説明

圧縮空気流量監視装置

【課題】加工機械において、圧縮空気の漏れの部位を判断できるようにする。
【解決手段】圧縮空気流量監視装置は、複数の空圧機器と、流量計と、複数の切換弁と、流量監視部と、表示部と、を備えている。複数の空圧機器は、加工機械に設けられ、空圧源から供給される圧縮空気を用いて動作する機器である。流量計は、コンプレッサから複数の空圧機器に供給される圧縮空気の流量を測定する。切換弁は、コンプレッサと複数の空圧機器との間に各空圧機器に対応して設けられ、複数の空圧機器に圧縮空気を供給・遮断する。流量監視部は、複数の空圧機器のいずれか一つに圧縮空気を供給し、その他の空圧機器に圧縮空気を供給しないように複数の切換弁を制御する。表示部は、流量監視部の制御によりいずれか一つの空圧機器が制御されたとき、流量計で測定された測定流量を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置、特に、加工機械に設けられた空圧機器の流量を監視する加工機械の圧縮空気流量監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、地球環境を守る上で二酸化炭素の削減を工場でも行うことが広く求められている。工作機械等の加工機械の動力源には、通常の電気や油圧とともに圧縮空気が広く使用されている。例えば、切り粉の除去やワークのチャックへの着座確認のために、圧縮空気が使用されている(例えば、特許文献1参照)。このため、加工機械のエネルギー消費の低減を図る上で、電気以外に圧縮空気の使用量を削減する必要がある。
【0003】
圧縮空気の場合、工場内に配置された配管中に漏れが生じることがある。この漏れを抑制することにより、圧縮空気の使用量を削減できる。このような圧縮空気の漏れを工場全体でチェックすることが従来行われている。例えば、圧縮空気の温度と圧力降下時間圧力上昇時間とにより圧力補正によりエアー漏れを検出することが行われている。
【特許文献1】特公平7−112660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、工場全体の圧縮空気の漏れを計測しているので、工場のいずれの部位で漏れが生じているかを判断できない。
【0005】
本発明の課題は、加工機械において、圧縮空気の漏れの部位を判断できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧縮空気流量監視装置は、複数の空圧機器と、流量測定手段と、複数のバルブ手段と、バルブ制御手段と、表示手段と、を備えている。複数の空圧機器は、加工機械に設けられ、空圧源から供給される圧縮空気を用いて動作する機器である。流量測定手段は、空圧源から複数の空圧機器に供給される圧縮空気の流量を測定する手段である。バルブ手段は、空圧源と複数の空圧機器との間に各空圧機器に対応して設けられ、複数の空圧機器に圧縮空気を供給・遮断するものである。バルブ制御手段は、複数の空圧機器のいずれか一つに圧縮空気を供給し、その他の空圧機器に圧縮空気を供給しないように複数のバルブ手段を制御するものである。表示手段は、バルブ制御手段の制御によりいずれか一つの空圧機器が制御されたとき、流量測定手段で測定された測定流量を表示するものである。
この圧縮空気流量監視装置では、例えば、1日の作業開始時や作業終了時等の所定のタイミングでバルブ制御手段がバルブ手段を制御すると、一つの空圧機器だけに圧縮空気が供給される。圧縮空気が供給されると、そのときの流量計測手段の流量測定結果が表示手段に表示される。ここでは、空圧機器の制御に使用される複数のバルブ手段を制御して一つの空圧機器毎の流量を知ることができる。このため、バルブ制御手段によりバルブ手段を一つずつ制御して一つずつ空圧機器の流量を見ることにより、エアー漏れを検出するための新たな計測器を各空圧機器に設けることなく、圧縮空気が漏れている部位を判断することができる。
【0007】
バルブ制御手段は、複数のいずれか一つの空圧機器にだけ圧縮空気を順次供給するように複数のバルブ手段を制御しても良い。この場合には、空圧機器を一つずつ自動的にスキャンしてそれぞれの流量を表示できる。このため、すべての空圧機器の流量を順次見ることができ、圧縮空気の漏れを迅速に判断できる。
【0008】
