説明

圧電発振器

【課題】ケースの着脱が容易に行えることにより、調整作業の生産性が向上する圧電発振器の提供。
【解決手段】水晶振動子10と、発振用素子20と、加熱用素子30とを収容するケース60と第2の回路基板50とを備え、ケース60と第2の回路基板50とが互いに係合する係合部80を有し、係合部80が、ケース60の側壁61から延在された脚部62と、第2の回路基板50に形成された貫通孔部53とを有し、脚部62が、貫通孔部53に係止される係止部63を有し、係止部63は、根元部と先端部との間の中間部で、貫通孔部53の孔径より大きくなり、中間部から根元部及び先端部に向かうに連れて小さくなるように形成され、貫通孔部53が弾性を有し、脚部62が、貫通孔部53に抜き差しされる際に、貫通孔部53の弾性変形により、係止部63が貫通孔部53を通過することで、ケース60が第2の回路基板50に係止及び係止解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器に関し、特に周波数安定性が高い圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動子などを加熱することにより略恒温状態に保つことで、周波数変化を抑制するタイプの圧電発振器は、周波数安定性が高いことから、高精度が要求される計測器、基地局用通信機器などに用いられている。
このタイプの圧電発振器に関しては、下面に大開口を有し上面に小開口を有する箱状の本体ケース(以下、ケースという)に、2種類のプリント基板(以下回路基板という)及び圧電振動子、ヒーターなどを収容し、小開口に対応した位置の回路基板上に調整用部品の搭載領域を設けた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、回路部品を電磁障害などから守るための金属ケースを回路基板に保持する構成として、金属ケースのくびれを有する脚部を回路基板の取り付け孔に通してからねじり、脚部の一部を回路基板に係止させる構成や、ばね性を有する金属ケースの脚部を重ね合わせるように折り曲げて、回路基板の取り付け孔に押し込み、取り付け孔から出た脚部の折り返し部を回路基板に係止させる構成などが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−203995号公報
【特許文献2】特開平5−82983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記圧電発振器は、ケースと回路基板とが、容易に分離されないように接着剤などを用いて接合されていることから、ケース接合後の調整作業などを可能とするために、ケースに小開口という開口部を設ける必要がある。
このことから、上記圧電発振器は、このケースの開口部から流入する外気により、圧電振動子の温度変化が発生する虞がある。
【0006】
上記圧電発振器は、この圧電振動子の温度変化を避けるために、開口部を覆う外装ケースという別部材が必要となる。
したがって、上記圧電発振器は、開口部から流入する外気による圧電振動子の温度変化を回避するために、別部材の製造コストと別部材の取り付け工数コストとが、製造コストに上乗せされるという問題がある。
【0007】
この問題を解決する一つの方策としては、ケースを着脱可能とする構成が考えられる。
ケースを着脱可能とする構成としては、例えば、上記圧電発振器の小開口を廃止したケースに、特許文献2の金属ケースの脚部を組み合わせた構成が考えられる。
【0008】
しかしながら、特許文献2の金属ケースの脚部は、回路基板への着脱の際に、その都度治具を用いて脚部をねじる必要があったり、取り付け孔の外側に広がっていて回路基板に係止されている脚部の折り返し部を、取り外しの際に、その都度治具を用いて取り付け孔内に押し戻す必要があったりする。
これにより、上記構成では、ケースの着脱が容易に行えないことから、上記圧電発振器に適用した場合に、ケースの着脱に工数を要し、調整作業などの生産性が悪化する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例にかかる圧電発振器は、圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させるとともに前記圧電振動子の発振周波数を調整する発振用素子と、前記圧電振動子を所定の温度に加熱する加熱用素子と、前記各構成要素を収容するケースと基板とを備え、前記ケースと前記基板とが互いに係合する係合部を有し、前記係合部が、前記ケースの側壁から前記基板側へ延在された脚部と、前記基板に形成された貫通孔部とを有して構成され、前記脚部が、前記貫通孔部に係止される係止部を有し、前記係止部が、鉤部と、前記鉤部から前記ケースの側壁へ向って延びた括れ部とを有し、前記鉤部は、前記脚部の延在方向と直交する方向における前記鉤部の寸法が前記貫通孔部の開口幅よりも大きい構成を有し、前記括れ部は、前記脚部の延在方向と直交する方向における前記括れ部の寸法が前記貫通孔部の開口幅以下の構成を有し、前記脚部及び前記貫通孔部の少なくともいずれか一方が弾性を有し、前記脚部及び前記貫通孔部の少なくともいずれか一方が弾性変形することで、前記係止部が前記貫通孔部を通過可能になり、前記ケースと前記基板との係止及び係止の解除が可能な構成であることを特徴とする。
