地上デジタル放送測定システム
【課題】専門知識のない人でも地上デジタル放送信号が有する特性の測定を簡単に、正確に、かつ再現性よく行え、操作性を大幅に向上する。
【解決手段】 複数チャネルで構成され、OFDM変調された地上デジタル放送信号aが有するチャネル毎の各特性の測定項目を測定条件に従って測定し、測定結果を表示器27に表示出力する地上デジタル放送測定システムにおいて、表示器に表示された測定項目選択画面49を用いて操作入力されたチャネル毎の特性の測定項目を設定する測定項目設定手段39と、測定項目設定手段で設定されたチャネル毎の特性の測定項目を記憶する測定項目メモリ40と、測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目を測定条件に従って順番に実施していく測定実行手段15とを備えている。
【解決手段】 複数チャネルで構成され、OFDM変調された地上デジタル放送信号aが有するチャネル毎の各特性の測定項目を測定条件に従って測定し、測定結果を表示器27に表示出力する地上デジタル放送測定システムにおいて、表示器に表示された測定項目選択画面49を用いて操作入力されたチャネル毎の特性の測定項目を設定する測定項目設定手段39と、測定項目設定手段で設定されたチャネル毎の特性の測定項目を記憶する測定項目メモリ40と、測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目を測定条件に従って順番に実施していく測定実行手段15とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送信号の各種の特性を測定する地上デジタル放送測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送システムは、今までの地上アナログ放送システムに比較して非常に複雑なシステムである。地上デジタル放送システムで採用されている地上デジタル放送信号は、一つの信号に多数の情報が組込まれているために、複雑な構造を有し、この地上デジタル放送信号を一義的に定義するには、周波数(チャンネル)や電力基準レベルの他に、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式など測定条件に関する多くのパラメータが存在する。
【0003】
したがって、地上デジタル放送信号の特性を測定するにはこれらのパラメータを知り、測定装置に正しく設定する必要がある。測定装置は、地上デジタル放送信号が有するチャネル毎の各特性の測定項目を設定された測定条件のパラメータに従って測定する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−124931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、一般的なスペクトルアナライザ(周波数分析装置)で地上デジタル放送信号を測定する場合、測定装置に対する操作も今までのアナログ放送信号を測定する場合とは違ったものになる。すなわち、スペクトルアナライザは正弦波信号に対して最適に測定できるようになっているため、白色雑音に似た特性である地上デジタル放送信号では、スペクトルアナライザの標準的なパラメータである電力基準レベル、周波数スパン、RBW、VBW、検波方式、掃引時間などを地上デジタル放送信号の状態に合わせて正しく設定する必要がある。
【0005】
このように、地上デジタル放送信号の測定には、使用する測定装置についても精通し、正しいパラメータを設定する必要がある。
【0006】
さらに、地上デジタル放送信号の測定は、野外での電波状態の監視や遠隔地にある送信機・中継機の検査のために行われることが多い。このような場所へは頻繁に行くことができないため、測定を行ったその場で測定が正しく行われたかを判断し、必要によって再測定を行うこともある。このように、測定データの妥当性を判断する機能も必要となる。
【0007】
以上のように、地上デジタル放送信号を測定する場合、地上デジタル放送信号そのものに対する知識と測定装置に対する知識を持った専門的な人でないと正確な測定をすることができない。必然的に、このような専門知識を有する人は人数が限られている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、専門知識のない人でも地上デジタル放送システムで採用されている地上デジタル放送信号が有する特性の測定を簡単に、正確に、かつ再現性よく行え、操作性を大幅に向上できる地上デジタル放送測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消するために、本発明は、複数チャネルで構成され、各チャネルの周波数帯域に変調方式が異なる複数のデジタル情報の階層を配置しこれらの階層をOFDM変調した地上デジタル放送信号が有するチャネル毎の各特性の測定項目を測定条件に従って測定し、測定結果を表示器に表示出力する地上デジタル放送測定システムにおいて、表示器に表示された測定項目選択画面を用いて操作入力されたチャネル毎の特性の測定項目を設定する測定項目設定手段と、この測定項目設定手段で設定されたチャネル毎の特性の測定項目を記憶する測定項目メモリと、この測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目を測定条件に従って順番に実施していく測定実行手段とを備えている。
【0010】
このように構成された地上デジタル放送測定システムにおいては、表示器に表示された測定項目選択画面を用いてチャネル毎の特性の測定項目を予め設定して、測定項目メモリに記憶させておくことが可能である。したがって、実際の測定に際しては、測定者は測定指示を操作入力するのみで、測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目が測定条件に従って順番に自動的に実施されていくので、例えば、測定位置を移動しながら同一測定を繰り返し実施する場合に非常に便利である。
【0011】
また別の発明は、上記発明の地上デジタル放送測定システムにおいて、各特性の測定を実施するに際して必要な測定条件を示す各パラメータを入力された地上デジタル放送信号から取得して設定する自動設定モードと、各特性の測定を実施するに際して必要な測定条件を示す各パラメータを操作入力に基づいて設定する手動設定モードと、操作入力に基づいて自動設定モード又は手動設定モードを選択する設定モード選択手段とを備えている。
【0012】
このように構成された地上デジタル放送測定システムにおいては、各特性の測定を実施するに際して必要な測定条件を示す各パラメータの設定に対して自動設定モードと手動設定モードとの2種類の設定モードが準備されている。この地上デジタル放送測定に不慣れな測定者は、自動測定モードにしておくことで、測定に必要なパラメータを入力する必要がなく、簡単に地上デジタル放送信号の測定が行える。
【0013】
また別の発明は、上記発明の地上デジタル放送測定システムにおいて、現在位置情報を取得する位置情報取得手段と、測定結果に位置情報取得手段で取得された現在位置情報を付加する位置情報付加手段とを備えている。