バルブ制御手段によりバルブ手段が制御されたときの各空圧機器の測定流量の履歴を記憶する測定流量履歴記憶手段と、測定流量記憶手段に記憶された測定流量の履歴に基づく基準流量と、各空圧機器の測定された測定流量とを比較する流量比較手段と、をさらに備え、表示手段は、測定流量と基準流量との比較結果を空圧機器毎にさらに表示しても良い。この場合、測定流量と、基準流量とが比較されるので、基準流量を基準にして流量の増加を判断することができ、圧縮空気の漏れをより正確に判断できる。
【0009】
基準流量と測定流量とが所定量以上離反している場合、供給異常と判断する異常判断手段と、供給異常と判断すると、加工機械を停止させる異常終了手段と、をさらに備えても良い。この場合、供給異常を自動的に判断できるとともに、供給異常が生じると、ただちに加工機械が停止されるので、圧縮空気漏れの供給異常が発生してもすぐにその供給異常に対処できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一つの空圧機器の流量を知ることができるので、バルブ制御手段によりバルブ手段を一つずつ制御して一つずつ空圧機器の流量を見ることにより、圧縮空気が漏れている部位を判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.加工機械の全体構成
図1及び図2において、本発明の一実施形態を搭載した加工機械1は、例えば、CNC平行2軸旋盤であり、旋盤本体10と、旋盤本体10の加工部にワークWを搬入・搬出するためのローダ12と、ローダ12からワークWを受け取るための搬出コンベア14と、加工後の切粉を排出するチップコンベア16と、ローダ12及び旋盤本体10との間でワークWを受け渡しする反転装置18と、を備えている。また、加工機械1には、旋盤本体10及びローダ12を操作するための操作盤20と、操作盤20により操作可能な制御盤22と、が設けられている。
【0012】
2.旋盤本体の構成
旋盤本体10は、フレーム部24と、フレーム部24に平行に並設されたモータ駆動される1対の主軸部26a,26bと、主軸部26a,26bの外側に配置されたモータ駆動されるタレット部28a,28bと、を有している。
【0013】
フレーム部24の前部には左右に開く1対のシャッター24a,24bが設けられている。シャッター24a,24bは後述するエアーシリンダ51a,51b(図3参照)により開閉駆動されている。なお、図1では、シャッター24a,24bが開いた状態を示し、図2では、閉じた状態を示している。シャッター24a,24bには、シャッター24a,24bの開状態及び閉状態を検出するための図示しない開センサ及び閉センサが設けられている。
【0014】
フレーム部24の背面には、操作盤20により操作される制御盤22が収納される制御ボックス23(図2)が設けられている。制御ボックス23の側部(例えば、図1及び2では左側)には、空圧パネル25が設けられている。空圧パネル25には、エアーシリンダ51a,51b等の空圧機器を制御するための切換弁(バルブ手段の一例)と、フィルターや減圧弁やオイラー等の補機類等と、がまとめて取り付けられている。また、空圧パネル25には、加工機械1に供給される圧縮空気の流量を計測する流量計(流量計測手段の一例)50も取り付けられている。流量計50は、例えば、単位時間(例えば1分)当たりの流量(例えばNm/min)を測定可能である。
【0015】
主軸部26a,26bには、ワークWを保持可能なチャック27a,27bが設けられており、ワークWを回転させることができる。チャック27a,27bは、図示しない油圧シリンダにより開閉してワークWをチャックする。チャック27a,27bの上方には、チャック27a,27bの着座面に付着した切粉を飛ばすためのエアーブローノズル53a,53bが設けられている。また、チャック27a,27bには、ワークWが正常に取り付けられているか否かを検出するための圧縮空気を利用した後述する着座センサ54a,54b(図3参照)が設けられている。着座センサ54a,54bは、チャック27a,27bにワークWにより塞がれるように設けられた空気噴出口55a,55bの圧力が所定値に達したか否かを検出する。この検出結果により、ワークWがチャック27a,27bに正常に装着されたか否かが判断される。
【0016】
タレット部28a,28bには、ワークWを旋削加工するための複数の工具T及びワークWを計測する計測具等を取り付け可能である。タレット部28a,28bは、工具を選択するために回転方向の複数(例えば8から10)の位置で位置決め可能であるとともに、切り込み方向(ワークWと接近・離反する方向)と、送り方向(主軸部26a,26bの軸方向)とに移動可能である。タレット部28a,28bには、加工中のワークWの切粉をエアーパージするための後述するエアーパージノズル56a,56b(図3参照)が設けられている。