【0011】
これによれば、圧電発振器は、ケースと基板とが互いに係合する(かかわり合う)係合部を有し、係合部が、ケースの側壁から基板側へ延在して形成された脚部と、基板に形成された貫通孔部とを有して構成されている。
そして、圧電発振器は、脚部が貫通孔部に係止される(かかわり合って止められる)係止部を有している。そして、係止部は、脚部の延在方向と直交する方向の内の少なくとも一方向の寸法が、鉤部で貫通孔部の開口幅より大きくなり、鉤部からケースの側壁へ向って延びた括れ部で貫通孔部の開口幅以下となっている。
そして、圧電発振器は、脚部及び貫通孔部の少なくともいずれか一方が弾性を有し、脚部が、貫通孔部に抜き差しされる際に、脚部及び貫通孔部の少なくともいずれか一方の弾性変形により、係止部が貫通孔部を通過することで、ケースが基板に係止及び係止解除される。
【0012】
これにより、圧電発振器は、基板の貫通孔部に脚部を単に抜き差しするだけで、ケースを容易に着脱できることから、組み立て後の圧電振動子の発振周波数などの調整作業を、ケースを一旦取り外して、発振用素子などの各構成要素を露出させることにより行うことができる。
これにより、圧電発振器は、特許文献1のような調整作業用の開口部をケースに設ける必要がないことから、開口部を覆う別部材の製造コストと別部材の取り付け工数コストとを、製造コストから削減することかできる。
【0013】
また、圧電発振器は、上記調整作業が基板からケースを一旦取り外すことにより行えることから、特許文献1のようなケースの開口部を介して行う場合と比較して、作業姿勢、作業範囲などの制約が少ない。
これにより、圧電発振器は、上記調整作業が容易に行えることから、調整作業の生産性を向上させることができる。
【0014】
また、圧電発振器は、ケースの着脱時に特許文献2のような、脚部をねじったり、脚部の折り返し部を取り付け孔(貫通孔部に相当)内に押し戻したりする作業が不要なことから、特許文献2の脚部を用いた場合と比較して、ケースの着脱工数を低減できるので、ケースの着脱を含めた調整作業の生産性を向上させることができる。
【0015】
[適用例2]上記適用例にかかる圧電発振器は、前記脚部が、前記脚部の延在方向に沿って、前記係止部の先端部から前記脚部の根元近傍まで形成された切り欠きを有し、前記脚部が前記貫通孔部に抜き差しされる際に、前記貫通孔部に当接した前記係止部が、前記切り欠き側に弾性変形して前記貫通孔部を通過し、通過後元の形状に戻ることで、前記係止部が前記基板に係止及び係止解除されることが好ましい。
【0016】
これによれば、圧電発振器は、脚部が抜き差しされる際に、貫通孔部に当接した係止部が、切り欠き側に弾性変形して貫通孔部を通過し、通過後元の形状に戻ることで、係止部が基板に係止及び係止解除される。
【0017】
このことから、圧電発振器は、切り欠きにより弾性を有した脚部と、基板に形成された貫通孔部とにより、脚部を抜き差しするだけで、ケースの係止及び係止解除が容易な係合部を構成することができる。
【0018】
[適用例3]上記適用例にかかる圧電発振器は、前記係止部が略球状に形成され、前記基板の前記貫通孔部に、平面視において、前記貫通孔部の側壁から周辺に向かって複数の切り込みが入れられることにより、弾性を有する複数の片持ち梁部が形成され、前記脚部が前記貫通孔部に抜き差しされる際に、前記係止部に当接した前記片持ち梁部が、前記脚部の延在方向に弾性変形して前記貫通孔部の前記開口幅が拡大することで、前記係止部が前記貫通孔部を通過し、通過後前記貫通孔部の前記開口幅が元に戻ることで、前記係止部が前記基板に係止及び係止解除されることが好ましい。
【0019】
これによれば、圧電発振器は、係止部が略球状に形成され、基板の貫通孔部に弾性を有した複数の片持ち梁部が形成されている。
そして、圧電発振器は、脚部が抜き差しされる際に、係止部に当接した片持ち梁部が、脚部の延在方向に弾性変形して貫通孔部の開口幅が拡大することで、係止部が貫通孔部を通過し、通過後貫通孔部の開口幅が元に戻ることで、係止部が基板に係止及び係止解除される。
【0020】
このことから、圧電発振器は、略球状の係止部を有する脚部と、基板の貫通孔部に形成された弾性を有する複数の片持ち梁部とにより、脚部を抜き差しするだけで、ケースの係止及び係止解除が容易な係合部を構成することができる。
【0021】
