説明

圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法

【課題】薄型化が可能であるとともに、製造の歩留まり及び品質が向上する圧電デバイスの提供。
【解決手段】圧電デバイスとしての水晶発振器は、水晶振動片30と、ICチップ20と、水晶振動片30及びICチップ20をベース部11にマウントし内部に収容するパッケージ10と、を備え、水晶振動片30が、厚み方向に貫通する貫通孔31を有し、ICチップ20が、平面視において、貫通孔31内でベース部11にマウントされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器などに代表される圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器、移動体通信機器などの様々な電子機器に用いられる圧電発振器などの圧電デバイスには、電子機器の小型化に伴い、更なる小型薄型化が要求されている。
この要求に応えるために、圧電デバイスの小型薄型化を目的とした、下記のような圧電デバイスの構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この圧電デバイスは、半導体集積回路(以下、ICチップという)と圧電振動子(以下、圧電振動片という)とがパッケージに内蔵されている。そして、圧電デバイスは、平面視において、圧電振動片が、ICチップと重なって配置され、ICチップをまたいだ状態で、パッケージのベース部にマウントされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−274653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記圧電デバイスは、平面視において、圧電振動片がICチップと重なって配置されていることから、その分、平面サイズを小型化できる。
しかしながら、上記圧電デバイスは、厚みに関して、ICチップの厚みに圧電振動片の厚みがそのまま上乗せされる構成であることから、薄型化に逆行してしまうという問題がある。
【0005】
また、上記圧電デバイスは、ICチップが圧電振動片よりベース部側に配置されていることから、必然的に、圧電振動片より先にICチップがベース部にマウントされる必要がある。
これにより、上記圧電デバイスは、後からマウントされた圧電振動片に不具合が発生した場合に、圧電振動片の交換などが極めて困難であることから、ICチップが良品であっても、そのまま廃棄されることになる。
したがって、上記圧電デバイスは、構成上の制約によって、良品のICチップが廃棄され得ることから、製造の歩留まりが低下するという問題がある。
【0006】
また、上記圧電デバイスは、ICチップが先にマウントされることから、その後の圧電振動片のマウント時に加わる熱的ストレスなどにより、ICチップの特性劣化及びICチップとベース部との接続部の信頼性の低下などが発生する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる圧電デバイスは、圧電振動片と、ICチップと、前記圧電振動片及び前記ICチップをベース部にマウントし内部に収容するパッケージと、を備え、前記圧電振動片が、厚み方向に貫通する貫通孔を有し、前記ICチップが、平面視において、前記貫通孔内で前記ベース部にマウントされていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、圧電デバイスは、圧電振動片が、厚み方向に貫通する貫通孔を有し、ICチップが、平面視において、貫通孔内でパッケージのベース部にマウントされている。
このことから、圧電デバイスは、ICチップの厚みと圧電振動片の厚みとの、いずれか厚い方の厚みだけが、圧電デバイスの総厚に反映されることにより、従来のような、平面視において、圧電振動片とICチップとが重なって配置されている場合と比較して、更なる薄型化を図ることができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる圧電デバイスは、前記ICチップが、フリップチップ実装により前記ベース部にマウントされていることが好ましい。
【0011】
これによれば、圧電デバイスは、ICチップがフリップチップ実装によりベース部にマウントされていることから、ICチップとベース部との電気的接続と機械的接続とがICチップのベース部側で一括して行われる。
このことから、圧電デバイスは、ICチップとベース部との電気的接続が、例えば、ワイヤーボンディングのようなワイヤーを用いて行われる場合と比較して、ワイヤーのループ高さの確保が不要な分、ICチップとパッケージのリッド(蓋)部との隙間を少なくできる。