【0017】
3.ローダの構成
ローダ12は、旋盤本体10の2つの主軸部26a,26bの並設方向(図1及び図2の左右方向)に沿って延びる門型のガイドレール30と、ガイドレール30に案内される台車部32と、を有している。台車部32には、昇降アーム32aが設けられ、昇降アーム32aの先端には、ワークWを保持する2つのチャック32b,32cが設けられている。チャック32c,32cは、主軸部26a,26bのチャック27a,27b及び搬出コンベア14とワークWを受け渡し可能なように45度傾いた平面と垂直な軸回りに回転する。チャック32b,32cは、後述するエアーシリンダ52a,52bにより開閉する。チャック32b,32cの開閉の終了は、図示しない開閉確認用のセンサにより判断できる。
【0018】
4.搬送コンベアの構成
搬出コンベア14は、加工が終了したワークWをローダ12から受け取ってローダ12の搬送方向と交差する方向(図2の上下方向)にワークWを搬送する。搬出コンベア14は、例えば、1対の無端チェーンを有するチェーンコンベアである。
【0019】
5.反転装置の構成
反転装置18は、ローダ12及び2つのチャック27a,27bとの間でワークWを受け渡し可能であり、かつワークWを180度反転可能である。反転装置18は、ワークWを保持可能な1対のチャック34a,34bを有している。チャック34a,34bは、後述するエアーシリンダ57a,57bにより開閉する。各チャック34a,34bは主軸部26a,26bの上方に配置されている。両チャック34a,34bは、チャック面が対向するように90度反転可能である。この反転は、後述するエアーシリンダ58a,58bにより行われる。また、チャック34aはチャック34bに接近・離反する方向にシフト(往復移動)可能である。この動作は後述するエアーシリンダ59により行われる。これにより、2つのチャック34a,34bの間でワークWを受け渡し可能であるとともに、ワークWを180度反転できる。チャック34a,34bの開閉、反転・復帰及び往復動作のそれぞれの終了は、図示しないそれぞれの確認用のセンサで判断できる。
【0020】
6.操作盤の構成
操作盤20は、主に旋盤本体10を数値制御するとともにローダ12を制御するためのものである。また、操作盤20は、操作盤20は、操作しやすい高さで、フレーム部24に上下の軸回りに、例えば90度程度旋回可能に取り付けられている。操作盤20は上部に配置された液晶ディスプレイからなる表示部20aと、表示部20aを除く部分に配置された操作キー部20bと、を有している。
【0021】
7.空圧回路の構成
加工機械1の空圧回路図を図3に示す。なお、図3に示す空圧回路図には、切換弁と制御対象の空圧機器のみを図示し、エアーフィルタやオイラーや減圧弁や消音器等の補機類の図示を省略している。各切換弁には、圧力を調整するための減圧弁が設けられており、供給圧力が最適になるように調整されている。
【0022】
図3において、複数のエアーシリンダや複数のノズルを含む空圧機器には、工場に設置された空圧源としてのコンプレッサ48から圧縮空気が供給される。コンプレッサ48から供給された圧縮空気は、流量計50を通過して各切換弁に供給される。
【0023】
シャッター24a,24bの開閉用のエアーシリンダ51a,51bには、速度調整弁61a,61bを介して切換弁71a,71bに接続されている。切換弁71a,71bは、5ポート3位置のノーマルオープンのダブルソレノイドバルブである。このため、手動でシャッター24a,24bを開閉可能である。
【0024】
エアーブローノズル53a,53bは、切換弁73a,73bに接続されている。切換弁73a,73bは、2位置3ポートのノーマルクローズのシングルソレノイドバルブである。
【0025】
着座センサ54a,54b及び空気噴出口55a,55bは、切換弁74a,74bに接続されている。切換弁74a,74bは、2位置3ポートのノーマルオープンのシングルソレノイドバルブである。着座センサ54a,54bは、前述したように所定の圧力(例えば0.3Mpa)でオンする圧力スイッチであり、チャック27a,27bに正常にセットされ、ワークWにより空気噴出口55a,55bが確実に塞がれるとオンするスイッチである。
