説明

圧延材接合装置

【目的】 先行圧延材と後続圧延材とをピンチロールやテーブルローラで支持しながら、接合中の局部的冷却を防止する。
【構成】 ルーパ60の他に、圧延ライン方向に往復移動する巻戻し機30及び接合機40を具備することにより、先行圧延材5aと後続圧延材5bとを接合機40によって接合する間は、巻戻し機30及び接合機40を同一速度V3 で同一距離Lだけ往復移動させて接合中の先行圧延材5a及び後続圧延材5bを圧延ライン方向に往復移動させ、これによってピンチロール7及びテーブルロール8等による圧延材の接触個所を変動させてこの接触による局部的冷却を防止する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は連続熱間圧延ラインにおける圧延材接合装置に関し、特に、先行圧延材の後端と後続圧延材の先端とを接合する際の、圧延材走行停止による局部的冷却を防止するための改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、帯鋼の熱間圧延においては、粗圧延機と仕上圧延機との間で先行圧延材と後続圧延材とを接続することにより、仕上圧延を連続して行う「連続熱間圧延」が開発されている。
【0003】
しかし、この先行と後続の圧延材間の接続のために圧延材を数10秒間停止させるので、その間、圧延材がテーブルローラやピンチロール等によって局部的に冷却されて降温するという不都合がある。
【0004】
この局部的冷却を防止する従来技術として、特開昭61−92705号公報、特開昭64−78605号公報で開示された「連続熱間圧延ラインでの局部冷却防止方法」が知られている。具体的には下記の通りである。
【0005】
〔第1従来例〕:特開昭61−92705号公報の方法は、図2に示すように、先行圧延材5aと後続圧延材5bとを接合機4によって接合する時にはルーパ6よりも上流の先行圧延材5a及び後続圧延材5bの走行を停止させるので、これら圧延材5a,5bに対するピンチロール7及びテーブルローラ8を破線で示す位置に退避させて先行圧延材5a及び後続圧延材5bから離すことにより、その接触を解除して局部的冷却を防止するものである。
【0006】
即ち、図2において、巻取り機1が粗圧延機からの粗圧延材をコイル状に巻き取る。このコイル2が巻取り機1からクレードル3上に移し替えられ、そこから粗圧延材が巻き戻されてピンチロール7とテーブルローラ8を経て接合機4に送り込まれる。接合機4では、先行圧延材5aの後端部が到着すると、この後端部をクランパ9で挾み付け、同時に、接合機4とルーパ6間のピンチロール7とテーブルローラ8を退避させる。次いで、後続圧延材5bの先端部が到着したとき、この先端部をクランパ9で挾み付け、同時に、クレードル3と接合機4間のピンチロール7とテーブルローラ8を退避させる。このように、先行圧延材5aの後端部と後続圧延材5bの先端部をクランパ9,9で挾み付けることにより、接合機4が両圧延材5a,5bを接合する。その後、クランパ9,9を解除し、またピンチロール7とテーブルローラ8を実線の位置に復帰させて、両圧延材5a,5bをルーパ6を通して仕上圧延機に連続的に送る。
【0007】
〔第2従来例〕:特開昭64−78605号公報の方法は、図3、図4に示すように、大型ルーパ10の入側ピンチロール11の前段に昇降ロール12とガイドローラ13とからなる小型ルーパ14を設置し、先行圧延材15aの後端部が静止している間に、大型ルーパ10の放板開始と同時に昇降ロール12も下降させて先行圧延材15aを放板して、入側ピンチロール11、昇降ロール12及びガイドローラ13を回転させることにより、局部的冷却を防止するものである。
【0008】
即ち、図3、図4において、接合機16で先行圧延材15aと後続圧延材15bとを接合する前に、入側ピンチロール11により高速で先行圧延材15aを大型ルーパ10に送り込んで接合に要する時間分の必要長だけ先行圧延材15aを蓄板し、これの後端部を静止させておく。大型ルーパ10に必要長蓄板すると、その時点で小型ルーパ14の昇降ロール12を上昇させて、先行圧延材15aの後端部静止時間中に入側ピンチロール11が微動するに要する蓄板量を確保しておく。その後、大型ルーパ10の放板開始と同時に小型ルーパ14の昇降ロール12も下降を開始する。この昇降ロール12の下降により、先行圧延材15aはその後端部が静止した状態その蓄板分が小型ルーパ14から放板され、大型ルーパ10へ送られる。従って、入側ピンチロール11、昇降ロール12、ガイドローラ13が回転し、局部的冷却が防止される。なお、図中の符号で16は接合機、17は仕上圧延機を示す。