[適用例4]上記適用例にかかる圧電発振器は、前記脚部の延在方向に沿って切断された前記係止部の断面形状が略菱形に形成され、前記基板の前記貫通孔部に、平面視において、前記貫通孔部の側壁から周辺に向かって複数の切り込みが入れられることにより、弾性を有する複数の片持ち梁部が形成され、前記脚部が前記貫通孔部に抜き差しされる際に、前記係止部に当接した前記片持ち梁部が、前記脚部の延在方向に弾性変形して前記貫通孔部の前記開口幅が拡大することで、前記係止部が前記貫通孔部を通過し、通過後前記貫通孔部の前記開口幅が元に戻ることで、前記係止部が前記基板に係止及び係止解除されることが好ましい。
【0022】
これによれば、圧電発振器は、係止部の断面形状が略菱形に形成され、基板の貫通孔部に弾性を有した複数の片持ち梁部が形成されている。
そして、圧電発振器は、脚部が抜き差しされる際に、係止部に当接した片持ち梁部が、脚部の延在方向に弾性変形して貫通孔部の開口幅が拡大することで、係止部が貫通孔部を通過し、通過後貫通孔部の開口幅が元に戻ることで、係止部が基板に係止及び係止解除される。
【0023】
このことから、圧電発振器は、係止部の断面形状が略菱形に形成された脚部と、基板の貫通孔部に形成された弾性を有する複数の片持ち梁部とにより、脚部を抜き差しするだけで、ケースの係止及び係止解除が容易な係合部を構成することができる。
また、圧電発振器は、係止部の断面形状が略菱形に形成されていることから、係止部が略球状に形成されている場合と比較して、係止部の略菱形を構成する斜面により脚部の抜き差しをスムーズに行うことができる。
【0024】
[適用例5]上記適用例にかかる圧電発振器は、前記貫通孔部の側壁と前記基板の主面とが当接する角部に、面取りが施されていることが好ましい。
【0025】
これによれば、圧電発振器は、貫通孔部の角部に面取りが施されていることから、脚部が抜き差しされる際の、貫通孔部の角部や脚部の係止部の損傷を低減できるとともに、脚部の抜き差しがスムーズに行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式展開斜視図。
【図2】図1の模式断面図。
【図3】水晶発振器の係合部の動作を時系列的に示す模式断面図。
【図4】別の係合部の構成を示す模式断面図。
【図5】変形例の水晶発振器の要部構成を示す模式図。
【図6】第2の実施形態の水晶発振器の要部構成を示す模式図。
【図7】水晶発振器の係合部の動作を時系列的に示す模式断面図。
【図8】第3の実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式展開斜視図。
【図9】図8の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、圧電発振器の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の圧電発振器の一例としての水晶発振器の概略構成を示す模式展開斜視図である。図2は図1の模式断面図であり、図2(a)は、図1のA−A線での断面図、図2(b)は、図1のB−B線での拡大断面図である。
【0028】
図1、図2に示すように、第1の実施形態の水晶発振器1は、圧電振動子としての水晶振動子10、水晶振動子10を発振させるとともに水晶振動子10の発振周波数を調整する発振用素子20、水晶振動子10を所定の温度に加熱する加熱用素子30、これらの各構成要素などを搭載する第1の回路基板40、これらを収容するケース60及び基板としての第2の回路基板50などから構成されている。
【0029】
水晶発振器1は、平面形状が略矩形の第1の回路基板40に、水晶振動子10、発振用素子20、加熱用素子30などが搭載されている。
各構成要素が搭載されたガラエポ樹脂などからなる第1の回路基板40は、金属製の複数のリード端子70を介して、第2の回路基板50の一方の主面51に搭載されている。
第1の回路基板40と同様に、ガラエポ樹脂などからなる平面形状が略矩形の第2の回路基板50の他方の主面52には、図示しない外部端子が設けられており、水晶発振器1は、この外部端子を介して外部の機器に実装される。
【0030】
水晶振動子10は、2本のリード線11が一面から導出された略筒形の金属容器12内に、ATカットまたはSCカットなどの図示しない水晶振動片が気密に封入されている。
水晶振動子10は、リード線11を介して第1の回路基板40の一主面41側に搭載されている。
【0031】
平面視において、第1の回路基板40の一主面41の、水晶振動子10と重なる範囲には、加熱用素子30が搭載されている。
加熱用素子30は、水晶振動子10と第1の回路基板40との間に収まるように配置され、水晶振動子10を周波数が安定する所定の温度に加熱する。なお、加熱用素子30には、チップ抵抗、パワートランジスターなどが用いられ、ジュール熱により発熱する。
