説明

圧力調整スイッチ機構およびそれを用いた表示パネル輸送用の筐体装置

【課題】 エアバック内の圧力を広範囲にかつ微妙に高精度で比較的容易に調整することが可能となる圧力調整スイッチ機構、およびこの圧力調整スイッチ機構を用いた表示パネル輸送用の筐体装置であって、ガラス基板、液晶パネル等の表示パネルを破損等のトラブルを発生させることなく安全かつ確実に搬送させることができる表示パネル搬送用の筐体装置を提供する。
【解決手段】 本発明の表示パネル搬送用の筐体装置は、エアバックおよび圧力制御機構部を備え、エアバックは、緩衝部材と表示パネルとが実質的に交互に積層された積層体形成後の最上部に押圧用平板を介して配置され、積層体を押圧するように作用するとともに圧力制御機構部によってエアバックの内圧の制御が行われるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバック等の内圧制御を精度よく行なうことができ、しかも制御設定の変更が容易に行なえる圧力調整スイッチ機構、およびこの圧力調整スイッチ機構を用いた表示パネル輸送用の筐体装置であって、ガラス基板、液晶パネル等の表示パネルを破損等のトラブルを発生させることなく安全かつ確実に搬送させることができる表示パネル搬送用の筐体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内や工場外へガラス基板、液晶パネル等の表示パネルを搬送する場合には、一般に、搬送用物としてコンテナ(筐体)が使用されている。
【0003】
搬送対象物である表示パネルは、その大きさが年々、サイズアップされる傾向にあり、搬送中での破損の危険度は増してきている。このような実状のもと、従来より輸送中での破損等のトラブルを回避するために搬送ケースに関する種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特開平6−286812号公報には、所定の構造を備えるガラス基板収容用カセットの提案がなされており、この提案によれば、ガラス基板を支承する溝付き側板の幅を狭くし、かつカセット1側面あたりのその設置枚数を必要最小限にしても必要な強度があり、しかもガラス基板取り扱い時の帯電を有効に防止でき、さらにはガラス基板との摩擦によっても摩耗粉などの塵埃を生じがたいという効果が得られると報告されている。
【0005】
また、特開2000−7148号公報には、収納されるガラス基板を保持する際のたわみを少なくすること、および異物の付着を防止することを目的として、ガラス基板端部支持部とガラス基板の中央部を支持するように構成された複数のガラス基板支持棒とシャッタを有するガラス基板カセットの提案がなされている。
【0006】
また、特開平10−264970号公報には、輸送中の振動または衝撃から被梱包物を保護することができる梱包箱を提供することを目的として、被梱包物を収納するための収納部が形成され、気体の注入により被梱包物の周辺部を保持する第1の緩衝体と、気体の注入により被梱包物の上面を保持する第2の緩衝体を備える梱包箱の提案がなされている。
【0007】
また、特開2004−149188号公報には、比較的低コストで表示パネルを梱包して輸送することができる輸送方法を提供することを目的として、表示パネルをカセットに収納し、表示パネルを収納したカセットを梱包部材で梱包し、梱包したカセットを輸送する表示パネルの輸送方法であって、表示パネルの端部にはその端部を支持するクッション部材を含む旨の提案がなされている。
【0008】
しかしながら、近時、輸送の対象とされる液晶ディスプレイガラスの大きさはさらに拡大する傾向にあり、その大きさがいわゆる第六世代の大きさ(例えば、1500mm×1840mm程度の大きさ)以上となると、縦横が格段と大きくなるので、上記従来の提案をそのまま採択したのみでは輸送中に破損等のトラブルが発生してしまうおそれがある。
また、国内外にある工場間の輸送には、船や航空機を使用することがある。この際、輸送環境の変化は極めて大きい。例えば、搭載待ち時には直射日光があたり、コンテナ内の温度は60〜70℃、あるいはそれ以上になることもある。これとは反対に、船又は航空機からコンテナが外に出され、外気温の極めて低い雰囲気中に長時間さらされることもある。このように輸送環境の変化が極めて大きい場合、単に気体の注入により被梱包物の所定個所を保持する緩衝体を用いた従来の提案では、内部に収納したガラス基板の破損のおそれや、ガラス基板の安定した積載状態を保てないおそれ等が生じ得る。
【0009】
【特許文献1】特開平6−286812号公報
【特許文献2】特開2000−7148号公報
【特許文献3】特開平10−264970号公報
【特許文献4】特開2004−149188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、輸送の対象とされる液晶ディスプレイガラスの大きさが増大したとしても(例えば、第六世代の大きさ(例えば、1500mm×1840mm程度の大きさ)以上)、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできる表示パネル搬送用の筐体装置およびそれに用いられる制御設定の変更が容易な圧力調整スイッチ機構を提供することにある。さらに、輸送環境に大きな変化があっても、その環境変化に順応することができ、輸送中のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできる表示パネル搬送用の筐体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、緩衝部材、表示パネル、押圧用平板およびエアバックを収納するための開口部を備える筐体本体と、前記筐体本体の開口部を封止するための蓋体と、前記エアバックに連結される圧力制御機構部とを有する表示パネル輸送用の筐体装置であって、前記緩衝部材は、輸送対象物である複数枚の隣接する表示パネルの間に介在されるとともに、表示パネルの振動を吸収するクッション材としての機能を有し、前記エアバックは、緩衝部材と表示パネルとが実質的に交互に積層された積層体形成後に前記押圧用平板を介して最上部に配置され、積層体を押圧するように作用しており、前記圧力制御機構部は、前記エアバックへの気体供給を可能とする空気圧調整機構部と、圧力制御のためのスイッチとして作用する機械的構成からなる圧力調整スイッチ機構部を有しており、前記圧力調整スイッチ機構部は、中心軸方向に移動可能に配置された主ロッドと、前記主ロッドの先端部から所定の間隔を空けて順次、主ロッドに固定された第1のピストン、第2のピストン、および第3のピストンと、前記第1のピストン、前記第2のピストン、および前記第3のピストンに、ぞれぞれ、取り付けられて一体化された第1のダイヤフラム、第2のダイヤフラム、および第3のダイヤフラムと、前記第1のピストンと前記第1のダイヤフラムにより形成される第1のピストン部、前記第2のピストンと前記第2のダイヤフラムにより形成される第2のピストン部、および前記第3のピストンと前記第3のダイヤフラムにより形成される第3のピストン部のそれぞれが中心軸方向に沿ってピストン運動ができるように配置されたシリンダ部であって、前記第1のダイヤフラム、前記第2のダイヤフラム、および前記第3のダイヤフラムの周縁部を固定しているシリンダ部と