【0026】
エアーパージノズル56a,56bは、タレット部28a,28bの回転しない部分に主軸部26a,26bに向けて配置されている。エアーパージノズル56a,56bは、切換弁75a,75bに接続されている。切換弁75a,75bは、2位置3ポートのノーマルクローズのシングルソレノイドバルブである。
【0027】
ローダ12のチャック32b,34cの開閉用のエアーシリンダ52a,52bは、切換弁72a,72bに接続されている。切換弁72a,72bは、5ポート3位置のノーマルクローズドのダブルソレノイドバルブである。
【0028】
反転装置18のチャック34a,34bの開閉用のエアーシリンダ57a,57bは、切換弁77a,77bに接続されている。切換弁77a,77bは、5ポート3位置のノーマルクローズドのダブルソレノイドバルブである。
【0029】
反転装置18のチャック34a,34bの反転用のエアーシリンダ58a,58bは、速度調整弁62a,62bを介して切換弁78に一括接続されている。したがって、チャック34a,34bは概ね同時に反転及び復帰動作を行う。切換弁78は、5ポート3位置のノーマルクローズドのダブルソレノイドバルブである。チャック34aのシフト(往復移動)用のエアーシリンダ59は、速度調整弁63を介して切換弁79に接続されている。切換弁79は、5ポート3位置のノーマルクローズドのダブルソレノイドバルブである。
【0030】
8.制御盤の構成
制御盤22は、加工機械1及びローダ12を数値制御する機能と、圧縮空気を用いて動作する空圧機器を制御して圧縮空気の流量を監視する機能と、を有している。以下の説明では圧縮空気の流量監視機能について主に説明する。
【0031】
制御盤22は、図4に示すように、1又は複数のマイクロコンピュータを有する制御部40と、空圧駆動回路43と、電気駆動回路44と、記憶部(測定流量履歴記憶手段の一例)45と、を有している。空圧駆動回路43は、制御部40に接続され、切換弁71a,71b〜79を駆動する。電気駆動回路44は、制御部40に接続され、主軸部26a,26bやタレット部28a,28bやローダ12を駆動するためのモータ等を駆動する。記憶部45には各種の情報が記憶されるが、特に、流量監視機能では、流量計50で測定された流量の履歴を各切換弁71a,71b〜79毎に記憶する。制御部40は、機能構成として、加工機械1及びローダ12を数値制御する数値制御部41と、圧縮空気の漏れを監視するための流量監視部(バルブ制御手段の一例)42と、を有している。流量監視部42は、切換弁を一つずつオンオフする。
【0032】
制御盤22には、操作盤20の表示部20a及び操作キー部20bが接続されている。また、着座センサ54a,54bと流量計50とが接続されている。空圧駆動回路43には、切換弁71a,71b〜79が接続されている。電気駆動回路44には、図示しない油圧ユニットのモータ、主軸部26a,26bのモータ、タレット部28a,28bのモータ、及び各種計測機器やセンサ類等を含む電気機器80が接続されている。
本発明の圧縮空気流量監視装置は、前述した流量監視部42と、切換弁71a,71b〜79と、エアーシリンダ51a,51b、52a,52b、57a,57b、58a,58b、59等の空圧機器と、流量計50と、で構成されている。
【0033】
9.流量監視部の制御動作
流量監視部42では、各切換弁71a,71b〜79を一つずつ順にオンオフ動作させて流量計50で測定された流量を取り込み、それを記憶部45に切換弁71a,71b〜79毎に順次記憶する。そして、測定された流量を表示するとともに、それより前に記憶部45に記憶された測定流量の履歴に基づく比較対照としての基準流量を読み出し、測定流量と基準流量とを切換弁毎に表示部20aに表示する。
【0034】
流量監視動作は、例えば、操作盤20の表示部20aに表示された加工機械全体のメニュー画面から操作キー部20bの操作により流量監視機能が選択されたタイミング(所定のタイミングの一例)でスタートする。なお、流量監視動作は、加工機械1の操作開始時や操作終了時等の所定のタイミングで自動的に行うようにしても良い。ただし、漏れ等の可能性がある場合のみ流量監視動作を手動でスタートさせる方がエネルギー消費の低減を図る上で有効である。
【0035】