【0014】
このように構成された地上デジタル放送測定システムにおいては、測定結果に自動で位置情報が付くため、測定結果を地図上に書込むときの利便性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の地上デジタル放送測定システムにおいては、チャネル毎の特性の測定項目を予め設定して、測定項目メモリに記憶させておき、測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目を測定条件に従って順番に自動的に実施させている。したがって、専門知識のない人でも地上デジタル放送信号が有する特性の測定を簡単に、正確に、かつ再現性よく行え、操作性を大幅に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係わる地上デジタル放送測定システムの全体構成を示す模式図である。
【0018】
この地上デジタル放送測定システムは、大きく分けて、測定装置1、制御装置2、位置情報取得装置3、通信装置4、印刷装置5で構成されている。そして、この地上デジタル放送測定システムは測定車6に搭載されている。
【0019】
測定装置1は、各放送局の共同のアンテナ7から出力される地上デジタル放送信号aを受信して、この地上デジタル放送信号aが有する電界強度やMER(変調誤差比)などの特性を測定し、測定結果を、表示器に表示すると共に、必要に応じて、測定装置内に保存し、また、制御装置2に伝送することができる。
【0020】
位置情報取得装置3は、GPS衛星8からのGPS信号bを用いて測定車6の現在位置情報を算出して、算出した現在位置情報を制御装置2へ送出する。通信装置3は無線または有線の通信ネットワーク9を使い、離れた場所にある他の通信装置へ測定結果を送信すると共に、他の通信装置から各種の指令を受信して制御装置2へ転送する。印刷装置5は必要に応じて測定結果を印字出力する。
【0021】
制御装置2は、測定装置1、位置情報取得装置3、通信装置4、印刷装置5に接続され、それぞれの機器から測定結果等のデータを取得ことができる。また、制御装置2は測定装置1、位置情報取得装置3と通信装置4に制御命令を送り動作を制御する。
【0022】
図2は、OFDM(直交周波数分割多重)変調方式で変調された地上デジタル放送信号aの各放局に割当てられた1チャネル分の信号の周波数分布図である。1チャネルは、13個のセグメント10で構成されている。そして、1個又は複数のセグメント10で階層11が形成されている。具体的には、13個のセグメント10でA階層、B階層、C階層の3個の階層11が形成されている。さらに、各セグメント10は複数のサブキャリア12で構成されている。この複数のサブキャリア12のうちの、モード毎に指定された特定位置のサブキャリアには、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control 制御情報)13が組込まれている。
【0023】
同一階層11に所属する各サブキャリア12は局が指定した同一の変調方式で変調されているが、TMCC(制御情報)13だけは固定のBPSKの変調方式で変調されている。
【0024】
このような構成の地上デジタル放送信号aを一義的に定義するパラメータとして、周波数(チャンネル)、電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等がある。
【0025】
図3は測定装置1の概略構成を示すブロック図である。周波数変換部14は、入力された地上デジタル放送信号aの周波数を、測定実行部15から指定された周波数(チャンネル)に応じた低周波数に変換して、A/D変換器16へ送出する。周波数変換された地上デジタル放送信号aは、A/D変換器16でA/D変換されたのち、一旦、波形メモリ17へ書込まれる。
【0026】
波形メモリ17に書込まれた1チャネル分の地上デジタル放送信号aは読出されて、直交復調部18にて、デジタルのベースバンド信号I、Qに直交復調され、OFDM復調部19、シンボル抽出部20へ入力される。シンボル抽出部20は、地上デジタル放送信号aのシンボルタイミングを検出してOFDM復調部19へ送出するとともに、有効シンボル長を検出してモード検出部21へ送出する。モード検出部21は、検出された有効シンボル長の値から、該当チャネルの地上デジタル放送信号aのモード(モード1、2、3のなかの1つのモード)を判定して、TMCC読取部23へ送出する。
【0027】
OFDM復調部19は、シンボル抽出部20からのシンボルタイミングを用いて、入力されたデジタルのベースバンド信号I、Qに対して高速フーリエ変換(FFT)処理を実施することによって、1チャネル分の地上デジタル放送信号aに含まれる各セグメント10の全てのサブキャリア12を抽出して、区分部22及びTMCC読取部23へ送出する。
【0028】
TMCC読取部23は、モード検出部21で指定されたモードに基づいて、入力されたサブキャリア12のなかからTMCC(制御情報)13を抽出して、このTMCC(制御情報)13をBPSKの復調方式で復調して、このTMCC(制御情報)13で示される、該当チャネルの地上デジタル放送信号aにおけるA階層、B階層、C階層の3個の階層11の各位置、各階層11のセグメント10数、各セグメント10に含まれる各サブキャリア12の変調方式を解読して、必要な情報を区分部22、復調部24、周波数分析部28へ送出する。
【0029】
区分部22は、OFDM復調部19から入力した全てのサブキャリア12をTMCC読取部23で指定された情報に基づいて、A階層、B階層、C階層の各サブキャリア12に区分して、復調部24へ送出する。復調部24は、A階層、B階層、C階層の各サブキャリア12を、TMCC読取部23から指定された各変調方式に対応する各復調方式で復調する。
【0030】
コンスタレーション測定部25は、図5、6に示すように、復調結果を、A階層、B階層、C階層の各階層11毎の、I、Q座標上の位置を示すコンスタレーション41に編集して表示器27に表示する。さらにMER測定部26は、復調結果からA階層、B階層、C階層の各階層11毎のMER(変調誤差比)42を算出して、図5、6に示すように、表示器27に表示する。
【0031】
周波数分析部28は、指定された各チャネルの地上デジタル放送信号aを周波数分析して、分析結果を電力測定部29へ送出する。電力測定部29は各周波数の電力を測定する。電界強度測定部32は、電力測定部29で測定された各周波数の電力の総和である電界(電力)強度をチャネル毎に求めて、図10に示すように、表示器27に表示する。スプリアス測定部38は、電力測定部29で測定された各サブキャリア12の電力の周波数分布から、各サブキャリア12のスプリアス(漏洩電力)を求めて、チャネル毎の平均値を算出して、図10に示すように、表示器27に表示する。
【0032】
周波数占有帯幅測定部30は、周波数分析部28で測定された周波数分析結における各サブキャリア12の周波数分布から、各サブキャリア12の周波数占有帯幅を求めて、チャネル毎の平均値を算出して、図10に示すように、表示器27に表示する。
