地中熱利用の空調装置
【課題】隣接する2つの住居へ効率良く地中熱で熱交換された外気を供給する。
【解決手段】地中に略水平かつ平行に埋設された第1、第2の主パイプ2、3を複数本の枝パイプ4で連結した熱交換部5と、一端が主パイプ2又は3に連通しかつ他端が外気に連通する導入部6と、一端が前記主パイプ2又は3に連通しかつ他端が建物内部に連通する供給部7とを含む地中熱利用の空調装置1である。前記熱交換部5は、隣接する住戸H1、H2の間で枝パイプ4が設けられていないバッファ領域Bと、その両側の第1の熱交換領域C1、第2の熱交換領域C2とが設けられる。バッファ領域Bに、前記導入部6と、第1の熱交換領域C1で熱交換された外気を第1の住戸H1に供給する第1の供給部7aと、第2の熱交換領域C2で熱交換された外気を第2の住戸H2に供給する第2の供給部7bとが設けられる。
【解決手段】地中に略水平かつ平行に埋設された第1、第2の主パイプ2、3を複数本の枝パイプ4で連結した熱交換部5と、一端が主パイプ2又は3に連通しかつ他端が外気に連通する導入部6と、一端が前記主パイプ2又は3に連通しかつ他端が建物内部に連通する供給部7とを含む地中熱利用の空調装置1である。前記熱交換部5は、隣接する住戸H1、H2の間で枝パイプ4が設けられていないバッファ領域Bと、その両側の第1の熱交換領域C1、第2の熱交換領域C2とが設けられる。バッファ領域Bに、前記導入部6と、第1の熱交換領域C1で熱交換された外気を第1の住戸H1に供給する第1の供給部7aと、第2の熱交換領域C2で熱交換された外気を第2の住戸H2に供給する第2の供給部7bとが設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱利用の空調装置に関し、詳しくは隣接する2つの住居へ効率良く地中熱で熱交換された外気を供給しうる地中熱利用の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネルギー化の要請により、地中熱を利用した空調装置が種々提案されている(例えば下記特許文献1ないし3参照)。この種の代表的な空調装置としては、外気を、地中に埋設された熱交換用のパイプを経由させて建物内に供給するものが知られている(このような方式は、「クールチューブ方式」とも呼ばれる。)。
【0003】
地表から2〜3m程度の深さの地中温度は、季節を問わず約15℃程度で安定している。従って、上記空調装置では、夏は高温の外気を熱交換用のパイプを通して冷却でき、逆に冬では、冷たい外気を上記パイプで暖めてそれぞれ建物の中に供給できる利点がある。
【0004】
ところで、近年では、図11に示されるように、地中に埋められた一つの熱交換部Uから複数の住戸に熱交換された外気を供給する空調装置が提案されている。例えば、前記熱交換部Uは、隣接する第1の住戸H1及び第2の住戸H2の隣接方向Aに沿って互いに平行に埋設された第1及び第2の主パイプa1、a2と、この第1及び第2の主パイプa1、a2間を該主パイプと直交して繋ぐ複数本の枝パイプbとを含んで構成される。
【0005】
また、第1の主パイプa1の両端部には、一端が該第1の主パイプa1に連通しかつ他端が地上で開口することにより、外気を熱交換部Uに取り込むための第1の導入部e1及び第2の導入部e2がそれぞれ設けられる。同様に、第2の主パイプa2の両端部には、一端が該第2の主パイプa2に連通しかつ他端が住戸内部にのびる第1の供給部f1及び第2の供給部f2がそれぞれ設けられる。また、第1及び第2の供給部f1、f2の前記他端側には、例えば、吸込用のファン(図示省略)などが接続される。
【0006】
このような熱交換部Uでは、第1の導入部e1から取り込まれた外気は、第1の主パイプa1、枝パイプb及び第2の主パイプa2で熱交換され、第1の供給部f1から第1の住戸H1の内部へと供給される。同様に、第2の導入部e2から取り込まれた外気は、第1の主パイプa1、枝パイプb及び第2の主パイプa2で熱交換され、第2の供給部f2から第2の住戸H2の内部へと供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−35456号公報
【特許文献2】特開2007−333360号公報
【特許文献3】特開2008−76015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、発明者らの種々の実験の結果、従来の熱交換部Uの構造では、一方の住戸、例えば第1の住戸H1で空調装置の停止(例えば第1の供給部f1からの吸込を停止し、かつ、第1の導入e1を閉塞)すると、第1の住戸H1側に配された枝パイプbに殆ど空気が流れず、流量のバラツキが大きくなることが判明した。このため、空気流量の少ない枝パイプbには、内部に結露が生じやすく、また早期にカビが発生するという問題があり、熱交換された空気に異臭を生じさせるおそれもあった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、熱交換部の各枝パイプを流れる空気流量のバラツキを減じ、熱交換性能の低下や枝パイプ内の結露等を効果的に防止しうる地中熱利用の空調装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のうち請求項1記載の発明は、地中に略水平かつ互いに平行に埋設された第1の主パイプ及び第2の主パイプを該主パイプと直交してのびる複数本の枝パイプで連結した熱交換部と、一端が前記第1の主パイプに連通しかつ他端が外気に連通する導入部と、一端が前記第2の主パイプに連通しかつ他端が建物内部に連通する供給部とを含み、前記導入部から取り込んだ外気を前記熱交換部で熱交換し前記供給部を介して住戸内部に供給する地中熱利用の空調装置であって、前記熱交換部は、前記第1の主パイプ及び第2の主パイプが、隣接する第1の住戸及び第2の住戸の隣接方向に沿ってのび、かつ、隣接する前記住戸の間で前記枝パイプが設けられていないバッファ領域と、その第1の住戸側で枝パイプが複数配された第1の熱交換領域と、前記バッファ領域の第2の住戸側で枝パイプが複数配された第2の熱交換領域とを含み、しかも前記バッファ領域に、少なくとも一つの前記導入部と、前記第1の熱交換領域で熱交換された外気を前記第1の住戸に供給する第1の供給部と、前記第2の熱交換領域で熱交換された外気を前記第2の住戸に供給する第2の供給部とが設けられたことを特徴とする。