したがって、圧電デバイスは、ICチップとベース部との電気的接続が、ワイヤーボンディングのようなワイヤーを用いて行われる場合と比較して、更なる薄型化を図ることができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる圧電デバイスは、前記圧電振動片が、ワイヤーボンディングにより前記ICチップと電気的に接続されているとともに、接着剤によって前記ベース部にマウントされていることが好ましい。
【0013】
これによれば、圧電デバイスは、圧電振動片が、ワイヤーボンディングによりICチップと電気的に接続されているとともに、接着剤によってベース部にマウントされている。
このことから、圧電デバイスは、接着剤に導電性がなくてもよいことにより、接着剤の選択肢が増える。
したがって、圧電デバイスは、例えば、圧電振動片のエージング特性に悪影響を与えるシロキサンなどのアウトガスの発生が、導電性接着剤より少ない非導電性接着剤を選択できる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる圧電デバイスは、前記圧電振動片が、前記接着剤によって前記ベース部に1箇所でマウントされていることが好ましい。
【0015】
これによれば、圧電デバイスは、圧電振動片が、接着剤によってベース部に1箇所でマウントされている。
このことから、圧電デバイスは、例えば、一般的な2箇所でマウントされている場合と比較して、周囲の温度変化の際に、圧電振動片とベース部との熱膨張率の違いに起因する応力の発生を抑制できる。
これにより、圧電デバイスは、圧電振動片の周波数変動を低減できる。
【0016】
[適用例5]上記適用例にかかる圧電デバイスは、前記ベース部が平板状に形成されていることが好ましい。
【0017】
これによれば、圧電デバイスは、ベース部が平板状に形成されていることから、従来のような、ICチップのマウント面と圧電振動片のマウント面との間に段差があるベース部と比較して、パッケージの製造が容易となる。
また、圧電デバイスは、ICチップのマウント面と圧電振動片のマウント面との間に段差があるベース部と比較して、圧電振動片及びICチップへのマウント面からの熱伝導状態の差が少なくなることから、外部の温度変化に伴う圧電振動片とICチップとの温度変化のタイミングのずれが少なくなる。
これにより、圧電デバイスは、例えば、圧電振動片の発振周波数に対するICチップによる温度特性の補償を、より正確に行うことができる。
【0018】
[適用例6]本適用例にかかる圧電デバイスの製造方法は、圧電振動片と、ICチップと、前記圧電振動片及び前記ICチップをベース部にマウントし内部に収容するパッケージと、を備えた圧電デバイスの製造方法であって、前記圧電振動片に、厚み方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔が形成された前記圧電振動片を、前記ベース部にマウントする圧電振動片マウント工程と、前記圧電振動片マウント工程後、前記ICチップを、平面視において、前記貫通孔内で前記ベース部にマウントするICチップマウント工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
これによれば、圧電デバイスの製造方法は、圧電振動片に、厚み方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔が形成された圧電振動片を、ベース部にマウントする圧電振動片マウント工程と、圧電振動片マウント工程後、ICチップを、貫通孔内でベース部にマウントするICチップマウント工程と、を有する。
【0020】
このことから、圧電デバイスの製造方法は、ICチップマウント工程の前に、圧電振動片マウント工程を行うことにより、マウントされた状態の圧電振動片単体での検査を行えるとともに、圧電振動片が良品の場合のみ、ICチップマウント工程へ流動させることができる。
したがって、圧電デバイスの製造方法は、従来のような、ICチップが圧電振動片より先にマウントされる製造方法と比較して、良品のICチップを廃棄しなくてよい分、製造の歩留まりを向上させることができる。
【0021】
また、圧電デバイスの製造方法は、圧電振動片マウント工程の後に、ICチップマウント工程を行うことにより、従来のような、圧電振動片のマウント時に加わる熱的ストレスなどに起因するICチップの特性劣化及びICチップとベース部との接続部の信頼性の低下などを回避できる。
【0022】
[適用例7]上記適用例にかかる圧電デバイスの製造方法は、前記ICチップマウント工程で、前記ICチップを、フリップチップ実装により前記ベース部にマウントすることが好ましい。
【0023】
これによれば、圧電デバイスの製造方法は、ICチップマウント工程で、ICチップを、フリップチップ実装によりベース部にマウントする。
このことから、圧電デバイスの製造方法は、上記適用例2に記載した効果を得ることができる。