【0009】
【考案が解決しようとする課題】
第1従来例(図2)では、先行圧延材5a及び後続圧延材5bに対するピンチロール7及びテーブルローラ8の接触を解除すると、これら先行圧延材5a及び後続圧延材5bを支持する手段が無くなるため、下方に垂れ下がり、張力が作用することになり、材料の形状に悪影響を与える。
【0010】
第2従来例(図3、図4)では、小型ルーパ14よりも上流の先行圧延材15a及び後続圧延材15bは静止したままであるので、これらの圧延材15a,15bを支持する図示されていないテーブルローラやピンチロールと各圧延材15a,15bの被支持部位とが、接合に要する時間中だけ静止状態で接触し、局部的に冷却されてしまう。従って、この局部的冷却によって、仕上圧延機17による仕上圧延時に、圧延材15の寸法精度及び品質の低下を招くことになる。
【0011】
本考案は上述した従来技術の問題点を解消した圧延材接合装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本考案による圧延材接合装置の構成は、熱間粗圧延された先行圧延材の後端と後続圧延材の先端とを仕上圧延の前に接合して連続化する、ルーパを具備する形式の圧延材接合装置において、圧延ライン方向に往復移動する巻戻し機と、この巻戻し機の圧延ライン下流に配置された、巻戻し機と同調して圧延ライン方向に往復移動する接合機とを具備してなることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
先行圧延材の後端と後続圧延材の先端とを接合するために走行を停止させる間の仕上圧延に要する長さの先行圧延材をルーパに蓄板し、先行圧延材の後端と後続圧延材の先端とを接合機がクランプして接合する。この接合の間、接合機及び巻戻し機を同調して往復移動させる。これにより、ルーパから上流のテーブルローラやピンチロール等に支持あるいは挾持された先行圧延材及び後続圧延材が往復移動し、従ってテーブルローラやピンチロール等との接触個所が変動して、局部的冷却を防止する。ルーパは、巻戻し機及び接合機の往復移動の速度と仕上圧延機の圧延速度とを合成した速度で作動させる。
【0014】
【実施例】
以下、図1を参照して本考案の一実施例を説明する。図1は連続熱間圧延ラインにおける圧延材接合に係る部分の概念を示す側面図である。
【0015】
図1において、圧延ラインの上流から順に、巻取り機20、巻戻し機30、接合機40及びルーパ60が配置されている。巻取り機20は図示省略の粗圧延機から粗圧延材をコイル状に巻き取る。7はピンチロール、8はテーブルローラである。巻戻し機30は粗圧延材のコイル2を巻き戻して接合機40に送る。接合機40は巻戻し機30と同調して圧延ライン方向に往復移動しながら、先行圧延材5aの後端と後続圧延材5bの先端とを接合する。ルーパ60は接合のために走行を停止する間の仕上圧延に要する長さの先行圧延材5aを蓄板し、図示省略の仕上圧延機に送る。
【0016】
巻戻し機30には断熱材がコーティングされた1対のロール31が装設されていて、このロール31が車輪32を介してレール34上を油圧シリンダ33によって圧延ライン方向に移動距離Lだけ往復移動する。ロール31上で粗圧延材のコイル2が巻戻される。
【0017】
接合機40にはクランプ41a,41bが装設されていて、接合機40は車輪42を介してレール44上を油圧シリンダ43によって圧延ライン方向に巻戻し機30と同一速度V3 で同一の移動距離Lだけ往復移動する。
【0018】
ルーパ60は、先行圧延材5aを巻回する昇降ロール61と、この昇降ロール61を懸吊して昇降させる油圧シリンダ62とからなる。
【0019】
上記の各油圧シリンダ33,43,62は同調して作動するようにしてある。
【0020】