この加熱用素子30の発熱量は、サーミスターなどの感温素子31と直流制御用トランジスター32などを用いた温度制御回路により、水晶振動子10などが一定温度の略恒温状態になるように調整されている。なお、加熱用素子30は複数搭載されていてもよい。また、加熱用素子30は、水晶振動子10と重ならずに水晶振動子10の周囲に配置されていてもよい。
【0032】
第1の回路基板40の他主面42には、発振回路を構成し水晶振動子10を発振させるとともに水晶振動子10の発振周波数を調整する発振用素子20が搭載されている。なお、発振用素子20には、トランジスター、チップ抵抗、チップコンデンサーなどが用いられている。水晶振動子10は、この発振回路により所定の周波数で発振する。
【0033】
ケース60は、黄銅などの金属を用いて、第2の回路基板50側の一面が開口された略直方体の箱状に形成されている。なお、ケース60の表面には、Niメッキなどの表面処理が施されている。
水晶発振器1は、ケース60と第2の回路基板50とが、互いに係合する係合部80を有している。
係合部80は、ケース60の側壁61から第2の回路基板50側へ延在された脚部62と、第2の回路基板50に形成され、脚部62が抜き差しされる貫通孔部53とを有して構成されている。
【0034】
ケース60の脚部62は、先端部分に、第2の回路基板50の貫通孔部53に係止される係止部63を有している。
係止部63は、脚部62の延在方向である矢印C方向と直交する方向の内の少なくとも一方向の、例えば側壁61に沿ったB−B線方向の寸法が、図2(b)に示すように、側壁61から近い側の根元部63aと側壁61から遠い側の先端部63bとの間の中間部(鉤部)63cの寸法D1で、貫通孔部53の孔径寸法(開口幅)D2より大きくなり、中間部63cから根元部63a及び先端部63bに向かうに連れて小さくなるように、略球状に形成された括れ部を有している。
【0035】
一方、第2の回路基板50の貫通孔部53は、第2の回路基板50の厚み方向に沿って、一方の主面51から他方の主面52まで貫通する平面形状が略円形の貫通孔53aと、その周辺部分とから構成されている。
貫通孔部53は、平面視において、貫通孔53aの側壁53bから周辺に向かって放射状に複数の切り込み53cが、第2の回路基板50の一方の主面51から他方の主面52まで達するように入れられることにより、側壁53b部分を自由端側とし、切り込み53cの終端部分を固定端側とした、弾性を有する複数の片持ち梁部53dが形成されている。
【0036】
ここで、係合部80の動作について、図面を参照して説明する。
図3は、水晶発振器の係合部の動作を時系列的に示す模式断面図である。
図3(a)に示すように、水晶発振器1は、ケース60を第2の回路基板50に係合させるに当たり、脚部62の係止部63と貫通孔部53の貫通孔53aとを位置合わせして、ケース60を矢印E方向に押し、脚部62を貫通孔部53に差し込む。
【0037】
この際、図3(b)に示すように、係止部63に当接して押された片持ち梁部53dが、脚部62の延在方向(矢印E方向)に弾性変形して(撓んで)、貫通孔53aの孔径寸法D2が拡大する。
【0038】
さらに、ケース60を押すことで、貫通孔53aの孔径寸法D2が、係止部63の中間部63cの寸法D1と略等しくなり、図3(c)に示すように、係止部63が貫通孔部53を一方の主面51側から他方の主面52側に通過する。
通過後、片持ち梁部53dが弾性により元の形状に戻ることで、貫通孔53aの孔径寸法D2が元に戻る。
これにより、中間部63cの寸法D1が貫通孔53aの孔径寸法D2より大きい係止部63が、貫通孔部53の他方の主面52側に係止される。つまり、ケース60が第2の回路基板50に係止される(取り付けられる)。
これにより、水晶発振器1は、姿勢が反転されても、ケース60が第2の回路基板50から外れることがない。
【0039】
なお、ケース60を第2の回路基板50から係止解除するには、ケース60を上記と逆方向に引っ張り、脚部62を貫通孔部53から引き抜く。
この際、係止部63に当接して引っ張られた片持ち梁部53dが、上記と逆方向に弾性変形して(撓んで)、貫通孔部53の貫通孔53aの孔径寸法D2が拡大する。
【0040】
さらにケース60を引っ張ることで、係止部63が、貫通孔部53を他方の主面52側から一方の主面51側に通過する。
これにより、係止部63が、貫通孔部53から係止解除される。つまり、ケース60が第2の回路基板50から係止解除される。これにより、水晶発振器1は、ケース60を第2の回路基板50から取り外すことができる。
なお、係止部63の通過後、片持ち梁部53dが弾性により元の形状に戻ることで、貫通孔53aの孔径寸法D2が元に戻る。
【0041】
なお、係止部63の係止力(ケース60を抜き差しするのに必要な力)は、中間部63cの寸法D1、貫通孔53aの孔径寸法D2、片持ち梁部53dの形状などにより、適宜設定される。