【0024】
[適用例8]上記適用例にかかる圧電デバイスの製造方法は、前記圧電振動片マウント工程で、前記圧電振動片を、接着剤によって前記ベース部にマウントし、前記ICチップマウント工程で、前記ICチップをマウント後、前記圧電振動片を、ワイヤーボンディングにより前記ICチップと電気的に接続することが好ましい。
【0025】
これによれば、圧電デバイスの製造方法は、圧電振動片マウント工程で、圧電振動片を、接着剤によってベース部にマウントし、ICチップマウント工程で、ICチップをマウント後、圧電振動片を、ワイヤーボンディングによりICチップと電気的に接続する。
このことから、圧電デバイスの製造方法は、上記適用例3に記載した効果を得ることができる。
【0026】
[適用例9]上記適用例にかかる圧電デバイスの製造方法は、前記圧電振動片マウント工程で、前記圧電振動片を、前記接着剤によって前記ベース部に1箇所でマウントすることが好ましい。
【0027】
これによれば、圧電デバイスの製造方法は、圧電振動片マウント工程で、圧電振動片を、接着剤によってベース部に1箇所でマウントする。
このことから、圧電デバイスの製造方法は、上記適用例4に記載した効果を得ることができる。
【0028】
[適用例10]上記適用例にかかる圧電デバイスの製造方法は、前記貫通孔形成工程を、前記圧電振動片の外形形成と一括して行うことが好ましい。
【0029】
これによれば、圧電デバイスの製造方法は、貫通孔形成工程を、圧電振動片の外形形成と一括して行うことから、圧電振動片の製造工数を増やすことなく貫通孔を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式図。
【図2】第1の実施形態の水晶発振器の製造方法を工程順に示す模式断面図。
【図3】第2の実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式図。
【図4】第2の実施形態の水晶発振器の製造方法を工程順に示す模式断面図。
【図5】第2の実施形態の変形例の水晶発振器の概略構成を示す模式図。
【図6】第3の実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の圧電デバイスの一例としての水晶発振器の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線での断面図である。なお、図1の平面図及び以下の各平面図では、理解を容易にするためにリッド部を省略し、リッド部の外形を2点鎖線で表している。
【0032】
図1に示すように、第1の実施形態の水晶発振器1は、パッケージ10、IC(Integrated Circuit)チップ20、圧電振動片としての水晶振動片30などから構成されている。
【0033】
パッケージ10は、ベース部11、リッド部12、接合部13から構成されている。パッケージ10内には、ICチップ20、水晶振動片30がベース部11にマウントされた状態で収容されている。
ベース部11には、セラミックグリーンシートを積層し、略矩形の平板状に成形して焼成した酸化アルミニウム質焼結体などが用いられている。
【0034】
ベース部11の内面(マウント面)11aには、水晶振動片30がマウントされるマウント電極14a,14b、ICチップ20と接合される複数の接合端子15などが形成されている。
マウント電極14a,14b、接合端子15は、タングステンなどのメタライズ層にニッケル、金などの各被膜をメッキなどにより積層した金属被膜からなる。
【0035】
マウント電極14a,14bは、内部配線により接合端子15の内の、それぞれ15a,15bに接続されている。また、マウント電極14a,14bは、マウントされた水晶振動片30単体での検査時に用いる図示しない検査端子と接続されている。
ベース部11の外面11bには、上記金属被膜からなる複数の実装端子16が形成されている。この実装端子16は、図示しない内部配線により接合端子15に接続されている。水晶発振器1は、実装端子16を介して外部の電子機器などに実装される。
【0036】
リッド部12は、コバールなどの金属を用いて略矩形の平板状に形成され、パッケージ10内にICチップ20、水晶振動片30が収容された状態で、コバールなどの金属からなる枠状の接合部13にシーム溶接されている。なお、接合部13は、予め、ろう付けなどによりベース部11に接合されている。これにより、水晶発振器1のパッケージ10内は、気密に封止されている。
なお、パッケージ10の内部は、真空または窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが封入されている。
【0037】
パッケージ10のベース部11には、水晶振動片30がマウントされている。
