説明

圧接コネクタ及びワイヤハーネスの製造方法

【課題】ハウジング間で電線を切断する際に圧接端子から抜けることを効果的に防止する。
【解決手段】電線6を圧接可能な複数の圧接端子13を所定面上で平行に収容した2つの第1、第2ハウジング2,3と、両ハウジング2,3を所定面と直交する厚み方向に重ね合わせて結合可能な結合手段(係止突起9及び弾性片11)と、結合手段による両ハウジング2,3の結合状態で両ハウジング2,3間で対応する圧接端子13,13同士を互いに電気的接続させる導通手段(導通部17)と、を備え、結合手段による両ハウジング2,3の結合により、両ハウジング2,3に圧接した電線6同士を圧接端子13を介して電気的接続可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のワイヤハーネスの製造に用いられる圧接コネクタと、その圧接コネクタを用いたワイヤハーネスの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
圧接コネクタは、例えば特許文献1に示すように、両端に電線の挿入口を複数並設したハウジング内に、電線の圧接端子を複数収容して形成されるものが知られている。この圧接端子には、隣接する一対の電線を圧接する2つの刃部が電線との直交方向で連設されており、分岐回路を形成する場合は、圧接端子を一対、電線との直交方向で電線1本分位置をずらせて配置し、3本の電線をハウジング内へ平行に挿通させて各圧接端子に2本の電線を圧接した状態で、圧接端子間の電線をニッパーやカッター等の工具で切断する。これにより、分岐数が2つの分岐回路が2組得られることになる。
また、このような圧接コネクタを用いたワイヤハーネスの製造方法としては、特許文献2に示すように、圧接端子を予めセットしている同一の圧接コネクタを電線群の両端に圧接接続した後、電線群の中間に所定間隔をあけて他の2つの圧接コネクタを圧接接続し、中間の圧接コネクタ間の電線を切断除去することで、同一種類或いは異種類の仮結束ハーネスを同時に接続可能とした発明が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3541540号公報
【特許文献2】特開平11−162272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2の製造方法においては、中間に圧接接続する圧接コネクタを結合して電線を電気的接続するために、圧接端子の基板の先端に雄或いは雌形状の電気接触部を設けて圧接コネクタにおける電線布線方向の前後端を開口させている。従って、電線は、圧接部分のみが圧接コネクタ内に没入して圧接端子に圧接され、その前後が圧接コネクタの外部へ引き出された格好となる。このため、中間の圧接コネクタ間の電線を切断除去する際に、電線に引っ張り力が加わると、電線が圧接端子から抜けるおそれが生じる。特に、電線を切断する際には、電線を引っ張って弛みをなくした状態で固定するため、電線が抜ける可能性は大きい。
【0005】
そこで、本発明は、2つのハウジングを用いて複数のワイヤハーネスを製造する利点を維持しつつ、ハウジング間で電線を切断する際に圧接端子から抜けることを効果的に防止でき、圧接による電気的接続の信頼性に優れる圧接コネクタと、その圧接コネクタを用いたワイヤハーネスの製造方法とをそれぞれ提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、圧接コネクタであって、電線を圧接可能な複数の圧接端子を所定面上で平行に収容した2つのハウジングと、両ハウジングを所定面と直交する厚み方向に重ね合わせて結合可能な結合手段と、結合手段による両ハウジングの結合状態で両ハウジング間で対応する圧接端子同士を互いに電気的接続させる導通手段と、を備え、結合手段による両ハウジングの結合により、両ハウジングに圧接した電線同士を圧接端子を介して電気的接続可能としたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、両ハウジングを、厚み方向の一面が開放面となるプレート状として、結合手段は、開放面同士を対向させた重ね合わせ状態で両ハウジングを結合することを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1の構成において、両ハウジングを、厚み方向の一面が開放面となるプレート状として、結合手段は、開放面を同じ側に向けた重ね合わせ状態で両ハウジングを結合することを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、ワイヤハーネスの製造方法であって、請求項1乃至3の何れかに記載の圧接コネクタの両ハウジングを、電線の布線方向に所定間隔をおいて配置し、電線を両ハウジング間に跨って布線して両ハウジングの圧接端子にそれぞれ圧接した後、両ハウジング間を亘る電線を切断除去し、両ハウジングを重ね合わせて結合手段で互いに結合することで、両ハウジングに圧接した電線同士を圧接端子を介して電気的接続することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び4に記載の発明によれば、ハウジング間で電線を切断する際に圧接端子から電線が抜けることを効果的に防止でき、圧接による電気的接続の信頼性が高くなる。