【0011】
また請求項2記載の発明は、前記第1の主パイプと、前記第2の主パイプの両端部が閉塞されている請求項1記載の地中熱利用の空調装置である。
【0012】
また請求項3記載の発明は、前記導入部は、外気を前記第1の熱交換領域に取り込む第1の導入部と、外気を前記第2の熱交換領域に取り込む第2の導入部とを含む請求項1又は2記載の地中熱利用の空調装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の地中熱利用の空調装置では、熱交換部が、隣接する住戸の間で前記枝パイプが設けられていないバッファ領域と、その第1の住戸側で枝パイプが複数配された第1の熱交換領域と、前記バッファ領域の第2の住戸側で枝パイプが複数配された第2の熱交換領域とを含む。そして、前記バッファ領域に、少なくとも一つの外気の導入部と、第1の熱交換領域で熱交換された外気を第1の住戸に供給する第1の供給部と、第2の熱交換領域で熱交換された外気を第2の住戸に供給する第2の供給部とが設けられる。このような熱交換部は、一方の住戸が空調装置の利用を停止した場合でも、熱交換部の各枝パイプを流れる空気流量のバラツキが、従来に比して顕著に小さくなり、熱交換性能の低下や枝パイプ内の結露等の発生が効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す空調装置の平面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】本実施形態の熱交換部の詳細な平面図である。
【図4】本実施形態の主パイプと枝パイプとの接続部を示す断面図である。
【図5】他の実施形態の主パイプと枝パイプとの接続部を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す平面図である。
【図7】比較例の熱交換部(2戸運転状態)を説明する平面図である。
【図8】比較例の熱交換部(1戸のみ運転状態)を説明する平面図である。
【図9】実施例の熱交換部(2戸運転状態)を説明する平面図である。
【図10】実施例の熱交換部(1戸のみ運転状態)を説明する平面図である。
【図11】従来の熱交換部の平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の地中熱利用の空調装置1の一実施形態を示し、該空調装置1は、隣接する2つの住戸、即ち、第1の住戸H1及び第2の住戸H2の双方に地中熱と熱交換された空気を供給しうるものが示される。
【0016】
本実施形態の空調装置1は、隣接する第1の住戸H1及び第2の住戸H2の隣接方向Aに沿って互いに平行に地中に埋設された第1及び第2の主パイプ2、3と、この第1及び第2の主パイプ2、3間を該主パイプと直交して繋ぐ複数本の枝パイプ4とを含み、平面視が略梯子状に構成された熱交換部5を有する。また、熱交換部5には、外気を該熱交換部5に導入しうる導入部6と、前記熱交換部5で熱交換された外気をそれぞれの住戸H1、H2の内部へと供給しうる供給部7とを含んで構成される。
【0017】
前記熱交換部5は、住戸H1、H2に隣接して設けられており、本実施形態では各々の住戸の前側に設けられた庭Yの地中Gに埋設されている。
【0018】
前記第1の主パイプ2、第2の主パイプ3及び枝パイプ4は、季節にかかわらずほぼ一定の温度となる地中、例えば地表から2〜3m程度の深さの地中Gに埋設されるのが望ましい。本実施形態では、各主パイプ2、3及び枝パイプ4は、いずれも断面円形のパイプで構成される。また、各パイプ2、3及び4は、種々の材料で構成することができ、成形性、耐久性、防錆性及び熱伝導性に鑑みれば、非金属材料、とりわけ硬質塩化ビニル樹脂等の樹脂材料で形成されるのが望ましい。
【0019】
本実施形態において、第1の主パイプ2及び第2の主パイプ3は、略水平にかつ同深さで互いに平行に埋設されている。「略水平」であるから、主パイプ2、3は、厳密に水平に埋設されている必要はない。本実施形態では、各主パイプ2、3の内面に生じた結露水が、各主パイプ2、3の両端部に設けたドレイン管9(図2に示す。)に集められるように、主パイプ2及び3には、それぞれ3〜10度程度の勾配が設けられる。本実施形態の主パイプ2及び3は、図1において、それぞれ外側に向かって下降する略逆V字状の勾配が設けられているが、一方向の勾配であっても良いのは言うまでもない。また、ドレイン管9には、図示しないポンプ等が地表側より挿入され、適宜結露水が外部に吸い上げられる。
【0020】
図3には、熱交換部5の詳細な拡大平面図が示され、図4には、図3のX部の拡大断面図が示される。本実施形態の各主パイプ2、3は、パイプ状をなす第1部分20と、この第1部分20に接続されて軸方向にのびるとともに途中に該軸方向と直角にのび前記枝パイプ4が接続される分岐部22cを有する第2部分22とが軸方向に交互に接続されて構成される。このような主パイプ2、3は、第1部分20の軸方向の長さを変えることにより、主パイプ2ないし3と、枝パイプ4との接続位置を自在に設定できる。従って、熱交換部5の汎用性を高め、製造コストを低く抑えるのに役立つ。なお、第1、第2の主パイプ2及び3の両端部は、それぞれキャップ15にて閉塞されている。
【0021】
前記第1部分20は、例えば実質的に一定の内径d1でのびる単純なパイプ状で構成されている。
【0022】
また、図4に示されるように、前記第2部分22は、第1部分20の内径d1と等しい内径で軸方向にのびる主部22aと、その両端に設けられかつ前記第1部分20を密に挿入可能な拡径部22bとを含んで形成されている。これにより、主パイプ2、3は、それぞれ実質的に前記内径d1で連続して軸方向にのびる。
【0023】
また、第2部分22は、例えば、その軸方向の長さの略中間部に、前記分岐部22cが突設される。分岐部22cは、接続される枝パイプ4と実質的に等しい内径d2を有するとともに、分岐部22cの先端部には、枝パイプ4を密に挿入可能な拡径部22dが設けられている。これにより、前記内径d2は、枝パイプ4及び分岐部22cで連続する。また、分岐部22cは、主パイプ2との接続部から徐々に内径が変化するものではなく、本実施形態では、急激な断面積の減少を伴って分岐している。