次に、圧延材接合の動作を説明する。図示省略の仕上圧延機へ送給している先行圧延材5aのルーパ60入側での送給速度V2 を圧延速度V1 よりも速くしてルーパ60に先行圧延材5aを蓄板し、ルーパ60の昇降ロール61が上限位置に達したときに先行圧延材5aの後端部に後続圧延材5bの先端部が接するようにし、その状態になったとき、接合機40のクランプ41a,41bよって両圧延材5a,5bを挾持すると同時に、ルーパ60の昇降ロール61を下降させて巻戻し機30及び接合機40を速度V3 で一緒に往復移動させながら接合する。
【0021】
この往復移動によって、昇降ロール61から上流の先行圧延材5a及び後続圧延材5bが圧延ライン方向に往復移動し、これに伴いピンチロール7及びテーブルローラ8が速度V3 で正転又は逆転する。
【0022】
ここで、ルーパ60の昇降ロール61の下降速度hは下記(イ)、(ロ)のようにする。
(イ)巻戻し機30と接合機40が後退のとき:h=(V1 +V3 )/2 (ロ)巻戻し機30と接合機40が前進のとき:h=(V1 −V3 )/2
【0023】
上記の接合が完了した後もルーパ60が上昇形態にある間は昇降ロール61の下降を継続し、蓄板量がなくなるとその下降を停止すると共に、巻戻し機30と接合機40の往復移動を停止し、以降、ピンチロール7を駆動して後続圧延材5bを仕上圧延機へ送給し、連続して圧延する。
【0024】
そして、後続圧延材5bの巻戻し機30からの送給速度V2 を圧延速度V1 よりも少し速め、昇降ロール61を徐々に上昇させてルーパ60に蓄板し、次の接合に備えておく。
【0025】
巻戻し機30上のコイル2が全て巻戻された後は、巻取り機20上のコイル2を巻戻し機30上に移動して直ちに巻戻しを開始し、接合機40に高速で送給して次の接合を行う。
【0026】
上述のように、巻戻し機30及び接合機40の往復移動によって、先行圧延材5a及び後続圧延材5bともに接合時に停止せず、これらに接するピンチロール7及びテーブルローラ8は常に回転し、先行圧延材5a及び後続圧延材5bの局部的冷却を防止している。
【0027】
なお、巻戻し機30と接合機40は共通の往復移動装置を用いても良い。
【0028】
【考案の効果】
本考案による圧延材接合装置では、ルーパの他に、圧延ライン方向に往復移動する巻戻し機及び接合機を具備するので、先行圧延材と後続圧延材とを接合機によって接合する間は、巻戻し機及び接合機を往復移動させて接合中の先行圧延材及び後続圧延材を圧延ライン方向に往復移動させることにより、ピンチロール及びテーブルローラ等による圧延材の接触個所が変動し、従って、この接触による局部的冷却を防止することができる。つまり、本考案によれば、ピンチロールやテーブルローラ等による圧延材の支持を確保しながら局部的冷却を防止できるから、仕上圧延における圧延材の寸法精度及び品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例である連続熱間圧延ライン中の要部を概念的に示す側面図。
【図2】従来の連続熱間圧延ライン中の要部を概念的に示す側面図。
【図3】従来の他の連続熱間圧延ライン中の要部を概念的に示す側面図。
【図4】図3中の要部を拡大して示す斜視図。
【符号の説明】
2 粗圧延材のコイル
5a 先行圧延材
5b 後続圧延材
7 ピンチロール
8 テーブルローラ
20 巻取り機
30 巻戻し機
31 ロール
32 車輪
33 油圧シリンダ
34 レール
40 接合機
41a,41b クランプ
42 車輪
43 油圧シリンダ
44 レール
60 ルーパ
61 昇降ロール
62 油圧シリンダ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 熱間粗圧延された先行圧延材の後端と後続圧延材の先端とを仕上圧延の前に接合して連続化する、ルーパを具備する形式の圧延材接合装置において、圧延ライン方向に往復移動する巻戻し機と、この巻戻し機の圧延ライン下流に配置された、巻戻し機と同調して圧延ライン方向に往復移動する接合機とを具備してなることを特徴とする圧延材接合装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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