説明

圧電材料、多層アクチュエータ、および、圧電素子の製造方法

【課題】圧電多層アクチュエータへの利用に適した圧電材料の提供。
【解決手段】分子式P1−c−d(ただし、0<c≦0.15かつ0≦d≦0.5)を有する材料を含む圧電材料であって、Pが化合物Pb(Zr1−yTi)O(ただし、0.50≦1−y≦0.60)を表し、Zがペロブスカイト型構造の付加的成分を表し、Dが一般式[(MO)1−p(MO)[Nb1−a(ただし2/3<a<1かつ0<p<1)(このとき、MはBa1−tSr、ただし0≦t≦1、を表し、Mはストロンチウムあるいはカルシウムを表す)を表し、材料Dがクリオライト型の構造を含む。これにより、PZTホスト格子のBサイトのドーピングを達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部電極を有する圧電素子の製造に適する圧電材料に関する。さらに、本発明は、圧電多層アクチュエータと圧電素子の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電セラミック素材は、特許文献1に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004002204号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電多層アクチュエータへの利用に適した圧電材料を提供することが、解決すべき課題の一つであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に基づいて製造されたセラミック素材について記述する。
【0006】
アクチュエータとしての圧電素子の利用は、特に自動車工学において、信頼性のみならず時間的および熱的安定性を高く要求する。さらに、この利用は、電圧がアクチュエータに印加されたときに生じる高い阻止力と相まった高い動的アクチュエータ変位を要求する。特に適した材料は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1−yTi)O、PZT)に基づく圧電セラミックである。望ましい圧電材料特性は、PZTセラミックの場合、まず、一般式Pb(Zr1−yTi)Oで表されるPZTのペロブスカイト構造(ABO型)におけるジルコニウム(Zr)とチタニウム(Ti)間を特定の量比に調節することで得られる。特に有利な圧電特性は、PZT材料によって、そのZr/Ti比がいわゆるモルフォトロピック相境界(Morphotropic phase boundary,MPB)の範囲にあるときに得られる。そのため、好ましくは、Pb(Zr1−yTi)O(ただし、y≒0.45−0.50)で表されるPZT材料が選ばれる。さらに、PZTのペロブスカイト構造に溶解し得る、ドーピング剤あるいはドーパントと呼ばれる特定の物質を添加することで、PZTの材料特性は、極めて広範にかつ独自に各用途に適合され得る。PZT材料の変形例は、例えば、適切な要素あるいは適切な要素の組み合わせによる、Aサイト(Pbサイト)にある鉛(Pb)の置換、および/あるいは、Bサイト(Zr/Tiサイト)にあるZr/Tiの置換で得ることができる。この場合、PZT材料の圧電特性の熱的安定性のために、比較的高いキュリー温度T≒360°Cを、こうした材料の変形例によって激しく下降させ過ぎないことがとりわけ有利である。これは、特に、添加剤あるいはドーパントの濃度を可能な限り少なく維持することで達成される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで記載される圧電材料は、PZTベース材料に加えて、ドーピング剤などの形態で存在する添加剤を含む。PZTベース材料への添加剤によって、PZTを基にした格子の格子サイトは、PZTにより所与のもの以外の材料で占有され得、これにより、その材料の電気的あるいは機械的特性を好ましく変動させることが可能となる。ドーピング剤は、好ましくは、圧電材料中で2.5mol%までの割合である。特に好ましくは、混晶はPZTベース材料とドーピング剤とから形成され、このとき、チタン酸ジルコン酸鉛とドーピング剤とは固溶体を形成する。PZTのドーピングにより、特に、陽イオンをPZTホスト格子のBサイトに導入することができ、これにより、この材料の電気的特性をとりわけ大幅に改善することが可能となる。
【0008】
より好ましくは、ドーピング剤としては、一般式[(MO)1−p(MO)[Nb1−a(このとき、MはBa1−tSr,0≦t≦1、であり、Mはストロンチウムあるいはカルシウムであり、そして2/3<a<1かつ0<p<1である)で表されるセラミック材料が考えられる。
【0009】
所定の化学式のPZTとドーピング剤との所定の混合物により、M陽イオンをペロブスカイトホスト格子の正規Bサイトに導入することができる。これは、特に、PZTベース材料とドーピング剤とが混晶を形成するためである。PZTベース材料としては、特に、Pb(Zr1−yTi)O(ただし、0.50≦1−y≦0.60、そして、ホスト格子はペロブスカイト型の格子ABOで表される)という組成のものが考えられる。パラメータ1−yを0.5と0.6との間になるように選択することで、ジルコニウム/チタニウム比はいわゆるモルフォトロピック相境界の範囲に調節され、これにより、特に良いセラミック材料の特性がもたらされる。
【0010】
圧電材料の別の実施形態では、さらに、ペロブスカイト構造型の付加的成分が50mol%までの割合で含まれていてもよい。
【0011】
ドーピング剤はクリオライト構造型を含んでもよく、これにより、PZTホスト格子におけるドーピング剤あるいはドーピング剤の一部の特に良い溶解度が得られる。
【0012】
ドーピング剤は、ホスト格子にクリオライト構造を有する化合物として固溶体中に存在し得る。
【0013】
ドーピング剤に関して、3つの異なる化学量論的組成あるいはパラメータ範囲に区別することができる。
【0014】
パラメータ範囲1:6/7<a<1
【0015】
パラメータ範囲2:2/3<a<4/5
【0016】
パラメータ範囲3:4/5≦a≦6/7かつ1/4≦p≦1/3
【0017】
パラメータ範囲3では、パラメータaに関連するパラメータpが変動する場合、具体的には、aとpとを関係付ける関係式a=22/35+24p/35に従って変動する場合に、ドーピング剤のためのクリオライト構造を有する化合物の定式化がなされる。基本的なクリオライト系の一般式は以下の通り:
(M[(M2−2x/3Nb2+2x/3]O11+xO;1−x(ただし、0≦x≦1)
このとき、aとパラメータxの関係は以下の通り:
a=6/7−2x/35
【0018】
クリオライト化合物は、0≦x≦1の変数の範囲と酸素空孔(V)の存在とに従う位相範囲を示す。さらに、クリオライト構造は、密接に関連するPZTペロブスカイトホスト格子と極めてよく対応する。双方のセラミック材料とも混晶系を形成することができ、このとき、ドーピング剤の成分はPZTホスト格子の格子サイトに挿入される。そして、これらは固溶体を形成する、即ち、ペロブスカイト相では、酸素サイトの空孔はx<1の範囲で生じ、Mは均一なペロブスカイト相のBサイトに導入される。
【0019】
=M=Srである場合、ストロンチウム陽イオンは、ペロブスカイト相のBサイトに導入される。
【0020】
パラメータ範囲1では、{MOおよび/あるいはMO}の既存の余剰分は、1/7(a=1のとき)あるいは0(a=6/7のとき)の境界において、PZTホスト格子と化学反応を始める。
【0021】
アルカリ土類金属酸化物の余剰分に対して、MのMに対する比率は0<p<1に従って任意に変動し得、以下の反応が生じる可能性がある。

