土量調整用トレイ201は、固定台103の8ヶ所に設けられた土量調整用トレイ案内板108で、固定台103上の位置が決められる。
【0030】
図2に記載の土量調整用トレイ201は、縦50cm×横91.3cm×厚さ0.9cmのコンクリートパネル208に、図1に記載のセルトレイ101の凹部102の数と等しい578個の上端部及び下端部が開口した筒状凸部205(外径1.3cm、内径1.1cm×高さ3.4cm)を碁盤目状に設けたものである。土量調整用トレイ201は、コンクリートパネル208と筒状凸部205とが一体的に製造されてもよいし、コンクリートパネル208の一方の主表面に筒状凸部205を敷設して製造してもよい。土量調整用トレイ201の筒状凸部205を有する部分の高さは、コンクリートパネル208と筒状凸部205の合計の高さである3.4cmである。
【0031】
土量調整用トレイ201において、筒状凸部205は、第一の主表面202にのみ突出しており、第一の主表面202と反対の面である第二の主表面207に突出していない。図3に示すように、土量調整用トレイ201は、第二の主表面207に枠204が取り付けてある。これにより、第二の主表面207に供給された土の飛散を防ぐことができる。土量調整用トレイの別の態様は、第一の主表面に突出した10〜2000個の筒状凸部を碁盤目状に設けた土量調整用トレイを挙げることができるが、これに制限されるものではない。ただし、筒状凸部は、凹部の数と同じくし、かつ凹部の位置に対応して設けられる。
【0032】
筒状凸部205の内容積は約3.2cmであり、凹部102の内容積約5.6cmの約3/5程度の内容積である。実際は粒状培土なので、2/3程度の位置まで入る。図4は、凹部102に筒状凸部205が挿入した態様を示す。筒状凸部205の高さ604は2.5cmであり、凹部102の深さ605の2.5cmと同程度である。図4に示すように、筒状凸部205の外径603は1.3cmであり、凹部102の縦606の約1.5cm及び横607の約1.5cmよりも小さいことから、筒状凸部205の凹部102内に挿入される部分である挿入部分601は、凹部102の深さを満たして凹部102内に挿入される。このように、土量調整用トレイ201の筒状凸部205は、内容積が凹部102の内容積より小さく、かつ凹部102内に挿入される挿入部分601を有する。さらに、挿入部分601の外径は、凹部102の短辺及び長辺より小さい。筒状凸部205が直方体である場合は、挿入部分601の短辺は凹部102の短辺より小さく、かつ挿入部分601の長辺は凹部102の長辺より小さい。筒状凸部と凹部が上記の関係にあることによって、土を筒状凸部を通して凹部に供給し、次いで凹部から筒状凸部を除去した場合に、筒状凸部の内容積分の土を凹部内に供給することができる。
【0033】
筒状凸部205における挿入部分601は、筒状凸部205の一部分だけに限らず、筒状凸部205全部であってもよい。挿入部分601の高さは、凹部102の深さと同程度、すなわち、凹部102の深さと同等以上か、又は凹部102の深さよりも若干小さくてもよい。ただし、挿入部分601の高さが凹部102の深さよりも小さいと、凹部102の底部から土がはみ出ることから、最終的な床土の量がばらつく原因となる。したがって、挿入部分601は、凹部102の高さと同等以上であることが好ましい。挿入部分601の高さが凹部102の深さと同等以上である場合、挿入部分601の下端部は、凹部102内の底面608と接する。
【0034】
筒状凸部205及び凹部102は、筒状凸部205の内容積が凹部102の内容積より小さく、筒状凸部205の挿入部分601の短辺及び長辺がそれぞれ凹部102の短辺及び長辺より小さく、かつ筒状凸部205の挿入部分601の高さが凹部102の深さと同程度であれば特に制限はなく、種々の態様をとり得る。例えば、図5に、筒状凸部205及び凹部102の一態様である、角柱型の凹部102に漏斗型の筒状凸部205が挿入された態様の側方向及び下方向から見た断面図を示す。
【0035】
(3)セルトレイ及び土量調整用トレイを用いた土の供給方法
上記の通り、図3は、セルトレイ101の上に土量調整用トレイ201が置かれた態様を示した斜視図である。セルトレイ101及び土量調整用トレイ201を用いた土の供給方法は以下の通りである。
【0036】