【0033】
スペクトルマスク測定部31は、図9に示すように、周波数分析部28で測定されたチャネル毎の測定周波数分布43bを規格で定められた基準周波数分布43aとの対比で示すスペクトルマスク43を得て、表示器27に表示する。なお、横軸の中心周波数は該当チャネルの搬送波周波数である。
【0034】
次に、遅延プロファイル測定部34の動作を、図7、図8を用いて説明する。
図8(a)に示すように、アンテナ7から電波放出された地上デジタル放送信号aは測定装置1に直接入力される直接波(信号a)とビル等の反射物46に反射された後に入力される複数の反射波(信号a1、信号a2)とがある。したがって、測定装置1には、図8(b)に示すように、各信号a、a1、a2が経路差に応じた時間差を有して入力されることになる。
【0035】
遅延プロファイル44とは、図7(a)に示すように、横軸に時間をとり、縦軸に反射波(信号a1、信号a2)のレベル(直接波(信号a)を0dBとした相対値)をグラフ化したものである。横軸のデータとして2700ポイントぐらいあるため、全てのデータを表示器27の画面上に表示することができない(画面の幅は800ポイントぐらいのため)。そこで、全体表示45aと全体表示の中の一部分を拡大する拡大表示45bの2通りのグラフを表示器27に同時に表示させている。
【0036】
測定者が全体表示45aと拡大表示45bでデータの値を読むため、それぞれにマーカ機能を持たせている。具体的にはマーカ47位置のデータを読取る。測定者は、マーカ47を左右に移動させるため、図7(b)に示すように、測定装置1の正面パネルに設けられたロータリーエンコーダ47aを使用し、これを回すことでマーカ47を左右に移動させる。
【0037】
全体表示45aと拡大表示45bの両方にマーカ47があるが、ロータリーエンコーダ47aだけで両方のマーカ47を連動して移動させることができ、マーカ47の位置によってマーカ47を移動させる量を変化させている。具体的には、マーカ47が拡大表示45bの範囲に入っているときは、ロータリーエンコーダ47aの1クリックでグラフの1データを移動するようにする。また、マーカ47が拡大表示45bの範囲外にあるときは、ロータリーエンコーダ47aの1クリックでグラフの(たとえば)10データを移動するようにする。このように、マーカ47の移動を測定者が見やすいようにスムーズに行うことができる。
【0038】
ちなみに、従来の方法では、それぞれのグラフにマーカを独立で表示させ、操作するマーカを何がしかの方法で切換えることを必要としていた。そのため、操作性が煩雑になり測定に不慣れな者には分かり難かった。
【0039】
次に、設定モード選択部35、パラメータ自動抽出部37、パラメータ設定部38の動作を説明する。この実施形態の測定装置1においては、必要な測定条件を示す前述した電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等の各パラメータを入力された地上デジタル放送信号a自体から取得して設定する自動設定モードと、各パラメータを測定者が操作部36を用いた操作入力に基づいて設定する手動設定モードとの2つの設定モードが準備されている。測定者は、操作部36でいずれかの測定モードを選択する。
【0040】
自動設定モードが選択されると、パラメータ自動抽出部37が起動して、シンボル抽出部20、モード検出部21、TMCC読取部32等へ起動指令を送出して、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等の各パラメータを得て、必要な各部19、22、24へ自動設定させる。
【0041】
なお、電力基準レベルのパラメータを決めるには測定装置1に入力される全電力をまず測定する。すなわち、測定装置1の周波数分析部28、電力測定部29を使い、下限周波数から上限周波数までを掃引して全測定ポイントの電力を積分して全電力を求める。この全電力が測定装置1に入力しても測定装置1が飽和しないように電力基準レベルを決める。そして、この電力基準レベルを、周波数変換部14の前段に配設された減衰器に設定する。
この自動設定モードが選択された場合の表示器27に表示された測定結果の表示例を図5に示す。
【0042】
手動設定モードが選択されると、パラメータ設定部38が起動して、図6に示すように、表示器27に、電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等の各パラメータの入力画面48を表示して、測定者に各パラメータを操作入力させる。パラメータ設定部38は、シンボル抽出部20、モード検出部21、TMCC読取部32等へ動作停止指令を送出して、測定者が操作入力したモード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等の各パラメータを必要な各部19、22、24へ設定する。
この手動設定モードが選択された場合の表示器27に表示された測定結果の表示例を図6に示す。
【0043】
次に、チャネル・測定項目設定部39、測定項目メモリ40の動作を説明する。チャネル・測定項目設定部39は、操作部36からの指示に応じて、表示器27に図4に示す測定項目選択画面49を表示する。測定者はこの測定項目選択画面49を用いて、チャネル毎に必要な測定項目(電界強度、コンスタレーション、遅延プロファイル、スペクトルマスク、周波数占有帯幅、スプリアス、MER)を選択設定する。このチャネル・測定項目設定部39で設定されたチャネル毎の特性の測定項目は測定項目メモリ40に記憶保持される。
【0044】
測定実行部15は、操作部36から測定開始指令が入力されると、図11及び図12の流れ図に従って、測定項目メモリ40に記憶された各チャネルの測定項目を順番に実施していく。なお、この図11及び図12の流れ図においては、自動設定モードが選択された場合について説明する。
【0045】
先ず、測定対象チャネルchを測定項目メモリ40に記憶されているチャネルの初期値13に設定する(ステップS1)。測定対象チャネルchが最大チャネルch69以下の場合は(S2)、電力基準レベルを前述した手法で測定し自動設定する(S3)。モード、ガード比を前述した手法で検出し自動設定する(S4)。階層数、セグメント数、変調方式を前述した手法で検出し自動設定する(S5)。以上で該当チャネルの各パラメータの設定処理が終了する。
【0046】
次に、該当チャネルの電界強度測定が選択されている場合は(S6)、電界強度測定部32へ測定指示を送出して電界強度測定を実施する(S7)。該当チャネルのコンスタレーション測定が選択されている場合は(S8)、コンスタレーション測定部25へ測定指示を送出してコンスタレーション測定を実施する(S9)。該当チャネルの遅延プロファイル測定が選択されている場合は(S10)、遅延プロファイル測定部34へ測定指示を送出して遅延プロファイル測定を実施する(S11)。
【0047】