流量監視動作がスタートすると、図5のステップS1でシャッター24aの開閉動作を行う。ステップS2では、シャッター24bの開閉動作を行う。ステップS3ではローダ12のチャック32bの開閉動作を行う。ステップS4では、ローダ12のチャック322cの開閉動作を行う。ステップS5では、反転装置18のチャック34aの開閉動作を行う。ステップS6では、反転装置18のチャック34bの開閉動作を行う。ステップS7では、反転装置18のチャック34aの反転・復帰動作を行う。ステップS8では、反転装置18のチャック34bの反転・復帰動作を行う。ステップS9では、反転装置18のチャック34aの往復のシフト動作を行う。これでエアーシリンダ関連の監視を終わる。続いてエアーの噴出に係る監視を行う。
【0036】
ステップS10では、エアーブローノズル53aの噴出動作を行う。ステップS10では、エアーブローノズル53bの噴出動作を行う。ステップS11では、エアーパージノズル56aの噴出動作を行う。ステップS12では、エアーパージノズル56bの噴出動作を行う。ステップS13では、上記各ステップの監視のなかで異常があったか否かを判断する、異常があった場合はステップS15に移行して加工機械1を停止させる。異常がない場合や加工機械1を停止させると、表示等の流量監視動作を終わって図示しない加工機械全体のメニュー画面に戻る。
【0037】
なお、空気噴出口55a,55bに関しては、チャック27a,27bにワークWをセットする必要があるとともに、空気消費量が少ないため、この実施形態では流量監視を行わない。したがって、流量監視動作において、切換弁74a,74bは動作させない。
【0038】
ステップS1のシャッター24aの開閉動作では、最初にシャッター24aの開動作時の漏れの監視を行う。図6のステップS21では、記憶部45に記憶されたシャッター開動作における基準流量RQ1aoを比較対照の流量として読み出す。この場合、後述するステップS23で直近に記憶された測定流量をその部位の基準流量RQ1aoとして読み出してもよいし、予め部位毎に記憶された基準流量RQ1aoを読み出しても良い。また、所定期間(例えば直近の1ヶ月間)に記憶された測定流量の移動平均等の平均値を求めて基準流量RQ1aoとして読み出しても良い。なお、以降の開閉動作の説明では開動作の場合は流量の符号の末尾に”o”を付し、閉動作の場合は”c”を付す。ステップS22では、切換弁71aを開方向のソレノイドを励磁する。これによりエアーシリンダ51aのシリンダロッドが例えば進出する。
【0039】
ステップS23では、流量計50で測定された測定流量Q1aoの取り込みを開始するとともに、取り込んだ測定流量Q1aoの記憶部45への記憶を開始する。ステップS24では、取り込んだ測定流量Q1aoと、読み出した基準流量RQ1aoとの表示部20aへの表示を開始する。ステップS25では、シャッター24aが完全に開いたか否かを判断する。この判断は、図示しないシャッター開閉確認用のセンサからの出力により行われる。ステップS26では、切換弁71aをオフする。
【0040】
ステップS27では、測定流量Q1aoの取り込み及び記憶部45への記憶を終了する。ステップS28では、測定流量Q1aoと比較対照の基準流量RQ1aoとの差が所定流量Q1soを超えているか否かを判断する。この所定流量Q1soは、例えば、基準流量RQ1aoの10〜20%以上の流量である。測定流量Q1aoと基準流量RQ1aoとの差が所定流量Q1soを超えていると判断すると、ステップS28からステップS29に移行する。ステップS29では、シャッター24aの開方向の測定流量Q1aoが異常であり、その管路のどこかで漏れが生じている可能性があることを告知するために異常表示を行い、ステップS31に移行する。
【0041】
一方、測定流量Q1aoと基準流量RQ1aoとの差が所定流量Q1so以内であると判断すると、ステップS31に移行し、ステップS31からステップS39でシャッター24aの閉動作の監視を行ない、図5に示すメインルーチンに戻る。閉動作の監視は基本的に開動作の監視と同様な処理であり、ステップS31からステップS40でステップS21からステップS30と同様な処理を行う。ただし、閉動作の基準流量RQ1acや測定流量Q1acや所定流量Q1scがシリンダロッドの差の分だけ少し小さい値になる点及び切換弁71aの閉方向のソレノイドを励磁する点が異なる。
【0042】
図5のステップS2のシャッター24bの開閉動作は、図6に示したシャッター24aの開閉動作と基本的に同じであるので説明を省略する。なお、エアーシリンダ51bは、エアーシリンダ51aと同等な仕様であり、開動作及び閉動作の測定流量Q1bo,Q1bc、基準流量RQ1bo,RQ1bc、及び所定流量Q1so,Q1scは、シャッター24aと同等な値になる。
