説明

圧電発振器

【課題】、圧電振動子のパッケージ内部にIC部品を組み込んだ圧電発振器において、共
通のパッケージを使用してサイズや形状が異なる複数種類の圧電振動素子を収容できるば
かりでなく、片持ち支持、及び両持ち支持の両支持構造に対応することができる圧電発振
器を提供する。
【解決手段】一端縁寄りに幅方向に沿って分離して配置された突起状の2つの素子搭載パ
ッド10、11を有し、他端寄りの幅方向中央部に突起状で且つ導電パッドを備えた第1
の枕部材15を有し、長手方向略中央部の幅方向中央部に突起状で且つ導電パッドを備え
た第2の枕部材20を有し、第1の枕部材と第2の枕部材との間にIC部品収容凹所25
を備えた絶縁基板4、素子搭載パッド上に搭載される圧電振動素子30を備えた圧電振動
子2と、IC部品収容凹所内に収容されたIC部品と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子のパッケージ内部にIC部品を組み込んだ電圧制御水晶発振器(
VCXO)等の圧電発振器の改良に関し、特に共通のパッケージを使用してサイズ、形状
が異なる複数種類の圧電振動素子を収容できるばかりでなく、片持ち支持、及び両持ち支
持の両支持構造に対応することができる圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信市場においては、各種電装部品の実装性、保守・取扱性、装置間での部品の
共通性等を考慮して、各機能毎に部品群のモジュール化を推進するメーカーが増えている
。また、モジュール化に伴って、小型化、低コスト化も強く求められている。
特に、基準発振回路、PLL回路、及びシンセサイザー回路等、機能及びハード構成が
確立し、且つ高安定性、高性能化が要求される回路部品に関してモジュール化への傾向が
強まっている。更に、これらの部品群をモジュールとしてパッケージ化することによりシ
ールド構造が確立しやすくなるという利点がある。
複数の関連部品をモジュール化、パッケージ化することにより構築される表面実装用の
電子部品としては、例えば圧電振動子、圧電発振器、SAWデバイス等を例示することが
できる。
これらの電子部品のうち圧電発振器は、圧電振動子に対して発振回路部品、及び温度補
償部品を接続した構成を有しているが、その小型化を図るために圧電振動子のパッケージ
内に発振回路、温度補償回路を構成するIC部品を組み込んだタイプが開発されている。
特に、電圧制御水晶発振器(VCXO)にあっては、目的とする発振周波数や振れ幅等
の各種特性の相違に応じてサイズ、形状の異なる種々の水晶振動素子(圧電振動素子)を
選定して使用する必要がある一方で、サイズや形状が異なる水晶振動素子毎に異なったサ
イズ、構成を有したパッケージを準備(製造、保管、管理)することは非効率的であり、
コストアップの原因ともなっている。
【0003】
このような従来の不具合に対処するために、特許文献1には、水晶振動子のパッケージ
内に水晶振動素子と共に発振回路等を構成するIC部品を内蔵した水晶発振器において、
水晶振動素子の長さ寸法が異なっていても共通使用できるようにしたパッケージが開示さ
れている。
しかし、この従来例にあっては、長手方向寸法や幅方向寸法の異なる水晶振動素子を片
持ちでしか支持することができず、耐衝撃性を確保する上で有効な両持ち構造により支持
するための構成は開示されていない。また、短冊形状の水晶振動素子を片持ちすることの
みを想定しており、円形その他の水晶振動素子を支持するための構成は開示されていない

このため、水晶振動素子を両持ち構造としたり、非短冊形状の水晶振動素子を支持する
場合には、このパッケージ構造は採用できず、別の専用パッケージを製造して保管、管理
する必要が生じる。このため、パッケージの種類が増大し、製造コスト、管理コストが増
大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−260512公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、圧電振動子のパッケージ内部にIC部品を
組み込んだ圧電発振器において、共通のパッケージを使用してサイズや形状が異なる複数
種類の圧電振動素子を収容できるばかりでなく、片持ち支持、及び両持ち支持の両支持構
造に対応することができる圧電発振器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形