、前記第1のピストン部のさらに前方に形成され、前記主ロッドの先端部と当接可能となり弁開閉できる弁機構体と、前記第3のピストン部よりもさらに後方に配置され、スイッチ作用板バネを介して実質的にシリンダ部と連結されるとともに、スイッチ作用板バネの反転領域で中心軸方向に移動可能であるとともに、スイッチ作用板バネの後方または前方への反転により気体供給装置のスイッチのオンオフ作用を行うスイッチ作用ブロック体と、前記第1のピストン部と前記弁機構体で区画される第1室と、前記第1のピストン部と前記第2のピストン部とで区画される第2室と、前記第2のピストン部と前記第3のピストン部とで区画される第3室と、前記第3のピストン部と前記スイッチ作用ブロック体およびスイッチ作用板バネで実質的に区画される第4室と、前記第1室よりもさらに前方に形成されるとともに、前記弁機構体により区画される第5室とを有し、前記第1室および前記第3室は、エアバックに連通されており、前記第2室、前記第4室、および前記第5室は、大気開放になっており、前記第2のピストン部は、ピストン付勢部材によって、一定力で後方に付勢されており、前記弁機構体は、弁座と、この弁座と当接できる弁体と、この弁体を一定力で後方に付勢する弁付勢部材とを有しており、前記主ロッドは、前記弁機構体の弁体と当接して弁体を開けるための係合先端面と、前記スイッチ作用ブロック体の前面と当接したまま後方に移動させて押し続けて、前記スイッチ作用板バネを後方に反転させて気体供給装置のスイッチをオンさせるように作用させる第1の係合面と、前記スイッチ作用ブロック体の内部に形成された空洞部に挿入されるととともに軸方向に一定の遊びをもって摺動可能に装着され、前記空洞部の前面域に係合されるとともに、前記スイッチ作用板バネを前方に反転させて気体供給装置のスイッチをオフさせるように作用させる第2の係合面とを有してなるように構成される。
【0012】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記スイッチ作用板バネは、複数の板バネを前記スイッチ作用ブロック側からシリンダ部側に向けて体放射状に配置させてなるように構成される。
【0013】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記スイッチ作用板バネは、前記スイッチ作用ブロックとシリンダ部側を繋ぐ皿バネであるように構成される。
【0014】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記ピストン付勢部材は、前記第2室内に配置された圧縮バネであり、一定力で前記第2のピストン部を後方に付勢するように配置される。
【0015】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記弁付勢部材は、前記第5室内に配置された圧縮バネであり、一定力で前記弁体を後方に付勢するように配置される。
【0016】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記スイッチ作用板バネは、後方または前方への反転により前記スイッチ作用ブロックをバネ反転領域間で駆動させてなるように構成される。
【0017】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記空気圧調整機構部は、チェック弁を介して前記エアバックへの気体供給を可能とするエアポンプを有して構成される。
【0018】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記空気圧調整機構部は、前記エアバックへの気体供給を可能とする気体供給タンク、第1の切り換え弁、減圧弁、およびチェック弁(一方向弁)を順次有する気体供給回路を有して構成される。
【0019】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記輸送対象物である表示パネルは、その平面の大きさが1500mm×1840mm以上として構成される。
【0020】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記輸送対象物である表示パネルは、ガラス基板または液晶パネルとして構成される。
【0021】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記エアバックは、天然ゴム、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーの弾性体を主材料とする袋体から構成される。
【0022】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記エアバックの主材料となる弾性体は、その肉厚部に基布が埋設されてなるように構成される。
【0023】
また、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の好ましい態様として、前記押圧用平板は、前記エアバックの圧力が前記積層体に均一にかかるように作用すべく剛性を備えた樹脂プレート、セラミックプレート、又は金属プレートから構成される。
【0024】
本発明は、圧力調整対象物となるエアバックへ連通されて用いられ、圧力制御のためのスイッチとして作用する圧力調整スイッチ機構であって、前記圧力調整スイッチ機構は、中心軸方向に移動可能に配置された主ロッドと、前記主ロッドの先端部から所定の間隔を空けて順次、主ロッドに固定された第1のピストン、第2のピストン、および第3のピストンと、前記第1のピストン、前記第2のピストン、および前記第3のピストンに、ぞれぞれ、取り付けられて一体化された第1のダイヤフラム、第2のダイヤフラム、および第3のダイヤフラムと、前記第1のピストンと前記第1のダイヤフラムにより形成される第1のピストン部、前記第2のピストンと前記第2のダイヤフラムにより形成される第2のピストン部、および前記第3のピストンと前記第3のダイヤフラムにより形成される第3のピストン部のそれぞれが中心軸方向に沿ってピストン運動ができるように配置されたシリンダ部であって、前記第1のダイヤフラム、前記第2のダイヤフラム、および前記第3のダイヤフラムの周縁部を固定しているシリンダ部と、前記第1のピストン部のさらに前方に形成され、前記主ロッドの先端部と当接可能となり弁開閉できる弁機構体と、前記第3のピストン部よりもさらに後方に配置され、スイッチ作用板バネを介して実質的にシリンダ部と連結されるとともに、スイッチ作用板バネの反転領域で中心軸方向に移動可能であるとともに、スイッチ作用板バネの後方または前方への反転により気体供給装置のスイッチのオンオフ作用を行うスイッチ作用ブロック体と、前記第1のピストン部と前記弁機構体で区画される第1室と、前記第1のピストン部と前記第2のピストン部とで区画される第2室と、前記第2のピストン部と前記第3のピストン部とで区画される第3室と、前記第3のピストン部と前記スイッチ作用ブロック体およびスイッチ作用板バネで実質的に区画される第4室と、前記第1室よりもさらに前方に形成されるとともに、前記弁機構体により区画される第5室とを有し、前記第1室および前記第3室は、エアバックに連通されており、前記第2室、前記第4室、および前記第5室は、大気開放になっており、前記第2のピストン部