まず、図3のようにセルトレイ101と土量調整用トレイ201が組み合わせられた土詰装置において、土量調整用トレイ201の第二の主表面207上に土を供給する。第二の主表面に供給された土は、筒状凸部205を通して凹部102内に供給され、次いでセルトレイ101の上から土量調整用トレイ201を除去した後に、例えば、1.5cmの高さ(内容積:約3.4cm)の床土となる。次いで床土の上に植物の種子が置かれ、さらに種子の上に高さ1.0cm(内容積:約2.3cm)の覆土を供給する。このとき、筒状凸部205を介して凹部102内に供給された土(床土)は、筒状凸部205の挿入部分601の高さが凹部102の深さと同等以上である場合、筒状凸部205の底面から凹部102内に横漏れしない。
【0037】
筒状凸部205の内容積は凹部102の内容積よりも小さいので、土量調整用トレイ201に満たされた土が凹部102に供給されると、床土の量は凹部102の内容積よりも少なくなる。この床土の量は、栽培すべき苗の種類や栽培条件などに応じて、筒状凸部205の容積及び凹部102の容積を変化させることにより適宜設定できる。床土を供給した後に、植物の種子を床土の上に撒き、次いで覆土することを考慮すれば、筒状凸部205の容積は、例えば、凹部102の容積に対して0.5〜0.9(筒状凸部の内容積/凹部の内容積)であることが好ましい。また、筒状凸部205の凹部102内への挿入を円滑にすることを考慮すれば、例えば、凹部102の形状は角筒であり、かつ筒状凸部205の形状は円筒であることが好ましい。
【0038】
その他の土量調整用トレイの設計事項、例えば、筒状凸部を含む土量調整用トレイの材質、土量調整用トレイの全体の大きさ、筒状凸部の個数などは、セルトレイとの関係、栽培すべき苗の種類や数、栽培条件などに応じて適宜設定され得る。例えば、筒状凸部の個数は、土量調整用トレイの取り外し回数を減らすためにも、セルトレイの凹部と同じ個数であることが好ましい。
【0039】
(4)土供給用中空トレイ
本発明の土詰装置には、バケツなどの容器を使って、土量調整用トレイの第二の主表面から土を供給することができるが、土供給用中空トレイを使って土を供給することもできる。図6は、図3に記載のセルトレイ101の上に置かれた土量調整用トレイ201の上に土供給用中空トレイ403を置いた態様を示した図である。土供給用中空トレイ403は、上端部401及び下端部405が開口しており、縦8cm×横(下端部58.5cm、上端部62.5cm)×高さ15cmの構造である。土供給用中空トレイ403は、持ち手404が左右に9cmずつ土量調整用トレイ201の長辺の枠の長さよりも長いことから、持ち手404は土量調整用トレイ201の第二の主表面207上の枠204に乗り上がる。土供給用中空トレイ403は、土量調整用トレイ201の上に置かれ、上端部401から土a(乾燥粒状培土)を入れて前後にゆっくりと引かれる。土供給用中空トレイ403を用いて、土量調整用トレイ201における筒状凸部205の内容積を満たして土を入れた後に、セルトレイ101から土供給用中空トレイ403と土量調整用トレイ201を除去すると、土aは自然落下により、凹部102内に均一に供給される。
【0040】
土供給用中空トレイ403は、下端部405が土量調整用トレイ201の第二の主表面207に接した状態で土量調整用トレイ201の第二の主表面207上に置かれ得るものである。第二の主表面207に接し得る下端部405は、下端部405の一部又は全部である。下端部405は、土量調整用トレイ201上の土供給用中空トレイ403の移動を円滑にするために、例えば、ブラシ、フェルト、ゴムなどの素材で表面が加工されていてもよい。図7に、下端部405がゴムで加工された土供給用中空トレイ403を示す。図7は、筒状凸部205が凹部102に挿入された状態で、土量調整用トレイ201がセルトレイ101の上に置かれ、さらに土供給用中空トレイ403が土量調整用トレイ201の上に置かれた態様を側方から見た断面図である。
【0041】
図7において、土供給用中空トレイ403を紙面の左右に移動させることにより、横漏れを防ぎつつ、土aを筒状凸部205の内容積分だけ筒状凸部205の中に供給することができる。したがって、土供給用中空トレイ403は、第二の主表面207上の余分な土をならしつつ、土を飛散させることなく、筒状凸部205を通して、凹部102内に土を供給することができる。