態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]長手方向一端縁寄りに幅方向に沿って分離して配置された突起状の2つの
素子搭載パッドと、長手方向他端寄りの幅方向中央部に突起状で且つ導電パッドを備えた
第1の枕部材と、長手方向略中央部の幅方向中央部に突起状で且つ導電パッドを備えた第
2の枕部材と、前記第1の枕部材と前記第2の枕部材との間に設けられたIC部品収容凹
所と、該IC部品収容凹所内に設けられたIC部品搭載パッドとを有する絶縁基板と、前
記素子搭載パッド上に搭載される圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材
と、前記IC部品搭載パッドと電気的に接続される電極を有し、且つ発振回路を構成する
IC部品と、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【0008】
パッケージ内に設けられる素子搭載パッドの他に、導電パッドを備えた第1と第2の枕
部材を配置したので、サイズの違いや、短冊状(矩形)、円形、長円形、楕円形等の形状
の違いに関係なく、圧電振動素子を片持ち支持するのみならず、両持ち支持することがで
きる共通パッケージ構造を備えた圧電発振器を提供することができる。
【0009】
[適用例2]前記2つの素子搭載パッドの一方は、前記絶縁基板の長手方向一端寄りの
幅方向中央部に少なくとも一部が位置していることを特徴とする圧電発振器。
【0010】
一方の素子搭載パッドが絶縁基板の幅方向中央部にまで延在しているので、圧電振動素
子を両持ち支持する場合等の必要に応じて、その一端縁中央部を接着保持することが可能
となる。
【0011】
[適用例3]前記素子搭載パッドの高さH1と、前記第1の枕部材の高さH2と、前記
第2の枕部材の高さH3は、H1>H3<H2の関係にあることを特徴とする圧電発振器

【0012】
絶縁基板の長手方向略中央部に位置する第2の枕部材の高さが低く構成されているので
、圧電振動素子との干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の圧電発振器の一例としての電圧制御水晶発振器(VCXO)の縦断面図であり、(b)は水晶振動素子を搭載しているパッケージ内構成を示す平面図であり、(c)は水晶振動素子を搭載していないパッケージ内構成を示す平面図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る圧電発振器の縦断面図、及びパッケージ内構成を示す平面図である。
【図3】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る圧電発振器の縦断面図、及びパッケージ内構成を示す平面図である。
【図4】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る圧電発振器の縦断面図、及びパッケージ内構成を示す平面図である。
【図5】(a)及び(b)は円形の水晶振動素子30Dを両持ち支持した場合の組付け例を示す縦断面図、及びパッケージ内を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は本発明の圧電発振器の一例としての電圧制御水晶発振器(VCXO)の縦
断面図であり、(b)は水晶振動素子を搭載しているパッケージ内構成を示す平面図であ
り、(c)は水晶振動素子を搭載していないパッケージ内構成を示す平面図である。
水晶発振器(圧電発振器)1は、表面実装用のパッケージ3、及びパッケージ3内に収
容された水晶振動素子(圧電振動素子)30から構成される水晶振動子(圧電振動子)2
と、水晶振動子2のパッケージ3内に収容されたIC部品40と、を備えている。
パッケージ3は、絶縁基板4と、絶縁基板4上の凹所を気密封止する蓋部材50と、か
ら構成されている。
絶縁基板4は、セラミックシート等の絶縁シートを積層することによって構成され底部
に実装端子5を有した底板4aと、底板周縁から立設した外壁4bと、底板4aの上面と
外壁4bとによって形成される凹所6と、凹所6の内底面(底板4aの上面)の長手方向
(A)の一端縁(左端縁)寄りにおいて幅方向(B)に沿って分離して配置された突起状
の2つの素子搭載パッド10、11と、長手方向他端寄りの上面の幅方向中央部に配置さ
れた突起状で且つ導電パッド16を備えた第1の枕部材15と、長手方向略中央部上面の
幅方向中央部に配置された突起状で且つ導電パッド21を備えた第2の枕部材20と、第