【0042】
上述したように、第1の実施形態の水晶発振器1は、第2の回路基板50の貫通孔部53にケース60の脚部62を単に抜き差しするだけで、ケース60を容易に着脱できる。 このことから、水晶発振器1は、組み立て後の水晶振動子10の発振周波数などの調整作業を、ケース60を一旦取り外して、発振用素子20などの各構成要素を露出させ、チップコンデンサー、チップ抵抗などを交換することにより行うことができる。
これにより、水晶発振器1は、特許文献1のような調整作業用の開口部をケース60に設ける必要がないことから、開口部を覆う別部材の製造コストと別部材の取り付け工数コストとを、製造コストから削減することかできる。
【0043】
また、水晶発振器1は、上記調整作業が第2の回路基板50からケース60を一旦取り外すことにより行えることから、特許文献1のようなケース60の開口部を介して行う場合と比較して、作業姿勢、作業範囲などの制約が少ない。
これにより、水晶発振器1は、上記調整作業が容易に行えることから、調整作業の生産性を向上させることができる。
【0044】
また、水晶発振器1は、ケース60の着脱時に特許文献2のような、脚部をねじったり、脚部の折り返し部を取り付け孔(貫通孔53aに相当)内に押し戻したりする作業が不要なことから、特許文献2の脚部を用いた場合と比較して、ケース60の着脱工数を低減できるので、ケース60の着脱を含めた調整作業の生産性を向上させることができる。
【0045】
また、水晶発振器1は、略球状の係止部63を有する脚部62と、第2の回路基板50の貫通孔部53に形成された弾性を有する複数の片持ち梁部53dとにより、脚部62を抜き差しするだけで、ケース60の係止及び係止解除が容易な係合部80を構成することができる。
【0046】
なお、水晶発振器1は、図4の別の係合部の構成を示す模式断面図に示すように、貫通孔部53の側壁53bと、第2の回路基板50の一方の主面51及び他方の主面52とが当接する角部に、面取り53eが施されていてもよい。
これによれば、水晶発振器1は、貫通孔部53の角部に面取り53eが施されていることから、脚部62が抜き差しされる際の、貫通孔部53の角部や脚部62の係止部63の損傷を低減できるとともに、脚部62の抜き差しがスムーズに行える。
【0047】
ここで、第1の実施形態の水晶発振器1の変形例について、図面を参照して説明する。 (変形例)
図5は、変形例の水晶発振器の要部構成を示す模式図である。図5(a)は、要部展開斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のF−F線での断面図である。なお、第1の実施形態との共通部分には、同じ符号を付し、その説明を省略する。また、図5では、共通部分の記載を一部省略してある。
【0048】
図5に示すように、変形例の水晶発振器101は、第1の実施形態の水晶発振器1と比較して、脚部62の係止部163の形状が異なる。以下、この点を中心に説明する。
図5(b)に示すように、係止部163は、二つの円錐の底面同士を向かい合わせて接合したような形状に形成され、脚部62の延在方向に沿って切断された断面形状が略菱形に形成されている。
また、係止部163は、根元部163aと先端部163bとの間の中間部(鉤部)163cの寸法D1が、貫通孔部53の孔径寸法(開口幅)D2より大きくなっている。
そして、係止部163は、中間部163cから根元部163a及び先端部163bに向かうに連れて、貫通孔部53の孔径寸法D2以下になるように形成された括れ部を有している。
【0049】
水晶発振器101の係合部180の動作は、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
なお、水晶発振器101は、係止部163の断面形状が略菱形に形成され、係止部163を構成する斜面163d,163eの、第2の回路基板50の一方の主面51または他方の主面52との成す角度を適宜設定することで、係止力を容易に調整することができる。
これにより、水晶発振器101は、係止部63が略球状に形成されている第1の実施形態の水晶発振器1と比較して、脚部62の抜き差しを、さらにスムーズに行うことができる。
【0050】
上述したように、水晶発振器101は、係止部163の断面形状が略菱形に形成された脚部62と、第2の回路基板50の貫通孔部53に形成された弾性を有する複数の片持ち梁部53dとにより、脚部62を抜き差しするだけで、ケース60の係止及び係止解除がより容易な係合部180を構成することができる。
【0051】
ここで、第2の実施形態の水晶発振器について、図面を参照して説明する。