【0024】
前記枝パイプ4の内径d2と主パイプ2、3の各内径d1との比(d2/d1)は、例えば0.15〜0.45、より好ましくは0.20〜0.40の範囲に設定されるのが好ましい。このように、枝パイプ4の内径d2を、各主パイプ2及び3の内径d1に比して著しく小さく絞り込んだときには、熱交換部5の各枝パイプ4を流れる空気流量のバラツキが低減され、ひいては効率良く各枝パイプ4で熱交換を行わせることができる。なお、前記各主パイプ2、3の内径d1は、例えば100〜300mm程度、より好ましくは100〜150mm程度に設定されるのが望ましい。
【0025】
また、図4の実施形態では、第2部分22の分岐部22cは、主パイプ2に対して直角かつ真っ直ぐに接続されている。しかしながら、分岐部22cは、図5に示されるように、円弧状に湾曲させることもできる。このような分岐部22cは、例えば主パイプ2の空気の流れがNで示されるとき、その空気の分岐時の抵抗を小さくする向きに湾曲させることは言うまでもない。
【0026】
前記各枝パイプ4は、真っ直ぐにのびており、第1の主パイプ2と、第2の主パイプ3との間を前記分岐部22cを介して接続している。
【0027】
また、熱交換部5は、第1の住戸H1及び第2の住戸H2の間Yに、一定区間で枝パイプ4が設けられていないバッファ領域Bと、その第1の住戸H1側で枝パイプ4が複数配された第1の熱交換領域C1と、バッファ領域Bの第2の住戸H2側で枝パイプ4が複数配された第2の熱交換領域C2とを含む。
【0028】
本実施形態において、前記第1及び第2の熱交換領域C1、C2では、枝パイプ4は、それぞれ一定の配設ピッチP(図3に示す)で設けられている。また、各枝パイプ4と、主パイプ2、3とは、図1に示されるように、互いの中心線の高さを揃えて連結されている。なお、枝パイプ4の流速を均一化するために、前記枝パイプ4の配設ピッチPは、好ましくは450〜1800mmの範囲で設定されるのが好ましい。
【0029】
他方、前記バッファ領域Bは、熱交換部5の略中間部に位置し、第1の主パイプ2と第2の主パイプ3との間に枝パイプ4が設けられていない領域である。より具体的には、前記配設ピッチPよりも大きい範囲で枝パイプ4が設けられていない。換言すれば、図3に示されるように、バッファ領域Bは、枝パイプ4の配設ピッチPbが、第1の熱交換領域C1及び第2の熱交換領域C2の枝パイプ4の配設ピッチPよりも大きく形成された部分ということができる。特に限定されるものではないが、該バッファ領域Bの両側にある枝パイプ4の配置ピッチPbは、第2の熱交換領域C1及び第2の熱交換領域C2の枝パイプ4の配置ピッチPの1.5倍以上、より好ましくは3倍以上が望ましく、また、好ましくは6倍以下、より好ましくは4倍以下が望ましい。
【0030】
そして、バッファ領域Bには、少なくとも一つの前記導入部6と、第1の熱交換領域C1で熱交換された外気を第1の住戸H1に供給する第1の供給部7aと、第2の熱交換領域C2で熱交換された外気を第2の住戸H2に供給する第2の供給部7bとが設けられている。
【0031】
本実施形態の導入部6は、外気を第1の熱交換領域C1に取り込む第1の導入部6aと、外気を第2の熱交換領域C2に取り込む第2の導入部6bとから構成される。各導入部6a、6bは、図2に示されるように、上下にのびるパイプ状をなすとともに、その下端が地中Gに埋設されて前記第1の主パイプ2に連通される。また、各導入部6a、6bの上端は、地上に露出するとともに、約180度湾曲して下向きで開口している。このような下向きの開口は、雨水等の進入を防止できる。また、この開口部には、例えば、フィルター等を配される。これは、該導入部6内への虫や異物の侵入を防ぐのに役立つ。
【0032】
また、各導入部6a、6bは、前記バッファ領域Bの第1の主パイプ2に互いに小距離を隔てて設けられる。そして、第1の導入部6aは前記バッファ領域Bの第1の住戸H1側に、かつ、第2の導入部6bは前記バッファ領域Bの第2の住戸H2側にそれぞれ設けられる。
【0033】
前記各供給部7a、7bは、パイプ状をなすとともに、その下端が地中Gに埋設されて前記バッファ領域Bの第2の主パイプ3に接続されかつ連通している。また、第1の供給部7aは、地中Gを第1の住戸H1に向かってのびるとともに、その上端は、第1の住戸H1の床下空間11aで開口している。同様に、第2の供給部7bは、地中Gを第2の住戸H2に向かってのびるとともに、その上端は、第2の住戸H2の床下空間11bで開口している。
【0034】
また、各床下空間11a、11bには、例えば、熱交換部5からの空気を強制的に吸い上げる吸気用ファン10が各供給部7a、7bの開口部に接続されている。本実施形態において、各住戸H1、H2の床下空間11a、11bは、基礎によって囲まれかつ外気とは断熱された空間であり、この床下空間の空気は、床部に設けた開口O1又はO2から居室内部へと供給され、矢印にて空気の流れの一例を示すように、家屋内の空気流路を通って各部へと供給される。
【0035】
なお、本実施形態では、第1及び第2の熱交換領域C1、C2の枝パイプ4は、平面視において、実質的に左右対称にレイアウトされるとともに、導入部6及び供給部7も左右対称に配置されている。ただし、本発明は、このような実施形態に限定されるものではない。
【0036】
以上のように構成された空調装置1の作用について述べる。第1の住戸H1及び第2の住戸H2において、ともに吸気用ファン10が駆動されている場合、外気は、導入部6a、6bを経由してバッファ領域Bに取り込まれる。また、バッファ領域Bに取り込まれた外気は、第1の熱交換領域C1及び第2の熱交換領域C2へと左右に分岐し、図3に矢印で示される向き(即ち、第1の主パイプ2と第2の主パイプ3とで逆向き)で流れ、それぞれ第1の供給部7a及び第2の供給部7bから、第1の住戸H1の床下空間11a及び第2の住戸H2の床下空間11bに供給される。
【0037】