該当チャネルのスペクトルマスク測定が選択されている場合は(S12)、スペクトルマスク測定部31へ測定指示を送出してスペクトルマスク測定を実施する(S13)。該当チャネルの周波数占有帯幅測定が選択されている場合は(S14)、周波数占有帯幅測定部30へ測定指示を送出して周波数占有帯幅測定を実施する(S15)。該当チャネルのスプリアス測定が選択されている場合は(S16)、スプリアス測定部31へ測定指示を送出してスプリアス測定を実施する(S17)。該当チャネルのMER測定が選択されている場合は(S18)、MER測定部26へ測定指示を送出してMER測定を実施する(S19)。
【0048】
以上で、1つのチャネルに設定された各測定項目に対する測定が終了したので、測定対象チャネルchを1だけ更新して(S20)、S2へ戻る。S2にて、更新後の測定対象チャネルchが最大チャネルch69を超えた場合は、今回の地上デジタル放送信号aの特性測定を終了する。
【0049】
各測定項目の測定結果は、図5、図6、図9、図10に示すように、表示器27に、各測定項目単独で、又は複数の測定項目がまとめて表示される。
【0050】
こように、地上デジタル放送信号aの各特性の測定を実施するに際して必要な測定条件を示す各パラメータの設定に対して自動設定モードと手動設定モードとの2種類の設定モードが準備されている。そして、この地上デジタル放送信号aの測定に不慣れな測定者は、自動測定モードにしておくことで、測定に必要な電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等のパラメータを入力する必要がなく、簡単に地上デジタル放送信号の測定が行える。
【0051】
逆に、この地上デジタル放送信号aの測定を熟知した測定者は、手動測定モードにしておくことで、測定に必要な電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等のパラメータを任意に設定でき、測定目的に応じたより綿密な測定を実施できる。
【0052】
また、表示器27に表示された図4に示す測定項目選択画面49を用いてチャネル毎の電界強度、コンスタレーション、遅延プロファイル、スペクトルマスク、周波数占有帯幅、スプリアス、MER等の各測定項目を予め設定して、測定項目メモリ40に記憶させておき、実際の測定に際しては、測定者は測定指示を操作入力するのみで、測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目が前述した各パラメータ(測定条件)に従って順番に自動的に実施されていく。したがって、例えば、測定位置を移動しながら同一測定を繰り返し実施する場合に非常に便利であり、測定作業能率を大幅に向上できる。
【0053】
さらに、測定装置1において測定されたチャネル毎に測定項目選択画面49を用いて選択された地上デジタル放送信号aの各測定項目の測定結果は、制御装置2へ送信され、この制御装置2において、位置情報取得部3から入力された現在位置情報が付されて、記憶保持されるとともに、印刷装置5で地図上に報告書形式で印字出力される。
【0054】
また、測定者は、必要に応じて、制御装置2を操作して、現在位置情報が付された測定結果を、通信装置4、通信ネットワーク9を介して、管理者が常駐する技術センターに送信することが可能である。このことにより、専門知識のない測定者が測定しても、測定結果を瞬時に専門知識を有する管理者へ送り、結果の妥当性を確認してもらえるため専門的知識のない測定者でも測定場所で測定結果の妥当性を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係わる地上デジタル放送測定システムの全体構成を示す模式図
【図2】同実施形態の地上デジタル放送測定システムで測定される地上デジタル放送信号の1チャネル分の信号の周波数分布図
【図3】同実施形態の地上デジタル放送測定システムに組込まれた測定装置の概略構成を示すブロック図
【図4】同測定装置の表示器に表示された測定項目選択画面を示す図
【図5】同測定装置の表示器に表示されたコンスタレーションの測定結果を示す図
【図6】同じく同測定装置の表示器に表示されたコンスタレーションの測定結果を示す図
【図7】同測定装置の表示器に表示された遅延プロファイルの測定結果を示す図
【図8】同遅延プロファイルの定義を説明するための図
【図9】同測定装置の表示器に表示されたスペクトルマスクの測定結果を示す図
【図10】同測定装置の表示器に表示されたチャネル毎の各測定項目の測定結果を示す図
【図11】同測定装置に組込まれた測定実行部の動作を示す流れ図
【図12】同じく同測定装置に組込まれた測定実行部の動作を示す流れ図
【符号の説明】
【0056】
1…測定装置、2…制御装置、3…位置情報取得装置、4…通信装置、5…印刷装置、6…測定車、7…アンテナ、8…GPS衛星、9…通信ネットワーク、10…セグメント、11…階層、12…サブキャリア、13…TMCC、14…周波数変換部、15…測定実行部、16…A/D変換器、17…波形メモリ、18…直交復調部、19…OFDM復調部、20…シンボル抽出部、21…モード検出部、22…区分け部、23…TMCC読取部、24…復調部、25…コンスタレーション測定部、26…MER測定部、27…表示器、28…周波数分析部、29…電力測定部、30…周波数占有帯幅測定部、31…スペクトルマスク測定部、32…電界強度測定部、33…スプリアス測定部、34…遅延プロファイル測定部、35…設定モード選択部、36…操作部、37…パラメータ自動検出部、38…パラメータ設定部、39…チャネル・測定項目設定部、40…測定項目メモリ、41…コンスタレーション、43…スペクトルマスク、44…遅延プロファイル、47…マーカ、47a…ロータリーエンコーダ、48…パラメータ入力画面、49…測定項目選択画面
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送信号の各種の特性を測定する地上デジタル放送測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送システムは、今までの地上アナログ放送システムに比較して非常に複雑なシステムである。地上デジタル放送システムで採用されている地上デジタル放送信号は、一つの信号に多数の情報が組込まれているために、複雑な構造を有し、この地上デジタル放送信号を一義的に定義するには、周波数(チャンネル)や電力基準レベルの他に、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式など測定条件に関する多くのパラメータが存在する。
【0003】
したがって、地上デジタル放送信号の特性を測定するにはこれらのパラメータを知り、測定装置に正しく設定する必要がある。測定装置は、地上デジタル放送信号が有するチャネル毎の各特性の測定項目を設定された測定条件のパラメータに従って測定する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−124931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、一般的なスペクトルアナライザ(周波数分析装置)で地上デジタル放送信号を測定する場合、測定装置に対する操作も今までのアナログ放送信号を測定する場合とは違ったものになる。すなわち、スペクトルアナライザは正弦波信号に対して最適に測定できるようになっているため、白色雑音に似た特性である地上デジタル放送信号では、スペクトルアナライザの標準的なパラメータである電力基準レベル、周波数スパン、RBW、VBW、検波方式、掃引時間などを地上デジタル放送信号の状態に合わせて正しく設定する必要がある。