【0043】
図5のステップS3のチャック34bの開閉動作では、最初にチャック34bの閉動作の監視を行う。図7のステップS41では、記憶部45に記憶されたチャック閉動作における基準流量RQ2acを比較対照の流量として読み込む。ステップS42では、切換弁72aを閉方向のソレノイドを励磁する。これによりエアーシリンダ52aのシリンダロッドが例えば進出する。
【0044】
ステップS43では、流量計50で測定された測定流量Q2acの取り込みを開始するとともに、取り込んだ測定流量Q2acの記憶部45への記憶を開始する。ステップS44では、取り込んだ測定流量Q2acと、読み込んだ基準流量RQ2acとの表示部20aへの表示を開始する。ステップS45では、チャック34bが完全に閉じたか否かを判断する。この判断は、図示しないチャック開閉確認用のセンサからの出力により行われる。ステップS46では、切換弁72aをオフする。
【0045】
ステップS47では、測定流量Q2acの取り込み及び記憶部45への記憶を終了する。ステップS48では、測定流量Q2acと比較対照の基準流量RQ2acとの差が所定流量Q2scを超えているか否かを判断する。この所定流量Q2scは、例えば、基準流量RQ2acの10〜20%以上の流量である。測定流量Q2acと基準流量RQ2acとの差が所定流量Q2scを超えていると判断すると、ステップS48からステップS49に移行する。ステップS49では、チャック34bの閉方向の測定流量Q2acが異常であり、その管路のどこかで漏れが生じている可能性があることを告知するために異常表示を行い、ステップS51に移行する。
【0046】
一方、測定流量Q2acと基準流量RQ2acとの差が所定流量Q2sc以内であると判断すると、ステップS51に移行し、ステップS51からステップS59でチャック34bの開動作の監視を行ない、図3に示すメインルーチンに戻る。
【0047】
チャック34bの開動作の監視は基本的に閉動作の監視と同様な処理であり、ステップS51からステップS60でステップS41からステップS41から50と同様な処理を行う。ただし、開動作の基準流量RQ2aoや測定流量Q2aoや所定流量Q2soがシリンダロッドの差の分だけ少し小さい値になる点及び切換弁72aの開方向のソレノイドを励磁する点が異なる。
【0048】
図5のステップS4のチャック34cの開閉動作は、図7に示したチャック34bの開閉動作と基本的に同じであるので説明を省略する。なお、切換弁72bを動作させる点が異なる。また、エアーシリンダ52bは、エアーシリンダ52aと同等な仕様であり、開動作及び閉動作の測定流量Q2bo,Q2bc、基準流量RQ2bo,RQ2bc、及び所定流量Q2so,Q2scは、チャック27aと同等な値になる。
【0049】
図5のステップS5及び6の反転装置18のチャック34a及び34bの開閉動作は、図7に示したチャック32b及びチャック32cの開閉動作と同じであるので説明を省略する。なお、切換弁77a,77bを開方向及び閉方向に動作させる点が異なる。また、エアーシリンダ57aはエアーシリンダ57bと同等な仕様である。したがって、チャック34a及び34bの開動作及び閉動作の測定流量Q3ao,Q3ac及びQ3bo,Q3bc、基準流量RQ3ao,RQ3ac及びRQ3bo,RQ3bc、並びに所定流量Q3so,Q3scは、両チャック32b,32cで同等な値になる。
【0050】
図5のステップS7及びステップS8の反転装置18のチャック34a,34bの反転動作並びにステップS9のチャック34aのシフト動作は、図6に示したシャッター24aの開閉動作と基本的に同じであるので説明を省略する。なお、切換弁78又は切換弁79を動作させる点が異なる。また、2つのエアーシリンダ58a,58bを一つの切換弁78で動作させている点が異なっている。
【0051】
図5のステップS10のエアーブローノズル53aの噴出動作では、図8のステップS61で記憶部45に記憶されたエアーブローノズル53aの噴出動作における基準流量RQ4aを比較対照の流量として読み込む。ステップS62では、切換弁73aのソレノイドを励磁する。これによりエアーブローノズル53aからエアーが噴出する。
【0052】