また、一方の住戸、例えば第1の住戸H1で空調装置1を使用しなくなった場合、吸気用ファン10を停止させ、かつ、第1の導入部6aの地上側での開口を閉塞する場合がある。このような場合でも、本実施形態の空調装置1では、第2の導入部6b及び第2の供給部7bが、第1の熱交換領域C1と第2の熱交換領域C2との間のバッファ領域Bに設けられているため、双方の熱交換領域C1及びC2をバランス良く利用することができる。即ち、第2の住戸H2の吸気用ファン10のみが運転されている場合、第2の導入部6bからバッファ領域Bに取り込まれた外気を、その両側の第1の熱交換領域C1及び第2の熱交換領域C2へと左右に分岐し、双方で熱交換された外気を第2の供給部7bから第2の住戸H2の床下空間11bに供給することができる。
【0038】
このように、本実施形態の空調装置1では、一戸の住居が地熱利用の空調装置の利用を停止した場合であっても、図11に示したような片側から空気を引き込む場合に比して、熱交換部5の各枝パイプ4を流れる空気流量のバラツキが低減され、ひいては効率良く各枝パイプ4で熱交換が行われる。従って、各枝パイプ4には、満遍なく空気が安定的に流れるため、その内表面への結露の発生を抑制でき、ひいてはカビや異臭の発生を長期に亘って効果的に抑制しうる。
【0039】
なお、上記実施形態では、導入部6は、第1の導入部6a及び第2の導入部6bからなるものを示した。しかしながら、導入部6は、例えばバッファ領域Bの中間部に設けられた一つのみでも良い。また、図1〜3の実施形態では、いわゆる隣接する2つの住戸を対象としているが、本実施形態の空調装置1は、例えば図6に示されるように、4戸以上の偶数戸を対象として設置することもできる。この場合、互いに隣接する2戸の住戸H1−H2、及び、住戸H3−H4をそれぞれ1組として上述の要領で空調装置1を設けることができる。
【実施例】
【0040】
本発明の効果を明らかにするために、本発明者らが行った実験について以下説明する。図7〜図10には、本実験に用いた熱交換部5の平面視のレイアウトを示す。符号は、上述の実施形態のものに対応している。
【0041】
[比較例の装置]
図7には、比較例として、第1の主パイプ2の両端の導入部6a、6bから空気を吸い込む(IN)とともに、第2の主パイプ3の両端の供給部7a、7bから空気を排出(OUT)させた。つまり、図7の比較例では、バッファ領域Bには、導入部及び供給部が設けられておらず、かつ、2つの住戸で空調装置がともに運転されているものを示している。また、枝パイプ4の本数は、実験用として、第1及び第2の熱交換領域C1、C2それぞれ3本とした。また、図8には、第1の住戸において空調装置の運転が停止され、第2の住戸のみで空調装置が利用されている状態を示す。即ち、第1の導入部6a及び第2の供給部7bがともにキャップ15で閉塞されている。また、破線にて空気の流れを示す。
【0042】
[実施例の装置]
図9には、実施例として、バッファ領域Bの第1の主パイプ2に設けられた導入部6a、6bから空気を吸い込む(IN)とともに、同バッファ領域Bの第2の主パイプ3に設けられた供給部7a、7bから空気を排出(OUT)させた。つまり、図9の実施例では、2つの住戸で空調装置がともに運転されているものを示している。また、図10には、実施例において、第1の住戸において空調装置の運転が停止され、第2の住戸のみで空調装置が利用されている状態を示す。即ち、第2の導入部6b及び第2の供給部7bがともにキャップ15で閉塞されている。
【0043】
また、空気は、送風ファン(図示省略)で前記供給部7a及び/又は7bの(OUT)側から強制的に排気し、給気側(IN)の風量が50m3/hとなるように調整を行った。そして、そのときのファン電圧(ファン回転数の関数である)及び各枝パイプ4(図において右から順次枝パイプ4aないし4fとする)に流れる風速(風量に比例する)がそれぞれ測定された。
【0044】
また、各パイプ2、3及び4は、いずれも硬質塩化ビニル樹脂からなる。また、他の主要な寸法は次の通りである。
【0045】
第1、第2の主パイプの全長L1:3200mm
第1、第2の主パイプの軸間距離L2:1200mm
第1、第2の主パイプの他端から枝パイプまでの距離L3:1000mm
第1、第2の主パイプの一端から枝パイプまでの距離L4:1000mm
枝パイプの配設ピッチP:300mm(一定)
バッファ領域Bの長さL5:1000mm
枝パイプと導入部(又は供給部)との距離L6:300mm
テストの結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
テストの結果、実施例は、比較例に比べて、各枝パイプの平均流速を増加させつつ風速のバラツキを顕著に小さくしていることが確認できた。特に、実施例では、枝パイプの平均風速が向上していることも確認できた。なお、枝パイプ4の内径や本数を変えてさらに他の実験を行ったが、いずれも本発明の効果が奏されることが確認できた。
【符号の説明】
【0048】
1 空調装置
2 第1の主パイプ
3 第2の主パイプ
4 枝パイプ
5 熱交換部
6 導入部
6a 第1の導入部
6b 第2の導入部
7 供給部
7a 第1の供給部
7b 第2の供給部
A 住戸の隣設方向
B バッファ領域
C1 第1の熱交換領域
C2 第2の熱交換領域
G 地中
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱利用の空調装置に関し、詳しくは隣接する2つの住居へ効率良く地中熱で熱交換された外気を供給しうる地中熱利用の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネルギー化の要請により、地中熱を利用した空調装置が種々提案されている(例えば下記特許文献1ないし3参照)。この種の代表的な空調装置としては、外気を、地中に埋設された熱交換用のパイプを経由させて建物内に供給するものが知られている(このような方式は、「クールチューブ方式」とも呼ばれる。)。
【0003】
地表から2〜3m程度の深さの地中温度は、季節を問わず約15℃程度で安定している。従って、上記空調装置では、夏は高温の外気を熱交換用のパイプを通して冷却でき、逆に冬では、冷たい外気を上記パイプで暖めてそれぞれ建物の中に供給できる利点がある。
【0004】