【化1】


【化2】

【0022】
これらの反応によって、PbOはPZTホスト格子から放出され得、等量のM(Zr1−yTi)O(ただし、MはMあるいはMを表す)が形成される。これらの生成されたチタン酸ジルコニウムは、混晶を形成しながら、ホスト格子中に同じように溶解し得る。さらに、酸化鉛が発生し、これは、場合によっては系中にすでに存在する焼結助剤の割合を、ほんのわずかながらさらに増加させる。前記反応は、a=6/7に達するまでの間、続き得る。この場合、Nb量と等量のMOおよび/あるいはMOがその材料中には存在し、p=1/3のときPZTホスト格子で限界組成を有するクリオライト化合物の固溶体(M[(MNb]O11O;1が生じる。固溶体は、ペロブスカイト混晶と酸素空孔とのBサイトにM陽イオンを含む。
【0023】
限界組成は、クリオライト系の位相範囲の一方に対応するパラメータx=0に対応する。この場合、酸素の空孔濃度は比較的高い。
【0024】
=M=Srの場合、境界0<{SrO}<1/7において酸化ストロンチウムの余剰分が存在する。PZTホスト格子からのPbOの離脱は、以下の反応式に従って生じる。

【化3】

【0025】
この反応によって、等量のSr(Zr1−yTi)Oが生成され、混晶を形成しながらPZTホスト格子中に溶解する。Nb量と等量のSrOは、値0での酸化ストロンチウムの余剰分に対応し、クリオライト系の位相範囲の他端の値に応じた、PZTホスト格子中での限界組成Sr(SrNb)O11O;1を有するクリオライト化合物の固溶体の形成をもたらす。この固溶体は、ペロブスカイト混晶と酸素空孔とのBサイトとにSr陽イオンを含む。
【0026】
パラメータ範囲2では、酸化ニオビウム{Nb}の余剰分は、1/5>{Nb}>0の範囲であり、これは、