【0042】
図8は、本発明の土詰装置を用いてセルトレイ101の凹部102内に床土bを供給し、次いで床土の上に植物の種子cを置いた態様を示す。
【0043】
例えば、固定台の上に、セルトレイ、土量調整用トレイ及び土供給用中空トレイをセットする方法は以下の通りである。図1に示すように、固定台103にセルトレイ101をセットするために、セルトレイ101を固定台103にあるセルトレイ案内板104の8ヶ所内にセットし、持ち上がらないようにフック105をかける。次いで、図1に示す固定台103の外側にある案内板108の8ヶ所内に、図2に示す土量調整用トレイ201を第一の主表面202を下方にしてセットする(図3を参照)。図6に示すように、土量調整用トレイ201の枠204Aと204Bで囲まれた第二の主表面207上に、下端部405が接するように、土供給用中空トレイ403を置く。土供給用中空トレイの中に土(乾燥粒状培土)aを、上部401から9割程度まで平らに入れる。次いで土供給用中空トレイ403の下端部405を土量調整用トレイ201の第二の主表面207に接地させながら、土供給用中空トレイ403を枠204Bに対して平行にゆっくりと前方又は後方に移動させる。この移動中に、土供給用中空トレイ403の中の土aは、土量調整用トレイ201にある筒状凸部205の中へ次々と満たされていく。
【0044】
筒状凸部205全体が土aで満たされていることを確認した後に、図1に示す固定台103の両側にあるベアリング(平行移動用)棒の補助棒110を、下方へ約7cm程度押し下げて、滑車取付け板116の下部の切り込み118へ入れて固定する。この動作によりベアリング112を両側に取り付けてあるベアリング(平行移動用)棒111は、ベアリング(平行移動用)棒の案内棒支持台114(左右に二組ずつある)に取り付けてある、ベアリング(平行移動用)案内棒115に誘導されながら、左右の外側へ約5.5cm程度移動する。この動作は滑車取付け板116に取り付けられた、滑車109を支点にベアリング(平行移動用)棒111に止められたベアリング(平行移動用)棒の平行移動用の紐107を、滑車二個を取り付けた板116の上部にあるベアリング(平行移動用)棒の補助棒110に止め、この補助棒110を下げる。小さな範囲の動作により上下移動を平行移動へと変えてベアリング(平行移動用)棒111を平行移動させる。この時にベアリング112は、土量調整用トレイ201の第一の主表面202の四隅に取り付けてある、ベアリング用スロープ206(傾斜の所が約4.5cm、平行の所が約1.5cm、高さ約2cm)の真下を平行に約5.5cm外側へと移動しながら土量調整用トレイ201を持ち上げる。ベアリング112は固定台103から0.5mm程度浮かしてあり、ベアリング112の上下が接地していると回転しないために、土量調整用トレイ201は強制的に約2cm浮き上がる。この時、土量調整用トレイ201に、数個の土aが詰まった筒状凸部205があるときのために、土量調整用トレイ201の四隅にボルトで固定された、マグネットクリップ305の4個のどれかを数回弾いて、ショックを与えて確実に土aをセルトレイ101へと落とす。次いで土量調整用トレイ201を固定台103から取り外し、フック105を外してセルトレイ101を取り出し、新たに固定台103に別のセルトレイ101をセットしてフック105をかけ、ベアリング(平行移動用)棒の補助棒110を持ち上げるとベアリング(平行移動用)棒111は、バネ固定台117から伸びているバネ106が縮みベアリング(平行移動用)棒111は最初の位置へ戻る。バネ106の両端は、バネ固定台117とベアリング(平行移動用)棒111に繋がっている。次いで、土量調整用トレイ201を固定台103にセットして、土量調整用トレイ201の上に少しある土aを、ブラシ等で筒状凸部205の中へ落とし土供給用中空トレイ403を、反対側の枠204Bへ枠204Bと平行になるように前方又は後方にゆっくりと移動させる。土供給用中空トレイ403に、9割程度に土aを入れて操作をすれば、約40〜60秒程度で二箱のセルトレイ101に床士を入れることができる。筒状凸部保護枠203は、保護と作業中のフック105の外れ防止である。土量調整用トレイ201の裏面(第一の主表面202)は、固定台103にセットした時にベアリング112により、セット中のセルトレイ101の上端部より約0.5mm程度浮くように調節してあり、セルトレイ101の上端部に、テープ等を貼り番号や数字を記入してから土詰め操作をするためである。固定台103にセットしたセルトレイ101の凹部の底面部と土量調整用トレイ201の第一の主表面202側の筒状凸部205の下端部の間が0.5mmの隙間ができても土aは隙間から影響が出るほど漏れない。