水晶振動片30は、発振周波数に応じて所定の厚みに研磨された水晶ウエハから形成されている。なお、本実施形態では、水晶振動片30をATカット水晶振動片としている。
水晶振動片30は、略矩形の平板状に形成され、厚み方向に貫通する略矩形の貫通孔31を、基部32と振動部33との間に有している。
【0038】
水晶振動片30の振動部33の一方の主面34には、励振電極35が形成され、他方の主面36には、励振電極37が形成されている。励振電極35,37からは、それぞれ引き出し電極38a,38bが基部32に向かって延設され、貫通孔31の側方を経由して水晶振動片30の基部32において両主面34,36に回り込むように形成されている。 なお、励振電極35,37、引き出し電極38a,38bは、クロム、ニッケル、金などの各被膜が積層された金属被膜からなる。
【0039】
水晶振動片30は、引き出し電極38a,38bが、接着剤としての導電性接着剤40を介してマウント電極14a,14bに接着されることにより、パッケージ10のベース部11にマウントされている。これにより、水晶振動片30の励振電極35,37と、マウント電極14a,14bとは、電気的に接続されている。
【0040】
パッケージ10のベース部11には、水晶振動片30のマウント後、平面視において、水晶振動片30の貫通孔31内で、ICチップ20がマウントされている。
ICチップ20は、シリコン基板などからなり、水晶振動片30を励振し発振信号をインバーターなどにより増幅して出力する発振回路を有する。なお、ICチップ20は、発振回路に加えて、水晶振動片30の発振周波数の温度特性を補償する温度特性補償回路などを有していてもよい。
【0041】
ICチップ20は、一主面21に上記回路と接続されている複数の回路端子22を有する。
複数の回路端子22の内、回路端子22a,22bは、水晶振動片30との接続用端子であり、その他は、出力用端子、電源用端子、アース用端子、検査用端子などである。なお、回路端子22は、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属被膜からなる。
【0042】
ICチップ20は、フリップチップ実装により、一主面21側が接合端子15と対向してパッケージ10のベース部11にマウントされるとともに、回路端子22が接合端子15に、金、ハンダなどからなるバンプ41を用いた熱圧着(バンプ接着)により接合されている。なお、回路端子22a,22bは、それぞれ接合端子15a,15bと接合されている。
なお、水晶発振器1は、ICチップ20の一主面21側とベース部11との間にエポキシ樹脂などの樹脂(アンダーフィル材)が充填され、上記接合部分が補強や保護されるように構成されていてもよい。
【0043】
これらにより、水晶振動片30との接続用端子であるICチップ20の回路端子22a,22bは、ベース部11の接合端子15a,15b、マウント電極14a,14b、導電性接着剤40を経由して、それぞれ水晶振動片30の引き出し電極38a,38b(励振電極35,37)と電気的に接続されている。
【0044】
上述したように、第1の実施形態の水晶発振器1は、水晶振動片30が、厚み方向に貫通する貫通孔31を有し、ICチップ20が、平面視において、貫通孔31内でパッケージ10のベース部11にマウントされている。
このことから、水晶発振器1は、ICチップ20の厚みT1と水晶振動片30の厚みT2との、いずれか厚い方の厚みだけが、水晶発振器1の総厚に反映される構成により、従来のような、平面視において、水晶振動片30とICチップ20とが重なって配置されている場合と比較して、更なる薄型化を図ることができる。
なお、近年、水晶発振器1の高周波数化に伴い、ICチップ20の厚みT1と水晶振動片30の厚みT2とでは、ICチップ20の厚みT1の方が厚いのが一般的となっている。
【0045】
また、水晶発振器1は、ICチップ20がフリップチップ実装によりベース部11にマウントされていることから、ICチップ20とベース部11との電気的接続と機械的接続とがICチップ20の一主面21側(ベース部11側)で一括して行われる。
このことから、水晶発振器1は、ICチップ20とベース部11との電気的接続が、例えば、ワイヤーボンディングのようなワイヤーを用いて行われる場合と比較して、ワイヤーのループ高さの確保が不要な分、ICチップ20の他主面23とリッド部12との隙間を少なくできる。
したがって、水晶発振器1は、ICチップ20とベース部11との電気的接続が、ワイヤーボンディングのようなワイヤーを用いて行われる場合と比較して、更なる薄型化を図ることができる。
【0046】
また、水晶発振器1は、パッケージ10のベース部11が平板状に形成されていることから、従来のような、ICチップのマウント面と水晶振動片のマウント面との間に段差があるベース部と比較して、段差の形成が不要なことによりパッケージ10の製造が容易となる。