【化4】


に従った、系に場合によっては既存のあるいはこの系に追加しての焼結助剤PbOの結合の結果、等量のニオブ酸鉛の生成を誘導する。ニオブ酸鉛は、混晶を形成しながら、PZT格子中に同様に溶解し得、このとき鉛空孔VPbが、PZTホスト格子のPbサイトで生じる。a=4/5に対応するMあるいはMの量と同量のNbは、パラメータp=1/4が満たされる場合、PZTホスト格子中でクリオライト系の位相範囲の他方に従う限界組成(M[(M4/3Nb8/3]O12を有するクリオライト化合物の固溶体の形成を生じ、このとき、M陽イオンはペロブスカイト混晶のBサイトになおも残り続けるが、酸素空孔は取り除かれる。
【0027】
=M=Srの場合、パラメータpは不要であり、酸化ストロンチウム量と同量のNbの場合、クリオライト系の位相範囲の他方に従う限界組成Sr(Sr4/3Nb8/3)O12が生じ、このとき酸素空孔は存在しないが、Sr陽イオンはペロブスカイト混晶のBサイトになおも」残り続ける。
【0028】
通常、本明細書中に記載の圧電材料の全てにおいて、それらはさらに5mol%までのPbOを含んでいてもよい。この酸化鉛は、例えば、セラミック材料の焼結の際の助剤として機能する。
【0029】
材料の特に好ましい実施形態では、ドーピング剤は化学式(M[(MNb]O11O;1のクリオライト化合物を含み、これはPZTホスト格子によって固溶体を形成する。
【0030】
通常、本明細書中に記載の圧電材料は、略化学式P1−c−dを用いて記述され、このとき、
0<c≦0.15かつ0≦d≦0.5
である。
【0031】
ここで、cは、0<c≦0.025かつ0.0255<c<0.0443という部分的範囲であってもよい。このとき、PはPZTベース材料を、Dは一般組成[(MO)1−p(MO)[Nb1−aを有するドーピング剤を、Zはペロブスカイト構造型の付加的成分を表す。
【0032】
化学式(M[(MNb]O11O;1のクリオライト化合物は、成分Dの構成成分であってもよく、このとき、成分DのMOの余剰分は成分Pと反応しM(Zr1−yTi)O(ただし、MはMあるいはMを表す)とPbOとが生成される。
【0033】
材料の別の実施形態では、ドーピング剤は化学式(M[(M4/3Nb8/3]O12のクリオライト化合物を含んでもよく、これはPZTホスト格子によって固溶体を形成する。このクリオライト化合物は成分Dの構成成分であってもよく、このとき成分DのNbの余剰分はセラミック材料に余分に存在するPbOと反応しニオブ酸鉛を生成する。
【0034】
材料の実施形態の1つによれば、M(Zr1−yTi)O(ただし、MはMあるいはMを表す)は材料に、上記の成分Pを有するクリオライト系の反応生成物として含まれていてもよい。
【0035】
ドーピング剤が少量しか添加されないため、ドーピング剤のクリオライト化合物に対して、大幅に余剰に残存するPZTホスト格子との相互作用および化学反応が生じ得る。このようにして、材料系全体の酸素空孔濃度の顕著な変化が達成され得る。
【0036】
ドーピング剤中のアルカリ土類成分の塩基性が強いため、PZTホスト格子によるドーピング剤の混晶形成では、PbOがPZTから離脱する可能性がある。これは、特に、PZTホスト格子において上記クリオライト系から化合物の固溶体が作製される領域に当てはまる。考えられる反応は以下のとおりである。

【化5】


【化6】


【化7】

【0037】
反応式<6>が、完全に終止した場合、ホスト格子のBサイトからホスト格子のAサイトへのM陽イオンの完全な移行を意味するだろう。
【0038】
この最後の反応式とPbNbの形成は関連しており、このとき、これは2式単位のPb0.5Pb;0.5NbOに等しい。PZTホスト格子による混晶形成の結果、ドープされたPZTセラミックのAサイトで鉛空孔の形成が生じる。
【0039】
所定の反応式に従って、圧電材料は提供され、このとき(M[(M4/3Nb8/3]O12はPZTホスト格子によって少なくとも部分的にはニオブ酸鉛に変換される。
【0040】
また、さらに、圧電材料が提供され、このとき(M[(M5/3Nb7/3]O11.5O;0.5はPZTホスト格子によって少なくとも部分的には(M[(M4/3Nb8/3]O12に変換される。
【0041】
また、さらに、圧電材料が提供され、このとき(M[(MNb]O11はPZTホスト格子によって少なくとも部分的には(M[(M5/3Nb7/3]O11.5O;0.5に変換される。
【0042】
所定の反応は酸素空孔を極めて様々な濃度に調節することを可能にする。この酸素空孔濃度の上昇あるいは下降は温度依存的に生じ得、これはセラミック材料の焼結工程での酸素空孔変動の有益な使用について優れた可能性を提示する。このことは以下で説明される。
【0043】
アルカリ土類金属酸化物のより強い塩基性のため、発熱反応過程は、上記の反応式に従って生じるPbOのPZTホスト格子からの離脱を元にしてもよい。これは、平衡が、高温で酸素空孔の濃度が上昇する方向に傾くことを意味し、これによって、セラミックの焼結圧縮や結晶粒成長が促進される。冷却中は、平衡は、酸素空孔の濃度が下降する方向に傾き、こうした欠陥の完全な排除が引き起こされ得るが、これはPZTセラミックの機能的安定性のためには有利である。
【0044】
所定の反応式に基づいて、ドーピング剤によってPZTホスト格子に導入された欠陥の分布パターンは、熱処理によって制御され得る。これによって、PZTベース材料とドーピング剤との固溶体の組成は変化する。
【0045】
それ故、また、チタン酸ジルコン酸鉛セラミックを含み、このセラミックがPZT格子の格子サイトに酸素空孔を含み、この酸素空孔の濃度が温度依存的である圧電材料が提供される。
【0046】
さらに、ある実施形態では、温度上昇に伴って酸素空孔の濃度が増加する材料が提供される。
【0047】
特に好ましい実施形態では、酸素空孔濃度は、0−1200℃の間の温度域で広範な温度依存性を示す。この材料は、酸素空孔濃度の温度依存性を、セラミック材料の製造のための焼結工程に役立つように作られ得るという利点を有する。ここで所定の材料のための焼結温度は、900−1200℃の間にある。
【0048】
圧電材料の特別な実施形態では、陽イオン構成成分は以下のように選ばれる。
=M=Sr
【0049】
これにより、化学式Sr(Sr2−2x/3Nb2+2x/3)O11+xO;1−x(ただし、0≦x≦1)に従う上記のクリオライト系の化合物が生じる。このときストロンチウム陽イオンの一部は、成分Pのペロブスカイトホスト格子の正規Bサイトを占める。この所定の材料は、成分Pと成分Dとの反応生成物として、Sr(Zr1−yTi)Oを含み得る。この材料は、PZTホスト格子によって固溶体の形態で存在し得る。
【0050】
ドーピング剤とPZTホスト格子との間の化学反応は、この場合、以下のようになる。