【0045】
(5)苗栽培用セルトレイの製造方法
本発明の土詰装置を利用して、セルトレイの凹部内に土を入れ、セルトレイの上から土量調整用トレイや土供給用中空トレイを除いた後に、凹部内の土の上に植物の種子を置き、次いで凹部内に置かれた植物の種子の上に土(覆土)を供給することにより、苗栽培用トレイを製造することができる。この苗栽培用トレイを製造する方法もまた本発明の範囲内である。
【0046】
具体的には、本発明の苗栽培用トレイの製造方法の一態様は、複数個の凹部102を有するセルトレイ101の上に、第一の主表面202に突出した複数個の筒状凸部205を有する土量調整用トレイ201を、筒状凸部205が凹部102内に挿入するように置くこと、ただし、筒状凸部205の内容積は凹部102の内容積より小さく、筒状凸部205の挿入部分601の短辺及び長辺はそれぞれ凹部102の短辺及び長辺より小さく、かつ筒状凸部205の挿入部分601の高さは凹部102の深さと同程度である;土量調整用トレイ201の第二の主表面207から筒状凸部205を通して、凹部102内に土を供給すること;セルトレイ101の上から、土量調整用トレイ201を除くこと;凹部102内に供給された土の上に、植物の種子を置くこと;及び凹部102内に置かれた植物の種子の上に土を供給することを含む。
【0047】
本発明の苗栽培用セルトレイの製造方法の別の態様は、複数個の凹部102を有するセルトレイ101の上に、第一の主表面202に突出した複数個の筒状凸部205を有する土量調整用トレイ201を、筒状凸部205が凹部102内に挿入するように置くこと、ただし、筒状凸部205の内容積は凹部102の内容積より小さく、筒状凸部205の挿入部分601の短辺及び長辺はそれぞれ凹部102の短辺及び長辺より小さく、かつ筒状凸部205の挿入部分601の高さは凹部102の深さと同程度である;土量調整用トレイ201の第二の主表面207の上に、土供給用中空トレイ403を置くこと、ただし、土供給用中空トレイ403の下端部405は土量調整用トレイ201の第二の主表面207に接する;土供給用中空トレイ403の上端部401から土を供給することにより、土量調整用トレイ201の筒状凸部205を通して、凹部102内に土を供給すること;セルトレイ101の上から、土量調整用トレイ201及び土供給用中空トレイ403を除くこと;凹部102内に供給された土の上に、植物の種子を置くこと;及び凹部102内に置かれた植物の種子の上に土を供給することを含む。
【0048】
種子としては、野菜、果物、花卉などの植物の種子や籾を制限なく用いることができ、例えば、米、大麦、黒豆、小豆、とうもろこし、きび、あわ、大豆、白ごま、黒ごま、はと麦、キヌア、たかきび、ホワイトソルガム、ひえ、アマランサスなどの作物の種子を挙げることができるが、好ましくは米の種子及び籾である。
【0049】
種子を凹部内の土の上に置く方法や凹部内の土の上に置かれた種子の上に土を供給する方法は特に制限されず、通常知られる方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0050】
101 セルトレイ
102 凹部
103 固定台
104 セルトレイ案内板
105 フック
106 バネ
107 ベアリング(平行移動用)棒の平行移動用の紐
108 土量調整用トレイ案内板
109 滑車
110 ベアリング(平行移動用)棒の補助棒
111 ベアリング(平行移動用)棒
112 ベアリング
113 コンクリートパネル
114 ベアリング(平行移動用)棒の案内棒支持台
115 ベアリング(平行移動用)棒の案内棒
116 滑車取付け板
117 バネ固定台
118 切り込み
201 土量調整用トレイ
202 第一の主表面
203 筒状凸部保護枠
204A 長辺枠
204B 短辺枠
205 筒状凸部
206 ベアリング用スロープ
207 第二の主表面
208 コンクリートパネル
305 マグネットクリップ
401 上端部
403 土供給用中空トレイ