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態の水晶発振器の要部構成を示す模式図である。図6(a)は、要部展開斜視図であり、図6(b)は、図6(a)のG−G線での断面図である。なお、第1の実施形態との共通部分には、同じ符号を付し、その説明を省略する。また、図6では、共通部分の記載を一部省略してある。
【0052】
図6に示すように、第2の実施形態の水晶発振器201は、第1の実施形態の水晶発振器1と比較して、係合部280の構成が異なる。以下、この点を中心に説明する。
係合部280は、ケース60の側壁61から第2の回路基板50側へ延在された脚部262と、第2の回路基板50に形成され、脚部262が抜き差しされる貫通孔部253とを有して構成されている。
【0053】
ケース60の脚部262は、先端部分に、第2の回路基板50の貫通孔部253に係止される係止部263を有している。
係止部263は、脚部262の延在方向である矢印C方向と直交する方向の内の少なくとも一方向の、例えばG−G線方向の寸法において、図6(b)に示すように、根元部263aと先端部263bとの間の中間部(鉤部)263cの寸法D1が、貫通孔部253の孔径寸法(開口幅)D2より大きくなっている。
そして、係止部263は、中間部263cから根元部263a及び先端部263bに向かうに連れて、貫通孔部253の孔径寸法D2以下になるように形成された括れ部を有している。
【0054】
これにより、係止部263は、G−G線での断面形状が略円形、略菱形などに形成されている。なお、係止部263のG−G線と直交する断面形状は、脚部262の根元から連続する略矩形に形成されている。
さらに、脚部262は、延在方向(矢印C方向)に沿って、係止部263の先端部263bから脚部262の根元近傍まで形成された切り欠き264を有している。
【0055】
一方、第2の回路基板50の貫通孔部253は、第2の回路基板50の厚み方向に沿って、一方の主面51から他方の主面52まで貫通する平面形状が略円形の貫通孔253aと、その周辺部分とから構成されている。
【0056】
ここで、係合部280の動作について、図面を参照して説明する。
図7は、水晶発振器の係合部の動作を時系列的に示す模式断面図である。
図7(a)に示すように、水晶発振器201は、ケース60を第2の回路基板50に係合させるに当たり、脚部262の係止部263と貫通孔部253の貫通孔253aとを位置合わせして、ケース60を矢印E方向に押し、脚部262を貫通孔253aに差し込む。
【0057】
この際、図7(b)に示すように、貫通孔253aに当接して押された係止部263が、切り欠き264側に弾性変形して、中間部263cの寸法D1が変化し、貫通孔253aの孔径寸法D2と略等しくなり、貫通孔253a内に入り込む。
【0058】
さらに、ケース60を押すことで、図7(c)に示すように、係止部263が貫通孔253aを、一方の主面51側から他方の主面52側に通過する。通過後、係止部263が弾性により元の形状に戻ることで、中間部263cの寸法D1が元に戻る。
これにより、中間部263cの寸法D1が貫通孔253aの孔径寸法D2より大きい係止部263が、貫通孔部253の他方の主面52側に係止される。つまり、ケース60が第2の回路基板50に係止される。
これにより、水晶発振器201は、姿勢が反転されても、ケース60が第2の回路基板50から外れることがない。
【0059】
なお、ケース60を第2の回路基板50から係止解除するには、ケース60を上記と逆方向に引っ張り、脚部262を貫通孔部253から引き抜く。
この際、貫通孔253aに当接して引っ張られた係止部263が、上記と同様に弾性変形して、中間部263cの寸法D1が変化し、貫通孔253aの孔径寸法D2と略等しくなり、貫通孔253a内に入り込む。
【0060】
さらに、ケース60を引っ張ることで、係止部263が貫通孔253aを、他方の主面52側から一方の主面51側に通過する。
これにより、係止部263が、貫通孔部253から係止解除される。つまり、ケース60が第2の回路基板50から係止解除される。これにより、水晶発振器201は、ケース60を第2の回路基板50から取り外すことができる。
なお、貫通孔253aを通過後、係止部263が弾性により元の形状に戻ることで、中間部263cの寸法D1は、元に戻る。
【0061】
なお、係止部263の係止力は、中間部263cの寸法D1を含む係止部263の外形形状、切り欠き264の長さ、貫通孔253aの孔径寸法D2などにより、適宜設定される。
【0062】
上述したように、第2の実施形態の水晶発振器201は、切り欠き264により弾性を有した脚部262と、第2の回路基板50に形成された貫通孔部253とにより、脚部262を抜き差しするだけで、ケース60の係止及び係止解除が容易な係合部280を構成することができる。
【0063】