【化8】


【化9】


【化10】

【0051】
材料の特別な実施形態によれば、その組成はP1−c−d[PbO]であり、このときDは化学式[(SrO)(Nb1−a](a=29/35)で表されるクリオライト化合物を表し、これは等価なクリオライト表記では
Sr(Sr5/3Nb7/3)O11.50;0.5と表現され得、以上のとき、
0<c≦0.15かつ0≦m≦0.05、d=0である。
【0052】
ここで、cは、0<c≦0.025かつ0.0255<c<0.0443という部分的範囲であってもよい。
【0053】
とりわけ特別な実施形態では、1−y=0.53、c=0.005、かつ、m=0.01のとき、化学式、
[Pb(Zr0.53Ti0.47)O0.973[Sr(Sr4/3Nb8/3)O120.00213
[Pb(Zr0.53Ti0.47)O0.017[PbVPb(Nb)]0.003(PbO)0.029
で表される組成を有する材料が提供される。
【0054】
この特別に提供された化学式を有するセラミック材料では、ストロンチウム陽イオンの約10%がPZTホスト格子の正規Bサイトを占める。
【0055】
別の実施形態によれば、組成P1−c−d[PbO]を有する圧電材料が提供され、このときDは化学式[(BaO)1−p(CaO)(Nb1−a](a=34/41かつp=5/17)で表されるクリオライト化合物を表し、これは等価なクリオライト表記ではBa(Ca5/3Nb7/3)O11.50;0.5と表され、このとき、
0<c≦0.15かつ0≦m≦0.05、d=0である。
【0056】
ここで、cは、0<c≦0.025かつ0.0255<c<0.0443という部分的範囲であってもよい。
【0057】
特に特別な定式化では、1−y=0.53、c=0.005、かつ、m=0.01のとき、化学式、
[Pb(Zr0.53Ti0.47)O0.973[Ba(Ca4/3Nb8/3)O120.00213
[Ba(Zr0.53Ti0.47)O0.0115[Ca(Zr0.53Ti0.47)O0.0055
[PbVPb(Nb)]0.003(PbO)0.029
で表される組成を有する材料が提供される。
【0058】
この場合、カルシウム陽イオンの約34%がPZTホスト格子の正規Bサイトを占める。
【0059】
以下において、M=M=Srの場合について更に詳細に記述する。
【0060】
ある実施形態では、1>a>2/3の範囲で、PZTセラミックのためのドーパントとして、化学式(SrO)(Nb1−aで表されるニオブ酸ストロンチウム混合物が使用される。Nb5+陽イオンのPZTホスト格子のペロブスカイト構造のBサイトへの導入とNbO6/2八面体の縮小とは関連するが、これによって、近接する酸素八面体の拡大が起き、これに関連して、比較的大きなSr陽イオンの配位数6のPZTホスト格子のBサイトへの導入が可能となる。
【0061】
注意すべき点としては、(SrO)(Nb1−aがチタン酸ジルコン酸鉛と相互作用し、チタン酸ジルコン酸ストロンチウムを形成し得ること、および、1>a>2/3の範囲(これはPb0.5Pb;0.5NbOに対応する)で、混晶を形成しながらSZTと同様に正規Aサイトに鉛空孔(VPb)を有するPZTホスト格子中に溶解するPb(Nb)を生成し得ることがある。これは、以下の反応式に従って生じる。

【化11】

【0062】
1>a>6/7の範囲では、(SrO)(Nb1−aはa=6/7まで、PbOを放出しながらPZTと反応する。このPbOは少量の、通常0.1−5mol%の、混合物中に既に存在するPbO添加物に追加され、焼結助剤として働く。