は、ピストン付勢部材によって、一定力で後方に付勢されており、前記弁機構体は、弁座と、この弁座と当接できる弁体と、この弁体を一定力で後方に付勢する弁付勢部材とを有しており、前記主ロッドは、前記弁機構体の弁体と当接して弁体を開けるための係合先端面と、前記スイッチ作用ブロック体の前面と当接したまま後方に移動させて押し続けて、前記スイッチ作用板バネを後方に反転させて気体供給装置のスイッチをオンさせるように作用させる第1の係合面と、前記スイッチ作用ブロック体の内部に形成された空洞部に挿入されるととともに軸方向に一定の遊びをもって摺動可能に装着され、前記空洞部の前面域に係合されるとともに、前記スイッチ作用板バネを前方に反転させて気体供給装置のスイッチをオフさせるように作用させる第2の係合面とを有してなるように構成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の表示パネル輸送用の筐体装置は、緩衝部材、表示パネル、押圧用平板およびエアバックを収納するための開口部を備える筐体本体と、前記筐体本体の開口部を封止するための蓋体と、前記エアバックに連結される圧力制御機構部とを有する表示パネル輸送用の筐体装置であって、前記緩衝部材は、輸送対象物である複数枚の隣接する表示パネルの間に介在されるとともに、表示パネルの振動を吸収するクッション材としての機能を有し、前記エアバックは、緩衝部材と表示パネルとが実質的に交互に積層された積層体形成後に前記押圧用平板を介して最上部に配置され、積層体を押圧するように作用しており、前記圧力制御機構部は、前記エアバックへの気体供給を可能とする空気圧調整機構部と、圧力制御のためのスイッチとして作用する機械的構成からなる圧力調整スイッチ機構部を有しており、前記圧力調整スイッチ機構部は、中心軸方向に移動可能に配置された主ロッドと、前記主ロッドの先端部から所定の間隔を空けて順次、主ロッドに固定された第1のピストン、第2のピストン、および第3のピストンと、前記第1のピストン、前記第2のピストン、および前記第3のピストンに、ぞれぞれ、取り付けられて一体化された第1のダイヤフラム、第2のダイヤフラム、および第3のダイヤフラムと、前記第1のピストンと前記第1のダイヤフラムにより形成される第1のピストン部、前記第2のピストンと前記第2のダイヤフラムにより形成される第2のピストン部、および前記第3のピストンと前記第3のダイヤフラムにより形成される第3のピストン部のそれぞれが中心軸方向に沿ってピストン運動ができるように配置されたシリンダ部であって、前記第1のダイヤフラム、前記第2のダイヤフラム、および前記第3のダイヤフラムの周縁部を固定しているシリンダ部と、前記第1のピストン部のさらに前方に形成され、前記主ロッドの先端部と当接可能となり弁開閉できる弁機構体と、前記第3のピストン部よりもさらに後方に配置され、スイッチ作用板バネを介して実質的にシリンダ部と連結されるとともに、スイッチ作用板バネの反転領域で中心軸方向に移動可能であるとともに、スイッチ作用板バネの後方または前方への反転により気体供給装置のスイッチのオンオフ作用を行うスイッチ作用ブロック体と、前記第1のピストン部と前記弁機構体で区画される第1室と、前記第1のピストン部と前記第2のピストン部とで区画される第2室と、前記第2のピストン部と前記第3のピストン部とで区画される第3室と、前記第3のピストン部と前記スイッチ作用ブロック体およびスイッチ作用板バネで実質的に区画される第4室と、前記第1室よりもさらに前方に形成されるとともに、前記弁機構体により区画される第5室とを有し、前記第1室および前記第3室は、エアバックに連通されており、前記第2室、前記第4室、および前記第5室は、大気開放になっており、前記第2のピストン部は、ピストン付勢部材によって、一定力で後方に付勢されており、前記弁機構体は、弁座と、この弁座と当接できる弁体と、この弁体を一定力で後方に付勢する弁付勢部材とを有しており、前記主ロッドは、前記弁機構体の弁体と当接して弁体を開けるための係合先端面と、前記スイッチ作用ブロック体の前面と当接したまま後方に移動させて押し続けて、前記スイッチ作用板バネを後方に反転させて気体供給装置のスイッチをオンさせるように作用させる第1の係合面と、前記スイッチ作用ブロック体の内部に形成された空洞部に挿入されるととともに軸方向に一定の遊びをもって摺動可能に装着され、前記空洞部の前面域に係合されるとともに、前記スイッチ作用板バネを前方に反転させて気体供給装置のスイッチをオフさせるように作用させる第2の係合面とを有してなるように構成されているので、エアバック内の圧力を広範囲にかつ微妙に高精度で比較的容易に調整することが可能となる。特に、各バネ部材の設定や予め特性が分かっている数種のバネ部材を準備しておくことにより比較的容易に調整することが可能となる。その結果、輸送の対象とされる液晶ディスプレイガラスの大きさが例えば、第六世代の大きさ以上であっても、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできるという極めて優れた効果が発現する。さらには、輸送環境に大きな変化があっても、その環境変化に順応することができ、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできるという極めて優れた効果が発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の圧力調整スイッチ機構およびそれを用いた表示パネル輸送用の筐体装置の説明をする前に、本発明との対比の意味も踏まえて、本発明の圧力調整スイッチ機構を用いずに2つの圧力スイッチを用いて行なわれる従来の一般的制御機構について説明しておく。
【0027】
図6には従来の一般的制御機構における空気圧力回路図が示され、図7には従来の一般的制御機構における電気制御回路図が示されている。また、図8には、図7に示される各動作機器や接点の作動状態をそれぞれエアバック内の圧力との関係で示している。以下、動作説明を簡単に行なう。
【0028】
(1)配管・配線の準備を完了させ、電源スイッチを入れる。
【0029】
(2)図6に示されるライン圧注入口(外部空気圧供給回路)からエアバック内に空気を注入する。圧力スイッチ1および2を作動させてエアポンプを起動させてエアポンプ側から空気を注入するようにしてもよいが、ライン圧注入口(外部空気圧供給回路)から空気を注入させることによりエアポンプに初期空気導入時の負荷を軽減でき、例えば電池等の寿命を伸ばすことができる。
【0030】
そして、エアバックの内圧が高圧設定値P2(実際にはヒステリシス分も考慮に入れてP2+Δh2)に達した時点でライン圧注入口(外部空気圧供給回路)が外される。この時、同時に圧力スイッチ2(高圧設定スイッチPSW2)が停止し、エアポンプが停止する。
【0031】
Δh2は高圧設定スイッチPSW2のヒステリシスである。
【0032】
(3)温度変化、膜の膨張(取り付け寸法変化・クリープ)、膜からの浸透等により内圧が低下し、圧力が(P2ーΔh2)になると圧力スイッチ2(高圧設定スイッチPSW2)が作動する(図8参照)。
【0033】
(4)引き続き内圧が低下し、低圧設定値P1付近に達し、内圧が(P1ーΔh1)に達すると圧力スイッチ1(低圧設定スイッチPSW1)が作動し、エアポンプが空気の供給を開始する(図8参照)。Δh1は低圧設定スイッチPSW1のヒステリシスである。