また、ハウジング同士を厚み方向で組み付けて結合することで電線同士の電気的接続が可能となる。従って、圧接コネクタによって簡単且つ確実に電気的接続が可能な複数のワイヤハーネスを効率良く製造することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、両ハウジングの結合と同時に圧接端子や電線が両ハウジングで覆われる構成となる。従って、別途開放面を覆うカバー等を設ける必要がなくなり、製造コストや組付けの手間が低減される。また、プレート状のハウジングの採用によって高さ方向の寸法が小さくなるので、狭い場所でも自動車への組付けが容易に行える。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、電線を切断した後の作業がハウジングをそのまま重ねて結合する単純なものとなり、ハウジングや電線をひっくり返す必要がなくなって組付けの手間が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】圧接コネクタの斜視図である。
【図2】圧接端子の斜視図である。
【図3】両ハウジング間の電線を切断した状態の斜視図である。
【図4】両ハウジングの重ね合わせ状態を示す斜視図である。
【図5】両ハウジングの重ね合わせ状態を示す横断面図である。
【図6】圧接コネクタの変更例を重ね合わせ状態で示す横断面図である。
【図7】圧接端子の変更例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、圧接コネクタの一例を示す斜視図で、この圧接コネクタ1は、2つの第1ハウジング2と第2ハウジング3とから形成されている。
この第1、第2ハウジング2,3は、底板4に互いに平行な複数の仕切壁5,5・・を等間隔で立設することで、所定面となる底板4の上面に、電線6を布線可能な複数の収容溝7,7・・を形成したプレート状となっている。第1ハウジング2における収容溝7との直交方向(幅方向)の両端に位置する側壁8,8は、仕切壁5よりもやや高く形成されて、その外面には、外向きの返し形状となる一対の係止突起9,9がそれぞれ突設されている。
【0010】
一方、第2ハウジング3も、仕切壁5よりもやや高い幅方向両端の側壁10,10が、第1ハウジング2の側壁8,8と同じ間隔で形成されており、側壁10,10の長手方向の両端には、第1ハウジング2に第2ハウジング3を互いの側壁8,10が向かい合うように重ね合わせた状態で第1ハウジング2の側壁8,8に被さる一対の弾性片11,11がそれぞれ突設されて、各弾性片11に、重ね合わせ状態で係止突起9が係止する係止孔12が形成されている。この係止孔12を有する弾性片11及び係止突起9が本発明の結合手段となる。
【0011】
また、各ハウジング2,3上の収容溝7には、圧接端子13,13・・が、電線6との直交方向へ並列配置されている。この圧接端子13は、図2に示すように、電線6の受け刃14,14を長手方向に一対形成した断面U字状の金具で、各圧接端子13の長手方向の両端には、電線6の絶縁被覆をかしめ固定する一対のインシュレーションバレル15,15がそれぞれ立設されている。
さらに、各圧接端子13において、収容溝7の内面に沿って立設する左右の縦壁16,16の長手方向の中央部には、収容溝7への収容状態で上端が仕切壁5を越える高さとなる導通手段としての導通部17,17が突設されている。
【0012】
以上の如く構成された圧接コネクタ1を用いてワイヤハーネスを製造する場合、まずそれぞれ圧接端子13を収容溝7に配置した両ハウジング2,3を図示しない布線板上に布線方向で所定間隔をおいてセットした後、電線6を、両ハウジング2,3の圧接端子13,13間に配線して位置決めし、両ハウジング2,3の圧接端子13にそれぞれ圧接する。
電線6の圧接後、図3に示すように、両ハウジング2,3間に架設される電線6,6・・を、それぞれハウジング2,3際の二箇所において切断治具等を用いて切断する。