1の枕部材15と第2の枕部材20との間に配置されたIC部品収容凹所25と、を有す
る。
【0015】
IC部品収容凹所25の内部に設けたIC部品搭載パッド26上にはIC部品40の電
極が半田等により電気的機械的に接続される。IC部品40は、発振回路、及び温度補償
回路を構成する。
素子搭載パッド10、11の高さH1と、第1の枕部材15の高さH2と、第2の枕部
材20の高さH3は、H1>H3<H2の関係にある。このため、以下に説明するように
、長手方向寸法及び幅方向寸法が短尺な水晶振動素子を素子搭載パッド10、11を用い
て片持ち支持することができるばかりでなく、一方の素子搭載パッドと第2の枕部材20
を用いて両持ち支持することが可能となる。また、長手方向寸法及び幅方向寸法が長尺な
水晶振動素子を素子搭載パッド10、11を用いて片持ち支持することができるばかりで
なく、一方の素子搭載パッドと第1の枕部材15を用いて両持ち支持することが可能とな
る。
水晶振動素子30は、例えば所謂短冊形の水晶基板(圧電基板)31と、水晶基板31
の表裏両面に夫々形成された励振電極32と、各励振電極から水晶基板の長手方向一端縁
まで引き出されたリード端子33と、を備え、各リード端子33は導電性接着剤35によ
って各素子搭載パッド10、11上に電気的に接続されている。
図1(a)(b)に示した例に係る水晶振動素子30はその長手方向寸法、及び幅方向
寸法が短尺な片持ちされるタイプであるため、その長手方向一端縁を各素子搭載パッド1
0、11と接合されることにより、遊端状の他端縁は凹所の長手方向中間位置に設けた第
2の枕部材20の上面と非接触状態となっている。特に、第2の枕部材20の高さH3を
素子搭載パッド10、11の高さよりも低くしている結果として、水晶振動素子30の遊
端部と第2の枕部材20との接触を回避することができる。
【0016】
また、一方の素子搭載パッド10は凹所6内の奥側の外壁4b’から延びる短尺形状で
あり、他方の素子搭載パッド11は凹所の手前側の外壁4b”から延びる長尺形状である
。即ち、両素子搭載パッド10、11の内側端縁間のギャップGは凹所6の幅方向Bの中
心部には位置しておらず、奥側の外壁4b’側に偏位している。換言すれば、2つの素子
搭載パッドの一方(本例では、素子搭載パッド11)は、絶縁基板の長手方向一端寄りの
幅方向中央部に少なくとも一部(内側端部)が位置している。
このため、幅方向寸法が短尺な水晶振動素子30の2つのリード端子33を各素子搭載
パッド10、11に対して一対一で適切に対応させて導電性接着剤35により接続した状
態で奥側の外壁4b’に沿った偏位位置に搭載することができる。
また、このパッケージ3によって長手方向寸法、及び幅方向寸法が長尺な水晶振動素子
30Aを片持ち支持する場合には、図2(a)(b)に示すように水晶振動素子30の一
端縁に位置する2つのリード端子33を各素子搭載パッド10、11に対して一対一で対
応させて導電性接着剤35により接続した状態で凹所6の幅方向中央部に搭載することが
できる。この際、導電性接着剤35の厚みを利用することにより、水晶振動素子30Aの
遊端状の他端縁を第1の枕部材15の上方に非接触状態で支持することができる。
【0017】
一方、短尺且つ両持ちされるリード端子構造を備えた水晶振動素子30Bをパッケージ
3によって両持ち支持する場合には、図3(a)(b)に示すように水晶振動素子の一方
の端縁(一方のリード端子33を含む)の中央部を一方の素子搭載パッド11に対して導
電性接着剤35により電気的機械的に接続支持する一方で、他方の端縁(他方のリード端
子33を含む)の中央部を第2の枕部材20上の導電パッド21に対して導電性接着剤3
5により電気的機械的に接続支持する。この際、第2の枕部材20の高さH3は、素子搭
載パッド11、及び第1の枕部材20の各高さH1、H2よりも低いため、水晶振動素子
30Bの振動部に干渉して共振周波数を変動させる虞がない。素子搭載パッド10と非対
称な形状を有する素子搭載パッド11の内側端縁は凹所6の幅方向中心部に相当する位置
にまで延長形成されているため、水晶振動素子30Bの一端縁の幅方向中心部を接着保持
することができる。水晶振動素子30Bの他端縁の幅方向中心部に相当する位置には第2
の枕部材20が位置しているため、この部位を接着保持することができる。
【0018】
更に、長尺の水晶振動素子30Cをパッケージ3によって両持ち支持する場合には、図
4(a)(b)に示すように水晶振動素子の一方の端縁(一方のリード端子33を含む)