【0034】
(5)内圧が増加し、(P1+Δh1)に達すると、圧力スイッチ1(低圧設定スイッチPSW1)は切れる。低圧設定スイッチPSW1は切れても、高圧設定スイッチPSW2が接続されているために、エアポンプは空気の供給を続ける(図7および図8参照)。
【0035】
(6)さらにどんどん内圧が増加し、(P2+Δh2)に達すると、圧力スイッチ2(高圧設定スイッチPSW2)は切れる。エアポンプの回転が止まり空気の供給を停止する。
【0036】
以後、上記の動作を繰り返し、内圧がP1〜P2に保たれる。ただし、ヒステリシス分の誤差は生じる。具体的な動作は図8を参照されたい。なお、図7や図8に示される主要な符号は以下の通りである。
【0037】
PSW1:圧力スイッチ1(低圧設定スイッチ)
R1:リレー
R2:リレー
PSW2:圧力スイッチ2(高圧設定スイッチ)
PR:圧力リレー
【0038】
〔本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の説明〕
次いで、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置について詳細に説明する。図1には、本発明の表示パネル輸送用筐体装置の内部の状態が理解し易いように内部を模式的に断面にした図面が示されており、図2には、本発明で用いられるエアバック140に連結される圧力制御機構部の要部システムの好適な一例が示されている。
【0039】
図2に示されるように圧力制御機構部は、エアバック140への気体供給を可能とする空気圧調整機構部200と、圧力制御のためのスイッチとして作用する機械的構成からなる圧力調整スイッチ機構部1を有している。
【0040】
図1に示されるように、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置100は、搬送対象物である表示パネル7等を収納するための略直方体形状の筐体本体110と、この筐体本体110の上部に形成されている開口部111を覆って封止するための蓋体120を備えている。
【0041】
本発明における筐体本体110の中には、その上部に開口されている開口部111から緩衝部材130と、表示パネル7が交互に入れられ重ねられた状態(いわゆる積層体の形成)で収納される。このような緩衝部材130と、表示パネル7との収納は、最上部に押圧用平板8を介してエアバック140を収納するためのスペースを残した状態で終えられ、図1に示されるごとく最上部の残存スペースに押圧用平板8を介してエアバック140が載置収納されるようになっている。
【0042】
本発明において輸送対象となる表示パネル7は、その大きさが第六世代の大きさ(例えば、1500mm×1840mm程度の大きさ)以上のもので本願の効果が顕著となる。輸送対象となる表示パネル7が第六世代の大きさより小さい、いわゆる第5世代程度の大きさ(例えば、1100mm×1300mm程度の大きさ)となると、内圧制御されるエアバック140の装備がなくても表示パネル7の破損のおそれはあまり大きくならないからである。
【0043】
本発明における表示パネル7を収納する筐体本体110の内寸法(幅×長さ寸法)は、表示パネル7よりもわずかに大きな寸法とすることが好ましい。搬送時のガタツキを防止するためにも必要以上なマージンはないほうがよい。また、表示パネル7の筐体本体110内部への収納には、表示パネル7の平面を真空吸引で把持する機構を備えるロボット等が用いられる。表示パネル7は、筐体本体110の内部に、例えば10〜20枚程度収納される。
【0044】
本発明における表示パネル7は、例えば、ガラス基板、液晶パネル、等のいわゆる表示パネルとして公知の種々のものを含む概念である。
【0045】
緩衝部材130は、上述したように輸送対象物である複数枚の隣接する表示パネル7の間に介在されて配置され、輸送中、表示パネル7の振動を吸収するクッション材としての機能を有する材料が用いられる。振動を吸収するクッション材料であれば、ゴム材質や樹脂材質等いずれであってもよく、特に材質に制限はない。緩衝部材130の大きさは、表示パネル7のそれと同程度あるいはそれ以上の大きさとされる。表示パネル7とできるだけ多くの面積で平面接触できる表面平板形状のものが好ましい。また、表示パネル7との交互積層配置に際し、緩衝部材130は、図1に示されるように筐体本体110の内側底部と、押圧用平板8と接触する部位に必ず配置されるようにすることが好ましい。
【0046】
緩衝部材130と表示パネル7とが実質的に交互に積層された積層体形成後の最上部には、押圧用平板8を介してエアバック140が配置される。
【0047】
押圧用平板8は、エアーバック140の圧力が積層体に均一にかかるように作用すべく、押圧によって変形しない程度の剛性を備え、しかも軽くて薄い平らなプレートが用いられる。具体的には、樹脂プレート、セラミックプレート、金属プレート等が挙げられる。
【0048】
エアバック140が配置された後に、筐体本体110の開口部111を覆うように蓋体120が被着される。蓋体120は筐体本体110に被着された後、筐体本体110にしっかりと固着されるようになっている。
【0049】
エアバック140は、袋状形態をなし、図示していないが気体の導入可能な導入口と、気体を排出する排出口を備えている。導入口と排出口は同一箇所とすることができる。エアバック140を膨らまして内圧を付加させると蓋体120の内面との反力により、緩衝部材130と表示パネル7とが交互に積層された積層体を押圧用平板8を介して下方に押圧するように作用する。
【0050】
エアバック140は、押圧用平板8を介して緩衝部材130と表示パネル7との積層状態を常に適度の良好な加圧状態に維持するために後述する圧力制御機構部が連結されており、この圧力制御機構部によってエアバックの内圧の制御が行われるようになっている。
【0051】
エアバック140はパネル基板7の形態に合わせて四角状袋形態とすることが望ましいが、本発明の作用効果を発現できる限りにおいて、円盤状袋形態であってもよい。
【0052】
このようなエアバック140は、天然ゴム、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーの弾性体を主材料として構成することが好ましい。また、袋体強度を維持するために、エアバック140を構成する袋体の肉厚内に基布等を埋設するようにする構成することが好ましい。
【0053】
このようなエアバック140を設けることにより、初期の収納段階で緩衝部材130と表示パネル7とが交互に積層されていき、ピッタリと蓋体120の内側上面まで来なくても、その隙間は押圧用平板8を介してエアバック140によりある程度自由に調整することができる。また、輸送途中に、緩衝部材130と表示パネル7との積層体物が自重により下がり、上部の隙間が大きくなったとしても、生じた隙間は押圧用平板8を介してエアバック140の拡張によってある程度自由に調整される。また、輸送環境に大きな変化(例えば、温度の著しい変化)があっても、その環境変化に順応することができる。
【0054】