このとき、各電線6は両ハウジング2,3の圧接端子13,13間で直線状に架設されているため、電線6を切断する際に引っ張り力が加わっても電線6が圧接端子13から抜けるおそれはない。
【0013】
そして、図4に示すように、第2ハウジング3を裏返して、第1ハウジング2に第2ハウジング3を、両者の圧接端子13,13同士が向き合い、且つ側壁8,10同士が向き合うように対向させて、第1ハウジング2に第2ハウジング3を組み付ける。すると、図5に示すように、第1ハウジング2の側壁8,8と第2ハウジング3の側壁10,10との端面同士が当接すると共に、第2ハウジング3の弾性片11,11が第1ハウジング2の係止突起9,9に係止する。これにより両ハウジング2,3は一体に結合される。
この結合状態で、両ハウジング2,3間で対向する圧接端子13,13間では、互いの導通部17,17が相手側の導通部17,17に当接して電気的に接続される。よって、両ハウジング2,3でそれぞれ圧接される平面視で同一線上の電線6,6が圧接端子13を介して導通するワイヤハーネスが得られる。
【0014】
このように、上記形態の圧接コネクタ1及びワイヤハーネスの製造方法によれば、電線6を圧接可能な複数の圧接端子13を所定面上で平行に収容した2つの第1、第2ハウジング2,3と、両ハウジング2,3を所定面と直交する厚み方向に重ね合わせて結合可能な結合手段(係止突起9及び弾性片11)と、結合手段による両ハウジング2,3の結合状態で両ハウジング2,3間で対応する圧接端子13,13同士を互いに電気的接続させる導通手段(導通部17)と、を備え、結合手段による両ハウジング2,3の結合により、両ハウジング2,3に圧接した電線6同士を圧接端子13を介して電気的接続可能としている。
【0015】
この構成により、ハウジング2,3間で電線6を切断する際に圧接端子13から電線6が抜けることを効果的に防止でき、圧接による電気的接続の信頼性が高くなる。また、ハウジング2,3同士を厚み方向で組み付けて結合することで電線6同士の電気的接続が可能となる。従って、圧接コネクタ1によって簡単且つ確実に電気的接続が可能な複数のワイヤハーネスを効率良く製造することができる。
【0016】
特にここでは、両ハウジング2,3を、厚み方向の一面が開放面となるプレート状として、結合手段は、開放面同士を対向させた重ね合わせ状態で両ハウジング2,3を結合しているので、両ハウジング2,3の結合と同時に圧接端子13や電線6が両ハウジング2,3で覆われる構成となる。従って、別途開放面を覆うカバー等を設ける必要がなくなり、製造コストや組付けの手間が低減される。また、プレート状のハウジング2,3の採用によって高さ方向の寸法が小さくなるので、狭い場所でも自動車への組付けが容易に行える。
【0017】
なお、上記形態では、両ハウジングを正対させて圧接端子に設けた導通部同士を互いに当接させて電気的接続する構造としているが、仕切壁の厚みが大きければ、図6に示すように、各仕切壁5の上面から側面に掛けて、結合状態で相手側の導通部17が貫通する切欠き18をそれぞれ形成して、両ハウジング2,3を圧接端子13の縦壁16の厚さ分だけ幅方向にずらせて組み付けるようにしてもよい。このようにすれば、相手側の切欠き18に進入した導通部17が相手側の導通部17に隣接して電気的接続される。特にこの場合、導通部17が相手側の導通部17から離れる方向への動作を仕切壁5を利用して規制することができるため、電気的接続状態が安定すると共に、隣接する圧接端子13,13間での短絡も生じにくくなる。この切欠き18は、導通部17の差し込みに伴って隣接する導通部17側へ押圧する傾斜状とすることもできる。
【0018】
また、図6では、結合手段の変更例も併せて示している。ここでは第2ハウジング3の側壁10,10の間隔を第1ハウジング2の側壁8,8の間隔よりも大きくして、その内面に、第1ハウジング2の係止突起9と同じ係止突起19を設け、係止突起9,19同士の係止によって両ハウジング2,3の連結を可能としている。
但し、結合手段としてはこれらの構造に限らず、重ね合わせた両ハウジングに筒状のカバーを被せることで結合したり、一方のハウジングに設けたフック片を他方に設けた透孔に係止して結合したり、ベルトやテープを巻回したり等の他の手段も採用可能である。
【0019】
一方、導通手段も、互いの圧接端子に突設した導通部同士を当接させる構造に限定するものではなく、例えば一方のハウジング側の圧接端子の縦壁に突起を、他方のハウジング側の圧接端子の縦壁に、ハウジング同士の結合状態で突起が嵌合する凹部(切欠き)を形成する等して、縦壁同士が対向する位置で導通させることも可能である。勿論このように互いの圧接端子に手を加える場合に限らず、例えば一方の圧接端子の縦壁を両ハウジングの組付け面まで伸ばして導通部とし、単純に他方の圧接端子の縦壁に当接させて導通手段とする構造等としても差し支えない。