の中央部を一方の素子搭載パッド11に対して導電性接着剤35により電気的機械的に接
続支持する一方で、他方の端縁(他方のリード端子33を含む)の中央部を第1の枕部材
15上の導電パッド16に対して導電性接着剤35により電気的機械的に接続支持する。
なお、両持ち支持用の水晶振動素子30B、30Cは、水晶基板31の表裏両面に設け
た励振電極32から夫々反対方向へリード端子33が延びているため、各リード端子を一
方の素子搭載パッド11と第2の枕部材20または第1の枕部材15によって支持するこ
ととなる。
次に、本発明のパッケージ3は、上記の如き矩形の水晶振動素子以外にも、円形(高周
波対応)、楕円形、長円形状の各水晶振動素子を片持ち、或いは両持ち状態で保持するこ
とが可能である。
【0019】
図5(a)及び(b)は円形の水晶振動素子30Dを両持ち支持した場合の組付け例を
示す縦断面図、及びパッケージ内を示す平面図である。
水晶振動素子30Dは、円盤状の水晶基板31の両主面に励振電極32を形成すると共
に、各励振電極32から反対方向へリード端子33を延長形成した構成を備えている。
一方のリード端子33は素子搭載パッド11に対して導電性接着剤35により電気的機
械的に接続されると共に、他方のリード端子33は第2の枕部材20に対して導電性接着
剤35により電気的機械的に接続される。
なお、円形の水晶振動素子30Dを片持ち支持する場合には、水晶振動素子30Dは、
円盤状の水晶基板31の両主面に励振電極32を形成すると共に、各励振電極32から同
一方向へリード端子33を延長形成した構成を備えたものとする。そして、各リード端子
33、33を各素子搭載パッド10、11に対して導電性接着剤35により電気的機械的
に接続すると共に、リード端子が存在しない側の水晶基板端縁は第2の枕部材20から離
間させた状態とする。
上記実施形態では、圧電発振器の代表例として水晶発振器を例示したが、本発明は圧電
材料から成る圧電振動素子を使用した発振器一般に適用できる。
【符号の説明】
【0020】
1…水晶発振器、2…水晶振動子(圧電振動子)、3…パッケージ、4…絶縁基板、4
a…底板、4b…外壁、4b”…外壁、5…実装端子、6…凹所、10、11…素子搭載
パッド、15…第1の枕部材、16…導電パッド、20…第2の枕部材、21…導電パッ
ド、25…IC部品収容凹所、26…IC部品搭載パッド、30…水晶振動素子(圧電振
動素子)、30A…水晶振動素子、30B…水晶振動素子、30C…水晶振動素子、30
D…水晶振動素子、31…水晶基板(圧電基板)、32…励振電極、33…リード端子、
35…導電性接着剤、40…IC部品、50…蓋部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向一端縁寄りに幅方向に沿って分離して配置された突起状の2つの素子搭載パッ
ドと、長手方向他端寄りの幅方向中央部に突起状で且つ導電パッドを備えた第1の枕部材
と、長手方向略中央部の幅方向中央部に突起状で且つ導電パッドを備えた第2の枕部材と
、前記第1の枕部材と前記第2の枕部材との間に設けられたIC部品収容凹所と、該IC
部品収容凹所内に設けられたIC部品搭載パッドとを有する絶縁基板と、
前記素子搭載パッド上に搭載される圧電振動素子と、
該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、
前記IC部品搭載パッドと電気的に接続される電極を有し、且つ発振回路を構成するI
C部品と、
を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記2つの素子搭載パッドの一方は、前記絶縁基板の長手方向一端寄りの幅方向中央部
に少なくとも一部が位置していることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記素子搭載パッドの高さH1と、前記第1の枕部材の高さH2と、前記第2の枕部材
の高さH3は、
H1>H3<H2の関係にあることを特徴とする請求項1、又は2に記載の圧電発振器


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−183398(P2010−183398A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25651(P2009−25651)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】