404 持ち手
405 下端部
406 ゴムで加工された下端部
601 挿入部分
603 筒状凸部の外径
604 筒状凸部の高さ
605 凹部の深さ
606 凹部の短辺
607 凹部の長辺
608 筒状凸部の下端部
a 土
b 床土
c 種子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土詰装置であって、
複数個の凹部を有するセルトレイ、及び第一の主表面に突出した複数個の筒状凸部を有する土量調整用トレイを含み、
前記筒状凸部の内容積は前記凹部の内容積より小さく、前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の短辺及び長辺はそれぞれ前記凹部の短辺及び長辺より小さく、かつ前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の高さは前記凹部の深さと同程度である、土詰装置。
【請求項2】
下端部が前記土量調整用トレイの第二の主表面に接した状態で前記土量調整用トレイの第二の主表面上に置かれ得る土供給用中空トレイをさらに含む、請求項1に記載の土詰装置。
【請求項3】
前記筒状凸部の内容積は、前記凹部の内容積に対して0.5〜0.9(筒状凸部の内容積/凹部の内容積)である、請求項1又は2に記載の土詰装置。
【請求項4】
前記凹部の形状が角筒であり、かつ前記筒状凸部の形状が円筒である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の土詰装置。
【請求項5】
複数個の凹部を有するセルトレイの上に、第一の主表面に突出した複数個の筒状凸部を有する土量調整用トレイを、前記筒状凸部が前記凹部内に挿入するように置くこと、ただし、前記筒状凸部の内容積は前記凹部の内容積より小さく、前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の短辺及び長辺はそれぞれ前記凹部の短辺及び長辺より小さく、かつ前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の高さは前記凹部の深さと同程度である;
前記土量調整用トレイの第二の主表面から前記筒状凸部を通して、前記凹部内に土を供給すること;
前記セルトレイの上から、前記土量調整用トレイを除くこと;
前記凹部内に供給された土の上に、植物の種子を置くこと;及び
前記凹部内に置かれた植物の種子の上に土を供給すること
を含む、苗栽培用セルトレイの製造方法。
【請求項6】
複数個の凹部を有するセルトレイの上に、第一の主表面に突出した複数個の筒状凸部を有する土量調整用トレイを、前記筒状凸部が前記凹部内に挿入するように置くこと、ただし、前記筒状凸部の内容積は前記凹部の内容積より小さく、前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の短辺及び長辺はそれぞれ前記凹部の短辺及び長辺より小さく、かつ前記筒状凸部の前記凹部へ挿入される部分の高さは前記凹部の深さと同程度である;
前記土量調整用トレイの第二の主表面の上に、土供給用中空トレイを置くこと、ただし、前記土供給用中空トレイの下端部は前記土量調整用トレイの第二の主表面に接する;
前記土供給用中空トレイの上端部から土を供給することにより、前記土量調整用トレイの筒状凸部を通して、前記凹部内に土を供給すること;
前記セルトレイの上から、前記土量調整用トレイ及び前記土供給用中空トレイを除くこと;
前記凹部内に供給された土の上に、植物の種子を置くこと;及び
前記凹部内に置かれた植物の種子の上に土を供給すること
を含む、苗栽培用セルトレイの製造方法。
【請求項7】
前記筒状凸部の内容積は、前記凹部の内容積に対して0.5〜0.9(筒状凸部の内容積/凹部の内容積)である、請求項5又は6に記載の苗栽培用セルトレイの製造方法。
【請求項8】
前記凹部の形状が角筒であり、かつ前記筒状凸部の形状が円筒である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の苗栽培用セルトレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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