これにより、水晶発振器1は、パッケージ10製造の生産性が向上する。
【0047】
また、水晶発振器1は、ベース部11が平板状に形成されていることから、従来のような、ICチップのマウント面と水晶振動片のマウント面との間に段差があり、両者のマウント部の肉厚が異なるベース部と比較して、ベース部11の外面11bからマウント面(内面)11aを経由して水晶振動片30とICチップ20とに伝導される熱伝導の、両者間における差が少なくなる。
このことから、水晶発振器1は、外部の温度変化に伴う水晶振動片30とICチップ20との温度変化のタイミングのずれが少なくなる。
これにより、水晶発振器1は、ICチップ20に温度特性補償回路を有している場合に、水晶振動片30の発振周波数に対するICチップ20による温度特性の補償を、より正確に行うことができる。
【0048】
また、水晶発振器1は、貫通孔31が形成されていることにより振動部33と基部32とが離れていることから、振動部33の振動が基部32に漏れにくくなるとともに、マウント時や外部の温度変化時などに基部32に発生する応力が、振動部33に伝わりにくくなる。
これにより、水晶発振器1は、安定した周波数特性を得ることができる。
【0049】
ここで、第1の実施形態の水晶発振器1の製造方法について図面を参照して説明する。
図2は、第1の実施形態の水晶発振器の製造方法を工程順に示す模式断面図である。
ここでは、水晶発振器1の製造に当たって、主要な工程である貫通孔形成工程、圧電振動片マウント工程としての水晶振動片マウント工程、ICチップマウント工程を中心に説明する。
【0050】
[貫通孔形成工程]
まず、図2(a)に示すように、発振周波数に応じて所定の厚みに研磨された水晶ウエハから、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、水晶振動片30の外形形状39及び貫通孔31を一括して略同時に形成する。
ついで、蒸着、スパッタなどにより、励振電極35,37、引き出し電極38a,38bを形成する。
なお、水晶振動片30の外形形状39及び貫通孔31は、別々の工程で形成してもよい。
【0051】
[水晶振動片マウント工程]
ついで、図2(b)に示すように、水晶振動片30を、パッケージ10のベース部11にマウントする。
詳述すれば、ベース部11のマウント電極14a,14bに、シリコン系などの導電性接着剤40をディスペンサーなどにより塗布した後、水晶振動片30の引き出し電極38a,38bを、マウント電極14a,14bに位置合わせして、水晶振動片30をマウントする。その後、導電性接着剤40を加熱硬化させる。
なお、この後、水晶振動片30のマウント時に発生する応力(歪)を緩和させるためにアニール処理を行う。
ついで、マウントされた水晶振動片30単体での検査を行い、良品を次工程に流動させる。
【0052】
[ICチップマウント工程]
ついで、図2(c)に示すように、ICチップ20を、平面視において、水晶振動片30の貫通孔31内で、パッケージ10のベース部11にマウントする。
詳述すれば、フリップチップ実装を用いて、ICチップ20の一主面21の回路端子22を、金、ハンダなどからなるバンプ41を用いた熱圧着により、ベース部11の接合端子15に接合する。
なお、この際、ICチップ20の一主面21側とベース部11との間にエポキシ樹脂などのアンダーフィル材を充填し、上記接続部分を補強や保護してもよい。
【0053】
ついで、図2(d)に示すように、パッケージ10のリッド部12を、パッケージ10の接合部13にシーム溶接する。
以上の工程などの製造工程を経ることにより、図1に示すような、水晶発振器1が得られる。
【0054】
上述したように、第1の実施形態の水晶発振器1の製造方法は、水晶振動片30に、厚み方向に貫通する貫通孔31を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔31が形成された水晶振動片30を、ベース部11にマウントする水晶振動片マウント工程と、水晶振動片マウント工程後、ICチップ20を、平面視において、貫通孔31内でベース部11にマウントするICチップマウント工程と、を有する。
【0055】
このことから、水晶発振器1の製造方法は、ICチップマウント工程の前に、水晶振動片マウント工程を行うことにより、ベース部11にマウントされた状態の水晶振動片30単体での検査が行える。これにより、水晶発振器1の製造方法は、水晶振動片30が良品の場合のみ、ICチップマウント工程へ流動させることができる。
したがって、水晶発振器1の製造方法は、従来のような、ICチップが水晶振動片より先にマウントされる製造方法と比較して、良品のICチップを廃棄しなくてよい分、製造の歩留まりを向上させることができる。
【0056】