ところで、近年では、図11に示されるように、地中に埋められた一つの熱交換部Uから複数の住戸に熱交換された外気を供給する空調装置が提案されている。例えば、前記熱交換部Uは、隣接する第1の住戸H1及び第2の住戸H2の隣接方向Aに沿って互いに平行に埋設された第1及び第2の主パイプa1、a2と、この第1及び第2の主パイプa1、a2間を該主パイプと直交して繋ぐ複数本の枝パイプbとを含んで構成される。
【0005】
また、第1の主パイプa1の両端部には、一端が該第1の主パイプa1に連通しかつ他端が地上で開口することにより、外気を熱交換部Uに取り込むための第1の導入部e1及び第2の導入部e2がそれぞれ設けられる。同様に、第2の主パイプa2の両端部には、一端が該第2の主パイプa2に連通しかつ他端が住戸内部にのびる第1の供給部f1及び第2の供給部f2がそれぞれ設けられる。また、第1及び第2の供給部f1、f2の前記他端側には、例えば、吸込用のファン(図示省略)などが接続される。
【0006】
このような熱交換部Uでは、第1の導入部e1から取り込まれた外気は、第1の主パイプa1、枝パイプb及び第2の主パイプa2で熱交換され、第1の供給部f1から第1の住戸H1の内部へと供給される。同様に、第2の導入部e2から取り込まれた外気は、第1の主パイプa1、枝パイプb及び第2の主パイプa2で熱交換され、第2の供給部f2から第2の住戸H2の内部へと供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−35456号公報
【特許文献2】特開2007−333360号公報
【特許文献3】特開2008−76015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、発明者らの種々の実験の結果、従来の熱交換部Uの構造では、一方の住戸、例えば第1の住戸H1で空調装置の停止(例えば第1の供給部f1からの吸込を停止し、かつ、第1の導入e1を閉塞)すると、第1の住戸H1側に配された枝パイプbに殆ど空気が流れず、流量のバラツキが大きくなることが判明した。このため、空気流量の少ない枝パイプbには、内部に結露が生じやすく、また早期にカビが発生するという問題があり、熱交換された空気に異臭を生じさせるおそれもあった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、熱交換部の各枝パイプを流れる空気流量のバラツキを減じ、熱交換性能の低下や枝パイプ内の結露等を効果的に防止しうる地中熱利用の空調装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のうち請求項1記載の発明は、地中に略水平かつ互いに平行に埋設された第1の主パイプ及び第2の主パイプを該主パイプと直交してのびる複数本の枝パイプで連結した熱交換部と、一端が前記第1の主パイプに連通しかつ他端が外気に連通する導入部と、一端が前記第2の主パイプに連通しかつ他端が建物内部に連通する供給部とを含み、前記導入部から取り込んだ外気を前記熱交換部で熱交換し前記供給部を介して住戸内部に供給する地中熱利用の空調装置であって、前記熱交換部は、前記第1の主パイプ及び第2の主パイプが、隣接する第1の住戸及び第2の住戸の隣接方向に沿ってのび、かつ、隣接する前記住戸の間で前記枝パイプが設けられていないバッファ領域と、その第1の住戸側で枝パイプが複数配された第1の熱交換領域と、前記バッファ領域の第2の住戸側で枝パイプが複数配された第2の熱交換領域とを含み、しかも前記バッファ領域に、少なくとも一つの前記導入部と、前記第1の熱交換領域で熱交換された外気を前記第1の住戸に供給する第1の供給部と、前記第2の熱交換領域で熱交換された外気を前記第2の住戸に供給する第2の供給部とが設けられたことを特徴とする。
【0011】
また請求項2記載の発明は、前記第1の主パイプと、前記第2の主パイプの両端部が閉塞されている請求項1記載の地中熱利用の空調装置である。
【0012】
また請求項3記載の発明は、前記導入部は、外気を前記第1の熱交換領域に取り込む第1の導入部と、外気を前記第2の熱交換領域に取り込む第2の導入部とを含む請求項1又は2記載の地中熱利用の空調装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の地中熱利用の空調装置では、熱交換部が、隣接する住戸の間で前記枝パイプが設けられていないバッファ領域と、その第1の住戸側で枝パイプが複数配された第1の熱交換領域と、前記バッファ領域の第2の住戸側で枝パイプが複数配された第2の熱交換領域とを含む。そして、前記バッファ領域に、少なくとも一つの外気の導入部と、第1の熱交換領域で熱交換された外気を第1の住戸に供給する第1の供給部と、第2の熱交換領域で熱交換された外気を第2の住戸に供給する第2の供給部とが設けられる。このような熱交換部は、一方の住戸が空調装置の利用を停止した場合でも、熱交換部の各枝パイプを流れる空気流量のバラツキが、従来に比して顕著に小さくなり、熱交換性能の低下や枝パイプ内の結露等の発生が効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す空調装置の平面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】本実施形態の熱交換部の詳細な平面図である。
【図4】本実施形態の主パイプと枝パイプとの接続部を示す断面図である。
【図5】他の実施形態の主パイプと枝パイプとの接続部を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す平面図である。
【図7】比較例の熱交換部(2戸運転状態)を説明する平面図である。
【図8】比較例の熱交換部(1戸のみ運転状態)を説明する平面図である。
【図9】実施例の熱交換部(2戸運転状態)を説明する平面図である。
【図10】実施例の熱交換部(1戸のみ運転状態)を説明する平面図である。
【図11】従来の熱交換部の平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の地中熱利用の空調装置1の一実施形態を示し、該空調装置1は、隣接する2つの住戸、即ち、第1の住戸H1及び第2の住戸H2の双方に地中熱と熱交換された空気を供給しうるものが示される。