このようなエアバック140に連結される圧力制御機構部は、図1には図示していないが、通常、ほとんどの主要装置が筐体本体110の外側底部に隠れるように収納・固着されている。図1において、符号3は紙面の手前ないし奥行き方向に延びる梁であり筐体本体110の強度を保つように作用している。また、符号4は、圧力制御機構部が収納されている制御ボックスを簡易的に示したものである。制御ボックス4からエアバック140までの配管経路の記載は省略してあるが、筐体本体110の側面の上方に向けて配管を這わせるとともに、本体内部のエアバック140の継ぎ手に連結するようにすればよい。配管方法および連結方法は公知の種々の方法を用いるようにすればよい。
【0055】
〔圧力制御機構部の空気圧調整機構部200の説明〕
図2には、エアバック140に連結される圧力制御機構部の要部システム図が示されている。図2において、点線で囲まれたブロックAのエリア以外の各部材が基本的に本発明の表示パネル輸送用の筐体装置100に一緒に組み込まれて筐体に一体化・固定されている。
【0056】
点線で囲まれたブロックAのエリアは、エアバック140へ初期段階の気体供給を行なうための外部気体供給回路であって、使用したとしても一時的なものであり、本発明の筐体装置100に必須のものではない。
【0057】
本発明における圧力制御機構部の要部システムは、前述したようにエアバック140への気体供給を可能とする空気圧調整機構部200と、圧力制御のためのスイッチとして作用する機械的構成からなる圧力調整スイッチ機構部1とを有している。
【0058】
空気圧調整機構部200は、例えば、図2に示されるように、エアバック140への気体供給を可能とする気体供給タンク251、切り換え弁253(2方切り換え弁)、減圧弁254、チェック弁258を順次有する気体供給回路がエアバック140に連結されている。さらに、安全面の観点からリリーフ弁260をエアバック40に連結しておくことが望ましい。気体供給タンク251は、図1における筐体本体110の外側底部に装着できる程度の小型のタンクであり、市販品のものを使用することができる。タンク内容量は5〜20リットル程度、タンク内圧は10〜1MPa・G程度のものが好適に用いられる。このような気体供給タンク251は交換可能に取り付けられており、複数回の使用により気体容量が不足してきた場合には、新しい気体供給タンクに交換できるようになっている。
【0059】
図2に示されるシステムにおいて、圧力調整スイッチ機構部1は切り換え弁253(2方切り換え弁)のスイッチを機械的にオンオフする作用を有している。
【0060】
また、図2示される空気圧調整機構部200に代えて、図3に示されるような空気圧調整機構部300とすることもできる。すなわち、チェック弁258を介してエアバック140への気体供給を可能とするエアポンプ360を有してなる空気圧調整機構部300としてもよい。
【0061】
図3に示されるシステムにおいて、圧力調整スイッチ機構部1はエアポンプ360のスイッチを機械的にオンオフする作用を有している。
【0062】
〔圧力制御機構部の圧力調整スイッチ機構部1の説明〕
図2や図3に示されるようにエアバック140には、圧力制御のためのスイッチとして作用する機械的構成からなる圧力調整スイッチ機構部1が接続されている。
【0063】
この圧力調整スイッチ機構部1の構造を図4および図5に基づいて詳細に説明する。
【0064】
図4は、本発明の圧力調整スイッチ機構部1の中心線l(中心軸)を基準とした半片断面図であり、本発明においては、図面の右方向(図における(+)表示の矢印方向)を「前方」、図面の左方向(図における(−)表示の矢印方向)を「後方」として規定している。図5は、後述するスイッチ作用板バネが後方に反転した状態を部分的に示す切り欠き断面図である。
【0065】
図4に示されるように圧力調整スイッチ機構部1は、中心軸方向に移動可能に配置された棒状の主ロッド90と、この主ロッド90の先端部91から後方に向け、所定の間隔を空けて順次、主ロッド90に固定された第1のピストン18、第2のピストン28、および第3のピストン38を有している。
【0066】
このような第1のピストン18、第2のピストン28、および第3のピストン38には、ぞれぞれ、第1のダイヤフラム10、第2のダイヤフラム20、および第3のダイヤフラム30が取り付けられて一体化されている。第1のダイヤフラム10、第2のダイヤフラム20、および第3のダイヤフラム30は、それぞれ、いわゆる通常のダイヤフラムであってもよいが、好ましくは図示されるようなローリング膜機能を備えるダイヤフラムとすることが好ましい。
【0067】
ローリング膜機能を備えるダイヤフラムは、図面では簡略化して描いてあるが、ローリング移動できるいわゆる折り返し部(Convolution:図面上、湾曲で描かれている)を持つ有底円筒形状のものであって、作動中にその有効受圧面積が一定不変に保たれる円筒形の布入りゴム部材である。
【0068】
本発明においては、第1のピストン18と第1のダイヤフラム10により第1のピストン部が形成され、中心軸方向に沿ってピストン運動ができるようになっている。また、第1のダイヤフラム10の周縁は、シリンダ部を構成するブロック11、15に挟持されて固定されており、ダイヤフラム10の中央部は例えばリテーナ19によって、第1のピストン18に固定されている。
【0069】
同様に、第2のピストン28と第2のダイヤフラム20により第2のピストン部が形成され、中心軸方向に沿ってピストン運動ができるようになっている。また、第2のダイヤフラム20の周縁は、シリンダ部を構成するブロック21、11に挟持されて固定されており、ダイヤフラム20の中央部は例えばリテーナ29によって、第2のピストン28に固定されている。
【0070】
同様に、第3のピストン38と第3のダイヤフラム30により第3のピストン部が形成され、中心軸方向に沿ってピストン運動ができるようになっている。また、第3のダイヤフラム30の周縁は、シリンダ部を構成するブロック21、31に挟持されて固定されており、ダイヤフラム30の中央部は、例えば図4に示されるように主ロッド90の段差を利用してリテーナ機能を発現させ、第3のピストン38に固定されている。
【0071】
図4に示されるように第1のピストン部18のさらに先端側(前方)には、主ロッド90の先端部91と当接可能となって、弁開閉できる弁機構体70が設けられている。
【0072】
弁機構体70は、弁座74と、この弁座74と当接できる弁体71と、この弁体71を一定力で後方(符号(−方向))に付勢する弁付勢部材73とを有している。弁付勢部材73は、例えば、図示のごとく圧縮バネから構成される。
【0073】
また、図4に示されるように第3のピストン部38よりもさらに後方の中心線上には、スイッチ作用ブロック体50が、スイッチ作用板バネ41を介して実質的にシリンダ部を構成するブロック31、36に挟持されるように連結されている。「実質的に」と記載があるのは、スイッチ作用板バネ41の片側を固定するブロック31、36は、必ずしもシリンダ部そのものを構成する必要はなく、図4に示されるようにシリンダ部と連接して後方に位置している部材であって、スイッチ作用板バネ41の片側を固定する機能があれば足りることを意味している。
【0074】
スイッチ作用ブロック体50は、スイッチ作用板バネ41の反転領域間(図4の状態から図5状態に至る反転移動距離)で中心軸方向に移動可能であるとともに、スイッチ作用板バネ41の後方または前方への反転により気体供給装置のスイッチのオンオフ作用が行なえるようになっている。詳細は後述する動作説明を参照されたい。