【0005】
このように、地上デジタル放送信号の測定には、使用する測定装置についても精通し、正しいパラメータを設定する必要がある。
【0006】
さらに、地上デジタル放送信号の測定は、野外での電波状態の監視や遠隔地にある送信機・中継機の検査のために行われることが多い。このような場所へは頻繁に行くことができないため、測定を行ったその場で測定が正しく行われたかを判断し、必要によって再測定を行うこともある。このように、測定データの妥当性を判断する機能も必要となる。
【0007】
以上のように、地上デジタル放送信号を測定する場合、地上デジタル放送信号そのものに対する知識と測定装置に対する知識を持った専門的な人でないと正確な測定をすることができない。必然的に、このような専門知識を有する人は人数が限られている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、専門知識のない人でも地上デジタル放送システムで採用されている地上デジタル放送信号が有する特性の測定を簡単に、正確に、かつ再現性よく行え、操作性を大幅に向上できる地上デジタル放送測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消するために、本発明は、複数チャネルで構成され、各チャネルの周波数帯域に変調方式が異なる複数のデジタル情報の階層を配置しこれらの階層をOFDM変調した地上デジタル放送信号が有するチャネル毎の各特性の測定項目を測定条件に従って測定し、測定結果を表示器に表示出力する地上デジタル放送測定システムにおいて、表示器に表示された測定項目選択画面を用いて操作入力されたチャネル毎の特性の測定項目を設定する測定項目設定手段と、この測定項目設定手段で設定されたチャネル毎の特性の測定項目を記憶する測定項目メモリと、この測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目を測定条件に従って順番に実施していく測定実行手段とを備えている。
【0010】
このように構成された地上デジタル放送測定システムにおいては、表示器に表示された測定項目選択画面を用いてチャネル毎の特性の測定項目を予め設定して、測定項目メモリに記憶させておくことが可能である。したがって、実際の測定に際しては、測定者は測定指示を操作入力するのみで、測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目が測定条件に従って順番に自動的に実施されていくので、例えば、測定位置を移動しながら同一測定を繰り返し実施する場合に非常に便利である。
【0011】
また別の発明は、上記発明の地上デジタル放送測定システムにおいて、各特性の測定を実施するに際して必要な測定条件を示す各パラメータを入力された地上デジタル放送信号から取得して設定する自動設定モードと、各特性の測定を実施するに際して必要な測定条件を示す各パラメータを操作入力に基づいて設定する手動設定モードと、操作入力に基づいて自動設定モード又は手動設定モードを選択する設定モード選択手段とを備えている。
【0012】
このように構成された地上デジタル放送測定システムにおいては、各特性の測定を実施するに際して必要な測定条件を示す各パラメータの設定に対して自動設定モードと手動設定モードとの2種類の設定モードが準備されている。この地上デジタル放送測定に不慣れな測定者は、自動測定モードにしておくことで、測定に必要なパラメータを入力する必要がなく、簡単に地上デジタル放送信号の測定が行える。
【0013】
また別の発明は、上記発明の地上デジタル放送測定システムにおいて、現在位置情報を取得する位置情報取得手段と、測定結果に位置情報取得手段で取得された現在位置情報を付加する位置情報付加手段とを備えている。
【0014】
このように構成された地上デジタル放送測定システムにおいては、測定結果に自動で位置情報が付くため、測定結果を地図上に書込むときの利便性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の地上デジタル放送測定システムにおいては、チャネル毎の特性の測定項目を予め設定して、測定項目メモリに記憶させておき、測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目を測定条件に従って順番に自動的に実施させている。したがって、専門知識のない人でも地上デジタル放送信号が有する特性の測定を簡単に、正確に、かつ再現性よく行え、操作性を大幅に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係わる地上デジタル放送測定システムの全体構成を示す模式図である。
【0018】
この地上デジタル放送測定システムは、大きく分けて、測定装置1、制御装置2、位置情報取得装置3、通信装置4、印刷装置5で構成されている。そして、この地上デジタル放送測定システムは測定車6に搭載されている。
【0019】
測定装置1は、各放送局の共同のアンテナ7から出力される地上デジタル放送信号aを受信して、この地上デジタル放送信号aが有する電界強度やMER(変調誤差比)などの特性を測定し、測定結果を、表示器に表示すると共に、必要に応じて、測定装置内に保存し、また、制御装置2に伝送することができる。
【0020】
位置情報取得装置3は、GPS衛星8からのGPS信号bを用いて測定車6の現在位置情報を算出して、算出した現在位置情報を制御装置2へ送出する。通信装置3は無線または有線の通信ネットワーク9を使い、離れた場所にある他の通信装置へ測定結果を送信すると共に、他の通信装置から各種の指令を受信して制御装置2へ転送する。印刷装置5は必要に応じて測定結果を印字出力する。
【0021】
制御装置2は、測定装置1、位置情報取得装置3、通信装置4、印刷装置5に接続され、それぞれの機器から測定結果等のデータを取得ことができる。また、制御装置2は測定装置1、位置情報取得装置3と通信装置4に制御命令を送り動作を制御する。
【0022】
図2は、OFDM(直交周波数分割多重)変調方式で変調された地上デジタル放送信号aの各放局に割当てられた1チャネル分の信号の周波数分布図である。1チャネルは、13個のセグメント10で構成されている。そして、1個又は複数のセグメント10で階層11が形成されている。具体的には、13個のセグメント10でA階層、B階層、C階層の3個の階層11が形成されている。さらに、各セグメント10は複数のサブキャリア12で構成されている。この複数のサブキャリア12のうちの、モード毎に指定された特定位置のサブキャリアには、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control 制御情報)13が組込まれている。