また、水晶発振器1の製造方法は、水晶振動片マウント工程の後に、ICチップマウント工程を行うことにより、従来のような、水晶振動片30のマウント時に加わるアニール処理などの熱的ストレスなどに起因する、ICチップ20の特性劣化及びICチップ20とベース部11との接続部の信頼性の低下などを回避できる。
【0057】
また、水晶発振器1の製造方法は、ICチップマウント工程で、ICチップ20を、フリップチップ実装によりベース部11にマウントする。
これにより、水晶発振器1の製造方法は、ICチップ20とベース部11との電気的接続が、ワイヤーボンディングのようなワイヤーを用いて行われる場合と比較して、ワイヤーのループ高さなどの確保が不要となることから、更なる薄型化を図った水晶発振器1を製造することができる。
【0058】
また、水晶発振器1の製造方法は、貫通孔形成工程を、水晶振動片30の外形形成と一括して略同時に行うことから、水晶振動片30の製造工数を増やすことなく貫通孔31を形成できる。
【0059】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式図である。図3(a)は、平面図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B線での断面図である。なお、第1の実施形態との共通部分には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
図3に示すように、第2の実施形態の水晶発振器101は、第1の実施形態の水晶発振器1と比較して、水晶振動片30がワイヤーボンディングによりICチップ20と電気的に接続されているとともに、接着剤としての非導電性接着剤42によってベース部111にマウントされている点が異なる。
以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0061】
水晶発振器101は、水晶振動片30が、エポキシ系、ポリイミド系などの非導電性接着剤42によって、引き出し電極38a,38bの2箇所でパッケージ110のベース部111にマウントされている。
水晶発振器101は、水晶振動片30のマウント後、ICチップ20が、一主面21をリッド部12側に向けた状態で、接着剤43を介してパッケージ110のベース部111にマウントされている。
【0062】
パッケージ110のベース部111には、マウントされた水晶振動片30の周辺の、ICチップ20の近傍部分に、複数の接合端子115が形成されている。接合端子115は、図示しない内部配線により実装端子16などと接続されている。
水晶発振器101は、水晶振動片30の引き出し電極38a,38bが、ワイヤーボンディングによりワイヤー50を介して、ICチップ20の回路端子22a,22bと電気的に接続されている。
また、水晶発振器101は、ICチップ20の回路端子22が、ワイヤーボンディングによりワイヤー50を介して、ベース部111の接合端子115と電気的に接続されている。
【0063】
なお、水晶発振器101は、マウントされた水晶振動片30単体での検査を行えるようにするために、引き出し電極38a,38bが、ワイヤーボンディングによりワイヤー50を介して、接合端子115の内、図示しない検査端子に接続されている接合端子115a,115bと接続されている。
【0064】
上述したように、第2の実施形態の水晶発振器101は、水晶振動片30が、ワイヤーボンディングによりICチップ20と電気的に接続されているとともに、エポキシ系、ポリイミド系などの非導電性接着剤42によってベース部111にマウントされている。
このことから、水晶発振器101は、水晶振動片30のマウントにシリコン系の導電性接着剤を用いた場合と比較して、水晶振動片30のエージング特性に悪影響を与えるシロキサンなどのアウトガスの発生を低減できる。
【0065】
ここで、第2の実施形態の水晶発振器101の製造方法について、図面を参照して第1の実施形態の水晶発振器1の製造方法と異なる点を中心に説明する。
図4は、第2の実施形態の水晶発振器の製造方法を工程順に示す模式断面図である。
【0066】
[水晶振動片マウント工程]
図4(a)に示すように、水晶振動片30を、非導電性接着剤42によって引き出し電極38a,38bの2箇所でベース部111にマウントする。
ついで、水晶振動片30の引き出し電極38a,38bと検査端子に接続されているベース部111の接合端子115a,115bとを、ワイヤーボンディングによりワイヤー50を介して電気的に接続する。
ついで、アニール処理などの後、マウントされた水晶振動片30単体での検査を行い、良品を次工程に流動させる。
【0067】
[ICチップマウント工程]
図4(b)に示すように、水晶振動片30のマウント後、ICチップ20を、平面視において、水晶振動片30の貫通孔31内で、一主面21側をリッド部12側に向けた状態で、接着剤43によってベース部111にマウントする。