【0075】
なお、気体供給装置のスイッチとしては、図2に示されるような気体供給タンク251の第1の切り換え弁253(電磁弁)のスイッチや、図3に示されるようなエアポンプ360のスイッチ等が挙げられる。
【0076】
図4に示されるように、スイッチ作用ブロック体50の内部には、空洞部59が形成されており、この空洞部59には、主ロッド90の後部が空洞部の軸方向において、一定の遊びをもって摺動可能に装着されている。
【0077】
なお、符号51は、スイッチ作用ブロック体50の前面F4を構成する部材であるとともに、スイッチ作用板バネ41の片端を固定するための部材である。
【0078】
図4に示されるように主ロッド90は、前述した弁機構体70の弁体71と当接して弁体71を開けるための係合先端面F1(91)と、前述したスイッチ作用ブロック体50を構成する挟持板51の前面F4と当接したままスイッチ作用ブロック体50を後部方向に移動させて押し続けて、スイッチ作用板バネ41を後方に反転させて気体供給装置のスイッチをオンさせるように作用させる第1の係合面F2と、スイッチ作用ブロック体50の内部に形成された空洞部59に挿入されるととともに軸方向に一定の遊びをもって摺動可能に装着され、空洞部59の内側前面F5に係合されるとともに、一旦、後方に反転させられたスイッチ作用板バネ41を再度前方に反転させて気体供給装置のスイッチをオフさせるように作用させる第2の係合面F3とを有して構成されている。
【0079】
本発明においては、図4の状態からわかるように前記第1のピストン部(18、10)と前記弁機構体70で第1室R1が区画されており、前記第1のピストン部(18、10)と前記第2のピストン部(28、20)とで第2室R2が区画されており、前記第2のピストン部(28、20)と前記第3のピストン部(38、30)とで第3室R3が区画されており、前記第3のピストン部(38、30)と前記スイッチ作用ブロック体50およびスイッチ作用板バネで第4室R4が実質的に区画されている。第4室における実質的に区画という表現は、スイッチ作用板バネ41には隙間が存在していてもよいこと意味している。
【0080】
つまり、スイッチ作用板バネ41は、複数の板バネをスイッチ作用ブロック体50側からシリンダ部側(例えば、符号36)に向けて間隙を開けて放射状に配置させるように形成してもよいし、一枚の皿バネでスイッチ作用ブロック体50とシリンダ部側を繋ぐように形成してもよい。
【0081】
また、前記第1室R1よりもさらに前方に、図示のごとく弁機構体70により区画された第5室R5が形成されている。
【0082】
そして、前記第1室1Rおよび前記第3室3Rは、連結孔81および82を介してエアバックに連通されている。また、前記第2室2R、前記第4室4R、および前記第5室5Rは、例えば、連通孔86、87、85を介して大気開放になっている。なお、スイッチ作用板バネ41に隙間が存在する場合には、大気開放のための連通孔87は必須ではない。
また、本発明における第2のピストン部(28、20)は、ピストン付勢部材23によって、一定力で後方に付勢されている。ピストン付勢部材23は、図示のごとく第2室内R2に配置された圧縮バネとして形成することが好ましく、一定力で前記第2のピストン部(28、20)を後方に付勢するように配置されている。
【0083】
この一方で、前述した弁付勢部材73は、第5室5R内に配置された圧縮バネとして形成することが好ましく、一定力で弁体71を後方に付勢するように配置されている。
【0084】
以下、上述してきた圧力制御機構部の圧力調整スイッチ機構部1の動作説明を、図4および図5を参照しつつ詳細に説明する。
【0085】
前記第1室1Rおよび前記第3室3Rに連通されているエアバックの内圧が低下すると、第1のダイヤフラム10、第2のダイヤフラム20、第3のダイヤフラム30の有効受圧面積の差、及びピストン付勢部材23の力の方向(常に、後方(−)に作用している)によって、主ロッド90の図面右向きの力(前方(+)への力)が低下し、ピストン付勢部材23(圧縮バネ)の反力によって主ロッド90は図面の左向き(後方(−))に移動する。
【0086】
主ロッド90の右向き(前方)の力を正(+)、エアバック内圧をP、第1のダイヤフラム10、第2のダイヤフラム20、および第3のダイヤフラム30のそれぞれの受圧面積をAe1、Ae2、Ae3、ピストン付勢部材(バネ)23のバネ定数をKB、歪をδBとすると、図4における面F7と面F1、面F2と面F4、および面F3と面F5が接していない場合の主ロッド90の出力Fは、
F=Ae2×P−Ae1×P−Ae3×P−KB×δB =(Ae2−Ae1−Ae3)×P−KBδB となる。本発明においては、Ae2>Ae1+Ae3であることが必要である。
【0087】
さらに、エアバック内圧が低下すると、面F2が面F4に接し、主ロッド90はスイッチ作用ブロック体50に、後方である左(−)方向の力を伝える。
【0088】
その力が、一定以上となると、スイッチ作用板バネ41は、いわゆる反転して図4の状態から図5の状態になる。図4の右斜め状態から図5の左斜め状態へと移行する。上述したようにバネ41は複数の板バネを放射状に配置してもよいし、1枚の皿バネとしてもよい。
【0089】
スイッチ作用板バネ41が反転すると同時に、スイッチ作用ブロック体50の後端である面F6は、気体供給装置であるエアポンプ60のスイッチ61に接するとともに、エアポンプ60のスイッチをオンにする。すると、エアポンプ60が回転を開始してエアバック140に空気を供給し、エアバック140内の圧力を高めるように作用する。
【0090】
エアバック140の圧力が上昇すると、主ロッド90は図面の左側(後方)から右側(前方)に移動を開始する。
【0091】
すると、それまで接していた面F2と面F4が離れる。すると主ロッド90はスイッチ作用ブロック体50を左方向である後方に押さなくなる。しかしながら、スイッチ作用板バネ41が図5の状態にあるために、面F6はエアポンプ60のスイッチ61を押したままである。
【0092】
さらに、エアバック140の圧力が上昇すると、面F3が面F5と接し、主ロッド90の右向き(前方)の力がスイッチ作用ブロック体50に伝えられる。
【0093】
その力が一定以上となると、スイッチ作用板バネ41が図5の状態から図4の状態へ反転し(前方へ反転)、面F6がエアポンプ60のスイッチ61から離れ、エアポンプ60のスイッチ61がオフとなり、エアポンプ60が止まる。
【0094】
この機構を含む表示パネル輸送用の筐体装置が設置されている場の温度変化が小さい場合には、エアポンプ60からの空気の供給、各部の漏れによりエアバック140の内圧が変化し、上記の一連のサイクルを繰り返す。
【0095】
この一方で、場の温度変化が大きくなった場合、特に温度上昇が大きいと、エアバック140内の圧力が空気の膨張により上昇する。
【0096】
エアバック140の内圧が一定値以上になると、主ロッド90の先端部91(面F1)が、弁体71の左面である、面F7に接し、弁体71を右側に移動させる。
【0097】
すると、弁体71は、弁座74から離れ、室R1の空気は室R5を経由して大気に放出される。
【0098】