【化12】

【0063】
a=6/7の場合、クリオライト化合物Sr(SrNb)O11O;1を有するPZTホスト格子の混晶形成には選択肢があり、SrイオンはBサイトあるいは酸素空孔に含まれる。PZT/ドーピング剤混晶系において、このクリオライト化合物の関与は1>a>6/7の範囲の全領域で効果を発揮し、即ち、PZTホスト格子中でのSr陽イオンによるBサイトの占有の可能性は常にNb陽イオンの導入を伴う。
【0064】
0≦x≦1の範囲内の位相範囲を有する化学式Sr(Sr2−2x/3Nb2+2x/3)O11+xO;1−xに従うクリオライト系は、PZTペロブスカイトホスト格子の混晶形成のため、PZTセラミックのドーピングに特に適している。一般式(SrO)(Nb1−aに従う混合物に関して、このクリオライト系の位相範囲は6/7≧a≧4/5の範囲で表される。酸素空孔V濃度の変動は、この位相範囲内の組成の変動を伴う。例えば、限界組成x=0(このとき、a=6/7)のとき、PZTホスト格子中では、比較的高い酸素空孔濃度[V]=1を有する固溶体Sr(SrNb)O11O;1が生じる。x=1/2(このとき、a=34/41)のとき、平均酸素空孔濃度[V]=0.5は、対応する化学式Sr(Sr5/3Nb7/3)O11.5O;0.5に従う。化学式Sr(Sr4/3Nb8/3)O12に従う。そして限界組成x=1(このとき、a=4/5)の場合、Sr陽イオンによるBサイトの占有を含むBサイトの原子化補償が生じるため、酸素空孔はもはや存在しない。
【0065】
4/5≧a≧2/3の範囲で組成(SrO)(Nb1−aを有するドーピング剤に関して、クリオライト系の限界組成を超える含有量のNbのため、PZTペロブスカイト混晶のAサイトに鉛空孔(VPb)を有する化合物Pb0.5Pb;0.5NbOの形成が生じ、このとき、焼結助剤として加えられた酸化鉛(PbO)の一部が結合する。反応式<7>、<8>、および<9>に記載された、ドープされたPZT混晶系でのPbOのSrOによる置換は、PbOとSrOとの塩基性の差によって起きる。酸塩基反応の発熱特性では、(例えば焼結中などで)温度上昇に伴って上記の平衡反応が反応物方向に、すなわち、平衡反応の左側に移動するという結果になる。この大幅に温度依存的な平衡移動の1つの利点は、例えば、焼結中に1>a>2/3の範囲の(SrO)(Nb1−aをドープした結果として(少なくとも一時的な)酸素空孔濃度の上昇が促進され、このとき、これは焼結圧縮とセラミックの最適化された微細構造の形成とに極めて有益な効果を有することである。焼結後の冷却の間、平衡反応は、ドーピング量と等量のPbOを放出しながら、生成物の方向に、すなわち、平衡反応の右側に移動する。ここで特に有利なのは、圧電材料の、特に電場内で使用する際の、長期的な安定に不都合な酸素空孔濃度の上昇の、同時に関連付けられた著しい減少、さらには排除である。PZAホスト格子による固溶体中のドーピング剤の相互作用は、Sr陽イオンの正規Bサイトから正規Aサイトへの完全な移動、すなわち、配位数12のPb陽イオンの部分的置換を含む。
【0066】
高解像度の固相解析測定法を用いて、ここで記載する圧電材料の正規Aサイト(配位数12)と正規Bサイト(配位数6)との両方での熱処理後のSr陽イオンの割合は解析定量される。このとき、正規Bサイトでの顕著に高いSr陽イオン濃度が、例えば、Sr全量の約10%を占める割合が明白に検出される。これらの実験の1つの結果としては、焼結後の冷却過程での反応式<9>に従う所定の反応は、反応生成物の方向に完全に振り切れはしないということである。
【0067】
1>a>2/3の範囲の(SrO)(Nb1−aでドープされたPZTセラミック中の酸素空孔の完全に近い排除によって、ストロンチウム全量の著しい割合が、圧電多層アクチュエータでの使用に特に向いた目覚しい材料特性の基となる圧電材料のペロブスカイト混晶のBサイトに残る。
【0068】
さらに、PZT混晶系中に追加成分Zをさらに含む圧電材料が提供される。これによって、圧電特性を所定の値に修正調節することが可能となる。追加成分Zは以下の化合物を含み得る。
[Pb(FeIII2/3VI1/3)O
[Pb(MII1/32/3)O](ただし、MIIはMg,Zn,Co,Ni,MnあるいはCuを、MはNb,TaあるいはSbを表す)
[Pb(MIII1/21/2)O](ただし、MIIIはFe,Mn,CrあるいはGaを、MはNb,TaあるいはSbを表す)
[Pb(MIII2/3VI1/3)O](ただし、MIIIはMn,Cr,Gaを、MVIはWを表す)
[Pb(Li1/43/4)O](ただし、MはNb,TaあるいはSbを表す)
【0069】
さらに、この圧電材料は[Pb(FeIII2/3VI1/3)O]無しでもよい。
【0070】
さらに、少なくとも1つの誘電体層と少なくとも2つの内部電極とを有する圧電多層アクチュエータであり、少なくとも1つの誘電体層は本明細書に記載の圧電材料を含むものが提供される。
【0071】
さらに、圧電素子の製造方法が提供され、このとき、素子は本明細書に記載の材料を含み、酸素空孔の濃度はセラミック材料の焼結中に増加し、冷却中に再び減少する。
【0072】
この材料は、以下の実施例で詳細に説明されるだろう。
【実施例1】
【0073】
Pb(Zr0.53Ti0.47)Oで表されるPZTセラミックへの、例えば3.425mol%(SrO)34/41(Nb7/41(これは0.5mol%[Sr(Sr5/3Nb7/3)O11.5O;0.5]に等しい)のドーピング、および、1mol%PbOの添加は、以下の化学式で表され、
[Pb(Zr0.53Ti0.47)O0.995[Sr(Sr5/3Nb7/3)O11.5O;0.50.005