ついで、水晶振動片30の引き出し電極38a,38bとICチップ20の回路端子22a,22bとを、ワイヤーボンディングによりワイヤー50を介して電気的に接続し、回路端子22と接合端子115とを、ワイヤーボンディングによりワイヤー50を介して電気的に接続する。
【0068】
上述したように、第2の実施形態の水晶発振器101の製造方法は、水晶振動片マウント工程で、水晶振動片30をエポキシ系、ポリイミド系などの非導電性接着剤42によってベース部111にマウントし、ICチップマウント工程で、ICチップ20をマウント後、水晶振動片30を、ワイヤーボンディングによりICチップ20と電気的に接続する。
【0069】
これにより、水晶発振器101の製造方法は、水晶振動片30のマウントにシリコン系の導電性接着剤を用いた場合と比較して、水晶振動片30のエージング特性に悪影響を与えるシロキサンなどのアウトガスの発生を低減した水晶発振器101を製造できる。
【0070】
(変形例)
ここで、第2の実施形態の水晶発振器101の変形例について、図面を参照して説明する。
図5は、第2の実施形態の変形例の水晶発振器の概略構成を示す模式図である。図5(a)は、平面図であり、図5(b)は、図5(a)のC−C線での断面図である。なお、第2の実施形態との共通部分には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
図5に示すように、変形例の水晶発振器201は、第2の実施形態の水晶発振器101と比較して、水晶振動片30のベース部111へのマウントが、水晶振動片30の短辺に沿った方向における基部32の略中心位置の1箇所である点が異なる。
【0072】
これにより、水晶発振器201は、第2の実施形態のような水晶振動片30が2箇所でマウントされている場合と比較して、周囲の温度変化の際に、水晶振動片30とベース部111との熱膨張率の違いに起因する応力の発生を抑制できる。
このことから、水晶発振器201は、より周波数変動が少ない安定した周波数特性を得ることができる。
【0073】
変形例の水晶発振器201の製造方法は、第2の実施形態の水晶発振器101の製造方法と比較して、水晶振動片マウント工程において、水晶振動片30を、非導電性接着剤42によって、水晶振動片30の短辺に沿った方向における基部32の略中心位置の1箇所でベース部111にマウントする点が異なる。
これにより、水晶発振器201の製造方法は、周囲の温度変化の際に、水晶振動片30とベース部111との熱膨張率の違いに起因する応力の発生が抑制された水晶発振器201を製造できる。
【0074】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式図である。図6(a)は、平面図であり、図6(b)は、図6(a)のD−D線での断面図である。なお、第1の実施形態との共通部分には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
図6に示すように、第3の実施形態の水晶発振器301は、第1の実施形態の水晶発振器1と比較して、水晶振動片330の貫通孔331の形状が、切り欠き状である点が異なる。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0076】
水晶発振器301は、水晶振動片330の貫通孔331が、平面視において、基部332側の短辺が切り欠かれた「コ」の字形の切り欠き状に形成されている。
そして、水晶発振器301は、ICチップ20が、平面視において、切り欠き状の貫通孔331内でベース部11にマウントされている。
【0077】
これによれば、水晶発振器301は、水晶振動片330の貫通孔331が切り欠き状であることから、水晶振動片330の2つの基部332を互いにつなぐ部分が不要な分、基部332と振動部33とをつなぐ方向(長辺方向)に沿った水晶振動片330の長さを短くできる。
したがって、水晶発振器301は、第1、第2の実施形態及び変形例の水晶発振器(1など)と比較して、平面サイズを小さくできる。
なお、この水晶振動片330は、第2の実施形態の水晶発振器101にも適用できる。
【0078】
なお、上記第2の実施形態では、水晶振動片30のマウントに非導電性接着剤42を用いたが、これに限定するものではなく、導電性接着剤を用いてもよい。この場合、例えば、第1の実施形態と同様に、ベース部111にマウント電極14a,14b(図1参照)を形成し、マウント電極14a,14bと検査端子とを接続すれば、マウントされた水晶振動片30単体での検査が行える。
これにより、水晶発振器101は、引き出し電極38a,38bと接合端子115a,115bとのワイヤーボンディングによる接続及び接合端子115a,115bが不要となる。
【0079】