【0023】
同一階層11に所属する各サブキャリア12は局が指定した同一の変調方式で変調されているが、TMCC(制御情報)13だけは固定のBPSKの変調方式で変調されている。
【0024】
このような構成の地上デジタル放送信号aを一義的に定義するパラメータとして、周波数(チャンネル)、電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等がある。
【0025】
図3は測定装置1の概略構成を示すブロック図である。周波数変換部14は、入力された地上デジタル放送信号aの周波数を、測定実行部15から指定された周波数(チャンネル)に応じた低周波数に変換して、A/D変換器16へ送出する。周波数変換された地上デジタル放送信号aは、A/D変換器16でA/D変換されたのち、一旦、波形メモリ17へ書込まれる。
【0026】
波形メモリ17に書込まれた1チャネル分の地上デジタル放送信号aは読出されて、直交復調部18にて、デジタルのベースバンド信号I、Qに直交復調され、OFDM復調部19、シンボル抽出部20へ入力される。シンボル抽出部20は、地上デジタル放送信号aのシンボルタイミングを検出してOFDM復調部19へ送出するとともに、有効シンボル長を検出してモード検出部21へ送出する。モード検出部21は、検出された有効シンボル長の値から、該当チャネルの地上デジタル放送信号aのモード(モード1、2、3のなかの1つのモード)を判定して、TMCC読取部23へ送出する。
【0027】
OFDM復調部19は、シンボル抽出部20からのシンボルタイミングを用いて、入力されたデジタルのベースバンド信号I、Qに対して高速フーリエ変換(FFT)処理を実施することによって、1チャネル分の地上デジタル放送信号aに含まれる各セグメント10の全てのサブキャリア12を抽出して、区分部22及びTMCC読取部23へ送出する。
【0028】
TMCC読取部23は、モード検出部21で指定されたモードに基づいて、入力されたサブキャリア12のなかからTMCC(制御情報)13を抽出して、このTMCC(制御情報)13をBPSKの復調方式で復調して、このTMCC(制御情報)13で示される、該当チャネルの地上デジタル放送信号aにおけるA階層、B階層、C階層の3個の階層11の各位置、各階層11のセグメント10数、各セグメント10に含まれる各サブキャリア12の変調方式を解読して、必要な情報を区分部22、復調部24、周波数分析部28へ送出する。
【0029】
区分部22は、OFDM復調部19から入力した全てのサブキャリア12をTMCC読取部23で指定された情報に基づいて、A階層、B階層、C階層の各サブキャリア12に区分して、復調部24へ送出する。復調部24は、A階層、B階層、C階層の各サブキャリア12を、TMCC読取部23から指定された各変調方式に対応する各復調方式で復調する。
【0030】
コンスタレーション測定部25は、図5、6に示すように、復調結果を、A階層、B階層、C階層の各階層11毎の、I、Q座標上の位置を示すコンスタレーション41に編集して表示器27に表示する。さらにMER測定部26は、復調結果からA階層、B階層、C階層の各階層11毎のMER(変調誤差比)42を算出して、図5、6に示すように、表示器27に表示する。
【0031】
周波数分析部28は、指定された各チャネルの地上デジタル放送信号aを周波数分析して、分析結果を電力測定部29へ送出する。電力測定部29は各周波数の電力を測定する。電界強度測定部32は、電力測定部29で測定された各周波数の電力の総和である電界(電力)強度をチャネル毎に求めて、図10に示すように、表示器27に表示する。スプリアス測定部38は、電力測定部29で測定された各サブキャリア12の電力の周波数分布から、各サブキャリア12のスプリアス(漏洩電力)を求めて、チャネル毎の平均値を算出して、図10に示すように、表示器27に表示する。
【0032】
周波数占有帯幅測定部30は、周波数分析部28で測定された周波数分析結における各サブキャリア12の周波数分布から、各サブキャリア12の周波数占有帯幅を求めて、チャネル毎の平均値を算出して、図10に示すように、表示器27に表示する。
【0033】
スペクトルマスク測定部31は、図9に示すように、周波数分析部28で測定されたチャネル毎の測定周波数分布43bを規格で定められた基準周波数分布43aとの対比で示すスペクトルマスク43を得て、表示器27に表示する。なお、横軸の中心周波数は該当チャネルの搬送波周波数である。
【0034】
次に、遅延プロファイル測定部34の動作を、図7、図8を用いて説明する。
図8(a)に示すように、アンテナ7から電波放出された地上デジタル放送信号aは測定装置1に直接入力される直接波(信号a)とビル等の反射物46に反射された後に入力される複数の反射波(信号a1、信号a2)とがある。したがって、測定装置1には、図8(b)に示すように、各信号a、a1、a2が経路差に応じた時間差を有して入力されることになる。
【0035】
遅延プロファイル44とは、図7(a)に示すように、横軸に時間をとり、縦軸に反射波(信号a1、信号a2)のレベル(直接波(信号a)を0dBとした相対値)をグラフ化したものである。横軸のデータとして2700ポイントぐらいあるため、全てのデータを表示器27の画面上に表示することができない(画面の幅は800ポイントぐらいのため)。そこで、全体表示45aと全体表示の中の一部分を拡大する拡大表示45bの2通りのグラフを表示器27に同時に表示させている。
【0036】
測定者が全体表示45aと拡大表示45bでデータの値を読むため、それぞれにマーカ機能を持たせている。具体的にはマーカ47位置のデータを読取る。測定者は、マーカ47を左右に移動させるため、図7(b)に示すように、測定装置1の正面パネルに設けられたロータリーエンコーダ47aを使用し、これを回すことでマーカ47を左右に移動させる。
【0037】
全体表示45aと拡大表示45bの両方にマーカ47があるが、ロータリーエンコーダ47aだけで両方のマーカ47を連動して移動させることができ、マーカ47の位置によってマーカ47を移動させる量を変化させている。具体的には、マーカ47が拡大表示45bの範囲に入っているときは、ロータリーエンコーダ47aの1クリックでグラフの1データを移動するようにする。また、マーカ47が拡大表示45bの範囲外にあるときは、ロータリーエンコーダ47aの1クリックでグラフの(たとえば)10データを移動するようにする。このように、マーカ47の移動を測定者が見やすいようにスムーズに行うことができる。
【0038】
ちなみに、従来の方法では、それぞれのグラフにマーカを独立で表示させ、操作するマーカを何がしかの方法で切換えることを必要としていた。そのため、操作性が煩雑になり測定に不慣れな者には分かり難かった。
【0039】