[PbO]0.01
熱処理過程で、以下の化学式で表される圧電セラミックとなり、
[Pb(Zr0.53Ti0.47)O0.973[Sr(Sr4/3Nb8/3)O120.00213
[Sr(Zr0.53Ti0.47)O0.017[PbVPb(Nb)]0.003(PbO)0.029
このとき、角括弧の成分は、ペロブスカイト混晶相を形成しながら、互いに溶解し、かつ、酸素空孔は無視できるほど少ない濃度でのみ存在する。Nbの放出を伴うPbOのSrOによる漸次的置換の結果として、このセラミックにおいて正規Aサイト(Pbサイト)での鉛空孔(VPb)の形成が生じ、全ストロンチウム量の約10%が配位数6のNb陽イオンの近傍の正規Bサイト(Zr/Tiサイト)に残る。
【実施例2】
【0074】
1>a>2/3の範囲で化学式(SrO)(Nb1−aで表されるドーピング剤に関して、同様の構造的構成を示す関連する系を代替的に、あるいは、付加的に使用してもよい。例えば、1>a>2/3の範囲で1<p<0である化学式[(BaO)1−p(CaO)[Nb1−aで表される化合物を使用してもよい。この場合、6/7≧a≧4/5の範囲で、これに適切に関連付けられた1/3≧p≧1/4の範囲のパラメータpを有する混晶系相が、ドーピング剤である化学式Ba(Ca2−2x/3Nb2+2x/3)O11+xO;1−x(このとき、0≦x≦1)で表されるクリオライト系と、ホスト格子であるPZTとの間に形成される。混晶中のドーピング剤は、反応式<4>から<6>に記載の温度依存性の平衡反応に従う。
【0075】
1>a>6/7の範囲で1≧p≧0のとき、化学式[(BaO)1−p(CaO)[Nb1−aで表される化合物は、a=6/7、p=1/3に達するまでの間、反応式<1a>および<1b>で示されるように、PZTと反応し、Ba(CaNb)O11を有するPZT混晶相が形成され、この化合物は、BサイトにCa陽イオンを有するクリオライト型構造を示し、酸素空孔Vを含む。PZT/ドーピング剤混晶系のクリオライト成分の協調作用は1>a>6/7の範囲内の全領域で生じ、すなわち、正規BサイトへのNb陽イオンの導入は、BサイトのCa陽イオンによる占有の可能性を常に伴う。反応式<4>から<6>に類似した温度依存性の反応を考慮に入れる必要がある。
【0076】
例えば、化学式Pb(Zr0.52Ti0.48)Oで表されるPZTセラミックへの3.425mol%[(BaO)12/17(CaO)5/1734/41[Nb7/41(これは0.5mol%[Ba(Ca5/3Nb7/311.50.5に等しい)のドーピング、および、1mol%PbOの添加は、以下の化学式で表され、
[Pb(Zr0.52Ti0.48)O0.995[Ba(Ca5/3Nb7/3)O11.50.50.005
[PbO]0.01
熱処理過程で、以下の化学式で表される圧電セラミックとなり、
[Pb(Zr0.52Ti0.48)O0.973[Ba(Ca4/3Nb8/3)O120.00213
[Ba(Zr0.52Ti0.48)O0.0115[Ca(Zr0.52Ti0.48)O0.0055
[PbVPb(Nb)]0.003(PbO)0.029
このとき、全カルシウム量の約34%はペロブスカイト混晶の正規Bサイトに導入される。
【0077】
同様に、1>a>2/3の範囲の[(BaO)1−p(CaO)[Nb1−aの代わりに、化学式[(BaO)1−p(SrO)[Nb]で表される材料系、あるいは、化学式[(SrO)1−p(CaO)[Nb]で表される材料系をドーピング剤として使用してもよく、このとき、6/7≧a≧4/5の範囲で、これに適切に関連付けられた1/3≧p≧1/4の範囲のパラメータpを有する、クリオライト系Ba(Ca2−x/3Nb2+2x/3)O11+xO;1−xあるいはSr(Ca2−2x/3Nb2+2x/3)O11+xO;1−x(ただし、0≦x≦1)から形成された化合物は、混晶を形成しながら、PZTホスト格子に溶解し、反応式<4>から<6>に類似した温度依存性の平衡反応でのPZTとの相互作用を始め得る。
【0078】
本明細書に記載の圧電材料を製造するために、PbあるいはPbCOとTiOとZrOとの混合物が、あるいは代替としては(Zr1−yTi)O前駆体が、あるいは同様にSrCOおよびNbが、また場合によっては、例えばPb(FeIII2/3VI1/3)Oのような別の添加物が提供される。例示的組成を表1および2に列挙する。また代替物としては、SrCOは等量のBaCOあるいはCaCOで置換してもよく、あるいは、BaCOをSrCOの代わりに原料としてSrCOあるいはCaCOと比例する割合で使用される。また代替物としては、アルカリ土類炭酸塩を、例えば、SrTiO、BaTiOあるいはCaTiOなどのアルカリ土類チタン酸塩で置換した混合物、あるいは、望ましい組成に従って以下の化学式、
Sr(Sr2−2x/3Nb2+2x/3)O11+xO;1−x
Ba(Sr2−2x/3Nb2+2x/3)O11+xO;1−x
Ba(Ca2−2xNb2+2x/3)O11+xO;1−x、あるいは
Sr(Ca2−2x/3Nb2+2x/3)O11+xO;1−x(ただし、0≦x≦1)
で表される上記のクリオライト化合物から作製済みの化合物を各割合で加えた混合物を使用してもよい。
【0079】
ペロブスカイト構造を有する得られたPZT混晶相の正規BサイトへのSrあるいはCa陽イオンの部分的ドーピングを有する材料の例示的組成を、表1および2に列挙する。
【0080】
パラメータdに関して2つの数値が併記されている場合、これらはそれぞれ、同じ行に列記されている他のパラメータ値と組み合わせて、別々の実施例として見做されるべきである。
【表1】