ステップS63では、流量計50で測定された測定流量Q4aの取り込みを開始するとともに、取り込んだ測定流量Q4aの記憶部45への記憶を開始する。ステップS64では、取り込んだ測定流量Q4aと、読み込んだ基準流量RQ4aとの表示部20aへの表示を開始する。ステップS65では、所定時間t1が経過したか否かを判断する。所定時間t1は、例えばエアーブローノズル53aの加工時の設定された噴出時間であり、例えば2秒である。ステップS66では、切換弁73aをオフする。これによりエアー噴出動作が終了する。
【0053】
ステップS67では、測定流量Q4aの取り込み及び記憶部45への記憶を終了する。ステップS68では、測定流量Q4aと比較対照の基準流量RQ4aとの差が所定流量Q4sを超えているか否かを判断する。この所定流量Q4sは、例えば、基準流量RQ4aの10〜20%以上の流量である。測定流量Q4aと基準流量RQ4aとの差が所定流量Q4sを超えていると判断すると、ステップS68からステップS69に移行する。ステップS69では、エアーブローノズル53aの測定流量Q4aが異常であり、その管路のどこかで漏れが生じている可能性があることを告知するために異常表示を行い、図5に示すメインルーチンに戻る。
【0054】
一方、測定流量Q1aoと基準流量RQ1aoとの差が所定流量Q1so以内であると判断すると、エアーブローノズル53aの噴出動作の監視を終了して図5に示すメインルーチンに戻る。
【0055】
図5のステップS11エアーブローノズル53bの噴出動作、図5のステップS12のエアーパージノズル56aの噴出動作、及び図5のステップS13のエアーパージノズル56bの噴出動作は、図8の噴出動作と基本的に同じであるので説明を省略する。なお、切換弁73b、75a、75bを動作させる点が異なる。また、エアーブローノズル53bの測定流量Q4b、基準流量RQ4b、及び所定流量Q4sは、測定流量Q4a、基準流量RQ4a、基準流量RQ4a、及び所定流量Q4sと同等な値になる。さらに、エアーパージノズル56a,56bの測定流量Q5a,Q5b、基準流量RQ5a,RQ5b、及び所定流量Q5sは、同等な値になる。
【0056】
図9に表示部20aの表示画面の一例を示す。
図9には、監視動作中には、左右のシャッター24a,24b、左右の主軸部26a,26bのチャック27a,27b等の各部位の現在の測定流量と、基準流量とがリッター/分の単位で表示されるとともに、その右側に記憶部45に記憶された測定流量の履歴及び基準流量が、例えば折れ線及び直線のグラフで表示されている。ここで、画面の一番下に、右側のタレット部28bに設けられた右エアーパージノズル56bの配管系統でエアー漏れ等の異常が発生したことが報知され加工機械1の停止が予告されている。そして、前述したようにすべての監視動作が終了すると、異常が発生した場合は、図5のステップS15で加工機械1が停止される。なお、図9では、エアーシリンダの動作等の往復移動する動作については、一方の動作についての流量のみ図示しているが、実際には両方の動作の流量が表示される。
【0057】
10.特徴
(1)
この流量監視部42では、1日の作業開始時や作業終了時等の所定のタイミングで流量監視部42が切換弁を制御すると、一つの空圧機器だけに圧縮空気が供給される。圧縮空気が供給されると、そのときの流量計50の流量測定結果が表示部20aに表示される。ここでは、空圧機器の制御に使用される複数の切換弁を流量監視部42により制御して一つの空圧機器毎の流量を知ることができる。このため、流量監視部42により切換弁を一つずつ制御して一つずつ空圧機器の流量を見ることにより、エアー漏れを検出のための新たな計測器を各空圧機器に設けることなく、圧縮空気が漏れている部位を判断することができる。
【0058】
(2)
流量監視部42は、複数のいずれか一つの空圧機器にだけ圧縮空気を順次供給するように複数の切換弁を制御している。この場合には、空圧機器を一つずつ自動的にスキャンしてそれぞれの流量を表示できる。このため、すべての空圧機器の流量を順次見ることができ、圧縮空気の漏れを迅速に判断できる。
【0059】
(3)
基準流量と測定流量とが所定量(例えば、基準流量RQ2acの10〜20%以上の流量)以上離反していると供給異常と判断し、加工機械1を停止させている。この場合、圧縮空気の供給異常を自動的に判断できるとともに、供給異常が生じると、ただちに加工機械1が停止されるので、圧縮空気漏れの供給異常が発生してもすぐにその供給異常に対処できる。
【0060】