また、上記第2の実施形態及び変形例では、ベース部111を平板状としたが、これに限定するものではなく、ベース部111の外周に一段高い段差部を設け、この段差部に接合端子115を設けてもよい。
これによれば、水晶発振器101,201は、水晶振動片30及びICチップ20と接合端子115との段差が少なくなることから、ワイヤーボンディングを容易に行うことができる。
【0080】
なお、上記各実施形態及び変形例では、圧電振動片の材質として水晶を例示したが、これに限定するものではなく、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…圧電デバイスとしての水晶発振器、10…パッケージ、11…ベース部、12…リッド部、13…接合部、14a,14b…マウント電極、15,15a,15b…接合端子、16…実装端子、20…ICチップ、21…一主面、22,22a,22b…回路端子、23…他主面、30…圧電振動片としての水晶振動片、31…貫通孔、32…基部、33…振動部、34…一方の主面、35,37…励振電極、36…他方の主面、38a,38b…引き出し電極、40…接着剤としての導電性接着剤、41…バンプ、T1…ICチップの厚み、T2…水晶振動片の厚み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片と、ICチップと、前記圧電振動片及び前記ICチップをベース部にマウントし内部に収容するパッケージと、を備え、
前記圧電振動片が、厚み方向に貫通する貫通孔を有し、前記ICチップが、平面視において、前記貫通孔内で前記ベース部にマウントされていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、前記ICチップが、フリップチップ実装により前記ベース部にマウントされていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、前記圧電振動片が、ワイヤーボンディングにより前記ICチップと電気的に接続されているとともに、接着剤によって前記ベース部にマウントされていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電デバイスにおいて、前記圧電振動片が、前記接着剤によって前記ベース部に1箇所でマウントされていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電デバイスにおいて、前記ベース部が平板状に形成されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項6】
圧電振動片と、ICチップと、前記圧電振動片及び前記ICチップをベース部にマウントし内部に収容するパッケージと、を備えた圧電デバイスの製造方法であって、
前記圧電振動片に、厚み方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔が形成された前記圧電振動片を、前記ベース部にマウントする圧電振動片マウント工程と、
前記圧電振動片マウント工程後、前記ICチップを、平面視において、前記貫通孔内で前記ベース部にマウントするICチップマウント工程と、を有することを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電デバイスの製造方法において、前記ICチップマウント工程で、前記ICチップを、フリップチップ実装により前記ベース部にマウントすることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の圧電デバイスの製造方法において、前記圧電振動片マウント工程で、前記圧電振動片を、接着剤によって前記ベース部にマウントし、
前記ICチップマウント工程で、前記ICチップをマウント後、前記圧電振動片を、ワイヤーボンディングにより前記ICチップと電気的に接続することを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電デバイスの製造方法において、前記圧電振動片マウント工程で、前記圧電振動片を、前記接着剤によって前記ベース部に1箇所でマウントすることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法において、前記貫通孔形成工程を、前記圧電振動片の外形形成と一括して行うことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−192960(P2010−192960A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32339(P2009−32339)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】