【表2】

【0081】
こうした混合物は、好ましくは、ZrとTiの比率に関してモルフォトロピック相境界(MPB)に調節され、必要であれば、焼結助剤としてPbOの少量の余剰分が加えられる。
【0082】
乾あるいは湿化学的均一化の後、この混合物は一般的には900−1000℃でか焼される。この焼結活性は、微粉化によって、所望の焼結温度、すなわち、約900−1200℃の範囲に調節され得る。
【0083】
こうして得られた粉末材料は、例えば、分散剤、あるいは、場合によっては他の添加剤などの助剤を使用して、一般的に約50−80%の固形成分含有量を有する粉末懸濁液に変換される。これは、例えば、スプレー乾燥により加圧成形顆粒に変換することができ、あるいは、例えば、直接セラミックのグリーンフィルムに加工することができる。さらなる加工工程に必要な特性を調節するため、一般的に、例えば、2−15%の結合剤が、あるいは同様に、必要であれば、追加の添加剤が、粉末懸濁液に加えられてもよい。
【0084】
標本として、粉末顆粒の円盤状のペレットが製造される一方、長方形の多層板、以降ではMLPと呼ぶ、が、セラミックのグリーンフィルムを積層・ラミネート加工することで製造される。この標本は、通常の方法と加工工程によって、結合を取り除かれる。また、標本として、数百におよぶ内部電極を含み得る圧電多層アクチュエータが使用可能である。Cuあるいは他の卑金属からなる内部電極の場合、内部電極の酸化あるいはセラミックの減少を防ぐために、熱処理過程での炉内雰囲気の正確な検査と制御に注意を払う必要がある。
【0085】
上記の圧電材料は、圧電および電気機械的特性に有利な微細構造を有するセラミックへの高い焼結圧縮を可能にする。標本の、例えば、金電極のスパッタリングによる接続の後、その誘電特性、特に、圧電特性が測定される。圧電多層アクチュエータにおいて、接続は、適切な金属ペーストの塗布と焼成によって有利に設けられる。約T≒250−380℃の範囲のキュリー温度を有するこの圧電材料の極性は、一般的には約2kV/mmである。
【0086】
こうした異なる標本から得られた測定値および特性のいくつかが、圧電材料の実施例として表3から7にまとめられている。
【0087】
誘電率εに加えて、圧電効果に対してあてはまる関係式S=d33×Eに従うひずみSが、電場強度Eの影響下での圧電定数d33を決定するために測定される。このとき、下付き数字の”3”は分極によって確立された分極軸の方向、あるいは同様に、印加された電場強度の方向を示す。さらに、誘電損失の測定値が提供される。このとき、この損失は電気エネルギー損失の全電気エネルギーに対する比率であり、測定したヒステリシス曲線で囲まれる面積から得られる。
【0088】
以下の化学式で表される本発明に係る圧電材料を有する、円盤状MLP標本(直径:13mm、高さ:1mm)および多層アクチュエータ(350のAg/Pd内部電極、誘電層の厚さ:80μm、アクチュエータ面積:3.5×3.5mm)の、小信号および大信号の測定値
[Pb(Zr1−yTi)O0.973[Sr(Sr4/3Nb8/3)O120.00213
[Sr(Zr1−yTi)O0.017[PbVPb(Nb)]0.003(PbO)0.029
【表3】