【0016】
本実施形態の空調装置1は、隣接する第1の住戸H1及び第2の住戸H2の隣接方向Aに沿って互いに平行に地中に埋設された第1及び第2の主パイプ2、3と、この第1及び第2の主パイプ2、3間を該主パイプと直交して繋ぐ複数本の枝パイプ4とを含み、平面視が略梯子状に構成された熱交換部5を有する。また、熱交換部5には、外気を該熱交換部5に導入しうる導入部6と、前記熱交換部5で熱交換された外気をそれぞれの住戸H1、H2の内部へと供給しうる供給部7とを含んで構成される。
【0017】
前記熱交換部5は、住戸H1、H2に隣接して設けられており、本実施形態では各々の住戸の前側に設けられた庭Yの地中Gに埋設されている。
【0018】
前記第1の主パイプ2、第2の主パイプ3及び枝パイプ4は、季節にかかわらずほぼ一定の温度となる地中、例えば地表から2〜3m程度の深さの地中Gに埋設されるのが望ましい。本実施形態では、各主パイプ2、3及び枝パイプ4は、いずれも断面円形のパイプで構成される。また、各パイプ2、3及び4は、種々の材料で構成することができ、成形性、耐久性、防錆性及び熱伝導性に鑑みれば、非金属材料、とりわけ硬質塩化ビニル樹脂等の樹脂材料で形成されるのが望ましい。
【0019】
本実施形態において、第1の主パイプ2及び第2の主パイプ3は、略水平にかつ同深さで互いに平行に埋設されている。「略水平」であるから、主パイプ2、3は、厳密に水平に埋設されている必要はない。本実施形態では、各主パイプ2、3の内面に生じた結露水が、各主パイプ2、3の両端部に設けたドレイン管9(図2に示す。)に集められるように、主パイプ2及び3には、それぞれ3〜10度程度の勾配が設けられる。本実施形態の主パイプ2及び3は、図1において、それぞれ外側に向かって下降する略逆V字状の勾配が設けられているが、一方向の勾配であっても良いのは言うまでもない。また、ドレイン管9には、図示しないポンプ等が地表側より挿入され、適宜結露水が外部に吸い上げられる。
【0020】
図3には、熱交換部5の詳細な拡大平面図が示され、図4には、図3のX部の拡大断面図が示される。本実施形態の各主パイプ2、3は、パイプ状をなす第1部分20と、この第1部分20に接続されて軸方向にのびるとともに途中に該軸方向と直角にのび前記枝パイプ4が接続される分岐部22cを有する第2部分22とが軸方向に交互に接続されて構成される。このような主パイプ2、3は、第1部分20の軸方向の長さを変えることにより、主パイプ2ないし3と、枝パイプ4との接続位置を自在に設定できる。従って、熱交換部5の汎用性を高め、製造コストを低く抑えるのに役立つ。なお、第1、第2の主パイプ2及び3の両端部は、それぞれキャップ15にて閉塞されている。
【0021】
前記第1部分20は、例えば実質的に一定の内径d1でのびる単純なパイプ状で構成されている。
【0022】
また、図4に示されるように、前記第2部分22は、第1部分20の内径d1と等しい内径で軸方向にのびる主部22aと、その両端に設けられかつ前記第1部分20を密に挿入可能な拡径部22bとを含んで形成されている。これにより、主パイプ2、3は、それぞれ実質的に前記内径d1で連続して軸方向にのびる。
【0023】
また、第2部分22は、例えば、その軸方向の長さの略中間部に、前記分岐部22cが突設される。分岐部22cは、接続される枝パイプ4と実質的に等しい内径d2を有するとともに、分岐部22cの先端部には、枝パイプ4を密に挿入可能な拡径部22dが設けられている。これにより、前記内径d2は、枝パイプ4及び分岐部22cで連続する。また、分岐部22cは、主パイプ2との接続部から徐々に内径が変化するものではなく、本実施形態では、急激な断面積の減少を伴って分岐している。
【0024】
前記枝パイプ4の内径d2と主パイプ2、3の各内径d1との比(d2/d1)は、例えば0.15〜0.45、より好ましくは0.20〜0.40の範囲に設定されるのが好ましい。このように、枝パイプ4の内径d2を、各主パイプ2及び3の内径d1に比して著しく小さく絞り込んだときには、熱交換部5の各枝パイプ4を流れる空気流量のバラツキが低減され、ひいては効率良く各枝パイプ4で熱交換を行わせることができる。なお、前記各主パイプ2、3の内径d1は、例えば100〜300mm程度、より好ましくは100〜150mm程度に設定されるのが望ましい。
【0025】
また、図4の実施形態では、第2部分22の分岐部22cは、主パイプ2に対して直角かつ真っ直ぐに接続されている。しかしながら、分岐部22cは、図5に示されるように、円弧状に湾曲させることもできる。このような分岐部22cは、例えば主パイプ2の空気の流れがNで示されるとき、その空気の分岐時の抵抗を小さくする向きに湾曲させることは言うまでもない。
【0026】
前記各枝パイプ4は、真っ直ぐにのびており、第1の主パイプ2と、第2の主パイプ3との間を前記分岐部22cを介して接続している。
【0027】
また、熱交換部5は、第1の住戸H1及び第2の住戸H2の間Yに、一定区間で枝パイプ4が設けられていないバッファ領域Bと、その第1の住戸H1側で枝パイプ4が複数配された第1の熱交換領域C1と、バッファ領域Bの第2の住戸H2側で枝パイプ4が複数配された第2の熱交換領域C2とを含む。
【0028】
本実施形態において、前記第1及び第2の熱交換領域C1、C2では、枝パイプ4は、それぞれ一定の配設ピッチP(図3に示す)で設けられている。また、各枝パイプ4と、主パイプ2、3とは、図1に示されるように、互いの中心線の高さを揃えて連結されている。なお、枝パイプ4の流速を均一化するために、前記枝パイプ4の配設ピッチPは、好ましくは450〜1800mmの範囲で設定されるのが好ましい。
【0029】
他方、前記バッファ領域Bは、熱交換部5の略中間部に位置し、第1の主パイプ2と第2の主パイプ3との間に枝パイプ4が設けられていない領域である。より具体的には、前記配設ピッチPよりも大きい範囲で枝パイプ4が設けられていない。換言すれば、図3に示されるように、バッファ領域Bは、枝パイプ4の配設ピッチPbが、第1の熱交換領域C1及び第2の熱交換領域C2の枝パイプ4の配設ピッチPよりも大きく形成された部分ということができる。特に限定されるものではないが、該バッファ領域Bの両側にある枝パイプ4の配置ピッチPbは、第2の熱交換領域C1及び第2の熱交換領域C2の枝パイプ4の配置ピッチPの1.5倍以上、より好ましくは3倍以上が望ましく、また、好ましくは6倍以下、より好ましくは4倍以下が望ましい。