また、水晶発振器201は、係止部263のG−G線と直交する断面形状が、脚部262の根元から連続する略矩形状に形成されていることから、略球状の係止部63を有する第1の実施形態の水晶発振器1と比較して、脚部262の形成が容易となる。
なお、貫通孔253aの平面形状は、略円形に限定するものではなく、第2の回路基板50の一方の主面51に沿って切断した脚部262の断面形状である略矩形にしてもよい。
【0064】
ここで、第3の実施形態の水晶発振器について、図面を参照して説明する。
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式展開斜視図である。図9は図8の模式断面図であり、図9(a)は、図8のH−H線での断面図、図9(b)は、図8のI−I線での拡大断面図である。なお、第1の実施形態との共通部分には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図8に示すように、第3の実施形態の水晶発振器301は、第1の実施形態の水晶発振器1と比較して、基板としての構成要素が第2の回路基板50ではなく、金属ベース350であることなどが異なる。以下、これらの点を中心に説明する。
【0066】
金属ベース350は、黄銅などの金属からなり、第2の回路基板50より一回り大きく平面形状が略矩形の平板状に形成され、表面にNiメッキなどの表面処理が施されている。そして、金属ベース350は、絶縁部354を貫通した複数の金属ピンからなる外部端子390を介して、第2の回路基板50の他方の主面52側に空間を設けて取り付けられている。
水晶発振器301は、この外部端子390を介して外部の機器に実装される。
【0067】
また、ケース60は、第1の実施形態と比較して、第2の回路基板50を収容できる大きさに拡大されている。
これらにより、水晶発振器301は、第1の回路基板40に搭載された各構成要素及び第2の回路基板50などが、ケース60及び金属ベース350に収容されている。
【0068】
水晶発振器301は、ケース60と金属ベース350とが、互いに係合する係合部380を有している。
係合部380は、ケース60の側壁61から金属ベース350側へ延在された脚部62と、金属ベース350に形成され、脚部62が抜き差しされる貫通孔部353とを有して構成されている。
【0069】
ケース60の脚部62は、先端部分に、金属ベース350の貫通孔部353に係止される係止部63を有している。
係止部63は、第1の実施形態と同様に、脚部62の延在方向である矢印C方向と直交する方向の内の少なくとも一方向の、例えばI−I線方向の寸法が、図9(b)に示すように、根元部63aと先端部63bとの間の中間部(鉤部)63cの寸法D1で、貫通孔部353の孔径寸法(開口幅)D2より大きくなり、中間部63cから根元部63a及び先端部63bに向かうに連れて小さくなるように、略球状に形成された括れ部を有している。
【0070】
一方、金属ベース350の貫通孔部353は、金属ベース350の厚み方向に沿って、一方の主面351から他方の主面352まで貫通する平面形状が略円形の貫通孔353aと、その周辺部分とから構成されている。
貫通孔部353は、第1の実施形態と同様に、平面視において、貫通孔353aの側壁353bから周辺に向かって放射状に複数の切り込み353cが、金属ベース350の一方の主面351から他方の主面352まで達するように入れられることにより、側壁353b部分を自由端側とし、切り込み353cの終端部分を固定端側とした、弾性を有する複数の片持ち梁部353dが形成されている。
【0071】
水晶発振器301の係合部380の動作については、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
上述した構成により、第3の実施形態の水晶発振器301は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、水晶発振器301は、第1の回路基板40に加えて第2の回路基板50が、ケース60及び金属ベース350に収容され、第2の回路基板50が外部端子390のみで金属ベース350に支持されていることから、熱伝導による外部への放熱が抑制されている。
これにより、水晶発振器301は、第1の実施形態と比較して、内部の温度変化が減少することから、周波数安定性がさらに向上する。
【0073】
なお、水晶発振器301の係合部380には、水晶発振器101の係合部180の構成及び水晶発振器201の係合部280の構成を適用してもよい。
また、上記各実施形態、変形例において、ケース60を一旦取り外して行う調整作業の最終作業終了後のケース60の取り付け時には、ケース60と第2の回路基板50または金属ベース350とをハンダなどにより接合しておくことが好ましい。
【0074】
なお、ケース60の脚部(62など)は、同一側壁61に複数形成されていてもよい。また、係合部は、上記各実施形態、変形例の構成を組み合わせて、脚部及び貫通孔部の両方が弾性変形する構成としてもよい。