一定量の空気が放出されると、エアバック140内の圧力が下がり、主ロッド90が左方に移動し、面F1と面F7が離れ、弁体71が弁座74と接するために室R1と室R5の通路は閉鎖され、室R1(エアバック内)空気は、大気に放出されなくなる。
【0099】
場の温度が下がり、エアバック内の空気が収縮し、内圧が低下したときは、最初に説明した動作に戻る。
【0100】
これらの一連の操作によって、エアバック内の圧力は一定範囲に保たれる。
【0101】
本発明において、特に、各バネ部材の設定や予め特性が分かっている数種のバネ部材を準備しておくことにより、エアバック内の圧力を広範囲にかつ微妙に高精度で比較的容易に調整することが可能となる。
【0102】
また、このような圧力調整スイッチ機構部1を用いた上記の表示パネル搬送用の筐体装置は、輸送の対象とされる液晶ディスプレイガラスの大きさが例えば、第六世代の大きさ以上であっても、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできるという極めて優れた効果が発現する。さらには、輸送環境に大きな変化があっても、その環境変化に順応することができ、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできるという極めて優れた効果が発現する。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の表示パネル搬送用の筐体装置は、液晶パネル等の表示パネルの製造産業および表示パネルを用いた電気製品の製造産業に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、本発明の表示パネル輸送用筐体装置の内部の状態が理解し易いように内部を模式的に断面にした概略図である。
【図2】図2は、本発明で用いられるエアバックに連結される圧力制御機構部の要部システムの一例である。
【図3】図3は、本発明で用いられるエアバックに連結される圧力制御機構部の要部システムの一例である。
【図4】図4は、本発明の圧力調整スイッチ機構部1の中心線l(中心軸)を基準とした半片断面図である。
【図5】図5は、スイッチ作用板バネが後方に反転した状態を部分的に示す切り欠き断面図である。
【図6】図6は、従来の一般的制御機構における空気圧力回路の一例を示した図である。
【図7】図7は、従来の一般的制御機構における電気制御回路の一例を示した図である。
【図8】図8は、図7に示される各動作機器や接点の作動状態をそれぞれエアバック内の圧力との関係で示した対応関係図である。
【符号の説明】
【0105】
1…圧力調整スイッチ機構部
10…第1のダイヤフラム
18…第1のピストン
20…第2のダイヤフラム
23…ピストン付勢部材
28…第2のピストン
30…第3のダイヤフラム
38…第3のピストン
41…スイッチ作用板バネ
50…スイッチ作用ブロック体
59…空洞部
61…エアポンプのスイッチ
70…弁機構体
71…弁体
73…弁付勢部材
74…弁座
90…主ロッド
100…表示パネル輸送用の筐体装置
110…筐体本体
120…蓋体
130…緩衝部材
140…エアバック
R1…第1室
R2…第2室
R3…第3室
R4…第4室
R5…第5室
F2…第1の係合面
F3…第2の係合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝部材、表示パネル、押圧用平板およびエアバックを収納するための開口部を備える筐体本体と、
前記筐体本体の開口部を封止するための蓋体と、
前記エアバックに連結される圧力制御機構部とを有する表示パネル輸送用の筐体装置であって、
前記緩衝部材は、輸送対象物である複数枚の隣接する表示パネルの間に介在されるとともに、表示パネルの振動を吸収するクッション材としての機能を有し、
前記エアバックは、緩衝部材と表示パネルとが実質的に交互に積層された積層体形成後に前記押圧用平板を介して最上部に配置され、積層体を押圧するように作用しており、
前記圧力制御機構部は、前記エアバックへの気体供給を可能とする空気圧調整機構部と、圧力制御のためのスイッチとして作用する機械的構成からなる圧力調整スイッチ機構部を有しており、
前記圧力調整スイッチ機構部は、
中心軸方向に移動可能に配置された主ロッドと、
前記主ロッドの先端部から所定の間隔を空けて順次、主ロッドに固定された第1のピストン、第2のピストン、および第3のピストンと、
前記第1のピストン、前記第2のピストン、および前記第3のピストンに、ぞれぞれ、取り付けられて一体化された第1のダイヤフラム、第2のダイヤフラム、および第3のダイヤフラムと、
前記第1のピストンと前記第1のダイヤフラムにより形成される第1のピストン部、前記第2のピストンと前記第2のダイヤフラムにより形成される第2のピストン部、および前記第3のピストンと前記第3のダイヤフラムにより形成される第3のピストン部のそれぞれが中心軸方向に沿ってピストン運動ができるように配置されたシリンダ部であって、前記第1のダイヤフラム、前記第2のダイヤフラム、および前記第3のダイヤフラムの周縁部を固定しているシリンダ部と、
前記第1のピストン部のさらに前方に形成され、前記主ロッドの先端部と当接可能となり弁開閉できる弁機構体と、
前記第3のピストン部よりもさらに後方に配置され、スイッチ作用板バネを介して実質的にシリンダ部と連結されるとともに、スイッチ作用板バネの反転領域で中心軸方向に移動可能であるとともに、スイッチ作用板バネの後方または前方への反転により気体供給装置のスイッチのオンオフ作用を行うスイッチ作用ブロック体と、
前記第1のピストン部と前記弁機構体で区画される第1室と、
前記第1のピストン部と前記第2のピストン部とで区画される第2室と、
前記第2のピストン部と前記第3のピストン部とで区画される第3室と、
前記第3のピストン部と前記スイッチ作用ブロック体およびスイッチ作用板バネで実質的に区画される第4室と、
前記第1室よりもさらに前方に形成されるとともに、前記弁機構体により区画される第5室とを有し、
前記第1室および前記第3室は、エアバックに連通されており、
前記第2室、前記第4室、および前記第5室は、大気開放になっており、
前記第2のピストン部は、ピストン付勢部材によって、一定力で後方に付勢されており、
前記弁機構体は、弁座と、この弁座と当接できる弁体と、この弁体を一定力で後方に付勢する弁付勢部材とを有しており、
前記主ロッドは、前記弁機構体の弁体と当接して弁体を開けるための係合先端面と、前記スイッチ作用ブロック体の前面と当接したまま後方に移動させて押し続けて、前記スイッチ作用板バネを後方に反転させて気体供給装置のスイッチをオンさせるように作用させる第1の係合面と、前記スイッチ作用ブロック体の内部に形成された空洞部に挿入されるととともに軸方向に一定の遊びをもって摺動可能に装着され、前記空洞部の前面域に係合されるとともに、前記スイッチ作用板バネを前方に反転させて気体供給装置のスイッチをオフさせるように作用させる第2の係合面とを有してなることを特徴とする表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項2】
前記スイッチ作用板バネは、複数の板バネを前記スイッチ作用ブロック側からシリンダ部側に向けて体放射状に配置させてなる請求項1に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項3】