【0030】
そして、バッファ領域Bには、少なくとも一つの前記導入部6と、第1の熱交換領域C1で熱交換された外気を第1の住戸H1に供給する第1の供給部7aと、第2の熱交換領域C2で熱交換された外気を第2の住戸H2に供給する第2の供給部7bとが設けられている。
【0031】
本実施形態の導入部6は、外気を第1の熱交換領域C1に取り込む第1の導入部6aと、外気を第2の熱交換領域C2に取り込む第2の導入部6bとから構成される。各導入部6a、6bは、図2に示されるように、上下にのびるパイプ状をなすとともに、その下端が地中Gに埋設されて前記第1の主パイプ2に連通される。また、各導入部6a、6bの上端は、地上に露出するとともに、約180度湾曲して下向きで開口している。このような下向きの開口は、雨水等の進入を防止できる。また、この開口部には、例えば、フィルター等を配される。これは、該導入部6内への虫や異物の侵入を防ぐのに役立つ。
【0032】
また、各導入部6a、6bは、前記バッファ領域Bの第1の主パイプ2に互いに小距離を隔てて設けられる。そして、第1の導入部6aは前記バッファ領域Bの第1の住戸H1側に、かつ、第2の導入部6bは前記バッファ領域Bの第2の住戸H2側にそれぞれ設けられる。
【0033】
前記各供給部7a、7bは、パイプ状をなすとともに、その下端が地中Gに埋設されて前記バッファ領域Bの第2の主パイプ3に接続されかつ連通している。また、第1の供給部7aは、地中Gを第1の住戸H1に向かってのびるとともに、その上端は、第1の住戸H1の床下空間11aで開口している。同様に、第2の供給部7bは、地中Gを第2の住戸H2に向かってのびるとともに、その上端は、第2の住戸H2の床下空間11bで開口している。
【0034】
また、各床下空間11a、11bには、例えば、熱交換部5からの空気を強制的に吸い上げる吸気用ファン10が各供給部7a、7bの開口部に接続されている。本実施形態において、各住戸H1、H2の床下空間11a、11bは、基礎によって囲まれかつ外気とは断熱された空間であり、この床下空間の空気は、床部に設けた開口O1又はO2から居室内部へと供給され、矢印にて空気の流れの一例を示すように、家屋内の空気流路を通って各部へと供給される。
【0035】
なお、本実施形態では、第1及び第2の熱交換領域C1、C2の枝パイプ4は、平面視において、実質的に左右対称にレイアウトされるとともに、導入部6及び供給部7も左右対称に配置されている。ただし、本発明は、このような実施形態に限定されるものではない。
【0036】
以上のように構成された空調装置1の作用について述べる。第1の住戸H1及び第2の住戸H2において、ともに吸気用ファン10が駆動されている場合、外気は、導入部6a、6bを経由してバッファ領域Bに取り込まれる。また、バッファ領域Bに取り込まれた外気は、第1の熱交換領域C1及び第2の熱交換領域C2へと左右に分岐し、図3に矢印で示される向き(即ち、第1の主パイプ2と第2の主パイプ3とで逆向き)で流れ、それぞれ第1の供給部7a及び第2の供給部7bから、第1の住戸H1の床下空間11a及び第2の住戸H2の床下空間11bに供給される。
【0037】
また、一方の住戸、例えば第1の住戸H1で空調装置1を使用しなくなった場合、吸気用ファン10を停止させ、かつ、第1の導入部6aの地上側での開口を閉塞する場合がある。このような場合でも、本実施形態の空調装置1では、第2の導入部6b及び第2の供給部7bが、第1の熱交換領域C1と第2の熱交換領域C2との間のバッファ領域Bに設けられているため、双方の熱交換領域C1及びC2をバランス良く利用することができる。即ち、第2の住戸H2の吸気用ファン10のみが運転されている場合、第2の導入部6bからバッファ領域Bに取り込まれた外気を、その両側の第1の熱交換領域C1及び第2の熱交換領域C2へと左右に分岐し、双方で熱交換された外気を第2の供給部7bから第2の住戸H2の床下空間11bに供給することができる。
【0038】
このように、本実施形態の空調装置1では、一戸の住居が地熱利用の空調装置の利用を停止した場合であっても、図11に示したような片側から空気を引き込む場合に比して、熱交換部5の各枝パイプ4を流れる空気流量のバラツキが低減され、ひいては効率良く各枝パイプ4で熱交換が行われる。従って、各枝パイプ4には、満遍なく空気が安定的に流れるため、その内表面への結露の発生を抑制でき、ひいてはカビや異臭の発生を長期に亘って効果的に抑制しうる。
【0039】
なお、上記実施形態では、導入部6は、第1の導入部6a及び第2の導入部6bからなるものを示した。しかしながら、導入部6は、例えばバッファ領域Bの中間部に設けられた一つのみでも良い。また、図1〜3の実施形態では、いわゆる隣接する2つの住戸を対象としているが、本実施形態の空調装置1は、例えば図6に示されるように、4戸以上の偶数戸を対象として設置することもできる。この場合、互いに隣接する2戸の住戸H1−H2、及び、住戸H3−H4をそれぞれ1組として上述の要領で空調装置1を設けることができる。
【実施例】
【0040】
本発明の効果を明らかにするために、本発明者らが行った実験について以下説明する。図7〜図10には、本実験に用いた熱交換部5の平面視のレイアウトを示す。符号は、上述の実施形態のものに対応している。
【0041】
[比較例の装置]
図7には、比較例として、第1の主パイプ2の両端の導入部6a、6bから空気を吸い込む(IN)とともに、第2の主パイプ3の両端の供給部7a、7bから空気を排出(OUT)させた。つまり、図7の比較例では、バッファ領域Bには、導入部及び供給部が設けられておらず、かつ、2つの住戸で空調装置がともに運転されているものを示している。また、枝パイプ4の本数は、実験用として、第1及び第2の熱交換領域C1、C2それぞれ3本とした。また、図8には、第1の住戸において空調装置の運転が停止され、第2の住戸のみで空調装置が利用されている状態を示す。即ち、第1の導入部6a及び第2の供給部7bがともにキャップ15で閉塞されている。また、破線にて空気の流れを示す。