【0089】
以下の化学式で表される本発明に係る圧電材料を有する、円盤状MLP標本(直径:13mm、高さ:1mm)の、小信号および大信号の測定値
[Pb(Zr1−yTi)O0.974[Sr(Sr4/3Nb8/3)O120.00183
[Sr(Zr1−yTi)O0.0146[PbVPb(NbO)]0.0097(PbO)0.01
【表4】

【0090】
以下の化学式で表される本発明に係る圧電材料を有する、円盤状MLP標本(直径:13mm、高さ:1mm)の、小信号および大信号の測定値
[Pb(Zr1−yTi)O0.973[Sr(Sr4/3Nb8/3)O120.0020
[Sr(Zr1−yTi)O0.0161[PbVPb(NbO)]0.0117(PbO)0.0078
【表5】

【0091】
以下の化学式で表される本発明に係る圧電材料を有する、円盤状MLP標本(直径:13mm、高さ:1mm)の、小信号および大信号の測定値
[Pb(Zr1−yTi)O0.973[Sr(Sr4/3Nb8/3)O120.0020
[Sr(Zr1−yTi)O0.0161[PbVPb(NbO)]0.0093(PbO)0.010
【表6】

【0092】
以下の化学式で表される本発明に係る圧電材料を有する、円盤状MLP標本(直径:13mm、高さ:1mm)の、小信号および大信号の測定値
[Pb(Zr1−yTi)O0.973[Sr(Sr4/3Nb8/3)O120.0020
[Sr(Zr1−yTi)O0.0161[PbVPb(NbO)]0.0093(PbO)0.010
【表7】

【0093】
以下の化学式で表される本発明に係る圧電材料を有する、円盤状MLP標本(直径:13mm、高さ:1mm)の、小信号および大信号の測定値
[Pb(Zr1−yTi)O0.973[Ba(Ca4/3Nb8/3)O120.00213
[Ba(Zr1−yTi)O0.0115[Ca(Zr1−yTi)O0.0055[Pb0.5Pb;0.5(NbO)]0.006(PbO)0.02
【表8】

【0094】
およびMのイオンとパラメータa,pおよびcとを適切に選択することで、誘電率εと圧電定数d33の値を得ることができるが、これは、かつては類似した材料において別の成分を添加することでのみ得ることができたものである。この付加的な成分としては、例えば、KNbO、あるいは、追加の(重)金属、例えば、鉄などを含む錯体が使用されていた。
【0095】
一方、表3−8の測定で使用した材料は、好ましくは、成分P,D,PbOおよびこれらの反応生成物のみで構成される。これらの場合、別の成分Zの添加を全く無しで済ますことができる(d=0)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子式P1−c−d(ただし、0.0255<c<0.0443かつ0≦d≦0.5)を有する材料を含む圧電材料であって、
Pが化合物Pb(Zr1−yTi)O(ただし、0.50≦1−y≦0.60)を表し、
Zがペロブスカイト型構造の付加的成分を表し、
Dが一般式[(MO)1−p(MO)[Nb1−a(ただし2/3<a<1かつ0<p<1)(このとき、MはBa1−tSr、ただし0≦t≦1、を表し、Mはストロンチウムとカルシウムとの両方あるいは一方を表す)を表し、
前記材料Dがクリオライト型の構造を含む、圧電材料。
【請求項2】
組成P1−c−d[PbO]を有し、
このときDは化学式[(BaO)1−p(CaO)(Nb1−a](a=34/41かつp=5/17)で表されるクリオライト化合物を表し、これは等価なクリオライト表記ではBa(Ca5/3Nb7/3)O11.50;0.5(ただし、0<c≦0.15、0≦m≦0.05かつd=0)と表される、
請求項1に記載の圧電材料。
【請求項3】
化学式
[Pb(Zr0.53Ti0.47)O0.973[Ba(Ca4/3Nb8/3)O120.00213
[Ba(Zr0.53Ti0.47)O0.0115[Ca(Zr0.53Ti0.47)O0.0055
[PbVPb(Nb)]0.003(PbO)0.029
で表される組成を有する、
請求項1又は2に記載の圧電材料。
【請求項4】
カルシウム陽イオンの34%がPZTホスト格子の正規Bサイトを占める、請求項3に記載の圧電材料。
【請求項5】
少なくとも1つの誘電体層と少なくとも2つの電極とを含み、
少なくとも1つの前記誘電体層は請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電材料を含む、
圧電多層アクチュエータ。
【請求項6】
酸素空孔の濃度はセラミック材料の焼結中に増加し、冷却中に再び減少する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電材料を含む圧電素子を製造するための方法。
【請求項7】
圧電多層アクチュエータを製造するための請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電材料の使用法。

【公開番号】特開2013−79194(P2013−79194A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−278505(P2012−278505)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2009−551199(P2009−551199)の分割
【原出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】