次に、設定モード選択部35、パラメータ自動抽出部37、パラメータ設定部38の動作を説明する。この実施形態の測定装置1においては、必要な測定条件を示す前述した電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等の各パラメータを入力された地上デジタル放送信号a自体から取得して設定する自動設定モードと、各パラメータを測定者が操作部36を用いた操作入力に基づいて設定する手動設定モードとの2つの設定モードが準備されている。測定者は、操作部36でいずれかの測定モードを選択する。
【0040】
自動設定モードが選択されると、パラメータ自動抽出部37が起動して、シンボル抽出部20、モード検出部21、TMCC読取部32等へ起動指令を送出して、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等の各パラメータを得て、必要な各部19、22、24へ自動設定させる。
【0041】
なお、電力基準レベルのパラメータを決めるには測定装置1に入力される全電力をまず測定する。すなわち、測定装置1の周波数分析部28、電力測定部29を使い、下限周波数から上限周波数までを掃引して全測定ポイントの電力を積分して全電力を求める。この全電力が測定装置1に入力しても測定装置1が飽和しないように電力基準レベルを決める。そして、この電力基準レベルを、周波数変換部14の前段に配設された減衰器に設定する。
この自動設定モードが選択された場合の表示器27に表示された測定結果の表示例を図5に示す。
【0042】
手動設定モードが選択されると、パラメータ設定部38が起動して、図6に示すように、表示器27に、電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等の各パラメータの入力画面48を表示して、測定者に各パラメータを操作入力させる。パラメータ設定部38は、シンボル抽出部20、モード検出部21、TMCC読取部32等へ動作停止指令を送出して、測定者が操作入力したモード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等の各パラメータを必要な各部19、22、24へ設定する。
この手動設定モードが選択された場合の表示器27に表示された測定結果の表示例を図6に示す。
【0043】
次に、チャネル・測定項目設定部39、測定項目メモリ40の動作を説明する。チャネル・測定項目設定部39は、操作部36からの指示に応じて、表示器27に図4に示す測定項目選択画面49を表示する。測定者はこの測定項目選択画面49を用いて、チャネル毎に必要な測定項目(電界強度、コンスタレーション、遅延プロファイル、スペクトルマスク、周波数占有帯幅、スプリアス、MER)を選択設定する。このチャネル・測定項目設定部39で設定されたチャネル毎の特性の測定項目は測定項目メモリ40に記憶保持される。
【0044】
測定実行部15は、操作部36から測定開始指令が入力されると、図11及び図12の流れ図に従って、測定項目メモリ40に記憶された各チャネルの測定項目を順番に実施していく。なお、この図11及び図12の流れ図においては、自動設定モードが選択された場合について説明する。
【0045】
先ず、測定対象チャネルchを測定項目メモリ40に記憶されているチャネルの初期値13に設定する(ステップS1)。測定対象チャネルchが最大チャネルch69以下の場合は(S2)、電力基準レベルを前述した手法で測定し自動設定する(S3)。モード、ガード比を前述した手法で検出し自動設定する(S4)。階層数、セグメント数、変調方式を前述した手法で検出し自動設定する(S5)。以上で該当チャネルの各パラメータの設定処理が終了する。
【0046】
次に、該当チャネルの電界強度測定が選択されている場合は(S6)、電界強度測定部32へ測定指示を送出して電界強度測定を実施する(S7)。該当チャネルのコンスタレーション測定が選択されている場合は(S8)、コンスタレーション測定部25へ測定指示を送出してコンスタレーション測定を実施する(S9)。該当チャネルの遅延プロファイル測定が選択されている場合は(S10)、遅延プロファイル測定部34へ測定指示を送出して遅延プロファイル測定を実施する(S11)。
【0047】
該当チャネルのスペクトルマスク測定が選択されている場合は(S12)、スペクトルマスク測定部31へ測定指示を送出してスペクトルマスク測定を実施する(S13)。該当チャネルの周波数占有帯幅測定が選択されている場合は(S14)、周波数占有帯幅測定部30へ測定指示を送出して周波数占有帯幅測定を実施する(S15)。該当チャネルのスプリアス測定が選択されている場合は(S16)、スプリアス測定部31へ測定指示を送出してスプリアス測定を実施する(S17)。該当チャネルのMER測定が選択されている場合は(S18)、MER測定部26へ測定指示を送出してMER測定を実施する(S19)。
【0048】
以上で、1つのチャネルに設定された各測定項目に対する測定が終了したので、測定対象チャネルchを1だけ更新して(S20)、S2へ戻る。S2にて、更新後の測定対象チャネルchが最大チャネルch69を超えた場合は、今回の地上デジタル放送信号aの特性測定を終了する。
【0049】
各測定項目の測定結果は、図5、図6、図9、図10に示すように、表示器27に、各測定項目単独で、又は複数の測定項目がまとめて表示される。
【0050】
こように、地上デジタル放送信号aの各特性の測定を実施するに際して必要な測定条件を示す各パラメータの設定に対して自動設定モードと手動設定モードとの2種類の設定モードが準備されている。そして、この地上デジタル放送信号aの測定に不慣れな測定者は、自動測定モードにしておくことで、測定に必要な電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等のパラメータを入力する必要がなく、簡単に地上デジタル放送信号の測定が行える。
【0051】
逆に、この地上デジタル放送信号aの測定を熟知した測定者は、手動測定モードにしておくことで、測定に必要な電力基準レベル、モード、ガード比、階層数、セグメント数、変調方式等のパラメータを任意に設定でき、測定目的に応じたより綿密な測定を実施できる。
【0052】
また、表示器27に表示された図4に示す測定項目選択画面49を用いてチャネル毎の電界強度、コンスタレーション、遅延プロファイル、スペクトルマスク、周波数占有帯幅、スプリアス、MER等の各測定項目を予め設定して、測定項目メモリ40に記憶させておき、実際の測定に際しては、測定者は測定指示を操作入力するのみで、測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目が前述した各パラメータ(測定条件)に従って順番に自動的に実施されていく。したがって、例えば、測定位置を移動しながら同一測定を繰り返し実施する場合に非常に便利であり、測定作業能率を大幅に向上できる。
【0053】
さらに、測定装置1において測定されたチャネル毎に測定項目選択画面49を用いて選択された地上デジタル放送信号aの各測定項目の測定結果は、制御装置2へ送信され、この制御装置2において、位置情報取得部3から入力された現在位置情報が付されて、記憶保持されるとともに、印刷装置5で地図上に報告書形式で印字出力される。
【0054】