前記スイッチ作用板バネは、前記スイッチ作用ブロックとシリンダ部側を繋ぐ皿バネである請求項1に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項4】
前記ピストン付勢部材は、前記第2室内に配置された圧縮バネであり、一定力で前記第2のピストン部を後方に付勢するように配置されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項5】
前記弁付勢部材は、前記第5室内に配置された圧縮バネであり、一定力で前記弁体を後方に付勢するように配置されている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項6】
前記スイッチ作用板バネは、後方または前方への反転により前記スイッチ作用ブロックをバネ反転領域間で駆動させてなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項7】
前記空気圧調整機構部は、チェック弁を介して前記エアバックへの気体供給を可能とするエアポンプを有してなる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項8】
前記空気圧調整機構部は、前記エアバックへの気体供給を可能とする気体供給タンク、第1の切り換え弁、減圧弁、およびチェック弁(一方向弁)を順次有する気体供給回路を有してなる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項9】
前記輸送対象物である表示パネルは、その平面の大きさが1500mm×1840mm以上である請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項10】
前記輸送対象物である表示パネルは、ガラス基板または液晶パネルである請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項11】
前記エアバックは、天然ゴム、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーの弾性体を主材料とする袋体から構成されてなる請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項12】
前記エアバックの主材料となる弾性体は、その肉厚部に基布が埋設されてなる請求項11に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項13】
前記押圧用平板は、前記エアバックの圧力が前記積層体に均一にかかるように作用すべく剛性を備えた樹脂プレート、セラミックプレート、又は金属プレートである請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項14】
圧力調整対象物となるエアバックへ連通されて用いられ、圧力制御のためのスイッチとして作用する圧力調整スイッチ機構であって、
前記圧力調整スイッチ機構は、
中心軸方向に移動可能に配置された主ロッドと、
前記主ロッドの先端部から所定の間隔を空けて順次、主ロッドに固定された第1のピストン、第2のピストン、および第3のピストンと、
前記第1のピストン、前記第2のピストン、および前記第3のピストンに、ぞれぞれ、取り付けられて一体化された第1のダイヤフラム、第2のダイヤフラム、および第3のダイヤフラムと、
前記第1のピストンと前記第1のダイヤフラムにより形成される第1のピストン部、前記第2のピストンと前記第2のダイヤフラムにより形成される第2のピストン部、および前記第3のピストンと前記第3のダイヤフラムにより形成される第3のピストン部のそれぞれが中心軸方向に沿ってピストン運動ができるように配置されたシリンダ部であって、前記第1のダイヤフラム、前記第2のダイヤフラム、および前記第3のダイヤフラムの周縁部を固定しているシリンダ部と、
前記第1のピストン部のさらに前方に形成され、前記主ロッドの先端部と当接可能となり弁開閉できる弁機構体と、
前記第3のピストン部よりもさらに後方に配置され、スイッチ作用板バネを介して実質的にシリンダ部と連結されるとともに、スイッチ作用板バネの反転領域で中心軸方向に移動可能であるとともに、スイッチ作用板バネの後方または前方への反転により気体供給装置のスイッチのオンオフ作用を行うスイッチ作用ブロック体と、
前記第1のピストン部と前記弁機構体で区画される第1室と、
前記第1のピストン部と前記第2のピストン部とで区画される第2室と、
前記第2のピストン部と前記第3のピストン部とで区画される第3室と、
前記第3のピストン部と前記スイッチ作用ブロック体およびスイッチ作用板バネで実質的に区画される第4室と、
前記第1室よりもさらに前方に形成されるとともに、前記弁機構体により区画される第5室とを有し、
前記第1室および前記第3室は、エアバックに連通されており、
前記第2室、前記第4室、および前記第5室は、大気開放になっており、
前記第2のピストン部は、ピストン付勢部材によって、一定力で後方に付勢されており、
前記弁機構体は、弁座と、この弁座と当接できる弁体と、この弁体を一定力で後方に付勢する弁付勢部材とを有しており、
前記主ロッドは、前記弁機構体の弁体と当接して弁体を開けるための係合先端面と、前記スイッチ作用ブロック体の前面と当接したまま後方に移動させて押し続けて、前記スイッチ作用板バネを後方に反転させて気体供給装置のスイッチをオンさせるように作用させる第1の係合面と、前記スイッチ作用ブロック体の内部に形成された空洞部に挿入されるととともに軸方向に一定の遊びをもって摺動可能に装着され、前記空洞部の前面域に係合されるとともに、前記スイッチ作用板バネを前方に反転させて気体供給装置のスイッチをオフさせるように作用させる第2の係合面とを有してなることを特徴とする圧力調整スイッチ機構。
【請求項15】
前記スイッチ作用板バネは、複数の板バネを前記スイッチ作用ブロック側からシリンダ部側に向けて体放射状に配置させてなる請求項14に記載の圧力調整スイッチ機構。
【請求項16】
前記スイッチ作用板バネは、前記スイッチ作用ブロックとシリンダ部側を繋ぐ皿バネである請求項14に記載の圧力調整スイッチ機構。
【請求項17】
前記ピストン付勢部材は、前記第2室内に配置された圧縮バネであり、一定力で前記第2のピストン部を後方に付勢するように配置されている請求項14ないし請求項16のいずれかに記載の圧力調整スイッチ機構。
【請求項18】
前記弁付勢部材は、前記第5室内に配置された圧縮バネであり、一定力で前記弁体を後方に付勢するように配置されている請求項14ないし請求項17のいずれかに記載の圧力調整スイッチ機構。
【請求項19】
前記スイッチ作用板バネは、後方または前方への反転により前記スイッチ作用ブロックをバネ反転領域間で駆動させてなる請求項14ないし請求項18のいずれかに記載の圧力調整スイッチ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−216972(P2007−216972A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36187(P2006−36187)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】