【0020】
さらに、上記形態では、両ハウジングを向かい合うように重ね合わせているが、開放面を同じ側に向けて重ねることもできる。この場合は上側のハウジングの底面に、下側のハウジングの圧接端子に突設した導通部が貫通して上側の圧接端子に接触する透孔を設けて導通手段を構成する必要がある。このように、開放面を同じ側に向けた重ね合わせ状態で両ハウジングを結合すれば、電線を切断した後の作業がハウジングをそのまま重ねて結合する単純なものとなり、上記形態のようにハウジングや電線をひっくり返す必要がないため、組付けの手間が軽減される。この場合、必要に応じて上側のハウジングの開放面はカバー等で覆う。
【0021】
そして、上記形態では、ハウジングからの電線の引出方向を互いに逆にして、平面視で両ハウジングの電線が連続直線状となる向きで重ね合わせているが、電線の引出方向を互いに同じ側にして、平面視で両ハウジングの電線が重なる向きで重ね合わせることも可能である。このようにすれば、圧接コネクタの位置で電線の布線方向を逆向きにさせることができる。また、隣り合う圧接端子を電線の長手方向にずらして配置して重ね合わせれば、電線の布線方向を交差状にすることもできる。
【0022】
一方、各ハウジングにおける収容溝や圧接端子の数も上記形態に限らず、電線の数等に合わせて適宜増減して差し支えない。特に圧接端子は、ハウジング間の各電線ごとに独立して設けて電線を一対一で電気的接続しているが、図7に示すように、2つの圧接端子13,13を幅方向で一対の連結部20,20によって互いに連結した二連端子21や、3以上の圧接端子を同様に連結した三連、四連の多連端子を併せて用いることも考えられる。このような二連或いは多連端子を用いて各ハウジングから引き出される電線の数を変えることで、所望の分岐回路が形成可能となる。例えば二連端子に圧接されて一方のハウジングから引き出される電線の数を一本にすれば、他方のハウジングから2つに分岐する分岐回路が形成可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1・・圧接コネクタ、2・・第1ハウジング、3・・第2ハウジング、4・・底板、5・・仕切壁、6・・電線、7・・収容溝、8,10・・側壁、9,19・・係止突起、11・・弾性片,12・・係止孔、13・・圧接端子、16・・縦壁、17・・導通部、21・・二連端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を圧接可能な複数の圧接端子を所定面上で平行に収容した2つのハウジングと、
前記両ハウジングを前記所定面と直交する厚み方向に重ね合わせて結合可能な結合手段と、
前記結合手段による前記両ハウジングの結合状態で前記両ハウジング間で対応する前記圧接端子同士を互いに電気的接続させる導通手段と、を備え、
前記結合手段による前記両ハウジングの結合により、前記両ハウジングに圧接した前記電線同士を前記圧接端子を介して電気的接続可能としたことを特徴とする圧接コネクタ。
【請求項2】
前記両ハウジングを、前記厚み方向の一面が開放面となるプレート状として、前記結合手段は、前記開放面同士を対向させた重ね合わせ状態で前記両ハウジングを結合することを特徴とする請求項1に記載の圧接コネクタ。
【請求項3】
前記両ハウジングを、前記厚み方向の一面が開放面となるプレート状として、前記結合手段は、前記開放面を同じ側に向けた重ね合わせ状態で前記両ハウジングを結合することを特徴とする請求項1に記載の圧接コネクタ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の圧接コネクタの前記両ハウジングを、前記電線の布線方向に所定間隔をおいて配置し、前記電線を前記両ハウジング間に跨って布線して前記両ハウジングの前記圧接端子にそれぞれ圧接した後、前記両ハウジング間を亘る前記電線を切断除去し、前記両ハウジングを重ね合わせて前記結合手段で互いに結合することで、前記両ハウジングに圧接した前記電線同士を前記圧接端子を介して電気的接続することを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187339(P2011−187339A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52146(P2010−52146)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】