11.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
(1)
前記実施形態では、測定流量と基準流量との差が所定流量を超えるとエアーの供給異常を表示するとともに監視終了後に加工機械1を停止させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、測定流量と基準流量との差を複数段階に設定し、基準流量との差の大小により、基準流量との差が小さい場合は異常表示だけにし、大きい場合は機械の停止を合わせて行うようにしても良い。また、測定流量が異常に少ない場合にエアー詰まりと判断して加工機械1を停止するようにしても良い。
【0062】
(2)
前記実施形態では、CNC平行2軸旋盤を加工機械として例示したが、本発明は、圧縮空気を使用するすべての加工機械、例えば工作機械全般やプレス機械等に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、圧縮空気を利用する加工機械において圧縮空気が漏れている部位を確認できるため、圧縮空気を利用する加工機械の分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態が採用された加工機械の正面図。
【図2】その加工機械の平面図。
【図3】それに使用される空圧機器及び切換弁を示す空圧回路図。
【図4】加工機械の制御系の構成を示すブロック図。
【図5】バルブ制御部の流量監視動作を示す制御フローチャート。
【図6】そのシャッター24a開閉動作を示す制御フローチャート。
【図7】そのチャック27a開閉動作を示す制御フローチャート。
【図8】そのエアーブローノズル53a噴出動作を示す制御フローチャート。
【図9】異常表示の一例を示す表示画面図。
【符号の説明】
【0065】
1 加工機械
20a 表示部(表示手段の一例)
42 流量監視部(バルブ制御手段の一例)
45 記憶部(測定流量履歴記憶手段の一例)
51a,51b,52a,52b,57a,57b エアーシリンダ(空圧機器の一例)
53a,53b エアーブローバルブ(空圧機器の一例)
56a,56b エアーパージバルブ(空圧機器の一例)
71a,71b〜79 切換弁(バルブ手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機械に設けられ、空圧源から供給される圧縮空気を用いて動作する複数の空圧機器と、
前記空圧源から前記複数の空圧機器に供給される前記圧縮空気の流量を測定するする流量測定手段と、
前記空圧源と前記複数の空圧機器との間に各空圧機器に対応して設けられ、前記複数の空圧機器に前記圧縮空気を供給・遮断する複数のバルブ手段と、
前記複数の空圧機器のいずれか一つに前記圧縮空気を供給し、その他の前記空圧機器に前記圧縮空気を供給しないように前記複数のバルブ手段を制御するバルブ制御手段と、
前記バルブ制御手段の制御によりいずれか一つの前記空圧機器が制御されたとき、前記流量測定手段で測定された測定流量を表示する表示手段と、
を備えた圧縮空気流量監視装置。
【請求項2】
前記バルブ制御手段は、前記複数のいずれか一つの空圧機器にだけ前記圧縮空気を順次供給するように前記複数のバルブ手段を制御する、請求項1に記載の圧縮空気流量監視装置。
【請求項3】
前記バルブ制御手段により前記バルブ手段が制御されたときの前記各空圧機器の前記測定流量の履歴を記憶する測定流量履歴記憶手段と、
前記測定流量履歴記憶手段に記憶された測定流量の履歴に基づく基準流量と、前記各空圧機器の測定流量とを比較する流量比較手段と、をさらに備え、
前記表示手段は、前記測定流量と前記基準流量との比較結果を前記空圧機器毎にさらに表示する、請求項1または2に記載の圧縮空気流量監視装置。
【請求項4】
前記基準流量と前記測定流量とが所定量以上離反している場合、前記空圧機器での供給異常と判断する異常判断手段を、
前記供給異常と判断すると、前記加工機械を停止させる異常終了手段と、をさらに備える、請求項3に記載の圧縮空気流量監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−99776(P2010−99776A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273451(P2008−273451)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】