また、測定者は、必要に応じて、制御装置2を操作して、現在位置情報が付された測定結果を、通信装置4、通信ネットワーク9を介して、管理者が常駐する技術センターに送信することが可能である。このことにより、専門知識のない測定者が測定しても、測定結果を瞬時に専門知識を有する管理者へ送り、結果の妥当性を確認してもらえるため専門的知識のない測定者でも測定場所で測定結果の妥当性を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係わる地上デジタル放送測定システムの全体構成を示す模式図
【図2】同実施形態の地上デジタル放送測定システムで測定される地上デジタル放送信号の1チャネル分の信号の周波数分布図
【図3】同実施形態の地上デジタル放送測定システムに組込まれた測定装置の概略構成を示すブロック図
【図4】同測定装置の表示器に表示された測定項目選択画面を示す図
【図5】同測定装置の表示器に表示されたコンスタレーションの測定結果を示す図
【図6】同じく同測定装置の表示器に表示されたコンスタレーションの測定結果を示す図
【図7】同測定装置の表示器に表示された遅延プロファイルの測定結果を示す図
【図8】同遅延プロファイルの定義を説明するための図
【図9】同測定装置の表示器に表示されたスペクトルマスクの測定結果を示す図
【図10】同測定装置の表示器に表示されたチャネル毎の各測定項目の測定結果を示す図
【図11】同測定装置に組込まれた測定実行部の動作を示す流れ図
【図12】同じく同測定装置に組込まれた測定実行部の動作を示す流れ図
【符号の説明】
【0056】
1…測定装置、2…制御装置、3…位置情報取得装置、4…通信装置、5…印刷装置、6…測定車、7…アンテナ、8…GPS衛星、9…通信ネットワーク、10…セグメント、11…階層、12…サブキャリア、13…TMCC、14…周波数変換部、15…測定実行部、16…A/D変換器、17…波形メモリ、18…直交復調部、19…OFDM復調部、20…シンボル抽出部、21…モード検出部、22…区分け部、23…TMCC読取部、24…復調部、25…コンスタレーション測定部、26…MER測定部、27…表示器、28…周波数分析部、29…電力測定部、30…周波数占有帯幅測定部、31…スペクトルマスク測定部、32…電界強度測定部、33…スプリアス測定部、34…遅延プロファイル測定部、35…設定モード選択部、36…操作部、37…パラメータ自動検出部、38…パラメータ設定部、39…チャネル・測定項目設定部、40…測定項目メモリ、41…コンスタレーション、43…スペクトルマスク、44…遅延プロファイル、47…マーカ、47a…ロータリーエンコーダ、48…パラメータ入力画面、49…測定項目選択画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャネルで構成され、各チャネルの周波数帯域に変調方式が異なる複数のデジタル情報の階層を配置しこれらの階層をOFDM変調した地上デジタル放送信号が有するチャネル毎の各特性の測定項目を測定条件に従って測定し、測定結果を表示器に表示出力する地上デジタル放送測定システムにおいて、
前記表示器に表示された測定項目選択画面を用いて操作入力されたチャネル毎の特性の測定項目を設定する測定項目設定手段と、
この測定項目設定手段で設定されたチャネル毎の特性の測定項目を記憶する測定項目メモリと、
この測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目を前記測定条件に従って順番に実施していく測定実行手段と
を備えたことを特徴とする地上デジタル放送測定システム。
【請求項2】
前記各特性の測定を実施するに際して必要な前記測定条件を示す各パラメータを前記入力された地上デジタル放送信号から取得して設定する自動設定モードと、
前記各特性の測定を実施するに際して必要な前記測定条件を示す各パラメータを操作入力に基づいて設定する手動設定モードと、
操作入力に基づいて前記自動設定モード又は手動設定モードを選択する設定モード選択手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の地上デジタル放送測定システム。
【請求項3】
現在位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記測定結果に前記位置情報取得手段で取得された現在位置情報を付加する位置情報付加手段と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の地上デジタル放送測定システム。
【請求項1】
複数チャネルで構成され、各チャネルの周波数帯域に変調方式が異なる複数のデジタル情報の階層を配置しこれらの階層をOFDM変調した地上デジタル放送信号が有するチャネル毎の各特性の測定項目を測定条件に従って測定し、測定結果を表示器に表示出力する地上デジタル放送測定システムにおいて、
前記表示器に表示された測定項目選択画面を用いて操作入力されたチャネル毎の特性の測定項目を設定する測定項目設定手段と、
この測定項目設定手段で設定されたチャネル毎の特性の測定項目を記憶する測定項目メモリと、
この測定項目メモリに記憶された各チャネルの測定項目を前記測定条件に従って順番に実施していく測定実行手段と
を備えたことを特徴とする地上デジタル放送測定システム。
【請求項2】
前記各特性の測定を実施するに際して必要な前記測定条件を示す各パラメータを前記入力された地上デジタル放送信号から取得して設定する自動設定モードと、
前記各特性の測定を実施するに際して必要な前記測定条件を示す各パラメータを操作入力に基づいて設定する手動設定モードと、
操作入力に基づいて前記自動設定モード又は手動設定モードを選択する設定モード選択手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の地上デジタル放送測定システム。
【請求項3】
現在位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記測定結果に前記位置情報取得手段で取得された現在位置情報を付加する位置情報付加手段と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の地上デジタル放送測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−33173(P2006−33173A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206099(P2004−206099)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【出願人】(591164613)株式会社エヌエイチケイアイテック (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【出願人】(591164613)株式会社エヌエイチケイアイテック (39)
【Fターム(参考)】
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