【0075】
なお、上記各実施形態、変形例では、圧電発振器として、圧電振動子に水晶を用いた水晶発振器を例にとり説明したが、これに限定するものではなく、圧電振動子にタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどを用いた圧電発振器としてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…圧電発振器としての水晶発振器、10…圧電振動子としての水晶振動子、11…リード線、12…金属容器、20…発振用素子、30…加熱用素子、40…第1の回路基板、41…一主面、42…他主面、50…基板としての第2の回路基板、51…一方の主面、52…他方の主面、53…貫通孔部、53a…貫通孔、53b…側壁、53c…切り込み、53d…片持ち梁部、60…ケース、61…側壁、62…脚部、63…係止部、70…リード端子、80…係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させるとともに前記圧電振動子の発振周波数を調整する発振用素子と、前記圧電振動子を所定の温度に加熱する加熱用素子と、前記各構成要素を収容するケースと基板とを備え、
前記ケースと前記基板とが互いに係合する係合部を有し、
前記係合部が、前記ケースの側壁から前記基板側へ延在された脚部と、前記基板に形成された貫通孔部とを有して構成され、
前記脚部が、前記貫通孔部に係止される係止部を有し、
前記係止部が、鉤部と、前記鉤部から前記ケースの側壁へ向って延びた括れ部とを有し、
前記鉤部は、前記脚部の延在方向と直交する方向における前記鉤部の寸法が前記貫通孔部の開口幅よりも大きい構成を有し、前記括れ部は、前記脚部の延在方向と直交する方向における前記括れ部の寸法が前記貫通孔部の開口幅以下の構成を有し、
前記脚部及び前記貫通孔部の少なくともいずれか一方が弾性を有し、前記脚部及び前記貫通孔部の少なくともいずれか一方が弾性変形することで、前記係止部が前記貫通孔部を通過可能になり、前記ケースと前記基板との係止及び係止の解除が可能な構成であることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振器において、前記脚部が、前記脚部の延在方向に沿って、前記係止部の先端部から前記脚部の根元近傍まで形成された切り欠きを有し、
前記脚部が前記貫通孔部に抜き差しされる際に、前記貫通孔部に当接した前記係止部が、前記切り欠き側に弾性変形して前記貫通孔部を通過し、通過後元の形状に戻ることで、前記係止部が前記基板に係止及び係止解除されることを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電発振器において、前記係止部が略球状に形成され、
前記基板の前記貫通孔部に、平面視において、前記貫通孔部の側壁から周辺に向かって複数の切り込みが入れられることにより、弾性を有する複数の片持ち梁部が形成され、
前記脚部が前記貫通孔部に抜き差しされる際に、前記係止部に当接した前記片持ち梁部が、前記脚部の延在方向に弾性変形して前記貫通孔部の前記開口幅が拡大することで、前記係止部が前記貫通孔部を通過し、通過後前記貫通孔部の前記開口幅が元に戻ることで、前記係止部が前記基板に係止及び係止解除されることを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
請求項1に記載の圧電発振器において、前記脚部の延在方向に沿って切断された前記係止部の断面形状が略菱形に形成され、
前記基板の前記貫通孔部に、平面視において、前記貫通孔部の側壁から周辺に向かって複数の切り込みが入れられることにより、弾性を有する複数の片持ち梁部が形成され、
前記脚部が前記貫通孔部に抜き差しされる際に、前記係止部に当接した前記片持ち梁部が、前記脚部の延在方向に弾性変形して前記貫通孔部の前記開口幅が拡大することで、前記係止部が前記貫通孔部を通過し、通過後前記貫通孔部の前記開口幅が元に戻ることで、前記係止部が前記基板に係止及び係止解除されることを特徴とする圧電発振器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電発振器において、前記貫通孔部の側壁と前記基板の主面とが当接する角部に、面取りが施されていることを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−199778(P2010−199778A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40307(P2009−40307)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】