【0042】
[実施例の装置]
図9には、実施例として、バッファ領域Bの第1の主パイプ2に設けられた導入部6a、6bから空気を吸い込む(IN)とともに、同バッファ領域Bの第2の主パイプ3に設けられた供給部7a、7bから空気を排出(OUT)させた。つまり、図9の実施例では、2つの住戸で空調装置がともに運転されているものを示している。また、図10には、実施例において、第1の住戸において空調装置の運転が停止され、第2の住戸のみで空調装置が利用されている状態を示す。即ち、第2の導入部6b及び第2の供給部7bがともにキャップ15で閉塞されている。
【0043】
また、空気は、送風ファン(図示省略)で前記供給部7a及び/又は7bの(OUT)側から強制的に排気し、給気側(IN)の風量が50m3/hとなるように調整を行った。そして、そのときのファン電圧(ファン回転数の関数である)及び各枝パイプ4(図において右から順次枝パイプ4aないし4fとする)に流れる風速(風量に比例する)がそれぞれ測定された。
【0044】
また、各パイプ2、3及び4は、いずれも硬質塩化ビニル樹脂からなる。また、他の主要な寸法は次の通りである。
【0045】
第1、第2の主パイプの全長L1:3200mm
第1、第2の主パイプの軸間距離L2:1200mm
第1、第2の主パイプの他端から枝パイプまでの距離L3:1000mm
第1、第2の主パイプの一端から枝パイプまでの距離L4:1000mm
枝パイプの配設ピッチP:300mm(一定)
バッファ領域Bの長さL5:1000mm
枝パイプと導入部(又は供給部)との距離L6:300mm
テストの結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
テストの結果、実施例は、比較例に比べて、各枝パイプの平均流速を増加させつつ風速のバラツキを顕著に小さくしていることが確認できた。特に、実施例では、枝パイプの平均風速が向上していることも確認できた。なお、枝パイプ4の内径や本数を変えてさらに他の実験を行ったが、いずれも本発明の効果が奏されることが確認できた。
【符号の説明】
【0048】
1 空調装置
2 第1の主パイプ
3 第2の主パイプ
4 枝パイプ
5 熱交換部
6 導入部
6a 第1の導入部
6b 第2の導入部
7 供給部
7a 第1の供給部
7b 第2の供給部
A 住戸の隣設方向
B バッファ領域
C1 第1の熱交換領域
C2 第2の熱交換領域
G 地中
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に略水平かつ互いに平行に埋設された第1の主パイプ及び第2の主パイプを該主パイプと直交してのびる複数本の枝パイプで連結した熱交換部と、
一端が前記第1の主パイプに連通しかつ他端が外気に連通する導入部と、
一端が前記第2の主パイプに連通しかつ他端が建物内部に連通する供給部とを含み、
前記導入部から取り込んだ外気を前記熱交換部で熱交換し前記供給部を介して住戸内部に供給する地中熱利用の空調装置であって、
前記熱交換部は、
前記第1の主パイプ及び第2の主パイプが、隣接する第1の住戸及び第2の住戸の隣接方向に沿ってのび、かつ、
隣接する前記住戸の間で前記枝パイプが設けられていないバッファ領域と、その第1の住戸側で枝パイプが複数配された第1の熱交換領域と、前記バッファ領域の第2の住戸側で枝パイプが複数配された第2の熱交換領域とを含み、しかも
前記バッファ領域に、少なくとも一つの前記導入部と、前記第1の熱交換領域で熱交換された外気を前記第1の住戸に供給する第1の供給部と、前記第2の熱交換領域で熱交換された外気を前記第2の住戸に供給する第2の供給部とが設けられたことを特徴とする地中熱利用の空調装置。
【請求項2】
前記第1の主パイプと、前記第2の主パイプの両端部が閉塞されている請求項1記載の地中熱利用の空調装置。
【請求項3】
前記導入部は、外気を前記第1の熱交換領域に取り込む第1の導入部と、外気を前記第2の熱交換領域に取り込む第2の導入部とを含む請求項1又は2記載の地中熱利用の空調装置。
【請求項1】
地中に略水平かつ互いに平行に埋設された第1の主パイプ及び第2の主パイプを該主パイプと直交してのびる複数本の枝パイプで連結した熱交換部と、
一端が前記第1の主パイプに連通しかつ他端が外気に連通する導入部と、
一端が前記第2の主パイプに連通しかつ他端が建物内部に連通する供給部とを含み、
前記導入部から取り込んだ外気を前記熱交換部で熱交換し前記供給部を介して住戸内部に供給する地中熱利用の空調装置であって、
前記熱交換部は、
前記第1の主パイプ及び第2の主パイプが、隣接する第1の住戸及び第2の住戸の隣接方向に沿ってのび、かつ、
隣接する前記住戸の間で前記枝パイプが設けられていないバッファ領域と、その第1の住戸側で枝パイプが複数配された第1の熱交換領域と、前記バッファ領域の第2の住戸側で枝パイプが複数配された第2の熱交換領域とを含み、しかも
前記バッファ領域に、少なくとも一つの前記導入部と、前記第1の熱交換領域で熱交換された外気を前記第1の住戸に供給する第1の供給部と、前記第2の熱交換領域で熱交換された外気を前記第2の住戸に供給する第2の供給部とが設けられたことを特徴とする地中熱利用の空調装置。
【請求項2】
前記第1の主パイプと、前記第2の主パイプの両端部が閉塞されている請求項1記載の地中熱利用の空調装置。
【請求項3】
前記導入部は、外気を前記第1の熱交換領域に取り込む第1の導入部と、外気を前記第2の熱交換領域に取り込む第2の導入部とを含む請求項1又は2記載の地中熱利用の空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−270986(P2010−270986A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124165(P2009−124165)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
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